説明

ポリエステル系複合仮ヨリ加工糸およびポリエステル系編織物

【課題】 ポリエステル繊維の優れた形態安定性や強度保持性を具備させながら、優れた吸湿率による着用快適性を可能にするポリエステル系複合仮ヨリ加工糸とその編織物を提供する。
【解決手段】 ポリエステル系複合仮ヨリ加工糸は、吸放湿パラメーターΔMRが1%以上のポリエステル系フィラメント糸条と他のフィラメント糸条とが複合して仮ヨリされて形成されている。ポリエステル系編織物は、該ポリエステル系複合仮ヨリ加工糸を使用して、JIS L−1094 B法による摩擦帯電圧を3kv未満にしたものである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリエステル系複合仮ヨリ加工糸およびポリエステル系編織物に関し、さらに詳しくは、吸湿性を有するポリエステル系複合仮ヨリ加工糸および吸湿性による快適着用性を有するポリエステル系編織物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ポリエステル繊維は、形態安定性、機械強度、耐薬品性、耐熱性、洗濯耐久性などに優れるため、衣料用途に広く使用されている。しかしながら、反面で、ポリエステル繊維は吸湿率が低いため、直接肌に触れたり、あるいは肌に近い状態で着用される裏地などに使用される場合には、肌からの発汗によるムレやベタツキを生じ、また乾燥した空気中では静電気を帯びやすく摩擦帯電圧が高くなるため、着用時に肌にまとわりつきやすくなる欠点がある。
【0003】このような問題から、裏地用途には天然繊維やキュプラに代表されるセルロース系合成繊維が多く使用されている。しかし、これらは快適な着用性を可能にするが、ポリエステル繊維に比べて強度が低く、洗濯耐久性に劣り、またしわが起こりやすく、形態安定性に欠けるという欠点がある。これらの対策として、ポリエステル繊維の表面に後加工処理によって吸湿性樹脂を付与するようにしたものがある。しかし、この方法で十分な吸湿性を得るためには、多量の吸湿性樹脂をピックアップさせる必要があるため、裏地のように或る程度の薄さが必要な用途には、厚い被膜ができて布帛が剛くなるため適用は困難という問題がある。また、洗濯によって表面の吸湿性樹脂が次第に脱落するため、吸湿性が低下するという耐久性の問題もある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ポリエステル繊維の優れた形態安定性や強度保持性を具備させながら、優れた吸湿率による着用快適性を可能にするポリエステル系複合仮ヨリ加工糸とその編織物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決する本発明は、吸放湿パラメーターΔMRが1%以上のポリエステル系フィラメント糸条と他のフィラメント糸条とが混繊されたポリエステル系複合仮ヨリ加工糸を特徴とし、またかかるポリエステル系複合仮ヨリ加工糸を使用して、JIS L−1094 B法による摩擦帯電圧を3kv未満にしたポリエステル系編織物を特徴とするものである。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明のポリエスル系複合仮ヨリ加工糸は、吸放湿パラメーターΔMRが1%以上のポリエステル系フィラメント糸条と他のフィラメント糸条とが複合して仮ヨリ加工されて構成されているが、ポリエスル系フィラメント糸の吸放湿パラメーターΔMRは、さらに好ましくは、製糸性や高次加工の製編織性および着用時の快適性の観点から1.5〜10%、特に好ましくは3%〜10%とするのがよい。
【0007】本発明における吸放湿パラメーターΔMRとは、30℃×90%RHにおける吸湿率MR2 と20℃×65%RHにおける吸湿率MR1 との差(ΔMR(%)=MR2 −MR1 )で表される値のことをいう。この吸放湿パラメーターΔMRは、衣服着用時の衣服内の湿気を外気に放出することにより快適性を得るためのドライビングフォースを表すものであり、軽〜中作業あるいは軽〜中運動を行った際の30℃×90%RHに代表される衣服内温度と、20℃×65%RHに代表される外気温湿度との吸湿率差を表わす。この吸放湿パラメーターΔMRは大きければ大きいほど吸放出力が高く、着用時の快適性が良好であることを表わしている。
【0008】また、ポリエスル系フィラメント糸条が有する吸放湿パラメーターΔMRとしては、このポリエスル系フィラメント糸条を含む複合仮ヨリ加工糸から構成された編織物の5回洗濯後の値が、洗濯前の70%以内であるような洗濯耐久性を備えていることが好ましい。ここで、洗濯1回とは、市販の自動反転うずまき式電気洗濯機の洗濯槽に40±2℃の0.2%弱アルカリ性合成洗剤液25リットルを入れ、試験布と追加布の合計重量が約500gとなるように調整した後、洗濯5分、脱水30秒、すすぎ2分、脱水30秒、すすぎ2分、脱水30秒という手順で行ったもののことをいう。また、すすぎは常温水を用い、オーバーフローさせながら行うことによるものである。
【0009】本発明において、上述のような吸湿性能を有するポリエステル系フィラメント糸条としては、特に限定はされないが、製糸性、製織性、染色性および糸性能の耐久性などを考慮にいれると、次のような繊維構成を有するフィラメント糸条を使用することが好ましい。すなわち、第一のポリエステル系フィラメント糸条は、親水性化合物(A)を共重合した共重合ポリエステルであって、その共重合ポリエステルに極性基含有化合物(B)および架橋剤(C)のうち少なくともいずれか一方を含有する共重合ポリエステル(D)を5重量%以上含んでいる複合繊維またはブレンド繊維である。また、第二のポリエステル系フィラメント糸条は、ポリエーテルエステルアミド(E)もしくはポリエーテルエステルアミドと他の熱可塑性樹脂(F)との混合物を5%以上含んでいる複合繊維またはブレンド繊維である。
【0010】以下、それぞれの繊維について詳細に説明する。まず、前者の繊維に含まれる共重合ポリエステル(D)に共重合される親水性化合物(A)としては、エステル形成基を1個以上含有する化合物であるのが好ましく、特に限定されないが、代表的な化合物としてポリオキシアルキレン化合物、ポリオキサゾリン類、ポリアクリルアミドとその誘導体などを用いることができる。その中でも、ポリオキシアルキレン化合物が好ましく、ポリオキシエチレン化合物はさらに好ましい。さらに、ポリオキシエチレン化合物の中でも、ポリエチレングリコール化合物が好ましく、結晶化抑制因子を含むポリエチレングリコールが特に好ましい。
【0011】ここで、結晶性抑制因子とは、分子鎖中あるいは末端に存在し、ポリエチレングリコールの繰り返し単位の対称性を乱すような有機残基のことをいう。結晶化抑制とは、示差走査熱分析(DSC、昇温条件16℃/分)によって求めた融点が同じ分子量のポリエチレングリコールの融点より低くなることをいう。親水性化合物(A)の分子量は、ポリエステルとの相溶性およびポリエステル中における分散性の観点から600〜20000であることが好ましく、より好ましくは、1000〜10000であり、さらに好ましくは、2000〜6000である。また、親水性化合物(A)の共重合の割合は特に限定はされないが、紡糸性の観点から、全ポリマー重量に対して40〜99重量%であることが好ましい。
【0012】これらの化合物は、大部分がポリエステル中に共重合されていることが好ましいが、一部についてはポリマー中に分散した状態で存在していてもよい。共重合ポリエステル(D)中に含有させる極性基含有化合物(B)として、特に限定はされないが、下記一般式(I)
i −R1 −Xn (I)
(ただし、式中R1 は有機残基、Xはエステル形成性基でありnは1以上の正数、Yi はアミノ基、スルホン基、カルボキシル基、水酸基、アミド基およびホスホン酸基などの誘導体の中から選ばれる1つ以上の極性基を示す。(i≧1の整数))で表される極性基を有する化合物が好ましい。
【0013】ここで、含有とは、ポリエステル中に分散または共重合した状態のことをいうが、特に共重合している状態であるのが好ましい。化合物としては、特にスルホン酸塩基を有する化合物が好ましい。極性基含有化合物(B)を含有させることによりポリマーの吸湿率がさらに高まるばかりか、ポリマー中に水素結合やイオン性相互結合作用を生じ、繊維とした場合に経時的な物性の変化が生じにくいという効果が得られる。
【0014】糸切れの発生を防止し、かつ経時的な変化を生じにくくする観点から、極性基含有化合物(B)の含有量は、全ポリマーを構成する酸成分に対して0〜50モル%であることが好ましく、さらに好ましくは2〜15モルである。また、共重合ポリエステル(D)中に含有させる架橋剤(C)としては、ポリエステルと反応し、架橋構造を形成する化合物であれば、特に限定はされないが、下記一般式(II)
(R3O)n2 (COOR4)m (II) (ただし、式中R2 は3〜6価の有機残基、R3 は水素あるいはアセチル基、R4 は水素あるいはアルキル基、3≦m+n≦6。)で表される多官能化合物を用いることが好ましい。ここで、含有とは、ポリエステル中に分散している状態のことをいうが、共重合により架橋構造である状態は好ましい。
【0015】化合物としては、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多官能カルボン酸、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどのポリオールが好ましいが、特に好ましいのはトリメリット酸である。架橋剤(C)を含有させることにより、ポリマーの吸湿性がさらに高まるばかりでなく、ポリマー中に架橋構造が形成され、繊維とした場合に経時的な物性の変化が生じにくいという効果が得られる。
【0016】架橋剤(C)の割合は、全ポリマーを構成する酸成分に対して0〜30モル%が好ましく、さらに好ましくは1〜15モル%、特に好ましくは2〜10モル%である。このような範囲にすることにより、吸湿性を高く保持し、製糸性が良好となり、強度等の繊維物性が向上する。上述した極性基含有化合物(B)と架橋剤(C)は、共重合ポリエステル(D)に対して少なくともいずれか一方が含有されていればよいが、より好ましくは極性基含有化合物(B)と架橋剤(C)との両者を含むことがよい。
【0017】また、共重合ポリエステル(D)には、本発明の目的を損なわない範囲で、酸化チタン、カーボンブラックなどの顔料、アルキルベンゼンスルホン酸塩などの界面活性剤、各種の抗酸化剤、着色防止剤、耐光剤、帯電防止剤などが添加されていてももちろんよい。次に、前述したポリエーテルエステルアミド(E)またはポリエーテルエステルアミドと他の熱可塑性樹脂(F)との混合物を含む第二の繊維について説明する。
【0018】ポリエーテルエステルアミド(E)とは、同一分子鎖内にエーテル結合、エステル結合を持つブロック共重合体のことをいう。より具体的には、ラクタム、アミノカルボン酸、ジアミンとジカルボン酸の塩から選ばれた、1種もしくは2種以上のポリアミド形成性成分(G)およびジカルボン酸とポリ(アルキレンオキシド)グリコールからなるポリエーテルエステル形成性成分(H)を重縮合反応させて得られるブロック共重合体ポリマーを好ましく用いることができる。
【0019】ポリエーテルエステルアミドのポリアミド形成性成分(G)としては、ラクタム類、ω−アミノカルボン酸、ナイロン塩類などを用いることができ、これらを、1種または2種以上混合して用いることができる。好ましいポリアミド形成性成分としては、ε−カプロラクタム、ナイロン66塩である。一方、ポリエーテルエステルアミドのソフトセグメントを構成するポリエーテルエステル成分(H)としては、炭素数4〜20のジカルボン酸とポリ(アルキレンオキシド)グリコールが好ましい。
【0020】炭素数4〜20のジカルボン酸としては、脂肪族、芳香族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸などを用いることができ、1種または2種以上混合して用いることができる。好ましいジカルボン酸は、アジピン酸、セバポリグリシンなどのポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンなどの汎用熱可塑性樹脂シン酸、デカジ酸、テレフタル酸、イソフタル酸などである。
【0021】また、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(1,3−プロピレンオキシド)グリコール、ポリテトラメチレンオキシドグリコール、ポリヘキサメチレンオキシドグリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドまたは、テトラヒドロフランとのランダムまたはブロック共重合などを用いることができ、特にポリエチレングリコールが好ましい。ポリ(アルキレンオキシド)グリコールの数平均分子量は300〜10000であるのが好ましく、より好ましくは、500〜4000の範囲である。
【0022】ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体は、上記したポリアミド形成性成分(G)とポリエーテルエステル形成性成分(H)を重縮合することによって得られる。ポリエーテルエステルアミドと混合物を形成するための熱可塑性樹脂(F)としては、例えば、ナイロン66、ナイロン6のようなポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンのうち1種または2種以上を用いることができる。特に、ナイロン66、ナイロン6、スルホネート化合物を共重合した変性ポリエチレンテレフタレートなどがポリエーテルエステルアミドと相溶性が良好で、相互に微分散が可能であり、また、熱水による膨潤が小さいため好ましい。
【0023】ここで変性ポリエステルの共重合成分として好ましいスルホネート化合物として、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−(テトラアルキル)ホスソニウムスルホイソフタル酸およびそれらのエステル誘導体、p−ヒドロキシエトキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、2,5−ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼンスルホン酸カリウムなどを用いることができる。
【0024】スルホネート化合物の共重合量は、ポリエーテルエステルアミドとの相溶性と得られるブレンド繊維の物性との兼ね合いから、酸成分に対して0.1〜7モル%であるのが好ましく、より好ましくは、0.2〜6モル%、さらに好ましくは、0.5〜5モル%である。ポリエーテルエステルアミドと熱可塑性樹脂(F)との混合比率は、十分な吸湿特性を得ることや、染色加工工程のような熱水雰囲気下で、膨潤による繊維表面の割れを防ぐという観点から5〜50重量%が好ましく、より好ましくは7〜45重量%、さらに好ましくは10〜40重量%である。
【0025】前述した共重合ポリエステル(D)、ポリエーテルエステルアミド(E)またはポリエーテルエステルアミドと熱可塑性樹脂(F)の混合物と併用して複合繊維またはブレンド繊維とするときに使用する繊維形成性重合体としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルなどをいずれも使用することができるが、これらに限定されるものではない。これらのなかでも、特に衣料用合成繊維として汎用性の高いポリエチレンテレフタレートを主体とするポリエステルが好ましい。
【0026】複合繊維の形態としては、特に限定はされないが、図1に示すような芯部1と鞘部2とからなる芯鞘型複合繊維、図2に示すような芯部1と鞘部2と中空部3とからなる芯鞘型複合中空繊維、図3に示すような島部1aと海部2aとからなる海島型複合繊維、図4に示すような張り合わせ部1b,2bからなる張り合わせ型複合繊維などを用いることができる。
【0027】例えば、図1の芯鞘型複合繊維および図2の芯鞘型複合中空繊維の場合には、共重合ポリエステル(D)、ポリエーテルエステルアミド(E)またはポリエーテルエステルアミドと他の熱可塑性樹脂(F)との混合物などの吸湿性ポリマーを芯部に用い、繊維形成性重合体を鞘部に用いることができる。この場合の複合比率(重量%)は芯/鞘=5/95〜90/10が好ましく、さらに好ましくは7/93〜50/50、特に好ましくは10/90〜30/70である。芯部の複合比率の下限は、十分な吸湿性を付与する目的から適宜設定され、上限は紡糸性の低下や繊維物性の低下を防ぐ観点から適宜設定される。
【0028】芯鞘断面形状は、同心円状であっても偏心円状であってもよく、また繊維断面形状は円形、多角形、H形などの異形断面であってもよい。また、図3の海島型複合繊維および図4の張り合わせ型複合繊維の場合には、吸湿性ポリマーを島部または一方の張り合わせ部に用い、繊維形成性重合体を海部または他方の張り合わせ部に使用する。島部または一方の張り合わせ部の複合比率は5〜90重量%が好ましく、さらに好ましくは7〜50重量%、特に好ましくは10〜30重量%である。
【0029】複合比率の下限は、十分な吸湿性を付与する目的から適宜設定され、上限は紡糸性の低下や繊維物性の低下を防ぐ観点から適宜設定される。また、ブレンド繊維の場合には、共重合ポリエステル(D)、ポリエーテルエステルアミド(E)またはポリエーテルエステルアミドと他の熱可塑性樹脂(F)との混合物などの吸湿性ポリマーの繊維形成性重合体に対する配合比率は、全ポリマー量に対して5〜80重量%が好ましく、より好ましくは5〜35重量%、さらに好ましくは7〜30重量%である。
【0030】配合比率の下限は十分な吸湿性を付与する目的から適宜設定され、配合比率の上限は、紡糸性の低下や繊維物性の低下を防ぐ観点から適宜設定される。上記繊維形成重合体には、本発明の目的を損なわない範囲でポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネートなどを含んでいてもよい。また、繊維形成性重合体には、本発明の目的を損なわない範囲で、酸化チタン、カーボンブラックなどの顔料、各種の抗酸化剤、着色防止剤、耐光剤、帯電防止剤などが添加されていてももちろんよい。
【0031】本発明において、上述した吸湿性ポリエステル系フィラメント糸と複合して仮ヨリ加工する相手方の他のフィラメント糸条としては、ポリエステル、ポリアミドなどの合成繊維であってもよく、レーヨン、アセテートなど半合成繊維であってもよい。合成繊維は延伸糸やPOYやUYなどの不完全延伸糸を使用することができる。
【0032】これら合成繊維または半合成繊維は、吸湿性ポリエステル系フィラメント糸よりも単糸繊度の細いフィラメント糸(例えば0.1〜1d)、単糸繊度の太いフィラメント糸(例えば2.0〜10d)、収縮率の低いフィラメント糸(例えば3〜6%)、収縮率の高いフィラメント糸(例えば10〜30%)、自発伸長性のフィラメント糸(例えば伸長率1.0〜7%)などの組合せが可能である。
【0033】複合仮ヨリ加工糸の複合比率(重量%)は、芯/鞘=5/95〜95/5が好ましく、さらには30/70〜70/30が好ましい。特に芯糸が鞘糸より50重量%多いとき、本発明の効果が大きくなり、逆に少ないときは複合糸加工性はよくなる。吸湿性ポリエステル系フィラメント糸に対して、単糸繊度の細いフィラメント糸を組合せる場合には、例えば単糸繊度を0.1〜1デニールとすることにより編織物の風合をソフト化し、収縮率の低いフィラメント糸を組合せる場合には、例えば収縮率が2〜6%にすることにより、編織物に「ふくらみ」感のある風合を与える。同様に、自発伸長性のフィラメント糸との組み合わせの場合にも「ふくらみ」感の風合にすることができる。収縮率の高いフィラメント糸を組み合わせる場合には、例えば収縮率を15〜25%にすることにより、織物のハリ・腰の風合を改善する。
【0034】その他、三角、四角、五角、八角などの多葉型断面のフィラメント糸との組み合わせにより、シルキー調の光沢と風合、四角中空や丸形中空フィラメント糸との組み合わせにより、軽量・高質感の風合、カチオン可染フィラメント糸や常圧分散可染フィラメント糸との組み合わせにより杢効果など、外観や風合あるいは質感を高級化することができる。
【0035】レーヨン、アセテートなどの半合成繊維フィラメント糸と組み合わせる場合は、これら半合成繊維に共通する洗濯耐久性が劣ること、しわがおこり易く形態安定性が低いこと、ハリ・腰の風合いに欠けることなどの欠点を、ポリエステル系フィラメント糸条によって改善することができる。さらに、ポリエステル系フィラメント糸条は吸放湿パラメーターΔMRが1%以上であるので、吸湿性能を極めて高くすることができる。
【0036】複合仮ヨリ加工糸の形態は、吸湿性ポリエステル系フィラメント糸条と他のフィラメント糸条との先交絡・複合仮ヨリ加工であっても、あるいは後交絡・複合仮ヨリ加工のいずれであってもよく、また芯糸側に鞘糸側が実質無ヨリで撚回反転しながら巻きつかせる三重ケン回複合仮ヨリ加工であってもよい。高品質な風合いや特殊質感、あるいは伸縮性が要求される複合仮ヨリ加工糸では、芯糸側に吸湿性ポリエステル系フィラメント糸条を配置し、鞘糸側に風合を形成する他のフィラメント糸条を実質無ヨリで撚回反転しながら巻きつかせることや、この複合仮ヨリ糸に含まれる芯糸と鞘糸との糸長差において、鞘糸が芯糸よりも5〜40%長くなるように組み合わることが好ましい。複合仮ヨリ加工糸のケン縮度合いは一般に大きくなると、仮ヨリ加工糸の欠点とされている風合いに「ふかつき」が生じやすくなるので、伸縮復元率は30%以下が好ましい。
【0037】図5(A),(B),(C),(D)は、それぞれ本発明による複合仮ヨリ加工糸の代表例を示し、かつ図6(A),(B),(C),(D)は、それぞれ図5の各加工糸を製造する複合仮ヨリ加工工程を例示するものである。図5(A)の複合仮ヨリ加工糸は、上述した吸湿性ポリエステル系フィラメント糸条aと他のフィラメント糸条bとが引き揃えられ、先交絡処理されて仮ヨリ加工されたもので、糸長手方向に部分的に交絡部(イ)と開繊部(ロ)とを交互に有する糸構造になっている。
【0038】この複合仮ヨリ加工糸は、例えば図6(A)の加工工程により製造される。すなわち、共に延伸糸の吸湿性ポリエステル系フィラメント糸条aと通常のフィラメント糸条bとが、パッケージ21および22から供給ローラ23により引き出されて引き揃えられ、次いで交絡ノズル24で先交絡処理される。次いで、供給ローラ25と引取ローラ27の間の仮ヨリ加工域へ供給されて、仮ヨリ加工される。仮ヨリ加工域ではヨリ掛具27により加ネンされ、供給ローラ25とヨリ掛具27の間でヨリがヒータ26で熱セットされ、ヨリ掛具27と引取ローラ28の間では解ネンされて仮ヨリ加工される。加工された複合仮ヨリ加工糸は、引取ローラ28により引き出されて巻取チーズ29に巻き上げられる。
【0039】図5(B)の複合仮ヨリ加工糸は、延伸糸の吸湿性ポリエステル系フィラメント糸条aと不完全延伸糸の通常フィラメント糸条bとが引き揃えられ、先交絡処理されて仮ヨリ加工されたものである。芯糸側の吸湿性ポリエステル系フィラメント糸条aを鞘側の通常フィラメント糸条bが実質無ヨリで巻き付いている糸構造になっている。
【0040】この複合仮ヨリ加工糸は、例えば図6(B)の加工工程により製造される。図6(B)の工程は、図6(A)のパッケージ22に代えて、不完全延伸糸のフィラメント糸条bを巻いたパッケージ22’を使用するようにしたものであり、他の部分は図6(A)の工程と実質的に同じである。図5(C)の複合仮ヨリ加工糸は、生糸(非仮ヨリ加工)の吸湿性ポリエステル系フィラメント糸条aと仮ヨリ加工された他のフィラメント糸条bとが引き揃えられて交絡処理されたもので、芯糸側のポリエステル系フィラメント糸条aへ鞘側の仮ヨリ加工糸bが交絡した糸構造になっている。
【0041】この複合仮ヨリ加工糸は、例えば図6(C)の加工工程により製造される。すなわち、吸湿性のポリエステル系フィラメント糸条aは供給ローラ25と引取ローラ28の間の仮ヨリ加工域へは供給されず、いきなり引取ローラ28に引き取られる。他方、他のフィラメント糸条bは、供給ローラ25と引取ローラ28の間の仮ヨリ加工域で仮ヨリ加工されたのち、引取ローラ28において上記ポリエステル系フィラメント糸条aと引き揃えられ、次いで交絡ノズル31で交絡処理される。交絡処理後に、引取ローラ32に引き出されて巻取チーズ29に巻き上げられる。
【0042】図5(D)の複合仮ヨリ加工糸は、芯糸の吸湿性ポリエステル系フィラメント糸条aに鞘糸の他のフィラメント糸条bが三重ケン回被覆したもので、芯糸のポリエステル系フィラメント糸条aに鞘糸のフィラメント糸条bがスラブ状にケン回した糸構造である。この複合仮ヨリ加工糸は、例えば図6(D)の加工工程により製造される。すなわち、吸湿性ポリエステル系フィラメント糸条aは、供給ローラ25と引取ローラ28との間の仮ヨリ加工域へ供給されて仮ヨリ加工される一方、この仮ヨリ加工域の上流側(加ネン域)に、他のフィラメント糸条bが供給ローラ33から鞘糸として過剰供給され、その加ネン域で芯糸のポリエステル系フィラメント糸条aに対して糸長手方向に前後に振動しながら合糸しながら、仮ヨリ加工されるものである。
【0043】図6に示した(A),(B),(C),(D)の工程のうち、吸湿ポリエステル系フィラメント糸に直接、熱セット工程を通過させない(C)の工程が吸湿ポリエステル系フィラメント糸の吸湿性や摩擦帯電圧性にダメージを与えないので最も好ましい製造方法である。これは吸湿ポリエステル系フィラメント糸が熱セットや捩じり変形に弱いので、物理変形をなるべく与えない方法が好ましいのである。特に、熱セット温度では110〜200℃、仮ヨリ数では150デニールでは1000〜2500T/m、75デニールでは1500〜3000T/m、50デニールでは2000〜3500T/mが好ましい範囲である。
【0044】上述のようにして得た本発明のポリエステル系複合仮ヨリ加工糸は織物または編物に加工されるが、複合仮ヨリ加工糸が吸放湿パラメーターΔMR1%以上のポリエステル系フィラメント糸条から構成されているため、そのポリエステル系編織物のJIS L−1094 B法による摩擦帯電圧を3kv未満にすることができる。好ましくは1kv未満、さらに好ましくは実質的には0kvであるのがよい。また、編織物としての吸放湿パラメーターΔMRも1%以上にすることができる。
【0045】この摩擦帯電圧は、前述した吸放湿パラメーターΔMRの場合と同様に、洗濯5回後の値が3kv未満を維持する耐久性を有することが好ましく、さらに好ましくは1kv未満である。ここで、洗濯1回とは、前述したポリエステル系フィラメント糸条において述べたものと同じで意味である。このような耐久性は、前述した共重合ポリエステル(D)、ポリエーテルエステルアミド(E)またはポリエーテルエステルアミドと熱可塑性樹脂(F)との混合物を5重量%以上含む複合繊維あるいはブレンド繊維を使用すれることにより可能になる。
【0046】本発明におけるポリエステル系編織物が、織物である場合の組織としては、平組織、綾組織、朱子組織およびそれらの変化組織など、通常使用されている組織であれば、特に限定されることなく使用することができる。編織物を染色加工するときの構成は、リラックス精錬−中間セット−染色−機能性付与加工−仕上げセットの通常の加工工程で何等問題はなく、他に、生機セットを行ったり、アルカリ処理を行っても問題はない。
【0047】機能性付与加工としては、帯電防止、消臭、撥水、防汚および防カビ加工など、布帛の風合をソフトに保ち本発明の目的を損なわない範囲であれば、何等限定されるものではない。また、吸湿加工の機能性付与を行うことは、布帛の吸湿率を向上させ、着用時の快適性が向上するため、より好ましい。上述した本発明によるポリエテル系編織物は、薄地用途の布帛として好適であり、特にボトム裏、袖裏、ポケット裏、上衣裏、学衣裏などの裏地として好ましく使用することができる。
【0048】
【実施例】以下に説明する実施例において使用する各評価特性は、次の測定方法によって求めたものである。
〔吸放湿パラメーターΔMR〕原糸または布帛1〜3gを用い、絶乾時の重量WO と20℃×65%RHおよび30℃×90%RHの雰囲気下での市販の恒温恒湿器中に24時間放置後の重量W1 ,W2 との重量変化から、次式から20℃×65%RHでの吸湿率MR1と30℃×90%RHでの吸湿率MR2 とを計算する。
【0049】
MR1 (%)=[(W1 −WO )/WO ]×100MR2 (%)=[(W2 −WO )/WO ]×100次いで、上記吸湿率MR1 ,MR2 から、次式で吸放湿パラメーターΔMRを計算する。
ΔMR(%)=MR2 −MR1〔強度〕市販のテンシロン引張り試験機を用いて、試長20cm、引張り速度10cm/分の条件で測定した応力−歪み曲線から値を求めた。
〔着用時の快適性、まとわりつき〕それぞれの布帛を裏地に用いてスカートに縫製し、30℃×65%の恒温恒湿室内で時速8kmの軽い運動を15分行った後の、被験者の官能試験により快適性を評価した。また、スカートの脚部へのまとわりつきの有無を調べた。
【0050】快適性評価の結果は、不快:×、やや快適:△、快適:○、非常に快適:◎で表示した。
実施例1ジメチルテレフタル酸194部、エチレングリコール135部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル26.6部、トリメリット酸トリメチル7.5部およびテトラブチルチタネート0.1部を加え、エステル交換反応を行った後、分子量4000のポリエチレングリコール328部を加え、重合を行い共重合ポリエステルを製造した。
【0051】得られた共重合ポリエステルを芯成分とし、ポリエチレンテレフタレートを鞘成分として、共重合ポリエステルが繊維全重量の20重量%となる同芯円状芯鞘型複合繊維の50デニール、18フィラメントのポリエステル系フィラメント糸条および75デニール、36フィラメントのポリエステル系フィラメント糸条をそれぞれ製糸した。これらポリエステル系フィラメント糸条の吸放湿パラメーターΔMRは4.8%であった。
【0052】上記50デニール、18フィラメントのポリエステル系フィラメント糸条と30デニール、72フィラメントの通常のポリエステルフィラメント糸条とを引き揃えて、仮ヨリ数2500T/m,セット温度170℃、オーバフィード率+2%でいったん仮ヨリ加工し、この仮ヨリ加工糸に、空気交絡処理圧力4kg/cm2 、処理速度300m/min、処理オーバフィード率+2%にて空気交絡加工を行い、伸縮復元率15%の後交絡・複合仮ヨリ加工糸を製造した。
【0053】上記80(50/30)デニール、90(18/72)フィラメントの複合仮ヨリ加工糸を経糸に、上記75デニール、36フィラメントのポリエステル系フィラメント糸条を緯糸に用いて、仕上経密度が92本/インチ、緯密度が82本/インチの薄地平織物を製造した。なお、織物に用いた経糸の複合仮ヨリ加工糸の強度は4.5g/d、緯糸の強度は4.3g/dであった。また、得られた織物の引裂き強度は、経方向1000g、緯方向1800gであり、縫目ずれは縦方向1.1mm、緯方向1.1mm、吸放湿パラメーターΔMRは3.5%、5回洗濯後の吸放湿パラメーターΔMRは3.3%、摩擦帯電圧は0.1kvであり、5回洗濯後の摩擦帯電圧は0.3kvであった。
【0054】快適性試験では非常に快適(◎)であり、スカートの脚部へのまとわりつきは見られなかった。さらに、洗濯5回後の快適性試験も非常に快適(◎)であり、スカートの脚部へのまとわりつきは見られなかった。評価結果を表1に示す。
【0055】
【表1】


【0056】実施例2〜3実施例1において、吸湿性ポリマー(共重合ポリエステル)を繊維全重量に対して10重量%(実施例2)、7重量%(実施例3)の複合比率に変えた以外は、実施例1と同様にした複合繊維のポリエステル系フィラメント糸条を製糸した。前者のポリエステル系フィラメント糸条の吸放湿パラメーターΔMRは3.5%、後者は2.0%であった。
【0057】これらポリエステル系フィラメント糸条を実施例1と同様に複合仮ヨリ加工糸にして、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を併せて表1に示す。
比較例1実施例1において、吸湿性ポリマー(共重合ポリエステル)を繊維全重量に対して3重量%の複合比率に変えた以外は、実施例1と同様にした複合繊維のポリエステル系フィラメント糸条(吸放湿パラメーターΔMRは0.8%)を製糸し、これを実施例1と同様の複合仮ヨリ加工糸にして、実施例1と同様の評価を行った。
【0058】評価結果を表1に示す。
比較例2通常のポリエステル100%のマルチフィラメント糸条を使用し、このマルチフィラメント糸条(吸放湿パラメーターΔMRは0%)だけで実施例1と同じ組織の織物に製織し、実施例1と同様の評価を行った。
【0059】評価結果を表1に示す。
比較例3通常のポリエステル100%のマルチフィラメント糸条(吸放湿パラメーターΔMRは0%)を使用し、このマルチフィラメント糸条だけで実施例1と同様にして得られた織物に帯電防止加工し、この布帛を用いて実施例1と同様の評価を行った。
【0060】評価結果を表1に示す。
実施例4実施例1で製造した50デニール、18フィラメントのポリエステル系フィラメント糸条(吸放湿パラメーターΔMRが4.8%)と30デニール、72フィラメントの通常ポリエステルフィラメント糸条(吸放湿パラメーターΔMRが0%)とを引き揃えて、空気交絡処理圧力4kg/cm2 、処理速度300m/min、処理オーバフィード率+2%で空気交絡加工を行った後、仮ヨリ数2500T/m,セット温度170℃,オーバフィード率+2%で仮ヨリ加工を施して伸縮復元率16%の複合仮ヨリ加工糸を製造した。
【0061】上記80(50/30)デニール、90(18/72)フィラメントの複合仮ヨリ加工糸を経糸に、実施例1で製造した75デニール36フィラメントのポリエステル系フィラメント糸条(吸放湿パラメーターΔMRが5.0%)を緯糸に用いて、仕上経密度が93本/インチ、緯密度が83本/インチのスパンライクな外観と風合いを有する薄地平織物を製造した。
【0062】織物に用いた上記経糸の複合仮ヨリ加工糸の強度は4.6g/d、上記緯糸の強度は4.5g/dであった。得られた織物の引裂き強度は、経方向1000g、緯方向1700gであり、縫目ずれは縦方向1.1mm、緯方向1.1mmであり、吸放湿パラメーターΔMRは3.6%、5回洗濯後の吸放湿パラメーターΔMRは3.3%であり、摩擦帯電圧は0.1kv、5回洗濯後の摩擦帯電圧は0.3kvであった。
【0063】快適性試験では非常に快適(◎)であり、スカートの脚部へのまとわりつきは見られなかった。さらに、洗濯5回後の快適性試験も非常に快適(◎)であり、スカートの脚部へのまとわりつきは見られなかった。
実施例5実施例1で製造した50デニール、18フィラメントのポリエステル系フィラメント糸条(吸放湿パラメーターΔMRが4.8%)と、不完全延伸糸の50デニール、48フィラメントの通常のポリエステルフィラメント糸条(吸放湿パラメーターΔMRが0%)とを引き揃えて、空気交絡処理圧力4kg/cm2 、処理速度300m/min、処理オーバフィード率+2%にて空気交絡加工を行った後、仮ヨリ数2500T/m,セット温度170℃,オーバフィード率−1%で仮ヨリ加工を施して、上記ポリエステル系フィラメント糸条を芯糸として不完全延伸糸のポリエステルフィラメント糸条の鞘糸が実質無ヨリで巻き付いた伸縮復元率が18%の複合仮ヨリ加工糸を製造した。
【0064】上記100(50/50)デニール、66(18/48)フィラメントの複合仮ヨリ加工糸を経糸に、実施例1で製造した75デニール36フィラメントのポリエステル系フィラメント糸条を緯糸に用いて、仕上経密度が83本/インチ、緯密度が80本/インチのスパンライクな外観とソ毛調風合いを有する薄地平織物を製造した。
【0065】織物に用いた上記経糸の複合仮ヨリ加工糸の強度は4.5g/d、上記緯糸の強度は4.5g/dであった。また、得られた織物の引裂き強度は、経方向1500g、緯方向1750gであり、縫目ずれは縦方向1.1mm、緯方向1.1mmであり、吸放湿パラメーターΔMRは3.6%、5回洗濯後の吸放湿パラメーターΔMRは3.3%であり、摩擦帯電圧は0.1kv、5回洗濯後の摩擦帯電圧は0.3kvであった。
【0066】快適性試験では非常に快適(◎)であり、スカートの脚部へのまとわりつきは見られなかった。さらに、洗濯5回後の快適性試験も非常に快適(◎)であり、スカートの脚部へのまとわりつきは見られなかった。
実施例6実施例1で製造した50デニール、18フィラメントのポリエステル系フィラメント糸条(吸放湿パラメーターΔMRが4.8%)を仮ヨリ加工するに対し、30デニール、24フィラメントの通常のポリエステルフィラメント糸条(吸放湿パラメーターΔMRが0%)を35%過剰に上記ポリエステル系フィラメント糸条の走行方向に前後に振動させながら加ネン域に供給し、上記ポリエステル系フィラメント糸条の周囲に巻き付かせるように仮ヨリ加工した。得られた三重ケン回複合仮ヨリ加工糸は伸縮復元率が9%のスラブ調の複合仮ヨリ加工糸であった。
【0067】上記80(50/30)デニール32(18/24)フィラメントの複合仮ヨリ加工糸を経糸に、実施例1で製造した75デニール、36フィラメントのポリエステル系フィラメント糸条を緯糸に用いて、仕上経密度が92本/インチ、緯密度が81本/インチのスラブ調の外観と麻ライクな風合いを有する薄地平織物を製造した。
【0068】織物に用いた上記経糸の強度は5.0g/d、上記緯糸の強度は4.6g/dであった。また、得られた織物の引裂き強度は、経方向1900g、緯方向1850gであり、縫目ずれは縦方向1.1mm、緯方向1.1mmであり、吸放湿パラメーターΔMRは3.6%、5回洗濯後の吸放湿パラメーターΔMRは3.3%であり、摩擦帯電圧は0.1kv、5回洗濯後の摩擦帯電圧は0.3kvであった。
【0069】快適性試験では非常に快適(◎)であり、スカートの脚部へのまとわりつきは見られなかった。さらに、洗濯5回後の快適性試験も非常に快適(◎)であり、スカートの脚部へのまとわりつきは見られなかった。
実施例7ε−カプロラクタム340部、テレフタル酸18部、数平均分子量が1000のポリエチレングリコール100部を重合反応容器に仕込み、重合反応を行うことにより、ナイロン6成分の割合が45重量%で有るポリエーテルエステルアミドブロック共重合体を製造した。
【0070】得られたポリエーテルエステルアミドブロック共重合体70重量部と5−ナトリウム30重量部をチップ状態でブレンドして芯成分にし、ポリエチレンテレフタレートを鞘成分にし、芯成分を繊維全体の30重量%にした同芯円芯鞘複合繊維からなる50デニール、18フィラメントおよび75デニール、36フィラメントのポリエステル系フィラメント糸条をそれぞれ製糸した。これらポリエステル系フィラメント糸条の吸放湿パラメーターΔMRは5.5%であった。
【0071】上記50デニール、18フィラメントのポリエステル系フィラメント糸条と、通常の30デニール、72フィラメントのポリエステルフィラメント糸条とを引き揃えて、仮ヨリ数2500T/m,セット温度170℃,オーバフィード率+2%で仮ヨリ加工を行い、その後、空気交絡処理圧力4kg/cm2 、処理速度300m/min、処理オーバフィード率+2%にて空気交絡加工を行って複合仮ヨリ加工糸を製造した。
【0072】上記80(50/30)デニール、90(18/72)フィラメントの複合仮ヨリ加工糸を経糸に、上記75デニール、36フィラメントのポリエステル系フィラメント糸条を緯糸に用いて、仕上経密度が89本/インチ、緯密度が81本/インチの薄地平織物を製造した。なお、織物に用いた経糸の混繊加工糸の強度は4.5g/d、緯糸の強度は4.0g/dであった。また、得られた織物の引裂き強度は、経方向950g、緯方向1150gであり、縫目ずれは縦方向1.2mm、緯方向1.2mm、吸放湿パラメーターΔMRは2.5%、5回洗濯後の吸放湿パラメーターΔMRは2.3%、摩擦帯電圧は0.2kvであり、5回洗濯後の摩擦帯電圧は0.3kvであった。
【0073】快適性試験では非常に快適(◎)であり、スカートの脚部へのまとわりつきは見られなかった。さらに、洗濯5回後の快適性試験も非常に快適(◎)であり、スカートの脚部へのまとわりつきは見られなかった。
【0074】
【発明の効果】上述したように、本発明によるポリエステル系複合仮ヨリ加工糸および編織物によれば、ポリエステル繊維の優れた形態安定性や強度保持性を具備しながら、高い吸湿率を有することによりムレやベタツキを発生せず、かつ摩擦帯電圧が低いことにより着用時の肌へのまとわりつきも防ぐことができ、優れた着用快適性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に使用される芯鞘型複合繊維をモデル的に示す断面図である。
【図2】本発明に使用される芯鞘型中空複合繊維をモデル的に示す断面図である。
【図3】本発明に使用される海島型複合繊維をモデル的に示す断面図である。
【図4】本発明に使用される張り合わせ型複合繊維をモデル的に示す断面図である。
【図5】(A)〜(D)は、それぞれ本発明のポリエステル系複合仮ヨリ加工糸を例示する側面図である。
【図6】(A)〜(D)は、それぞれ本発明のポリエステル系複合仮ヨリ加工糸の製造方法を例示する工程概略図である。
【符号の説明】
1 芯部
2 鞘部
1a 島部
2a 海部
1b,2b 張り合わせ部
3 中空部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 吸放湿パラメーターΔMRが1%以上のポリエステル系フィラメント糸条と他のフィラメント糸条とが複合して仮ヨリ加工されたポリエステル系複合仮ヨリ加工糸。
【請求項2】 吸放湿パラメーターΔMRが1%以上のポリエステル系フィラメント糸条と他のフィラメント糸条とが複合して仮ヨリ加工されたポリエステル系複合仮ヨリ加工糸が使用され、かつJIS L−1094 B法による摩擦帯電圧が3kv未満であるポリエステル系編織物。
【請求項3】 編織物としての吸放湿パラメーターΔMRが1%以上である請求項2に記載のポリエステル系編織物。
【請求項4】 前記ポリエステル系フィラメント糸条が、親水性化合物を共重合すると共に、極性基含有化合物および架橋剤のうち少なくともいずれか一方を含有する共重合ポリエステルを5重量%以上含む繊維からなる請求項2または3に記載のポリエステル系編織物。
【請求項5】 前記ポリエステル系フィラメント糸条が、ポリエーテルエステルアミドまたはポリエーテルエステルアミドと他の熱可塑性樹脂との混合物を5重量%以上含む繊維からなる請求項2または3に記載のポリエステル系編織物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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