説明

ポリカーボネート樹脂の製造方法

【課題】高分子量且つ機械的強度に優れたポリマーが得られるポリカーボネート樹脂の製造方法を提供する。
【解決手段】環状ポリカーボネートオリゴマーを重合する際に重合触媒として下記一般式1で表される構造を有するテトラアルキルホスホニウム塩を環状ポリカーボネートオリゴマー中のカーボネート結合量に対して0.4mol%以下の量で用いることを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法。一般式1中、R〜Rは、各々独立してアルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート樹脂の製造方法に関し、より詳しくは、環状ポリカーボネートオリゴマーの重合によるポリカーボネート樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、透明性、耐熱性、機械的強度及び耐衝撃性等が極めて高い等、優れた特性を数多く有し、幅広い分野で多量に使用されている。具体的には、各種機械部品、各種電気絶縁性材料、自動車部品、光ディスク等の情報機器材料、ヘルメット等の安全防護材料等、極めて多岐な用途が挙げられる。
このようなポリカーボネート樹脂に関し、特許文献1には、ポリカーボネート樹脂の構造の一部に柔軟鎖を導入する方法が提案されている。
また、非特許文献1には、重合触媒としてトリブチルヘキサデシルホスホニウムブロミドを用い、環状ポリカーボネートオリゴマーを重合するポリカーボネート樹脂の製造方法が記載されている。
【0003】
【特許文献1】米国特許第4,216,305号明細書
【非特許文献1】ジャーナル オブ アプライド ポリマーサイエンス(Journal of Applied Polymer Science)第61号,1996年、p.1017−1023
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ポリカーボネート樹脂は、他の射出成形用熱可塑性樹脂に比べ、溶融粘度が高いため流動性が低く、成形性に劣るという難点を持つ。この解決策として、低重合度のポリカーボネートを使用する方法が提案されているが、耐衝撃性が低下する問題が生じている。
一方、ポリカーボネート樹脂の構造の一部に柔軟鎖を導入すると、流動性がある程度改善されるものの、耐熱性が大幅に低下する問題が生じている。
また、重合触媒としてトリブチルヘキサデシルホスホニウムブロミドを用いて環状ポリカーボネートオリゴマーを重合する場合は、重合温度300℃における撹拌状態で、且つ多量の触媒が必要とされる。このため、重合反応により生成したポリカーボネート樹脂は、電気的特性、機械的強度、耐衝撃性に劣り、また長期間にわたる安定性や着色等に問題がある。さらに、重合反応時に撹拌を必要としているため実使用に問題がある。
【0005】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものである。すなわち、本発明の目的は、高分子量且つ機械的強度に優れたポリマーが得られるポリカーボネート樹脂の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かくして本発明によれば、環状ポリカーボネートオリゴマーを原料とするポリカーボネート樹脂の製造方法であって、環状ポリカーボネートオリゴマーを重合する際に、重合触媒としてテトラアルキルホスホニウム塩を、環状ポリカーボネートオリゴマー中のカーボネート結合量に対して0.4mol%以下の量で用いることを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法が提供される。
ここで、本発明が適用されるポリカーボネート樹脂の製造方法において、重合触媒として使用するテトラアルキルホスホニウム塩が、下記一般式1で表される構造を有することが好ましい。
【0007】
【化1】

【0008】
(一般式1中、R〜Rは、各々独立してアルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表す。)
また、環状ポリカーボネートオリゴマーを重合する重合温度が150℃以上であることが好ましい。
さらに、環状ポリカーボネートオリゴマーを重合することにより得られるポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が10,000以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、重合触媒としてテトラアルキルホスホニウム塩を、環状ポリカーボネートオリゴマー中のカーボネート結合量に対して0.4mol%以下の量で用いることにより、高分子量且つ機械的強度に優れたポリカーボネート樹脂が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0011】
(環状ポリカーボネートオリゴマー)
本実施の形態が適用されるポリカーボネート樹脂の製造方法において、原料として使用する環状ポリカーボネートオリゴマーは、例えば、下記一般式2で示される環状構造を有するものが挙げられる。
【0012】
【化2】

【0013】
一般式2中、Yは単結合または2価基を表し、R及びRは、各々独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ハロゲン基又はアルコキシ基を表す。a及びbは、各々独立に1〜4の整数を表す。また、nは、2〜1000の整数である。
ここで、一般式2で示される環状ポリカーボネートオリゴマーを製造する際に用いるビスフェノールの製造容易性を勘案すると、R及びRにおいて、アルキル基としては、炭素数1〜炭素数10のアルキル基が好ましく、さらに好ましくは炭素数1〜炭素数8であり、特に好ましくは炭素数1〜炭素数2である。アリール基としてフェニル基、ナフチル基が好ましい。ハロゲン基としてフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基が好ましい。
また、Yとしては、単結合、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、シクロヘキシレンが挙げられる。これらの中でも、単結合、−O−、−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、シクロヘキシレンが好ましい。
【0014】
一般式2で示される環状ポリカーボネートオリゴマーを製造する際に用いる2価フェノール成分の具体例としては、以下のものが例示される。
例えば、4,4’−ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン等が挙げられる。
【0015】
これらの中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンが好ましい。これらの2価フェノール成分を複数組み合わせて用いることも可能である。
【0016】
(環状ポリカーボネートオリゴマーの製造)
環状ポリカーボネートオリゴマーを製造する方法としては、従来の公知の方法を採用することができ特に限定されない。通常、反応時間、反応温度、反応濃度、アミン触媒量、水酸化アルカリ金属量、水量、反応槽の撹拌速度、原料の添加濃度や添加速度、反応後の溶液から環状ポリカーボネートオリゴマーを取り出す溶媒の種類や濃度等を調節することにより、環状ポリカーボネートオリゴマーの収率及び環状ポリカーボネートオリゴマーの分子量範囲を種々変えることができる。
このような公知の方法としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを原料に用いる方法(特表昭61−502132号公報、J.Am.Chem.Soc.,vol.112,p2399−2402,(1990)、Macromolecules vol.24,p3035−3044,(1991))が挙げられる。
上述したこれらの方法の中でも、末端にフェノール性水酸基及びクロロホーメート基を有するポリカーボネートオリゴマー(以下、「PCR−OG」と記す。)を用い、環状ポリカーボネートオリゴマーを製造する方法が好ましい。
【0017】
(PCR−OGの合成方法)
PCR−OGは、従来公知の方法により得ることができる。従来公知の方法としては、たとえば、上述した2価フェノール成分を含有した水酸化アルカリ金属水溶液又は水酸化アルカリ金属水溶液及び水不混合性有機溶媒を用い、これらの撹拌条件下にホスゲンを導入する方法が挙げられる。このときホスゲンは気体状、液体状または水不混合性有機溶媒溶液として導入される。
【0018】
ここで、水不混合性有機溶媒とは、水に完全には溶解せず、少なくとも一部が水と分離し、2層を形成し得る有機溶媒であって、通常のポリカーボネート樹脂の製造に用いることが可能な有機溶媒等が挙げられる。
このような水不混合性有機溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が挙げられる。これらの中でも、ジクロロメタンが特に好ましい。
【0019】
ここで、水と水不混合性有機溶媒との混合比は、体積比で通常、(5/1)〜(1/5)の範囲であり、(3/1)〜(1/3)の範囲であることが好ましい。
また、水酸化アルカリ金属としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。水酸化アルカリ金属の使用量としては、反応系中に含まれるフェノール性水酸基の1.01倍当量〜3倍当量の範囲が好ましい。
【0020】
ホスゲンは、2価フェノール成分を含有した水酸化アルカリ金属水溶液中に、数分から数十分にわたり連続的に導入される。このときの反応系の温度は0℃〜40℃、好ましくは0℃〜20℃の範囲に保たれる。
尚、PCR−OGの合成において、必要に応じ、触媒、分子量制御剤、還元剤等を用いることも可能である。触媒を添加することにより、PCR−OGの合成反応が促進される。分子量制御剤を添加することにより、PCR−OGの分子量が調節される。また、還元剤を添加することにより着色を抑制することが可能である。
【0021】
PCR−OGの合成に使用される触媒としては、例えば、公知の3級アミン、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩等を挙げられる。具体的には、3級アミンとして、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリヘキシルアミン、ピリジン、ジメチルアニリン等が挙げられる。4級アンモニウム塩又は4級ホスホニウム塩としては、トリブチルアミンやトリオクチルアミン等の3級アルキルアミンの塩酸、臭素酸、ヨウ素酸等の塩、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムブロミド、トリエチルオクタデシルホスホニウムブロミド、N−ラウリルピリジニウムクロリド、ラウリルピコリニウムクロリド等が挙げられる。
【0022】
PCR−OGの合成に使用される分子量制御剤としては、1価フェノール性化合物が挙げられる。具体例としては、例えば、フェノール、o,m,p−クレゾール、o,m,p−エチルフェノール、o,m,p−プロピルフェノール、o,m,p−tert−ブチルフェノール、ペンチルフェノール、ヘキシルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、2,6−ジメチルフェノール誘導体、2−メチルフェノール誘導体等のアルキルフェノール類;o,m,p−フェニルフェノール等の1官能性のフェノール等が挙げられる。
また、PCR−OGの合成に使用される還元剤としては、例えば、ハイドロサルファイトナトリウム等が挙げられる。
【0023】
このように、2価フェノール成分とホスゲンとを用いるPCR−OGの合成方法の場合は、1量体〜20量体程度のPCR−OGが得られる。さらに、PCR−OGは、水不混合性有機溶媒の溶液状態で得られるため、この溶液をそのまま用い、環状ポリカーボネートオリゴマーの製造を行うことができる。
【0024】
製造した環状ポリカーボネートオリゴマーの構造は、融点測定装置、核磁気共鳴装置(NMR)、高速液体クロマトグラフ装置(HPLC)、サイズ排除クロマトグラフ装置(SEC)、質量分析装置(MS)、マトリックス支援レーザ脱離イオン化飛行時間型質量分析装置(MALDI−TOF MS)等を用いて分析することが可能である。
【0025】
(環状ポリカーボネートオリゴマーの重合)
本実施の形態において、前述した環状ポリカーボネートオリゴマーを原料とし、重合触媒の存在下、環状ポリカーボネートオリゴマーを重合してポリカーボネート樹脂が製造される。
ここで、環状ポリカーボネートオリゴマーと重合触媒とを混合させる方法としては、例えば、無溶媒で混合させる方法、溶媒を用いて混合させる方法、環状ポリカーボネートオリゴマーを加熱、溶融させた後に混合させる方法等の種々の方法が可能である。これらの方法の中でも、溶媒を用いて混合させる方法は、環状ポリカーボネートオリゴマーと重合触媒の両方が溶解する溶媒を用いるのが好ましい。このような溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0026】
環状ポリカーボネートオリゴマーの重合方法としては、例えば、固相重合法、溶液重合法、溶融重合法等が挙げられる。これらの中でも、溶融重合法が好ましい。溶融重合法の場合、環状ポリカーボネートオリゴマーを溶融させた後、金型等に流し込み、重合、固化させ、成形体を得る等に応用可能である。
【0027】
本実施の形態では、環状ポリカーボネートオリゴマーの重合温度は、通常、150℃〜350℃、好ましくは、160℃〜320℃、より好ましくは、180℃〜300℃である。このような温度範囲で環状ポリカーボネートオリゴマーの重合反応を行うことにより、迅速な重合反応が進行し、所望のポリカーボネート樹脂を得ることができる。
重合温度が過度に低いと、重合反応が進行しにくく、所望のポリカーボネート樹脂を得ることが困難になる傾向がある。一方、重合温度が過度に高いと、ポリカーボネート樹脂や触媒の分解反応が頻繁に起こるようになり、所望のポリカーボネート樹脂を得ることが困難になる傾向がある。
本実施の形態では、撹拌条件下に重合させても良いし、撹拌せずに重合させても良い。さらに重合時間は24時間以内が製造の簡便上、好ましい。
【0028】
本実施の形態が適用されるポリカーボネート樹脂の製造法では、環状ポリカーボネートオリゴマーの重合により得られるポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、通常、10,000以上、好ましくは、12,000以上、さらに好ましくは、14,000以上である。ここで、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が過度に低いと、機械的強度が劣り、所望のポリカーボネート樹脂を得ることが困難になる傾向がある。
【0029】
また、環状ポリカーボネートオリゴマーの重合に際しては、構造の異なる他の環状ポリカーボネートオリゴマー、環状カーボネート、環状エステル、環状アミド、環状エーテル、環状アセタール、環状アミン、環状スルフィド、オキサゾリン誘導体、環状シロキサン、リン含有環状化合物、エポキシド、ラクタム、ラクトン等の開環重合性化合物を含有していても良い。さらに、ビニル基を含有する重合性化合物を含有させても良い。また、架橋構造を導入するため、多官能性化合物を含有させても良い。
さらに、重合により得られるポリカーボネート樹脂の性能を向上させるため、環状ポリカーボネートオリゴマーやその重合体であるポリカーボネート樹脂に、無機物、有機物、天然由来化合物等を含有させても良い。
【0030】
(重合触媒)
次に、重合触媒について説明する。
本実施の形態が適用されるポリカーボネート樹脂の製造方法では、環状ポリカーボネートオリゴマーの重合に際し、重合触媒としてテトラアルキルホスホニウム塩を使用する。
ここで、テトラアルキルホスホニウム塩は、リン原子に4つのアルキル基が結合した構造を含み、リン原子が正の電荷を帯びた陽イオンであり、対イオンとして負の電荷を帯びた陰イオンを有している。テトラアルキルホスホニウム塩のアルキル基としては、鎖状構造、分岐構造または環構造のいずれの構造を取っていても良い。また、これらの4つのアルキル基は、全て同じ構造であっても良いし、互いに異なる構造であっても良い。アルキル基の炭素数としては、30以下が好ましく、20以下が特に好ましい。
テトラアルキルホスホニウム塩として、一般式1に示す化合物が挙げられる。
【0031】
【化3】

【0032】
一般式1中、R〜Rは各々独立してアルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表す。R〜Rで示されるアルキル基は、前述した通りである。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。中でも、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましい。
【0033】
一般式1で表されるテトラアルキルホスホニウム塩の具体例としては、例えば、テトラエチルホスホニウムクロリド、テトラエチルホスホニウムブロミド、テトラエチルホスホニウムヨージド;テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムヨージド;テトラオクチルホスホニウムクロリド、テトラオクチルホスホニウムブロミド、テトラオクチルホスホニウムヨージド;トリブチルメチルホスホニウムクロリド、トリブチルメチルホスホニウムブロミド、トリブチルメチルホスホニウムヨージド;トリブチルオクチルホスホニウムクロリド、トリブチルオクチルホスホニウムブロミド、トリブチルオクチルホスホニウムヨージド;トリブチルドデシルホスホニウムクロリド、トリブチルドデシルホスホニウムブロミド、トリブチルドデシルホスホニウムヨージド;トリブチルヘキサデシルホスホニウムクロリド、トリブチルヘキサデシルホスホニウムブロミド、トリブチルヘキサデシルホスホニウムヨージド等が挙げられる。
【0034】
これらの中でも、テトラエチルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラオクチルホスホニウムブロミド、トリブチルメチルホスホニウムヨージド、トリブチルオクチルホスホニウムブロミド、トリブチルドデシルホスホニウムブロミド、トリブチルヘキサデシルホスホニウムブロミドが好ましい。
【0035】
本実施の形態において、環状ポリカーボネートオリゴマーの重合触媒として使用するテトラアルキルホスホニウム塩の使用量は、環状ポリカーボネートオリゴマーのカーボネート結合量に対し、通常0.4mol%以下が好ましく、さらに、0.3mol%以下がより好ましい。但し、テトラアルキルホスホニウム塩の使用量は、通常、0.001mol%以上である。
テトラアルキルホスホニウム塩の使用量が0.4mol%以上であると、生成したポリカーボネート樹脂が着色する等の問題が発生するので好ましくない。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明する。なお、本発明はその趣旨に反しない限り実施例に限定されるものではない。また、実施例等における「部」は、特に指定しない限り重量単位である。
【0037】
(PCR−OGの合成)
以下の操作に従い、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン及びホスゲンを原料とするポリカーボネートオリゴマー(以下、「BPA−PCR−OG」と記す。)を合成した。
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン100部(0.438mol)、水酸化ナトリウム45.6部(1.14mol)、水848部、ハイドロサルファイトナトリウム0.336部及びジクロロメタン432部(328ml)を、撹拌機付き反応槽に仕込み、撹拌混合した。次に、温度0℃〜10℃の範囲に保たれた反応槽内に、ホスゲン110部(1.111mol)を約6時間で吹き込み、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンとホスゲンとの反応を行った。
【0038】
反応終了後、BPA−PCR−OGを含有するジクロロメタン溶液を捕集した。得られたBPA−PCR−OGのジクロロメタン溶液の分析結果は下記の通りであった。
・BPA−PCR−OG濃度:26.4重量%
・末端クロロホーメート基濃度:0.48規定
・末端フェノール性水酸基濃度:0.2規定
尚、BPA−PCR−OG濃度は、ジクロロメタン溶液を蒸発乾固させて測定した。末端クロロホーメート基濃度は、BPA−PCR−OGをアニリンと反応させて得られるアニリン塩酸塩を0.2規定水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定して測定した。末端フェノール性水酸基濃度は、BPA−PCR−OGのジクロロメタン溶液、四塩化チタン溶液、酢酸溶液の発色を546nmで比色定量した。
【0039】
(環状ポリカーボネートオリゴマーの合成)
ビーカーに、水酸化ナトリウム8.5g(0.213mol)及び水42.5mLを加えて撹拌し、水酸化ナトリウム水溶液を調製した。次に、30℃に保った反応槽にジクロロメタン100mLと上記の水酸化ナトリウム水溶液を加えた。
続いて、前述したように予め調製したBPA−PCR−OGのジクロロメタン溶液100gに、さらにジクロロメタン200mLを添加した溶液を調製し、これを滴下ロートに入れた。また、トリエチルアミン1.9g(18.8mmol)にジクロロメタン40mLを添加した溶液を調製し、これを上記とは別の滴下ロートに入れた。
【0040】
次に、撹拌条件下、反応槽中に、トリエチルアミンのジクロロメタン溶液を10分毎、4回に分けて添加し、さらに、BPA−PCR−OGのジクロロメタン溶液を40分掛けて滴下した。BPA−PCR−OGのジクロロメタン溶液の滴下終了後、そのまま2分間撹拌した後、撹拌を停止し、有機相のみを取り出した。
この有機相を0.1規定の塩酸400mLで2回洗浄し、水400mLで2回洗浄した後、有機相を取り出し、続いて、有機相に対し5倍体積量のアセトン中に流し込み、不要な高分子量体や非環状物等を析出させた。
次に、不要な析出物を濾別し、目的物である環状ポリカーボネートオリゴマーが溶解している濾液を取り出した後、溶媒を留去し、環状ポリカーボネートオリゴマー14.5g(収率58%、白色固体)を単離した。
得られた環状ポリカーボネートオリゴマーの構造は、核磁気共鳴装置(NMR)、サイズ排除クロマトグラフ装置(SEC)、マトリックス支援レーザ脱離イオン化飛行時間型質量分析装置(MALDI−TOF MS)を用いて分析した。また、得られた環状ポリカーボネートオリゴマーは、数平均分子量が、500〜1,000,000に相当し、下記構造を有する化合物であった。
【0041】
【化4】

【0042】
(環状ポリカーボネートオリゴマーの重合触媒)
前述した操作により合成した環状ポリカーボネートオリゴマーの重合に、以下に示す重合触媒を用いた。
触媒A:トリブチルヘキサデシルホスホニウムブロミド
触媒B:トリブチルドデシルホスホニウムブロミド
触媒C:トリブチル−n−オクチルホスホニウムブロミド
触媒D:テトラ−n−オクチルホスホニウムブロミド
触媒A、触媒B、触媒C、触媒Dの構造を下記に示す。
【0043】
【化5】

【0044】
【化6】

【0045】
【化7】

【0046】
【化8】

【0047】
(粘度平均分子量(Mv)の測定)
ウベローデ型毛細管粘度計(ジクロロメタンの流下時間t:135.40秒)を用いて、温度20.0℃において、ポリカーボネート樹脂のジクロロメタン溶液(濃度:6.00g/L)の流下時間(t)を測定し、以下の式に基づき、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)を算出した。
【0048】
ηsp=(t/t)−1
X=(0.2092×ηsp)+1.0734
Y=100×ηsp/C
C=6.00[g/L]
η=Y/X
Mv=3207×(η1.205
【0049】
(比較例1)
以下の操作により環状ポリカーボネートオリゴマーを重合し、ポリカーボネート樹脂を製造した。
三角フラスコに、前述した触媒A0.4013g(0.791mmol)とジクロロメタン100mLを添加し、触媒Aを均一に溶解させた液(以下、「触媒A−100液」と記す。)を調製した。
別途、試験管に環状ポリカーボネートオリゴマー0.2g(カーボネート結合量:0.791mmol)を添加した後、触媒A−100液1mLを試験管に添加し、環状ポリカーボネートオリゴマーを均一に溶解させた。ここで、触媒A−100液1mL中には、触媒A7.91μmolが含まれる。また、このとき、環状ポリカーボネートオリゴマー中のカーボネート結合量に対する触媒A量は1mol%である。
次に、試験管中のジクロロメタンを留去し、触媒Aを含む環状ポリカーボネートオリゴマーの白色固体を試験管中に得た。続いて、この試験管を、それぞれ温度240℃と温度260℃とに保たれたオイルバスに入れ、撹拌しないまま10分間重合反応を行い、ポリカーボネート樹脂を製造した。得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)を測定した。結果を表1に示した。
【0050】
(実施例1)
三角フラスコに、上記の触媒A−100液10mLと、ジクロロメタン40mLとを添加し、均一に混合させた液(以下、「触媒A−500液」と記す。)を調製した。
比較例1の触媒A−100液の代わりに触媒A−500液を用いた以外は、比較例1と同様な操作を行い、環状ポリカーボネートオリゴマーを重合し、ポリカーボネート樹脂を製造した。
ここで、触媒A−500液1mL中には、触媒Aは1.58μmolが含まれる。また、このとき、環状ポリカーボネートオリゴマーのカーボネート結合量に対する触媒A量は0.2mol%である。得られたポリカーボネート樹脂について測定したMvを表1に示した。
【0051】
(実施例2)
三角フラスコに、上記の触媒A−100液10mLとジクロロメタン90mLを添加し、均一に混合させた液(以下、「触媒A−1000液」と記す。)を調製した。
比較例1の触媒A−100液の代わりに触媒A−1000液を用いた以外は、比較例1と同様な操作を行い、環状ポリカーボネートオリゴマーを重合し、ポリカーボネート樹脂を製造した。
ここで、触媒A−1000液1mL中には、触媒Aは0.791μmolが含まれる。また、このとき、環状ポリカーボネートオリゴマーのカーボネート結合量に対する触媒A量は0.1mol%である。得られたポリカーボネート樹脂について測定したMvを表1に示した。
【0052】
(実施例3)
三角フラスコに、上記の触媒A−1000液10mLと、ジクロロメタン10mLとを添加し、均一に混合させた液(以下、「触媒A−2000液」と記す。)を調製した。
比較例1の触媒A−100液の代わりに触媒A−2000液を用いた以外は、比較例1と同様な操作を行い、環状ポリカーボネートオリゴマーを重合し、ポリカーボネート樹脂を製造した。
ここで、触媒A−2000液1mL中には、触媒Aは0.395μmolが含まれる。また、このとき、環状ポリカーボネートオリゴマーのカーボネート結合量に対する触媒A量は0.05mol%である。得られたポリカーボネート樹脂について測定したMvを表1に示した。
【0053】
(実施例4)
三角フラスコに、上記の触媒A−1000液10mLと、ジクロロメタン40mLとを添加し、均一に混合させた液(以下、「触媒A−5000液」と記す。)を調製した。
比較例1の触媒A−100液の代わりに触媒A−5000液を用いた以外は、比較例1と同様な操作を行い、環状ポリカーボネートオリゴマーを重合し、ポリカーボネート樹脂を製造した。
ここで、触媒A−5000液1mL中には、触媒Aは0.158μmolが含まれる。また、このとき、環状ポリカーボネートオリゴマーのカーボネート結合量に対する触媒A量は0.02mol%である。得られたポリカーボネート樹脂について測定したMvを表1に示した。
【0054】
(比較例2)
三角フラスコに触媒B0.3570g(0.791mmol)と、ジクロロメタン100mLとを添加し、触媒Bを均一に懸濁させた液(以下、「触媒B−100液」と記す。)を調製した。
別途、試験管に環状ポリカーボネートオリゴマー0.2g(カーボネート結合量:0.791mmol)を添加した後、触媒B−100液1mLを試験管に添加し、環状ポリカーボネートオリゴマーを溶解させた。ここで、触媒B−100液1mL中には、触媒Bは7.91μmol含まれる。また、このとき、環状ポリカーボネートオリゴマーのカーボネート結合量に対する触媒B量は1mol%である。
次に、試験管中のジクロロメタンを留去し、触媒Bを含んだ環状ポリカーボネートオリゴマーの白色固体を試験管中に得た。続いて、この試験管を、それぞれ温度240℃と温度260℃とに保たれたオイルバスに入れ、撹拌しないまま10分間重合反応を行い、ポリカーボネート樹脂を製造した。得られたポリカーボネート樹脂について測定したMvを表1に示した。
【0055】
(実施例5)
三角フラスコに、上記の触媒B−100液10mLと、ジクロロメタン40mLとを添加し、均一に混合させた液(以下、「触媒B−500液」と記す。)を調製した。
比較例2の触媒B−100液の代わりに触媒B−500液を用いた以外は、比較例2と同様な操作を行い、環状ポリカーボネートオリゴマーを重合し、ポリカーボネート樹脂を製造した。
ここで、触媒B−500液1mL中には、触媒Bは1.58μmolが含まれる。また、このとき、環状ポリカーボネートオリゴマーのカーボネート結合量に対する触媒B量は0.2mol%である。得られたポリカーボネート樹脂について測定したMvを表1に示した。
【0056】
(実施例6)
三角フラスコに、上記の触媒B−100液10mLと、ジクロロメタン90mLとを添加し、均一に混合させた液(以下、「触媒B−1000液」と記す。)を調製した。
比較例2の触媒B−100液の代わりに触媒B−1000液を用いた以外は、比較例2と同様な操作を行い、環状ポリカーボネートオリゴマーを重合し、ポリカーボネート樹脂を製造した。
ここで、触媒B−1000液1mL中には、触媒Bは0.791μmolが含まれる。また、このとき、環状ポリカーボネートオリゴマーのカーボネート結合量に対する触媒B量は0.1mol%である。得られたポリカーボネート樹脂について測定したMvを表1に示した。
【0057】
(比較例3)
三角フラスコに触媒C0.3570g(0.791mmol)と、ジクロロメタン100mLとを添加し、触媒Cを均一に懸濁させた液(以下、「触媒C−100液」と記す。)を調製した。
別途、試験管に環状ポリカーボネートオリゴマー0.2g(カーボネート結合量:0.791mmol)を添加した後、触媒C−100液1mLを試験管に添加し、環状ポリカーボネートオリゴマーを溶解させた。ここで、触媒C−100液1mL中には、触媒Cは7.91μmol含まれる。また、このとき、環状ポリカーボネートオリゴマーのカーボネート結合量に対する触媒C量は1mol%である。
次に、試験管中のジクロロメタンを留去し、触媒Cを含んだ環状ポリカーボネートオリゴマーの白色固体を試験管中に得た。続いて、この試験管を、それぞれ温度240℃と温度260℃とに保たれたオイルバスに入れ、撹拌しないまま10分間重合反応を行い、ポリカーボネート樹脂を製造した。得られたポリカーボネート樹脂について測定したMvを表1に示した。
【0058】
(実施例7)
三角フラスコに、上記の触媒C−100液10mLと、ジクロロメタン40mLとを添加し、均一に混合させた液(以下、「触媒C−500液」と記す。)を調製した。
比較例3の触媒C−100液の代わりに触媒C−500液を用いた以外は、比較例3と同様な操作を行い、環状ポリカーボネートオリゴマーを重合し、ポリカーボネート樹脂を製造した。
ここで、触媒C−500液1mL中には、触媒Cは1.58μmolが含まれる。また、このとき、環状ポリカーボネートオリゴマーのカーボネート結合量に対する触媒C量は0.2mol%である。得られたポリカーボネート樹脂について測定したMvを表1に示した。
【0059】
(実施例8)
三角フラスコに、上記の触媒C−100液10mLと、ジクロロメタン90mLとを添加し、均一に混合させた液(以下、「触媒C−1000液」と記す。)を調製した。
比較例3の触媒C−100液の代わりに触媒C−1000液を用いた以外は、比較例3と同様な操作を行い、環状ポリカーボネートオリゴマーを重合し、ポリカーボネート樹脂を製造した。
ここで、触媒C−1000液1mL中には、触媒Cは0.791μmolが含まれる。また、このとき、環状ポリカーボネートオリゴマーのカーボネート結合量に対する触媒C量は0.1mol%である。得られたポリカーボネート樹脂について測定したMvを表1に示した。
【0060】
(比較例4)
三角フラスコに触媒D0.4457g(0.791mmol)と、ジクロロメタン100mLとを添加し、触媒Dを均一に懸濁させた液(以下、「触媒D−100液」と記す。)を調製した。
別途、試験管に環状ポリカーボネートオリゴマー0.2g(カーボネート結合量:0.791mmol)を添加した後、触媒D−100液1mLを試験管に添加し、環状ポリカーボネートオリゴマーを溶解させた。ここで、触媒D−100液1mL中には、触媒Dは7.91μmol含まれる。また、このとき、環状ポリカーボネートオリゴマーのカーボネート結合量に対する触媒D量は1mol%である。
次に、試験管中のジクロロメタンを留去し、触媒Dを含んだ環状ポリカーボネートオリゴマーの白色固体を試験管中に得た。続いて、この試験管を、それぞれ温度240℃と温度260℃とに保たれたオイルバスに入れ、撹拌しないまま10分間重合反応を行い、ポリカーボネート樹脂を製造した。得られたポリカーボネート樹脂について測定したMvを表1に示した。
【0061】
(実施例9)
三角フラスコに、上記の触媒D−100液10mLと、ジクロロメタン40mLとを添加し、均一に混合させた液(以下、「触媒D−500液」と記す。)を調製した。
比較例4の触媒D−100液の代わりに触媒D−500液を用いた以外は、比較例4と同様な操作を行い、環状ポリカーボネートオリゴマーを重合し、ポリカーボネート樹脂を製造した。
ここで、触媒D−500液1mL中には、触媒Dは1.58μmolが含まれる。また、このとき、環状ポリカーボネートオリゴマーのカーボネート結合量に対する触媒D量は0.2mol%である。得られたポリカーボネート樹脂について測定したMvを表1に示した。
【0062】
(実施例10)
三角フラスコに、上記の触媒D−100液10mLと、ジクロロメタン90mLとを添加し、均一に混合させた液(以下、「触媒D−1000液」と記す。)を調製した。
比較例4の触媒D−100液の代わりに触媒D−1000液を用いた以外は、比較例4と同様な操作を行い、環状ポリカーボネートオリゴマーを重合し、ポリカーボネート樹脂を製造した。
ここで、触媒D−1000液1mL中には、触媒Dは0.791μmolが含まれる。また、このとき、環状ポリカーボネートオリゴマーのカーボネート結合量に対する触媒D量は0.1mol%である。得られたポリカーボネート樹脂について測定したMvを表1に示した。
【0063】
(実施例11)
三角フラスコに、実施例6で使用した触媒B−1000液10mLと、ジクロロメタン10mLとを添加し、均一に混合させた液(以下、「触媒B−2000液」と記す。)を調製した。
比較例2で使用した触媒B−100液の代わりに触媒B−2000液を用いた以外は、比較例2と同様な操作を行い、環状ポリカーボネートオリゴマーを重合し、ポリカーボネート樹脂を製造した。
ここで、触媒B−2000液1mL中には、触媒Bは0.395μmolが含まれる。また、このとき、環状ポリカーボネートオリゴマーのカーボネート結合量に対する触媒B量は0.05mol%である。得られたポリカーボネート樹脂について測定したMvを表1に示した。
【0064】
(実施例12)
三角フラスコに、上記の触媒B−1000液10mLと、ジクロロメタン40mLとを添加し、均一に混合させた液(以下、「触媒B−5000液」と記す。)を調製した。
比較例2の触媒B−100液の代わりに触媒B−5000液を用いた以外は、比較例2と同様な操作を行い、環状ポリカーボネートオリゴマーを重合し、ポリカーボネート樹脂を製造した。
ここで、触媒B−5000液1mL中には、触媒Bは0.158μmolが含まれる。また、このとき、環状ポリカーボネートオリゴマーのカーボネート結合量に対する触媒B量は0.02mol%である。得られたポリカーボネート樹脂について測定したMvを表1に示した。
【0065】
(実施例13)
三角フラスコに、上記の触媒B−1000液10mLと、ジクロロメタン90mLとを添加し、均一に混合させた液(以下、「触媒B−10000液」と記す。)を調製した。
比較例2の触媒B−100液の代わりに触媒B−10000液を用いた以外は、比較例2と同様な操作を行い、環状ポリカーボネートオリゴマーを重合し、ポリカーボネート樹脂を製造した。
ここで、触媒B−10000液1mL中には、触媒Bは0.0791μmolが含まれる。また、このとき、環状ポリカーボネートオリゴマーのカーボネート結合量に対する触媒B量は0.01mol%である。得られたポリカーボネート樹脂について測定したMvを表1に示した。
【0066】
(実施例14)
三角フラスコに、実施例8で使用した触媒C−1000液10mLと、ジクロロメタン10mLとを添加し、均一に混合させた液(以下、「触媒C−2000液」と記す。)を調製した。
比較例3の触媒C−100液の代わりに触媒C−2000液を用いた以外は、比較例3と同様な操作を行い、環状ポリカーボネートオリゴマーを重合し、ポリカーボネート樹脂を製造した。
ここで、触媒C−2000液1mL中には、触媒Cは0.395μmolが含まれる。また、このとき、環状ポリカーボネートオリゴマーのカーボネート結合量に対する触媒C量は0.05mol%である。得られたポリカーボネート樹脂について測定したMvを表1に示した。
【0067】
(実施例15)
三角フラスコに、上記の触媒C−1000液10mLと、ジクロロメタン40mLとを添加し、均一に混合させた液(以下、「触媒C−5000液」と記す。)を調製した。
比較例3の触媒C−100液の代わりに触媒C−5000液を用いた以外は、比較例3と同様な操作を行い、環状ポリカーボネートオリゴマーを重合し、ポリカーボネート樹脂を製造した。
ここで、触媒C−5000液1mL中には、触媒Cは0.158μmolが含まれる。また、このとき、環状ポリカーボネートオリゴマーのカーボネート結合量に対する触媒C量は0.02mol%である。得られたポリカーボネート樹脂について測定したMvを表1に示した。
【0068】
(実施例16)
三角フラスコに、上記の触媒C−1000液10mLと、ジクロロメタン90mLとを添加し、均一に混合させた液(以下、「触媒C−10000液」と記す。)を調製した。
比較例3の触媒C−100液の代わりに触媒C−10000液を用いた以外は、比較例3と同様な操作を行い、環状ポリカーボネートオリゴマーを重合し、ポリカーボネート樹脂を製造した。
ここで、触媒C−10000液1mL中には、触媒Cは0.0791μmolが含まれる。また、このとき、環状ポリカーボネートオリゴマーのカーボネート結合量に対する触媒C量は0.01mol%である。得られたポリカーボネート樹脂について測定したMvを表1に示した。
【0069】
(実施例17)
三角フラスコに、実施例10で使用した触媒D−1000液10mLと、ジクロロメタン10mLとを添加し、均一に混合させた液(以下、「触媒D−2000液」と記す。)を調製した。
比較例4の触媒D−100液の代わりに触媒D−2000液を用いた以外は、比較例4と同様な操作を行い、環状ポリカーボネートオリゴマーを重合し、ポリカーボネート樹脂を製造した。
ここで、触媒D−2000液1mL中には、触媒Dは0.395μmolが含まれる。また、このとき、環状ポリカーボネートオリゴマーのカーボネート結合量に対する触媒D量は0.05mol%である。得られたポリカーボネート樹脂について測定したMvを表1に示した。
【0070】
(実施例18)
三角フラスコに、上記の触媒D−1000液10mLと、ジクロロメタン40mLとを添加し、均一に混合させた液(以下、「触媒D−5000液」と記す。)を調製した。
比較例4の触媒D−100液の代わりに触媒D−5000液を用いた以外は、比較例4と同様な操作を行い、環状ポリカーボネートオリゴマーを重合し、ポリカーボネート樹脂を製造した。
ここで、触媒D−5000液1mL中には、触媒Dは0.158μmolが含まれる。また、このとき、環状ポリカーボネートオリゴマーのカーボネート結合量に対する触媒D量は0.02mol%である。得られたポリカーボネート樹脂について測定したMvを表1に示した。
【0071】
(実施例19)
三角フラスコに、上記の触媒D−1000液10mLと、ジクロロメタン90mLとを添加し、均一に混合させた液(以下、「触媒D−10000液」と記す。)を調製した。
比較例4の触媒D−100液の代わりに触媒D−10000液を用いた以外は、比較例4と同様な操作を行い、環状ポリカーボネートオリゴマーを重合し、ポリカーボネート樹脂を製造した。
ここで、触媒D−10000液1mL中には、触媒Dは0.0791μmolが含まれる。また、このとき、環状ポリカーボネートオリゴマーのカーボネート結合量に対する触媒D量は0.01mol%である。得られたポリカーボネート樹脂について測定したMvを表1に示した。
【0072】
【表1】

【0073】
表1に示す結果から、環状ポリカーボネートオリゴマーを重合する際に、重合触媒としてテトラアルキルホスホニウム塩を使用し、環状ポリカーボネートオリゴマーのカーボネート結合量に対する触媒量が0.4mol%以下の場合は(実施例1〜実施例19)、高分子量且つ機械的強度に優れたポリカーボネート樹脂が得られることが分かる。
一方、重合触媒としてテトラアルキルホスホニウム塩を使用し、環状ポリカーボネートオリゴマーのカーボネート結合量に対する触媒量が1mol%の場合は(比較例1〜比較例4)、重合反応が充分に進行せず、高分子量のポリマーが得られないことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状ポリカーボネートオリゴマーを原料とするポリカーボネート樹脂の製造方法であって、
前記環状ポリカーボネートオリゴマーを重合する際に、重合触媒としてテトラアルキルホスホニウム塩を、当該環状ポリカーボネートオリゴマー中のカーボネート結合量に対して0.4mol%以下の量で用いる
ことを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記テトラアルキルホスホニウム塩が、下記一般式1で表される構造を有することを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
【化1】

(一般式1中、R〜Rは、各々独立してアルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表す。)
【請求項3】
重合温度が150℃以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が10,000以上であることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2009−108137(P2009−108137A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−279396(P2007−279396)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】