説明

ポリオレフィン系樹脂組成物の製法

【目的】 すぐれた加工性および表面性を同時に呈するポリテトラフルオロエチレンおよびポリオレフィンなどからなるポリオレフィン系樹脂組成物の製法を提供すること。
【構成】 ポリテトラフルオロエチレン(B)および0.1〜700ミクロンの平均粒径を有する分散媒パウダー(C)0.002〜100部を、該分散媒パウダー(C)とポリテトラフルオロエチレン(B)との比率(C)/(B)が100/50〜100/0.001となる範囲で予め高剪断下で混合し、ポリテトラフルオロエチレン(B)を繊維化してマスターバッチを作製し、該マスターバッチとポリオレフィン(A)とを混合することを特徴とするポリオレフィン系樹脂組成物の製法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ポリオレフィン系樹脂組成物の製法に関する。さらに詳しくは、ポリテトラフルオロエチレン、分散媒パウダーからなるマスターバッチとポリオレフィンとを、および要すれば造核剤、または無機充填剤とをさらに混合してなる加工性、表面性、透明性などの良好なるポリオレフィン系樹脂組成物の製法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ポリオレフィンは、安価で、物理的特性にすぐれているため、各種成形体などに広く利用されている。
【0003】しかしながら、たとえばポリプロピレンには、溶融時の粘度および張力が低いため、シートの真空成形性(以下、熱成形性という)、カレンダー成形性、ブロー成形性、発泡成形性などの加工性が劣るなどの欠点を有している。
【0004】前記ポリプロピレンの加工性を改良する目的で、一般にポリエチレンなどが機械的に混合されているが、加工性の改良効果が不充分であるため、多量のポリエチレンが必要とされ、えられる混合物の剛性が低下するという欠点がある。また、ポリプロピレンの分子量を大きくすることにより、その溶融時の粘度および張力を改良する試みが行なわれているが、分子量が大きいポリプロピレンは、その重要な加工法の1つである押出成形が困難であるという大きな問題がある。
【0005】また、ポリエチレンに未架橋のアクリル系重合体を添加し、その加工性を改良することが提案されているが(米国特許第4156703号明細書)、両者の相溶性が不充分であり、またアクリル系重合体が未架橋であるため、カレンダー成形時、押出成形時などに、該アクリル系重合体がポリエチレンから分離し、カレンダーのロール面、押出機のダイス面などに付着し(以下、このことをプレートアウトという)、かえって加工性や特性が低下するという問題がある。
【0006】また、前記ポリオレフィン本来の低剛性、また、ポリエチレンなどの添加による剛性低下を改良する目的で、無機充填剤などの添加が行なわれているが、ポリオレフィンとの相溶性が低く、分散不良により、成形体、たとえば押出シートの表面性が著しく低下するといった欠点を有している。
【0007】従来、ポリ塩化ビニル系樹脂などにおいて耐衝撃性の改良剤として広く用いられているコアーシェル型の変性剤は、あらかじめ設定した粒子径のゴム成分(コア層)を効率よく分散させることができ、剛性の低下をおさえて耐衝撃性を改良することができるものである。しかしながら、非極性であるポリオレフィンに対しては、該コアーシェル型の変性剤は、相溶性が小さく、ほとんど使用することができないという問題がある。
【0008】そこで、ポリオレフィンに、特定の相溶化剤の存在下で前記コアーシェル型の変性剤を添加することが提案されているが(特開平3−185037号公報、米国特許第4997884号明細書)、前記相溶化剤の合成工程が複雑であり、該相溶化剤の使用によるコストアップや、系が複雑になるなどの問題がある。
【0009】また、熱可塑性樹脂に繊維状ポリテトラフルオロエチレンを添加し、溶融粘度を増加させ、加工性を改良しようとする試みがなされているが(米国特許3005795号明細書)、マトリックスである熱可塑性樹脂へのポリテトラフルオロエチレンの分散が悪く、成形体、たとえば押し出しシートの表面性が著しく低下するといった欠点を有している。
【0010】このように、すぐれた加工性、表面性などの充分すぐれたポリオレフィン系樹脂組成物はいまだえられていないのが実状であり、かかるポリオレフィン系樹脂組成物の開発が待ち望まれている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、すぐれた加工性および表面性を同時に呈する、ポリテトラフルオロエチレンおよびポリオレフィンからなるポリオレフィン系樹脂組成物の製法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は、ポリオレフィン(A)100重量部に、ポリテトラフルオロエチレン(B)0.001〜10重量部を添加するに際し、ポリテトラフルオロエチレン(B)および0.1〜700ミクロンの平均粒径を有する分散媒パウダー(C)0.002〜100重量部を、該分散媒パウダー(C)とポリテトラフルオロエチレン(B)との比率(C)/(B)が100/50〜100/0.001となる範囲で予め高剪断下で混合し、ポリテトラフルオロエチレン(B)を繊維化してマスターバッチを作製し、該マスターバッチとポリオレフィン(A)とを混合することを特徴とするポリオレフィン系樹脂組成物の製法に関する。
【0013】
【作用および実施例】本発明は、ポリオレフィン(A)100部(重量部、以下同様)にポリテトラフルオロエチレン(B)0.001〜10部を添加する際の製法に関する。
【0014】本発明の製法に用いるポリオレフィン(A)は、本発明の製法でえられるポリオレフィン系樹脂組成物(以下、PO組成物ともいう)において基材樹脂として作用する成分である。基材樹脂としてポリオレフィンを使用するため、本発明の組成物をカレンダー成形法、押出成形法、熱成形法、ブロー成形法、射出成形法などの簡単かつ一般的な方法で成形することができ、しかも、えられる成形品がすぐれた加工性、耐衝撃性、剛性、表面性という特性を有するものになる。
【0015】ポリオレフィン(A)としては、メルトフローインデックス(ASTM D1238に準じて荷重2.16kgで、10分間に落下する溶融ポリマーのグラム数を測定した値である。なお、プロピレン系ポリオレフィンでは230℃、エチレン系ポリオレフィンでは190℃での値である)(以下、MIともいう)が10以下、好ましくは5以下、さらに好ましくは2.5以下のものが溶融張力が高く加工性がすぐれており、またマスターバッチ、無機充填剤などとの混練、分散性がよく、本発明の効果の発現の点から好ましい。
【0016】前記ポリオレフィン(A)の具体例としては、たとえばポリプロピレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリ−1−ブテン、ポリイソブチレン、プロピレンとエチレンおよび(または)1−ブテンとのあらゆる比率でのランダムまたはブロック共重合体、エチレンとプロピレンとのあらゆる比率においてジエン成分が10%(重量%、以下同様)以下含まれるエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、ポリメチルペンテン、シクロペンタジエンとエチレンまたはプロピレンとの共重合体およびその他の環状ポリオレフィン、エチレンまたはプロピレンと50%以下のたとえば酢酸ビニル、メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステル、芳香族ビニルなどのビニル化合物などとのランダム、ブロックまたはグラフト共重合体などがあげられる。
【0017】これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0018】前記ポリオレフィン(A)のうちでは、前記プロピレンを50%以上、さらには75%以上含有する単量体成分を重合してえられたプロピレン系ポリオレフィンまたは前記プロピレンを50%以上含有するプロピレン系ポリオレフィン100部と、前記エチレンを50%以上含有するエチレン系ポリオレフィン0.1〜100部の混合物が、溶融張力が高く加工性がすぐれており、またマスターバッチ、無機充填剤などとの混練、分散性がよく、本発明の効果の発現の点から好ましい。
【0019】さらに前記ポリオレフィン(A)のうちでは、ポリオレフィン(A)が、ポリプロピレン、エチレンプロピレンランダム共重合体およびエチレンプロピレンブロック共重合体から選ばれた少なくとも一種であるばあいには、汎用性があり低コストである点から好ましく、またポリオレフィン(A)が、ポリプロピレン、エチレンプロピレンランダム共重合体およびエチレンプロピレンブロック共重合体から選ばれた少なくとも一種からなるプロピレン系ポリオレフィン100部と、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンおよび高密度ポリエチレンから選ばれた少なくとも一種からなるエチレン系ポリオレフィン0.1〜100部との混合物であるばあいには、同様に汎用性があり低コストであるとともに溶融張力が高く加工性がすぐれている点から好ましい。
【0020】本発明の製法には、前記ポリオレフィン(A)とともに、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFE(B)ともいう)が使用される。PTFE(B)は、ポリオレフィン(A)を改質し、本発明の製法でえられたPO組成物の加工性などを改良するための成分である。
【0021】PTFE(B)は、剪断力を加えることにより繊維化されるものであればとくに限定されないが、たとえば乳化重合法などによりえられる高分子量のポリテトラフルオロエチレンの乳化分散体を凝集させて製造したパウダー、懸濁重合法などによりえられる高分子量のポリテトラフルオロエチレンから製造したパウダーなどがあげられる。
【0022】なお、それらのなかでも乳化重合法などによりえられる高分子量のポリテトラフルオロエチレンの乳化分散体を凝集させて製造したパウダーが、剪断力により繊維化されやすいという点から好ましい。なお、ポリテトラフルオロエチレンのパウダーであっても、合成方法などの違いにより繊維状にならないものは溶融時の張力増大などによる加工性の改良などの効果を発現しないため本発明には使用されない。
【0023】またPTFE(B)の平均粒径は前記分散媒パウダー(C)とのマスターバッチ化による混合、分散の点から100〜700ミクロン、好ましくは300〜600ミクロン、さらに好ましくは400〜500ミクロンが好ましい。
【0024】繊維状PTFE(B)をえるための市販の原料としては、ダイキン工業(株)製のポリフロンTFE−F103、F104、三井デュポン(株)製のテフロンTFE−6J、6C−Jなどが代表例としてあげられる。
【0025】本発明においてPTFE(B)は、ポリオレフィン(A)100部に対して0.001〜10部含まれる。PTFE(B)が0.001部未満のばあいには、加工性の改良効果が充分ではなく、10部をこえたばあいには低コストなどの汎用性を損う。この点からPTFE(B)の含有量は0.005〜5部、さらには0.005〜3部の範囲であることが好ましい。
【0026】前記ポリオレフィン(A)にPTFE(B)を添加するに際し、本発明の製法は、PTFE(B)および0.1〜700ミクロンの平均粒径を有する分散媒パウダー(C)0.002〜100部を、該分散媒パウダー(C)とPTFE(B)との比率(C)/(B)が100/50〜100/0.001となる範囲で予め高剪断下で混合し、PTFE(B)を繊維化してマスターバッチを作製し、該マスターバッチとポリオレフィン(A)とを混合することを特徴とするものである。
【0027】分散媒パウダー(C)は、ポリテトラフルオロエチレンを効果的に分散、繊維化させることにより、また自らもポリオレフィン(A)を改質し、本発明の製法でえられたPO組成物からえられる成形品の表面性などを改良するとともに、加工性などを改良するための成分である。
【0028】分散媒パウダー(C)は前記の役割をはたすものであればとくに限定されるものではないが、たとえばコアシェルグラフト共重合体、ポリオレフィンパウダー、無機物系パウダー、有機物系パウダーなどがありこれらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。前記分散媒パウダーのなかでもポリテトラフルオロエチレンの分散性、えられた成形品の耐衝撃性などの点からコアシェルグラフト共重合体が、分散媒パウダー(C)自体のポリオレフィン(A)への分散性および低コストなどの点からポリオレフィンパウダーが好ましい。
【0029】前記分散媒パウダー(C)は平均粒径が0.1〜700ミクロンであり、平均粒径が0.1ミクロン未満または700ミクロンをこえるばあいには、ポリテトラフルオロエチレンが充分に繊維化されず、えられたPO組成物からの成形体にポリテトラフルオロエレチンの塊が残り、表面性が悪化する。また加工性の改良効果も不充分である。前記観点により、該平均粒径の最小値が50ミクロン、さらには100ミクロンであることが、また最大値が500ミクロン、さらには300ミクロンであることが好ましい。
【0030】分散媒パウダー(C)の平均粒径は、異なる6サイズ程度のタイラーメッシュをメッシュサイズの大きい順に積み重ね、これに界面活性剤を用いて水に分散させたパウダーを流し、各メッシュに溜ったパウダーの重量比から粒度線図により算出するが、この他の一般的なパウダーの測定方法からも測定できる。
【0031】分散媒パウダー(C)の平均粒径を0.1〜700ミクロンとする方法は特に問わないが、一般には、凝集、粉砕、ふるい分けなどのパウダーの粒径コントロールの方法はすべて使用できる。たとえば、コアシェルグラフト共重合体のばあい、凝集方法によりパウダー粒径をコントロールすることができる。ポリオレフィンパウダーのばあい、重合時の粒径コントロールや冷凍粉砕時の条件で好適な粒子径のパウダーをうることができる。無機物系パウダーのばあい、粉砕、ふるい分けなどの方法がある。
【0032】また、前記分散媒パウダー(C)は、PO組成物の透明性を改良するという観点から、分散媒パウダー(C)の屈折率が、ポリオレフィン(A)の屈折率と実質的に同一となるように選択されるのが好ましい。
【0033】前記屈折率が実質的に同一であるとは、屈折率の差が0.02以下のことであるが、0.01以下、さらには0.005以下であるのがPO組成物の透明性の低下をおさえる点から好ましい。
【0034】また、ここでいう屈折率とは、ポリマーハンドブック第3版(ジョン・ウィリー・アンド・サンズ社(John Wiley & Sons.Inc.)1989)などに記載されており、共重合体の屈折率は、それぞれの単量体の重量分率で比例計算した値が用いられる。
【0035】本発明に用いるコアシェル重合体(以下、コアシェル体ともいう)は、PTFE(B)を効果的に分散、繊維化させることにより、また自らもポリオレフィン(A)を改質し、本発明の製法でえられたPO組成物からえられる成形体の耐衝撃性、表面性などを改良すると共に、加工性などを改良するために用いる成分である。
【0036】前記コアシェル体は、コア層を形成する架橋ゴム状重合体の存在下に、シェル成分をグラフト共重合してえられたものをいうが、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニルなどの耐衝撃性の改良に一般に用いられるものでよい。前記コアシェル体のなかでもえられるPO組成物からなる成形体の熱着色の点からポリオレフィン(A)の成型加工温度において熱劣化しないものが好ましい。
【0037】コアシェル体のパウダーはその凝集時に粒径のコトロールが可能であり、本発明に適する前記粒径のパウダーをうることが容易である。市販のコアシェル型モディファイヤーとしては、鐘淵化学工業(株)製の商品名:カネエースB、カネエースM、カネエースFMなどが好ましいものとしてあげられる。
【0038】本発明では、とくに屈折率がポリオレフィン(A)の屈折率と実質的に同一であるものが、PO組成物の透明性を改良するという点から好ましく使用される。このばあい、コアとなる架橋ゴム状重合体およびシェルとなるグラフトの単量体は、コアシェルグラフト共重合体の屈折率がポリオレフィン(A)と実質的に同一となるように選択し、合成される。
【0039】たとえばポリプロピレンの屈折率と実質的に同一であるコアシェルグラフト共重合体としては、乳化重合法によりえられた架橋ポリブタジエンゴム50部にメタクリル酸メチル50部をグラフト共重合させたものや、アクリル酸n−ブチル70%およびスチレン30%に対してメタクリル酸アリル1%を加えた単量体を乳化重合させてえられた架橋アクリル系ゴム70部に、メタクリル酸メチル27部およびスチレン3部からなる単量体成分をグラフト共重合させたものなどがあげられる。
【0040】本発明に用いるポリオレフィンパウダーは、PTFE(B)を効果的に分散、繊維化させることにより、また自らもポリオレフィン(A)を改質し、本発明の製法でえられたPO組成物からえられる成形体の表面性などを改良すると共に、加工性などを改良するために用いる成分である。
【0041】前記ポリオレフィンパウダーの具体例としては、たとえばポリプロピレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリ−1−ブテン、ポリイソブチレン、プロピレンとエチレンおよび(または)1−ブテンとのあらゆる比率でのランダムまたはブロック共重合体、エチレンとプロピレンとのあらゆる比率においてジエン成分が10%以下含まれるエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、ポリメチルペンテン、シクロペンタジエンとエチレンまたはプロピレンとの共重合体およびその他の環状ポリオレフィン、エチレンまたはプロピレンと50%以下のたとえば酢酸ビニル、メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステル、芳香族ビニルなどのビニル化合物などのランダム、ブロックまたはグラフト共重合体などがあげられる。
【0042】これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0043】前記ポリオレフィンパウダーのうちでは、前記プロピレンを50%以上含有する単量体成分を重合してえられたプロピレン系ポリオレフィンが、汎用性があり低コストである点から好ましい。
【0044】また前記プロピレンを50%以上含有するプロピレン系ポリオレフィン100部と、前記エチレンを50%以上含有するエチレン系ポリオレフィン0.1〜100部の混合物が、同様に汎用性があり低コストである点から好ましい。
【0045】ポリオレフィンパウダーは、それを用いてえられたマスターバッチとポリオレイン(A)との混合が容易にできることが好ましい。混合が容易にできないばあい、成形体に異物が残り表面性、透明性を悪化させる傾向がある。混合が容易にできるためには、ポリオレフィンパウダーとポリオレフィン(A)は同程度のメルトフローインデックスを有するものが好ましい。
【0046】さらには、ポリオレフィンパウダーとポリオレフィン(A)とが実質的に同一組成を有するものが好ましい。本発明では、とくに屈折率がポリオレフィン(A)の屈折率と実質的に同一であるものがPO組成物の透明性を改良するという点から好ましく使用される。
【0047】なお、代表的なポリオレフィン(A)の屈折率は、ポリプロピレン(1.503)、高密度ポリエチレン(1.545)、低密度ポリエチレン(1.51)、線状低密度ポリエチレン(1.52)、ポリ−1−ブテン(1.5125)、ポリメチルペンテン(1.459〜1.465)である。
【0048】本発明に用いる無機物系パウダーは、PTFE(B)を効果的に分散、繊維化させることにより、また自らもポリオレフィン(A)を改質し、本発明の製法でえられたPO組成物からえられる成形体の剛性、表面性などを改良するとともに、加工性などを改良するための成分である。
【0049】本発明に用いる無機物系パウダーの具体例としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、ガラス繊維、炭酸マグネシウム、マイカ、カリオン、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、チタンホワイト、ホワイトカーボン、カーボンブラック、水酸化アルニミウム、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、溶融シリカなどがあげられ、これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。これらの中では、入手しやすいという点から重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウムまたはタルクなどが好ましい。
【0050】本発明に用いる有機物系パウダーとしては、スチレンとブタジエンのブロックまたはランダム共重合体などに代表される熱可塑性エラストマーおよびそれらの水添物、ポリブタジエンなどに代表される架橋エラストマーおよびその水添物などが代表例としてあげられる。これらのなかで、ポリオレフィン(A)とある程度の相溶性を有するもので、該パウダーの平均粒子径が本発明の範囲に入るものおよび該範囲に入るように凍結粉砕されたものであることが好ましい。
【0051】前記分散媒パウダー(C)とPTFE(B)との比率(C)/(B)は100/50〜100/0.001となる範囲である。該比率が100/50未満のばあいには、PTFE(B)の繊維化が充分に行なわれず、PTFE(B)のポリオレフィン(A)への分散がわるく、加工性の改良効果が減少する。また該比率が100/0.001をこえるばあいには、たとえばポリオレフィン(A)100部に分散媒パウダー(C)を100部配合しても、PTFE(B)の部数が0.001部より少なくなり、加工性の改良効果が不充分となる。前記観点から該比率(C)/(B)は、好ましくは100/40以上、さらに好ましくは100/30以上であり、好ましくは100/0.005以下、さらに好ましくは100/0.01以下である。
【0052】本発明において分散媒パウダー(C)は、ポリオレフィン(A)100部に対して0.002〜100部用いられる。分散媒パウダー(C)が100部をこえたばあいにはポリオレフィン本来の耐熱性、剛性などの特性を損ない、0.002部未満のばあいにはPTFE(B)を効果的に分散、繊維化することができない。この点から、分散媒パウダー(C)の使用量は0.025〜70部、さらには0.025〜50部の範囲であることが好ましい。
【0053】なお、分散媒パウダー(C)およびPTFE(B)の使用量は前記比率(C)/(B)を満足し、さらには前記それぞれの使用量および好ましい使用量などを満足するように調整して用いられる。
【0054】本発明でいう予め高剪断下で混合し、PTFE(B)を繊維化してマスターバッチを作製するとは、たとえば分散媒パウダー(C)およびPTFE(B)をヘンシェルミキサーその他の一般的な撹拌機を用いて撹拌するなどのパウダー混合法により、予め剪断力を加えてPTFE(B)を分散、繊維化することをいう。
【0055】また他の方法としては、共重合体(B)とPTFE(B)を単軸押出機、二軸押出機またはロール混練機などで溶融混練するなどの溶融混練法により、PTFE(B)に予め剪断力を加えてPTFE(B)を分散、繊維化することをいう。
【0056】PTFE(B)が繊維化しているとは、PTFE(B)が繊維状となっていればとくに限定されないが、たとえばマスターバッチ中において、PTFE(B)の繊維径は、効率よくネットワーク構造をとるという点から好ましくは約2ミクロン以下、さらに好ましくは約1ミクロン以下、またさらに好ましくは約0.5ミクロン以下である。繊維長は、ネットワーク構造をとるため一概にはいえないが、溶融時の張力増大による加工性の改良効果という点から好ましくは約3ミクロン以上、さらに好ましくは5ミクロン以上、またさらに好ましくは約10ミクロン以上である。
【0057】パウダー混合法によったばあいは、低コストであるという効果があり、溶融混練法によったばあいは、マスターバッチがペレット状でえられるなどの効果がある。
【0058】前記の撹拌機ないし混合機のなかではヘンシェルミキサーが好ましい。
【0059】パウダー混合法によってマスターバッチを作成する際の操作条件としては、PTFE(B)を高剪断下で混合し、繊維化できればとくに限定されない。
【0060】ヘンシェルミキサーなどを用いたパウダー混合法によってマスターバッチを作成する際の温度条件としては、常温で撹拌してもよいし、分散媒パウダー(C)、PTFE(B)が劣化、変質しない程度の温度に加熱して撹拌してもよい。
【0061】溶融混練法によってマスターバッチを作成する際の操作条件としては、PTFE(B)を高剪断下で混合し、繊維化できればとくに限定されない。
【0062】また、前記パウダー混合法と溶融混練法は併用することもできる。たとえばヘンシェルミキサーで混合したのち、該混合物を押出機などの溶融混練することによりペレット化してマスターバッチを作製することも好ましく行なわれる。
【0063】つぎに、えられたマスターバッチとポリオレフィン(A)を混合することによってPO組成物を製造する。該混合法にはとくに限定はなく、たとえば押出混合法、ロール混合法などの通常の方法によって製造することができる。
【0064】マスターバッチとポリオレフィン(A)の比率は、前記のようにポリオレフィン(A)100部およびPTFE(B)0.001〜10部となるように調整して使用される。
【0065】また、えられたPO組成物中において、PTFE(C)の繊維径は効率よくネットワーク構造をとるという点から好ましくは約2ミクロン以下、さらに好ましくは約1ミクロン以下、またさらに好ましくは約0.5ミクロン以下である。繊維長は、ネットワーク構造をとるため一概にはいえないが、溶融時の張力増大による加工性の改良効果の点から好ましくは約3ミクロ以上、さらに好ましくは5ミクロン以上、またさらに好ましくは約10ミクロン以上である。
【0066】本発明において、特定量、特定粒径の分散媒パウダー(C)および特定量のPTFE(B)を予め高剪断下で混合してPTFE(B)を繊維化してマスターバッチを作製し、該マスターバッチとポリオレフィン(A)とを混練することにより、PTFE(B)の繊維化が促進され、えられたPO組成物中でPTFE(B)が均一に分散し、PO組成物からえられた成形体の外観が改良される。また、溶融時の張力が増大し、カレンダー加工時のシートの引き取り性、熱成形時またはブロー成形時の溶融樹脂のドローダウン、発泡成形時のセルの連泡化などが改良され、カレンダー加工、熱成形、ブロー成形、発泡成形などの加工性が改良される。また、押出加工時の吐出量、シートおよびフィルムなどの押出成形体の表面状態が改良され、押出加工性が改良される。またPTFE(B)を分散媒パウダー(C)と前記の混合をすることにより、PTFE(B)のブロッキングが改善され、ポリオレフィンとの配合が容易となっている。
【0067】さらに本発明は、前記本発明において、前記えられたマスターバッチとポリオレフィン(A)を混合する工程において、さらに造核剤(D)をポリオレフィン(A)100部に対して0.01〜2部加えて混合する工程に代えたPO組成物の製法をも含む。
【0068】造核剤(D)はえられるPO組成物の透明性、表面性、剛性などを一層向上させる作用を有する成分である。かかる造核剤の具体例としては、たとえばソジウムベンゾエート、ビスベンジリデンソルビトール、ビス(p−メチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(p−エチルベンジリデン)ソルビトール、ソジウム2,2−メチレンビス(4,6−ジ−ターシャリー−ブチルフェニル)フォスファイトなどが好ましいものとしてあげられる。これらは単独でまたは2種以上混合して用いることができる。またタルク、TiO2、アルミニウムヒドロキシジパラt−ブチルベンゾエートなどでもよい。
【0069】前記造核剤の使用量としては、ポリオレフィン(A)100部に対して、0.01〜2部であることが好ましい。かかる造核剤の配合量が0.01部未満では、透明性や表面性の改良効果が不充分となる傾向があり、また2部をこえるばあいには効果が飽和し、かえって透明性が悪くなるばあいもあり好ましくない。
【0070】さらに本発明は、前記本発明において、前記えられたマスターバッチとポリオレフィン(A)とを混合する工程において、さらに無機充填剤(E)をポリオレフィン(A)100部に対して0.1〜400部加えて混合する工程に代えたPO組成物の製法をも含む。
【0071】無機充填剤(E)はえられるPO組成物の剛性、加工性だけでなくさらに塗装性、印刷性、耐熱性を向上せしめ、低コスト化を実現させる作用を有する成分である。かかる無機充填剤(E)の代表例としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、ガラス繊維、炭酸マグネシウム、マイカ、カリオン、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、チタンホワイト、ホワイトカーボン、カーボンブラック、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、溶融シリカなどがあげられ、これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。これらの中では、入手しやすいという点から重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウムまたはタルクなどが好ましい。
【0072】また前記無機充填剤(E)の平均粒子径は約10ミクロン以下、さらには約5ミクロン以下であることが、えられるPO組成物の表面性を向上させる上で好ましい。
【0073】前記無機充填剤(E)を0.1〜400部用いることにより、製造されたPO組成物および該組成物からえられた成形品の剛性や耐熱性などが向上し、またカレンダー加工などにおけるロール面への粘着防止などの加工性が改良され、さらに低コスト化も達成できる。無機充填剤(E)の使用量が0.1部未満のばあいには前記剛性などの改良効果が充分ではなく、また400部をこえるばあいには、前記表面性が低下する傾向にあり好ましくない。この点から無機充填剤(E)の使用量は1〜350部、さらには1〜300部の範囲であることが好ましい。
【0074】また無機充填剤(E)を混合するばあいには無機充填剤(E)の分散性が向上することなどにより、カレンダー加工または押出成形時のシートおよびフィルムの表面状態が改良される。また、溶融時の張力が増大し、熱成形、ブロー成形、発泡成形などの成型加工性が改良される。さらに、射出成形時の収縮、そりなども改良される。
【0075】本発明のPO組成物の製法においては、必要に応じて、さらにたとえば安定剤、滑材などを添加してもよい。安定剤としては、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのフェノール系安定剤、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどのリン系安定剤、ジラウリル3,3´−チオジプロピオネートなどのイオウ系安定剤、また、滑剤としては、ラウリル酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸のナトリウム、カルシウム、マグネシウム塩などがそれぞれ代表例としてあげられる。
【0076】本発明において、マスターバッチとポリオレフィン(A)、および要すれば造核剤(D)、または無機充填剤(E)とを混合する手法としては、とくに限定はなくたとえば押出混合法、ロール混合法などの通常の方法によって製造することができる。
【0077】また、マスターバッチとポリオレフィン(A)の一部、ばあいによっては造核剤(D)、または無機充填剤(E)とを混合した後、残部のポリオレフィン(A)と混合するなどの多段階の混合も可能である。
【0078】本発明の製法でえられるPO組成物は、加工性、表面性などが大幅に改良されており、従来のポリオレフィン系樹脂組成物では困難であった成形方法も含めて、種々の成形方法によって有用な成形体を製造することができる。
【0079】本発明の製法でえられたPO組成物に用いられる成形方法としては、たとえばカレンダー成形法、押出成形法、熱成形法、ブロー成形法、射出成形法、発泡成形法などが代表例としてあげられる。
【0080】たとえば本発明の製法でえたPO組成物をカレンダー加工または押出成形することにより、フィルムないしシート状成形体をうることができる。さらに該フィルムないしシート状成形体に、用いたポリオレフィン系樹脂組成物に適した温度で熱成形を施すことによって、熱成形体をうることができる。また、たとえば前記樹脂組成物に押出加工を施してえられたペレットを射出成形またはブロー成形することによって、それぞれ射出成形体または中空成形体をうることができる。さらに、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物に発泡剤を添加し、たとえば押出機などを用いて発泡成形することによって、発泡体をうることができる。
【0081】以下に本発明の製法を実施例などに基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによりなんら制約を受けるものではない。
【0082】実施例1〜5および比較例1〜3アクリル系コアシェルグラフト共重合体(商品名:カネエースFM、鐘淵化学工業(株)製)の表1記載量と、ポリテトラフルオロエチレンのパウダー(商品名:ポリフロンTFE−F104、乳化重合法によりえられた乳化分散体を凝集させて製造したパウダー、ダイキン工業(株)製)(以下、TFE−Fともいう)の表1記載量を、ヘンシェルミキサーにより、室温で10分間高速(1,500rpm)撹拌し、混合すると同時に剪断を加えてポリテトラフルオロエチレンを繊維化してマスターバッチを作製した。
【0083】えられたマスターバッチの表1記載量とポリオレフィン(A)であるホモポリプロピレンペレット(商品名:ハイポール−B200、三井石油化学工業(株)製、屈折率1.503、MI:0.5(以下、ハイポールBともいう))100部を、スクリュウ径40mm、L/Dが28の単軸押出機で、200℃、50rpmで押出混練し、ペレット化してPO組成物をえた。
【0084】なお、実施例3〜5で用いた平均粒径246ミクロン、147ミクロン、70ミクロンのコアシェルグラフト共重合体は、カネエースFMをタイラーフルイの60メッシュと140メッシュを用いてふるい分けて調製した。60メッシュに残留したグラフト共重合体の平均粒径は246ミクロン、60メッシュを通過し140メッシュに残留したものの平均粒径は147ミクロン、140メッシュを通過したものの平均粒径は70ミクロンであった。
【0085】また比較例2はマスターバッチ化を行なわず、ハイポールB−200およびTFE−Fの所定量を、前記単軸押出機で同様にペレット化を行なった。
【0086】えられたPO組成物を用いて、下記方法により加工性、耐衝撃性、曲げ弾性率、溶融張力、ロールシートの外観、メルトフローインデックスを評価した。結果を表2に示す。
【0087】(加工性(ドローダウン))PO組成物を200℃で3分間ロール混練して厚さ1mmのロールシート作製した。えられたロールシートを2枚重ねあわせ、200℃×30kg/cm2 ×10分という条件でプレス成形し、そののち常温で50kg/cm2 ×10分という条件で冷却し、厚さ1.5mmのシートをえた。このシートから300mm×400mmの試験片を切り出した。
【0088】えられた試験片を開口部298mm×398mmのクランプで固定し、190℃に設定したオープン中に置き、10分間のシート中央部の垂れ下がり(ドローダウンともいう)(mm)を測定した。
【0089】(耐衝撃性)前記(加工性)で述べたと同様にして1/4インチ厚試験片を作製し、ASTM−D 256に準拠してノッチ付アイゾット耐衝撃度を測定した。
【0090】(曲げ弾性率)ASTM−D 790に準拠して測定した。
【0091】(溶融張力)PO組成物を用い、東洋精機(株)製のダイス直径2mm×長さ10mmを有するキャプログラフで、200℃、押出スピード20mm/分、引き取りスピード1m/分での溶融張力を測定した。
【0092】(シートの外観)PO組成物を200℃でロール混練、プレス成形することにより、厚み1.5mmのシートを作製した。えられたシートの表面状態を目視にて観察し、以下の評価基準にもとづいて評価した。
【0093】(評価基準)
A:ポリテトラフルオロエチレンの凝集物は観察されない。
【0094】B:繊維状のポリテトラフルオロエチレンの凝集物が僅かに観察される。
【0095】C:ポリテトラフルオロエチレンの塊が観察される。
【0096】(メルトフローインデックス)ASTM−D 1238に準拠して、プロピレン系ポリオレフィンでは230℃、エチレン系ポリオレフィンでは190℃で測定した。
【0097】表2の結果から、本発明の実施例1〜5でえたPO組成物は、コアシェルグラフト共重合体を用いない比較例2および分散媒パウダー(C)とPTFE(B)との比率(C)/(B)が100/100である比較例3でえたPO組成物に比べて、熱成形性、ブロー成形性などの加工性の指標であるシートのドローダウンが大幅に改良され、またシートの外観も改良されていることがわかる。また、本実施例のうち平均粒径が100ミクロン以上のコアシェルグラフト共重合体を用いたばあいは、シート外観がとくにすぐれている。
【0098】また、ポリプロピレン中のポリテトラフルオロエチレンの存在形態を観察するため、PO組成物を超薄切片に切り出し、4酸化ルテニウムで染色してTEM(拡大倍率10,000倍)で観察した。ポリテトラフルオロエチレンが繊維状となっているのが観察された。なお、ポリテトラフルオロエチレンが容易に観察できるように、試料は、実施例1においてカネエースFMを25部、ポリテトラフルオロエチレン(TFE−F)を0.5部に変更した以外は実施例1と同様にしてPO組成物を製造した。
【0099】
【表1】


【0100】
【表2】


【0101】実施例6〜7、比較例4実施例1におけるコアシェルグラフト共重合体に代えて、表3に示すように、平均粒径が250ミクロンの住友精化(株)製ホモポリプロピレン冷凍粉砕パウダーであるフローブレンQB200 50P、屈折率1.503(以下、フローブレンQBともいう)、平均粒径が1000ミクロンの三井石油化学工業(株)製ポリプロピレンパウダーであるハイポールB200P、平均粒径が1.8ミクロンの丸尾カルシウム(株)製炭酸カルシウムであるスノーライトSSSを用い、他は実施例1と同様にしてPO組成物をえ、評価した。結果を表4に示す。
【0102】分散媒パウダー(C)の平均粒径が本発明の範囲内である250ミクロンのポリプロピレン冷凍粉砕パウダー(フローブレンQB)を用いたばあいおよび1.8ミクロンの炭酸カルシウム(スノーライトSSS)を用いたばあいは、実施例1と同様にシートのドローダウンが大幅に改良され、またシートの外観もすぐれている。これに対し、平均粒径が本発明の範囲外である1000ミクロンのポリプロピレンパウダー(ハイポールB200P)を用いたばあいは、シートのドローダウンの改良効果が小さく、またポリテトラフルオロエチレンの分散が悪く、シートの外観が不良である。
【0103】
【表3】


【0104】
【表4】


【0105】実施例8〜9および比較例5〜6 造核剤または無機充填剤を含む配合例実施例1と同様にして前記フローブレンQB(平均粒径250ミクロン)またはカネエースFM(平均粒径180ミクロン)とTFE−Fをヘンシェルミキサーで高速撹拌してマスターバッチを作製した。
【0106】えられたマスターバッチ、ハイポールBにさらに表5記載量の造核剤(ゲルオールDH(新日本理化(株)製ビス(p−メチルベンジリデン)ソルビトール)または重質炭酸カルシウム(商品名:スノーライトSSS 丸尾カルシウム(株)製)を配合した以外は、実施例1と同様にしてPO組成物をえ、実施例1と同様にして評価を行なった。さらに、下記方法により透明性も評価した。結果を表6に示す。
【0107】(透明性)前記(加工性)で述べたと同様にして厚さ1.0mm、30mm角の試験片を作製し、ASTM−D−1003に準拠して測定した。なお表6中、Tは全光線透過率(%)、HAZEは濁度(%)を表わす。
【0108】表6の結果から、マスターバッチとポリオレフィン(A)とを混合する際に、さらに特定量の造核剤をも混合した本発明の実施例8でえられたPO組成物は、ハイポールBに造核剤のみを混合した比較例5と同程度の外観、透明性を有し、さらに溶融張力が高められており加工性の指標であるシートのドローダウンが大巾に改良され、耐衝撃性、剛性のバランスにもすぐれていることがわかる。
【0109】また、同様に特定量の無機充填剤(炭酸カルシウム)をも混合した本発明の実施例9でえられたPO組成物は、ハイポールBに無機充填剤(炭酸カルシウム)のみを混合した比較例6と同程度のシートの外観および剛性を有し、さらに溶融張力が高められており加工性の指標であるシートのドローダウンが大巾に改良され、耐衝撃性、剛性のバランスにもすぐれていることがわかる。
【0110】
【表5】


【0111】
【表6】


【0112】
【発明の効果】本発明の製法によれば、成形加工において溶融したときの張力が大きく、カレンダー加工時の引き取り性、熱成形時またはブロー成形時の溶融樹脂のドローダウン、発泡成形時のセルの連泡化などが良好であり、カレンダー加工、熱成形、ブロー成形、発泡成形などの加工性がすぐれており、また、シートおよびフィルムなどの押出成形体の表面状態が改良され、押出加工性が良好となるポリオレフィン系樹脂組成物をうることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ポリオレフィン(A)100重量部に、ポリテトラフルオロエチレン(B)0.001〜10重量部を添加するに際し、ポリテトラフルオロエチレン(B)および0.1〜700ミクロンの平均粒径を有する分散媒パウダー(C)0.002〜100重量部を、該分散媒パウダー(C)とポリテトラフルオロエチレン(B)との比率(C)/(B)が100/50〜100/0.001となる範囲で予め高剪断下で混合し、ポリテトラフルオロエチレン(B)を繊維化してマスターバッチを作製し、該マスターバッチとポリオレフィン(A)とを混合することを特徴とするポリオレフィン系樹脂組成物の製法。
【請求項2】 分散媒パウダー(C)が、コアシェルグラフト共重合体である請求項1記載のポリオレフィン系樹脂組成物の製法。
【請求項3】 分散媒パウダー(C)が、ポリオレフィンパウダーである請求項1記載のポリオレフィン系樹脂組成物の製法。
【請求項4】 分散媒パウダー(C)が、無機物系パウダーである請求項1記載のポリオレフィン系樹脂組成物の製法。
【請求項5】 分散媒パウダー(C)の平均粒径が50〜700ミクロンである請求項1、2、3または4記載のポリオレフィン系樹脂組成物の製法。
【請求項6】 分散媒パウダー(C)の平均粒径が100〜500ミクロンである請求項1、2、3または4記載のポリオレフィン系樹脂組成物の製法。
【請求項7】 分散媒パウダー(C)の屈折率が、ポリオレフィン(A)の屈折率と実質的に同一である請求項1、2、3、5または6記載のポリオレフィン系樹脂組成物の製法。
【請求項8】 ポリオレフィンパウダーが、ポリオレフィン(A)と実質的に同一組成である請求項3記載のポレオレフィン系樹脂組成物の製法。
【請求項9】 マスターバッチとポリオレフィン(A)とを混合することが、マスターバッチとポリオレフィン(A)に、さらにポリオレフィン(A)100重量部に対し0.01〜2重量部の造核剤(D)を混合することである請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載のポリオレフィン系樹脂組成物の製法。
【請求項10】 マスターバッチとポリオレフィン(A)とを混合することが、マスターバッチとポリオレフィン(A)に、さらにポリオレフィン(A)100重量部に対し、0.1〜400重量部の無機充填剤(E)を混合することである請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9記載のポリオレフィン系樹脂組成物の製法。
【請求項11】 無機充填剤(E)が、炭酸カルシウムまたはタルクである請求項10記載のポリオレフィン系樹脂組成物の製法。
【請求項12】 ポリオレフィン(A)が、プロピレン単位を少なくとも50重量%含むプロピレン系ポリオレフィンである請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11記載のポリオレフィン系樹脂組成物の製法。
【請求項13】 ポリオレフィン(A)が、プロピレン単位を少なくとも50重量%含むプロピレン系ポリオレフィン100重量部と、エチレン単位を少なくとも50重量%含むエチレン系ポレオレフィン0.1〜100重量部との混合物からなる請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11記載のポリオレフィン系樹脂組成物の製法。
【請求項14】 ポリオレフィン(A)が、ポリプロピレン、エチレンプロピレンランダム共重合体およびエチレンプロピレンブロック共重合体よりなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11記載のポリオレフィン系樹脂組成物の製法。
【請求項15】 ポリオレフィン(A)が、ポリプロピレン、エチレンプロピレンランダム共重合体およびエチレンプロピレンブロック共重合体よりなる群から選ばれた少なくとも1種からなるプロピレン系ポリオレフィン100重量部と、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンおよび高密度ポリエチレンよりなる群から選ばれた少なくとも1種からなるエチレン系ポリオレフィン0.1〜100重量部との混合物からなる請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11記載のポリオレフィン系樹脂組成物の製法。
【請求項16】 ポリテトラフルオロエチレン(B)が、乳化重合法によりえられた乳化分散体を凝集させて製造したパウダーである請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15記載のポリオレフィン系樹脂組成物の製法。
【請求項17】 マスターバッチの作製法が、ヘンシェルミキサーによる撹拌混合法である請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16記載のポリオレフィン系樹脂組成物の製法。