説明

ポリカチオンで表面処理された吸水性ポリマー構造体

【課題】優れた吸収・保持特性に加えて特に有利な透過性を有する超吸収体及び超吸収体を大量に含む吸収性構造体を提供すること。
【解決手段】ポリカチオン及び少なくとも1種のアニオンを含む化合物を表面に接触させた吸水性ポリマー構造体。吸水性ポリマー構造体の表面処理方法、この方法によって得られる表面処理された吸水性ポリマー構造体、表面処理された吸水性ポリマー構造体及び基材を含む複合体、複合体の製造方法、この方法によって得られる複合体、表面処理された吸水性ポリマー構造体又は複合体を含む化学製品(例えば発泡体、成形体、繊維)、表面処理された吸水性ポリマー構造体又は複合体の化学製品における使用、所与の構造を有するポリカチオンを含む化合物の吸水性ポリマー構造体の表面処理における使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性ポリマー構造体、吸水性ポリマー構造体の表面処理方法、この方法によって得られる表面処理された吸水性ポリマー構造体、吸水性ポリマー構造体及び基材を含む複合体、複合体の製造方法、この方法によって得られる複合体、吸水性ポリマー構造体又は複合体を含む化学製品(例えば発泡体、成形体、繊維)、吸水性ポリマー構造体又は複合体の化学製品における使用、所与の構造を有するポリカチオンを含む化合物の吸水性ポリマー構造体の表面処理における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
超吸収体は、膨潤してヒドロゲルを形成することにより、大量の水性液体、特に体液、好ましくは尿又は血液を吸収し、所与の圧力下で保持することができる非水溶性架橋ポリマーである。これらのポリマーは、上記特性を有するために、おむつ、失禁用品又は女性用衛生用品等の衛生用品に主に使用されている。
【0003】
通常、超吸収体は、酸性基含有モノマーを架橋剤の存在下でラジカル重合することにより製造される。モノマー組成、架橋剤、重合後に得られるヒドロゲルの重合条件及び加工条件を選択することにより、異なる吸収特性を有するポリマーを製造することができる。例えば化学変性デンプン、セルロース、ポリビニルアルコールを使用したグラフト重合体の製造(ドイツ特許第26 12 846号)や、ポリマー粒子の表面後架橋によるヒドロゲル又はヒドロゲルを乾燥して得られる粉末状ポリマー粒子の後処理(ドイツ特許第40 20 780 C1号)も異なる吸収特性を有するポリマーを製造するために使用することができる。吸水性ポリマー粒子の表面後架橋により、特に圧力下でのポリマー粒子の吸収能力が向上する。
【0004】
欧州特許出願第0 248 963 A2号は、吸収能力と保水率を向上させるために吸水性ポリマー粒子をポリ第4級アミンで被覆することを提案している。しかし、欧州特許出願第0 248 963 A2号に開示された吸水性ポリマー粒子は、ポリ第4級アミンで被覆することによって高い吸収能力と保持率を有するが、これらのポリマーを高濃度で含む吸収性構造体は吸収性が不十分であるという欠点を有する。不十分な吸収性は、特に「ゲル閉塞」作用として現れる。ゲル閉塞作用により、吸収性構造体の制限された透過性のために構造体への液体の拡散速度は吸収性構造体への液体の流入速度未満となり、吸収性構造体は例えばおむつである場合には漏れが生じる。
【特許文献1】ドイツ特許第26 12 846号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は最新技術から生じる欠点を克服することにある。
【0006】
特に、本発明の目的は、優れた吸収・保持特性に加えて特に有利な透過性を有する超吸収体及び超吸収体を大量に含む吸収性構造体を提供することにある。
【0007】
本発明の別の目的は、上記利点を有する超吸収体及び超吸収体を含む複合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、ポリカチオンと少なくとも1種のアニオンとを含む化合物を表面に接触させた吸水性ポリマー構造体であって、少なくとも16g/g、特に好ましくは少なくとも18g/g、最も好ましくは少なくとも20g/gであって、100g/g未満、特に好ましくは50g/g未満、より好ましくは40g/g未満(粒子の場合には全粒子部分について測定)のERT442.2−02(ERT=Edana推奨試験方法)に準拠して測定した50g/cmの圧力下における吸収率を有する吸水性ポリマー構造体によって達成される。
【0009】
また、上記目的は、ポリカチオンと少なくとも1種のアニオンとを含む化合物を表面に接触させた吸水性ポリマー構造体であって、ポリカチオンと少なくとも1種のアニオンとを含む化合物が、3,000g/モル、好ましくは4,000g/モル、より好ましくは5,000g/モル、より好ましい7,000g/モル、最も好ましくは10,000g/モルを超え、好ましくは100,000,000g/モル未満、特に好ましくは10,000,000g/モル未満の重量平均分子量を有する吸水性ポリマー構造体によって達成される。
【0010】
本発明に係る吸水性ポリマー構造体の好ましい実施形態では、吸水性ポリマー構造体は表面後架橋されている。表面架橋されたポリマー構造体は、内部領域と、内部領域を取り囲む外部領域とを有し、外部領域は内部領域よりも高い架橋度を有する。
【0011】
本発明に係る好ましいポリマー構造体は、繊維、発泡体又は粒子であり、繊維及び粒子が好ましく、粒子が特に好ましい。
【0012】
本発明に係る好ましいポリマー繊維は、織糸として織物に組み込むか、織物に直接組み込むことができる寸法を有する。本発明によれば、ポリマー繊維は、1〜500mm、好ましくは2〜500mm、特に好ましくは5〜100mmの長さを有し、1〜200デニール、好ましくは3〜100デニール、特に好ましくは5〜60デニールの直径を有することが好ましい。
【0013】
本発明に係る好ましいポリマー粒子は、10〜3,000μm、好ましくは20〜2,000μm、特に好ましくは150〜850μm又は150〜600μmのERT 420.2−02に準拠した平均粒径を有する。300〜600μmの粒径を有するポリマー粒子の量は、後架橋された吸水性ポリマー粒子の総重量に対して、少なくとも30重量%、特に好ましくは少なくとも40重量%、より好ましくは少なくとも50重量%、最も好ましくは少なくとも75重量%であることが特に好ましい。本発明に係る吸水性ポリマー構造体の別の実施形態では、150〜850μmの粒径を有するポリマー粒子の量は、後架橋された吸水性ポリマー粒子の総重量に対して、少なくとも50重量%、特に好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、最も好ましくは少なくとも95重量%である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る吸水性ポリマー構造体の好ましい実施形態では、吸水性ポリマー構造体は、
(α1)20〜99.999重量%、好ましくは55〜98.99重量%、特に好ましくは70〜98.79重量%のエチレン性不飽和酸性基含有モノマー又はその塩、又はプロトン化又は四級化窒素を含むエチレン性不飽和モノマー、又はそれらの混合物(少なくともエチレン性不飽和酸性基含有モノマー、好ましくはアクリル酸を含む混合物が特に好ましい)と、
(α2)0〜80重量%、好ましくは0〜44.99重量%、特に好ましくは0.1〜44.89重量%の、(α1)と共重合可能な重合モノエチレン性不飽和モノマーと、
(α3)0.001〜5重量%、好ましくは0.01〜3重量%、特に好ましくは0.01〜2.5重量%の1種以上の架橋剤と、
(α4)0.001〜10重量%、好ましくは0.01〜7.5重量%、最も好ましくは0.5〜5重量%の少なくとも1種のアニオンとポリカチオンとを含む化合物と、
(α5)0〜30重量%、好ましくは0〜5重量%、特に好ましくは0.1〜5重量%の水溶性ポリマーと、
(α6)0〜20重量%、好ましくは2.5〜15重量%、特に好ましくは5〜10重量%の水と、
(α7)0〜20重量%、好ましくは0〜10重量%、特に好ましくは0.1〜8重量%の1種以上の添加剤と、を含む((α1)〜(α7)の総重量は100重量%である)。
【0015】
モノエチレン性不飽和酸性基含有モノマー(α1)は、部分的又は完全に中和されていてもよく、部分的に中和されていることが好ましい。モノエチレン性不飽和酸性基含有モノマーは、少なくとも25モル%、特に好ましくは少なくとも50モル%、より好ましくは50〜80モル%が中和されていることが好ましい。ここでは、ドイツ特許出願公開第195 29 348 A1号を参照し、その開示内容はこの参照によって本明細書の開示内容の一部をなすものとする。また、重合後に部分的又は完全に中和を行うこともできる。中和は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アンモニア、炭酸塩、重炭酸塩を使用して行うことができる。酸と共に水溶性塩を生成する塩基も使用することができる。複数の塩基を使用した中和も可能である。アンモニア及びアルカリ金属水酸化物を使用した中和が好ましく、水酸化ナトリウム及びアンモニアを使用した中和が特に好ましい。
【0016】
また、遊離酸基がポリマー中に多く含まれるため、ポリマーは酸性領域のpHを有する。酸性の吸水性ポリマーは、遊離塩基性基、好ましくはアミン基を有するポリマーによって少なくとも部分的に中和されていてもよい。この塩基性基含有ポリマーは、前記酸性ポリマーに比べて塩基性である。これらのポリマーは「混合床イオン交換性吸収性ポリマー」(MBIEAポリマー)として文献に記載されており、特に国際公開第WO99/34843 A1号に開示されている。国際公開第WO99/34843 A1号の開示内容は、この参照によって本明細書の開示内容の一部をなすものとする。通常、MBIEAポリマーは、アニオンを交換できる塩基性ポリマーと、塩基性ポリマーと比較すると酸性であって、カチオンを交換できるポリマーとからなる組成物である。塩基性ポリマーは塩基性基を含み、塩基性基又は塩基性基に変換できる基を有するモノマーを重合することによって通常得られる。これらのモノマーは、第1級、第2級又は第3級アミン又は対応するホスフィン又はこれらの官能基の少なくとも2つを含む。これらのモノマーとしては、特に、エチレンアミン、アリルアミン、ジアリルアミン、4−アミノブテン、アルキルオキシサイクリン、ビニルホルムアミド、5−アミノペンテン、カルボジイミド、ホルマールダシン(formaldacine)、メラミン、それらの第2級又は第3級アミン誘導体等が挙げられる。
【0017】
好ましいエチレン性不飽和酸性基含有モノマー(α1)は、国際公開第WO2004/037903 A2号においてエチレン性不飽和酸性基含有モノマー(α1)として記載されている化合物である。国際公開第WO2004/037903 A2号の開示内容は、この参照によって本明細書の開示内容の一部をなすものとする。特に好ましいエチレン性不飽和酸性基含有モノマー(α1)はアクリル酸及びメタクリル酸であり、アクリル酸が最も好ましい。
【0018】
本発明に係る方法の一実施形態によれば、(α1)と共重合可能なモノエチレン性不飽和モノマー(α2)がアクリルアミド、メタアクリルアミド又はビニルアミドである吸水性ポリマー構造体を使用する。
【0019】
アクリルアミド及びメタクリルアミド以外の好ましい(メタ)アクリルアミドは、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノ(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド等のアルキル置換(メタ)アクリルアミド又は(メタ)アクリルアミドのアミノアルキル置換誘導体である。ビニルアミドとしては、N−ビニルアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、ビニルピロリドンが挙げられる。これらのモノマーのうち、アクリルアミドが特に好ましい。
【0020】
本発明に係る方法の別の実施形態によれば、(α1)と共重合可能なモノエチレン性不飽和モノマー(α2)が水溶性モノマーである吸水性ポリマー構造体を使用する。水溶性モノマーとしては、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレンオキシド(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0021】
(α1)と共重合可能なモノエチレン性不飽和モノマー(α2)としては水分散性モノマーも好ましい。好ましい水分散性モノマーは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等のアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルである。
【0022】
(α1)と共重合可能なモノエチレン性不飽和モノマー(α2)としては、メチルポリエチレングリコールアリルエーテル、酢酸ビニル、スチレン、イソブチレンも挙げられる。
【0023】
架橋剤(α3)としては、国際公開第WO2004/037903 A2号において架橋剤(α3)として記載されている化合物を好ましくは使用する。これらの架橋剤の中では水溶性架橋剤が特に好ましい。水溶性架橋剤としては、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、塩化トリアリルメチルアンモニウム、塩化テトラアリルアンモニウム、アクリル酸1モル当たり9モルのエチレンオキシドを使用して製造されたアリルノナエチレングリコールアクリレートが最も好ましい。
【0024】
少なくとも1種のアニオンとポリカチオンとを含む化合物(α4)としては、ポリカチオンが以下の構造Iを有する化合物が好ましい。
【化1】

(I)
式中、R及びRは同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜10、好ましくは1〜7、特に好ましくは1〜4、より好ましくは1〜2、最も好ましくはメチル基である炭化水素残基を表し、nは、少なくとも25、好ましくは少なくとも31、より好ましくは少なくとも100、さらに好ましくは少なくとも1,000、より好ましくは少なくとも2,000、より好ましくは少なくとも2,500、より好ましくは少なくとも3,000、最も好ましくは少なくとも5,000である。
【0025】
構造Iの特に好ましいポリカチオンはポリジアリルジメチルアミンである。好ましいアニオンは、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫化物イオン、硫酸塩イオン、亜硫酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、酢酸イオン、乳酸塩イオン、炭酸イオン、炭酸水素塩イオン、リン酸イオン、亜リン酸塩イオン、水酸化物イオンである。これらの1価又は2価アニオンに加えて、化合物は多価アニオンも含むことができる。少なくとも1種のアニオンとポリカチオンとを含む特に好ましい化合物は、nが少なくとも25、好ましくは少なくとも31、さらに好ましくは少なくとも100、さらに好ましくは少なくとも1,000、さらに好ましくは少なくとも2,500、最も好ましくは少なくとも5,000であるジアリルジメチルアンモニウムクロライドのポリマーである。
【0026】
水溶性ポリマー(α5)としては、部分的または完全にケン化されたポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、デンプン誘導体、ポリグリコール、ポリアクリル酸などの水溶性ポリマーをポリマー構造体に含有させることができ、好ましくは重合させることができる。これらのポリマーの分子量は、ポリマーが水溶性であれば限定されない。好ましい水溶性ポリマーは、デンプン、デンプン誘導体、ポリビニルアルコールである。水溶性ポリマー、好ましくはポリビニルアルコールなどの合成ポリマーは、重合するモノマーのグラフト基材としても使用することができる。
【0027】
添加剤(α6)としては、懸濁化剤、臭気結合剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマー構造体の製造に使用された添加剤(重合開始剤等)を好ましくはポリマー構造体に使用することができる。
【0028】
本発明に係るポリマー構造体の一実施形態では、ポリマー構造体は、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも90重量%のカルボキシレート基含有モノマーを含む。また、本発明によれば、成分(α1)が、少なくとも20モル%、特に好ましくは少なくとも50モル%、より好ましくは60〜85モル%が好ましくは中和されたアクリル酸を、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%の量で含むことが好ましい。
【0029】
少なくとも1種のアニオンとポリカチオンとを含む化合物は、表面領域全体にわたって固定されている必要はない。ただし、本発明では、化合物は外側表面の少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、最も好ましくは少なくとも30%において固定されていることが好ましい。
【0030】
また、本発明に係るポリマー構造体は、好ましくは以下の特性の少なくとも1つを有する。
(β1)国際公開第WO00/10619 A1に記載された「耐ケーキング性(anti−caking)」試験において、3時間後、好ましくは6時間後、特に好ましくは12時間後にケーキングを示さない
(β2)ERT441.2−02に準拠して測定したCRC値(CRC=遠心分離保持能(Centrifugation Retention Capacity)、粒子の場合には粒子全体について測定)が26g/g未満であり、本明細書に記載する試験方法によって測定したSFC値(SFC=生理食塩水透過率(Saline Flow Conductivity))が少なくとも80×10−7cm/秒/g−1、好ましくは少なくとも90×10−7cm/秒/g−1、最も好ましくは少なくとも10×10−7cm/秒/g−1
(β3)ERT441.2−02に準拠して測定したCRC値が26g/g以上27g/g未満であり、本明細書に記載する試験方法によって測定したSFC値が少なくとも70×10−7cm/秒/g−1、好ましくは少なくとも80×10−7cm/秒/g−1、最も好ましくは少なくとも90×10−7cm/秒/g−1
(β4)ERT441.2−02に準拠して測定したCRC値が27g/g以上28g/g未満であり、本明細書に記載する試験方法によって測定したSFC値が少なくとも60×10−7cm/秒/g−1、好ましくは少なくとも70×10−7cm/秒/g−1、最も好ましくは少なくとも80×10−7cm/秒/g−1
(β5)ERT441.2−02に準拠して測定したCRC値が28g/g以上29g/g未満であり、本明細書に記載する試験方法によって測定したSFC値が少なくとも45×10−7cm/秒/g−1、好ましくは少なくとも55×10−7cm/秒/g−1、最も好ましくは少なくとも65×10−7cm/秒/g−1
(β6)ERT441.2−02に準拠して測定したCRC値が29g/g以上30g/g未満であり、本明細書に記載する試験方法によって測定したSFC値が少なくとも30×10−7cm/秒/g−1、好ましくは少なくとも40×10−7cm/秒/g−1、最も好ましくは少なくとも50×10−7cm/秒/g−1
(β7)ERT441.2−02に準拠して測定したCRC値が30g/g以上31g/g未満であり、本明細書に記載する試験方法によって測定したSFC値が少なくとも20×10−7cm/秒/g−1、好ましくは少なくとも30×10−7cm/秒/g−1、最も好ましくは少なくとも40×10−7cm/秒/g−1
(β8)ERT441.2−02に準拠して測定したCRC値が少なくとも31g/gであり、本明細書に記載する試験方法によって測定したSFC値が少なくとも10×10−7cm/秒/g−1、好ましくは少なくとも20×10−7cm/秒/g−1、最も好ましくは少なくとも30×10−7cm/秒/g−1
(β9)本明細書に記載した試験方法によって測定した1分間後のウィッキング指数(Wicking Index)が少なくとも7.5cm、好ましくは少なくとも8.5cm、最も好ましくは少なくとも10.0cm
(β10)中和度が75モル%以下、好ましくは70モル%以下、最も好ましくは65モル%以下
【0031】
SFC値は、750×10−7cm/秒/g−1未満、より好ましくは500×10−7cm/秒/g−1未満、より好ましくは300×10−7cm/秒/g−1未満、より好ましくは260×10−7cm/秒/g−1未満、最も好ましくは249×10−7cm/秒/g−1未満であることが好ましい。本発明に係るポリマー構造体は、100cm以下、好ましくは75cm以下、特に好ましくは50cm以下、より好ましくは25cm以下、最も好ましくは10.5cm以下のウィッキング指数を有することが好ましい。
【0032】
上記特徴(β1)〜(β10)の各組み合わせは本発明に係るポリマー構造体の好ましい実施形態を示し、以下の特徴の組み合わせの実施形態が好ましい。(β1),(β2),(β3),(β4),(β5),(β6),(β7),(β8),(β9),(β10),(β1)(β9),(β2)(β3)(β4)(β5)(β6)(β7)(β8)(β9),(β1)(β2)(β3)(β4)(β5)(β6)(β7)(β8)(β9)(β10)。こららのうち、(β9),(β1)(β9),(β1)(β2)(β3)(β4)(β5)(β6)(β7)(β8)(β9)(β10)が最も好ましい特性の組み合わせである。
【0033】
また、上記目的は、
i)未処理の吸水性ポリマー構造体を用意する工程と、
ii)未処理の吸水性ポリマー構造体を、少なくとも1種のアニオンとポリカチオンとを含む化合物と接触させる工程と、
iii)吸水性ポリマー構造体を必要に応じて後架橋する工程と、
を含み、工程iii)を、工程ii)の前、工程ii)の実施中又は工程ii)の後に行う吸水性ポリマー構造体の表面処理方法によって達成される。
【0034】
本発明において、「未処理」という用語は、吸水性ポリマー構造体が少なくとも1種のアニオンと構造Iを有するポリカチオンとを含む化合物と接触されておらず、表面後架橋もされていないことを意味する。ただし、「未処理」という用語は、膨潤状態におけるポリマー構造体の透過性を向上させるための二酸化珪素又はシリカによるコーティング又はアルミニウム塩による表面処理等のその他の表面変性手段によって吸水性ポリマー構造体が変性されていることを排除するものではない。
【0035】
工程i)では、好ましくは以下の工程によって得られたポリマーを未処理の吸水性ポリマー構造体として用意する。
a)必要に応じて部分的に中和された酸性基含有エチレン性不飽和モノマーを架橋剤の存在下でラジカル重合してヒドロゲルを形成する。
b)必要に応じてヒドロゲルを粉砕する。
c)必要に応じて粉砕されたヒドロゲルを少なくとも部分的に乾燥して吸水性ポリマー構造体を得る。
d)得られた吸水性ポリマー構造体を必要に応じて粉砕し、所望の粒径に篩い分ける。
e)得られた吸水性ポリマー構造体を必要に応じてさらに表面変性する。
【0036】
工程a)におけるラジカル重合は水溶液中で行うことが好ましく、水溶液は、溶媒としての水に加え、以下の成分を含むことが好ましい。
(α1)エチレン性不飽和酸性基含有モノマー又はその塩(アクリル酸が酸性基含有モノマーとして最も好ましい)。
(α2)必要に応じて、(α1)と共重合可能なモノエチレン性不飽和モノマー。
(α3)架橋剤。
(α5)必要に応じて、水溶性ポリマー。
(α7)必要に応じて、1種以上の添加剤。
【0037】
(α1)と共重合可能なモノエチレン性不飽和モノマー、水溶性ポリマー、添加剤としては、本発明に係るポリマー構造体について(α1)と共重合可能なモノエチレン性不飽和モノマー、水溶性ポリマー、添加剤として上述した化合物が好ましい。
【0038】
吸水性ポリマー構造体は、各種重合法によって上記モノマー、コモノマー、架橋剤、水溶性ポリマー及び添加剤を重合することにより製造することができる。重合方法としては、例えば、押出機などの混錬反応器内で好ましくは行われる塊状重合、溶液重合、噴霧重合、逆乳化重合、逆懸濁重合が挙げられる。
【0039】
溶液重合は、好ましくは水を溶媒として使用して行う。溶液重合は、連続的又は非連続的に行うことができる。最新技術では、開始剤及び反応溶液の温度、種類、量等の反応条件を広範囲に変化させている。典型的な方法は、米国特許第4,286,082号、ドイツ特許第27 06 135号、米国特許第4,076,663号、ドイツ特許第35 03 458号、ドイツ特許第40 20 780号、ドイツ特許第42 44 548号、ドイツ特許第43 23 001号、ドイツ特許第43 33 056号、ドイツ特許第44 18 818号に記載されている。これらの文献の開示内容は、この参照によって本明細書の開示内容の一部をなすものとする。
【0040】
通常、重合は開始剤を使用して開始させる。重合を開始させるための開始剤としては、重合条件においてラジカルを生成し、従来から超吸収体の製造に使用されている開始剤を使用することができる。また、重合性水性混合物に電子線を照射することによって重合を開始させることもできる。また、上述した開始剤を使用せずに、光開始剤の存在下においてエネルギー放射線を照射することによって重合を開始させることもできる。重合開始剤は、本発明に係るモノマー溶液に溶解又は分散させることができる。開始剤としては、当業者に公知であり、ラジカルに分解する化合物を使用することができる。特に、国際公開第WO2004/037903 A2号に開始剤として記載されている開始剤がこれらの化合物に該当する。
【0041】
特に好ましくは、吸水性ポリマー構造体の製造には、過酸化水素、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、アスコルビン酸を含むレドックス系を使用する。
【0042】
ポリマー構造体の製造には、逆懸濁重合及び乳化重合を適用することもできる。これらの方法では、保護コロイド又は乳化剤を使用し、モノマー(α1),(α2)の部分的に中和された水溶液を疎水性有機溶媒中に分散させ、ラジカル開始剤によって重合を開始させる。架橋剤は、モノマー溶液に溶解するか、モノマー溶液と共に添加するか、重合時に必要に応じて個別に添加する。グラフト基材としての水溶性ポリマー(α4)は、モノマー溶液として添加してもよく、油相に直接添加してもよい。次に、水を共沸除去し、ポリマーを濾別する。
【0043】
溶液重合、逆懸濁重合、乳化重合のいずれの場合にも、架橋は、モノマー溶液に溶解した多官能架橋剤内での重合及び/又は重合工程における適当な架橋剤とポリマーの官能基との反応によって行うことができる。このプロセスは、例えば米国特許第4,340,706号、ドイツ特許第37 13 601号、ドイツ特許第28 40 010号、国際公開第96/05234 A1号に記載されている。これらの文献の対応する開示はこの参照によって本願に援用するものとする。
【0044】
工程a)において溶液重合又は逆懸濁重合及び乳化重合によって得られたヒドロゲルは、工程c)において少なくとも部分的に乾燥させる。
【0045】
特に、溶液重合の場合には、乾燥前に工程b)においてヒドロゲルを粉砕することが好ましい。粉砕は当業者に公知の粉砕装置(例えば肉挽機(Fleischwolf))を使用して行う。
【0046】
ヒドロゲルの乾燥は、適当な乾燥機又はオーブン内で行うことが好ましい。例えば、回転オーブン、流動床乾燥機、プレート乾燥機、パドル乾燥機、赤外線乾燥機が挙げられる。本発明では、工程c)におけるヒドロゲルの乾燥は、水分が0.5〜50重量%、1〜25重量%、特に好ましくは2〜10重量%となるまで行うことが好ましく、乾燥温度は通常100〜200℃である。
【0047】
工程c)で得られた少なくとも部分的に乾燥した吸水性ポリマー構造体は、特に溶液重合によって得た場合には、工程d)で粉砕し、所望の粒径に篩い分けることができる。乾燥した吸水性ポリマー構造体の粉砕は、ボールミル等の適当な機械的粉砕装置内で行うことが好ましい。
【0048】
ヒドロゲルを乾燥し、乾燥した吸水性ポリマー構造体の粉砕を必要に応じて粉砕した後、工程e)において表面領域を変性する(工程eで行われる表面変性は、以下に詳細に説明する少なくとも1種のアニオンとポリカチオンとを含む化合物による変性及び表面後架橋を除く)。
【0049】
好ましい変性手段としては、後架橋剤又は後架橋剤を含む流体との接触前、接触中又は接触後、好ましくは接触後にAl3+イオン含有化合物とポリマー構造体の外側領域を接触させることが挙げられる。Al3+イオン含有化合物は、ポリマー構造体の重量に対して、0.01〜30重量%、特に好ましくは0.1〜20重量%、特に好ましくは0.3〜5重量%の量でポリマー構造体と接触させることが好ましい。
【0050】
ポリマー構造体の外部領域とAl3+イオン含有化合物との接触は、ポリマー構造体と化合物を乾燥条件で混合するか、溶媒、好ましくは水、メタノール、エタノール等の水混和性有機溶媒又はそれらの少なくとも2種の混合物とAl3+イオン含有化合物とを含む流体Fにポリマー構造体を接触させることによって行うことが好ましく、ポリマー粒子を流体Fとともに噴霧し、混合することによって行うことが好ましい。また、ポリマー構造体とAl3+イオン含有化合物を含む流体Fとの接触は、2段階のプロセスによって行うことが好ましい。2段階のプロセスは、複数のポリマー構造体を流体Fと混合する第1の混合工程と、流体Fをポリマー粒子の内部で均一化させる第2の混合工程とを含み、第1の混合工程では、各ポリマー粒子の運動エネルギーが平均して各ポリマー粒子間の付着エネルギーよりも大きくなる速度でポリマー粒子を混合し、第2の混合工程では、第1の混合工程よりも低い速度でポリマー粒子を混合する。
【0051】
上述した2段階のプロセスによりポリマー構造体をAl3+イオン含有化合物を含む流体Fによって処理することによって、吸収性が改善されたポリマー構造体を得ることができる。
【0052】
Al3+イオン含有化合物は、結晶化の水を考慮せずに、流体Fの総重量に対して、0.1〜50重量%、好ましくは1〜30重量%の量で流体に含まれることが好ましい。また、流体Fは、ポリマー構造体の重量に対して、0.01〜15重量%、特に好ましくは0.05〜6重量%の量でポリマー構造体に接触させることが好ましい。
【0053】
好ましいAl3+イオン含有化合物は、AlCl×6HO、NaAl(SO×12HO、KAl(SO×12HO、Al(SO×14−18HOである。
【0054】
別の表面変性としては、吸水性ポリマー構造体を、無機粒子、例えば好ましくは水性懸濁液で塗布する微粒子二酸化珪素又はシリカ塩と接触させる。
【0055】
上記変性は工程e)で行われ、特にAl3+イオン含有化合物による処理は原則として工程ii)及びiii)の実施中又は工程ii)又はiii)の実施後に行うことができ、工程ii)又はiii)の実施後に変性を行うことが特に好ましい。
【0056】
本発明に係る方法の工程ii)では、未処理の吸水性ポリマー構造体を、少なくとも1種のアニオンとポリカチオンとを含む化合物と接触させる。本発明では、ポリカチオンは以下の構造Iを有するポリカチオンであることが好ましい。
【化2】

(I)
式中、R及びRは同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜10、好ましくは1〜7、特に好ましくは1〜4、より好ましくは1〜2、最も好ましくはメチル基である炭化水素残基を表し、nは、少なくとも25、好ましくは少なくとも31、より好ましくは少なくとも100、さらに好ましくは少なくとも1,000、より好ましくは少なくとも2,000、より好ましくは少なくとも2,500、より好ましくは少なくとも3,000、最も好ましくは少なくとも5,000である。
【0057】
少なくとも1種のアニオンとポリカチオンとを含む化合物は、3,000g/モル、好ましくは4,000g/モル、より好ましくは5,000g/モル、より好ましい7,000g/モル、最も好ましくは10,000g/モルを超える分子量を有することが好ましい。
【0058】
ポリカチオンは、nが少なくとも25、好ましくは少なくとも31、さらに好ましくは少なくとも100、さらに好ましくは少なくとも1,000、さらに好ましくは少なくとも2,000、さらに好ましくは少なくとも2,500、最も好ましくは少なくとも5,000であるポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドである。
【0059】
また、本発明に係る方法では、工程ii)において、少なくとも1種のアニオンとポリカチオンとを含む化合物を、未処理の吸水性ポリマー構造体に直接接触させるか、溶媒(好ましくは水、メタノール、エタノール等の水混和性の有機溶媒又はそれらの少なくとも2種の混合物)及び前記化合物を含む流体Fとして接触させることができる。
【0060】
未処理の吸水性ポリマー構造体は、吸水性ポリマー構造体の重量に対して、0.001〜10重量%、好ましくは0.01〜7.5重量%、さらに好ましくは0.5〜5重量%の量で前記化合物と接触させることが好ましい。前記化合物を流体Fとして使用する場合には、10〜80重量%、好ましくは20〜70重量%、特に好ましくは30〜60重量%の溶液(好ましくは水溶液)である流体Fの前記化合物を未処理の吸水性ポリマー構造体に接触させることが好ましい。
【0061】
流体Fを塗布するための好適なミキサーとしては、パターソン・ケリー(Patterson−Kelley)ミキサー、DRAIS乱流ミキサー、ロディジ(Lodige)ミキサー、ルベルク(Ruberg)ミキサー、スクリューミキサー、パンミキサー、流動床ミキサー、回転刃によって高周波でポリマー構造体を混合する連続垂直ミキサー(シュージ(Schugi)ミキサー)を挙げることができる。
【0062】
工程iii)では、吸水性ポリマー構造体の表面後架橋を必要に応じて行うことができ、表面後架橋時には、ポリマー構造体を表面後架橋剤と接触させ、加熱する。特に、後架橋剤が後架橋条件下で液体ではない場合には、後架橋剤と溶媒を含む流体Fとして後架橋剤をポリマー粒子に接触させることが好ましい。溶媒としては、水、水と混和する有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール又はそれらの少なくとも2種の混合物を使用することが好ましい。後架橋剤は、流体Fの総重量に対して、5〜75重量%、好ましくは10〜50重量%、最も好ましくは15〜40重量%の量で流体Fに含まれることが好ましい。
【0063】
本発明に係る方法では、ポリマー構造体と流体Fとの接触は、流体Fをポリマー構造体と十分に混合することによって行うことが好ましい。
【0064】
流体Fを塗布するための適当なミキサーとしては、パターソン・ケリー(Patterson−Kelley)ミキサー、DRAIS乱流ミキサー、ロディジ(Lodige)ミキサー、ルベルク(Ruberg)ミキサー、スクリューミキサー、パンミキサー、流動床ミキサー、回転刃によって高周波でポリマー構造体を混合する連続垂直ミキサー(シュージ(Schugi)ミキサー)を挙げることができる。
【0065】
本発明に係る方法では、後架橋時に、ポリマー構造体を、ポリマー構造体の重量に対して、20重量%以下、特に好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下、最も好ましくは3重量%未満の溶媒(好ましくは水)と接触させることが好ましい。
【0066】
ポリマー構造体が好ましくは球状粒子である場合には、本発明では、粒子状のポリマー構造体の外部領域のみを流体F(後架橋剤)と接触させることが好ましい。
【0067】
本発明に係る方法で使用される後架橋剤は、好ましくは、縮合反応(=縮合架橋剤)、付加反応または開環反応によってポリマーの官能基と反応することができる少なくとも2つの官能基を有する化合物又は多価金属カチオンとポリマーの官能基との静電相互作用によってポリマーを架橋させることができる多価金属カチオンである。本発明に係る方法において好ましい後架橋剤は、国際公開第WO2004/037903 A2号に架橋剤II,IVとして記載されている化合物である。
【0068】
これらの化合物のうち、縮合後架橋剤としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピレン、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体、プロピレンオキシドブロック共重合体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ポリビニルアルコール、ソルビトール、1,3−ジオキソラン−2−オン(炭酸エチレン)、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン(炭酸プロピレン)、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−エチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,3−ジオキサン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキサン−2−オン、4,6−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−オン、1,3−ジオキソラン−2−オンが特に好ましい。
【0069】
後架橋剤又は後架橋剤を含む流体と接触させたポリマー構造体は、50〜300℃、好ましくは75〜275℃、特に好ましくは150〜250℃に加熱し、ポリマー構造体の外部領域を内部領域よりも架橋させる(後架橋)。加熱時間は、ポリマー構造体の所望の特性プロファイルが熱によって損なわれる時間によって制限される。
【0070】
工程ii)における、未処理の吸水性ポリマー構造体と、少なくとも1種のアニオンとポリカチオンとを含む化合物又は前記化合物を含む流体Fとの接触は、本発明に係る方法の異なる時点において行うことができる
【0071】
1.少なくとも1種のアニオンとポリカチオンとを含む化合物又は流体Fを工程b)で得られたポリマーゲルに接触させる。ポリマーゲルは、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも20重量%、最も好ましくは少なくとも30重量%の水を含み、工程iii)の表面後架橋は工程ii)の後に行う。
【0072】
2.少なくとも1種のアニオンとポリカチオンとを含む化合物又は流体Fを工程b)で粉砕されたポリマーゲルに接触させる。ポリマーゲルは、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも20重量%、最も好ましくは少なくとも30重量%の水を含むことが好ましい。工程iii)の表面後架橋は、化合物の接触前、接触中又は接触後に行うことができる。
【0073】
3.少なくとも1種のアニオンとポリカチオンとを含む化合物又は流体Fを、工程c)で乾燥した吸水性ポリマー構造体と接触させる。工程iii)の表面後架橋は、化合物の接触前、接触中又は接触後に行うことができる。
【0074】
4.少なくとも1種のアニオンとポリカチオンとを含む化合物又は流体Fを、工程d)で粉砕した吸水性ポリマー構造体と接触させる。工程iii)の表面後架橋は、化合物の接触前、接触中又は接触後に行うことができる。
【0075】
5.少なくとも1種のアニオンとポリカチオンとを含む化合物又は流体Fを、工程i)で表面変性した吸水性ポリマー構造体と接触させる。工程iii)の表面後架橋は、化合物の接触前、接触中又は接触後に行うことができる。
【0076】
本発明に係る方法の好ましい実施形態では、工程ii),iii)を同時に行う。この場合、少なくとも1種のアニオンとポリカチオンとを含む化合物又は流体Fを流体Fと共に使用し、少なくとも1種のアニオンとポリカチオンとを含む化合物及び後架橋剤を使用することができる。ポリマー構造体を後架橋剤及び少なくとも1種のアニオンとポリカチオンとを含む化合物と工程ii),iii)において同時に接触させた後、ポリマー構造体を上述した後架橋温度に加熱することによって後架橋を行う。
【0077】
変形1〜5はそれぞれが本発明に係る方法の実施形態であり、変形4が最も好ましい。変形4において、表面後架橋の後に、工程e)に係るAl3+イオン含有化合物によってさらなる変性を行うことが好ましい。
【0078】
また、本発明に係る方法の一実施形態において、上記変形によって表面後架橋し、少なくとも1種のアニオン及びポリカチオンと接触させた吸水性ポリマーを、工程iv)において微粒子成分と接触させ、微粒子を吸水性ポリマー構造体の表面に固定させることが好ましい。この実施形態は、工程ii)及び/又はiii)の前又は工程ii)及び/又はiii)の実施中に吸水性ポリマー構造体をAl3+イオン又は無機粒子と接触させていない場合に特に好ましい。
【0079】
微粒子としては有機又は無機微粒子を使用することができ、無機微粒子が特に好ましい。
【0080】
また、本発明に係る方法の一実施形態では、微粒子は水溶性微粒子であってもよい。水溶性微粒子とは、25℃において、少なくとも1g、好ましくは少なくとも5g、最も好ましくは少なくとも10gを100mlの水に溶解することができる微粒子を意味する。
【0081】
また、本発明に係る方法の別の実施形態では、微粒子は非水溶性微粒子であってもよい。非水溶性微粒子とは、25℃において、1g未満、好ましくは0.1g未満、最も好ましくは0.01g未満を100mlの水に溶解することができる微粒子を意味する。
【0082】
本発明では、無機微粒子は、少なくとも2価、好ましくは少なくとも3価の金属を含むことが好ましい。少なくとも2価の金属としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、アルミニウム、ホウ素、ジルコニウム、シリコン、スカンジウム、バナジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、ニオブ、クロム、モリブデン、マンガン、パラジウム、白金、カドミウム、水銀、鉄、銅、亜鉛、チタニウム、コバルト、ニッケルが挙げられ、アルミニウムが最も好ましい。
【0083】
本発明では、無機微粒子は、少なくとも2価カチオンKn+(n≧2)である少なくとも2価の金属と少なくとも1つのアニオンAm−(m≧1)を含む塩であることが好ましい。
【0084】
本発明に係る特に好ましい微粒子は、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸ビス−アルミニウムカリウム、硫酸ビス−アルミニウムナトリウム、乳酸アルミニウム、シュウ酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、グリオキシル酸アルミニウム、コハク酸アルミニウム、イタコン酸アルミニウム、クロトン酸アルミニウム、酪酸アルミニウム、ソルビン酸アルミニウム、マロン酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、酒石酸アルミニウム、ピルビン酸アルミニウム、吉草酸アルミニウム、ギ酸アルミニウム、グルタール酸アルミニウム、プロピオン酸(propanate)アルミニウム又は酢酸アルミニウム、式M、MHPO又はMPOのリン酸塩(Mはカルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、鉄、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウム、スズ、セリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン又はそれらの混合物から選択される金属の等価物を表す)、例えば、リン酸水素カルシウム、第三級リン酸カルシウム、リン灰石、式Ca(PO)[SiO]を有するトマス粉(Thomas meal)、式AlPOを有するバーリナイト又は式3 CaNaPOCaSiOを有するレナニア(Rhenania)リン酸、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸銅、塩化コバルト、塩化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、アエロジル(Aerosil)(登録商標)又は二酸化チタン等の二酸化ケイ素を含む群から選ばれる微粒子である。塩として考えられる別の好ましい化合物はAl(O)OHである。
【0085】
最も好ましい微粒子は、AlCl×6HO、NaAl(SO×12HO、KAl(SO×12HO、Al(SO×14−18HOを含む群から選ばれるアルミニウム塩、乳酸アルミニウム又はクエン酸アルミニウムであり、Al(SO×14−18HOがより好ましい。
【0086】
本発明に係る方法の一実施形態では、微粒子成分は少なくとも2種類の異なる微粒子(例えばアルミニウム塩とアルミニウム塩とは異なる塩又は2種類の異なるアルミニウム塩)を含む。
【0087】
本発明では、少なくとも50重量%、特に好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも95重量%、最も好ましくは少なくとも99重量%の微粒子が、10〜1000μm、好ましくは50〜800μm、特に好ましくは100〜600μm、最も好ましくは200〜400μm(重量平均)の、例えば篩分析又はコールターカウンタによる当業者に公知の粒径測定方法によって測定した粒径を有することが好ましい。
【0088】
本発明に係る方法の一実施形態では、平均粒子径150μm未満の微粒子の量は、微粒子の総重量の20重量%、好ましくは30重量%、最も好ましくは40重量%を超える。
【0089】
本発明に係る方法の特に好ましい実施形態では、微粒子成分は結合剤をさらに含み、好ましくは有機化合物を結合剤として使用する。有機化合物は、好ましくは直鎖状ポリマー、好ましくはポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリオレフィン、ポリビニルエステル、ポリエーテル、ポリスチレン、ポリイミド(特にポリエーテルイミド)、ポリイミン、硫黄含有ポリマー(特にポリスルホン)、ポリアセタール(特にポリオキシメチレン)、フッ素含有プラスチック(特にポリフッ化ビニリデン)、スチレン−オレフィンコポリマー、ポリアクリレート、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、これらのポリマーの2種以上の混合物を含む群から選択される直鎖状ポリマーであることが特に好ましく、重縮合体、特にポリエーテルが特に好ましく、直鎖状ポリエーテルが最も好ましい。
【0090】
特に好適な直鎖状ポリエーテルは、ポリアルキレングリコール、特にポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレン又はプロピレンモノマーの統計学的(statistical)又はブロック状配置を有するポリ(エチレン又はプロピレン)グリコール、あるいはこれらのポリアルキレングリコールの少なくとも2種の混合物である。
【0091】
その他の好適な直鎖状ポリエーテルとしては、ドイツ特許出願公開第103 34 286号において「熱可塑性接着剤」として記載されているポリマーが挙げられる。ドイツ特許出願公開第103 34 286号の熱可塑性接着剤に関する開示内容はこの参照によって本発明の開示内容の一部をなすものとする。
【0092】
本発明では、結合剤主成分としての有機化合物が、100〜1,000,000g/モル、特に好ましくは1000〜100,000g/モル、より好ましくは5000〜20,000g/モルの重量平均分子量Mwを有することが好ましい。
【0093】
結合剤は粒子状であることが好ましく、特に、粒子状ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコール等の粒子状ポリアルキレングリコールが粒子状結合剤として有利である。粒子状結合剤は、少なくとも50重量%、特に好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも95重量%、最も好ましくは少なくとも99重量%が、500μm未満、好ましくは400μm未満、特に好ましくは300μm未満、最も好ましくは150μm未満の、例えば篩分析又はコールターカウンタによる当業者に公知の粒径測定方法によって測定した平均粒径(重量平均)を有することが好ましい。
【0094】
工程iv)において吸水性ポリマー構造体と接触させる微粒子の量は、吸水性ポリマー構造体の重量に対して、好ましくは0.001〜10重量%、特に好ましくは0.01〜5重量%、最も好ましくは0.1〜2重量%である。結合剤を使用する場合には、結合剤の重量は、吸水性ポリマー構造体の重量に対して、好ましくは0.0001〜5重量%、特に好ましくは0.001〜2重量%である。微粒子と結合剤の重量比(微粒子:結合剤)は、20:1〜1:20、特に好ましくは10:1〜1:10、最も好ましくは10:1〜2:1であることが好ましい。
【0095】
微粒子と吸水性ポリマー粒子構造体との接触は、当業者に公知の混合装置によって微粒子と吸水性ポリマー粒子構造体とを混合することにより行うことが好ましい。微粒子と吸水性ポリマー粒子構造体を混合した後又は混合時に、微粒子の少なくとも一部が吸水性ポリマー粒子構造体の表面に固定する。固定は加熱によって行うことが好ましい。固定は、微粒子成分、好ましくは結合剤の軟化温度よりも10%以下、特に好ましくは7.5%以下、最も好ましくは5%以下高い温度に加熱することにより行うことが特に好ましい。特に好ましくは、加熱は30〜200℃、好ましくは50〜160℃、最も好ましくは100〜140℃の温度で行う。
【0096】
原則として、少なくとも4つの方法が考えられる。
・変形Vでは、微粒子成分と吸水性ポリマー構造体の混合物を調製し、微粒子を固定するために上記の温度に加熱する。
・変形Vでは、微粒子成分と混合する前に、吸水性ポリマー構造体を上記温度まで加熱し、加熱した吸水性ポリマー構造体を加熱していない微粒子成分と混合する。
・変形Vでは、微粒子成分と混合する前に、吸水性ポリマー構造体と微粒子成分を個別に上記温度まで加熱し、加熱した吸水性ポリマー構造体を加熱した微粒子成分と混合する。変形Vの一実施形態では、微粒子成分を加熱し、加熱した吸水性ポリマー構造体と混合する前に、微粒子成分を好ましくは10〜100℃、特に好ましくは15〜75℃、最も好ましくは20〜60℃に冷却し、その後、必要に応じて乳棒と乳鉢等を使用して微粒子成分を粉砕し、冷却し、必要に応じて粉砕した微粒子成分を加熱した吸水性ポリマー構造体と混合することが好ましい。
・変形Vでは、微粒子成分と混合する前に、微粒子成分を上記温度まで加熱し、加熱した吸水性ポリマー構造体を加熱していない吸水性ポリマー構造体と混合する。変形Vの一実施形態では、微粒子成分を加熱し、加熱した吸水性ポリマー構造体と混合する前に、微粒子成分を好ましくは10〜100℃、特に好ましくは15〜75℃、最も好ましくは20〜60℃に冷却し、その後、必要に応じて乳棒及び乳鉢等を使用して微粒子成分を粉砕し、冷却し、必要に応じて粉砕した微粒子成分を加熱した吸水性ポリマー構造体と混合することが好ましい。
【0097】
「加熱していない」とは、各成分の温度が100℃未満、特に好ましくは80℃未満、最も好ましくは40℃未満であることを好ましくは意味する。
【0098】
加熱時間は、混合速度及び使用する混合装置に応じて、好ましくは10秒〜60分間、特に好ましくは30秒〜30分間である。
【0099】
微粒子をできる限り均一に分散させるために、工程iv)の後に、表面に微粒子が固定された吸水性ポリマー構造体を10分〜5時間、特に好ましくは30分〜3時間にわたって混合する工程v)を行うことが有利である。混合には当業者に公知の混合装置を使用することができる。この工程では、工程iv)における固定後の温度を有する超吸収体組成物を混合装置に供給し、表面に微粒子が固定された吸水性ポリマー構造体を混合しながら好ましくは一定の冷却速度で低温、好ましくは室温に冷却することができる。
【0100】
また、上述した目的は、本発明に係る方法によって得られる表面処理された吸水性ポリマー構造体によって達成される。
【0101】
上記吸水性ポリマー構造体は、本発明に係る方法によって得られる表面処理された吸水性ポリマー構造体と同一の特性を有することが好ましい。また、本発明に係る方法及び本発明に係るポリマー構造体に関して述べた各特性値は、下限値のみを示す場合には、上限値は最も好ましい下限値の20倍、好ましくは10倍、最も好ましくは5倍である。
【0102】
また、上述した目的は、本発明に係る表面処理されたポリマー構造体又は本発明に係る方法によって得られる表面処理されたポリマー構造体と、基材とを含む複合体によって達成される。本発明に係るポリマー構造体と基材とは強固に結合されていることが好ましい。基材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドなどのポリマー、金属、不織布、綿毛、薄織物、織布、天然または合成繊維、その他の発泡体からなるシートが好ましい。本発明では、複合体は、複合体の総重量に対して、約15〜100重量%、好ましくは約30〜100重量%、特に好ましくは約50〜99.99重量%、より好ましくは約60〜99.99重量%、さらに好ましくは約70〜99重量%の量の本発明に係る吸水性ポリマー構造体を含む少なくとも1つの領域を含み、当該領域は少なくとも0.01cm3、好ましくは少なくとも0.1cm3、最も好ましくは少なくとも0.5cm3の体積を有することが好ましい。
【0103】
本発明に係る複合体の特に好ましい実施形態では、複合体は「吸収性材料」として国際公開第WO02/056812号に記載されているようなシート状複合体である。国際公開第WO02/056812号の特に複合体、構成要素の単位面積当たりの質量及び厚みに関する開示内容はこの参照によって本発明の開示内容の一部をなすものとする。
【0104】
また、上述した目的は、複合体の製造方法であって、本発明に係る方法吸水性ポリマー構造体又は本発明に係る方法によって得られる表面処理された吸水性ポリマー構造体と、基材と、必要に応じて添加剤とを接触させる方法によって達成される。基材としては、本発明に係る複合体に関連して挙げた基材が好ましく使用される。
【0105】
本発明に係る複合体の製造方法の一実施形態によれば、方法は、
I)基材を用意する工程と、
II)ポリカチオンと少なくとも1種のアニオンとを含む化合物と接触させた表面を有する少なくとも表面架橋された吸水性ポリマー構造体を用意する工程と、
III)微粒子を含む複数の微粒子成分を用意する工程と、
IV)基材を少なくとも表面架橋された吸水性ポリマー構造体と接触させる工程と、
V)少なくとも表面架橋された吸水性ポリマー構造体を微粒子成分と接触させる工程と、
VI)微粒子の少なくとも一部をポリマー構造体の表面に固定する工程と、を含む。
【0106】
微粒子成分及びポリカチオンと少なくとも1種のアニオンとを含む化合物としては、本発明に係る吸水性ポリマー構造体及び本発明に係る吸水性ポリマー構造体の表面処理方法に関連して好ましい微粒子成分として上述した微粒子成分及び化合物が好ましい。
【0107】
本発明に係る複合体の製造方法の実施形態の変形では、最初に基材を用意し、表面処理されたポリマー構造体を基材の表面に均一に塗布(好ましくは散布)するか、基材の表面の所定領域に塗布(好ましくは散布)することによって基材とポリカチオンと少なくとも1種のアニオンとを含む化合物と接触させた表面後架橋された吸水性ポリマー構造体とを接触させる。次に、例えば基材の表面上の表面後架橋されたポリマー構造体上に微粒子成分を散布することによって基材の表面上の吸水性ポリマー構造体を微粒子成分と接触させる。次に、微粒子成分をポリマー構造体の表面上に固定する。固定は、本発明に係る吸水性ポリマー構造体の表面の処理方法に関連して上述した加熱によって行うことが好ましい。本発明に係る複合体の製造方法の実施形態の本変形では、工程V)は工程IV)の後に行われる。
【0108】
本発明に係る複合体の製造方法の実施形態の別の変形では、最初に基材を用意する。次に、最初に基材を用意し、表面後架橋されたポリマー構造体を基材の表面に均一に塗布(好ましくは散布)するか、基材の表面の所定領域に塗布(好ましくは散布)することによって表面後架橋された吸水性ポリマー構造体を基材に接触させる。ポリマー構造体を基材に接触させる前に、例えば、基材の表面に散布する前に、微粒子成分を表面後架橋されたポリマー構造体と混合することによって、吸水性ポリマー構造体を微粒子成分と接触させる。吸水性ポリマー構造体を基材と接触させた後、ポリマー構造体の表面に微粒子成分を固定する。本発明に係る複合体の製造方法の実施形態の本変形では、工程V)は工程IV)の前に行われる。
【0109】
また、上述した目的は、本発明に係る複合体と同一の特性を有する上記方法によって得られる複合体によって達成される。
【0110】
また、上述した目的は、本発明に係る吸水性ポリマー構造体又は本発明に係る複合体を含む化学製品によって達成される。好ましい化学製品は、発泡体、成形体、繊維、フィルム、シート、ケーブル、シール材、液体吸収性衛生用品(特におむつ及び生理用ナプキン)、植物・菌類生育調節剤・植物保護活性物質の担体、建設材料の添加剤、包装材料、土壌添加剤である。
【0111】
また、上述した目的は、本発明に係る吸水性ポリマー構造体又は本発明に係る複合体の化学製品、好ましくは上述した化学製品、特に特におむつ及び生理用ナプキン等の衛生用品における使用及び超吸収体粒子の植物、菌類生育調節剤又は植物保護活性物質の担体における使用によって達成される。植物、菌類生育調節剤または植物保護活性物質の担体としての使用では、植物、菌類生育調節剤または植物保護活性物質は、担体によって制御される時間が経過した後に放出できることが好ましい。
【0112】
また、上述した目的は、少なくとも1種のアニオンと以下の構造Iを有するポリカチオンとを含む化合物の、吸水性ポリマー構造体の表面処理及び/又はポリマー構造体と基材とを含み、ポリマー構造体を、ポリマー構造体と基材の総重量に対して、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%、最も好ましくは少なくとも90重量%の量で含む複合体の透過性を向上させるための使用によって達成される。
【化3】

(I)
式中、R及びRは同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜10、好ましくは1〜7、特に好ましくは1〜4、より好ましくは1〜2、最も好ましくはメチル基である炭化水素残基を表し、nは、少なくとも25、好ましくは少なくとも31、より好ましくは少なくとも100、さらに好ましくは少なくとも1,000、より好ましくは少なくとも2,000、より好ましくは少なくとも2,500、より好ましくは少なくとも3,000、最も好ましくは少なくとも5,000である。
【0113】
本発明を試験法と実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0114】
試験方法
【0115】
透過性の測定(国際公開第WO95/22356号に準拠したSFC試験)
【0116】
0.9gの超吸収体材料を篩い分け底面を有するシリンダに秤量し、ふるいの表面に慎重に散布させる。超吸収体材料を20g/cmの圧力下でJAYCO合成尿(塩化カリウム:2.0g、硫酸ナトリウム:2.0g、アンモニウムリン酸二水素:0.85g、リン酸水素アンモニウム:0.15g、塩化カルシウム:0.19g、塩化マグネシウム(1Lの蒸留水に溶解した無水塩):0.23g)内で1時間にわたって膨潤させる。超吸収体の膨張高さを測定した後、目盛り付きの容器から0.118M NaCl溶液を一定の静水圧で膨潤ゲル層に通過させる。測定時には膨潤ゲル層を特別なシリンダで覆い、ゲル上で0.118M NaCl溶液が均一に散在し、ゲル床特性の条件(測定温度:20〜25℃)が測定時に一定になるようにする。膨潤した超吸収体に作用する圧力は常に20g/cmとする。コンピューターと秤を使用して、ゲル層を通過する液体の量を時間の関数として20秒間隔で10分間にわたって測定する。膨潤ゲル層内における流速(g/秒)を、勾配外挿法による回帰分析及び2〜10分間における流量の時間点t=0における中間点の測定によって決定する。SFC値(K)は以下のように計算する。
【数1】

(t=0):流速(g/n秒)
:ゲル層の厚み(cm)
R:NaCl溶液の濃度(1.003g/cm3
A:測定シリンダのゲル層の上部の表面(28.27cm2
ΔP:ゲル層に作用する静圧(4,920dyne/cm2
K:SFC値(cm/秒/g−1
【0117】
ウィッキング指数の測定
【0118】
ウィッキング指数は、欧州特許第0 532 002号、6頁、36行〜7頁、26行に記載された試験方法に準拠して測定する。粒子は、150〜850μmの粒径に予め篩い分ける。
【実施例】
【0119】
1.SAP粒子の調製(中和度:50モル%)
【0120】
アクリル酸300g、50%水酸化ナトリウム溶液166.52g、脱イオン水497.12g、モノアリルポリエチレングリコール−450−モノアクリレート1.176g、ポリエチレングリコール−300−ジアクリレート0.988g、ポリエチレングリコール−750−モノメタクリレートメチルエーテル6.13gからなるモノマー溶液に窒素を通過させて溶存酸素を除去し、開始温度の4℃に冷却した。開始温度に達した後に、開始剤溶液(HO 9.7gに溶解したペルオキソ二硫酸ナトリウム0.3g、HO 1.93gに溶解した35.5%過酸化水素溶液0.07g、HO 4.99gに溶解したアスコルビン酸0.015g)を添加した。最終温度約100℃に達した後、得られたゲルを粉砕し、150℃で120分間乾燥した。乾燥したポリマーを粗く砕き、粉砕し、粒径が150〜850μmの粉末(=粉末A)を篩い分けた。
【0121】
2.SAP粒子の調製(中和度:70モル%)
【0122】
アクリル酸300g、50%水酸化ナトリウム溶液233.12 g、脱イオン水429.42 g、モノアリルポリエチレングリコール−450−モノアクリレート1.961g、ポリエチレングリコール−300−ジアクリレート2.372、ポリエチレングリコール−750−モノメタクリレートメチルエーテル6.13gからなるモノマー溶液に窒素を通過させて溶存酸素を除去し、開始温度の4℃に冷却した。開始温度に達した後に、開始剤溶液(HO 9.7gに溶解したペルオキソ二硫酸ナトリウム0.3g、HO 1.93gに溶解した35.5%過酸化水素溶液0.07g、HO 4.99gに溶解したアスコルビン酸0.015g)を添加した。最終温度約100℃に達した後、得られたゲルを粉砕し、150℃で120分間乾燥した。乾燥したポリマーを粗く砕き、粉砕し、粒径が150〜850μmの粉末(=粉末B)を篩い分けた。
【0123】
実施例1及び2(中和度70モル%のSAPポリマー)
粉末Bを、以下の表に示す量の水、後架橋剤として炭酸エチレン、塩化ポリジアリルジメチルアンモニウム(MW=450,000g/モル)を含む溶液と激しく撹拌しながら混合し、表1に示す温度で表1に示す時間にわたって加熱した(水、炭酸エチレン、塩化ポリジアリルジメチルアンモニウムの量は粉末B100gに対してのそれぞれのグラム数である)。
【0124】
【表1】

【0125】
実施例1,2で得られたポリマーの吸収特性を以下の表2に示す。
【0126】
【表2】

【0127】
実施例3,4(中和度50モル%のSAPポリマー)
粉末Aを、以下の表3に示す量の水、後架橋剤として炭酸エチレン、塩化ポリジアリルジメチルアンモニウム(MW=450,000g/モル)を含む溶液と激しく撹拌しながら混合し、表3に示す温度で表3に示す時間にわたって加熱した(水、炭酸エチレン、塩化ポリジアリルジメチルアンモニウムの量は粉末A100gに対してのそれぞれのグラム数である)。
【0128】
【表3】

【0129】
実施例3,4で得られたポリマーの吸収特性を以下の表4に詳細に示す。
【0130】
【表4】

【0131】
実施例5
実施例4で得られたポリマー100gを130℃まで予め加熱した。
【0132】
遠心ミルで粉砕し、300〜400μmの粒径に篩分けたAl(SO)×14HO 10g、同様に遠心ミルで粉砕し、300μm未満の粒径に篩分けしたポリエチレングリコール10,000(10,000g/モルの分子量を有するポリエチレングリコール)1.5gの混合物を調製した。Al(SO)×14HO及びポリエチレングリコール10,000の混合物1.15gをクラップス(Krups)ミキサー内で予め加熱した吸水性ポリマー構造体と撹拌下で混合した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカチオンと少なくとも1種のアニオンとを含む化合物を表面に接触させた吸水性ポリマー構造体であって、少なくとも16g/gの50g/cmの圧力下における吸収率を有する吸水性ポリマー構造体。
【請求項2】
ポリカチオンと少なくとも1種のアニオンとを含む化合物を表面に接触させた吸水性ポリマー構造体であって、前記ポリカチオンと少なくとも1種のアニオンとを含む化合物が3,000g/モルを超える重量平均分子量を有する吸水性ポリマー構造体。
【請求項3】
内部領域と、前記内部領域を取り囲む外部領域とを有し、前記外部領域が前記内部領域よりも高い架橋度を有する、請求項1又は2に記載の吸水性ポリマー構造体。
【請求項4】
前記ポリカチオンが以下の構造Iを有する、前記請求項のいずれか1項に記載の吸水性ポリマー構造体。
【化1】

(I)
式中、R及びRは同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜10の炭化水素残渣を表し、nは少なくとも25である。
【請求項5】
及びRがメチル基である、請求項4に記載のポリマー構造体。
【請求項6】
nが少なくとも1,000である、請求項4又は5に記載のポリマー構造体。
【請求項7】
nが少なくとも2,000である、請求項4又は5に記載のポリマー構造体。
【請求項8】
nが少なくとも3,000である、請求項4又は5に記載のポリマー構造体。
【請求項9】
前記アニオンが塩化物イオンである、前記請求項のいずれか1項に記載の吸水性ポリマー構造体。
【請求項10】
前記ポリマー構造体が以下の特性の少なくとも1つを有する、前記請求項のいずれか1項に記載の吸水性ポリマー構造体。
(β1)3時間後にケーキングを示さない
(β2)CRC値が26g/g未満であり、SFC値が少なくとも80×10−7cm/秒/g−1
(β3)CRC値が26g/g以上27g/g未満であり、SFC値が少なくとも70×10−7cm/秒/g−1
(β4)CRC値が27g/g以上28g/g未満であり、SFC値が少なくとも60×10−7cm/秒/g−1
(β5)CRC値が28g/g以上29g/g未満であり、SFC値が少なくとも45×10−7cm/秒/g−1
(β6)CRC値が29g/g以上30g/g未満であり、SFC値が少なくとも30×10−7cm/秒/g−1
(β7)CRC値が30g/g以上31g/g未満であり、SFC値が少なくとも20×10−7cm/秒/g−1
(β8)CRC値が少なくとも31g/g未満であり、SFC値が少なくとも10×10−7cm/秒/g−1
(β9)1分間後のウィッキング指数が少なくとも7.5cm
(β10)中和度が75モル%以下
【請求項11】
吸水性ポリマー構造体の表面処理方法であって、
i)未処理の吸水性ポリマー構造体を用意する工程と、
ii)未処理の吸水性ポリマー構造体を、少なくとも1種のアニオンとポリカチオンとを含む化合物と接触させる工程と、
iii)吸水性ポリマー構造体を後架橋する工程と、
を含み、前記工程iii)を、前記工程ii)の前、前記工程ii)の実施中又は前記工程ii)の後に行う方法。
【請求項12】
前記ポリカチオンが構造Iで表される、請求項11に記載の方法。
【化2】

(I)
式中、R及びRは同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜10の炭化水素残渣を表し、nは少なくとも25である。
【請求項13】
前記吸水性ポリマー構造体を、前記吸水性ポリマー構造体の重量に対して0.001〜10重量%の量の前記化合物と接触させる、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記化合物を10〜80重量%水溶液として前記吸水性ポリマー構造体に接触させる、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記吸水性ポリマー構造体が70モル%以下の中和度を有する、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記請求項11〜15のいずれか1項に記載の方法によって得られる吸水性ポリマー構造体。
【請求項17】
請求項1〜10又は16のいずれか1項に記載の吸水性ポリマー構造体と、基材と、を含む複合体。
【請求項18】
請求項1〜10又は16のいずれか1項に記載の吸水性ポリマー構造体と、基材と、必要に応じて添加剤とを接触させる、複合体の製造方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法によって得られる複合体。
【請求項20】
請求項1〜10又は16のいずれか1項に記載の吸水性ポリマー構造体又は請求項17又は19に記載の複合体を含む、発泡体、成形体、繊維、シート、フィルム、ケーブル、封止材、吸液性衛生用品、植物・菌類生育調節剤用担体、包装材料、土壌添加剤又は建設材料。
【請求項21】
請求項1〜10又は16のいずれか1項に記載の吸水性ポリマー構造体又は請求項17又は19に記載の複合体の、発泡体、成形体、繊維、シート、フィルム、ケーブル、封止材、吸液性衛生用品、植物・菌類生育調節剤用担体、包装材料、活性物質の制御放出のための土壌添加剤又は建設材料における使用。
【請求項22】
少なくとも1種のアニオンと以下の構造Iを有するポリカチオンとを含む化合物の、吸水性ポリマー構造体、好ましくは後架橋ポリマー構造体の表面処理における使用。
【化3】

(I)
式中、R及びRは同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜10の炭化水素残渣を表し、nは少なくとも25である。

【公表番号】特表2008−536988(P2008−536988A)
【公表日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−507012(P2008−507012)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【国際出願番号】PCT/EP2006/003695
【国際公開番号】WO2006/111403
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(308007985)エフォニック ストックハウゼン ゲーエムベーハー (12)
【Fターム(参考)】