説明

ポリスチレン系樹脂発泡粒子の低密度融着発泡樹脂成形体及びその製造方法

【目的】 使用重量の削減を可能にして産業廃棄物の発生量を低減出来るところのポリスチレン系樹脂発泡粒子の低密度融着発泡樹脂成形体。
【構成】 ポリスチレンの連続相に内部にポリスチレンが小粒子状に内包されたブタジエン系重合ゴムが粒子状に分散し、全体に占めるブタジエン成分の含有量が5〜15重量%でありかつブタジエン系重合体ゴムの重量平均粒子径が0.05〜1.0μmでその粒子径分布が1.5以下であるゴム変性ポリスチレン樹脂に揮発性有機発泡剤を樹脂100グラム量について、0.07〜0.25グラムモル量含浸し、発泡性樹脂粒子とし、さらにスチームで高発泡樹脂粒子とした後発泡スチロール用成形後で成形し密度0.009〜0.14g/cm3 の独立気泡構造に富んだ新規な低密度融着発泡樹脂成形体が得られる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ゴム変性ポリスチレン系樹脂発泡粒子の低密度融着発泡樹脂成形体とその製造方法に関する。本発明によれば電子部品,音響機器等が著しく小型化、軽量化され、増々軽量物の緩衝包装材の要求が高まる中で、特に軽量物に対する緩衝性能に優れて、かつ近年社会問題となっているプラスチックの産業廃棄物への対応から従来品よりもはるかに低密度なるがゆえに従来の緩衝材料よりも大巾に使用重量を低減出来る結果、産業廃棄物の発生量を削減出来る。
【0002】
【従来の技術】従来から軽量の被包装物を硬くて弾性に乏しいポリスチレンン系樹脂発泡粒子の融着発泡成形体(以下、発泡成形体と称す)による緩衝材で緩衝包装した場合、硬すぎて、十分なる緩衝吸収効果が得れないという問題があった。その解決手段として従来より、通称ハイインパクトポリスチレン樹脂と称されているポリスチレンの連続相にポリスチレンが単数又は複数の小粒子状に内包されたブタジエン系重合体ゴムが粒子状に分散してなるゴム変性ポリスチレン樹脂を用いて発泡粒子を得て発泡成形体を得ることは知られている。
【0003】例えば、特公昭51−46536号公報には、ポリスチレン樹脂に、ブタジエン成分が加わる事で得られる発泡成形体の弾性を高められる事が、又、特開昭56−67344号公報には、平均ゴム粒子径を0.7μm以下に調整することでさらに耐衝撃性能を高めることが開示されている。しかしながら上記発明で言う「耐衝撃破壊性能」とは主に発泡成形体が落下衝撃によって割れたり、折れたりすることを防止する性能であって、本発明で言う、気泡膜が非常に薄膜状にある低密度発泡成形体に特有な現象である気泡があたかもパンクするが如く破裂するのを防止する「耐気泡のパンク防止性能」と明らかに異るものである。
【0004】又ブタジエン成分を加えることによって得られる発泡成形体の弾性を改善出来たとは言え高発泡性能が劣り、弾性を高める上で、ブタジエン成分を加える事にも増して重要な要因である発泡成形体の低密度化の達成が充分で無く、結果として得られる発泡成形体を軽量物の緩衝包装材に用いた時、十分なる緩衝効果を得られないという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】一般に電子部品や音響機器等の軽量製品は、緩衝包装する際、緩衝材となる発泡成形体に加わる受圧荷重が小さく(すなわち低応力)となるため落下衝撃に対し発泡成形体の圧縮変形が小さくとどまり、衝撃吸収効果が充分得られにくいという問題があり、軽量物に対する緩衝性能、いわゆる「低応力衝撃吸収性能」に優れて、かつポリスチレン系樹脂発泡成形体による経済性の高い軽量物用緩衝包装材の完成が強く望まれている。
【0006】本発明者らは、ポリスチレン樹脂にゴム成分を加える事によって、基本的な緩衝性能である、衝撃吸収性能の持続性を示すところの「圧縮歪の回復性能」と、通称「パンク現象」と言われる、落下衝撃によって発生する発泡成形体を構成する気泡膜の破裂を防止するところの「耐気泡のパンク防止性能」を備えることに加え、ゴム成分を加える事で、著しく高発泡性能が低下する性状を改善し、従来品より高度に低密度の発泡成形体を得る事を可能にして、これまでポリスチレンン系樹脂発泡成形体では不可能と思われたレベルの、高い弾性をもった発泡成形体を完成しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、ポリスチレンの連続相に、内部にポリスチレンが小粒子状に内包されたブタジエン系重合体ゴムが粒子状に分散しており、全体に占めるブタジエン成分の含有量が5〜15重量5であり、かつブタジエン系重合体ゴム粒子の重量平均粒子径が0.05〜1.0μmでその粒子径分布が1.5以下であるゴム変性ポリスチレン樹脂の発泡粒子からなる成形体であって、その密度が0.009〜0.014g/cm3 であり、かつその気泡の80%以上が独立気泡構造を有するポリスチレン系樹脂発泡粒子の低密度融着発泡樹脂成形体、及びポリスチレンの連続相に内部にポリスレンが小粒子状に内包されたブタジエン系重合体ゴムが粒子状に分散しており、全体に占めるブタジエン成分の含有量が5〜15重量%であり、かつブタジエン系重合体ゴム粒子の重量平均粒子径が0.05〜1.0μmでその粒子径分布が1.5以下であるゴム変性ポリスチレン樹脂100グラム量について揮発性有機発泡剤を0.07〜0.25グラムモル量を含浸し、発泡性樹脂粒子を得て後、該発泡性樹脂粒子を発泡機内でスチームによって発泡し1回の発泡で嵩密度が0.009〜0.014g/ccの発泡粒子を得、ついで該発泡粒子を成形型に導入しスチームで加熱し発泡粒子相互を融着成形して、その密度が0.009〜0.014g/cm3 で、かつその気泡の80%以上が独立気泡構造を有するポリスチレン系樹脂発泡粒子の低密度融着発泡樹脂成形体の製造方法であり、本発明によって前記課題は容易に達成出来る。
【0008】本発明で言うゴム変性ポリスチレンは、ブタジエン系重合体としてのポリブタジェン又はブタジエン−スチレン共重合体をスチレンモノマーに溶解し、重合液となす、次いで該重合液を加熱し撹拌しつつ重合しブタジエン系重合体をポリスチレンの連続相に分散ゴム粒子となして得られる。
【0009】重合反応時に溶媒を加えることも出来、その溶剤は芳香族炭化水素類、例えばトルエン、キシレン、エチルベンゼンの単独又は2種以上の混合物が使用出来る。前記重合液は100〜180℃の温度で重合しうるが、品質を高めるために重合開始剤が使用される。
【0010】使用出来る重合開始剤として1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のパーオキシケタール類、ジ−t−プチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等のジアルキルパーオキサイド類、ベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド等のジアルパーオキサイド類、ジミリスチルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類、t−ブチルパーオキシイソブロビルカーボネート等のパーオキシエステル類、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、p−メンタハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類がある。
【0011】重合反応は、温度50〜150℃、好ましくは90〜135℃の範囲で、一定温度あるいは漸次昇温して行う、本発明に特定される、ゴム粒子径が1.0μmでその粒子径の分布が1.5以下という均一微細な特殊なゴム粒子は、用いるブタジエン系重合体のポリスチレンに対する親和性を高める、重合液の粘度を調整する、撹拌の速度と時間を調整する、均質な撹拌装置を用いる等多く製造要件によって得られる(例えば特開昭60−130613号公報)。
【0012】かくの如きゴム粒子の構造は図4,図5に示すように、ポリブタジエン粒子の内部に単数のポリスチレン小粒子が内包された、いわゆるコアーシェル構造、あるいは、図6,図7に示すようにポリブタジエン粒子の内部に複数のポリスチレン小粒子が内包された、いわゆるサラミ構造に形成される。上記コアーシェル構造粒子を有するゴム変性ポリスチレンは、ブタジエン系重合体としてポリブタジエンブロック1個とポリスチレンブロック1個又は2個よりなる2型又は3型ブロック共重合体を用いることにより効率よく得ることが出来る。
【0013】又ブロック共重合体中のポリスチレンブロックの含量は20−45重量%の範囲にあることが好ましく、このようなブタジエン系重合体の例は、例えば特開昭64−74208号公報に開示されている。又上記ゴム粒子の構造は、樹脂組成物の超薄切片法により撮影した透過型電子顕微鏡写真により確認する事が出来る。
【0014】又本発明の発泡成形体を得る方法は次の様である。ゴム変性ポリスチレン樹脂を連続的に押出機に供給し、押出機内で加熱溶融しながら押出機のダイに設けられた細孔より糸状に押出した後、直ちに水を貯えた冷却バスで冷却しつつ上下2本の駆動ロールで挟み引取りながら回転式カッターで長さ方向にカットし樹脂粒子を得る。
【0015】次に当該樹脂粒子100g量についてイソペンタン,ノルマルペンタン,イソブタン、ノルマルブタン,ヘキサン等の揮発性有機発泡剤を0.07〜0.25グラムモル量含浸して発泡性樹脂粒子を得る。尚揮発性有機発泡剤を含浸する方法は、例えば、オートクレーブ内に当該樹脂粒子を入れて、これに揮発性有機発泡剤を加えて満して密閉した後、加温加圧して含浸する方法又は当該樹脂粒子を押出機内で加圧溶融した後別途押出機に通じる発泡剤供給ラインを通して揮発性有機発泡剤を圧入して、溶融状態にある樹脂と十分混合し、その後押出機のダイ部に設けられた細孔より糸状に押出し、直に水を貯えた冷却バスで冷却しつつ、上下2本の駆動ロールで挟み引取りながら回転式カッターで長さ方向にカットし発泡性樹脂粒子を得る方法が用いられる。
【0016】つぎにこれら発泡性樹脂粒子を公知のポリスチレン発泡ビーズ用成形機でスチームによって高発泡し、目標とする嵩密度が0.009〜0.014g/ccの発泡粒子となす。当該発泡粒子を用いて本発明の目標とする性能を備えた独立気泡構造に富んだところの低密度発泡成形体を得ようとする観点からは、1回で目標の嵩密度に発泡するいわゆる一段発泡方法にすることが望ましい。
【0017】その理由は、かならずしも明らかでないが、数回の発泡によって目標の嵩密に発泡する、いわゆる多段発泡方法によれば、高度に低密度なるがゆえに、極めて薄膜状である発泡粒子の気泡膜が、繰返されるスチーム加熱によって損傷が大きくなるためと考えられている。この様にして得た発泡樹脂粒子をこれも公知のポリスチレン発泡ビーズ用自動成形機で融着1体化して発泡成形体を得ることが出来る。
【0018】
【作用】図1は、本発明のゴム変性ポリスチレン樹脂のブタジエン成分の占める量の意義を示す実験図である。即ち図1の横軸は、ブタジエン成分の含量を重量%で示し、縦軸は〔気泡膜のパンク発生荷重〕と〔低応力緩衝係数〕の2つの観点からの評価を示す。
【0019】即ち、発泡成形体の密度を0.011g/cm3 に揃えて評価した時に〔気泡膜のパンク発生荷重〕は、成分量の減少と共に低下しかつブタジエン成分量が5重量%未満では著しく悪化することが示される。反面〔低応力緩衝係数〕はブタジエン成分の含量が7.5重量%付近で最も良好な値を示しさらにブタジエン成分量が15重量%を越えると著しく悪化することが示され目標に応じて特性の改善された組成が得られることが分る。そしてこの様にブタジエン成分量との関係において相反する性質を示す〔気泡膜のパンク発生荷重〕と〔低応力緩衝係数〕の2つを同時に満足させようとする観点からは、図1に示す点線の範囲すなわちブタジエン成分量が5〜15重量%の範囲の組成を選ぶことが望ましい。
【0020】図2は本発明のゴム変性ポリスチレン樹脂のブタジエン系重合体ゴム粒子の意義を示す実験図である。即ち図2の横軸は、平均ゴム粒子径(μm)を示し縦軸は〔独立気泡率〕の評価を示す。又図2中の複数の線図は各々ゴム粒子径の分布を示す。
【0021】第一に平均ゴム粒子径が大きくなると得られる発泡成形体の独立気泡率は低下し、さらに平均ゴム粒子径が1.0μmを越えると著しく悪化することが示される。第二に平均ゴム粒子径が1.0μm未満であってもゴム粒子径分布が1.5の値を越えるとやはり得られる発泡成形体の独立気泡率は著しく低下することが示されている。即ち得られる発泡成形体の特性を高める観点から最も重要となる高い独立気泡構造の発泡成形体を得るためには、重量平均値で表すゴム粒子径が1.0μm以下であって、さらに言えば実質工業的に得ることが可能であるところの0.05〜1.0μmであり、かつそのゴム粒子の分布が1.5以下、望ましくば、ゴム粒子径が0.05〜0.7μmでかつその分布が1.2以下の範囲であることを示している。
【0022】図3は、本発明の発泡成形体の密度の意義を示す実験図である。即ち図3の横軸は、発泡成形体の密度(g/cm3 )を示し縦軸は〔低応力緩衝係数〕と〔圧縮歪の回復量〕の2つの観点からの評価を示す。
【0023】図3によれば、発泡成形体の密度が大きくなると共に「圧縮歪の回復量」が低下し、さらに発泡成形体の密度が0.014g/cm3 を越えると急激に悪化することが示される。反面〔低応力緩衝係数〕は発泡成形体の密度が小さくなると悪化し、さらに発泡成形体の密度が0.009g/cm3 未満では著しく悪化する事が示され目標に応じて特性の改善された発泡成形体が得られる事が分る。
【0024】そしてこの様に、発泡成形体の密度との関係に於いて相反する性質を示す〔低応力緩衝係数〕と〔圧縮歪の回復量〕を同時に満足させようとする観点からは、図3に示す点線の範囲すなわち発泡成形体の密度が0.009〜0.014g/cm3 の範囲を選ぶことが望ましい。ついで表2は、各々の実験の結果を集約し、性能の評価結果を総合的にまとめて表示したものである。
【0025】すなわち本発明の発泡成形体によれば、全ての評価項目に於いて劣るという評価は(表中×及び△印で記載)されるものは見られず優れた性能を示すものであることが分る。上記から、用いるゴム変性ポリスチレン樹脂のブタジエン成分の含量とそのゴム粒子径その分布及び得られる発泡成形体の密度と独立気泡率の全てを特定することで、初めて本発明の目的とする〔低応力緩衝吸収性能〕と〔圧縮歪の回復性能〕と〔耐気泡のパンク防止性能〕の3つを同時に満足出来る緩衝包装材料が得られることが分る。
【0026】前述したように、本発明のゴム変性ポリスチレン樹脂による発泡成形体によれば、高度に低密度化が達成出来、軽量物の緩衝包装材に必要な「低応力緩衝性能」に優れ、且つ基本的な緩衝性能である「圧縮歪の回復性能」と「耐気泡のパンク防止性能」を兼備した軽量物用の緩衝包装材が得られるという効果が究明された。
【0027】この様な効果が生じる作用機構は、かならずしも明らかで無いが以下の様に考えられている。すなわち本発明に用いるゴム変性ポリスチレンン樹脂に於いて、(イ)発泡成形体を形成する気泡膜の内部に粒子状に分散し存在するゴム成分が落下衝撃を受けることによって生じる内部応力を緩和して「パンク現象」といわれる気泡膜の破壊を効果的に防止していること。
【0028】(ロ)発泡剤を非常に透過して逸散しやすいゴム成分を、高度に高発泡化されて極めて薄膜状にある気泡膜の厚みよりも十分に小さい値である平均粒子径で1.0μm以下の粒子状で分散し、存在させることで気泡膜の厚み方向に対しゴム粒子を充分にポリスチレン相で覆うことが出来、ポリスチレン樹脂のもつ発泡剤を逸散しにくい性質を活用出来ていること。
【0029】(ハ)ゴム粒子径の分布が大きい事は、極めて薄い気泡膜の厚み断面の組成,構造等を非常に不均質にし気泡が膨張して気泡膜が平面方向に伸びて生長しようとする時、不均一に生長したり部分的に生長しにくかったりする現象を誘発し気泡膜が破壊しやすくなるためと考えられている。したがって、本発明でいうゴム粒子径の分布を1.5以下、望ましくは1.2以下の調整した均一ゴム粒子を用いることが、得られる発泡成形体の独立気泡構造の形成を高めていると考えられている。上記の作用機構が相乗的な効果を生んで、本発明の目標とする性能が得られるものと考えられている。
【0030】〔測定方法〕
1)平均粒子径ゴム変性ポリスチレン樹脂を超薄切片法により撮影した透過型電子顕微鏡写真中のブタジエンゴム粒子500〜1000個の粒子径を測定し、次式により算出する。
【0031】
【数1】


【0032】
【数2】


【0033】2)粒子径分布次式により算出する。
【0034】
【数3】


【0035】3)嵩密度内容積が1000ccである計量容器によって正確に嵩容積が1000ccになる様に発泡粒子を秤量する。ついで秤量した発泡粒子全量の重量を測定し、次式により算出する。
【0036】
【数4】


【0037】4)密度重量(Wg)既知の発泡体の容積(Vcm3 )を水没法で測定し、その重量を容積で除した値を密度(g/cm3 )とする。
【0038】5)独立気泡率密度(g/cm3 )が既知の発泡体約24cm3 の真の容積を東芝・ベックマン社製空気比較式比重計930形を用いて測定し、次式より独立気泡率〔S,(%)〕を算出する。
【0039】
【数5】


【0040】6)低応力緩衝係数JIS−Z−0235に準じ、落下高さ80cm、試験体の厚み5cm、静的応力値0.03kg/cm2 の条件で落下衝撃試験を行い、最大加(減)速度を求める、データは落下回数1回目のものとし、このデータを基に以下の様に求めた。
【0041】
【数6】


【0042】7)圧縮歪の回復量JIS K−6767繰返圧縮永久歪試験法に準じ縦×横×厚さ寸法が各々50mm×50mm×50mmの試験体を25%圧縮試験を行い以下の様に求めた。
【0043】
【数7】R :圧縮永久歪の回復量(mm)
1 :25%圧縮時の厚み寸法(mm)
2 :回復後の厚み寸法(mm)
R=R2 −R1
【0044】8)気泡のパンク発生重量JIS−Z−0235、落下衝撃試験法に準じ縦×横×厚さ寸法が各々100mm×100mm×50mmの試験体の縦×横の上面の全面に上面から80cmの高さから重量が50g単位で異る平板状の錘りを順次落下し衝撃と圧縮歪を与え試験体である発泡成形体の気泡膜に破裂が生じ初める時の錘りの重量を求め、気泡のパンク発生重量とする。尚一度落下衝撃試験を行った試験体は再び使用せず新しい試験体に交換し次の落下衝撃試験を行うものとする。
【0045】〔評価方法〕
(1)低応力衝撃吸収性能前記低応力緩衝係数の項で求めた値によって以下の評価尺度で求める。
【0046】
【表1】


【0047】(2)圧縮歪の回復性能前記圧縮歪の回復量の測定方法の項で求めた圧縮歪の回復量(mm)の値によって、以下の評価尺度で求めた。
【0048】
【表2】


【0049】(3)耐気泡のパンク防止性能前記気泡のパンク発生重量の測定方法の項で求めた気泡のパンク発生重量(kg)の値によって以下の評価尺度で求めた。
【0050】
【表3】


(4)総合評価
【0051】
【表4】


【0052】
【実施例】以下本発明の内容を実施例を用いて詳述する。
〔ゴム変性ポリスチレンの調整〕表5,6,7に示すところの配合比でスチレンモノマーにブタジエン系重合体を溶解し、溶解した溶液100部にエチルベンゼン5部、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.05部を添加し重合原料液を調整する。各々の原料液を各々別に連続3段式重合器に送入し重合を行った。各重合機は、1.2リットルの容積を有し撹拌翼が付いている。
【0053】重合温度は105〜145℃の間で変化させ、最終重合器出で固型分が約80%となるまで重合させた後、加熱真空下の脱揮装置に送り未反応スチレンモノマー及びエチルベンゼンを除去し、ダイスからストランドを引き水冷後ペレット状に切断する。ペレット中のブタジエン成分の含有量を測定後、必要であればポリスチレン樹脂(旭化成工業社製スタイロン683)にて30mmφ単軸押出機を用いて希釈し表5,6,7に示すところの各々のブタジエン成分量に調整した。又重合の過程で、重合の温度条件,撹拌の条件等を調整し、最終的に表5、6,7に示すところのゴム変性ポリスチレン樹脂(HIPS1〜20)を得た。
【0054】実施例、比較例1上記ゴム変性ポリスチレン樹脂を各々別に発泡剤の加圧供給装置をもち、かつその加圧供給装置からの接続ラインが押出機のシリンダー内の溶融混練部に通じるように連結され、さらに前頭部に樹脂の冷却装置と多数の樹脂への流出孔をもつダイ装置を備えた押出含浸装置に供給し、押出機内で溶融混練しつつ、発泡剤の加圧供給装置からイソペンタンを樹脂100g量について0.15グラムモル量の比率にポンプで一定量づつ加圧供給し、樹脂と混練混合しつつ冷却装置で適温に冷却しダイ装置に設けられた多数の細孔より糸状に押出して、直ちに冷却水を貯えた冷却バスを介して引取りながら回転式カッターで長さ方向にカットし、各々の発泡性樹脂粒子を得た。
【0055】実験例1ゴム変性ポリスチレン、HIPS−1より前述の方法で得た発泡性樹脂粒子をスチーム発泡機で、いわゆる1段発泡法といわれる1回の発泡で嵩密度が目標であるところの0.011g/cm3 の発泡樹脂粒子を得た。ついでこの発泡樹脂粒子を20℃の室内で24時間熟成した後、発泡スチロール用成形機(笠原工業社製;PIONY−75型)で成形し厚さ,長さ,巾の各々の寸法が50mm×300mm×300mmの板状発泡樹脂成形体を得た。次にこの板状発泡樹脂成形体を湿度が50℃の乾燥室で3時間乾燥後取出しさらに20℃の室内で24時間熟成した後、嵩密度を測定したところ0.011g/cm3であることを確認して評価した結果を表8、表9に示す。
【0056】実験例2〜22表8,表9に示す実験番号に対応するところのゴム変性ポリスチレン樹脂(表5、6、7に詳述している)により各々実験例1と同様の方法で得た発泡性樹脂粒子を、やはり実験例1と同様に発泡し成形して実験番号に対応する発泡成形体を得て評価した結果をまとめて表8、表9に表す。
【0057】比較例2前記の方法で得たゴム変性ポリスチレン、HIPS−2に、イソペンタンを樹脂100g量について0.05グラムモル量の比率にポンプで一定量づつ加圧供給したことを変えた意外は全く実施例1と同様の方法で発泡性樹脂粒子を得た。ついでこの発泡樹脂をスチーム発泡機で発泡し嵩密度が0.033g/ccの発泡樹脂粒子を得た。つぎに当該発泡樹脂粒子を室内に24時間放置し熟成後再び前記スチーム発泡機で発泡し目標の嵩密度が0.011g/ccの発泡樹脂粒子を得て20℃の室内で24時間熟成した後、実験例1と同様に成形してその密度が0.011g/cm3 の発泡成形体を得て評価した結果を表8、表9に示す。
【0058】
【表5】


【0059】
【表6】


【0060】
【表7】


【0061】
【表8】


【0062】
【表9】


【0063】
【発明の効果】以上詳述して明らかにしてきた通り、本発明の低密度発泡樹脂成形体は、上述の構成をもつことにより、衝撃吸収性能、圧縮歪の回復性能、耐衝撃破壊性能を兼備し、緩衝包装用途に優れた発泡成形体という利点があり、例えば電子部品、音響機器又は通信機器等の軽量で破損しやすい内容物の緩衝包装に用いることが出来かつ、低密度なるがゆえに使用重量を削減し産業廃棄物の発生量を大巾に低減出来る産業界に果す役割の高い優れた発明である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のゴム変性ポリスチレン樹脂のブタジエン成分の占める量の意義を示す実験図
【図2】本発明のゴム変性ポリスチレン樹脂のブタジエン系重合体ゴム粒子の意義を示す実験図
【図3】本発明の発泡成形体の密度の意義を示す実験図
【図4】本発明のゴム変性ポリスチレン樹脂のゴム粒子の断面を拡大した写生図
【図5】本発明のゴム変性ポリスチレン樹脂のゴム粒子の分散状態を示す断面拡大写生図
【図6】比較品のゴム粒子の断面を拡大した写生図
【図7】比較品のゴム粒子の分散状態を示す断面拡大写生図
【符号の説明】
図1の1 緩衝係数
図1の2 衝撃破壊発生荷重
図2の1 粒子径分布が1.2
図2の2 粒子径分布が1.5
図2の3 粒子径分布が2
図3の1 低応力緩衝係数
図3の2 圧縮歪の回復量
図4の1 ポリブタジエン
図4の2 ポリスチレン
図6の1 ポリブタジエン
図6の2 ポリスチレン

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ポリスチレンの連続相に、内部にポリスチレンが小粒子状に内包されたブタジエン系重合体ゴムが粒子状に分散しており、全体に占めるブタジエン成分の含有量が5〜15重量%であり、かつブタジエン系重合体ゴム粒子の重量平均粒子径が0.05〜1.0μm、その粒子径分布が1.5以下であるゴム変性ポリスチレン樹脂の発泡粒子からなる成形体であって、その密度が0.009〜0.014g/cm3 であり、かつその気泡の80%以上が独立気泡構造を有するポリスチレン系樹脂発泡粒子の低密度融着発泡樹脂成形体。
【請求項2】 ポリスチレンの連続相に内部にポリスチレンが小粒子状に内包されたブタジエン系重合体ゴムが粒子状に分散しており、全体に占めるブタジエン成分の含有量が5〜15重量%であり、かつブタジエン系重合体ゴム粒子の重量平均粒子径が0.05〜1.0μmでその粒子径分布が1.5以下であるゴム変性ポリスチレン樹脂100グラム量について揮発性有機発泡剤を0.07〜0.25グラムモル量を含浸し発泡性樹脂粒子を得て後、該発泡性樹脂粒子を発泡機内でスチームによって発泡し1回の発泡で嵩密度が0.009〜0.014g/ccの発泡粒子を得、ついで該発泡粒子を成形型に導入しスチームで加熱し発泡粒子相互を融着成形してその密度が0.009〜0.014g/cm3 で、かつその気泡の80%以上が独立気泡構造を有するポリスチレン系樹脂発泡粒子の低密度融着発泡樹脂成形体の製造方法。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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