説明

ポリオレフィン系樹脂組成物

【目的】 加工性の優れたポリオレフィン系樹脂組成物をうる。
【構成】 (A)ポリオレフィン100重量部、(B)繊維状ポリテトラフルオロエチレン0.001〜10重量部、要すれば(C)(a)ガラス転移温度が25℃以下である架橋ゴム状重合体40〜95重量部に、(b)それのみで重合させるとガラス転移温度が25℃以上である共重合可能なビニル化合物からなる単量体成分60〜5重量部をグラフト共重合させてえられたコア−シェルグラフト共重合体0.1〜100重量部および/または(D)無機充填剤0.1〜400重量部を含んでなるポリオレフィン系樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ポリオレフィンと繊維状ポリテトラフルオロエチレンおよび要すればコア−シェルグラフト共重合体および無機充填剤とからなる、加工性などが改善されたポリオレフィン系樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリオレフィンは、安価で物理的特性に優れるため、汎用されている。しかしながら、たとえばポリプロピレンは、(1)溶融時の粘度、張力が低く、そのためシートの真空成形性などの熱成形性、カレンダー成形性、ブロー成形性、発泡成形性などがよくない、(2)剛性がポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂などと較べて劣る、(3)低温での耐衝撃性がよくない、(4)表面性、つまり表面光沢、硬度、塗装性などがよくない、などの欠点を有している。
【0003】前記ポリプロピレンの加工性改良のために、ポリエチレンなどを物理的に混合することが広く行なわれているが、ポリエチレン添加による加工性改良効果が不充分であり、そのため多くのポリエチレン成分を必要とし、それにより剛性の低下をまねいている。また、ポリプロピレンの分子量を高くすることによる溶融時の粘度、張力の改良が行なわれているが、ポリプロピレンの重要な加工法である押出成形などを困難にするため好ましくない。
【0004】また、ポリエチレンに未架橋のアクリル系重合体を添加し、加工性を改良しようとする試みがなされているが(米国特許4156703号明細書)、アクリル系重合体の相溶性が不充分であり、またカレンダー加工あるいは押出加工などにおいて、アクリル重合体が未架橋故にポリエチレンから分離し、カレンダーのロール面、押出機のダイス面へ付着する(プレートアウト)。そのため、かえって加工性を低下させているのが実状である。
【0005】ポリオレフィン本来の低剛性を改良する、またポリエチレンなどの添加による剛性低下を防止する目的で、無機充填剤などの添加が行われるが、ポリオレフィンとの相溶性が低く、分散改良により、成形体、たとえば押し出しシートの表面性が著しく低下するといった欠点を有している。
【0006】耐衝撃性の改良のために、エチレン−プロピレンゴムなどのゴム成分の物理的な混合、あるいは、ブロック共重合などの重合によるゴム成分の導入が広くに行なわれている。しかしながら、物理的な混合、あるいは重合によるゴム成分の導入は、分散粒子径のコントロールが不充分であるため、ゴム成分の使用効果が低く、耐衝撃性改良効果が不充分である。また、そのため多くのゴム成分を必要とし、剛性の低下をまねいている。また、分散ゴム成分の粒子径が大きいために、表面光沢が低下する結果となっている。
【0007】従来よりポリ塩化ビニル系樹脂などにおいて耐衝撃性改良剤として広く使用されているコア−シェル型の変性剤は、あらかじめ設定した粒子径のゴム成分(コア層)を効率よく分散させることができ、剛性の低下をおさえて耐衝撃性を改良する優れた手法である。しかしながら、非極性であるポリオレフィンにおいては、コア−シェル型の変性剤は、相溶性が低く、使用が制限されている。
【0008】ポリオレフィンに特定の相溶化剤の存在下に、コア−シェル型の変性剤を添加することが提案されているが(特開平3−185037号公報、米国特許第4997884号明細書)、相溶化剤の合成が複雑であり、相溶化剤の使用によるコストアップ、また系が複雑になるなどの問題があり、好ましくない。
【0009】以上、加工性、耐衝撃性、剛性、表面性などの充分優れたポリオレフィン系樹脂はいまだえられていないのが実状である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は加工性の優れたポリオレフィン系樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、(A)ポリオレフィン100部(重量部。以下同様)および(B)繊維状ポリテトラフルオロエチレン0.001〜10部を含んでなるポリオレフィン系樹脂組成物に関する。
【0012】
【作用および実施例】本発明で用いられるポリオレフィンには、ポリプロピレン、高密度、低密度または線状低密度ポリエチレン、ポリ−1−ブテン、ポリイソブチレン、プロピレンとエチレンおよび/または1−ブテンとの任意の比率でのランダムまたはブロック共重合体、エチレンとプロピレンとが任意の比率でありジエン成分が50%(重量%。以下同様)以下であるエチレン−プロピレン−ジエン3元共重合体、ポリメチルペンテン、エチレンまたはプロピレンと50%以下の酢酸ビニル、メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステル、芳香族ビニルなどのビニル化合物とのランダム、ブロックまたはグラフト共重合体などが含まれる。好ましいポリオレフィンとしては、プロピレンを50%以上含有するプロピレン系ポリオレフィン、プロピレンを50%以上含有するプロピレン系ポリオレフィン100部と、エチレンを50%以上含有するエチレン系ポリオレフィン0.1〜100部との混合物があげられ、特にASTM D1238によるメルトフローインデックスが10g/10分以下のもの、好ましくは5g/10分以下のもの、より好ましくは2.5g/10分以下のものが溶融張力が高く加工性が優れている。なお、メルトフローインデックスはASTM D1238に準じてプロピレン系ポリオレフィンでは230℃、2.16Kg荷重で、エチレン系ポリオレフィンでは190℃、2.16Kg荷重で測定される。
【0013】本発明で用いられている繊維状ポリテトラフルオロエチレンは、代表的には乳化重合などによりえられる高分子量のポリテトラフルオロエチレンであり、剪断力を加えることにより繊維化されたものである。ポリテトラフルオロエチレンであっても、合成方法などの違いにより繊維状にならないものは本発明には使用されない。
【0014】ポリテトラフルオロエチレンのパウダーに、あらかじめ剪断力を加えて繊維化したものをポリオレフィンに混練、加工してもよいし、ポリオレフィンと混練しながら剪断力を加えて繊維化してもよい。ポリオレフィン系樹脂組成物中で繊維状になっているものは、すべて本発明に含まれる。
【0015】繊維状ポリテトラフルオロエチレンは、繊維化したときの直径が約2μm以下、好ましくは約1μm以下、さらに好ましくは約0.5μm以下であることが好ましい。長さはネットワーク構造をとるため一概にはいえないが、約3μm以上、好ましくは約5μm以上、さらに好ましくは約10μm以上である。
【0016】繊維状ポリテトラフルオロエチレンをうるための市販の原料としては、ダイキン工業社製のポリフロンTFE−F103、F104、三井ジュポン社製のテフロンTFE−6J、6C−J、62−Jなどが代表例としてあげられる。
【0017】本発明において少量の繊維状ポリテトラフルオロエチレンをポリオレフィンに混合することにより、ポリオレフィン系樹脂組成物の加工において、溶融時の張力が増大し、カレンダー加工時の引き取り性、熱成形時またはブロー成形時の溶融樹脂のドローダウン、発泡成形時のセルの連泡化などが改良され、カレンダー加工、熱成形、ブロー成形、発泡成形などの加工性が改良される。また、押し出し成形時の吐出量、シートおよびフィルムなどの押し出し成形体の表面状態が改良され、押し出し加工性が改良される。
【0018】本発明において繊維状ポリテトラフルオロエチレンは、ポリオレフィン100部に対して0.001〜10部含まれる。0.001部より少ないと、加工性改良効果が充分でなく、10部より多いと低コストなどの汎用性を損なうので好ましくない。この範囲は好ましくは0.005〜5部、より好ましくは0.005〜3部である。
【0019】本発明は、(A)ポリオレフィン100部、(B)繊維状ポリテトラフルオロエチレン0.001〜10部および(C)(a)ガラス転移温度が25℃以下である架橋ゴム状重合体40〜95重量部に、(b)それのみで重合させるとガラス転移温度が25℃以上である共重合可能なビニル化合物からなる単量体成分60〜5重量部をグラフト共重合させてえられたコア−シェルグラフト共重合体0.1〜100部を含んでなるポリオレフィン系樹脂組成物にも関する。
【0020】この発明において、コア−シェルグラフト共重合体を混合することにより耐衝撃性に優れたポリオレフィン系樹脂組成物がえられる。耐衝撃性の改良は、ポリオレフィンに関連するカレンダー成形、押出成形、熱成形、ブロー成形、射出成形、発泡成形などのすべての加工法において発現される。また、ダイスウェルが減少し、さらに後述するように無機充填剤を混合するばあいに無機充填剤の分散性が向上することなどにより、カレンダー加工または押し出し加工時のシートおよびフィルムの表面状態が改良される。また、溶融時の張力が増大し、熱成形、ブロー成形、発泡成形などの加工性が改良される。また、射出成形時の収縮、そりなどが改良され、射出成形性が改良される。
【0021】コア−シェルグラフト共重合体の量が0.1部より少ないと加工性、耐衝撃性改良効果が充分でなく、100部より多いとポリオレフィン本来の耐熱性、剛性などの特性を損なうので好ましくない。この範囲は好ましくは0.5〜70部、より好ましくは0.5〜50部である。
【0022】本発明で用いられるコア−シェルグラフト共重合体は、ガラス転移温度が25℃以下の架橋ゴム状重合体をコア層に、それのみで重合させるとガラス転移温度が25℃以上であるビニル系化合物からなる硬質層をシェル層に有する、コア−シェル型のグラフト共重合体である。本発明でいうコア−シェルグラフト共重合体は、(a)架橋ゴム状重合体に、(b)共重合可能なビニル化合物からなる単量体成分をグラフト共重合することによりうることができる。
【0023】架橋ゴム状重合体としては、たとえば、ガラス転移温度が25℃以下の重合体であって、ジエン化合物60〜100%およびこれと共重合可能なビニル化合物40〜0%からなるジエン系ゴム、アルキル基の炭素数が2〜22であるアクリル酸アルキルエステル60〜100%およびこれと共重合可能なビニル化合物40〜0%からなるアクリル系ゴムがあげられ、特にアクリル系ゴムが好ましい。またその他オレフィン系ゴム、シリコンゴムなどの架橋ゴム状重合体が代表例としてあげられる。
【0024】ジエン系ゴムに使用されるジエン化合物としては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどが、また、これと共重合可能なビニル化合物としては、芳香族ビニル化合物、アルキル基の炭素数が1〜22のメタクリル酸アルキルエステル、アルキル基の炭素数が1〜22のアクリル酸アルキルエステル、不飽和ニトリル化合物などが代表例としてあげられる。
【0025】芳香族ビニル化合物としては、スチレン、αメチルスチレンなどが、アルキル基の炭素数が1〜22のメタクリル酸アルキルエステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリルなどが、アルキル基の炭素数が1〜22のアクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリルなどが、不飽和ニトリル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが代表的な具体例としてあげられる。また、さらに、共重合可能なビニル化合物として、酸無水物基、カルボン酸基、アミノ基、ヒドロキシ基などの反応性官能基を有するビニル化合物、例えば無水マレイン酸、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリルアミド、アクリルアミド、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレートなどの使用も可能である。これら共重合可能なビニル化合物は、必要に応じて1種以上を混合して使用できる。
【0026】アクリル系ゴムに使用される、アルキル基の炭素数が2〜22であるアクリル酸アルキルエステルとしてはアクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリルなどが、およびこれと共重合可能な他のビニル化合物としては前述の芳香族ビニル化合物、アクリル酸メチル、アルキル基の炭素数が1〜22の前述のメタクリル酸アルキルエステル、前述の不飽和ニトリル化合物などが代表例としてあげられる。
【0027】架橋ゴム状重合体をうるための架橋法は通常この分野で行われる方法が使用できる。例えば、ブタジエンによる自己架橋、ジビニルベンゼン、1,3−ブタンジオールジメタクリレートなどの多官能性架橋剤の使用による架橋、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、ジアリルフタレートなどのグラフト化剤の使用による架橋、過酸化物架橋などである。これらは併用使用できる。架橋ゴム状重合体は架橋ゲル分が50%以上、好ましくは60%以上になるように調製される。50%以下のばあい、例えばカレンダー加工などにおいて、ロール面に樹脂がプレートアウトし、加工性改良効果が必ずしも充分でない。
【0028】架橋ゲル分は、ゴム成分の良溶媒、例えばトルエン、メチルエチルケトンなどに48時間浸漬後、超遠心分離機にて分離される不溶分として測定される。
【0029】コア−シェルグラフト共重合体をうるためのグラフト重合に使用される共重合可能なビニル化合物としては、前述の芳香族ビニル化合物、アルキル基の炭素数が1〜22の前述のメタクリル酸アルキルエステル、前述のアルキル基の炭素数が1〜22のアクリル酸アルキルエステル、前述の不飽和ニトリル化合物などが代表例としてあげられる。
【0030】芳香族ビニル化合物としては、重合性が良好であり低コストであるスチレン、α−メチルスチレンが、メタクリル酸アルキルエステルとしては炭素数1〜4のメタクリル酸アルキルエステルが好ましい。
【0031】コア−シェルグラフト共重合体は、たとえば、(a)ガラス転移温度が25℃以下の架橋ゴム状重合体40〜95重量部に、(b)それのみで重合させるとガラス転移温度が25℃以上である共重合可能なビニル化合物からなる単量体成分60〜5重量部をグラフト共重合してえることができる。
【0032】また、好ましくは、(a)架橋ゴム状重合体40〜95部に、(b)芳香族ビニル化合物、メタクリル酸アルキルの少なくとも1種の100〜50%と共重合可能なその他のビニル化合物0〜50%からなる単量体成分60〜5部をグラフト共重合してえられる。(a)架橋ゴム状重合体が40部以下では、加工性、耐衝撃性改良効果が低下し、95部以上ではグラフト共重合体が塊状化するので好ましくない。
【0033】架橋ゴム状重合体のガラス転移温度が25℃以上のばあい、加工性、および耐衝撃性改良効果が低下する傾向がある。また、グラフト共重合に使用される単量体成分のみで重合したもののガラス転移温度が25℃以下の場合、グラフト共重合体が塊状化する傾向がある。
【0034】ここでいうところのガラス転移温度、およびその測定については、例えばポリマーハンドブック第2版(1975)で明かなごとくこの分野ではよく知られている。また、本発明においては、共重合体のガラス転移温度は、以下の計算式により算出された値が用いられる。
【0035】1/Tg=Wa/Tga+Wb/TgbTg :成分(a)、(b)よりなる共重合体のガラス転移温度Tga:成分(a)単独重合体のガラス転移温度Tgb:成分(b)単独重合体のガラス転移温度Wa :成分(a)の重量分率Wb :成分(b)の重量分率コア−シェルグラフト共重合体は、通常のラジカル重合で重合でき、懸濁重合、乳化重合などの重合法が用いられるが、粒子径、粒子構造などのコントロールの観点より、乳化重合が好ましい。また、酸、塩、凝集剤などの添加により粒子の肥大を行うことができる。粒子径は、3ミクロン以下であることが表面性の上から好ましい。
【0036】本発明は、(A)ポリオレフィン100部、(B)繊維状ポリテトラフルオロエチレン0.001〜10部および(D)無機充填剤0.1〜400部を含んでなるポリオレフィン系樹脂組成物にも関する。
【0037】本発明は、特に、(A)メルトインデックスが2.5g/10分以下のポリオレフィン100部、(B)繊維状ポリテトラフルオロエチレン0.001〜10部および(D)無機充填剤0.1〜400部を含んでなるポリオレフィン系樹脂組成物が好ましく、また、(A)少なくとも50重量%のエチレンからなるポリエチレン系ポリオレフィン、ポリプロピレンおよびエチレンプロピレンランダム共重合体よりなる群から選ばれた少なくとも1種100部、(B)繊維状ポリテトラフルオロエチレン0.001〜10部および(D)無機充填剤0.1〜400部を含んでなるポリオレフィン系樹脂組成物が好ましい。
【0038】これらの発明においては、無機充填剤を0.1〜400部を含むことにより剛性や耐熱性が向上し、カレンダー加工などにおけるロール面への粘着防止などの加工性が改良され、また低コスト化が達成できる。0.1部より少ないと剛性改良効果が充分でなく、400部より多いと表面性が低下し好ましくない。この範囲は好ましくは1〜350部、より好ましくは1〜300部である。ポリオレフィンとしてメルトインデックスが2.5g/10分以下のものを用いたのは、繊維状ポリテトラフルオロエチレン、コア−シェルグラフト共重合体、無機充填剤などへの分散性がよく、溶融時の張力が高いなどの効果が奏されるからである。また、ポリオレフィンとして少なくとも50重量%のエチレンからなるポリエチレン系ポリオレフィン、ポリプロピレンおよびエチレンプロピレンランダム共重合体よりなる群から選ばれた少なくとも1種を用いたのは、汎用で安価であるからである。
【0039】本発明で用いられる無機充填剤としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、ガラス繊維、炭酸マグネシウム、マイカ、カオリン、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、チタンホワイト、ホワイトカーボン、カーボンブラック、水酸化アンモニウム、水酸化マグネシウムなどが代表例としてあげられる。重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルクなどが好ましい。
【0040】さらに、本発明は、(A)ポリオレフィン100部、(B)繊維状ポリテトラフルオロエチレン0.001〜10部、(C)前記コア−シェルグラフト共重合体0.1〜100部および(D)無機充填剤0.1〜400部を含んでなるポリオレフィン系樹脂組成物にも関する。
【0041】この発明は4成分(A)〜(D)を前記割合で含むことにより、加工性および耐衝撃性に優れ、また無機充填剤を添加したとき通常みられる押出シート表面性の低下が防止される。
【0042】本発明のポリオレフィン系樹脂化合物にはさらに必要に応じて、安定剤、滑剤などの添加剤を添加することができる。安定剤としては、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのフェノール系安定剤、トリス(モノノニルフェニル)フォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトなどのリン系安定剤、ジラウリルチオジプロピオネートなどのイオウ系安定剤、また、滑剤としては、ラウリル酸、パルミチン酸、オレイン酸またはステアリン酸のナトリウム、カルシウムまたはマグネシウム塩などがそれぞれ代表例としてあげられる。
【0043】本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、前記ポリオレフィンと、前記繊維状ポリテトラフルオロエチレンならびに要すればコア−シェルグラフト共重合体および無機充填剤とを混合することによりえられる。混合法としては、押出混練、ロール混練法などの従来よりよく知られた方法が用いられる。さらに、ポリテトラフルオロエチレンの乳化分散体とコア−シェルグラフト共重合体の乳化分散体とを混合した後、凝集混合物の形で使用することも可能である。
【0044】また、繊維状ポリテトラフルオロエチレン、コア−シェルグラフト共重合体、無機充填剤とポリオレフィンの一部を混合し、マスターバッチを作成したのち、残部のポリオレフィン、コア−シェルグラフト共重合体、無機充填剤をさらに添加、混合するなどの多段階の混合も可能である。
【0045】本発明でえられたポリオレフィン系樹脂組成物は、加工性、耐衝撃性、剛性、表面性などが大幅に改良されており、従来のポリオレフィン系樹脂組成物では加工できなかった加工法も含めて、種々の加工法で成形体を製造することができ、有用な成形体がえられる。
【0046】本発明で改良されるポリオレフィン系樹脂組成物の加工法としては、カレンダー加工、押出加工、熱成形加工、ブロー成形加工、射出成形加工、発泡成形加工などが代表例としてあげられる。
【0047】また、本発明でえられる有用な成形体としては、シート、フィルム状成形体、熱成形体、中空成形体、射出成形体、発泡成形体などが代表例としてあげられる。
【0048】つぎに実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによりなんら制約を受けるものではない。
【0049】実施例1ポリテトラフルオロエチレンとしてダイキン工業社製ポリフロンTFE−F104のパウダー0.1部、三井石油化学製ポリプロピレン、ハイポール−B−200のパウダー100部を、ヘンシェルミキサーで、室温、高速撹拌し、混合すると同時に、剪断を加えてポリテトラフルオロエチレンを繊維化した。混合物をスクリュウ径44mm、L/Dが30の二軸押し出し機で、200℃、100rpmで押し出し混練し、ペレット化した。混合割合を表1に示す。えられたペレットを200℃でロール混練、プレス成形することにより、各種試験片をえた。ロール混練時のロールシート外観を目視にて比較した。評価方法は、○:表面に凹凸がなく光沢が優れている、△:表面に少し凹凸があり光沢が少し劣る、○:表面の凹凸が著しく光沢が劣る、とした。ASTM−D 256、ASTM−D790に準じて、アイゾット耐衝撃性試験、曲げ弾性試験を行った。また、同様にして、100mm角、厚さ1.5mmにシートを成形し、開口部76mm角のクランプで固定し、190℃オーブン中、30分間のシートのドローダウンを測定した。また、えられたペレットを東洋精機製キャピログラフにて200℃、ダイスφ2mm×10mm、押出スピード20mm/分、引き取りスピード1m/分での溶融張力を測定した。また、同様にしてえられたペレットを用いて、ASTM−D 1238に準じて、230℃のメルトフローインデックスを測定した。えられた結果を表2に示す。
【0050】実施例2〜6、比較例1〜3混合割合を、表1に示したように変更した以外は、実施例1と同様に試験した。結果を表2に示す。
【0051】繊維状ポリテトラフルオロエチレンを配合したものは、配合しないものに較べて、溶融張力が大幅に高くなっており、熱成形性、ブロー成形性などの指標であるドローダウンが著しく改良されていることがわかる。また、実施例3のロールシート中の繊維状ポリテトラフルオロエチレンをルテニウム染色し、透過型顕微鏡で観察したところ、繊維状ポリテトラフルオロエチレンの直径は0.05〜0.3μm、長さは5〜20μmあるいはそれ以上であった。
【0052】
【表1】


【0053】
【表2】


【0054】実施例7〜9、比較例4〜6コア−シェルグラフト共重合体を含む配合例[コア−シェルグラフト共重合体Aの製造]通常の乳化重合により重合し、架橋ポリブタジエンゴムをえた。架橋剤は特に使用しなかった。粒子径は2500オングストローム、架橋ゲル分は85%であった。えられたポリブタジエンゴムラテックス70部(固形分)の存在下、メタクリル酸メチル15部、スチレン15部よりなる単量体成分30部を通常の乳化重合によりグラフト共重合した。最終転化率は98%、粒子径は2600オングストロームであった。えられた重合体のラテックスを通常の方法で塩析し、脱水、乾燥し、グラフト共重合体Aをえた。
【0055】[コア−シェルグラフト共重合体Bの製造]アクリル酸n−ブチル100部、メタクリル酸アリル1部からなる単量体成分を通常の乳化重合により重合し、架橋ポリアクリル酸ブチルゴムをえた。粒子径は2000オングストローム、架橋ゲル分は85%であった。えられた架橋ポリアクリル酸ブチルゴムラテックス70部(固形分)の存在下、メタクリル酸メチル27部、メタクリル酸n−ブチル3部よりなる単量体成分30部を通常の乳化重合によりグラフト共重合した。最終転化率は98%、粒子径は2200オングストロームであった。えられた重合体のラテックスを通常の方法で塩析し、脱水、乾燥し、グラフト共重合体Bをえた。
【0056】ポリプロピレン、繊維状ポリテトラフルオロエチレン、前記コア−シェルグラフト共重合体を、表3に示したように配合した以外は、実施例1と同様にして混練、成形を行ない試験し評価を行なった。結果を表4に示す。
【0057】繊維状ポリテトラフルオロエチレン、およびグラフト共重合体をポリプロピレンに混合したものは、グラフト共重合体のみのを混合したもの(比較例4〜6)に較べて、耐衝撃性が改良されている。また溶融張力が高められており、シートのドローダウンが著しく改良されていることがわかる。また、両者を併用することにより、ドローダウンと同時にロールシート表面性が改良されることがわかる。
【0058】
【表3】


【0059】
【表4】


【0060】実施例10〜15、比較例7〜12無機充填剤を含む配合例ポリプロピレン、ポリエチレン、繊維状ポリテトラフルオロエチレン、コア−シェルグラフト共重合体、脂肪酸で表面処理した粒子径0.15μmの軽質炭酸カルシウムを表5に示したように配合した以外は、実施例1と同様にして混練、成形を行ない試験し評価を行なった。結果を表6に示す。
【0061】繊維状ポリテトラフルオロエチレン、無機充填剤および要すればグラフト共重合体をポリプロピレンに混合したものは、繊維状ポリテトラフルオロエチレンを配合していないもの(比較例7〜12)に較べて、溶融張力が高めれており加工性、特にシートのドローダウンが改良されていることがわかる。また、耐衝撃性、剛性のバランスも優れていることがわかる。
【0062】
【表5】


【0063】
【表6】


【0064】
【発明の効果】本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、加工において溶融したときの張力が大きく、カレンダー加工時の引き取り性、熱成形時またはブロー成形時の溶融樹脂のドローダウン、発泡成形時のセルの連泡化などが良好であり、カレンダー加工、熱成形、ブロー成形、発泡成形などの加工性が優れている。また、本発明の組成物を用いると、シートおよびフィルムなどの押し出し成形体の表面状態が改良され、押し出し加工性が良好である。また、コア−シェルグラフト共重合体を混合したものは、耐衝撃性が優れ、ダイスウェルが小さく、さらに無機添加剤を混合したものによればカレンダー加工または押し出し加工時のシートおよびフィルムの表面状態がさらに改良される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 (A)ポリオレフィン100重量部および(B)繊維状ポリテトラフルオロエチレン0.001〜10重量部を含んでなるポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項2】 (A)ポリオレフィン100重量部、(B)繊維状ポリテトラフルオロエチレン0.001〜10重量部および(C)(a)ガラス転移温度が25℃以下である架橋ゴム状重合体40〜95重量部に、(b)それのみで重合させるとガラス転移温度が25℃以上である共重合可能なビニル化合物からなる単量体成分60〜5重量部をグラフト共重合させてえられたコア−シェルグラフト共重合体0.1〜100重量部を含んでなるポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項3】 (A)ポリオレフィン100重量部、(B)繊維状ポリテトラフルオロエチレン0.001〜10重量部、(C)(a)ガラス転移温度が25℃以下である架橋ゴム状重合体40〜95重量部に、(b)それのみで重合させるとガラス転移温度が25℃以上である共重合可能なビニル化合物からなる単量体成分60〜5重量部をグラフト共重合させてえられたコア−シェルグラフト共重合体0.1〜100重量部および(D)無機充填剤0.1〜400重量部を含んでなるポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項4】 ポリオレフィンのメルトフローインデックスが10g/10分以下である請求項1、2または3記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項5】 ポリオレフィンのメルトフローインデックスが2.5g/10分以下である請求項1、2または3記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項6】 (A)メルトフローインデックスが2.5g/10分以下のポリオレフィン100重量部、(B)繊維状ポリテトラフルオロエチレン0.001〜10重量部および(D)無機充填剤0.1〜400重量部を含んでなるポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項7】 ポリオレフィンが、プロピレン単位を少なくとも50重量%含むプロピレン系ポリオレフィンである請求項1、2、3、4、5または6記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項8】 ポリオレフィンが、プロピレン単位を少なくとも50重量%含むプロピレン系ポリオレフィン100重量部と、エチレン単位を少なくとも50重量%含むエチレン系ポリオレフィン0.1〜100重量部との混合物からなる請求項1、2、3、4、5または6記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項9】 ポリオレフィンが、ポリプロピレン、エチレンプロピレンランダム共重合体およびエチレンプロピレンブロック共重合体よりなる群から選ばれた少なくとも1種からなる請求項1、2、3、4、5または6記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項10】 ポリオレフィンが、ポリプロピレン、エチレンプロピレンランダム共重合体およびエチレンプロピレンブロック共重合体よりなる群から選ばれた少なくとも1種からなるプロピレン系ポリオレフィン100重量部と、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンおよび高密度ポリエチレンよりなる群から選ばれた少なくとも1種からなるエチレン系ポリオレフィン0.1〜100重量部との混合物からなる請求項1、2、3、4、5または6記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項11】 (A)少なくとも50重量%のエチレンからなるエチレン系ポリオレフィン、ポリプロピレンおよびエチレンプロピレンランダム共重合体よりなる群から選ばれた少なくとも1種100重量部、(B)繊維状ポリテトラフルオロエチレン0.001〜10重量部および(D)無機充填剤0.1〜400重量部を含んでなるポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項12】 無機充填剤が、炭酸カルシウムおよび/またはタルクである請求項3、6または11記載のポリオレフィン系樹脂組成物。