説明

ポリオレフィン系フィルム

【目的】引っ張り弾性率、引っ張り強度、引っ張り伸度等の引っ張り時の機械物性や透明性に優れ、且つ応力緩和性に優れ良好な二次加工性を有するポリオレフィン系フィルムを提供すること。
【構成】(a)ポリブテン成分、ポリプロピレン成分、及びプロピレン−エチレンランダム共重合体成分を含むブロック共重合体であって、ポリブテン成分が0.01〜5重量%、ポリプロピレン成分が1〜70重量%、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分が25〜98.99重量%であり、該プロピレン−エチレンランダム共重合体成分はエチレンに基づく単量体単位を10〜40モル%、プロピレンに基づく単量体単位を90〜60モル%含むランダム共重合体で構成されてなり、メルトインデックス(MI)が0.5〜30(g/10min)であるプロピレン系ブロック共重合体 5〜99重量%、(b)ポリプロピレン 95〜1重量%よりなる、好適には厚みが10〜200μmであるポリオレフィン系フィルム。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ポリオレフィン系フィルム、詳しくは、引っ張り弾性率、引っ張り強度、引っ張り伸度等の引っ張り時の機械物性と透明性が良好で、かつ二次加工性にも優れるポリオレフィン系フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、表面保護フィルム、ダイシングフィルム、ラップフィルム、シュリンクフィルム、シーラント用フィルム、粘着テープ、マーキングフィルム、農業用フィルム、医療用フィルム等のさまざまなフィルム用途には軟質ポリ塩化ビニル(以下、軟質PVCと略する)が価格、二次加工性及び品質安定性の点から幅広く使用されてきた。しかし、可塑剤を多く含むことから軟質PVCの使用は食品、あるいは医療用の分野では好ましくなかった。特に近年、リサイクルなどの環境問題が重要視されてきたことから塩素を含有する軟質PVCの使用はあらゆる分野で使用が問題視されている。
【0003】このため最近では、上記軟質PVCの代替材料としてポリオレフィン系樹脂を用いたフィルムの開発が積極的に行われている。このようなポリオレフィン系樹脂を用いたフィルムの原料としては、ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】これらのうち、ポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレンが結晶性であるために柔軟性に乏しく引っ張り時の機械物性が十分でないという欠点を有していた。また、ポリエチレン系フィルムはポリエチレン自体の融点が低いために耐熱性に乏しいという欠点を有していた。そして、こうしたポリオレフィン系フィルムには、包装物の透視性等の観点から、通常、良好な透明性を有することが要求されていた。
【0005】一般に柔軟性を得るためにポリプロピレン中に非晶質エチレンプロピレンゴム(以下、「EPR」とも略する)等の軟質ポリマーを添加する方法もあるが、透明性、および柔軟性を、満足できるだけの値で両立させる事は困難であった。
【0006】さらにこれらのポリオレフィン系フィルムは、軟質PVCフィルムを代替するために必要な応力緩和性が十分でなく二次加工性等が悪いと言う欠点があり、該軟質PVCフィルム用途の代替品としては、もう一歩満足できるものではなかった。
【0007】以上の背景にあって本発明は、引っ張り弾性率、引っ張り強度、引っ張り伸度等の引っ張り時の機械物性や透明性に優れ、且つ応力緩和性にも優れ良好な二次加工性を有するポリオレフィン系フィルムを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の問題を解決するために研究を重ねた結果、特定の組成を持ち、特定のメルトインデックス(以下、「MI」とも略する)を有するプロピレン系ブロック共重合体を使用したポリオレフィン系フィルムを用いることにより、上記課題が解決できることを見いだし本発明を完成するに至った。
【0009】即ち、本発明は、(a)ポリブテン成分、ポリプロピレン成分、及びプロピレン−エチレンランダム共重合体成分を含むブロック共重合体であって、ポリブテン成分が0.01〜5重量%、ポリプロピレン成分が1〜70重量%、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分が25〜98.99重量%であり、該プロピレン−エチレンランダム共重合体成分はエチレンに基づく単量体単位を10〜60モル%、プロピレンに基づく単量体単位を90〜40モル%含むランダム共重合体で構成されてなり、メルトインデックス(MI)が0.5〜30(g/10min)であるプロピレン系ブロック共重合体 5〜99重量%、(b)ポリプロピレン 95〜1重量%よりなるポリオレフィン系フィルムである。
【0010】本発明において、フィルム原料となるプロピレン系ブロック共重合体(a)(以下、単に「ブロック共重合体」と略称する。)は、ポリブテン成分、ポリプロピレン成分及びプロピレン−エチレン共重合体成分よりなる。 ここで、このポリブテン成分、ポリプロピレン成分およびプロピレン−エチレンランダム共重合体成分それぞれの成分割合は、ポリブテン成分が0.01〜5重量%、ポリプロピレン成分が1〜70重量%、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分が25〜98.99重量%である。
【0011】本発明において、ブロック共重合体のポリブテン成分は該共重合体粒子の粒子性状を良好とするために必須である。特に、ポリプロピレン成分の含量が少ないとき、例えば、30重量%以下のときには得られる共重合体粒子が粘着しやすくなるが、そのようなときにもポリブテン成分の存在により、良好な流動性の共重合体粒子とすることができる。また、このポリブテン成分は、得られるポリオレフィン系フィルムを透明性に優れるものとするためにも必須である。ポリブテン成分が0.01重量%未満である場合、得られるフィルムの透明性が十分でなくなる。また、重合により得られた共重合体粒子が堆積放置されたときに、その荷重により固結し、更に共重合体粒子が50〜70℃となった場合に著しく流動性に劣るために好ましくない。一方、ポリブテン成分が5重量%を越える場合、却ってブロック共重合体の流動性が低下し好ましくない。ポリブテン成分の割合は、ブロック共重合体粒子のより良好な流動性を勘案すると0.04〜3重量%の範囲が好ましい。
【0012】また、ポリプロピレン成分が1重量%よりも少ないとプロピレン系樹脂組成物からなるフィルムの強度及び耐熱性が低下する。ポリプロピレン成分の割合が70重量%を越えると、フィルムの柔軟性、および低温耐衝撃性が低下し、所期の目的のポリオレフィン系フィルムを得ることができない。ポリプロピレン成分は、柔軟性、機械的強度、耐熱性および低温耐衝撃性等を勘案すると、3〜60重量%の範囲であることが好ましく、30重量%以下のときには柔軟性および透明性が良好となる。
【0013】さらに、エチレン−プロピレンランダム共重合体成分は25〜98.99重量%である。上記成分が25重量%未満のときは低温衝撃性に劣り、98.99重量%を越えると、成形品の強度及び耐熱性などの機械的物性に劣り好ましくない。エチレン−プロピレンランダム共重合体成分は低温衝撃性や機械的強度、耐熱性を勘案すると、40〜97重量%の範囲であることが好ましい。
【0014】本発明で使用するブロック共重合体には、ポリブテン成分、ポリプロピレン成分、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分のいづれかひとつ以上に、プロピレン系樹脂組成物の物性を阻害しない限り、他のα−オレフィンが少量、例えば5モル%以下の範囲で共重合されて含まれていてもよい。
【0015】本発明で使用するブロック共重合体は、ポリブテン成分、ポリプロピレン成分及びプロピレン−エチレンランダム共重合体成分の少なくとも2種以上が一分子鎖中に配列したいわゆるブロック共重合体の分子鎖と、ポリブテン成分、ポリプロピレン成分及びプロピレン−エチレンランダム共重合体成分のそれぞれ単独よりなる分子鎖とが機械的な混合では達成できない程度にミクロに混合しているものと考えられる。
【0016】本発明で使用するブロック共重合体中のポリブテン成分は、ブロック共重合体の粒子の固結防止、高温時の流動性を良好にするためには、アイソタクティシティが0.90以上であることが好ましい。ポリ1−ブテンのアイソタクティシティは13C−NMRにより測定を行い、ポリマー・ジャーナル(PolymerJ.)第16巻(1984年)716〜726頁に基づいて帰属を行ったときのmmの値である。
【0017】前記のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分中におけるエチレンに基づく単量体単位及びプロピレンに基づく単量体単位のそれぞれの含有割合は、エチレンに基づく単量体単位10〜60モル%、好ましくは12〜45モル%である。プロピレンに基づく単量体単位は90〜40モル%、好ましくは88〜55モル%である。エチレンに基づく単量体単位の含有割合が10モル%未満であり、プロピレンに基づく単量体単位の含有割合が90モル%を越える場合、得られるフィルムの柔軟性、低温耐衝撃性及び応力緩和性が十分でなくなり好ましくない。一方、エチレンに基づく単量体単位の含有割合が60モル%を越え、プロピレンに基づく単量体単位の含有割合が40モル%未満である場合、得られるフィルムの透明性や強度及び耐熱性が十分でなくなり好ましくない。
【0018】本発明で使用するブロック共重合体は、通常、重合により流動性に優れた粉状体で得られる取扱い易い。これは、本発明で使用するブロック共重合体と同様のエチレン含量である従来のプロピレン−エチレンランダム共重合体が粒子同士の粘着により、塊状で得られることを考えると驚異的なことである。
【0019】なお、こうしたブロック共重合体は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略する)で測定した溶出曲線における分子量1万以下の成分の割合が1.0重量%以下、好ましくは0.6重量%以下であるのが、良好な粉状性を有し、上記取扱い性等に特に優れるため好適である。
【0020】本発明で使用するブロック共重合体は、いかなる方法によって得てもよい。特に好適に採用される方法を例示すれば次の方法である。
【0021】即ち、下記成分A及びB、または、さらにCおよび/またはDA.チタン化合物B.有機アルミニウム化合物C.電子供与体D.一般式(i)
R−I (i)
(但し、Rはヨウ素原子又は炭素原子数1〜7のアルキル基又はフェニル基である。)で示されるヨウ素化合物の存在下にプロピレンを0.1〜500gポリマー/g・Ti化合物の範囲となるように予備重合を行って触媒含有予備重合体を得て、次いで該触媒含有予備重合体の存在下に1−ブテンの重合及びプロピレンの重合を経てプロピレンとエチレンとの混合物のランダム共重合を順次行い、高分子量の粉状物を得る方法が好適である。
【0022】かかる製造方法は、特開平5−287035号公報等に詳述されており、本発明において上記ブロック共重合体は、該方法に準じて製造するのが好ましい。なお、その場合、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分の重合にあたっては、共重合が、プロピレンに基づく単量体単位が90〜40モル%、好ましくは88〜55モル%、及びエチレンに基づく単量体単位が10〜60モル%、好ましくは12〜45モル%の範囲となるように、プロピレンとエチレンとを混合して行うことが必要である。そのためには、通常、プロピレンとエチレンとの混合割合がガス状態でのエチレン濃度で3〜60モル%、好ましくは4〜50モル%となるように選べば好適である。
【0023】以上のような方法により製造されたブロック共重合体は、通常、そのMIは、大きくてもせいぜい0.1程度である。本発明のフィルムにおいてブロック共重合体は、MIの範囲が、0.5〜30(g/10min)、好ましくは1.0〜15(g/10min)であることが必要であるため、上記ブロック共重合体は、さらに有機過酸化物で分解するなどにより、該MI値に調整して使用するのが一般的である。ここで、MIが0.5より小さい場合には成形時のメルトフラクチャーが激しい上、サージングがひどく、フィルムの成膜が困難になる。また、MIが30より大きい場合には成形時のドローダウンが激しい上、ロールへの貼り付きが強くなり、やはりフィルムの成膜が困難になる。
【0024】ブロック共重合体を分解する際に使用する有機過酸化物としては、公知の化合物を何等制限なく用いうるが、代表的なものを例示すると、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド;イソブチリルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド;ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシ−イソプロピル)−ベンゼン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)−ヘキサン−3等のジアルキルパ−オキサイド;1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ジ−(t−ブチルパーオキシ)−ブタン等のパーオキシケタール;t−ブチルパーオキシ−ピバレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のアルキルパーエステル;t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等のパーカーボネート類等を挙げることができる。
【0025】上記した有機過酸化物の配合量は特に制限されないが、一般には、ブロック共重合体100重量部に対して、0.001〜5重量部、さらに0.002〜3重量部の範囲であることが好ましい。
【0026】上記したブロック共重合体と有機過酸化物の混練は、一般には、ブロック共重合体の融点且つ有機過酸化物の分解温度以上の温度で公知の混練装置を使用して行われる。例えば、スクリュー押出機、バンバリーミキサー、ミキシングロールなどを用いて、160〜330℃、好ましくは、170〜300℃で混練する方法を採用することができる。また、溶融混練は、窒素ガスなどの不活性ガス気流下で行うこともできる。なお、溶融混練前に公知の混合装置、例えば、タンブラー、ヘンシェルミキサー等を使用して予備混合を行うこともできる。
【0027】上記したブロック共重合体と有機過酸化物の混練時に、他の樹脂、公知の添加剤、例えば、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、結晶核剤等を配合することは適宜行うことができる。
【0028】なお、本発明で用いるブロック共重合体は、上記MIを有する他に、上記有機過酸化物による分解などの処理を調整することにより、分子量分布が特定の値に狭くなっているものを用いるのが好ましい。具体的には、GPCで測定した重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が1.5〜4、好適には1.7〜3.5の範囲にあるものを用いるのが好ましい。この範囲において得られるフィルムは、フィルムのべたつきなどがなく最も柔軟性や透明性等の性状の好ましいものとなる。
【0029】次に、本発明のポリオレフィン系フィルムでは、他の原料成分としてポリプロピレン(b)が配合される。かかるポリプロピレンは、公知のものが何等制限なく使用できる。一般には、プロピレンの90モル%以上とプロピレン以外のα−オレフィンの10モル%以下とのランダム共重合体、またはブロック共重合体が挙げられる。ここで、上記α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、4−メチル−1−ペンテン等が好適である。
【0030】本発明において、ブロック共重合体(a)とポリプロピレン(b)の配合割合は、ブロック共重合体のが5〜99重量%、好ましくは10〜97重量%であり、。ポリプロピレン(b)が1〜95重量%、好ましくは3〜90重量%である。ここで、ブロック共重合体の含有率が、5重量%よりも少ない場合には、得られるフィルムの柔軟性が不十分となり好ましくない。また、ブロック共重合体の含有率が、99重量%よりも多い場合には、ポリプロピレンの均一な分散が困難になり、得られるフィルムの性状が悪くなり好ましくない。
【0031】本発明において、上記ブロック共重合体(a)とポリプロピレン(b)とを溶融混練する際に他の樹脂、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、メタロセン触媒により得られるポリエチレン、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体やエチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンワックス、石油樹脂、水添スチレン−ブタジエン−スチレン樹脂、水添スチレン−イソプレン−スチレン樹脂、水添スチレン−ブタジエン樹脂等を得られるフィルムの物性を損なわない範囲内で添加して用いることも可能である。
【0032】本発明において、以上のブロック共重合体(a)とポリプロピレン(b)とからなるポリオレフィン系フィルムの厚みは、透明性の良好さ及びフィルムの成膜性を勘案すれば10〜200μm、好ましくは20〜180μmであることが好ましい。上記ブロック共重合体(a)とポリプロピレン(b)とからなる組成物は、いわゆるシ−トと呼ばれるもののような厚手のものに成形しても、十分な透明性は有さない。
【0033】本発明において、ブロック共重合体(a)とポリプロピレン(b)とからなる組成物をフィルムに成形する方法は、公知のフィルム成形方法が特に制限されることなく採用できる。その際の成形温度は、メルトフラクチャーの発生やフィルムの成形性、樹脂の熱劣化等を勘案すると、通常、200〜300℃、好ましくは220〜270℃であるのが好適である。
【0034】フィルムの成形方法としては、公知のあらゆる成形方法が特に制限なく採用できるが、通常は、Tダイによる無延伸フィルム、あるいはカレンダー成形やインフレーション成形等の成形方法が使用できる。また、本発明におけるフィルムは、上記のようなオレフィン系樹脂を単層で用いる他にホモポリプロピレン、プロピレンランダム共重合体、プロピレンブロック共重合体、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、メタロセン触媒により得られるポリエチレン、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体やエチレン−酢酸ビニル共重合体等の他樹脂との押出ラミネーションあるいは多層共押出成形等により複層(2〜5層)化して使用する事もできる。
【0035】なお、本発明のポリオレフィン系フィルムは、引っ張り時の機械物性や透明性に優れる他、応力緩和性に優れ、良好な二次加工性を有している。通常、後述する方法で測定した応力緩和の値が45〜80%、好適には50〜80%であるのが一般的である。こうした応力緩和にあるフィルムは、引き延ばした後のフィルムの表面状態が良く、また、引き延ばし時の成形性も良好である。従って、かかるポリオレフィン系フィルムの特性は、表面保護フィルム、粘着基材フィルムなどの引き延ばして使用する用途において好適である。
【0036】
【発明の効果】本発明のポリオレフィン系フィルムは、柔軟性が良好で、引っ張り弾性率、引っ張り強度、引っ張り伸度等の引っ張り時の機械物性に優れ、良好な透明性を有する。また、応力緩和性に優れ良好な二次加工性を有している。このため、本発明のポリオレフィン系フィルムは、従来のポリオレフィン系フィルムが用いられている種々の分野に好適に用いることができるばかりでなく、軟質PVCフィルム等のポリオレフィン以外の樹脂フィルムが用いられている分野にも好適に用いることができる。
【0037】例えば、表面保護フィルム、車両用保護フィルム、ダイシングフィルム、化粧フィルム、ラップフィルム、シュリンクフィルム、ストレッチフィルム、パレットストレッチフィルム、シーラント用フィルム、熱溶着フィルム、熱接着フィルム、貼布フィルム、バンソウコウ基材フィルム、ラベル用フィルム、建材用フィルム、建材表皮フィルム、文具用フィルム、粘着基材フィルム、粘着テープ、結束テープ、マスキングテープ、表示用テープ、包装用フィルム、包装用テープ、電気絶縁テープ、マーキングフィルム、農業用フィルム、ハウス用フィルム、医療用フィルム医療用粘着テープ、輸液バッグ、サージカルテープ等に採用できる。なお、こうした用途には、本発明のポリオレフィン系フィルムにおいて、ポリプロピレン(b)成分を配合させない前記ブロック共重合体(a)成分のみからなるフィルムを用いても、同様な良好な結果が得られる。
【0038】
【実施例】以下、本発明を実施例及び比較例を掲げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0039】以下の実施例において用いた測定方法について説明する。
【0040】1)重量平均分子量、分子量1万以下の割合は、GPC(ゲルパーミェーションクロマトグラフィー)法により測定した。ウォーターズ社製GPC−150CによりO−ジクロルベンゼンを溶媒とし、135℃で行った。用いたカラムは、東ソー製TSK gel GMH6−HT、ゲルサイズ10〜15μである。較正曲線は標準試料として重量平均分子量が950、2900、1万、5万、49.8万、270万、675万のポリスチレンを用いて作成した。
【0041】2)プロピレン−エチレンランダム共重合体成分におけるエチレンに基づく単量体単位及びプロピレンに基づく単量体単位のそれぞれ割合の測定方法及びポリブテン成分の割合の測定方法13C−NMRスペクトルのチャートを用いて算出した。即ち、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分におけるエチレンに基づく単量体単位及びプロピレンに基づく単量体単位のそれぞれの割合は、まず、ポリマー(Polymer)第29巻(1988年)1848頁に記載された方法により、ピークの帰属を決定し、次にマクロモレキュールズ(Macromolecules)第10巻(1977年)773頁に記載された方法により、エチレンに基づく単量体単位及びプロピレンに基づく単量体単位のそれぞれの割合を算出した。
【0042】次いで,プロピレンに基づいて単量体単位中のメチル炭素に起因するピークと、ポリブテン成分中のメチル炭素に起因するピークとの積分強度比からポリブテン成分の重量と割合を算出した。
【0043】3)ポリ1−ブテンのアイソタクティシィティーの測定13C−NMRにより測定を行い、ポリマー・ジャーナル(Polymer J.)第16巻(1984年)716〜726頁に基づいて行った。
【0044】4)MIJIS K7210に準じて測定した。
【0045】5)引張弾性率、引張強度、引張伸度JIS Z1521に準じて測定した。
【0046】6)ヘイズ測定JIS K6714に準じてで測定した。
【0047】7)応力緩和測定短冊状に切り出した試験片を10%延伸し、5分間保持する。5分後の応力の値を測定し、延伸時の最大応力値との関係から求める。
【0048】応力緩和値=(最大応力値−5分後の応力値)/最大応力値製造例1−1〜1−3(予備重合)攪拌機を備えた内容積1リットルのガラス製オートクレーブ反応器を窒素ガスで十分に置換した後、ヘプタン400mlを装入した。反応器内温度を20℃に保ち、ジエチレングリコールジメチルエーテル0.18mmol、ヨウ化エチル22.7mmol、ジエチルアルミニウムクロライド18.5mmol、及び三塩化チタン(丸紅ソルベイ化学社製「TOS−17」)22.7mmolを加えた後、プロピレンを三塩化チタン1g当たり3gとなるように30分間連続的に反応器に導入した。なお、この間の温度は20℃に保持した。プロピレンの供給を停止した後、反応器内を窒素ガスで十分に置換し、得られたチタン含有ポリプロピレンを精製ヘプタンで4回洗浄した。分析の結果、三塩化チタン1g当たり2.9gのプロピレンが重合されていた。
【0049】(本重合)
工程1:1−ブテンの重合攪拌機を備えた内容量1リットルのステンレス製オートクレーブ反応器を窒素ガスで十分に置換した後、ヘプタン400mlを装入した。反応器内温度を20℃に保ち、ジエチルアルミニウムクロライド18.15mmol、ジエチレングリコールジメチルエーテル0.18mmol、ヨウ化エチル22.7mmol、予備重合で得られたチタン含有ポリプロピレンを三塩化チタンとして22.7mmolを加えた後、1−ブテンを三塩化チタン1g当たり15gとなるように2時間連続的に反応器に導入した。なお、この間の温度は20℃に保持した。1−ブテンの供給を停止した後、反応器内を窒素ガスで置換し、チタン含有ポリ1−ブテン重合体を得た。分析の結果、三塩化チタン1g当たり14gの1−ブテンが重合されていた。
【0050】工程2:プロピレンの重合及びプロピレンエチレンの共重合N置換を施した2リットルのオートクレーブに、液体プロピレンを1リットル、ジエチルアルミニウムクロライド0.70mmolを加え、オートクレーブの内温を70℃に昇温した。チタン含有ポリ1−ブテン重合体を三塩化チタンとして0.087mmol加え、70℃で60分間のプロピレンの重合を行った。この間水素は用いなかった。次いでオートクレーブの内温を急激に55℃に降温すると同時にエチルアルミニウムセスキエトキシド(Et3Al2(OEt)3)0.50mmol及びメタクリル酸メチル0.014mmolの混合溶液を加え、エチレンを供給し、気相中のエチレンガス濃度が、7.0mol%となるようにし、55℃で120分間のプロピレンとエチレンの共重合を行った。この間のエチレンガス濃度はガスクロマトグラフで確認しながら7.0mol%を保持した。この間水素は用いなかった。重合終了後、未反応モノマーをパージし、粒子性の重合体を得た。重合槽内及び攪拌羽根への付着は全く認められなかった。収量は140gであり、全重合体の重合倍率は7370g−ポリマー/g−三塩化チタンであった。
【0051】また、別に上記のプロピレンだけの重合を行った結果、上記70℃、60分間で、三塩化チタン1g当たり、1030gのプロピレンが重合されていた。この結果、ブロック共重合体中のポリブテン成分は0.19重量%、及びポリプロピレン成分は14重量%であることがわかる。結果を表1に示した。
【0052】次に、得られた重合体30kgに、有機過酸化物として1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンを表2に示す割合で添加し、また、酸化防止剤を0.1phr添加し、ヘンシェルミキサーで1分間混合した後、φ65mm単軸押出機で230℃の条件で溶融混練し、ペレットを得た。
【0053】製造例2,3製造例1の1−ブテンの重合に於いて、1−ブテンの重合量を三塩化チタン1g当たり、3g、50gとした以外は、製造例1と同様の操作を行った。結果を表1に示した。さらに、製造例1と同様にして表2に示した量の有機過酸化物と溶融混練した。
【0054】製造例4,5,製造例1のプロピレンの重合に於いて、プロピレンの重合を60℃で10分間、30分間、とした以外は製造例1と同様の操作を行った。別途の重合実験でこの時のプロピレンの重合倍率はそれぞれ240g−ポリマー/g−三塩化チタン、及び540g−ポリマー/g−三塩化チタンであった。結果を表1に示した。さらに、製造例1と同様にして表2に示した量の有機過酸化物と溶融混練した。
【0055】製造例6〜7−3製造例のプロピレン−エチレン共重合において、気相中のエチレンガス濃度が12及び18mol%となるようにした以外は製造例1と同様の操作を行った。結果を表1に示した。さらに、製造例1と同様にして表2に示した量の有機過酸化物と溶融混練した。
【0056】比較製造例1製造例1の本重合において、1−ブテンの重合を行わなかった以外は製造例1と同様の操作を行った。結果を表1に示した。さらに、製造例1と同様に表2に示した量の有機過酸化物と溶融混練した。
【0057】比較製造例2製造例1の本重合において、1−ブテンの重合を三塩化チタン1gあたり、600gとした以外は、製造例1と同様の操作を行った。結果を表1に示した。さらに、製造例1と同様に表2に示した量の有機過酸化物と溶融混練した。
【0058】
【表1】


【0059】
【表2】


【0060】実施例1〜3製造例1−1〜1−3で得られたペレットとMIが2.0(g/10min)のポリプロピレンとを表3に示した配合割合で混合した後、260℃に加熱された90mmφ押出機に供給し、Tダイ口金から押出し、表面温度50℃に調整されたキャスティングドラムでキャストし、厚さ150μmの無延伸シートを得た。得られたフィルムを長手方向、幅方向それぞれに10mm幅の短冊状に切り出し、試験片とし、引張試験(引張弾性率、引張強度、引張伸度の測定)を行った。また、同様にして切り出した試験片により応力緩和を測定した。さらに50mm角に切り出した試験片からヘイズを測定した。これらの物性を表3に示した。
【0061】実施例4〜19製造例2〜7−3で製造した重合体を用いて、表3及び表4に示した配合割合で実施例1と同様にしてフィルムに成形し、その物性を表3及び表4に示した。
【0062】実施例20,21実施例8において、フィルムの厚みを100μm、及び200μmとする以外は実施例8と同様にしてフィルムに成形し、その物性を表4に示した。
【0063】実施例22実施例8において、ポリプロピリンとしてMIが3.0(g/10min)であり、エチレン単位が5.6モル%のプロピレン−エチレンランダム共重合体を用いる以外は、実施例8と同様にしてフィルムに成形し、その物性を表4に示した。
【0064】比較例1,2比較製造例1,2で製造したブロック共重合体を表4に示した配合割合でMIが2.0(g/10min)のプロピレン単独重合体と混合したものを実施例1と同様にしてフィルムに成形し、その物性を表5に示した。
【0065】比較例3実施例8において、シ−トの厚みを350μmとする以外は実施例8と同様にしてフィルムに成形し、その物性を表5に示した。
【0066】比較例4バナジウム触媒を使用して製造されたMIが1.8g/10minでエチレン単位が88モル%のエチレンプロピレンゴム(EPR)を表5に示した配合割合でポリプロピレンと混合したものを実施例1と同様にしてフィルムに成形し、その物性を表5に示した。
【0067】比較例5MIが3.0g/10minでエチレン単位が87.4モル%のエチレン−ブテン−1コポリマー(LLDPE)を表5に示した配合割合でポリプロピレンと混合したものを実施例1と同様にしてフィルムに成形し、その物性を表5に示した。
【0068】
【表3】


【0069】
【表4】


【0070】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】(a)ポリブテン成分、ポリプロピレン成分、及びプロピレン−エチレンランダム共重合体成分を含むブロック共重合体であって、ポリブテン成分が0.01〜5重量%、ポリプロピレン成分が1〜70重量%、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分が25〜98.99重量%であり、該プロピレン−エチレンランダム共重合体成分はエチレンに基づく単量体単位を10〜60モル%、プロピレンに基づく単量体単位を90〜40モル%含むランダム共重合体で構成されてなり、メルトインデックス(MI)が0.5〜30(g/10min)であるプロピレン系ブロック共重合体 5〜99重量%、(b)ポリプロピレン 95〜1重量%よりなるポリオレフィン系フィルム。