説明

ポリエチレン組成物

【課題】剛性や耐衝撃性等の物性及び耐ドローダウン性や融着性等の成形性に優れ、且つ成型体の外観も良好なポリエチレン組成物、特に高速中空成型用途に適したポリエチレン組成物を提供する。
【解決手段】クロム系触媒を用いて製造されたポリエチレン(A)とチタン系触媒を用いて製造されたポリエチレン(B)からなり、組成物中のポリエチレン(A)の量が5〜95重量%の範囲にあり、組成物のMFRが0.4〜2.0g/10分、密度が940〜965kg/m3 であり、分子量分布(Mw/Mnの値)が7〜20、230℃でシェアレート1598sec-1における溶融粘度が180〜230Pa・s、170℃で周波数0.01rad/secにおける動的粘弾性測定から求められる貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”の比G”/G’とMFRの関係がLog(MFR)+1.5≦G”/G’≦Log(MFR)+2.5、であることを特徴とするポリエチレン組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレン組成物に関する。さらに詳しくは、剛性や耐衝撃性等の物性及び耐ドローダウン性や融着性等の成形性に優れたポリエチレン組成物に関するものであり、中空成型、射出成型、押出成型、フィルム・シート成形に適し、各種容器、蓋、瓶、パイプ、フィルム、シート、包装材などに使用され、特に高速中空成型用途に適したポリエチレン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、クロム系触媒を用いて製造されるポリエチレン(以下「クロム触媒ポリエチレン」という)は、比較的分子量分布が広いことから、中空成型に好適なポリエチレンとして一般的に使用されている。しかしながら、このようなクロム触媒ポリエチレンは、中空成型し易い適度の溶融張力およびスウェルを有するものの、耐環境応力亀裂性(以下「ESCR」という)が不充分であるという欠点を有していた。
一方、チーグラー触媒を用いて単段または多段重合で製造されるポリエチレンが、中空成型に適した広い分子量分布を有するポリエチレンとして、例えば、特許文献1〜3などに開示されている。しかしながら、かかる方法によって得られるポリエチレンは、高いESCR等の優れた物性を有するものの、溶融張力、スウェル、耐ドローダウン性が低く、中空成型し難いという欠点を有していた。
【0003】
これらの欠点を改良する方法として、クロム触媒ポリエチレンとチタン系触媒を用いて多段重合で製造されるポリエチレンとを混合する方法が有効であることが公知であり、中空成型、押出成型等の成型分野で広く実用化されている。そのようなクロム触媒ポリエチレンとチタン系触媒を用いて多段重合で製造されるポリエチレンとからなるポリエチレン組成物が、ESCR等の物性と成型加工性とが共に優れているポリエチレン組成物として、例えば、特許文献4〜9などに開示されている。
近年環境問題への対応から省資源化の動きが強まり、中空成型体などの成型体の厚みを薄くする薄肉化への要求が高まっており、また経済性の観点から高速成形への要求も高く、さらなる成形加工性の向上が望まれている。しかしながら従来技術では、高速で薄肉成型を行うとパリソン(中空成型時において押出される筒状の溶融樹脂)表面にメルトフラクチャーと呼ばれる凹凸が発生し、成型体の外観が著しく悪化するといった問題や高速押出時の発熱により樹脂温度が上がり融着性が低下するといった問題があり、そのような薄肉化や高速化の要求に充分対応することはできなかった。
【0004】
【特許文献1】特開平02−123108号公報
【特許文献2】特開平04−018407号公報
【特許文献3】特開平05−230136号公報
【特許文献4】特公平01−012777号公報
【特許文献5】特公平01−012778号公報
【特許文献6】特公平01−012781号公報
【特許文献7】特開平11−302465号公報
【特許文献8】特開2004−059650号公報
【特許文献9】特開2004−168817号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明は、かかる従来技術の欠点を改良するものであり、剛性や耐衝撃性等の物性及び耐ドローダウン性や融着性等の成形性に優れ、且つ成型体の外観も良好なポリエチレン組成物、特に高速中空成型用途に適したポリエチレン組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、従来技術の欠点を改良するため鋭意研究を重ねた結果、クロム系触媒を用いて製造されたポリエチレンとチタン系触媒を用いて製造されたポリエチレンからなる特定のポリエチレン組成物が、前記課題を解決できることを見出し、本発明を成すに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)クロム系触媒を用いて製造されたポリエチレン(A)とチタン系触媒を用いて製造されたポリエチレン(B)からなり、組成物中のポリエチレン(A)の量が5〜95重量%の範囲にあり、組成物のMFRが0.4〜2.0g/10分、密度が940〜965kg/m3 であり、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)から求められる重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比である分子量分布(Mw/Mnの値)が7〜20、測定温度230℃でかつシェアレート1598sec-1における溶融粘度が180〜230Pa・s、測定温度170℃でかつ周波数0.01rad/secにおける動的粘弾性測定から求められる貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”の比G”/G’とMFRの関係がLog(MFR)+1.5≦G”/G’≦Log(MFR)+2.5、であることを特徴とするポリエチレン組成物、
(2)ポリエチレン(A)が、有機金属化合物で処理されたクロム系触媒と助触媒からなる組み合わせの触媒系で製造されたものであることを特徴とする、前記(1)に記載のポリエチレン組成物、
(3)ポリエチレン(B)が、2段重合により製造されたものであることを特徴とする、前記(1)または(2)に記載のポリエチレン組成物、
(4)前記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリエチレン組成物からなることを特徴とする中空成型体、
である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポリエチレン組成物は、剛性や耐衝撃性等の物性及び耐ドローダウン性や融着性等の成形性に優れ、且つ高速中空成型においても外観が良好な中空成型体を得ることが可能である。特に高速中空成型用途や薄肉中空成型用途に好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のポリエチレン組成物のMFRは、0.4〜2.0g/10分であり、好ましくは0.4〜1.5g/10分であり、さらに好ましくは0.5〜1.0g/10分であり、最も好ましくは0.6〜0.9g/10分である。MFRが0.4g/10分以上であれば、ゲル、フィッシュアイなどの発生が抑えられ成型体の外観が良好であり、2.0g/10分以下であればドローダウンを起こし難くなり成型が容易になる。
本発明のポリエチレン組成物のHLMFRは、20〜100g/10分であり、好ましくは20〜80g/10分、より好ましくは30〜60g/10分であり、さらに好ましくは30〜50g/10分であり、最も好ましくは35〜45g/10分である。HLMFRが20g/10分以上であれば、成型加工時に樹脂圧力および樹脂温度が上がることが無く高速成型が容易となり、100g/10分以下では十分な耐衝撃性を持つ成型体が得られる。
【0010】
本発明のポリエチレン組成物の密度は、940〜965kg/m3 であり、好ましくは945〜963kg/m3 であり、より好ましくは950〜960kg/m3 であり、最も好ましくは955〜959kg/m3 である。密度が940kg/m3 以上であれば成型体の剛性が十分であり、965kg/m3 以下では耐衝撃性が十分である。
本発明のポリエチレン組成物の分子量分布(Mw/Mn)は、7〜20であり、好ましくは7〜16であり、より好ましくは8〜13であり、さらに好ましくは9〜11である。Mw/Mnが7以上であると、成型加工時に樹脂圧力および樹脂温度が上がることがなく、高速成型が容易になり、20以下では、ゲルやフィッシュアイなどが発生し難くなり、耐衝撃性も十分である。
本発明のポリエチレン組成物の測定温度230℃でかつシェアレート1598sec-1における溶融粘度は、180〜230Pa・sであり、好ましくは190〜230Pa・sであり、更に好ましくは200〜230Pa・sである。溶融粘度が230Pa・s以下では、高速中空成型時にパリソン表面にメルトフラクチャーの発生が抑えられ、成型体の外観が悪化することがない。溶融粘度が180Pa・s以上であれば、耐衝撃性が十分である。
【0011】
本発明のポリエチレン組成物では、測定温度170℃でかつ周波数0.01rad/secにおける動的粘弾性測定から求められる貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”の比G”/G’とMFRが、Log(MFR)+1.5≦G”/G’≦Log(MFR)+2.5、の関係を満たすことが好ましい(対数の底はe、以下同様)。Log(MFR)+1.7≦G”/G’≦Log(MFR)+2.3の条件を満たすことがより好ましく、Log(MFR)+2.0≦G”/G’≦Log(MFR)+2.2の条件を満たすことが更に好ましい。測定周波数0.01rad/secのような低周波数領域において、G”/G’の値がMFRの値に対して小さいということは、樹脂の歪に対する応力緩和が遅いことを意味する。
【0012】
応力緩和が遅いと、中空成型において溶融樹脂がダイとコアとの間の微小隙間に流入する際、受けた歪に対する応力が緩和され難く、ダイ出口付近でも応力の保持が十分であるため、スウェルが大きくなる。樹脂温度が高くなるほど応力緩和が速くなるため、押出負荷により樹脂温度が220℃以上に上昇するような高速成型においても、十分なスウェルを保持するためには、G”/G’とMFRの関係がG”/G’≦Log(MFR)+2.5の条件を満たすことが必要である。G”/G’>Log(MFR)+2.5の場合は、特に樹脂温度が220℃以上の中空成型においてスウェルが低下し、肉厚の調整が困難になる。一方、樹脂の歪に対する応力緩和速度が遅すぎると、スウェルが大きくなりすぎ、中空成型時に必要な長さのパリソンを押出す時間が長くなり、成型サイクルが低下する。よって、G”/G’≧Log(MFR)+1.5の条件を満たすことも必要である。ポリエチレン(A)の製造において、クロム系触媒を用いることにより、G”/G’の大きなポリエチレン組成物を得ることができ、有機金属化合物で処理されたクロム系触媒と助触媒からなる組み合わせでポリエチレン(A)を製造することによって、G”/G’をより大きくすることができる。また、ポリエチレン組成物中のポリエチレン(A)の比率を上げることによっても、G”/G’を大きくすることが可能である。
【0013】
本発明のポリエチレン組成物の溶融張力(Melt Tension:MT)は、好ましくは5〜15gであり、より好ましくは7〜12gであり、さらに好ましくは8〜10gである。MTが5未満であるとドローダウンを起こし易くなり、15gを超えるとピンチオフ融着部(金型に挟まれた樹脂の接合部)の肉厚が薄くなるという問題が生じ易い。
本発明のポリエチレン組成物の溶融伸度(Melt Elongation:ME)は、好ましくは5〜30m/分であり、より好ましくは8〜20m/分であり、さらに好ましくは10〜15m/分である。MEが5m/分未満であると、溶融樹脂の均一延伸性が低下し、中空成型体に厚み斑が生じ易くなり好ましくない。MEが30m/分を超えるとピンチオフ融着部の肉厚が薄くなるという問題が生じ易い。
本発明のポリエチレン組成物の引張衝撃強度は、好ましくは90〜300kg・cm/cm2 であり、より好ましくは100〜300kg・cm/cm2 であり、更に好ましくは110〜300kg・cm/cm2 である。引張衝撃強度が90kg・cm/cm2 未満であると、内容液を充填した中空成型容器等を落下した際に割れ易くなる。また、引張衝撃強度が300kg・cm/cm2 を超えるMFRが0.4g/10分以上のポリエチレン組成物を得ることは事実上困難である。
【0014】
本発明のポリエチレン組成物の曲げ強さは、好ましくは24〜32MPaであり、より好ましくは25〜32MPaであり、更に好ましくは27〜32MPaである。曲げ強さが24MPa未満であると中空成型容器等の剛性が不十分であり、曲げ強さが32MPaを超える密度が965kg/m3 以下のポリエチレン組成物を得ることは事実上困難である。
本発明のポリエチレン組成物では炭素原子10000個中の末端ビニル基の数を10個以下にすることが好ましく、7個以下にすることがより好ましく、6個以下にすることがさらに好ましい。末端ビニル基の数が10個より多くなると成型加工時の熱安定性が低下し、架橋ゲルやコゲなどの樹脂劣化物が発生し易くなる。
本発明のポリエチレン組成物は、2種類のポリエチレン(A)および(B)とから構成される。
【0015】
ポリエチレン(A)は、クロム系触媒を用いて製造されたポリエチレンである。
次にポリエチレン(A)を製造する為の触媒と(A)の製造方法について説明する。
ポリエチレン(A)を製造するのに用いるクロム系触媒としては、無機酸化物担体にクロム化合物を担持した固体触媒、または該固体触媒と有機金属化合物とを組み合わせた触媒等の公知の触媒が挙げられる。具体的には、特公昭44−2996号公報、同47−1365号公報、同44−3827号公報、同44−2337号公報、同47−19685号公報、同45−40902号公報、同49−38986号公報、同56−18132号公報、同59−5602号公報、同59−50242号公報、同59−5604号公報、特公平1−1277号公報、同1−12778号公報、同1−12781号公報、特開平11−302465号公報、同9−25312号公報、同9−25313号公報、同9−25314号公報、特表平7−503739号公報、米国特許5,104,841号明細書、同5,137,997号明細書等に記載された触媒を例示することができる。
【0016】
これら公知の触媒のうち、特に有機金属化合物で処理されたクロム系触媒と助触媒からなる組み合わせの触媒系で製造されたものが、適度なMT、ME、スウェル、耐ドローダウン性等のバランスを有するため、本発明で用いるクロム系触媒として好適である。
本発明のポリエチレン(A)は、特開2001−294613号公報等に記載の方法によって製造される、耐火性化合物上に担持され非還元雰囲気下で熱処理により活性化された酸化クロム触媒と、アルコキシ基およびヒドロシロキシ基の両方を含有する有機アルミニウム化合物とを混合して得た固体触媒成分と、アルコキシ基を含有する有機アルミニウム化合物とを組み合わせてなる重合触媒の存在下において製造されることがさらに好適である。
【0017】
本発明のポリエチレン(A)を得るために、もっとも好ましい重合触媒は、耐火性化合物上に支持され非還元雰囲気下で熱処理により活性化された酸化クロム触媒と、下記一般式(1)で表されるアルコキシ基およびヒドロシロキシ基の両方を含有する有機アルミニウム化合物とを混合して得た固体触媒成分と、下記一般式(2)で表されるアルコキシ基を含有する有機アルミニウム化合物とからなる重合触媒である。
AlR1 p q (OR2 x (OSiHR3 4 y (1)
(式中、p≧1、0≦q≦1、x≧0.25、y≧0.15、0.5≦x+y≦1.5、かつp+q+x+y=3、R1 、R2 、R3 、R4 は同一または異なった炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。)
AlR53-n(OR6 n (2)
(式中、0<n≦1、R5 、R6 は同一または異なった炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。)
【0018】
本発明のポリエチレン(A)は、懸濁重合、溶液重合、気相重合等の公知の方法で製造することができる。
ポリエチレン(A)のMFRは、好ましくは0.5〜10g/10分であり、より好ましくは0.5〜3g/10分であり、さらに好ましくは0.8〜2.0g/10分であり、最も好ましくは1.0〜1.6g/10分である。MFRが0.5g/10分以上であると、ゲル、フィッシュアイの発生が少なく成型体の外観が良好であり、10g/10分以下ではドローダウンを起こし難くなり成型が容易である。
ポリエチレン(A)のHLMFRは、好ましくは25〜500g/10分であり、より好ましくは25〜150g/10分、さらに好ましくは40〜100g/10分であり、最も好ましくは50〜80g/10分である。HLMFRが25g/10分以上であると、成型加工時に樹脂圧力および樹脂温度が上昇することがなく高速成型が容易になり、500g/10分を超えると耐衝撃性が不十分となる。
ポリエチレン(A)の密度は、好ましくは945〜970kg/m3 である。密度が945kg/m3 以上では、本発明のポリエチレン組成物の剛性を充分確保できて好ましい。ポリエチレン(A)の密度は、より好ましくは955〜970kg/m3 であり、更に好ましくは960〜967kg/m3 であり、最も好ましくは963〜966kg/m3 である。
【0019】
ポリエチレン(B)は、チタン系触媒を用いて製造されたポリエチレンである。
次にポリエチレン(B)を製造する為の触媒と(B)の製造方法について説明する。
本発明でいうチタン系触媒としては、多孔質高分子材料(但し、マトリックスは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ビニルエステル共重合体、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、エチレン−ビニルエステル共重合体の部分あるいは完全鹸化物等のポリオレフィンやその変性物、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂などの熱硬化性樹脂等を含む)、周期表第2〜4、13または14族に属する元素の無機固体酸化物(例えば、シリカ、アルミナ、マグネシア、塩化マグネシウム、ジルコニア、チタニア、酸化硼素、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化バリウム、五酸化バナジウム、酸化クロム、酸化トリウム、またはこれらの混合物もしくはこれらの複合酸化物)等の担体に、チタン化合物を担持した触媒等の公知の触媒が挙げられる
【0020】
本発明において好ましい触媒としては、例えば、(a)下記一般式(3)で示される有機マグネシウム化合物と、(b)少なくとも1 個のハロゲン原子を含有するチタン化合物と、(c)Al、B、Si、Ge、Sn、Te、Sbのハライド化合物の(a)〜(c)のうち、(a)と(b)あるいは(a)と(b)と(c)とを反応させてなる固体触媒成分[A]と、有機金属化合物[B]からなるものである。
MαMgβR1 p 2 q r s (3)
(式中、αは0又は0より大きい数、p、q、r、sは0または0より大きい数で、p+q+r+s=mα+2 βの関係を有し、Mは周期律表第1族ないし第13族に属する金属元素、mはMの原子価、R1 、R2 は同一または異なった炭素原子数の炭化水素基、X、Yは同一または異なった基で有り、ハロゲン、OR3 、OSiR4 5 6 、NR7 8 、SR9 なる基を表し、R3 、R4 、R5 、R6 、R7 、R8 は水素原子または炭化水素基、R9 は炭化水素基を表す。)
【0021】
有機金属化合物[B]としては、周期律表第1,2,13族の金属化合物で、特に有機アルミニウム化合物、又は有機アルミニウム化合物を含む有機マグネシウム化合物錯体が好ましい。
触媒成分[A]と有機金属化合物成分[B]成分の反応は、重合系内に両成分を添加し、重合条件下に重合の進行と共に行わせることも可能で有り、あらかじめ重合に先立って反応を実施しても良い。
また触媒成分の反応比率は、[A]成分1gに対し、[B]成分1〜3000mmolの範囲で行うことが好ましい。
具体的には、特公昭52−36788、同52−36790、同52−36791、同52−35792、同52−50070、同52−36794、同52−36795、同52−36796、同52−36915、同52−36917、同53−6019号公報、特開昭50−21876、同50−31835、同50−72044、同50−78619、同53−40696の各公報、国際公開第99/28353号パンフレット、に記載のものがある。
【0022】
本発明のポリエチレン(B)は、懸濁重合、溶液重合、気相重合等の公知の方法で製造することができる。
該ポリエチレン(B)は、チタン系触媒を用いて2段重合された、低分子量部分と高分子量部分とからなる重合体であることが好ましく、低分子量部分のMFRは、好ましくは1〜200g/10分であり、より好ましくは5〜100g/10分であり、更に好ましくは10〜50g/10分である。この低分子量成分は、密度が好ましくは945〜975kg/m3 、より好ましくは955〜975kg/m3 であり、エチレンを単独重合もしくはエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとを共重合して得られる。懸濁重合にて製造する際は、低分子量部分は、2.0モル%以下のα−オレフィンを含む溶媒中で製造することが好ましい。
【0023】
本発明のポリエチレン(B)は、エチレンを単独重合して低分子量部分を製造した後、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとを共重合することが好ましい。低分子量部分と高分子量部分の重量比(高分子量部分)/(低分子量部分)は、好ましくは40/60〜60/40であり、高分子量部分の重量比がこの範囲よりも高くなると、メルトフラクチャーが発生し易くなり、高分子量部分の重量比がこの範囲よりも低くなると、ゲルやフィッシュアイが発生し易くなる。より好ましくは(高分子量部分)/(低分子量部分)=40/60〜55/45、更に好ましくは40/60〜50/50である。
本発明において、炭素数3〜20のα−オレフィンとは、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、及び1−イコセンよりなる群から選ばれものである。
【0024】
ポリエチレン(B)のMFRは、好ましくは0.1〜5.0g/10分であり、より好ましくは0.2〜2.0g/10分、更に好ましくは0.4〜1.6g/10分、最も好ましくは0.6〜1.4g/10分である。
ポリエチレン(B)のHLMFRは、好ましくは5〜250g/10分であり、より好ましくは10〜100g/10分、更に好ましくは20〜80g/10分、最も好ましくは30〜60g/10分である。
ポリエチレン(B)の密度は、好ましくは935〜970kg/m3 、より好ましくは940〜965kg/m3 、更に好ましくは945〜960kg/m3 、最も好ましくは950〜955kg/m3 である。
【0025】
本発明においては、ポリエチレン(A)と(B)とは、混合して目的とするポリエチレン組成物とされる。
(A)と(B)の比率は、重量比で(A)/(B)=5/95〜95/5であり、好ましくは30/70〜70/30であり、更に好ましくは35/65〜55/45であり、最も好ましくは35/65〜45/55である。
ポリエチレン組成物を製造する場合の混合方法には特に制限はなく、パウダー状態、スラリー状態、ペレット状態等通常の混合方法が用いられる。混練する場合には150〜300℃の温度で、一軸、二軸の押出機、混練機等で行われる。
該ポリエチレン組成物は、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、帯電防止剤、滑剤、充填剤、他のポリオレフィン、熱可塑性樹脂、ゴム等、通常ポリオレフィンに添加、ブレンドされ得る物質は、必要に応じて使用することが可能である。また、発泡剤を混入させて発泡成形することも可能である。
【0026】
また、ラジカル発生剤や酸素を用いて、架橋することも可能である。(A)と(B)とから成る組成物を架橋する方法としては、該ポリエチレン組成物の粉末を均一に混合する場合に、酸素または酸素を含む気体たとえば空気等を使用するか、または酸素濃度0.5vol%未満の雰囲気で210℃から300℃で熱架橋する方法が特に好ましい。
本発明のポリエチレン組成物は中空成型、射出成型、押出成形、フィルム・シート成形に適し、各種容器、蓋、瓶、パイプ、フィルム、シート、包装材などに使用することが可能である。なかでも時間当たりの押出樹脂量が50kg以上の高速中空成型に好適であり、更に時間当たりの押出樹脂量が200kg以上の超高速中空成型に最適である。また、薄肉中空成型にも好適であり、容器内容積(ml)を容器重量(g)で除した値が、好ましくは20ml/g以上、より好ましくは25ml/g以上の容器を成型する薄肉成型において、本発明のポリエチレン組成物の特徴が顕著になり、外観が良好な製品を成型することができる。容器の具体的な用途としては、食用油容器の如き食品用多層容器などが挙げられる。
【0027】
本発明において示す記号、測定方法及び測定条件は以下の通りである。
(1)MFR:メルトインデックスを表し、JIS−K−7210により、温度190℃、荷重2.16kgの条件下で測定した値で、単位はg/10分である。
(2)HLMFR:高荷重メルトインデックスを表し、JIS−K−7210により、温度190℃、荷重21.6kgの条件下で測定した値で、単位はg/10分である。
(3)密度:JIS−K−7112に従って測定した値で、単位はkg/m3 である。
(4)分子量分布:ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)から求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnの値である。GPC測定は、ウォーターズ社製;GPCV2000を用い、カラム昭和電工(株)製;UT−807(1本)と東ソー(株)製;GMHHR−H(S)HT(2本)を直列に接続、移動相トリクロロベンゼン(TCB)、カラム温度140℃、流量1.0ml/分、試料濃度20mg/15ml(TCB)、注入量413μl、試料溶解温度140℃、試料溶解時間2時間の条件で行う。分子量の校正は、東ソー(株)製標準ポリスチレンのMwが1050〜206万の範囲の12点で行う。それぞれの標準ポリスチレンのMwに係数0.43を掛けてポリエチレン換算分子量とし、溶出時間とポリエチレン換算分子量のプロットから一次の校正直線を作成し、各サンプルの分子量を決定する。
【0028】
(5)溶融粘度:東洋精機製作所社製;キャピログラフ1Cを用い、直径0.77mm、長さ50.8mmのキャピラリーを使用し、測定温度230℃、シェアレート1598sec-1の条件で測定した。単位はPa・sである。
(6)貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G”:Rheometric社製;ARESを用いて、直径25mmのパラレルプレートを使用し、測定温度170℃、周波数0.01rad/sec、歪7.0%の条件で動的粘弾性測定を行い率G’及びG”を求める。単位はPaである。
(7)溶融張力(MT):東洋精機製作所社製;キャピログラフ1Cを用い、温度190℃,オリフィス径2.095mm、オリフィス長さ8.02mm、ダウンスピード0.6cm/分の条件で溶融樹脂を押出し、巻取り機にて2.0m/分の速度で巻き取った時の荷重で、単位はgである。
【0029】
(8)溶融伸度(ME):MT測定と同条件で溶融樹脂を押出し、ストランドの巻取り速度を1m/1分の割合で上げていき、ストランドが破断する巻取り速度を溶融伸度(ME)とする。単位は、m/分である。
(9)引張衝撃強度:ASTM−D1822に準拠し、厚さ1.1〜1.2mmのプレスシートからS型ダンベル試験片を切削し、23℃で測定する。単位はJ/m2 である。
(10)曲げ強さ:JIS−K−7171に従って測定した値で、単位はMPaである。
(11)末端ビニル基数:日本分光社製の「フーリエ変換赤外分光光度計」を使用し、加熱プレスして得られたシート状のポリエチレン組成物の909cm-1の吸光度から求めた。
【0030】
(12)中空成型:スクリュー系55mmの中空成型機、プラコー社製;SB−55を用い、ダイス径48mm、コア径46mm、シリンダー温度210℃、金型温度25℃、金型冷却時間18秒を共通条件として、押出量25kg/時間(条件1)と50kg/時間(条件2)の二条件で容器重量60g、容器内容積1700mlの把手付き中空成型体を成型し、外観、ゲル、融着性、樹脂温度を評価する。
(i)外観:容器の外観を目視で確認し、以下のような判定基準で良否を判断する。
○ 表面に平滑感があり、光沢も認められる。
× 表面の全体に凹凸があって肌荒れを呈し、光沢もない。
(ii)ゲル:容器胴部における成型体1g当たりのゲルの個数を目視により測定する。
(iii)融着性:把手部のピンチオフ部を目視で確認し、以下のような判定基準で良否を判断する。
○ 融着部の肉厚が十分確保されており、穴開き等の不良がない。
× 融着部の肉厚が薄く、穴が開いてしまう。
(iv)樹脂温度:ダイ出口付近の樹脂温度を接触式の温度計で測定する。
【実施例】
【0031】
次に、実施例などを用いて本発明を更に具体的に説明するするが、本発明はこれら実施例などにより何ら限定されるものではない。
[実施例1]
(1)酸化クロム触媒(I)の合成
三酸化クロム4モルを蒸留水80リットルに溶解し、この溶液中にシリカ(W.Rグレースアンドカンパニー製;グレード952)20kgを浸漬し、室温にて1時間攪拌後、このスラリーを加熱して水を留去し、続いて120℃にて10時間減圧乾燥を行った後、600℃にて5時間乾燥空気を流通させて焼成し、クロムを1.0重量%含有した酸化クロム触媒(I)を得た。
【0032】
(2)有機アルミニウム化合物(II)の合成
トリエチルアルミニウム100モル、メチルヒドロポリシロキサン(30℃における粘度:30センチストークス)50モル(Si基準)、n−ヘキサン150リットルを窒素雰囲気下耐圧容器に秤取し、攪拌下50℃で24時間反応させてAl(C2 5 2.5 (OSi・H・CH3 ・C2 5 0.5 ヘキサン溶液を調整した。次にこの溶液100モル(Al基準)を窒素雰囲気下600リットルの反応器に移し、エタノール50リットルとn−ヘキサン50リットルの混合溶液を−10℃にて攪拌下に添加し、添加後50℃まで昇温し、この温度で1時間反応させてAl(C2 5 2.0 (OC2 5 0.5 (OSi・H・CH3 ・C2 5 0.5 ヘキサン溶液を調整した。
【0033】
(3)チタン触媒(III)の合成
充分に窒素置換された15リットルの反応器に、トリクロルシランを2モル/リットルのn−ヘプタン溶液として3リットル仕込み、攪拌しながら65℃に保ち、組成式AlMg6 (C2 5 3 (n−C4 9 6.4 (On−C4 9 5.6 で示される有機マグネシウム成分のn−ヘプタン溶液7リットル(マグネシウム換算で5モル)を1時間かけて加え、更に65℃にて1時間攪拌下反応させた。反応終了後、上澄み液を除去し、n−ヘキサン7リットルで4回洗浄を行い、固体物質スラリーを得た。この固体を分離・乾燥して分析した結果、固体1グラム当たり、Mg7.45ミリモルを含有していた。
このうち固体500gを含有するスラリーを、n−ブチルアルコール1モル/リットルのn−ヘキサン溶液0.93リットルとともに、攪拌下50℃で1時間反応させた。反応終了後上澄みを除去し、7リットルのn−ヘキサンで1回洗浄した。このスラリーを50℃に保ち、ジエチルアルミニウムクロリド1モル/リットルのn−ヘキサン溶液1.3リットルを攪拌下加えて1時間反応させた。反応終了後上澄みを除去し、7リットルのn−ヘキサンで2回洗浄した。このスラリーを50℃に保ち、ジエチルアルミニウムクロリド1モル/リットルのn−ヘキサン溶液0.2リットルおよび四塩化チタン1モル/リットルのn−ヘキサン溶液0.2リットルを加えて、2時間反応した。反応終了後上澄みを除去し、固体触媒を単離し、遊離のハロゲンが検出されなくなるまでヘキサンで洗浄した。この固体触媒は2.3重量%のチタンを有していた。
【0034】
(4)ポリエチレン(A)の製造
単段重合プロセスにおいて、容積230リットルの重合器で重合した。重合温度は78℃、重合圧力は0.98MPaである。この重合器に(1)で合成した酸化クロム触媒(I)50gに、(2)で調整した有機アルミニウム化合物(II)5ミリモル(Al基準)を加えて、室温で1時間反応させて得られた固体触媒を2g/hrの速度で、エタノールとトリヘキシルアルミニウムとをモル比0.98:1で反応させることにより得られた有機アルミニウム化合物が重合器中の濃度が0.08ミリモル/リットルになるよう供給し調整した。精製ヘキサンは60リットル/hrの速度で供給し、またエチレンを12kg/hrの速度で、分子量調節剤として水素を気相濃度が16モル%になるように供給し重合を行った。なお、水素の気相濃度は、ガスクロマトグラフィーを用いた気相の分析により得られた値を用いて、下記の式により算出された値である。
水素の気相濃度(モル%)=水素の気相濃度(モル/リットル)×100
/{水素の気相濃度(モル/リットル)+エチレンの気相濃度(モル/リットル)}
重合器内のポリマーは乾燥工程を経た後パウダーとして得られ、パウダー状のポリエチレン(A−1)のMFRは1.2g/10分、HLMFRは66g/10分、密度は966kg/m3 であった。
【0035】
(5)ポリエチレン(B)の製造
最初に1段目の重合で低分子量成分を製造するために、反応容積300リットルのステンレス製重合器1を用い、重合温度83℃、重合圧力1MPaの条件で、触媒は上記の固体触媒(III)をTi原子換算で1.4ミリモル/hr、トリイソブチルアルミニウムをAl原子換算で20ミリモル/hr、またヘキサンは40リットル/hrの速度で導入した。分子量調整剤としては水素を用い、エチレン、水素、ブテン−1を水素の気相濃度が38モル%、ブテン−1の気相濃度が0.8モル%になるように供給し重合を行った。なお、ブテン−1の気相濃度は、ガスクロマトグラフィーを用いた気相の分析により得られた値を用いて、下記の式により算出された値である。
ブテン−1の気相濃度(モル%)=ブテン−1の気相濃度(モル/リットル)×100/{ブテン−1の気相濃度(モル/リットル)+エチレンの気相濃度(モル/リットル)}
【0036】
重合器1内のポリマースラリー溶液を圧力0.1MPa、温度75℃のフラッシュドラムに導き、未反応のエチレン、水素を分離した後反応容積250リットルの重合器2にスラリーポンプで昇圧して導入した。
重合器2では、温度83℃、圧力0.5MPaの条件下で、トリイソブチルアルミニウムを7.5ミリモル/hr、ヘキサンは40リットル/hrの速度で導入した。これに、エチレン、水素、ブテン−1を水素の気相濃度が6.8モル%、ブテンの気相濃度が4.0モル%になるように導入して、重合器1で生成した低分子量部分と、重合器2で生成した高分子量部分の重量比(高分子量部分)/(低分子量部分)が45/55となるように高分子量部分を重合し、MFRが1.3g/10分、HLMFRが69g/10分、密度が952kg/m3 であるパウダー状のポリエチレン(B−1)を製造した。尚、重合器1で生成した低分子量部分のMFRは、30g/10分、密度は962kg/m3 であった。
【0037】
(6)ポリエチレン組成物の製造
上記の如くして製造したポリエチレン(A−1)および(B−1)のパウダーを重量比で、40/60の割合で混合し、次いでこの混合物にステアリン酸カルシウムを60ppmの濃度になるよう添加し、混合機で攪拌混合した。この混合物をシリンダー径44mmの二軸押出機(日本製鋼所社製;TEX44HCT−49PW−7V)を使用し、シリンダー温度200℃、押出量45kg/時間の条件で混練しながら押出し、ポリエチレン組成物を得た。
このポリエチレン組成物の性能は表1に示すとおり、剛性、耐衝撃性などの物性に優れたものであった。条件1の中空成型では融着性が劣るものの、条件2の中空成型では融着性が良好であり、ゲルの数も少なく、メルトフラクチャーによる肌荒れもなく外観が良好であり、高速中空成型に好適である。
【0038】
[実施例2]
ポリエチレン(A)として、重合温度が86℃、重合圧力が0.84MPa、水素の気相濃度が27モル%であること以外は実施例1と同様の条件で重合することにより得られた、MFRが1.2g/10分、HLMFRが66g/10分、密度が966kg/m3 であるパウダー状のポリエチレン(A−2)を使用した。
他方、ポリエチレン(B)として、重合器1での重合温度が83℃、重合圧力が0.64MPa、水素の気相濃度が63モル%、ブテン−1の気相濃度が0.8モル%であり、重合器2での重合温度が77℃、重合圧力が0.36MPa、水素の気相濃度が12モル%、ブテン−1の気相濃度が4.9モル%であること以外は実施例1と同様の条件で重合することにより得られた、MFRが0.9g/10分、HLMFRが60g/10分、密度が952kg/m3 であるパウダー状のポリエチレン(B−2)を使用した。尚、重合器1で生成した低分子量部分のMFRは、31g/10分、密度は962kg/m3 であった。
実施例1と同様にポリエチレン組成物を製造し、その性能を評価した。
このポリエチレン組成物の性能は、表1に示すとおり、剛性、耐衝撃性などの物性に優れたものであった。条件1の中空成型では融着性が劣るものの、条件2の中空成型では融着性が良好であり、ゲルの数も少なく、メルトフラクチャーによる肌荒れもなく外観が良好であり、高速中空成型に好適である。
【0039】
[実施例3]
ポリエチレン(A)として、実施例2と同様にパウダー状のポリエチレン(A−2)を使用した。
他方、ポリエチレン(B)として、重合器2での重合圧力が0.32MPa、水素の気相濃度が8.3モル%、ブテン−1の気相濃度が5.0モル%であること以外は実施例2と同様の条件で重合することにより得られた、MFRが0.6g/10分、HLMFRが52g/10分、密度が952kg/m3 であるパウダー状のポリエチレン(B−3)を使用した。
実施例1と同様にしてポリエチレン組成物を製造し、その性能を評価した。
このポリエチレン組成物の性能は、表1に示すとおり、剛性、耐衝撃性などの物性に優れたものであった。条件1の中空成型では融着性が劣るものの、条件2の中空成型では融着性が良好であり、ゲルの数も少なく、メルトフラクチャーによる肌荒れもなく外観が良好であり、高速中空成型に好適である。
【0040】
[実施例4]
ポリエチレン(A)として、実施例2と同様にパウダー状のポリエチレン(A−2)を使用した。
他方、ポリエチレン(B)として、重合器2での重合圧力が0.34MPa、水素の気相濃度が10.7モル%、ブテン−1の気相濃度が4.9モル%であること以外は実施例2と同様の条件で重合することにより得られた、MFRが0.8g/10分、HLMFRが59g/10分、密度が952kg/m3 であるパウダー状のポリエチレン(B−4)を使用した。
実施例1と同様にしてポリエチレン組成物を製造し、その性能を評価した。
このポリエチレン組成物の性能は、表1に示すとおり、剛性、耐衝撃性などの物性に優れたものであった。条件1の中空成型では融着性が劣るものの、条件2の中空成型では融着性が良好であり、ゲルの数も少なく、メルトフラクチャーによる肌荒れもなく外観が良好であり、高速中空成型に好適である。
【0041】
[実施例5]
ポリエチレン(A)として、水素の気相濃度が31モル%であること以外は実施例2と同様の条件で重合することにより得られた、MFRが1.6g/10分、HLMFRが75g/10分、密度が966kg/m3 であるパウダー状のポリエチレン(A−3)を使用した。
他方、ポリエチレン(B)として、重合器2での水素の気相濃度が15.1モル%、ブテン−1の気相濃度が2.0モル%であること以外は実施例2と同様の条件で重合することにより得られた、MFRが0.8g/10分、HLMFRが59g/10分、密度が952kg/m3 であるパウダー状のポリエチレン(B−5)を使用した。
実施例1と同様にしてポリエチレン組成物を製造し、その性能を評価した。
このポリエチレン組成物の性能は、表1に示すとおり、剛性、耐衝撃性などの物性に優れたものであった。条件1の中空成型では融着性が劣るものの、条件2の中空成型では融着性が良好であり、ゲルの数も少なく、メルトフラクチャーによる肌荒れもなく外観が良好であり、高速中空成型に好適である。
【0042】
[実施例6]
ポリエチレン(A)として、実施例5と同様にパウダー状のポリエチレン(A−3)を使用した。
他方、ポリエチレン(B)として、重合器2での水素の気相濃度が8.2モル%、ブテン−1の気相濃度が10.1モル%であること以外は実施例2と同様の条件で重合することにより得られた、MFRが1.2g/10分、HLMFRが68g/10分、密度が947kg/m3 であるパウダー状のポリエチレン(B−6)を使用した。
得られたポリエチレン(A−3)およびポリエチレン(B−6)のパウダーを重量比で、60/40の割合で混合した以外は実施例5と同様にしてポリエチレン組成物を得た。
このポリエチレン組成物の性能、は表1に示すとおり、剛性、耐衝撃性などの物性に優れたものであった。条件1の中空成型では融着性が劣るものの、条件2の中空成型では融着性が良好であり、ゲルの数も少なく、メルトフラクチャーによる肌荒れもなく外観が良好であり、高速中空成型に好適である。
【0043】
[比較例1]
ポリエチレン(A)として、実施例1と同様にパウダー状のポリエチレン(A−1)を使用した。
他方、ポリエチレン(B)として、重合器1での温度が85℃、水素の気相濃度が70モル%、ブテン−1の気相濃度が1.0モル%であり、重合器2での温度が80℃、水素の気相濃度が4.0モル%、ブテン−1の気相濃度が3.0モル%であること以外は実施例1と同様の条件で重合することにより得られた、MFRが0.52g/10分、HLMFRが51g/10分、密度が952kg/m3 であるパウダー状のポリエチレン(B−7)を使用した。尚、重合器1で生成した低分子量部分のMFRは、300g/10分、密度は962kg/m3 であった。
実施例1と同様にしてポリエチレン組成物を製造し、その性能を評価した。
このポリエチレン組成物の性能は、表1に示すとおり、剛性と耐衝撃性には優れるものの、ゲルが多く、融着性も悪いものであった。
【0044】
[比較例2]
(1)酸化クロム触媒(IV)の合成
三酸化クロム40ミリモルを蒸留水0.8リットルに溶解し、この溶液中にシリカ(W.Rグレースアンドカンパニ製;グレード952)200gを浸漬し、室温にて1時間攪拌後、このスラリーを加熱して水を留去し、続いて120℃にて10時間減圧乾燥を行った後、800℃にて5時間乾燥空気を流通させて焼成し、クロムを1.0重量%含有した固体触媒成分(IV)を得た。
(2)有機アルミニウム化合物(V)の合成
メタノールとアルミニウムトリヘキシルとをモル比0.96:1で反応させることにより得られた有機アルミニウム化合物(V)を得た。
【0045】
(3)ポリエチレン(A)の製造
上記合成した酸化クロム触媒(IV)を用い、内容量350リットルのジャケット付き重合槽で、液位170リットルで、イソブタン溶媒により重合を行った。重合槽へは、上記固体触媒成分(IV)を2.0g/hrの速度で、有機アルミニウム化合物(V)を濃度が0.08mmol/リットルになるように供給し調整した。精製イソブタンは32リットル/hrの速度で、またエチレンを10kg/hrの速度で供給し、温度が70℃、水素の気相濃度が3モル%、ブテン−1の気相濃度が1.6モル%になるように、全圧2.4MPa、平均滞留時間3.7時間で連続重合を行った。重合器内のポリマーは乾燥工程を経た後パウダーとして得られ、パウダー状のポリエチレン(A−4)のMFRは0.78g/10分、HLMFRは37g/10分、密度は957kg/m3 であった。このポリエチレン(A−4)に実施例1のポリエチレン組成物と同様に、ステアリン酸カルシウムを添加し、二軸押出機にて混練してポリエチレン樹脂を得た。
このポリエチレン組成物の性能は、表1に示すとおり、剛性と耐衝撃性には優れるものの、条件2の高速中空成型において、メルトフラクチャーが発生し外観が劣る結果となった。
【0046】
[比較例3]
ポリエチレン(A)として、重合温度は86℃、重合圧力は0.87MPa、水素の気相濃度を40モル%であること以外は実施例2と同様に重合することにより得られた、MFRは2.3g/10分、HLMFRは77g/10分、密度は966kg/m3 であるパウダー状のポリエチレン(A−5)を使用した。
他方、ポリエチレン(B)として、重合器1での重合圧力が0.51MPa、水素の気相濃度が64.5モル%、ブテン−1の気相濃度が0モル%であり、重合器2での重合圧力が0.39MPa、水素の気相濃度が9.4モル%、ブテン−1の気相濃度が7.0モル%であること以外は実施例2と同様の条件で重合することにより得られた、MFRが1.2g/10分、HLMFRが68g/10分、密度が954kg/m3 であるパウダー状のポリエチレン(B−8)を製造した。尚、重合器1で生成した低分子量部分のMFRは、30g/10分、密度は962kg/m3 であった。
得られたポリエチレン(A−5)およびポリエチレン(B−8)のパウダーを重量比で、30/70の割合で混合したほかは実施例1と同様にしてポリエチレン組成物を製造し、その性能を評価した。
このポリエチレン組成物の性能は、表1に示すとおり、剛性、耐衝撃性などの物性に優れるものの、中空成型では融着性が劣る結果となった。
【0047】
[比較例4]
ポリエチレン(A)として、ブテン−1の気相濃度が4.0モル%であること以外は実施例2と同様の条件で重合することにより得られた、MFRが1.6g/10分、HLMFRが75g/10分、密度が959kg/m3 であるパウダー状のポリエチレン(A−6)を使用した。
他方、ポリエチレン(B)として、重合器1での水素の気相濃度が58モル%、ブテン−1の気相濃度が0.8モル%、重合器2での重合圧力が0.34MPa、水素の気相濃度が11.4モル%、ブテン−1の気相濃度が5.0モル%であること以外は実施例2と同様に重合することにより得られた、MFRが0.9g/10分、HLMFRが58g/10分、密度が943kg/m3 であるパウダー状のポリエチレン(B−9)を使用した。尚、重合器1で生成した低分子量部分のMFRは、30g/10分、密度は962kg/m3 であった。
得られたポリエチレン(A−6)およびポリエチレン(B−9)のパウダーを重量比で、40/60の割合で混合したほかは実施例1と同様にしてポリエチレン組成物を得、その性能を評価した。
このポリエチレン組成物の性能は、表1に示すとおり、耐衝撃性などの物性や中空成型の融着性には優れるものの、条件2の高速中空成型において、メルトフラクチャーが発生し外観が劣る結果となった。
【0048】
[比較例5]
ポリエチレン(A)として、実施例1と同様に製造された、パウダー状のポリエチレン(A−1)を使用した。
他方、ポリエチレン(B)として、重合器1での水素の気相濃度が69モル%、ブテン−1の気相濃度が1.1モル%、重合器2での水素の気相濃度が6.6モル%、ブテン−1の気相濃度が8.2モル%であること以外は実施例2と同様な条件で重合することにより得られた、MFRが1.0g/10分、HLMFRが62g/10分、密度が951kg/m3 であるパウダー状のポリエチレン(B−10)を使用した。尚、重合器1で生成した低分子量部分のMFRは、70g/10分、密度は962kg/m3 であった。
得られたポリエチレン(A−1)およびポリエチレン(B−10)のパウダーを重量比で、50/50の割合で混合したほかは実施例1と同様にしてポリエチレン組成物を得た。
このポリエチレン組成物の性能は、表1に示すとおり、中空成型の融着性や、条件2の高速中空成型において、メルトフラクチャーが発生し外観が劣る結果となった。
【0049】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のポリエチレン組成物は、高速中空成型において外観が良好な中空成型体を得ることが可能である。特に高速中空成型用途や薄肉中空成型用途に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロム系触媒を用いて製造されたポリエチレン(A)とチタン系触媒を用いて製造されたポリエチレン(B)からなり、組成物中のポリエチレン(A)の量が5〜95重量%の範囲にあり、組成物のMFRが0.4〜2.0g/10分、密度が940〜965kg/m3 であり、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)から求められる重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比である分子量分布(Mw/Mnの値)が7〜20、測定温度230℃でかつシェアレート1598sec-1における溶融粘度が180〜230Pa・s、測定温度170℃でかつ周波数0.01rad/secにおける動的粘弾性測定から求められる貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”の比G”/G’とMFRの関係がLog(MFR)+1.5≦G”/G’≦Log(MFR)+2.5、であることを特徴とするポリエチレン組成物。
【請求項2】
ポリエチレン(A)が、有機金属化合物で処理されたクロム系触媒と助触媒からなる組み合わせの触媒系で製造されたものであることを特徴とする請求項1に記載のポリエチレン組成物。
【請求項3】
ポリエチレン(B)が、2段重合により製造されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエチレン組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリエチレン組成物からなることを特徴とする中空成型体。