説明

ポリチオール化合物

【構成】 一般式[1]
【化1】


[式中、Xは−(CH2 CH2 S)n2 −Hであり、n1 は1〜5の整数であり、n2 は0〜2の整数である]で示されることを特徴とするポリチオール化合物。
【効果】 本発明の新規ポリチオール化合物は、屈折率及びアッベ数が高い。従ってこのポリチオール化合物を原料として用いて得られた重合体からなる光学材料は、屈折率、アッベ数が高く、耐熱性、耐候性、透明性に優れているので眼鏡レンズ、カメラレンズ等のレンズ、プリズムや、光ファイバー、光ディスク、磁気ディスク等に用いられる記録媒体基板、着色フィルター、赤外線吸収フィルター等の光学製品に好ましく用いられる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はポリチオール化合物に関する。本発明のポリチオール化合物は例えば光学材料の有用な原料として用いられ、本発明のポリチオール化合物を用いて得られた光学材料は、高屈折率、低分散を示し、光学的特性に優れており、プラスチックレンズ、プリズム、光ファイバー、情報記録用基板、着色フィルター、赤外線吸収フィルターなどの光学製品に好ましく用いられる。さらに、高屈折率の特徴を生かしたグラス、花ビン等の装飾品等にも用いられる。
【0002】
【従来の技術】プラスチックはガラスに比べると軽量で割れにくく、染色が容易なため近年、各種レンズ等の光学用途に使用されている。このためのプラスチック材料としてはポリエチレングリコールビスアリルカーボネート(CR−39)やポリメチルメタクリレート(PMMA)が一般に用いられている。しかし、これらのプラスチック材料の屈折率は1.50以下であり例えばレンズ材料に用いた場合度数が強くなるとレンズの肉厚を厚くしなければならなくなり、軽量といったプラスチックの優位性が失われるばかりでなく、眼鏡用レンズとした場合は審美性が悪くなるので好ましくなかった。また特に、凹レンズの場合はレンズの周囲の厚さが厚くなり複屈折や色収差が生じ、好ましくなかった。そのため、比重の低いプラスチックの特徴を生かしつつ、レンズの厚さを薄くでき、かつ色収差の少ない高屈折率、低分散プラスチック材料が望まれている。そのための材料としては、テトラクロロメタキシリレンジチオールや1,3,5−トリメルカプトベンゼンと、ジイソシアネート化合物との重合体が特開昭63−46213号公報に開示されている。また、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネートとジイソシアネートとの重合体が特開昭64−26622号公報に開示されている。さらには、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネートとビニル化合物との重合体が特開昭63−309509号公報に開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記特開昭63−46213号公報に記載のチオール化合物は屈折率が高いもののアッベ数が低く、またこれを原料とした重合体はアッベ数が低く、また耐候性に劣るといった欠点がある。また、特開昭64−26622号公報や特開昭63−309509号公報に記載のチオール化合物はアッベ数が大きいものの屈折率が低く、またこれを原料とした重合体は屈折率が低く、また耐熱性に劣るといった欠点がある。
【0004】従って、本発明の目的は上記欠点を解消した光学材料を得るに好適な新規なポリチオール化合物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の目的を達成するためになされたものであり、本発明の新規なチオール化合物は一般式[1]で示されることを特徴とする。
【0006】
【化2】


[式中、Xは−(CH2 CH2 S)n2 −Hであり、n1 は1〜5の整数であり、n2 は0〜2の整数である]以下、本発明を詳細に説明する。本発明の新規ポリチオール化合物は、上記の一般式[1]で示されるように、脂環式スルフィドである1,4−ジチアン環を有し、かつこの1,4−ジチアン環の2,5−位にアルキレン基または含硫黄アルキレン基を介して、それぞれチオール基が結合していることを特徴としている。このような構造を有するポリチオール化合物は、それ自体の屈折率及びアッベ数が高いので、このポリチオール化合物を用いて重合体を製造した場合に、重合体の屈折率及びアッベ数も高いものとなる。またこのポリチオール化合物中の1,4−ジチアン環は剛直であるため、このポリチオール化合物を用いて重合体を製造した場合、その重合体に高耐熱性、優れた機械的物性を与える。
【0007】次に一般式[1]においてn1 が1から5、n2 が0から2の整数に限定した理由を述べる。n1 が0では、ポリチオール化合物を用いて得られる重合体がもろくなり、耐衝撃性が低下し、一方n1 が6以上となると、ポリチオール化合物の屈折率が低下し、得られる重合体の屈折率が低下し、耐熱性も低下する傾向にあり好ましくない。また、n2 が3以上になると、ポリチオール化合物を用いて得られる重合体の耐熱性が低下するので好ましくない。
【0008】本発明のポリチオール化合物は一般式[1]において、例えばXが水素原子(n2 =0)、n1 =1の場合、次式に示される方法により合成することができる。
【0009】
【化3】


すなわち、ジアリルジスルフィドに臭素を反応させ、環化二量化した臭素化物にチオ尿素を反応させイソチウロニウム塩を生成させる。このものを水酸化ナトリウム水溶液で加水分解した後、塩酸酸性にすることにより目的とするポリチオール化合物を得ることができる。
【0010】上記でその合成方法を示した、Xが水素原子(n2 =0)、n1 =1のチオール化合物以外の、一般式[1]のポリチオール化合物として以下のものが挙げられる。
【0011】
【化4】


次に本発明のポリチオール化合物を用いて得られる光学材料の好ましい具体例について述べる。この光学材料は、上記一般式[1]で示されたポリチオール化合物(a1 )を少なくとも含む成分(A)と、一分子内に二つ以上のビニル基を有する化合物(b1 )、一分子内に二つ以上のイソ(チオ)シアネート基を有する化合物(b2 )及び一分子内に一つ以上のビニル基と一つ以上のイソ(チオ)シアネート基を有する化合物(b3 )のうちの少なくとも一種を含む成分(B)とを少なくとも含む混合物を重合させることにより得られる重合体を使用する。ここに成分(A)中の一般式[1]の化合物(a1 )については、既に詳述したので、その説明を省略する。
【0012】成分(A)中には、重合体の物性等を適宜改良するために、一般式[1]で示される化合物(a1 )以外に、一分子内にメルカプト基および/またはヒドロキシ基を有し、かつ一分子内のメルカプト基とヒドロキシ基の総数が2以上の化合物(a2 )を一種もしくは二種以上含んでいてもよい。この化合物(a2 )としては、具体的にはトリメチロールプロパン、1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、テトラキスメルカプトメチルメタン、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトアセテート、2−メルカプトエタノール、2,3−ジメルカプトプロパノール、1,2−ジヒドロキシ−3−メルカプトプロパン、4−メルカプトフェノール、1,2−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジチオール、1,4−ベンゼンジチオール、1,3,5−ベンゼントリチオール、1,2−ジメルカプトメチルベンゼン、1,3−ジメルカプトメチルベンゼン、1,4−ジメルカプトメチルベンゼン、1,3,5−トリメルカプトメチルベンゼン、トルエン−3,4−ジチオール、4,4′−ジヒドロキシフェニルスルフィド等が挙げられる。
【0013】なお一般式[1]で示される化合物(a1 )の使用量は、成分(A)の総量に対して、0.1−100mol%であり、好ましくは10−100mol%である。
【0014】成分(B)に使用されるビニル基含有化合物(b1 )としては、具体的にはジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、一分子内に少なくとも二つ以上の(メタ)アクリロキシ基を含むウレタン変性(メタ)アクリレート、エポキシ変性(メタ)アクリレート、ポリエステル変性(メタ)アクリレート等が挙げられる。(なお、上記(メタ)アクリレートはアクリレートとメタクリレートの両者を意味し、(メタ)アクリロキシ基は、アクリロキシ基とメタクリロキシ基の両者を意味する。)また成分(B)に使用されるイソ(チオ)シアネート基含有化合物(b2 )としてはキシリレンジイソ(チオ)シアネート、3,3′−ジクロロジフェニル−4,4′−ジイソ(チオ)シアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソ(チオ)シアネート、ヘキサメチレンジイソ(チオ)シアネート、2,2′,5,5′−テトラクロロジフェニル−4,4′−ジイソ(チオ)シアネート、トリレンジイソ(チオ)シアネート等が挙げられる。なお、本明細書においてイソ(チオ)シアネートとはイソシアネートとイソチオシアネートの両者を意味する。さらに、一つ以上のシクロヘキシル環を有するものとして、ビス(イソ(チオ)シアネートメチル)シクロヘキサン、ビス(4−イソ(チオ)シアネートシクロヘキシル)メタン、ビス(4−イソ(チオ)シアネートメチルシクロヘキシル)メタン、シクロヘキサンジイソ(チオ)シアネート、イソフォロンジイソ(チオ)シアネート、2,5−ビス(イソ(チオ)シアネートメチル)ビシクロ[2,2,2]オクタン、2,5−ビス(イソ(チオ)シアネートメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2−イソ(チオ)シアネートメチル−3−(3−イソ(チオ)シアネートプロピル)−5−イソ(チオ)シアネートメチル−ビシクロ[2,2,1]−ヘプタン、2−イソ(チオ)シアネートメチル−3−(3−イソ(チオ)シアネートプロピル)−6−イソ(チオ)シアネートメチル−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2−イソ(チオ)シアネートメチル−2−[3−イソ(チオ)シアネートプロピル]−5−イソ(チオ)シアネートメチル−ビシクロ[2,2,1]−ヘプタン、2−イソ(チオ)シアネートメチル−2−(3−イソ(チオ)シアネートプロピル)−6−イソ(チオ)シアネートメチル−ビシクロ[2,2,1]−ヘプタン、2−イソ(チオ)シアネートメチル−3−(3−イソ(チオ)シアネートプロピル)−6−(2−イソ(チオ)シアネートエチル)−ビシクロ[2,2,1]−ヘプタン、2−イソ(チオ)シアネートメチル−3−(3−イソ(チオ)シアネートプロピル)−6−(2−イソ(チオ)シアネートエチル)−ビシクロ[2,2,1]−ヘプタン、2−イソ(チオ)シアネートメチル−2−(3−イソ(チオ)シアネートプロピル)−5−(2−イソ(チオ)シアネートエチル)−ビシクロ[2,2,1]−ヘプタン、2−イソ(チオ)シアネートメチル−2−(3−イソ(チオ)シアネートプロピル)−6−(2−イソ(チオ)シアネートエチル)−ビシクロ[2,2,1]−ヘプタン等が挙げられる。
【0015】また、成分(B)に使用されるビニル基およびイソ(チオ)シアネ−ト基含有化合物(b3 )としては、2−(メタ)アクリロキシエチルイソ(チオ)シアネート、(メタ)アクリロイルイソ(チオ)シアネート等が挙げられる。
【0016】成分(B)中にビニル基が混入している場合は成分(A)の重合官能基が全てメルカプト基であるのが好ましく、成分(A)中にヒドロキシ基が混入していると重合度が上がらず、得られた重合体の機械物性の低下を招く場合がある。
【0017】光学材料を製造するに際して、上記成分(A)および成分(B)以外に、他のモノマーも適宜使用することができる。
【0018】さらに、耐候性改良のため、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色防止剤、蛍光染料などの添加剤を適宜加えてもよい。また、重合反応性向上のための触媒を適宜使用してもよく、例えばメルカプト基とビニル基との反応性向上のためには有機過酸化物、アゾ化合物や塩基性触媒が効果的であり、メルカプト基やヒドロキシ基と、イソ(チオ)シアネート基との反応性向上のためには有機スズ化合物、アミン化合物などが効果的である。
【0019】一例として本発明のポリチオール化合物を用いて光学材料を製造するための方法について述べると以下の通りである。上記成分(A)、成分(B)及び添加剤や触媒の均一混合物を公知の注型重合法、すなわちガラス製または金属製のモールドと樹脂製のガスケットを組合せた型の中に注入し、加熱して硬化させる。この時、成形後の樹脂の取り出しを容易にするためにあらかじめモールドを離型処理したり、成分(A)及び成分(B)の混合物中に離型剤を混合してもよい。重合温度は、使用する化合物により異なるが、一般には−20〜+150℃で、重合時間は0.5〜72時間である。光学材料は通常の分散染料を用い、水もしくは有機溶媒中で容易に染色が可能であり、この際さらに染色を容易にするために、キャリアーを加えたり加熱しても良い。
【0020】このようにして得られた光学材料は、これに限定されるものではないが、プラスチックレンズ等の光学製品として特に好ましく用いられる。
【0021】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0022】(物性の評価)実施例で得られたポリチオール化合物、応用例で得られた重合体および比較応用例で得られた重合体の物性評価は以下の様にして行なった。
屈折率( nD )とアッベ数(νD
アタゴ社製アッベ屈折率計3Tを用いて20℃にて測定した。
外 観肉眼により観察した。
耐候性サンシャインカーボンアークランプを装備したウエザーメーターにプラスチックレンズをセットし200時間経過したところでプラスチックレンズを取り出し、試験前のプラスチックレンズと色相を比較した。評価基準は変化なし(○)、わずかに黄変(△)、黄変(×)とした。
耐熱性リガク社製TMA装置により0.5mmφのピンを用いて10gfの荷重でTMA測定を行ない、10℃/minの昇温で得られたチャートのピーク温度により評価した。
光学歪シュリーレン法による目視観察を行なった。歪の無いものを○、歪のあるものを×とした。
【0023】(実施例1)
本発明のポリチオール化合物である2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン(S−1)(一般式[1]においてX=H(n2 =0)、n1 =1)の製造例22.9g(0.157mol )のジアリルジスルフィドを780mlのジクロロメタンに溶解した溶液に25.0g(0.157mol )の臭素を−78℃にて1時間かけて滴下した。そして、−20℃まで昇温し、その温度にて8時間攪拌した後、減圧下でジクロロメタンを除去した。その残渣に100mlのエタノールと23.9g(0.314mol )のチオ尿素を加え、1.5時間還流した。生成した沈殿を濾別し、エタノールで数回洗浄した後乾燥させた。水73mlにこの沈殿を分散させ、窒素雰囲気下で還流させながら64.2gの15%水酸化ナトリウム水溶液を1時間かけて滴下し、その後さらに1時間還流させた。冷却後、反応混合物を6N−塩酸で酸性にしベンゼンで抽出した。抽出物からベンゼンを減圧下で除き、残渣を2×10-2mmHgで蒸留し沸点が121.5℃の留分22.6g(収率68%)を得た。このものの屈折率は1.646、アッベ数は35.2であった。以下にこの新規ポリチオール化合物の構造決定のための分析結果を示す。
【0024】


1H−NMR(溶媒:CDCl3 、内部標準物質:TMS)
δ(ppm) =1.62(t,1H)
2.88〜3.14(m,5H)
IR2545cm-1(チオールのνSH
なお、この新規ポリチオール化合物2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン(S−1)の 1H−NMRスペクトルを図1に、IRスペクトルを図2に示す。
【0025】(実施例2)本発明のポリチオール化合物である2,5−ビス(2−メルカプトエチルチオメチル)−1,4−ジチアン(S−2)(一般式[1]においてX=−CH2 CH2 SH(n2 =1)、n1 =1)の製造例実施例1で得られた2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン(S−1)21.2g(0.1mol)を15%水酸化ナトリウム水溶液58.7gに溶解しベンジルトリメチルアンモニウムクロライド100mgの存在下、18.0g(0.3mol )のチイランを200mlのベンゼンに溶解したものを加え、室温にて12時間反応させた。その後0℃にて濃塩酸を、水相のpHが1になるまで攪拌しながら加え、ベンゼン層を分離、水洗し、減圧下ベンゼンを溜去することにより目的物である2,5−ビス(2−メルカプトエチルチオメチル)−1,4−ジチアン(S−2)24.6g(収率74%)を得た。
【0026】(実施例3)
本発明のポリチオール化合物である2,5−ビス(3−メルカプトプロピル)−1,4−ジチアン(S−4)(一般式[1]においてX=H(n2 =0)、n13)の製造例22.9g(0.157mol )のジアリルジスルフィドを780mlのジクロロメタンに溶解した溶液に25.0g(0.157mol )の臭素を−78℃にて1時間かけて滴下した。そして−20℃まで昇温し、その温度に8時間攪拌した後、減圧下でジクロロメタンを除去した。残留物に乾燥テトラヒドロフラン300mlを加え−10℃に冷却し、攪拌しながらビニルマグネシウムブロマイドの1.0M−テトラヒドロフラン溶液を329ml滴下し、その後0℃で2時間、室温で12時間攪拌した。反応混合物を水中に投入し、ベンゼンで抽出し、抽出液から減圧下ベンゼンを溜去した。次にこの残留物を200槇のベンゼンに溶解し硫化水素を吹き込みながら室温にて4時間反応させた。その後、減圧下にベンゼンを溜去し目的物である2,5−ビス(3−メルカプトプロピル)−1,4−ジチアン(S−4)25.7g(収率61%)を得た。
【0027】(応用例1)
本発明のポリチオール化合物を用いた光学材料の製造例実施例1で得られた2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン(S−1)0.1mol 、m−キシリレンジイソシアネート(XDI)0.1mol およびジブチルスズジラウレート(DBTDL)1×10-5mol の混合物を均一に攪拌し、二枚のレンズ成形用ガラス型に注入し、50℃で10時間、その後60℃で5時間、さらに120℃で3時間加熱重合させレンズ形状の重合体を得た。得られた重合体の諸物性を表1に示す。表1から、本応用例1の重合体は無色透明であり、屈折率(nD )は1.66と非常に高く、アッベ数(νD )も32と高い(低分散)ものであり、耐候性、耐熱性(97℃)に優れ、光学歪の無いものであった。
【0028】(応用例2〜18)
本発明のポリチオール化合物を用いた他の光学材料の製造例表1および表2に示したモノマー組成物を使用し、重合条件を適宜変更した以外は応用例1と同様の操作を行ない、レンズ形状の重合体を得た。これらの重合体の諸物性を表1および表2に示す。これらの表から、本応用例2〜18の重合体も無色透明であり、屈折率(nD )は1.58〜1.66と非常に高く、アッベ数(νD )も32〜43と高い(低分散)ものであり、耐候性、耐熱性(94〜128℃)に優れ、光学歪の無いものであった。
【0029】特に、応用例1〜7及び17〜18の重合体は、アッベ数が32〜38であり、この範囲のアッベ数を有する従来の重合体と比べ、屈折率が1.62〜1.66と高いものであった。
【0030】また、応用例8〜16の重合体は、屈折率が1.58〜1.62であり、この範囲の屈折率を有する従来の重合体と比べアッベ数が38〜43と高いものであった。
【0031】(比較応用例1)ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトプロピオネート(PETMP)0.1mol 、m−キシリレンジイソシアネート(XDI)0.2mol およびジブチルスズジラウレート(DBTDL)1×10-4mol の混合物を均一に攪拌し、二枚のレンズ成形用ガラス型に注入し、50℃で10時間、その後60℃で5時間、さらに120℃で3時間加熱重合させレンズ形状の重合体を得た。得られた重合体の諸物性を表2に示す。表2から、本比較応用例1の重合体は無色透明で光学歪も観察されなかったが、 nD /νD が1.59/36と低く、耐熱性も86℃と劣っていた。
【0032】(比較応用例2,3)表2に示したモノマー組成物を使用した以外は比較応用例1と同様の操作を行ない、レンズ形状の重合体を得た。これらの重合体の諸物性を表2に示した。表2から、本比較応用例2の重合体は屈折率が1.67と高く、耐熱性(94℃)にも優れているが、耐候性に劣り、光学歪が観察された。また、本比較応用例3の重合体は、無色透明で光学歪は観察されず、耐候性は優れていたが、屈折率が1.53と低く、耐熱性が65℃と劣るものであった。
【0033】
【表1】


【0034】
【表2】


【0035】
【表3】


【0036】
【発明の効果】本発明の新規ポリチオール化合物は、屈折率及びアッベ数が高い。従ってこのポリチオール化合物を原料として用いて得られた重合体からなる光学材料は、屈折率、アッベ数が高く、耐熱性、耐候性、透明性に優れているので眼鏡レンズ、カメラレンズ等のレンズ、プリズムや、光ファイバー、光ディスク、磁気ディスク等に用いられる記録媒体基板、着色フィルター、赤外線吸収フィルター等の光学製品に好ましく用いられる。さらに、高屈折率の特徴を生かしたグラス、花ビン等の装飾品等にも用いられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、実施例1で得られたポリチオール化合物の 1H−NMRスペクトルを示す図である。
【図2】は、実施例1で得られたポリチオール化合物のIRスペクトルを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】一般式[1]
【化1】


[式中、Xは−(CH2 CH2 S)n2 −Hであり、n1 は1〜5の整数であり、n2 は0〜2の整数である]で示されることを特徴とするポリチオール化合物。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate