説明

ポリチオール化合物およびそれを用いた樹脂ならびに レンズ

【構成】 2,5−ビス(メルカプトメチル)−2,5−ジメチル−1,4−ジチアン、これを含むポリチオール化合物成分(イ)と、ポリイソシアナート化合物、ポリイソチオシアナート化合物、イソシアナート基を有するイソチオシアナート化合物から選ばれた少なくとも一種の化合物を含む成分(ロ)を反応させて得られる樹脂ならびにレンズ。
【効果】 無色透明で、高屈折率、低分散、軽量であり、耐候性、耐衝撃性、耐熱性に優れた含硫ウレタン樹脂及びレンズを提供する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、新規なポリチオール化合物およびそれを用いて得られた樹脂ならびにレンズに関するものである。
【0002】
【従来の技術】プラスチックレンズは、無機レンズに比べ軽量で、割れ難く、染色が可能なため、近年、眼鏡レンズ、カメラレンズ等の光学素子分野で急速に普及してきている。これらの目的に、現在広く用いられている樹脂としては、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)(以下D.A.C.と称す)をラジカル重合させたものがある。この樹脂は、耐衝撃性に優れていること、軽量であること、染色性に優れていること、切削性および研磨性等の加工性が良好であること等、種々の特徴を有している。しかしながら、屈折率が無機レンズ(nd =1.52)に比べ、nd =1.50と小さく、ガラスレンズと同等の光学特性を得るためには、レンズの中心厚、コバ厚、および曲率を大きくする必要があり、全体的に肉厚になることが避けられない。このため、より屈折率の高いレンズ用樹脂が望まれている。
【0003】また、高屈折率を与えるレンズ用樹脂の1種として、イソシアナート化合物とジエチレングリコールなどのヒドロキシ化合物との反応(特開昭 57-136601)、もしくは、テトラブロモビスフェノールAなどのハロゲン原子を含有するヒドロキシ化合物との反応(特開昭58-164615 )やジフェニルスルフィド骨格を含有するヒドロキシ化合物との反応(特開昭 60-194401)により得られるポリウレタン系の樹脂等が知られている。しかしながら、これらの公知の樹脂によるレンズは、D.A.C.を用いたレンズよりも屈折率は向上するものの、まだ屈折率の点で不充分であったり、また屈折率を向上させるべく、分子内に多数のハロゲン原子或いは芳香環を有する化合物を用いている為に、耐候性が悪い、あるいは比重が大きいといった欠点を有している。
【0004】また、本発明者らは、高屈折率レンズ用樹脂として、イソシアナート化合物と硫黄原子を含有するヒドロキシ化合物との反応(特開昭 60-217229)、さらにはポリチオール化合物との反応(特開昭60-199016 、特開昭62-267316 、特開昭63-46213)より得られるポリウレタン系の樹脂等を先に提案した。しかし、この樹脂によるプラスチックレンズも、屈折率的にはなお高度なものとは言えず、また染色、コート等後加工段階での耐熱性に問題があった。さらにまた、本発明者らは、新規なメルカプト化合物として1,2-ビス[(2-メルカプトエチル)チオ]-3- メルカプトプロパンを出願したが(特開平 2-270859 号)、この化合物はレンズ用として最も一般に用いられるm-キシリレンジイソシアナートと重合させた場合、得られる樹脂の耐熱温度は98℃であり、耐熱性の更なる改良が望まれていた。即ち、具体的には、プラスチックレンズの染色は、通常90〜95℃の染色浴中で行なわれるため、耐熱温度100℃以上のものが望まれていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、耐熱性に優れた高屈折率プラスチックレンズを与える新規な樹脂あるいはその原料となる化合物を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記の目的を達成すべく、さらに検討を行った結果、本発明のメルカプト化合物、およびそれを用いた樹脂を見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、式(1)(化2)で示される2,5−ビス(メルカプトメチル)−2,5−ジメチル−1,4−ジチアン、この化合物を含むポリチオール化合物成分(イ)と、ポリイソシアナート化合物、ポリイソチオシアナート化合物、イソシアナート基を有するイソチオシアナート化合物から選ばれた少なくとも一種の化合物を含む成分(ロ)を反応させて得られる樹脂ならびにその樹脂からなるレンズに関するものである。
【0007】
【化2】


本発明のポリチオール化合物は、脂環式スルフィドである1,4-ジチアン環を有することを特徴とする。この1,4-ジチアン環は、このポリチオール化合物を用いた樹脂の屈折率、アッベ数を高めることができ、さらに高耐熱性、優れた機械的物性を与えることができる。1,4-ジチアン環を有するポリチオール化合物については、特開平3−236386が出願されているが、本発明のポリチオール化合物は、その化合物に較べて、より高い耐熱性を得ることができる。これは本発明のポリチオール化合物は、1,4−ジチアン環の2位及び5位にメチル基を持つため、その結果四級炭素の数が増加し、より高い耐熱性を与えるためと推測される。
【0008】本発明の2,5−ビス(メルカプトメチル)−2,5−ジメチル−1,4−ジチアンは、ハロゲン化物である2,5−ビス(ハロゲノメチル)−2,5−ジメチル−1,4−ジチアンを、チオ尿素、チオール酢酸カリウム、チオシアン酸ナトリウム、水硫化ナトリウム、トリチオ炭酸ナトリウムから選ばれるチオール化剤と反応させた後、酸、またはアルカリで加水分解することにより得られる。2,5−ビス(ハロゲノメチル)−2,5−ジメチル−1,4−ジチアンは、まず、硫化ナトリウムと硫黄、あるいは水硫化ナトリウムと硫黄から二硫化二ナトリウムを得、これとメタリルクロライドを反応させメタリルジスルフィドとし、次いで、これを環化二量化して得ることができる。例えば、2,5−ビス(クロロメチル)−2,5−ジメチル−1,4−ジチアンの場合には、ジャーナル・オブ・オルガニック・ケミストリー(The Journal of Organic Chemistry )34(11), 3389-3391, (1969) に示されているように、メチレンクロライド中で、炭酸カルシウムの存在下、ジメタリルジスルフィドにスルフリルクロライドを−20℃で滴下、さらに−15℃で6時間反応させて得ることができる。また、2,5−ビス(ブロモメチル)−2,5−ジメチル−1,4−ジチアンの場合には、メチレンクロライド中で、ジメタリルジスルフィドに臭素を−78℃で滴下、さらに−20℃で8時間反応させた後に溶媒を留去して得ることができる。
【0009】本発明の1,4−ジチアン化合物は、前記のハロゲン化物に、チオ尿素、チオール酢酸カリウム、チオシアン酸ナトリウム、水硫化ナトリウム、トリチオ炭酸ナトリウム等を反応させた後、酸、またはアルカリ加水分解して得ることができる。この反応の反応溶媒としては、アルコール、水などの極性溶媒や、DMF、DMI、DMSOなどの非プロトン性極性溶媒を用いる。例えば、チオ尿素を用いる場合には、2,5−ビス(クロロメチル)−2,5−ジメチル−1,4−ジチアン1モルに対して、チオ尿素を2モル以上用い、アルコール中で還流下、1〜6時間反応させた後、沈澱物を濾別、洗浄、乾燥してチウロニウム塩を得る。これを、アルコール、または水に分散させ、アルカリ加水分解した後、酸で酸性にして、ベンゼン、トルエンなどの有機溶媒で抽出後、必要に応じて、アルカリ洗浄、水洗等の一般的手法を施した後、有機溶媒を留去して得ることができる。アルカリ加水分解では、トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基や、アンモニア等を用いる。この時の反応温度は、用いる塩基によって適宜決められるが、40〜120℃が好ましい。
【0010】本発明に於いて原料として用いるポリイソシアナート化合物としては、例えば、エチレンジイソシアナート、トリメチレンジイソシアナート、テトラメチレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、オクタメチレンジイソシアナート、ノナメチレンジイソシアナート、 2,2'-ジメチルペンタンジイソシアナート、2,2,4-トリメチルヘキサンジイソシアナート、デカメチレンジイソシアナート、ブテンジイソシアナート、1,3-ブタジエン-1,4 -ジイソシアナート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、1,6,11−ウンデカトリイソシアナート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアナート、1,8-ジイソシアナート-4−イソシアナートメチルオクタン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアナート-5−イソシアナートメチルオクタン、ビス(イソシアナートエチル)カーボネート、ビス(イソシアナートエチル)エーテル、1,4-ブチレングリコールジプロピルエーテル−ω,ω’−ジイソシアナート、リジンジイソシアナートメチルエステル、リジントリイソシアナート、2-イソシアナートエチル -2,6-ジイソシアナートヘキサノエート、2-イソシアナートプロピル-2,6- ジイソシアナートヘキサノエート、キシリレンジイソシアナート、ビス(イソシアナートエチル)ベンゼン、ビス(イソシアナートプロピル)ベンゼン、α,α,α',α'-テトラメチルキシリレンジイソシアナート、ビス(イソシアナートブチル)ベンゼン、ビス(イソシアナートメチル)ナフタリン、ビス(イソシアナートメチル)ジフェニルエーテル、ビス(イソシアナートエチル)フタレート、メシチリレントリイソシアナート、2,6-ジ(イソシアナートメチル)フラン、等の脂肪族ポリイソシアナート、
【0011】イソホロンジイソシアナート、ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、シクロヘキサンジイソシアナート、メチルシクロヘキサンジイソシアナート、ジシクロヘキシルジメチルメタンジイソシアナート、2,2'−ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、ビス(4-イソシアナート-n- ブチリデン)ペンタエリスリトール、ダイマ酸ジイソシアナート、2-イソシアナートメチル-3- (3-イソシアナートプロピル)-5-イソシアナートメチル−ビシクロ[2,2,1]-ヘプタン、2-イソシアナートメチル-3-(3-イソシアナートプロピル)-6−イソシアナートメチル−ビシクロ-[2,2,1]−ヘプタン、2-イソシアナートメチル -2-(3-イソシアナートプロピル)-5-イソシアナートメチル−ビシクロ-[2,2,1]−ヘプタン、2-イソシアナートメチル-2-(3-イソシアナートプロピル)-6- イソシアナートメチル−ビシクロ-[2,2,1]−ヘプタン、2-イソシアナートメチル-3-(3-イソシアナートプロピル)-5-(2-イソシアナートエチル)−ビシクロ-[2,2,1]−ヘプタン、2-イソシアナートメチル-3-(3-イソシアナートプロピル)-6-(2-イソシアナートエチル)−ビシクロ-[2,2,1]−ヘプタン、2-イソシアナートメチル-2-(3-イソシアナートプロピル)-5-(2-イソシアナートエチル)−ビシクロ-[2,2,1]−ヘプタン、2-イソシアナートメチル-2-(3-イソシアナートプロピル)-6-(2-イソシアナートエチル)−ビシクロ-[2,2,1]−ヘプタン等の脂環族ポリイソシアナート、
【0012】フェニレンジイソシアナート、トリレンジイソシアナート、エチルフェニレンジイソシアナート、イソプロピルフェニレンジイソシアナート、ジメチルフェニレンジイソシアナート、ジエチルフェニレンジイソシアナート、ジイソプロピルフェニレンジイソシアナート、トリメチルベンゼントリイソシアナート、ベンゼントリイソシアナート、ナフタリンジイソシアナート、メチルナフタレンジイソシアナート、ビフェニルジイソシアナート、トルイジンジイソシアナート、 4,4'-ジフェニルメタンジイソシアナート、3,3'−ジメチルジフェニルメタン-4,4'-ジイソシアナート、ビベンジル 4,4'-ジイソシアナート、ビス(イソシアナートフェニル)エチレン、3,3'−ジメトキシビフェニル-4,4'-ジイソシアナート、トリフェニルメタントリイソシアナート、ポリメリックMDI、ナフタリントリイソシアナート、ジフェニルメタン-2,4,4'-トリイソシアナート、3-メチルジフェニルメタン-4,6,4'-トリイソシアナート、4-メチル−ジフェニルメタン− 3,5,2',4',6'-ペンタイソシアナート、フェニルイソシアナートメチルイソシアナート、フェニルイソシアナートエチルイソシアナート、テトラヒドロナフチレンジイソシアナート、ヘキサヒドロベンゼンジイソシアナート、ヘキサヒドロジフェニルメタン-4,4'-ジイソシアナート、ジフェニルエーテルジイソシアナート、エチレングリコールジフェニルエーテルジイソシアナート、1,3-プロピレングリコールジフェニルエーテルジイソシアナート、ベンゾフェノンジイソシアナート、ジエチレングリコールジフェニルエーテルジイソシアナート、ジベンゾフランジイソシアナート、カルバゾールジイソシアナート、エチルカルバゾールジイソシアナート、ジクロロカルバゾールジイソシアナート、等の芳香族ポリイソシアナートチオジエチルジイソシアナート、チオジプロピルジイソシアナート、チオジヘキシルジイソシアナート、ジメチルスルフォンジイソシアナート、ジチオジメチルジイソシアナート、ジチオジエチルジイソシアナート、ジチオジプロピルジイソシアナート等の含硫脂肪族イソシアナート、ジフェニルスルフィド-2,4'-ジイソシアナート、ジフェニルスルフィド-4,4'-ジイソシアナート、3,3'−ジメトキシ-4,4'-ジイソシアナートジベンジルチオエーテル、ビス(4-イソシアナートメチルベンゼン)スルフィド、4,4'−メトキシベンゼンチオエチレングリコール-3,3'-ジイソシアナートなどの芳香族スルフィド系イソシアナート、ジフェニルジスルフィド-4,4'-ジイソシアナート、2,2'−ジメチルジフェニルジスルフィド-5,5'-ジイソシアナート、3,3'−ジメチルジフェニルジスルフィド−5,5'−ジイソシアナート、3,3'−ジメチルジフェニルジスルフィド -6,6'−ジイソシアナート、4,4'−ジメチルジフェニルジスルフィド−5,5'−ジイソシアナート、3,3'−ジメトキシジフェニルジスルフィド−4,4'−ジイソシアナート、4,4'−ジメトキシジフェニルジスルフィド-3,3'-ジイソシアナートなどの芳香族ジスルフィド系イソシアナート、
【0013】ジフェニルスルホン-4,4'-ジイソシアナート、ジフェニルスルホン-3,3'-ジイソシアナート、ベンジディンスルホン-4,4'-ジイソシアナート、ジフェニルメタンスルホン-4,4'-ジイソシアナート、4-メチルジフェニルスルホン -2,4'−ジイソシアナート、4,4'−ジメトキシジフェニルスルホン -3,3'−ジイソシアナート、3,3'−ジメトキシ-4,4'-ジイソシアナートジベンジルスルホン、 4,4'-ジメチルジフェニルスルホン-3,3'-ジイソシアナート、4,4'−ジ tert-ブチルジフェニルスルホン-3,3'-ジイソシアナート、4,4'−メトキシベンゼンエチレンジスルホン-3,3'-ジイソシアナート、4,4'−ジクロロジフェニルスルホン-3,3'-ジイソシアナートなどの芳香族スルホン系イソシアナート、4-メチル -3-イソシアナートベンゼンスルホニル-4'-イソシアナートフェノールエステル、4-メトキシ-3−イソシアナートベンゼンスルホニル-4'-イソシアナートフェノールエステルなどのスルホン酸エステル系イソシアナート、4-メチル-3−イソシアナートベンゼンスルホニルアニリド−3'−メチル-4'-イソシアナート、ジベンゼンスルホニル‐エチレンジアミン-4,4'-ジイソシアナート、 4,4'-メトキシベンゼンスルホニル‐エチレンジアミン-3,3'-ジイソシアナート、4-メチル-3−イソシアナートベンゼンスルホニルアニリド-4−メチル-3'-イソシアナートなどの芳香族スルホン酸アミド、チオフェン−2,5-ジイソシアナート等の含硫複素環化合物、1,4−ジチアン-2,5−ジイソシアナートなどが挙げられる。またこれらの塩素置換体、臭素置換体等のハロゲン置換体、アルキル置換体、アルコキシ置換体、ニトロ置換体や、多価アルコールとのプレポリマー型変性体、カルボジイミド変性体、ウレア変性体、ビウレット変性体、ダイマー化あるいはトリマー化反応生成物等もまた使用できる。
【0014】本発明に於いて原料として用いられるポリイソチオシアナート化合物は、一分子中に-NCS基を2つ以上含有する化合物であり、さらにイソチオシアナート基の他に硫黄原子を含有していてもよい。具体的には、例えば、1,2-ジイソチオシアナートエタン、1,3-ジイソチオシアナートプロパン、1,4-ジイソチオシアナートブタン、1,6-ジイソチオシアナートヘキサン、p-フェニレンジイソプロピリデンジイソチオシアナート等の脂肪族イソチオシアナート、シクロヘキサンジイソチオシアナート等の脂環族イソチオシアナート、1,2-ジイソチオシアナートベンゼン、1,3-ジイソチオシアナートベンゼン、1,4-ジイソチオシアナートベンゼン、2,4-ジイソチオシアナートトルエン、2,5-ジイソチオシアナート -m-キシレン、4,4'−ジイソチオシアナート-1,1'-ビフェニル、1,1'−メチレンビス(4-イソチオシアナートベンゼン)、1,1'−メチレンビス(4-イソチオシアナート-2−メチルベンゼン)、1,1'−メチレンビス(4-イソチオシアナート-3−メチルベンゼン)、1,1'−(1,2-エタンジイル)ビス(4-イソチオシアナートベンゼン)、4,4'−ジイソチオシアナートベンゾフェノン、4,4'−ジイソチオシアナート -3,3'−ジメチルベンゾフェノン、ベンズアニリド−3,4'- ジイソチオシアナート、ジフェニルエーテル-4,4'-ジイソチオシアナート、ジフェニルアミン-4,4'-ジイソチオシアナート等の芳香族イソチオシアナート、2,4,6−トリイソチオシアナート-1,3,5−トリアジン等の複素環含有イソチオシアナート、さらには、ヘキサンジオイルジイソチオシアナート、ノナンジオイルジイソチオシアナート、カルボニックジイソチオシアナート、1,3-ベンゼンジカルボニルジイソチオシアナート、1,4-ベンゼンジカルボニルジイソチオシアナート、(2,2'-ビピリジン)-4,4'-ジカルボニルジイソチオシアナート等のカルボニルイソチオシアナート等が挙げられる。
【0015】本発明に於いて原料として用いるイソチオシアナート基の他に1つ以上の硫黄原子を含有する2官能以上のポリイソチオシアナートとしては、例えば、チオビス(3-イソチオシアナートプロパン)、チオビス(2-イソチオシアナートエタン)、ジチオビス(2-イソチオシアナートエタン)などの含硫脂肪族イソチオシアナート、1-イソチオシアナート-4-[(2- イソチオシアナート)スルホニル]ベンゼン、チオビス(4-イソチオシアナートベンゼン)、スルホニルビス(4-イソチオシアナートベンゼン)、スルフィニルビス(4-イソチオシアナートベンゼン)、ジチオビス(4-イソチオシアナートベンゼン)、4-イソチオシアナート-1−[(4−イソチオシアナートフェニル)スルホニル]-2−メトキシ‐ベンゼン、4-メチル-3- イソチオシアナートベンゼンスルホニル-4'-イソチオシアナートフェニルエステル、4-メチル-3−イソチオシアナートベンゼンスルホニルアニリド−3'-メチル-4'-イソチオシアナートなどの含硫芳香族イソチオシアナート、チオフェノン-2,5−ジイソチオシアナート、1,4-ジチアン-2,5−ジイソチオシアナートなどの含硫複素環化合物等が挙げられる。さらにこれらのポリイソチオシアナートの塩素置換体、臭素置換体等のハロゲン置換体、アルキル置換体、アルコキシ置換体、ニトロ置換体や、多価アルコールとのプレポリマー型変性体、カルボジイミド変性体、ウレア変性体、ビウレット変性体、ダイマー化あるいはトリマー化反応生成物等もまた使用できる。
【0016】本発明に於いて原料として用いるイソシアナート基を有するイソチオシアナート化合物としては、例えば、1-イソシアナート-3−イソチオシアナートプロパン、1-イソシアナート-5−イソチオシアナートペンタン、1-イソシアナート-6−イソチオシアナートヘキサン、イソチオシアナートカルボニルイソシアナート、1-イソシアナート-4−イソチオシアナートシクロヘキサンなどの脂肪族あるいは脂環族化合物、1-イソシアナート-4−イソチオシアナートベンゼン、4-メチル−3−イソシアナート-1−イソチオシアナートベンゼンなどの芳香族化合物、2-イソシアナート-4,6−ジイソチオシアナート-1,3,5−トリアジンなどの複素環式化合物、さらには4-イソシアナート-4'-イソチオシアナートジフェニルスルフィド、2-イソシアナート-2'-イソチオシアナートジエチルジスルフィド等のイソチオシアナート基以外にも硫黄原子を含有する化合物等が挙げられる。さらにこれら化合物の塩素置換体、臭素置換体等のハロゲン置換体、アルキル置換体、アルコキシ置換体、ニトロ置換体、多価アルコールとのプレポリマー型変性体、カルボジイミド変性体、ウレア変性体、ビウレット変性体、ダイマー化あるいはトリマー化反応生成物等もまた使用できる。これらの化合物は、それぞれ単独で用いても、また二種類以上を混合して用いてもよい。
【0017】これらイソシアナートまたはイソチオシアナート化合物と式(1)で表される1,4−ジチアン化合物を含むポリチオール化合物との使用割合は、(NCO+NCS)/SH(官能基)モル比が通常 0.5〜 3.0の範囲内、好ましくは 0.5〜 1.5の範囲内である。本発明で用いるポリチオール化合物は、式(1)で表される1,4−ジチアン化合物単独でも、また、1,4−ジチアン化合物と他の公知のチオール化合物との混合物でもよい。本発明は、式(1)で表される1,4−ジチアン化合物を用いることにより、耐熱性に優れた樹脂を得ることを可能にするものである。本発明において、式(1)で表される1,4−ジチアン化合物の使用量は、使用する原料モノマーの種類や、必要とされる耐熱性の程度により、適宜決められるが、好ましくは、全メルカプト化合物の5モル%以上、さらに好ましくは、20モル%以上である。
【0018】本発明の樹脂は、通常、注型重合により得られる。具体的には、イソシアナートまたはイソチオシアナート化合物と式(1)で表される1,4−ジチアン化合物を含むポリチオール化合物とを混合し、この混合液を必要に応じ適当な方法で脱泡を行なった後、モールド中に注入し、通常、低温から高温に徐々に昇温しながら重合させる。重合温度及び重合時間は、モノマーの組成、添加剤の種類、量によっても異なるが、一般的には20℃程度から開始し、120 ℃程度まで8〜24時間で昇温する。この際、重合後の離型性を容易にするため、モールドに公知の離型処理を施しても差し支えない。また、目的に応じて、公知の成形法におけると同様に、内部離型剤、鎖延長剤、架橋剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、油溶染料、充填剤などの種々の物質を添加してもよい。さらに、所望の反応速度に調整するために、ポリウレタンの製造において用いられる公知の反応触媒を適宜に添加することもできる。
【0019】本発明の樹脂は、チオカルバミン酸S−アルキルエステル系樹脂又はジチオウレタン系樹脂を素材とするものであり、イソシアナート基とメルカプト基によるチオカルバミン酸S−アルキルエステル結合又はイソチオシアナート基とメルカプト基によるジチオウレタン結合を主体とするが、目的によっては、それ以外にアロハネート結合、ウレヤ結合、チオウレヤ結合、ビウレット結合等を含有しても、勿論差し支えない。たとえば、チオカルバミン酸S−アルキルエステル結合に、さらにイソシアナート基を反応させたり、ジチオウレタン結合にさらにイソチオシアナート基を反応させて架橋密度を増大させることは好ましい結果を与える場合が多い。この場合には反応温度を少なくとも 100℃以上に高くし、イソシアナート成分又はイソチオシアナート成分を多く使用する。あるいはまた、アミン等を一部併用し、ウレヤ結合、ビウレット結合を利用することもできる。このようにイソシアナート化合物又はイソチオシアナート化合物と反応するメルカプト化合物以外のものを使用する場合には、特に着色の点に留意する必要がある。このようにして得られる本発明の含硫ウレタン系樹脂は、モノマー取り扱い時の硫黄臭による不快感や、後加工時の硫黄臭による不快感が無く、物性的には極めて低分散、高屈折率、耐熱性に優れ、かつ無色透明であり、軽量で、耐候性、耐衝撃性等に優れた特徴を有しており、眼鏡レンズ、カメラレンズ等の光学素子材料やグレージング材料、塗料、接着剤の材料として好適である。本発明の含硫ウレタン系樹脂を素材とするレンズは、必要に応じ、反射防止、高硬度付与、耐摩耗性向上、耐薬品性向上、防曇性付与、あるいはファッション性付与等の改良を行うため、表面研磨、帯電防止処理、ハードコート処理、無反射コート処理、染色処理、調光処理等の物理的あるいは化学処理を施すことができる。
【0020】
【実施例】以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこの実施例によって何等限定されるものではない。尚、実施例中に示す部は重量部を示す。
実施例1ジメタリルジスルフィド109.5部(0.63モル)を1750mlのメチレンクロライドに溶解し、炭酸カルシウム2.0部を加えて、−20℃に冷却した。この溶液にスルフリルクロライド84.8部(0.63モル)を1時間かけて滴下し、さらに、−15℃で6時間撹拌した。吸引濾過した後、メチレンクロライドを減圧留去した。その残渣に400mlのエタノールとチオ尿素114.7部(1.51モル)を加え、還流下で3時間反応させた。これを冷却した後、生成した沈澱物を濾別し、少量のエタノールで数回洗浄した後に乾燥した。この沈澱物を水300部に分散させ、28%アンモニア水204.4部を滴下し、60℃で2時間加水分解した。冷却した後、塩酸で酸性にしてトルエンで抽出した。トルエン層を水で数回洗浄した後、分取して、トルエンを減圧留去し、白色結晶の2,5−ビス(メルカプトメチル)−2,5−ジメチル−1,4−ジチアン103.1部(0.43モル、収率68.3%)を得た。融点は124〜126℃であった。
元素分析 (C8 164 として)
計算値 39.96% 6.71% 53.34% 測定値 39.72% 6.80% 53.39% 1H−NMR (CDCl3
δ=1.27(s,3H)、1.44(t,1H)、2.71〜3.54(m,4H)
【0021】実施例2ジメタリルジスルフィド105.6部(0.61モル)を1750mlのメチレンクロライドに溶解し、−78℃に冷却した。この溶液に臭素を1時間かけて滴下し、さらに、−15℃で8時間撹拌した。メチレンクロライドを減圧留去した後、その残渣に400mlのエタノールとチオ尿素110.6部(1.45モル)を加え、還流下で3時間反応させた。これを冷却した後、生成した沈澱物を濾別し、少量のエタノールで数回洗浄した後に乾燥した。この沈澱物を水300部に分散させ、50%水酸化ナトリウム水溶液126.0部を滴下し、これを還流下で2時間加水分解した。冷却した後、塩酸で酸性にしてトルエンで抽出した。トルエン層を水で数回洗浄した後、分取して、トルエンを減圧留去し、白色結晶の2,5−ビス(メルカプトメチル)−2,5−ジメチル−1,4−ジチアン95.9部(0.40モル、収率65.8%)を得た。融点は124〜126℃であった。
【0022】実施例32,5−ビス(メルカプトメチル)−2,5−ジメチル−1,4−ジチアン15.2重量部(0.06モル)、m-キシリレンジイソシアナート35.9重量部(0.19モル)、1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパン22.1重量部(0.08モル)、ジブチルチンジラウレート0.1重量%を混合し、均一とし、十分に脱泡した後、離型処理を施したガラスモールドとガスケットよりなるモールド型に注入した。次いで、40℃から120℃まで徐々に昇温しながら20時間かけて加熱硬化させた。重合終了後、徐々に冷却し、重合体をモールドより取り出した。こうして得られた樹脂は、無色透明で耐衝撃性に優れ、屈折率nd =1.65、アッベ数νd =32、熱変形開始温度は108℃であった。
【0023】比較例1m-キシリレンジイソシアナート41.7重量部(0.22モル)、1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパン38.3重量部(0.15モル)、ジブチルチンジラウレート0.1重量%を混合し均一とし、十分に脱泡した後、離型処理を施したガラスモールドとガスケットよりなるモールド型に注入した。次いで、40℃から120℃まで徐々に昇温しながら20時間かけて加熱硬化させた。重合終了後、徐々に冷却し、重合体をモールドより取り出した。こうして得られた樹脂は、無色透明で耐衝撃性に優れ、屈折率nd =1.66、アッベ数νd =32、熱変形開始温度は93℃であった。
【0024】
【発明の効果】本発明の 1,4- ジチアン化合物を含むメルカプトル化合物を用いて得られる含硫ウレタン樹脂からなるレンズは、極めて耐熱性に優れた高屈折率プラスチックレンズである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 式(1)(化1)で表される2,5−ビス(メルカプトメチル)−2,5−ジメチル−1,4−ジチアン。
【化1】


【請求項2】 2,5−ビス(メルカプトメチル)−2,5−ジメチル−1,4−ジチアンを含むポリチオール化合物成分(イ)と、ポリイソシアナート化合物、ポリイソチオシアナート化合物、イソシアナート基を有するイソチオシアナート化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物を含む成分(ロ)を反応させて得られる樹脂。
【請求項3】 請求項2記載の樹脂からなるレンズ。