説明

ポリエチレン樹脂からなるフィルム

【課題】本発明は、長径0.1mm以上のフィッシュアイが少なく、さらにはフィルムのコシが強く、クリーン性を兼ね備えた、光学部材などのマスキングフィルム用途に好適に用いられるポリエチレン樹脂からなるフィルムを提供することを目的とするものである。
【解決手段】高密度ポリエチレン樹脂(A)40〜70重量%と、高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B)30〜60重量%からなり、高密度ポリエチレン樹脂(A)のGPC法で測定したMw/Mn(Wa)と高圧法低密度ポリエチレン(B)のGPC法で測定したMw/Mn(Wb)が下記式(1)を満たすポリエチレン樹脂組成物から製造された、長径0.1mm以上のフィッシュアイが0〜200個/5mであることを特徴とする、ポリエチレン樹脂からなるフィルム。
2.3 ≦ Wb/Wa ≦ 4.7 (1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長径0.1mm以上のフィッシュアイが少なく、さらにはフィルムのコシが強く、クリーン性を兼ね備えた、光学部材などのマスキングフィルム用途に好適に用いられるポリエチレン樹脂からなるフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン樹脂からなるフィルムの代表的な用途として、光学部材などのマスキングフィルムが知られている。マスキングフィルムは、各種工業生産品あるいはその部品を次の工程まで使用する間に表面を保護するために用いられるポリエチレン等のフィルムである。近年では、耐熱性の向上や、たるみによるシワの防止からフィルム自体にコシがあり、粉が少なく、フィッシュアイ(以下、FEと略す)が少ないといったクリーンなマスキングフィルムが要求されてきている。
ポリエチレン樹脂からなるフィルムの密度が高い程、耐熱性やコシが向上することはよく知られているが、高密度ポリエチレンフィルムを用いた場合、熱による変形や収縮、フィルムのコシは改善されるものの、低分子量成分や添加剤のブリードアウトが原因と考えられる粉の発生や、FEの増加等の問題が生じ、実用上要求される上記の重要な特性を同時に充分満足させる樹脂は得られていなかった。
ここでいうFEとは、フィルム内に存在する小球状の異物、欠陥構造を意味する。FEの原因は様々ではあるが、ベースの樹脂との溶融混合が不十分なために発生するものや、ベース樹脂と粘度(分子量)の異なる成分、ゲル成分、酸化劣化樹脂、異樹脂、包材の破片(紙、糸、繊維等)、塵埃等が原料樹脂製造工程、袋詰め・輸送工程、フィルム成形工程の何れかで混入することによって発生する。ポリエチレン樹脂からなるフィルムの中でも特にマスキングフィルム用途等においては、そのFE数が、汎用フィルムに比べて極めて少ないことが要求される。例えばフォトレジスト向けマスキングフィルムや、液晶部材のマスキングフィルムなどのように、FEが基材に傷を付けたり、異物検査工程内で基材の異物として誤認されるといった問題を引き起こすことが少なくない。
FEを低減させる手段として、例えば特許文献1が挙げられる。ポリエチレンの重合後の造粒工程において、押出し機出口へ微細なスクリーンパックを取り付けるとともに熱交換器の洗浄を行う等の操作により、マスキングフィルム用のポリエチレンを汎用フィルムや成型用等と併産する方法である。しかし、これらの方法は、重合後のポリマー中に存在するFEの形成要因を後処理工程において取り除く方法であり、重合段階でゲル生成量が多いとフィルターの詰まりや、微小FEの発生原因となる可能性があった。微小FEについても低減を求められる用途が増加しつつある状況下、微細なスクリーンパック等の後処理工程が不要な、又は、より効果的に処理が行えるポリエチレン樹脂からなるフィルムの確立が強く望まれていた。また、フィルム自体のコシがあり、粉が少なく、FEが少ないといったクリーンなマスキングフィルムの要求に対し、特許文献2には、高密度ポリエチレンと高圧法低密度ポリエチレンとの混合物において、添加剤が実質的に含まれていないため、粉が少なく、溶融粘度のコントロールによってFEが少ないといった特徴が発現されているものの、近年のマスキングフィルムに要求されるコシや、FEの要求レベルを同時にクリアしていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−99875
【特許文献2】特開2007−269839
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記のような状況を鑑みてなされたものであって、長径0.1mm以上のFEが少なく、さらにはフィルムのコシが強く、クリーン性を兼ね備えた、光学部材などのマスキングフィルム用途に好適に用いられるポリエチレン樹脂からなるフィルムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、長径0.1mm以上のFEが少なく、さらにはフィルムのコシが強く、クリーン性を兼ね備えた、光学部材などのマスキングフィルム用途に好適に用いられるポリエチレン樹脂からなるフィルムを開発するために鋭意研究を重ねた結果、特定のポリエチレン樹脂を用いることで、上記の目的に適合することを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
[1]
高密度ポリエチレン樹脂(A)40〜70重量%と、高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B)30〜60重量%からなり、高密度ポリエチレン樹脂(A)のGPC法で測定したMw/Mn(Wa)と高圧法低密度ポリエチレン(B)のGPC法で測定したMw/Mn(Wb)が下記式(1)を満たすポリエチレン樹脂組成物から製造された、長径0.1mm以上のフィッシュアイが0〜200個/5mであることを特徴とする、ポリエチレン樹脂からなるフィルム、
2.3 ≦ Wb/Wa ≦ 4.7 (1)
[2]
高密度ポリエチレン樹脂(A)が、少なくとも担体物質、有機アルミニウム化合物、活性水素を有するボレート化合物、シクロペンタジエン化合物および、周期律表第IV族の遷移金属化合物から調製されたメタロセン担持触媒[A]と、液体助触媒成分[B]を用いて重合することにより製造されることを特徴とする、上記[1]記載のポリエチレン樹脂からなるフィルム、
[3]
高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B)が、下記(B−イ)〜(B−ハ)の特性を満たすことを特徴とする、上記[1]又は[2]記載のポリエチレン樹脂からなるフィルム、
(B−イ)JIS K7112 における密度が910〜930kg/mである。
(B−ロ)JIS K7210 コードD におけるメルトフローレートが1〜20g/10分である。
(B−ハ)GPC法で測定したMw/Mn(Wb)が7〜22である。
[4]
高密度ポリエチレン樹脂(A)および高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B)からなるポリエチレン樹脂組成物(C)が、下記(C−イ)〜(C−ハ)の特性を満たすことを特徴とする、上記[1]〜[3]のいずれかに記載のポリエチレン樹脂からなるフィルム、
(C−イ)JIS K7112 における密度が930kg/m以上である。
(C−ロ)JIS K7210 コードD におけるメルトフローレートが1〜48g/10分である。
(C−ハ)GPC法で測定したMw/Mn(Wc)が3.5〜16である。
[5]
高密度ポリエチレン樹脂(A)と高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B)を、押出機の比エネルギーが0.05〜0.25kW・Hr/kgの範囲で溶融混練を行うことを特徴とする、上記[1]〜[4]のいずれかに記載のポリエチレン樹脂からなるフィルム、
[6]
高密度ポリエチレン樹脂(A)40〜70重量%と、高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B)30〜60重量%からなり、高密度ポリエチレン樹脂(A)のGPC法で測定したMw/Mn(Wa)と高圧法低密度ポリエチレン(B)のGPC法で測定したMw/Mn(Wb)が下記式(1)を満たす混合物を、押出機の比エネルギーが0.05〜0.25kW・Hr/kgの範囲で溶融混練してポリエチレン樹脂組成物を製造し、当該ポリエチレン樹脂組成物を製膜してフィルムを得ることを包含する、ポリエチレン樹脂からなるフィルムの製造方法であって、製膜されたフィルムの長径0.1mm以上のフィッシュアイが0〜200個/5mであることを特徴とする、ポリエチレン樹脂からなるフィルムの製造方法、
である。
2.3 ≦ Wb/Wa ≦ 4.7 (1)
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、長径0.1mm以上のフィッシュアイが少なく、さらにはフィルムのコシが強く、クリーン性を兼ね備えた、光学部材などのマスキングフィルム用途に好適に用いられるポリエチレン樹脂からなるフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】高密度ポリエチレン樹脂(A−1)と、高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B−1)、(B−2)および、(B−3)の分子量分布を測定したGPCチャートである。
【図2】0.1mm以上としてカウントされたフィッシュアイの一例を図2に示す。図2は光学顕微鏡でのフィッシュアイ平面観察写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明のポリエチレン樹脂からなるフィルムは、高密度ポリエチレン樹脂(A)40〜70重量%と、高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B)30〜60重量%からなり、高密度ポリエチレン樹脂(A)のGPC法で測定したMw/Mn(Wa)と高圧法低密度ポリエチレン(B)のGPC法で測定したMw/Mn(Wb)が下記式(1)を満たすポリエチレン樹脂組成物から製造された、長径0.1mm以上のフィッシュアイが0〜200個/5mであることを特徴とする、ポリエチレン樹脂からなるフィルムである。
2.3 ≦ Wb/Wa ≦ 4.7 (1)
本発明のポリエチレン樹脂からなるフィルムにおいて、高密度ポリエチレン樹脂(A)と、高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B)の組成は高密度ポリエチレン樹脂(A)を40〜70重量%、好ましくは40〜65重量%、より好ましくは40〜60重量%、高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B)を30〜60重量%、好ましくは35〜60重量%、より好ましくは40〜60重量%である。上記組成範囲外にあると、粉やFEの発生、成形加工性の低下があり好ましくない。上記式(1)で示されるWb/Waについて詳述する。前述したGPC測定により求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)において、高密度ポリエチレン樹脂(A)の分子量分布をWa、高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B)の分子量分布をWbとしたときの分子量分布比をWb/Waと定義する。正規分布で見たときに、WaおよびWbが大きいことは高分子量成分が多いことを表す。Wb/Waが大きいことは、高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B)の高分子量成分が多いことであり、そのような分子量分布の差があると、高密度ポリエチレン樹脂(A)が持つ高分子量のFE成分を分散する効果をもたらす。一方でWb/Waが大きすぎると、高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B)の高分子量成分が多くなるため、高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B)自体がFE成分となってしまう。また、Wb/Waが小さいことは、高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B)の高分子量成分が少ないことであり、高密度ポリエチレン樹脂(A)が持つ高分子量のFE成分を充分に分散しきれない。
この理論を説明するため、表1に高密度ポリエチレン樹脂(A−1)のMw/Mn(Wa)と、高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B−1)、(B−2)および、(B−3)のMw/Mn(Wb)を示す。さらに、図1に高密度ポリエチレン樹脂(A−1)と、高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B−1)、(B−2)および、(B−3)の分子量分布を測定したGPCチャートを示す。
【0009】
高密度ポリエチレン樹脂(A−1)および高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B−1)からなるポリエチレン樹脂組成物において、適度な高分子量成分を持つ高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B−1)によって高密度ポリエチレン樹脂(A−1)が持つ高分子量のFE成分を分散することができると考えられる。一方で、高密度ポリエチレン樹脂(A−1)および高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B−2)からなるポリエチレン樹脂組成物においては、高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B−2)の高分子量成分が多くなるため、高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B−2)自体がFE成分となってしまう。また、高密度ポリエチレン樹脂(A−1)および高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B−3)からなるポリエチレン樹脂組成物においては、高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B−3)の高分子量成分が少なくなるため、高密度ポリエチレン樹脂(A−1)が持つ高分子量のFE成分を充分に分散しきれないと考えられる。
上記の通り、Wb/Waで規定する範囲は、FEの低減効果に大きく寄与しており、Wb/Waは2.3〜4.7である。好ましくは2.4〜4.4であり、より好ましくは2.5〜4.1である。Wb/Waが2.3未満であると、高密度ポリエチレン樹脂(A)が持つFEの分散不良により長径0.1mm以上のFEが分散されず、4.7を超えると高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B)のFEが多くなるため好ましくない。
高密度ポリエチレン樹脂(A)のJIS K7210 コードD におけるメルトフローレート(以下、MFRと略す)は1〜70g/10分である。好ましくは8〜50g/10分であり、より好ましくは12〜40g/10分である。MFRが1g/10分未満であるとTダイ成形時におけるドローダウン性の低下や、FEが増加し、70g/10分を超えるとTダイ成形時におけるネックインの増大や、高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B)との分散不良によるフィルムの表面荒れが発生するため好ましくない。高密度ポリエチレン樹脂(A)のJIS K7112 における密度は940kg/m以上である。好ましくは950kg/m以上であり、より好ましくは960kg/m以上である。密度が940未満であるとフィルムの耐熱性、コシが低下するため好ましくない。
【0010】
本発明のポリエチレン樹脂からなるフィルムにおいて、メタロセン担持触媒より製造された高密度ポリエチレン樹脂(A)と、高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B)からなるフィルムは、長径0.1mm以上のFEが0〜200個/5mであり、好ましくは150個/5m以下であり、より好ましくは100個/5m以下である。また、長径0.2mm以上のFEは、マスキングフィルム用途において、フィルムの平滑性の低下や、粘着層の粘着性が低下するといった影響を与えるため、可能な限り存在しないのが好ましく、具体的には100個/5m以下、好ましくは50個/5m以下であり、より好ましくは30個/5m以下である。ここでいうFEとは、フィルム透過光から観察される光学的不均一領域を意味するものであり、マスキングフィルム用途においては、その保護する基材により要求されるFEのレベルは異なるが、これらFEが上記範囲外にあると、貼合の際に被覆対象物の表面に傷つきや凹みを多く形成してしまうため好ましくない。
【0011】
本発明のメタロセン担持触媒より製造された高密度ポリエチレン樹脂(A)は、メタロセン担持触媒[A]を予め水素と接触させた後、液体助触媒成分[B]と共に重合反応器へ導入し、エチレン単独重合もしくは、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとからなる共重合体によって得ることができる。重合法は公知の各種方法を使用でき、例えば、不活性ガス中での流動床式気相重合或いは拡販式気相重合、不活性溶媒中でのスラリー重合、モノマーを溶媒とするバルク重合などがあげられるが、フィルムからの粉の発生を抑制するには不活性溶媒中でのスラリー重合が好ましく、より好ましくは重合溶媒を精製しながら行なうスラリー重合である。スラリー重合を採用する場合には、重合温度は0〜150℃、好ましくは50〜110℃、より好ましくは60〜100℃の範囲である。重合圧力は0.1〜10MPa、好ましくは0.2〜5MPa、より好ましくは0.5〜3MPaである。また、高密度ポリエチレン樹脂(A)のMFRは、重合の際の水素とエチレン+水素のモル比が小さいとMFRは下がり、水素とエチレン+水素のモル比が大きいとMFRは上がる傾向にある。例えば重合の際の水素とエチレン+水素のモル比が0.001〜0.01%の範囲に調製することで本発明の高密度ポリエチレン樹脂(A)を得ることができる。また、本発明を満たす範囲にあれば高密度ポリエチレン樹脂(A)は、高密度ポリエチレン樹脂(A)同士を2種類以上、任意の比率でドライブレンド、あるいはメルトブレンドしたものであってもよい。また、本発明のメタロセン担持触媒より製造された高密度ポリエチレン樹脂(A)は、エチレン単独重合体もしくは、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとからなる共重合体であり、エチレンと共重合させる炭素数3〜20のα−オレフィンとしてはプロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1、ドデセン−1、テトラデセン−1、ヘキサデセン−1、オクタデセン−1、エイコセン−1、3−メチル−ブテン−1、4−メチル−ペンテン−1、6−メチル−ヘプテン−1などが挙げられる。
【0012】
本発明の高密度ポリエチレン樹脂(A)は、少なくとも担体物質、有機アルミニウム化合物、活性水素を有するボレート化合物、シクロペンタジエン化合物および、周期律表第IV族の遷移金属化合物から調製されたメタロセン担持触媒(a)と、液体助触媒成分(b)を用いて重合することが好ましい。
次に、本発明の高密度ポリエチレン樹脂(A)の製造方法について説明する。また、高密度ポリエチレン樹脂(A)を製造するメタロセン担持触媒については、以下に記載するメタロセン担持触媒[A]および液体助触媒成分[B]からなるオレフィン重合用触媒を使用することを特徴とする。該重合法において用いられるメタロセン担持触媒とは、(ア)担体物質、(イ)有機アルミニウム、(ウ)環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物、及び(エ)該環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物と反応して触媒活性を発現する錯体を形成可能な活性化剤から調製されたメタロセン担持触媒を用いるのが好ましい。特に(ウ)の環状η結合性アニオン配位子を有する遷移金属化合物中の遷移金属はチタニウムが好ましい。
【0013】
次に、本発明におけるメタロセン担持触媒[A]の調製方法について説明する。担体物質(ア)としては、有機担体、無機担体のいずれでもよい。有機担体としては、好ましくは(1)炭素数2〜20のα−オレフィンの重合体例えばエチレン樹脂や、プロピレン樹脂、ブテン−1樹脂、エチレン−プロピレン共重合体樹脂、エチレン−ヘキセン−1共重合体樹脂、プロピレン−ブテン−1共重合体樹脂、エチレン−ヘキセン−1共重合体等、(2)芳香族不飽和炭化水素共重合体、例えばスチレン樹脂、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体樹脂等、および(3)極性基含有重合体樹脂、例えばアクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、アクリロニトリル樹脂、塩化ビニル樹脂、アミド樹脂、カーボネート樹脂等である。無機担体としては(4)無機酸化物例えば、SiO2、Al、MgO,TiO、B、CaO、ZnO、BaO、ThO,SiO−MgO、SiO−Al、SiO−MgO、SiO−Vなど、(5)無機ハロゲン化合物、例えばMgCl、AlCl,MnCl等、(6)無機の炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、例えば、NaCO,KCO、CaCO、MgCO、Al(SO、BaSO、KNO、Mg(NO等、(7)水酸化物、例えばMg(OH)、Al(OH)、Ca(OH)等が例示される。最も好ましい担体はSiO2である。担体の粒子径は任意であるが、一般的には1μm〜3000μm、粒子の分散性の見地から、粒子形分布は好ましくは10〜1000μmの範囲内である。上記担体物質は必要に応じて(イ)有機アルミニウム化合物で処理される。好ましい有機アルミニウム化合物としては、一般式(−Al(R)O−)nで示される直鎖状、あるいは環状重合体(Rは炭素数1〜10の炭化水素基であり、一部ハロゲン原子および/またはRO基で置換されたものも含む。nは重合度であり、5以上、好ましくは10以上である。)等が挙げられ、具体例としてRがメチル基、エチル基、イソブチルエチル基である、メチルアルモキサン、エチルアルモキサン、イソブチルエチルアルモキサン等があげられる。
【0014】
更にその他の有機アルミニウム化合物としては、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルハロゲノアルミニウム、セスキアルキルハロゲノアルミニウム、アルメニルアルミニウム、ジアルキルハイドロアルミニウム、セスキアルキルハイドロアルミニウムなどがあげられる。
その他の有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライドなどのジアルキルハロゲノアルミニウム、セスキメチルアルミニウムクロライド、セスキエチルアルミニウムクロライドなどのセスキアルキルハロゲノアルミニウム、エチルアルミニウムジクロライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、セスキエチルアルミニウムハイドライドなどをあげることができる。これらの中で最も好ましくはトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドである。
【0015】
担持触媒は例えば下記式(2)で示される(ウ)環状η結合性アニオン配位子を有するチタン化合物を含む。
【化1】


式中Mは1つ以上の配位子Lとη結合をしている酸化数+2、+3、+4の長周期型周期律表第4族の遷移金属であり、特に遷移金属はチタニウムが好ましい。又Lは環状η結合性アニオン配位子であり、各々独立にシクロペンタジエニル基、インデニル基、テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基、テトラヒドロフルオレニル基、またはオクタヒドロフルオレニル基であり、これらの基は20個までの非水素原子を含む炭化水素基、ハロゲン、ハロゲン置換炭化水素基、アミノヒドロカルビ基、ヒドロカルビオルオキシ基、ジヒドロカルビルアミノ基、ジヒドロカルビルフォスフィノ基、シリル基、アミノシリル基、ヒドロカルビルオキシシリル基およびハロシリル基から各々独立に選ばれる1〜8の置換基を任意に有していてもよく、さらには2つのLが20個までの非水素原子を含むヒドロカルバジイル、ハロヒドロカルバジイル、ヒドロカルビレンオキシ、ヒドロカルビレンアミノ、ジラジイル、ハロシラジイル、アミノシランなどの2価の置換基により結合されていてもよい。Xは各々独立に、60までの非水素原子を有する、1価のアニオン性σ結合型配位子、Mと2価で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子、またはMおよびLに各々l個ずつの価数で結合する2価のアニオンσ結合型配位子である。X'は各々独立に炭素数4乃至40からなるフォスフィン、エーテル、アミン、オレフィン、および/又は共役ジエンから選ばれる中性ルイス塩基配位性化合物である。又、lは1または2の整数である。pは0、1又は2の整数であり、Xが1価のアニオン性σ結合型配位子又はMおよびLに各々1個ずつの価数で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子であるときpはMの形式酸化数よりもl以上少なく、またはXがMと2価で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子であるときpはMの形式酸化数よりもl+1以上少ない。又qは0、1または2である。遷移金属化合物としては上記式(2)でl=1の場合が好ましい。
【0016】
例えば、遷移金属化合物の好適な例は、下記式(3)で表される。
【化2】


式中Mは形式酸化数+2、+3又は+4のチタニウム、ジルコニウム、ハフニウムであり、特にチタニウムが好ましい。また、Rは各々独立に、水素、炭化水素基、シリル基、ゲルミル基、シアノ基、ハロゲン、又はこれらの複合基であり、各々20までの非水素原子を有することができる。又近接するR同士がヒドロカルバジイル、ジラジイル、またはゲルマジイル等の2価の誘導体を形成して環状となっていてもよい。X"は各々独立にハロゲン、炭化水素基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルアミノ基、またはシリル基であり、各々20までの非水素原子を有しており、また2つのX"が炭素数5乃至30の中性共役ジエン、もしくは2価の誘導体を形成してもよい。Yは−O−、−S−、−NR−、−PR−であり、ZはSiR、CR、SiRSiR、CRCR、CR=CR、CRSiRまたはGeRであり、ここでRは各々独立に炭素数1乃至12のアルキル基又はアリール基である。又、nは1乃至3の整数である。
さらに、遷移金属化合物として、より好適な例は、下記式(4)および下記式(5)で表される。
【0017】
【化3】


【化4】


式中Rは各々独立に、水素、炭化水素基、シリル基、ゲルミル基、シアノ基、ハロゲン、又はこれらの複合基であり、各々20までの非水素原子を有することができる。また、遷移金属Mはチタニウム、ジルコニウムまたはハフニウムであり、チタニウムが好ましい。
Z、Y、XおよびX'の定義は前出のとおりである。pは0,1又は2であり、qは0又は1である。但し、pが2でqが0のとき、Mの酸化数は+4であり、且つXはハロゲン、炭化水素基、ヒドロカルビルオキシ基、ジヒドロカルビルアミノ基、ジヒドロカルビルフォスフィド基、ヒドロカルビルスルフィド基、シリル基またはこれらの複合基であり、20までの非水素原子を有している。またpが1でqが0のとき、Mの酸化数は+3であり、且つXはアリル基、2−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェニル基または2−(N,N−ジメチル)−アミノベンジル基から選ばれる安定化アニオン配位子であるか、もしくはMの酸化数が+4であり、かつXが2価の共役ジエンの誘導体であるか、あるいはMとXがともにメタロシクロペンテン基を形成している。またpが0でqが1のとき、Mの酸化数は+2であり、且つX'は中性の共役或いは非共役ジエンであって任意に1つ以上の炭化水素で置換されていてもよく、又該X'は40までの炭素原子を含み得るものであり、Mとπ型錯体を形成している。
【0018】
さらに、本発明において、遷移金属化合物として最も好適な例は、下記式(6)および下記式(7)で表される。
【化5】


【化6】


式中Rは各々独立に、水素または炭素数1乃至6のアルキル基である。又Mはチタニウムであり、Yは−O−、−S−、−NR−、−PR−であり、ZはSiR、CR、SiRSiR、CRCR、CR=CR、CRSiRまたはGeRであり、ここでRは各々独立に水素、或いは炭化水素基、ヒドロカルビルオキシ基、シリル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基またはこれらの複合基である。該Rは20までの非水素原子を有することができ、又必要に応じてZ中の2つのR同士またはZ中のRとY中のRが環状となっていてもよい。pは0,1又は2であり、qは0又は1である。但し、pが2でqが0のとき、Mの酸化数は+4であり、且つXは各々独立にメチル基またはヒドロベンジル基である。
またpが1でqが0のとき、Mの酸化数は+3であり、且つXが2−(N,N−ジメチル)−アミノベンジル基であるか、或いはMの酸化数が+4でありかつXが2−ブテン−1,4−ジイルである。またpが0でqが1のとき、Mの酸化数は+2であり、且つX'は1,4−ジフェニル−1、3−ブタジエンまたは1,3−ペンタジエンである。前記ジエン類は金属錯体を形成する非対称ジエン類を例示したものであり、実際には各幾何異性体の混合物である。
【0019】
また、メタロセン触媒は(エ)遷移金属化合物と反応して触媒活性を発現する錯体を形成可能な活性化剤を含む。通常メタロセン触媒においては、遷移金属化合物と上記活性化剤により形成される錯体が、触媒活性種として高いオレフィン重合活性を示す。
【0020】
活性化剤としては例えば、下記式(8)で定義される化合物があげられる。
【化7】


但し式中[L−H]d+はプロトン付与のブレンステッド酸であり、Lは中性ルイス塩基である。また[Mtd−は相溶性の非配位性アニオンであり、Mは周期律表第5族乃至15族から選ばれる金属またはメタロイドであり、Qは各々独立にヒドリド、ジアルキルアミド基、ハライド、アルコキサイド基、アリロキサイド基、炭化水素基、炭素数20までの置換炭化水素基であり、またハライドであるQは1個以下である。又mは1乃至7の整数であり、pは2乃至14の整数であり、dは1乃至7の整数であり、t−m=dである。
【0021】
活性化剤のより好ましい例は下記式(9)で定義される化合物である。
【化8】


但し式中[L−H]d+はプロトン付与のブレンステッド酸であり、Lは中性ルイス塩基である。また[M(Gu(T−H)d−は相溶性の非配位性アニオンであり、Mは周期律表第5族乃至15族から選ばれる金属またはメタロイドであり、Qは各々独立にヒドリド、ジアルキルアミド基、ハライド、アルコキサイド基、アリロキサイド基、炭化水素基、炭素数20までの置換炭化水素基であり、またハライドであるQは1個以下である。又GはMおよびTと結合するr+1の価数を持つ多価炭化水素基であり、TはO、S、NRまたはPRであり、ここでRはヒドロカルビル基、トリヒドロカルビルシリル基、トリヒドロカルビルゲルマニウム基、もしくは水素である。
又mは1乃至7の整数であり、wは0乃至7の整数でありuは0または1の整数であり、rは1乃至3の整数であり、zは1乃至8の整数であり、w+z−m=dである。
【0022】
活性化剤のさらに好ましい例は下記式(10)で定義される化合物である。
【化9】


但し式中[L−H]d+はプロトン付与のブレンステッド酸であり、Lは中性ルイス塩基である。また[BQは相溶性の非配位性アニオンであり、Bはホウ素原子、Qはペンタフルオロフェニル基であり、Qは置換基としてOH基を1つ有する炭素数6乃至20の置換アリール基である。
非配位性アニオンの具体例としては、トリフェニル(ヒドロキシフェニル)ボレート、ジフェニル−ジ(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリフェニル(2,4−ジヒドロキシフェニル)ボレート、トリ(p−トリル)フェニル(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(2,4−ジメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(3,5−ジメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(3,5−ジ−トリフルオロメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル、)(2−ヒドロキシエチル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル、)(4−ヒドロキシブチル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル、)(4−ヒドロキシ−シクロヘキシル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル、)(4−(4’−ヒドロキシフェニル)フェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)ボレート等があげられ、最も好ましいのは、トリス(ペンタフルオロフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレートである。
【0023】
他の好ましい相溶性の非配位性アニオンの具体例としては、上記例示のボレートのヒドロキシ基がNHRで置き換えられたボレートがあげられる。ここでRは好ましくはメチル基、エチル基またはtert−ブチル基である。
【0024】
また、プロトン付与性のブレンステッド酸の具体例としては、例えば、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリ(n−ブチル)アンモニウム、トリメチルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、およびトリ(n−オクチル)アンモニウム、ジエチルメチルアンモニウム、ジブチルメチルアンモニウム、ジブチルエチルアンモニウム、ジヘキシルメチルアンモニウム、ジオクチルメチルアンモニウム、ジデシルメチルアンモニウム、ジドデシルメチルアンモニウム、ジテトラデシルメチルアンモニウム、ジヘキサデシルメチルアンモニウム、ジオクタデシルメチルアンモニウム、ジイコシルメチルアンモニウム、ビス(水素化タロウアルキル)メチルアンモニウム等のような、トリアルキル基置換型アンモニウムカチオンがあげられ、又N,N−ジメチルアニリニウム、N,N−ジエチルアニリニウム、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウム、N,N−ジメチルベンジルアニリニウムなどのようなN,N−ジアルキルアニリニウムカチオンも好適である。
【0025】
次に、本発明における液体助触媒成分[B]の調製方法について説明する。本発明においては、液体助触媒成分[B]は下記の式(11)で示される炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物[C1]とアミン、アルコール、シロキサン化合物から選ばれる化合物[C2]との反応によって合成される、炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物である。
(M(Mg)(R(R (11)
〔式中、Mは周期律表第1〜3族に属する金属原子であり、RおよびRは炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、a、b、c、dは次の関係を満たす実数である。0≦a、0<b、0≦c、0≦d、c+d>0、e×a+2b=c+d(ただし、eはMの原子価)〕
【0026】
本発明においては、有機マグネシウム化合物[C1]と化合物[C2]との反応には特に制限はないが、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素等の不活性反応媒体中、室温〜150℃の間で反応させることによって行われることが好ましい。この反応の順序については特に制限はなく、有機マグネシウム化合物[C1]中に化合物[C2]を添加する方法、化合物[C2]に有機マグネシウム化合物[C1]を添加する方法、または両者を同時に添加する方法のいずれの方法も好ましい。有機マグネシウム化合物[C1]と化合物[C2]との反応比率については特に制限はないが、反応により合成される液体助触媒成分[B]に含まれる全金属原子に対する化合物[C2]のモル比は0.01〜2であることが好ましく、0.1〜1であることがさらに好ましい。
【0027】
本発明においては、液体助触媒成分[B]は単独で使用してもよいし二種類以上混合して使用してもよい。
【0028】
本発明において、液体助触媒成分[B]は不純物のスカベンジャーとして用いられる。この液体助触媒成分[B]は、高濃度であっても重合活性を低下させることが少なく、したがって広い濃度範囲で高い重合活性を発現させることができる。このため液体助触媒成分[B]を含むオレフィン重合用触媒は、重合活性の制御が容易である。重合に使用する際の液体助触媒成分[B]の濃度については特に制限はないが、液体助触媒成分[B]に含まれる全金属原子のモル濃度が0.001mmol/リットル以上10mmol/リットル以下であることが好ましく、0.01mmol/リットル以上5mmol/リットル以下であることがさらに好ましい。0.001mmol/リットル未満では不純物のスカベンジャーとしての作用が十分ではない恐れがあるために好ましくなく、10mmol/リットルよりも大きい場合には重合活性が低下する恐れがあるために好ましくない。
【0029】
次に、有機マグネシウム化合物[C1]について説明する。有機マグネシウム化合物[C1]は上記の(11)式で表される。なお、上記の(11)式中では炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウムの錯化合物の形として示されているが、(RMgおよびこれらと他の金属化合物との錯体の全てを包含するものである。記号a、b、c、dの関係式e×a+2b=c+dは、金属原子の原子価と置換基との化学量論性を示している。上記の(11)式中RないしRで表される炭化水素基は、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、1−メチルエチル基、ブチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルエチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基、トリル基であることが好ましく、アルキル基であることがさらに好ましく、一級のアルキル基であることがさらに好ましい。
【0030】
a>0の場合、金属原子Mとしては、周期律表第1〜3族からなる群に属する金属元素が使用でき、たとえば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ベリリウム、亜鉛、ホウ素、アルミニウム等が挙げられるが、特にアルミニウム、ホウ素、ベリリウム、亜鉛が好ましい。
【0031】
金属原子Mに対するマグネシウムのモル比b/aには特に制限はないが、0.1以上50以下の範囲が好ましく、0.5以上10以下の範囲がさらに好ましい。また、a=0の場合には、有機マグネシウム化合物[C1]が炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物であることが好ましく、上記の式(11)のR、Rが次に示す三つの群(イ)、(ロ)、(ハ)のいずれか一つであることがさらに好ましい。(イ)R、Rの少なくとも一方が炭素原子数4〜6である二級または三級のアルキル基であること、好ましくはR、Rがともに炭素原子数4〜6であり、少なくとも一方が二級または三級のアルキル基であること。(ロ)R、Rが炭素原子数の互いに相異なるアルキル基であること、好ましくはRが炭素原子数2または3のアルキル基であり、Rが炭素原子数4以上のアルキル基であること。(ハ)R、Rの少なくとも一方が炭素原子数6以上の炭化水素基であること、好ましくはR、Rが共に炭素原子数6以上のアルキル基であること。
【0032】
以下これらの基を具体的に示す。(イ)において炭素原子数4〜6である二級または三級のアルキル基としては、1−メチルプロピル基、1,1−ジメチルエチル基、1−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、1−メチルペンチル基、1−エチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1−メチル−1−エチルプロピル基、等が挙げられ、1−メチルプロピル基が特に好ましい。(ロ)において、炭素原子数2または3のアルキル基としてはエチル基、プロピル基が挙げられ、エチル基は特に好ましい。また炭素原子数4以上のアルキル基としては、ブチル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基等が挙げられ、ブチル基、ヘキシル基は特に好ましい。(ハ)において、炭素原子数6以上のアルキル基としては、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基等が挙げられ、アルキル基である方が好ましく、ヘキシル基は特に好ましい。一般にアルキル基の炭素原子数を増やすと炭化水素溶媒に溶けやすくなるが、溶液の粘性が高くなる傾向であり、必要以上に長鎖のアルキル基を用いることは取り扱い上好ましくない。なお、上記有機マグネシウム化合物は炭化水素溶液として用いられるが、該溶液中に微量のエーテル、エステル、アミン等のコンプレックス化剤がわずかに含有されあるいは残存していても差し支えなく用いることができる。
【0033】
次に化合物[C2]について説明する。この化合物はアミン、アルコール、シロキサン化合物からなる群に属する化合物である。本発明においては、アミン化合物には特に制限はないが、脂肪族、脂環式ないし芳香族アミンが好ましい。具体的には、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ヘキシルアミン、ジヘキシルアミン、トリヘキシルアミン、オクチルアミン、ジオクチルアミン、トリオクチルアミン、アニリン、N−メチルアニリン、N、N−ジメチルアニリン、トルイジン、等が挙げられる。
【0034】
本発明においては、アルコール化合物には特に制限はないが、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1,1−ジメチルエタノール、ペンタノール、ヘキサノール、2−メチルペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、2−エチル−1−ペンタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、2−エチル−4−メチル−1−ペンタノール、2−プロピル−1−ヘプタノール、2−エチル−5−メチル−1−オクタノール、1−オクタノール、1−デカノール、シクロヘキサノール、フェノールが好ましく、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−ペンタノールおよび2−エチル−1−ヘキサノールがさらに好ましい。
【0035】
本発明においては、シロキサン化合物には特に制限はないが、下記の式(12)で表される構成単位を有するシロキサン化合物が好ましい。
【化10】


(上記の式(12)中、RおよびRは、水素または炭素原子数1〜30の炭化水素基、および炭素数1〜40の置換された炭化水素基なる群より選ばれる基である。)
【0036】
本発明においては、この炭化水素基には特に制限はないが、メチル基、エチル基、プロピル基、1−メチルエチル基、ブチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルエチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基、トリル基、ビニル基が好ましい。また、置換された炭化水素基には特に制限はないが、トリフルオロプロピル基が好ましい。
【0037】
本発明においては、このシロキサン化合物は1種類または2種類以上の構成単位から成る2量体以上の鎖状または環状の化合物の形で用いることができる。
【0038】
本発明においては、このシロキサン化合物として、対称ジヒドロテトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルトリシロキサン、ペンタメチルトリヒドロトリシロキサン、環状メチルヒドロテトラシロキサン、環状メチルヒドロペンタシロキサン、環状ジメチルテトラシロキサン、環状メチルトリフルオロプロピルテトラシロキサン、環状メチルフェニルテトラシロキサン、環状ジフェニルテトラシロキサン、(末端メチル封塞)メチルヒドロポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、(末端メチル封塞)フェニルヒドロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンが好ましい。
【0039】
本発明のポリエチレン樹脂からなるフィルムは、高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B)が、下記(B−イ)〜(B−ハ)の特性を満たすことが好ましい。
(B−イ)JIS K7112 における密度が910〜930kg/mである。
(B−ロ)JIS K7210 コードD におけるメルトフローレートが1〜20g/10分である。
(B−ハ)GPC法で測定したMw/Mn(Wb)が7〜22である。
高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B)のJIS K7112 における密度は910〜930kg/mであることが好ましい。さらに好ましくは912〜927kg/mであり、より好ましくは915〜925kg/mである。密度が910kg/m未満であるとフィルム成形時における発煙や臭気の発生、フィルム成形後の低分子量成分のブリードアウトが発生し、930kg/mを超えると成形加工性、フィルムの透明性が低下するので好ましくない。JIS K7210 コードD におけるMFRは1〜20g/10分であることが好ましい。さらに好ましくは1.5〜15g/10分であり、より好ましくは2〜10g/10分である。MFRが1g/10分未満であるとTダイ成形時におけるドローダウン性の低下や、FEが増加し、20g/10分を超えるとTダイ成形時におけるネックインの増大や、高密度ポリエチレン樹脂(A)との分散不良によるフィルムの表面荒れが発生するため好ましくない。GPC法で測定したMw/Mn(Wb)は7〜22であることが好ましい。さらに好ましくは8〜18であり、より好ましくは9〜15である。Mw/Mn(Wb)が7未満であると高密度ポリエチレン樹脂(A)のFEを分散する効果が低減し、22を超えると透明性の低下や、高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B)自体のFEが発生するため好ましくない。
【0040】
本発明の高圧法低密度ポリエチレン(B)は、オートクレーブタイプ、あるいはチューブラータイプのリアクターでエチレンをラジカル重合して得ることができ、どちらのタイプであっても構わないが、オートクレーブタイプのリアクターを採用する場合には、重合条件は過酸化物存在下で、200〜300℃の温度、100〜250MPaの重合圧力に設定すればよく、一方、チューブラータイプのリアクターを採用する場合には、重合条件は過酸化物および連鎖移動剤の存在下で180〜400℃の重合反応ピーク温度、100〜400MPaの重合圧力に設定すればよいが、200〜350℃の重合反応ピーク温度、150〜350MPaの重合圧力にすることが望ましい。また、高圧法低密度ポリエチレン(B)の密度は、重合反応ピーク温度を上げると密度は下がる傾向にあり、重合圧力を上げると密度は上がる傾向にある。高圧法低密度ポリエチレン(B)のMFRは、重合反応ピーク温度を上げるとMFRは上がる傾向にあり、重合圧力を上げるとMFRは下がる傾向にある。過酸化物の具体例を次に挙げる。例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、パーオキシケタール類(具体的には1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン等)、ハイドロパーオキサイド類(具体的には、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等)、ジアルキルパーオキサイド類(具体的には、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル、2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチルジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン−3等)、ジアシルパーオキサイド(具体的には、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等)、パーオキシジカーボネート類(具体的には、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジアリルパーオキシジカーボネート等)、パーオキシエステル類(具体的には、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシオクテート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−3,5,6−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクトエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシネオヘキサノエート、クミルパーオキシネオヘキサノエート等)、アセチルシクロヘキシルスルフォニルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート等が挙げられる。また、本発明を満たす範囲にあれば高圧法低密度ポリエチレン(B)は、高圧法低密度ポリエチレン(B)同士を2種類以上、任意の比率でドライブレンド、あるいはメルトブレンドしたものであってもよい。
【0041】
本発明のポリエチレン樹脂からなるフィルムは、高密度ポリエチレン樹脂(A)および高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B)からなるポリエチレン樹脂組成物(C)が、下記(C−イ)〜(C−ハ)の特性を満たすことが好ましい。
(C−イ)JIS K7112 における密度が930kg/m以上である。
(C−ロ)JIS K7210 コードD におけるメルトフローレートが1〜48g/10分である。
(C−ハ)GPC法で測定したMw/Mn(Wc)が3.5〜16である。
高密度ポリエチレン樹脂(A)および高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B)からなるポリエチレン樹脂組成物(C)のJIS K7112 における密度は930kg/m以上であることが好ましい。さらに好ましくは934kg/m以上であり、より好ましくは937kg/m以上である。密度が930kg/m未満であるとフィルムの耐熱性やコシが低下し、低分子量成分がブリードアウトする恐れがあるため好ましくない。JIS K7210 コードD におけるMFRは1〜48g/10分であることが好ましい。さらに好ましくは3〜35g/10分であり、より好ましくは5〜15g/10分である。MFRが1g/10分未満であるとTダイ成形時におけるドローダウン性の低下や、FEが増加し、48g/10分を超えるとTダイ成形時におけるネックインが大きくなり、サージングや溶融樹脂のゆれによる厚み変動が起きて成形が困難になるため好ましくない。GPC法で測定したMw/Mn(Wc)は3.5〜16であることが好ましい。さらに好ましくは4.2〜13であり、より好ましくは4.5〜11.5である。Mw/Mn(Wc)が3.5未満であるとTダイ成形時におけるネックインが大きくなり、サージングや溶融樹脂のゆれによる厚み変動が起き、16を超えると透明性やドローダウン性の低下を引き起こすため好ましくない。
【0042】
本発明のポリエチレン樹脂からなるフィルムは、高密度ポリエチレン樹脂(A)と高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B)を、押出機の比エネルギーが0.05〜0.25kW・Hr/kgの範囲で溶融混練を行うことにより好ましく得ることができる。ここでいう比エネルギーとは、溶融混練物単位重量当りに要した混練エネルギーを示すものであり、押出機の消費電力から算出することができる。例えば、押出機ホッパーにポリエチレン樹脂組成物を入れて押出機の定常運転を行い、1時間当りの消費電力(kW)および押出量(kg/Hr) を測定する。これらの値から、押出機の比エネルギー(kW・Hr/kg)が求められる。この比エネルギーは、押出機のスクリュー構成、スクリュー回転数、原料樹脂の供給速度、シリンダー設定温度、さらには、原料樹脂の分子量、配合組成比、混練組成物の溶融粘度等の因子に影響される。例えば、スクリュー回転数の増加、スクリーンパックのメッシュの増加、原料樹脂の供給量の低下などによって、比エネルギーの量は増加させることができる。また、スクリューの形状によっても変化し、更にスクリューの溝の深さが浅いものを使用すると比エネルギーは増加する。溶融混練時においては、溶融粘度が高いと混練に要する比エネルギーは大きくなり、溶融粘度が低いと混練に要する比エネルギーは小さくなる。従って、混練組成物の物性や混練温度を調整することにより、比エネルギーを上記範囲内に設定することは理論的には可能である。押出機については、1軸あるいは2軸の押出機等を例示することができるが、局所的なせん断発熱によって発生する熱架橋を抑制する観点から、1軸押出機を用いるのが好ましい。本発明において、押出機の比エネルギーは0.05〜0.25kW・Hr/kgの範囲で溶融混練を行うことが好ましい。さらに好ましくは0.10〜0.22kW・Hr/kgであり、より好ましくは0.15〜0.20kW・Hr/kgである。押出機の比エネルギーが0.05kW・Hr/kg未満であると熱架橋によるFEの発生や、溶融混練不足によるフィルム成形加工時の外観不良を発生し、0.25kW・Hr/kgを超えると溶融混練時に滞留劣化物等が混入しFEが増加するため好ましくない。
【0043】
本発明のポリエチレン樹脂からなるフィルムの成形方法としては、公知のフィルム成形方法を採用することができる。たとえば、インフレーション法(空冷法、水冷法)、Tダイ法等何れのフィルム成形方法によることも可能で、場合により一軸延伸、二軸延伸処理等の延伸処理を加えることもできる。フィルム成形における成形温度、引取り速度に特に制限はないが、一般には成形温度140〜270℃、引取り速度5〜100m/min程度が好適である。フィルム厚みは特に限定されるものではないが、一般には層の厚みが3〜150μmの範囲にある。また、ポリエチレン樹脂からなるフィルムは単層もしくは積層体であってもよい。
【0044】
本発明のポリエチレン樹脂からなるフィルムには、スリップ剤、酸化防止剤、充填剤をいずれも実質的に含まないものが好ましい。スリップ剤としては、脂肪族炭化水素、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、アルコールの脂肪酸エステル、ワックス、高級脂肪酸アマイド、シリコーン油、ロジン等が挙げられ、酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤があるが、フェノール酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(ジブチルヒドロキシトルエン)、n−オクタデシル−3−(4−ヒドロキ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、テトラキス(メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒサロキシハイドロシンナメート))メタン等、リン系酸化防止剤としてはテトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ−ホスフォナイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−t−ブチルフェニルフォスファイト)等が挙げられる。充填剤としては、アルミノケイ酸塩、カオリン、クレー、天然シリカ、合成シリカ、シリケート類、タルク、珪藻土等が挙げられる。なお、帯電防止剤としてグリセリン脂肪酸エステル、中和剤としてステアリン酸カルシウムは添加してもかまわない。ここでいう添加とはポリエチレン樹脂組成物を改質、改良あるいは着色することを目的として上記の各種添加剤を該樹脂組成物に配合することであって、該樹脂組成物の製造中に不可避的に添加剤が微量混入するような場合、あるいは触媒や反応開始剤などが微量残存するような場合には添加とはいわない。充填剤、スリップ剤、酸化防止剤の添加剤を添加すると、ブリードアウトによるクリーン性の低下により、光学部材などのマスキングフィルム、乳製品などの容器包装材料として用いることができなくなるという問題を招来するので好ましくない。
【0045】
本発明のポリエチレン樹脂からなるフィルムはコシが強いことを特徴とする。コシについては、引張割線弾性率(規定ひずみ2%)の値を指標とし、具体的には400MPa以上、好ましくは450MPa以上、より好ましくは500MPa以上である。引張割線弾性率(規定ひずみ2%)が400MPa未満であると、コシの不足による作業性の低下があり好ましくない。
本発明のポリエチレン樹脂からなるフィルムは、光学部材などのマスキングフィルム用途に好適に用いられる。
【実施例】
【0046】
本発明について、以下具体的に説明する。尚、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。実施例および比較例における物性評価は、以下の方法によって実施した。
【0047】
[ポリエチレン樹脂組成物の造粒]
ポリエチレン樹脂組成物は、日本製鋼(株)社製1軸押出機(スクリュー径65mm、L/D=28)を用い、200℃にて、押出し量30kg/時間で押出して造粒した(以後造粒物をペレットと表記する)。
【0048】
[ポリエチレン樹脂からなるフィルムの製法]
造粒したポリエチレン樹脂組成物を、山口製作所製Tダイ(スクリュー径30mm、ダイ300mm幅)を用い、シリンダー温度200℃、ダイ温度230℃、押出し量5kg/時間、引き取り速度10m/分で厚さ35ミクロンメートルのポリエチレン樹脂からなるフィルムを成形した。
【0049】
[評価方法]
物性測定方法、評価方法は以下の通りである。
(1)メルトマスフローレイト(MFR)測定
JIS K7210 コードD:1999(温度=190℃、荷重=2.16kg)により測定した。
(2)密度測定
JIS K7112:1999、密度勾配管法(23℃)により測定した。
(3)分子量分布測定
GPCから求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)を分子量分布とした。GPC測定は、ウォーターズ社製GPCV2000を用い、カラムは昭和電工(株)製UT−807(1本)と東ソー(株)製GMHHR−H(S)HT(2本)を直列に接続して使用し、移動相トリクロロベンゼン(TCB)、カラム温度140℃、流量1.0ml/分、試料濃度20mg/15ml(TCB)、試料溶解温度140℃、試料溶解時間2時間の条件で行う。分子量の校正は、東ソー(株)製標準ポリスチレンのMwが1050〜206万の範囲の12点で行い、それぞれの標準ポリスチレンのMwに係数0.43を乗じてポリエチレン換算分子量とし、溶出時間とポリエチレン換算分子量のプロットから一次校正直線を作成し、分子量を決定した。
(4)フィッシュアイ(FE)測定
上記Tダイを用いて、JIS K7112 における密度が923kg/m、JIS K7210 コードD におけるMFRが5.0g/10分である高圧法低密度ポリエチレンを押出し量5kg/時間で3時間成形した。3時間後に、押出し量5kg/時間、引き取り速度10m/分でポリエチレン樹脂からなるフィルムを1時間成形し、得られる厚さ35ミクロンメートルのポリエチレン樹脂からなるフィルムを、Tダイのフィルム引き取り機に取り付けた、株式会社ヒューテック社製フィッシュアイカウンター(検出能力横:0.04mm/bit、検出能力縦:0.015mm/scan、投光距離:200mm、受光距離:440mm、検査幅:50mm)を用いて、検査面積5m、FEサイズ0.1mm以上および、0.2mm以上のFEをカウントした。
(5)コシの測定
上記Tダイより得られたポリエチレン樹脂からなるフィルムを用いて、オリエンテック(株)製引張試験機RTC−1310AにてJIS K−7127−1989に準拠した引張割線弾性率(規定ひずみ2%)測定を行なった。フィルムの引取方向に対して平行方向を縦方向、垂直方向を横方向として、引張割線弾性率の平均値をコシの指標とし、以下に示した評価基準のうち、◎および○を合格とし、×を不合格とした。
400MPa以上 : ◎
300〜400MPa : ○
300MPa未満 : ×
(6)粉測定
上記Tダイ成形フィルムサンプルを50℃で72時間加熱し、23℃で1時間冷却した後、固定ロールに貼りつけた黒色のフェルト布に引取速度8m/分で100mのフィルムサンプルを接触させ、フィルムサンプルの粉をフェルト布上に集積させる。集積した粉の量や集積状態を目視観察し、粉の発生がない、またはわずかに発生しているが集積が部分的である場合には低粉性が優れると評価する。一方、粉が多く発生しており、フィルムとフェルト布が接触し始める部分に帯状に連続的に集積している場合には低粉性が劣ると評価する。粉の量や集積状態が両者の中間であれば、低粉性はやや優れると評価し、以下に示した評価基準のうち、◎および○を合格とし、×を不合格とした。
低粉性が優れる : ◎
低粉性がやや優れる : ○
低粉性が劣る : ×
【0050】
[実施例1]
[メタロセン担持触媒(a)の調製]
シリカP−10[富士シリシア社(日本国)製](商標)を、窒素雰囲気下、400℃で5時間焼成し、脱水した。エトキシジエチルアルミニウムを表面水酸基と反応させてエタンガスを発生させ、ガスビュレットを用いて、発生したエタンガスの量を測定した。発生したエタンガスの量に基づいて脱水シリカの表面水酸基の初期量を求めたところ、1.3mmol/g−SiOであった。容量1.8リットルのオートクレーブにおいて、この脱水シリカ40gをヘキサン800cc中に分散させ、スラリーを得た。得られたスラリーを攪拌下50℃に保ちながら、トリエチルアルミニウムのヘキサン溶液(濃度1mol/リットル)を60cc加え、その後2時間攪拌し、トリエチルアルミニウムとシリカの表面水酸基とを反応させ、トリエチルアルミニウム処理されたシリカと上澄み液とを含み、該トリエチルアルミニウム処理されたシリカの全ての表面水酸基がつぶされている成分[D]を得た。その後、得られた反応混合物中の上澄み液をデカンテーションによって除去することにより、上澄み液中の未反応のトリエチルアルミニウムを除去した。その後、ヘキサンを適量加え、トリエチルアルミニウム処理されたシリカのヘキサンスラリー800ccを得た。
一方、[(N−t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウム−1,3−ペンタジエン(以下、「チタニウム錯体」という)200mmolをアイソパーE[エクソンケミカル社(米国)製の炭化水素混合物の商品名]1000ccに溶解し、予めトリエチルアルミニウムとジブチルマグネシウムより合成した組成式AlMg6(C(n−C12の1mol/リットルヘキサン溶液を20cc加え、更にヘキサンを加えてチタニウム錯体濃度を0.1mol/リットルに調整し、成分[E]を得た。
また、ビス(水素化タロウアルキル)メチルアンモニウム−トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)ボレート(以下、「ボレート」と略称する)5.7gをトルエン50ccに添加して溶解し、ボレートの100mmol/リットルトルエン溶液を得た。このボレートのトルエン溶液にエトキシジエチルアルミニウムの1mol/リットルヘキサン溶液5ccを室温で加え、さらにヘキサンを加えてトルエン溶液中のボレート濃度が70mmol/リットルとなるようにした。その後、室温で1時間攪拌し、ボレートを含む反応混合物を得た。
ボレートを含むこの反応混合物46ccを、上で得られた、成分[D]のスラリー800ccに15〜20℃で攪拌しながら加え、ボレートを物理吸着によりシリカに担持した。こうして、ボレートを担持したシリカのスラリーが得られた。さらに上で得られた成分[E]のうち32ccを加え、3時間攪拌し、チタニウム錯体とボレートとを反応させた。こうしてシリカと上澄み液とを含み、触媒活性種が該シリカ上に形成されているメタロセン担持触媒(a)を得た。
【0051】
[液体助触媒成分(b)の調製]
有機マグネシウム化合物[C1]として、AlMg(C(n−C12で示される有機マグネシウム化合物を使用した。これと反応させるシロキサン化合物[C2]として、メチルヒドロポリシロキサン(25℃における粘度20センチストークス)を使用した。
200ccのフラスコに、ヘキサン40ccとAlMg(C(n−C12を、MgとAlの総量として37.8mmolを攪拌しながら添加し、25℃でメチルヒドロポリシロキサン2.27g(37.8mmol)を含有するヘキサン40ccを攪拌しながら添加し、その後80℃に温度を上げて3時間、攪拌下に反応させることにより、液体助触媒成分(b)を調製した。
上記のメタロセン担持触媒(a)および液体助触媒成分(b)を組み合わせたものをメタロセン触媒として用い、高密度ポリエチレン樹脂(A−1)の調製を行った。
【0052】
[高密度ポリエチレン樹脂(A−1)の調製]
上記により得られたメタロセン触媒は触媒移送ラインに連鎖移動剤として必要量の水素を供給することで水素を接触させて重合反応器に導入し、溶媒として精製したヘキサン、モノマーとしてエチレンおよびブテン−1を用いた。反応温度は75℃としてエチレン、ブテン−1、水素の混合ガス(ガス組成はブテン−1とエチレン+ブテン−1のモル比が0.04%、水素とエチレン+水素のモル比が0.51%を維持できるように調節)を全圧が0.8MPaで高密度ポリエチレン樹脂(A−1)を重合した。重合により得られたエチレンとブテン−1との共重合体は、日本製鋼(株)社製押出機(スクリュー径65mm、L/D=28)を用い、200℃にて押出して造粒し、高密度ポリエチレン樹脂(A−1)を得た。得られた高密度ポリエチレン樹脂(A−1)は密度が960kg/m、MFRが27.0g/10分、Mw/Mn(Wa)が3.2であった。
【0053】
[高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B−1)の調製]
オートクレーブリアクターにて、重合平均温度245℃、重合圧力170MPa、開始剤にt−ブチルパーオキシアセテートを用い高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B−1)を重合した。得られた高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B−1)は密度が923kg/m、MFRが3.8g/10分、Mw/Mn(Wb)が12.4であった。
【0054】
[ペレットの調製]
上記により得られた高密度ポリエチレン樹脂(A−1)および高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B−1)を、日本製鋼(株)社製1軸押出機(スクリュー径65mm、L/D=28)を用い、高密度ポリエチレン樹脂(A−1)と高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B−1)がそれぞれ70重量%、30重量%となるように200℃で溶融混練を行い、ポリエチレン樹脂組成物を得た。溶融混練時の押出機の比エネルギーは0.17kW・Hr/kgであった。また、得られたポリエチレン樹脂組成物ペレットは、密度が949kg/m、MFRが15.0g/10分、Wb/Waが3.9、Mw/Mn(Wc)が5.8であった。
得られたポリエチレン樹脂組成物の評価結果を表2に併せて示した。
【0055】
[フィルムの調製]
上記により得られた高密度ポリエチレン樹脂(A−1)と、高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B−1)からなるポリエチレン樹脂組成物は、山口製作所製Tダイ(スクリュー径30mm、ダイ300mm幅)を用い、シリンダー温度200℃、ダイ温度230℃、押出し量5kg/時間、引き取り速度10m/分で成形し、厚さ35ミクロンメートルのポリエチレン樹脂からなるフィルムを得た。得られたポリエチレン樹脂からなるフィルムは、0.1mm以上のFEが131個/5m、0.2m以上のFEが56個/5mであった。
ポリエチレン樹脂からなるフィルムの評価結果を表2に併せて示した。
【0056】
[実施例2〜5]
高密度ポリエチレン樹脂(A−1)と、高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B−1)のブレンド組成および、溶融混練時の押出機の比エネルギーを変えたこと以外は、実施例1と同様に操作し、表2記載のポリエチレン樹脂組成物および、ポリエチレン樹脂からなるフィルムを得た。
[実施例6〜9]
【0057】
反応温度は77℃としてエチレン、水素の混合ガス(ガス組成は水素とエチレン+水素のモル比が0.40%を維持できるように調節)を全圧が1.0MPaとなるように変えたこと以外は、実施例1と同様に操作し、表2記載の高密度ポリエチレン樹脂(A−2)を得た。また、高密度ポリエチレン樹脂(A−2)と、高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B−1)のブレンド組成および、溶融混練時の押出機の比エネルギーを変えたこと以外は、実施例1と同様に操作し、表2記載のポリエチレン樹脂組成物および、ポリエチレン樹脂からなるフィルムを得た。
【0058】
[実施例10]
エチレン、ブテン−1、水素の混合ガス(ガス組成はブテン−1とエチレン+ブテン−1のモル比が0.45%、水素とエチレン+水素のモル比が0.25%を維持できるように調節)を変えたこと以外は、実施例1と同様に操作し、表2記載の高密度ポリエチレン樹脂(A−3)を得た。また、高密度ポリエチレン樹脂(A−3)と、高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B−1)のブレンド組成および、溶融混練時の押出機の比エネルギーを変えたこと以外は、実施例1と同様に操作し、表2記載のポリエチレン樹脂組成物および、ポリエチレン樹脂からなるフィルムを得た。
【0059】
[実施例11]
反応温度は70℃としてエチレン、ブテン−1、水素の混合ガス(ガス組成はブテン−1とエチレン+ブテン−1のモル比が0.26%、水素とエチレン+水素のモル比が0.28%を維持できるように調節)を全圧が1.0MPaとなるように変えたこと以外は、実施例1と同様に操作し、表2記載の高密度ポリエチレン樹脂(A−4)を得た。また、高密度ポリエチレン樹脂(A−4)と、高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B−1)のブレンド組成および、溶融混練時の押出機の比エネルギーを変えたこと以外は、実施例1と同様に操作し、表2記載のポリエチレン樹脂組成物および、ポリエチレン樹脂からなるフィルムを得た。
【0060】
[比較例1〜4]
高密度ポリエチレン樹脂(A−1)と、高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B−1)のブレンド組成および、溶融混練時の押出機の比エネルギーを変えたこと以外は、実施例1と同様に操作し、表3記載のポリエチレン樹脂組成物および、ポリエチレン樹脂からなるフィルムを得た。
【0061】
[比較例5]
重合平均温度260℃、重合圧力150MPaに変えたこと以外は、実施例1と同様に操作し、表3記載の高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B−2)を得た。また、高密度ポリエチレン樹脂(A−1)と、高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B−2)のブレンド組成を変えたこと以外は、実施例1と同様に操作し、表3記載のポリエチレン樹脂組成物および、ポリエチレン樹脂からなるフィルムを得た。
【0062】
[比較例6]
チューブラーリアクターにて、重合平均温度256℃、重合圧力260MPa、開始剤にt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを用い高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B−3)を重合した。また、高密度ポリエチレン樹脂(A−1)と、高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B−3)のブレンド組成を変えたこと以外は、実施例1と同様に操作し、表3記載のポリエチレン樹脂組成物および、ポリエチレン樹脂からなるフィルムを得た。
【0063】
[比較例7〜8]
高密度ポリエチレン樹脂(A−2)と、高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B−1)のブレンド組成および、溶融混練時の押出機の比エネルギーを変えたこと以外は、実施例1と同様に操作し、表3記載のポリエチレン樹脂組成物および、ポリエチレン樹脂からなるフィルムを得た。
【0064】
[比較例9]
高密度ポリエチレン樹脂(A−2)と、高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B−2)のブレンド組成および、溶融混練時の押出機の比エネルギーを変えたこと以外は、実施例1と同様に操作し、表3記載のポリエチレン樹脂組成物および、ポリエチレン樹脂からなるフィルムを得た。
【0065】
[比較例10]
高密度ポリエチレン樹脂(A−2)と、高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B−3)のブレンド組成および、溶融混練時の押出機の比エネルギーを変えたこと以外は、実施例1と同様に操作し、表3記載のポリエチレン樹脂組成物および、ポリエチレン樹脂からなるフィルムを得た。
【0066】
[比較例11]
[チーグラー触媒の調製]
充分に窒素置換された15リットルの反応器に、トリクロルシランを2mol/リットルのn−ヘプタン溶液として3リットル仕込み、攪拌しながら65℃に保ち、組成式AlMg(C(n−C6.4(O−n−C5.6で示される有機マグネシウム成分のn−ヘプタン溶液7リットル(マグネシウム換算で5mol)を1時間かけて加え、更に65℃にて1時間攪拌下反応させた。反応終了後、上澄み液を除去し、n−ヘキサン7リットルで4回洗浄を行い、固体物質スラリーを得た。この固体を分離・乾燥して分析した結果、固体1グラム当たり、Mg 7.45mmolを含有していた。
このうち固体500gを含有するスラリーを、n−ブチルアルコール1mol/リットルのn−ヘキサン溶液0.93リットルとともに、攪拌下50℃で1時間反応させた。反応終了後上澄みを除去し、7リットルのn−ヘキサンで1回洗浄した。このスラリーを50℃に保ち、ジエチルアルミニウムクロリド1mol/リットルのn−ヘキサン溶液1.3リットルを攪拌下加えて1時間反応させた。反応終了後上澄みを除去し、7リットルのn−ヘキサンで2回洗浄した。このスラリーを50℃に保ち、ジエチルアルミニウムクロリド1mol/リットルのn−ヘキサン溶液0.2リットルおよび四塩化チタン1mol/リットルのn−ヘキサン溶液0.2リットルを加えて、2時間反応した。反応終了後上澄みを除去し、固体触媒を単離し、遊離のハロゲンが検出されなくなるまでヘキサンで洗浄した。この固体触媒は2.3重量%のチタンを有していた。
【0067】
[高密度ポリエチレン樹脂(A−5)の調製]
上記により得られたチーグラー触媒を用い、単段重合プロセスにおいて、容積230リットルの重合器で重合を行った。重合温度は85℃、重合圧力は0.98MPaとした。この重合器に、合成したチーグラー触媒を0.3g/hrの速度で、トリイソブチルアルミニウムを15mmol/hr、ヘキサンを60リットル/hrの速度で導入した。これに、エチレン、水素、プロピレンの混合ガス(ガス組成はプロピレンとエチレン+プロピレンのモル比が3.30%、水素とエチレン+水素のモル比が26%を維持できるように調節)を導入し、エチレンとプロピレンとの共重合体を重合した。重合により得られたエチレンとプロピレンとの共重合体は、日本製鋼(株)社製押出機(スクリュー径65mm、L/D=28)を用い、2,600ppmのフェノール系酸化防止剤と共に、200℃にて押出して造粒し、高密度ポリエチレン樹脂(A−5)を得た。得られた高密度ポリエチレン樹脂(A−5)は、分子量分布(Mw/Mn)が7.0、密度が952kg/m、MFRが1.1g/10分であった。
【0068】
上記により得られた高密度ポリエチレン樹脂(A−5)と、高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B−1)のブレンド組成および、溶融混練時に500ppmのタルク(充填剤)および1,300ppmのフェノール系酸化防止剤を添加し、押出機の比エネルギーを変えたこと以外は、実施例1と同様に操作し、表3記載のポリエチレン樹脂組成物および、ポリエチレン樹脂からなるフィルムを得た。
【0069】
[比較例12]
2段重合プロセスにおいて、1段目の反応温度は85℃としてエチレン、ブテン−1、水素の混合ガス(ガス組成はブテン−1とエチレン+ブテン−1のモル比が0.34%、水素とエチレン+水素のモル比が62%を維持できるように調節)を全圧が0.65MPaとなるように変え、2段目の反応温度は80℃としてエチレン、ブテン−1、水素の混合ガス(ガス組成はブテン−1とエチレン+ブテン−1のモル比が0.85%、水素とエチレン+水素のモル比が6.6%を維持できるように調節)を全圧が0.28MPaとなるように変えたこと以外は、比較例11と同様に操作し、表3記載の高密度ポリエチレン樹脂(A−6)を得た。また、高密度ポリエチレン樹脂(A−6)と、高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B−1)のブレンド組成および、溶融混練時に500ppmのエルカ酸アミド(スリップ剤)と500ppmのフェノール系酸化防止剤を添加し、押出機の比エネルギーを変えたこと以外は、実施例1と同様に操作し、表3記載のポリエチレン樹脂組成物および、ポリエチレン樹脂からなるフィルムを得た。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

【0072】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明のポリエチレン樹脂からなるフィルムは上述の効果を発現するため、光学部材などのマスキングフィルム用途に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高密度ポリエチレン樹脂(A)40〜70重量%と、高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B)30〜60重量%からなり、高密度ポリエチレン樹脂(A)のGPC法で測定したMw/Mn(Wa)と高圧法低密度ポリエチレン(B)のGPC法で測定したMw/Mn(Wb)が下記式(1)を満たすポリエチレン樹脂組成物から製造された、長径0.1mm以上のフィッシュアイが0〜200個/5mであることを特徴とする、ポリエチレン樹脂からなるフィルム。
2.3 ≦ Wb/Wa ≦ 4.7 (1)
【請求項2】
高密度ポリエチレン樹脂(A)が、少なくとも担体物質、有機アルミニウム化合物、活性水素を有するボレート化合物、シクロペンタジエン化合物および、周期律表第IV族の遷移金属化合物から調製されたメタロセン担持触媒[A]と、液体助触媒成分[B]を用いて重合することにより製造されることを特徴とする、請求項1記載のポリエチレン樹脂からなるフィルム。
【請求項3】
高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B)が、下記(B−イ)〜(B−ハ)の特性を満たすことを特徴とする、請求項1又は2記載のポリエチレン樹脂からなるフィルム。
(B−イ)JIS K7112 における密度が910〜930kg/mである。
(B−ロ)JIS K7210 コードD におけるメルトフローレートが1〜20g/10分である。
(B−ハ)GPC法で測定したMw/Mn(Wb)が7〜22である。
【請求項4】
高密度ポリエチレン樹脂(A)および高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B)からなるポリエチレン樹脂組成物(C)が、下記(C−イ)〜(C−ハ)の特性を満たすことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリエチレン樹脂からなるフィルム。
(C−イ)JIS K7112 における密度が930kg/m以上である。
(C−ロ)JIS K7210 コードD におけるメルトフローレートが1〜48g/10分である。
(C−ハ)GPC法で測定したMw/Mn(Wc)が3.5〜16である。
【請求項5】
高密度ポリエチレン樹脂(A)と高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B)を、押出機の比エネルギーが0.05〜0.25kW・Hr/kgの範囲で溶融混練を行うことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリエチレン樹脂からなるフィルム。
【請求項6】
高密度ポリエチレン樹脂(A)40〜70重量%と、高圧法低密度ポリエチレン樹脂(B)30〜60重量%からなり、高密度ポリエチレン樹脂(A)のGPC法で測定したMw/Mn(Wa)と高圧法低密度ポリエチレン(B)のGPC法で測定したMw/Mn(Wb)が下記式(1)を満たす混合物を、押出機の比エネルギーが0.05〜0.25kW・Hr/kgの範囲で溶融混練してポリエチレン樹脂組成物を製造し、当該ポリエチレン樹脂組成物を製膜してフィルムを得ることを包含する、ポリエチレン樹脂からなるフィルムの製造方法であって、製膜されたフィルムの長径0.1mm以上のフィッシュアイが0〜200個/5mであることを特徴とする、ポリエチレン樹脂からなるフィルムの製造方法。
2.3 ≦ Wb/Wa ≦ 4.7 (1)

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−242082(P2010−242082A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64412(P2010−64412)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】