説明

ポリビニルエーテル系ブロックコポリマーの加水分解方法

【課題】 ポリビニルエーテル系ブロックコポリマーの効率的な加水分解方法を提供すること。
【解決手段】 カルボン酸エステル基を有するポリビニルエーテル系ブロックコポリマーを、該ブロックコポリマーの溶解性パラメータに対して−2.8〜+9.0(J/cm31/2となる少なくとも1種の溶媒とアルカリと水とを含む系でアルカリ加水分解をすることを特徴とするポリビニルエーテル系ブロックコポリマーの加水分解方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリビニルエーテル系ブロックコポリマーの加水分解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーの強アルカリ加水分解を行う場合、ポリマーを溶媒に溶解させて行うのが好ましいが、このときに使用する溶媒自体がアルカリにより分解してしまう場合がある。また、アルカリにより分解しない溶媒であっても、大気汚染物質であったり、変異原生物質である場合もあるため、アルカリに分解せず、安全性の観点から問題のない溶媒を探すのが困難である場合がある。さらには、加水分解反応に時間がかかりすぎ、作業効率が悪い場合もある。また、ポリマーにおける加水分解においては、加水分解の明確な条件を示しているものは殆どない(特許文献1、2)。
【0003】
【特許文献1】特開平9−157564号公報
【特許文献2】特開2004−51950号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の状況に鑑み、本発明はポリビニルエーテル系ブロックコポリマーの効率的な加水分解方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は以下の本発明によって達せられる。すなわち、本発明は、カルボン酸エステル基を有するポリビニルエーテル系ブロックコポリマーを、該ブロックコポリマーの溶解性パラメータに対して−2.8〜+9.0(J/cm31/2となる少なくとも1種の溶媒とアルカリと水とを含む系でアルカリ加水分解をすることを特徴とするポリビニルエーテル系ブロックコポリマーの加水分解方法を提供する。
【0006】
さらに本発明は、前記溶媒が前記ブロックコポリマーの溶解性パラメータに対して−9.3〜+1.4(J/cm31/2となる少なくとも1種の溶媒Aと、+1.5〜+12.5(J/cm31/2となる少なくとも1種の溶媒Bとの混合溶媒であり、かつ少なくとも溶媒Bが親水性を示す溶媒を用いることも可能である。
【0007】
上記本発明において、前記ブロックコポリマーが、加水分解後にカルボン酸を有することにより、それぞれ少なくとも1種の親水性セグメントおよび疎水性セグメントを含有するポリビニルエーテル構造のブロックコポリマーであることが好ましい。
【0008】
さらに、上記本発明において、前記ブロックコポリマーの溶解性パラメータが+16.0〜+24.0(J/cm31/2であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、カルボン酸エステル基含有ポリビニルエーテル系ブロックコポリマーの効率的な加水分解方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
本発明は、カルボン酸エステル基を有するポリビニルエーテル系ブロックコポリマーを、該ブロックコポリマーの溶解性パラメータに対して−2.8〜+9.0(J/cm31/2となる少なくとも1種の溶媒とアルカリと水とを含む系でアルカリ加水分解をすることを特徴としている。
【0011】
また、本発明において用いる溶媒は、前記ブロックコポリマーの溶解性パラメータに対して−9.3〜+1.4(J/cm31/2となる少なくとも1種の溶媒Aと、+1.5〜+12.5(J/cm31/2となる少なくとも1種の溶媒Bとの混合溶媒であり、少なくとも溶媒Bが親水性溶媒であり、溶媒Aと溶媒Bの混合溶媒が、前記ブロックコポリマーの溶解性パラメータに対して−2.8〜+9.0(J/cm31/2となる混合溶媒を使用することも可能である。
【0012】
本発明で使用する上記ポリビニルエーテル系ブロックコポリマーは、そのブロック毎が、おのおのビニルエーテル系モノマーのホモポリマーまたはコポリマーであることが好ましい。
【0013】
上記のポリビニルエーテル系ブロックコポリマーは、例えば、下記一般式(1)で示されるモノマー単位の繰り返し構造を有することが好ましい。
−(CH2−CH(OR1))− (1)
上記の一般式(1)において、R1は、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基のような脂肪族炭化水素、フェニル基、ピリジル基、ベンジル基、トルイル基、キシリル基、アルキルフェニル基、フェニルアルキレン基、ビフェニル基、フェニルピリジル基などのような、炭素原子が窒素原子で置換されていてもよい芳香族炭化水素基を表す。また、芳香環上の水素原子は、炭化水素基で置換されていてもよい。R1の炭素数は1〜18が好ましい。
【0014】
また、R1は、−(CH(R2)−CH(R3)−O)p−R4若しくは−(CH2m−(O)n−R5で表される基でもよい。この場合、R2およびR3は、それぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、R4は、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基のような脂肪族炭化水素、フェニル基、ピリジル基、ベンジル基、トルイル基、キシリル基、アルキルフェニル基、フェニルアルキレン基、ビフェニル基、フェニルピリジル基などのような、炭素原子が窒素原子で置換されていてもよい芳香族炭化水素基(芳香環上の水素原子は、炭化水素基で置換されていてもよい)、−CHO、−CH2CHO、−CO−CH=CH2、−CO−C(CH3)=CH2、−CH2−CH=CH2、−CH2−C(CH3)=CH2、−CH2COOR5などを表し、これらの基のうちの水素原子は、化学的に可能である範囲で、フッ素、塩素、臭素などのハロゲン原子と置換されていてもよい。R4の炭素数は1〜18が好ましい。R5は水素、またはアルキル基である。pは1〜18が好ましく、mは1〜36が好ましく、nは0または1であるのが好ましい。
【0015】
1およびR4において、アルキル基またはアルケニル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、オレイル、リノレイルなどであり、シクロアルキル基またはシクロアルケニル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、シクロヘキセニルなどである。
【0016】
上記ポリビニルエーテル系ブロックコポリマーの少なくとも1個の繰り返し単位は、下記一般式(2)で示される繰り返し単位構造が好ましい。

【0017】
6は、アルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、またはシクロアルケニレン基のような脂肪族炭化水素、フェニレン基、ピリジレン基、ベンジリレン基、トルイレン基、キシリレン基、アルキルフェニレン基、フェニルアルキレン基、ビフェニレン基、フェニルピリジレン基などのような、炭素原子が窒素原子で置換されていてもよい芳香族炭化水素基を表す。
【0018】
7はアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基のような脂肪族炭化水素、フェニル基、ピリジル基、ベンジル基、トルイル基、キシリル基、アルキルフェニル基、フェニルアルキレン基、ビフェニル基、フェニルピリジル基などのような、炭素原子が窒素原子で置換されていてもよい芳香族炭化水素基、−CHO、−CH2CHO、−CO−CH=CH2、−CO−C(CH3)=CH2、−CH2−CH=CH2、−CH2−C(CH3)=CH2を表す。また、上記R6およびR7において、芳香環上の水素原子は、炭化水素基で置換されていてもよい。R6、R7の炭素数は1〜18が好ましい。
【0019】
また、R6は、−CH(R8)−CH(R9)−O)p−R10−、若しくは−(CH2m−(O)n−R11−で表される基でもよい。この場合、R8およびR9は、それぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、R10およびR11は、アルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、またはシクロアルケニレン基のような脂肪族炭化水素、フェニレン基、ピリジリレン基、ベンジリレン基、トルイレン基、キシリレン基、アルキルフェニレン基、フェニルアルキレン基、ビフェニレン基、フェニルピリジリレン基などのような、炭素原子が窒素原子で置換されていてもよい芳香族炭化水素基(芳香環上の水素原子は、炭化水素基で置換されていてもよい)などを表し、これらの基のうちの水素原子は、化学的に可能である範囲で、フッ素、塩素、臭素などのハロゲン原子と置換されていてもよい。pは1〜18が、mは1〜36、nは0〜1が好ましい。また、R10およびR11の炭素数は1〜18が好ましい。
【0020】
上記ポリビニルエーテル系ブロックコポリマーは、それを他の高分子にグラフト結合させたものを使用してもよいし、他のモノマーと共重合されたものを使用してもよい。また、各ブロックとも、ビニルエーテル系モノマーとそれ以外のモノマーとの共重合体も含まれる。
【0021】
ポリビニルエーテル構造を含むポリマーの合成法は多数報告されている(例えば、特開平11−080221号公報)が、青島らによるカチオンリビング重合による方法(ポリマーブレタン誌 15巻、1986年 417頁、特開平11−322942号公報、特開平11−322866号公報)が代表的である。カチオンリビング重合でポリマー合成を行うことにより、ホモポリマーや2成分以上のモノマーからなる共重合体、さらにはブロックコポリマー、グラフトコポリマー、グラジュエーションコポリマーなどの様々なポリマーを、長さ(分子量)を正確に揃えて合成することができる。また、ポリビニルエーテルは、その側鎖に様々な官能基を導入することができる。カチオン重合法は、他にHI/I2系、HCl/SnCl4系などで行うこともできる。本発明で使用する前記ブロックコポリマーは上記公知の方法で製造することができる。
【0022】
前記ブロックコポリマーとして、加水分解後にカルボン酸を有することにより、それぞれ少なくとも1種の親水性セグメントおよび疎水性セグメントを含有するポリビニルエーテル構造のブロックコポリマーを用いることができる。
【0023】
本発明で使用する上記カルボン酸エステル基を有するポリビニルエーテル系ブロックコポリマーは、加水分解後はカルボン酸を有することにより、それぞれ少なくとも1種類の親水性ブロック(Aおよび/またはA’)および疎水性ブロック(Bおよび/またはB’)を有するものが好ましい。例えば、AB型、ABA’型(AとA’は同じでも異なっていてもよい)、AA’B型、BB’A型(BとB’は同じでも異なっていてもよい)などが挙げられる。ここで、A、A’、B、B’はホモポリマー、またはコポリマーのブロックを示す。
前記構造を有するポリビニルエーテル系ブロックコポリマーのカルボン酸エステル体の溶解性パラメータは+16.0〜+24.0(J/cm31/2であることが好ましい。
【0024】
上記のような構造および溶解性パラメータを有するポリビニルエーテル系ブロックコポリマーは、それぞれ少なくとも1種の疎水セグメントおよび親水セグメントを有するため、親水−疎水両溶媒性があり、また、ビニルエーテル構造を有することにより熱に対する刺激応答性があり、さらに、加水分解後のポリマーにおいては、pHに対する刺激応答性も有するようになるため、色材分野、医薬の分野などでの用途が広がり好ましい。
【0025】
本発明に用いることのできる溶媒は、溶解性パラメータが、前記ブロックコポリマーの溶解性パラメータに対して−2.8〜+9.0(J/cm31/2の範囲であることが好ましく、+2.0〜+8.4の範囲であることが特に好ましい。溶解性パラメータが、前記ブロックコポリマーの溶解性パラメータに対して−2.8(J/cm31/2よりも小さい場合、十分に加水分解が進行しない場合がある。また、+9.0(J/cm31/2よりも大きい場合、ポリビニルエーテル系ブロックコポリマーは溶解しにくくなり、加水分解の反応速度が遅かったり、反応しないなどの不都合が生じる。
【0026】
加水分解に使用する溶媒としては、前記ブロックコポリマーに対してパラメータの関係が前記範囲内にあれば如何なる溶媒でも使用できるが、水と親和性のある溶媒が好ましい。具体的には、メチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、N,N−ジメチルホルムアミドなど或いはこれらの混合物が例示でき、これらの溶媒は前記ブロックコポリマー100質量部あたり約50〜2000質量部の範囲で使用することが好ましい。
【0027】
また、本発明で使用する溶媒は、前記の通り親水性の溶媒の場合は単独でもよいが、上記の溶解性パラメータの範囲を満たすものであれば、水との親和性が低い溶媒Aと水との親和性が高い溶媒Bとの混合溶媒でもよい。溶媒Aは、前記ブロックコポリマーの良溶媒となるものであり、溶解性パラメータは、前記ブロックコポリマーの溶解性パラメータに対して−9.3〜+1.4(J/cm31/2であることが好ましい。上記以外の範囲では、ポリビニルエーテル系ブロックコポリマーは溶解しにくいため、加水分解の反応速度が遅かったり、反応しないなどの不都合が生じる。溶媒Aとしては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、アセトン、トルエン、キシレンなどが例示できる。
【0028】
溶媒Bは、親水性のものが好ましく、溶媒Aと水との中間溶媒として働くものであり、溶解性パラメータは、前記ブロックコポリマーの溶解性パラメータに対して+1.5〜+12.5(J/cm31/2であることが好ましい。上記以外の範囲では、溶媒Aと水とが分離するため、十分に加水分解が進行しない場合がある。なお、溶媒Aおよび溶媒Bは、前記ブロックコポリマーの溶解性パラメータに対して前記の範囲を満たしているものならば単体でも複数の混合溶媒でも用いることが可能である。溶媒Bとしては、例えば、メタノール、エタノール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどが例示できる。
【0029】
上記記載の溶解性パラメータ(δ(J/cm31/2)は、溶剤の凝集エネルギー密度の平方根として表され、δ=(δE/V)1/2(式中、ΔEは溶剤のモル蒸発熱、Vは溶媒のモル体積)の式から算出される溶剤の溶解性を示す溶剤固有の値であり、例えば、水はδ=47.0、エタノールはδ=25.7、ヘキサンはδ=14.9である。また、前記ブロックコポリマーの溶解性パラメータ(δ)は、前記ブロックコポリマーの無限溶解度または最高膨潤度を与える溶剤の溶解性パラメータ=高分子の溶解性パラメータとする実験的に算出した値や前記ブロックコポリマーの官能基の分子凝集エネルギーから算出した値である。本発明での前記ブロックコポリマーおよび溶剤の溶解性パラメータは前記ブロックコポリマーおよび溶剤の官能基の分子凝集エネルギーから算出した値を使用している。前記ブロックコポリマーおよび溶剤の溶解性パラメータ(δ)を官能基の分子凝集エネルギーから算出する方法は、δ=(δE/V)1/2=(Σδei/Σδvi1/2(式中、ΔEはそれぞれのモル蒸発熱、Vはそれぞれのモル体積、Δeiはそれぞれの原子団の蒸発エネルギー(J/mol)、Δviはそれぞれの原子団のモル体積(cm3/mol)である。)の式から算出する方法が挙げられる。なお、原子団の蒸発エネルギーおよび原子団のモル体積はFedorsの値を使用して算出した。
【0030】
本発明で使用する上記アルカリは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどの強塩基を用いるのが好ましい。これらのアルカリの使用量は、系内がアルカリ性であればよいが、より好ましくは、該共重合体の加水分解部分に対し0.1モル以上が好ましい。また、水は、特に限定されず、水道水などでもよく、その使用量は該共重合体の質量に対して0.01倍〜10倍量であることが好ましい。加水分解の条件は特に限定されないが、例えば、約0〜70℃で0.15〜72時間撹拌することが好ましい。
【0031】
上記で得られた前記ブロックコポリマーの加水分解物は、溶液の状態でも溶液から分離した状態でも使用でき、好適な用途としては、水不溶性色材の分散剤、化粧品原料、洗剤原料などが挙げられる。
【実施例】
【0032】
次に実施例および比較例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、下記実施例により限定されるものではない。なお、以下の記載で「部」または「%」とあるものは特に断らない限り質量基準である。また、以下の実施例においてポリマーの同定にはNMR(核磁気共鳴分光法)(商品名:DPX400;ブルカー・バイオスピン(株))を用い、ポリマーの分子量および分子量分布はGPC(Gel Permeation Chromatography)(商品名:HLC−8220GPC;東ソー(株))を用いた。カルボン酸エステル基の加水分解の可否にはNMR、FT−IR(フーリエ変換赤外分光光度計)(商品名:FT/IR−5300型;日本分光(株))を用いた。
【0033】
[ABC型トリブロックコポリマー(ポリマー−1)の合成]
三方活栓を取り付けたガラス容器内を窒素置換した後、窒素ガス雰囲気下250℃で加熱して吸着水を除去した。系を室温に戻した後、1−イソブチルビニルエーテル、酢酸エチル、1−イソブトキシエチルアセテート、およびトルエンを加え、系内温度が0℃になったところでエチルアルミニウムセスキクロライドを加え重合を開始し、トリブロックコポリマーのA成分を合成した。分子量を時分割にゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、東ソー社製HLC−8220)を用いてモニタリングし、A成分の重合が完了した後、B成分である2−メトキシエチルビニルエーテルを添加することで合成を行い、上記と同様にGPCを用いてモニタリングしてB成分の重合の完了を確認した。
【0034】
次いでC成分である4−[2−ビニルオキシエトキシ]安息香酸エチルを添加して合成を行い、重合反応の停止は、系内に0.3%のアンモニア/メタノール溶液を加えて行なった。得られたトリブロックコポリマーの同定には、核磁気共鳴吸収測定装置およびGPCを用い、いずれも目的物質が合成できていることを示す結果を得た。数平均分子量(Mn)40,000、分子量分布の程度を示す重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は1.2であった。なお、得られたカルボン酸エステル基含有ポリマーの溶解性パラメータは21.094(J/cm31/2であった。
【0035】
実施例1[アルカリ加水分解反応]
100mlナス型フラスコに、前記ポリマー−1の1gと溶媒としてメチルセロソルブ20ml、水を0.5ml、水酸化ナトリウム0.4gを入れ、室温(26℃)で24時間撹拌した。
【0036】
実施例2[アルカリ加水分解反応]
100mlナス型フラスコに、前記ポリマー−1の1gと溶媒としてテトラヒドロフラン10ml、水を0.5ml、水酸化リチウム0.4gを入れ、室温(26℃)で24時間撹拌した。
【0037】
実施例3[アルカリ加水分解反応]
100mlナス型フラスコに、前記ポリマー−1の1gと溶媒としてテトラヒドロフラン7ml、メタノール3mlの混合溶媒、水を0.5ml、水酸化リチウム0.4gを入れ、室温(26℃)で24時間撹拌した。
【0038】
実施例4[アルカリ加水分解反応]
100mlナス型フラスコに、前記ポリマー−1の1gと溶媒Aとしてアセトン10ml、溶媒Bとしてメタノール10ml、水を0.5ml、水酸化ナトリウム0.4gを入れ、室温(26℃)で24時間撹拌した。
【0039】
実施例5[アルカリ加水分解反応]
100mlナス型フラスコに、前記ポリマー−1の1gと溶媒Aとしてトルエン10ml、溶媒Bとしてメタノール10ml、水を0.5ml、水酸化カリウム0.4gを入れ、室温(26℃)で24時間撹拌した。
【0040】
実施例6[アルカリ加水分解反応]
100mlナス型フラスコに、前記ポリマー−1の1gと溶媒Aとしてキシレン20ml、溶媒Bとしてメタノール10ml、水を0.5ml、水酸化ナトリウム0.4gを入れ、室温(26℃)で24時間撹拌した。
【0041】
実施例7[アルカリ加水分解反応]
100mlナス型フラスコに、前記ポリマー−1の1gと溶媒Aとしてヘキサン10ml、溶媒Bとしてエタノール10ml、水を0.5ml、水酸化リチウム0.4gを入れ、室温(26℃)で24時間撹拌した。
【0042】
実施例8[アルカリ加水分解反応]
100mlナス型フラスコに、前記ポリマー−1の1gと溶媒Aとしてヘキサン6ml、ジメチルホルムアミド4mlの混合溶媒、溶媒Bとしてメタノール10ml、水を0.5ml、水酸化ナトリウム0.4gを入れ、室温(26℃)で24時間撹拌した。
【0043】
比較例1[アルカリ加水分解反応]
100mlナス型フラスコに、前記ポリマー−1の1gと溶媒としてヘキサン10ml、水を0.5ml、水酸化カリウム0.4gを入れ、室温(26℃)で24時間撹拌した。
【0044】
比較例2[アルカリ加水分解反応]
100mlナス型フラスコに、前記ポリマー−1の1gと溶媒としてエチレングリコール10ml、水を0.5ml、水酸化カリウム0.4gを入れ、室温(26℃)で24時間撹拌した。
【0045】
比較例3[アルカリ加水分解反応]
100mlナス型フラスコに、前記ポリマー−1の1gと溶媒Aとしてトルエン10ml、水を0.5ml、水酸化カリウム0.4gを入れ、室温(26℃)で24時間撹拌した。
【0046】
比較例4[アルカリ加水分解反応]
100mlナス型フラスコに、前記ポリマー−1の1gと溶媒Aとしてトルエン10ml、アセトン10ml、水を0.5ml、水酸化カリウム0.4gを入れ、室温(26℃)で24時間撹拌した。
【0047】
実施例および比較例に用いた溶媒のカルボン酸エステル基含有ポリマーに対するSP値(溶解性パラメータ、単位;(J/cm31/2))は表1の通りである。また、下記表1においてTHFはテトラヒドロフランを、MeOHはメタノールを、EtOHはエタノールを、DMFはジメチルホルムアミドを表わす。また、実施例3の混合比はTHF/MeOH=7ml/3mlであり、実施例8はヘキサン/DMF=6ml/4mlであり、比較例4はトルエン/アセトン=10ml/10mlである。
【0048】

【0049】
加水分解の可否はNMRおよびFT−NMRにて確認を行い、3段階評価を行った。結果を表2に示す。
○:加水分解反応率 100〜80%
△:加水分解反応率 80未満〜70%
×:加水分解反応率 70%未満
【0050】

【産業上の利用可能性】
【0051】
以上のように本発明によれば、カルボン酸エステル基含有ポリビニルエーテル系ブロックコポリマーの効率的な加水分解方法を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボン酸エステル基を有するポリビニルエーテル系ブロックコポリマーを、該ブロックコポリマーの溶解性パラメータに対して−2.8〜+9.0(J/cm31/2となる少なくとも1種の溶媒とアルカリと水とを含む系でアルカリ加水分解をすることを特徴とするポリビニルエーテル系ブロックコポリマーの加水分解方法。
【請求項2】
前記溶媒が、前記ブロックコポリマーの溶解性パラメータに対して、−9.3〜+1.4(J/cm31/2となる少なくとも1種の溶媒Aと、+1.5〜+12.5(J/cm31/2となる少なくとも1種の溶媒Bとの混合溶媒であり、かつ少なくとも溶媒Bが親水性を示す請求項1に記載のポリビニルエーテル系ブロックコポリマーの加水分解方法。
【請求項3】
前記ブロックコポリマーが、加水分解後にカルボン酸を有することにより、それぞれ少なくとも1種の親水性セグメントおよび疎水性セグメントを含有するポリビニルエーテル構造のブロックコポリマーである請求項1または2に記載のポリビニルエーテル系ブロックコポリマーの加水分解方法。
【請求項4】
前記ブロックコポリマーの溶解性パラメータが+16.0〜+24.0(J/cm31/2である請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリビニルエーテル系ブロックコポリマーの加水分解方法。

【公開番号】特開2006−206747(P2006−206747A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−20972(P2005−20972)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】