説明

ポリフッ化コアシェル光導電体

【課題】有用な光導電体を提供すること。
【解決手段】電荷発生層と、電荷輸送成分、フッ化ポリマー、およびコアシェル成分を含有する電荷輸送層と、を含む光導電体であって、前記コアが金属酸化物を含み、前記シェルがシリカを含む、光導電体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
光導電性部材、より具体的には、デジタル、イメージオンイメージ等を含む、静電複写方式、例えばゼログラフィー方式による、プリンター、機械、または装置に有用な光導電性部材を開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、正孔阻止層、電荷発生層、および電荷輸送層を含む光導電性画像形成部材が開示されている。該正孔阻止層は、金属酸化物と、フェノール化合物とフェノール樹脂の混合物と、を含む。該フェノール化合物は、少なくとも2つのフェノール基を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6913863号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
有用な光導電体を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ある実施形態では、電荷輸送成分とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ化材料とを含有する電荷輸送層を備え、該電荷輸送層に金属酸化物コアおよびシリカシェルを含むコアシェル成分が添加された光導電性部材、およびナノサイズ化/ミクロンサイズ化されたポリテトラフルオロエチレンとナノサイズ化されたコアシェル成分との混合物を含む光導電性部材が選択され、そのシェルは、例えばシラザン、具体的には1,1,1−トリメチル−N−(トリメチルシリル)−シラナミン、フルオロシラン、ポリシロキサン等の疎水性部分で疎水的かつ化学的に処理または修飾されており、具体的には、そのコアは、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、酸化インジウム、インジウムドープ酸化スズ、酸化亜鉛等の金属酸化物、およびシリカシェルを有し、シェルにはシラザンが添加されている。得られる疎水化されたコアシェル成分は、光導電体の寿命を、特に光導電体の帯電にバイアス帯電ロールが用いられる場合に約1,000,000回の画像形成サイクルにまで延長することを可能にしたり、光導電体の電荷輸送層の摩耗性の最小化を可能にしたり、など種々の利点を有し、該電荷輸送層はまた、フッ化ポリマーを含有する。ある実施形態において開示される光導電体用に選択されるコアシェルは、画像転写の向上、スクラッチ/磨耗抵抗性の向上、および優れた電気的安定性を可能にする疎水性表面を有する。
【0006】
更により具体的には、本開示のある実施形態における光導電体の利点の1つとして、電荷輸送層にPTFEおよびコアシェルフィラーまたは添加剤を選択した時の摩耗率が約15ナノメートル/キロサイクルであり、PTFE電荷輸送層(CTL)(コアシェルフィラーなし、摩耗率は約30ナノメートル/キロサイクル)の摩耗率の半分でしかなく、コアシェルフィラーCTL(PTFEなし、約30ナノメートル/キロサイクル)の摩耗率の半分でしかなかったことが挙げられる。
【0007】
また、本明細書に記載の光導電体デバイスを用いた画像形成および印刷方法も開示する。これらの方法では一般的に、画像形成部材上に静電潜像を形成し、その後、例えば熱可塑性樹脂、顔料等の着色剤、帯電添加剤、および表面添加剤を含むトナー組成物で画像を現像し、その後、画像を好適な基材へと転写し、そこに画像を永久的に固定する。デバイスを印刷モードで用いる環境下での画像形成方法も、露光がレーザーデバイスまたはイメージバーで達成され得ることを除き、同じ操作を含む。より具体的には、本明細書に開示されている可撓性(flexible)ベルトは、一部の型では1分当たり100を超えるコピーが作製されるゼロックスコーポレーション社製iGEN3(登録商標)およびその後の関連する機械用に選択することができる。
【0008】
本開示は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ化ポリマーを含有する電荷輸送層を備え、電荷輸送層中にコアシェル成分、より具体的には、コアが例えば金属酸化物を含み且つシェルが修飾シリカシェルを含む疎水化されたコアシェル成分、が分散された光導電体;および、PTFEおよび電荷輸送成分を含み、金属酸化物コアおよびそれを覆うシリカシェルを含む成分が添加されており、シェルが、シラザン含有シリカを含み、コアシェルのBET表面積が約30〜約100m2/gである電荷輸送層を含む。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の態様では、必要に応じて用いる支持基体と、電荷発生層と、電荷輸送成分、フッ化ポリマー、およびコアシェル成分を含有する電荷輸送層と、を備えた光導電体であって、コアが金属酸化物を含み、シェルがシリカを含む、光導電体が開示される。また、支持基体と、電荷発生層と、ポリテトラフルオロエチレンとコアシェル成分との混合物および電荷輸送成分を含有する電荷輸送層と、を備えた光導電体であって、コアが金属酸化物を含み、シェルがそれを覆うシリカを含み、シェルが、トリアルキル−N−(トリアルキルシリル)−シラナミンを含む、光導電体が開示される。また、支持基体と、電荷発生層と、電荷輸送成分、ポリテトラフルオロエチレン、およびコアシェル成分を含有する電荷輸送層と、を順に備えた光導電体であって、コアが金属酸化物を含み、シェルがシリカを含み、金属酸化物が、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化アルミニウム亜鉛、二酸化アンチモンチタン、酸化アンチモンスズ、酸化インジウム、または酸化インジウムスズであり、シェルに、ヘキサメチルジシラザン、2,2,4,4,6,6−ヘキサメチルシクロトリシラザン、1,3−ジエチル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジフェニルジシラザン,および1,3−ジメチル−1,1,3,3−テトラフェニルジシラザンからなる群から選択されるシラザンが化学的に付着している、光導電体が開示される。また、該シリカが、シリカ(SiO2)、シリコーン(R2SiO)、または多面体オリゴマーシルセキオキサン(silsequioxane)(POSS、RSiO1.5)(式中、Rはアルキルまたはアリールであり、アルキルは約1〜約18個の炭素原子を含み、アリールは約6〜約24個の炭素原子を含む。)であり、コアシェルの直径が約5〜約1,000ナノメートルであり、フッ化ポリマーが、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンのコポリマー、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)のコポリマー、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ(エチルビニルエーテル)のコポリマー、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ(メチルビニルエーテル)のコポリマー、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとフッ化ビニリデンとのコポリマーからなる群から選択される、光導電体が開示される。また、疎水性剤が、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8、10−ペンタメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、2,4,6−トリメチル−2,4,6−トリフェニルシクロトリシロキサン、ヘキサフェニルシクロトリシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン、またはその混合物等のポリシロキサンである、光導電体が開示される。
【0010】
ある実施形態では、コアシェル成分は、金属酸化物コアおよびシリカ等のシェルを含み、更にシェルは必要に応じてシラザン、フルオロシラン、ポリシロキサン等で疎水化される。ある実施形態では、金属酸化物またはドープされた金属酸化物は、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化スズ、アルミニウムドープ酸化亜鉛、アンチモンドープ二酸化チタン、アンチモンドープ酸化スズ、酸化インジウム、酸化インジウムスズ、同様なドープ酸化物、およびその混合物、ならびにその他の好適な公知の酸化物からなる群から、例えば約60〜約95重量パーセント、約70〜約90重量パーセント、または約80〜約85重量パーセントの量で選択してよい。
【0011】
シェルに選択されるシリカの例としては、シリカ(SiO2)、シリコーン(R2SiO)、多面体オリゴマーシルセキオサン(POSS、RSiO1.5)(式中、Rは、例えば約1〜約18個、1〜約10個、1〜約6個、もしくは約4〜約8個の炭素原子を含むアルキル、または、例えば約6〜約30個、6〜約24個、もしくは約6〜約16個の炭素原子を含むアリールである。)が挙げられる。シリカシェルは、例えば約5〜約40重量パーセント、約10〜約30重量パーセント、または約15〜約20重量パーセント等の種々の量で存在する。
【0012】
コアシェル成分の粒子サイズは、例えば約5〜約1,000ナノメートル、約10〜約200ナノメートル、または約20〜約100ナノメートルである。
【0013】
シリカシェルを化学的に処理するためまたはシリカシェルに添加するために用いられる疎水性成分の例としては、例えばシラザン、フルオロシラン、およびポリシロキサンが挙げられ、該化学的処理剤は、選択されたシェルの量に応じて、例えば約1〜約15重量パーセント、約1〜約10重量パーセント、約0.1〜約12重量パーセント、またはその他の好適な量で選択される。
【0014】
疎水性剤として選択されるシラザンの具体例としては、ヘキサメチルジシラザン[1,1,1−トリメチル−N−(トリメチルシリル)−シラナミン]、2,2,4,4,6,6−ヘキサメチルシクロトリシラザン、1,3−ジエチル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジフェニルジシラザン、および1,3−ジメチル−1,1,3,3−テトラフェニルジシラザンが挙げられ、これらはそれぞれ以下の構造/式で表される。
【0015】
【化1】

【0016】
疎水性剤として選択されるフルオロシランの具体例としては、C613CH2CH2OSi(OCH33、C817CH2CH2OSi(OC253等およびその混合物が挙げられる。
【0017】
疎水性剤として選択されるポリシロキサンの具体例としては、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8,10−ペンタメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、2,4,6−トリメチル−2,4,6−トリフェニルシクロトリシロキサン、ヘキサフェニルシクロトリシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン等、およびその混合物が挙げられる。
【0018】
コア−シェルフィラーの具体例としては、ドイツ、フランクフルトのエボニック・インダストリー社(EVONIK Industries)から市販されているVP STX801(BET表面積=40〜70m2/g)が挙げられる。VP STX801フィラーは、二酸化チタンコア(85重量パーセント)およびシリカシェル(15重量パーセント)を含み、このシェルは1,1,1−トリメチル−N−(トリメチルシリル)−シラナミンまたはヘキサメチルジシラザンで疎水的に修飾されている。一般的に、金属酸化物コアは、約50〜約99重量パーセント、約65〜約95重量パーセント、約80〜約90重量パーセント、より具体的には約85重量パーセントの量で選択され、シェルは約1〜約50重量パーセント、約5〜約35重量パーセント、より具体的には約15重量パーセントの量で存在する。化学的処理成分または疎水性剤は種々の有効量で選択することができ、例えば約0.1〜約40重量パーセント、約1〜約30重量パーセント、または約10〜約20重量パーセントで選択することができる。
【0019】
ある実施形態では、コアシェルのBET表面積は、約10〜約200m2/g、約30〜約100m2/g、または約40〜約70m2/gである。
【0020】
電荷輸送層用のコアシェルフィラーまたは添加剤は、例えば、光導電性部材成分を基準にして、約3〜約60重量パーセント、約1〜約50重量パーセント、または約2〜約10重量パーセントの量で存在する。
【0021】
ある実施形態において、ドープ金属酸化物とは、例えば少なくとも2種類の金属を含む混合金属酸化物を意味する。したがって、例えばコアとして選択される酸化アンチモンスズは、約50パーセント以下、例えば約1〜約45パーセントの酸化アンチモンを含み、残りの部分が酸化スズであり;酸化スズアンチモンは、約50パーセント以下、例えば約1〜約45パーセントの酸化スズを含み、残りの部分が酸化アンチモンである。
【0022】
一般的に、ある実施形態では、コアの酸化アンチモンスズは、SbxSnyz(式中、xは例えば約0.02〜約0.98、yは約0.51〜約0.99、zは約2.01〜約2.49である。)で表すことができ、より具体的には、この酸化物は約1〜約49パーセントのSb23および約51〜約99パーセントのSnO2を含む。ある実施形態では、xは約0.40〜約0.90、yは約0.70〜約0.95、zは約2.10〜約2.35であり、より具体的には、xは約0.75、yは約0.45、zは約2.25であり;コアは、約1〜約49パーセントの酸化アンチモンおよび約51〜約99パーセントの酸化スズ、または約15〜約35パーセントの酸化アンチモンおよび約85〜約65パーセントの酸化スズを含み、その合計が約100パーセントであるか;約40パーセントの酸化アンチモンおよび約60パーセントの酸化スズを含み、その合計が約100パーセントである。
【0023】
電荷輸送層に含まれるフッ化ポリマーの例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンのコポリマー、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)のコポリマー、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ(エチルビニルエーテル)のコポリマー、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ(メチルビニルエーテル)のコポリマー、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとフッ化ビニリデンのコポリマー、その混合物等が挙げられる。
【0024】
ある実施形態では、フッ化ポリマーは、直径が約200ナノメートル〜約10μmまたは約400ナノメートル〜約3μmのナノサイズ化/ミクロンサイズ化された粒子である。フッ化ポリマーの具体例としては、PTFE POLYFLON(商標)L−2(平均粒子サイズ約3μm)、L−5(平均粒子サイズ約5μm)、L−5F(平均粒子サイズ約4μm)、LDW−410(平均粒子サイズ約0.2μm)、以上は全て日本のダイキン工業株式会社より市販;および米国ニュージャージー州のシャムロック・テクノロジー社(Shamrock Technologies)から市販されているPTFE NANOFLON(登録商標)P51A(平均粒子サイズ約0.3μm)が挙げられる。
【0025】
本明細書に記載のコアシェルは、光導電体の電荷輸送層に添加され、電荷輸送層は、電荷輸送化合物、ポリマーバインダー、およびフッ化ポリマーPTFEを含有し、存在するPTFEの量は、例えば光導電体部材成分を基準にして約1〜約30重量パーセントまたは約4〜約10重量パーセントである。
【0026】
本明細書に記載の光導電体用に、基体、電荷発生層、電荷輸送層、正孔阻止層、接着層、保護オーバーコート層等の種々の公知の層を選択することができる。これらの層の多くについての例、厚さ、具体的成分としては、以下のものが挙げられる。
【0027】
その上の層が効果を発揮できるようにする基体等の種々の公知の支持基体を、本明細書に記載の光導電体用に選択することができる。基体層の厚さは、経済的事情、電気特性等の多くの要因に依存するため、この層の実質的厚さは、例えば3,000μm超、例えば約1、000〜約3,500μm、約1,000〜約2,000μm、約300〜約700μm、または例えば約100〜約500μmの最小限の厚さであってよい。ある実施形態では、この層の厚さは約75〜約300μmまたは約100〜約150μmである。
【0028】
基体は、種々の異なる材料、例えば不透明または実質的に透明の材料を含んでよく、任意の好適な材料を含んでよい。したがって、基体は、無機組成物または有機組成物等の電気伝導性材料または非電気伝導性材料の層を含んでよい。非電気伝導性材料として、この目的のために公知の種々の樹脂、例えばポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリウレタン等を使用してよく、これらは薄いウェブのように柔軟(flexible)である。電気伝導性基体は、例えばアルミニウム、ニッケル、鋼、銅等の任意の好適な金属;あるいは、炭素もしくは金属粉末等の電気伝導性物質または電気伝導性の有機材料を充填した前述のポリマー材料であってよい。電気絶縁性または電気伝導性の基体は、可撓性エンドレスベルト、ウェブ、剛性シリンダー、シート等の形態であってよい。基体層の厚さは、所望の強度、経済的事情等の種々の要因に依存する。ドラムの場合、この層の実質的厚さは、例えば最大で数センチメートルであってもよく、1ミリメートル未満の最小限の厚さであってもよい。同様に、可撓性ベルトの実質的厚さは、最終的な電子写真デバイスに悪影響を与えなければ、例えば約250μmまたは約50μm未満の最小限の厚さであってもよい。基体層が導電性でない実施形態では、電気伝導性コーティングによりその表面に電気伝導性を付与してもよい。導電性コーティングの厚さは、光学的透明性、所望の柔軟性の程度、および経済的要因に依存してかなり広範囲に変わり得る。
【0029】
基体の具体例は、本明細書に記載されている通りであり、より具体的には、本開示の画像形成部材に選択される層であり、該基体は不透明であっても実質的に透明であってもよく、例えば、チタンを含有する市販のポリマーであるMYLAR(登録商標)等の無機または有機ポリマー材料を含む絶縁性材料の層、表面に配置された酸化インジウムスズまたはアルミニウム等の半導電性表面層を有する有機または無機材料の層、またはアルミニウム、クロム、ニッケル、黄銅等の導電性材料の層を含む。基体は、可撓性、シームレス、または剛性であってよく、多くのさまざまな形態、例えばプレート、円筒形ドラム、スクロール、無端可撓性ベルト等であってよい。ある実施形態では、基体は、シームレス可撓性ベルトの形態である。いくつかの状況では、基体の裏をコーティングすることが望ましいことがあり、特に基体が可撓性の有機ポリマー材料の場合、例えばMAKROLON(登録商標)として市販されているポリカーボネート材料等のカール防止層をコーティングすることが望ましい。
【0030】
ある実施形態では、電荷発生層は、必要に応じて用いるバインダーおよび公知の電荷発生顔料、より具体的にはヒドロキシガリウムフタロシアニン、チタニルフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、樹脂バインダーを含む。一般的に、電荷発生層は、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン、アルキルヒドロキシルガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ペリレン、具体的にはビス(ベンズイミダゾ)ペリレン、チタニルフタロシアニン等、より具体的にはバナジルフタロシアニン、V型ヒドロキシガリウムフタロシアニン等の公知の電荷発生顔料ならびにセレン、セレン合金、三方晶セレン等の無機成分を含み得る。電荷発生顔料は、電荷輸送層に選択される樹脂バインダーと同様な樹脂バインダー中に分散してよく、樹脂バインダーが存在しなくてもよい。一般的に、電荷発生層の厚さは、その他の層の厚さ、電荷発生層に含有される電荷発生材料の量等の種々の要因に依存する。したがって、この層の厚さは、例えば電荷発生組成物が約30〜約75体積パーセントの量で存在する場合、例えば約0.05〜約10μm、より具体的には約0.25〜約2μmであり得る。ある実施形態におけるこの層の厚さの最大値は、感光性、電気的特性、機械的事項等の要因に主に依存する。電荷発生層のバインダー樹脂は、例えば約1〜約50重量パーセント、より具体的には約1〜約10重量パーセントの種々の好適な量で存在し、この樹脂は、ポリ(ビニルブチラール)、ポリ(ビニルカルバゾール)、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアリーレート、ポリ(塩化ビニル)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、塩化ビニルおよび酢酸ビニルのコポリマー、フェノール樹脂、ポリウレタン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、その他の公知の好適なバインダー等の種々の公知のポリマーから選択することができる。デバイスに先にコーティングされている層を実質的に乱さずそれに悪影響を与えないコーティング溶媒を選択することが望ましい。電荷発生層用のコーティング溶媒の例としては、ケトン、アルコール、芳香族炭化水素、ハロゲン化脂肪族炭化水素、シラノール、アミン、アミド、エステル等が挙げられる。溶媒の具体例としては、シクロヘキサノン、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、ブタノール、アミルアルコール、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸メトキシエチル等が挙げられる。
【0031】
電荷発生層は、セレン、および、セレンとヒ素、テルル、ゲルマニウム等との合金;水素化アモルファスシリコン;および、ケイ素とゲルマニウム、炭素、酸素、窒素等との化合物等の、非晶質膜を含んでよく、これは真空蒸着または堆積により作製できる。電荷発生層はまた、結晶性セレンおよびその合金の無機顔料;II〜VI属の化合物;ならびに、キナクリドン、多環式顔料、例えばジブロモアントアントロン顔料、ペリレンおよびペリノンジアミン、多環式芳香族キノン、ビス−、トリス−、テトラキス−アゾ等のアゾ顔料等の有機顔料等を含んでよく、これらを膜形成ポリマーバインダー中に分散させて溶媒コーティング技術で作製することができる。
【0032】
更に、電荷発生層は、本明細書に記載の種々の利点を得るために高価な電荷発生顔料を含んでもよく、そのような顔料は、例えば、同時係属中の米国特許出願第10/992,500号、米国特許出願公開第20060105254号に記載されているプロセスにより作製されるチタニルフタロシアニン成分である。
【0033】
種々のチタニルフタロシアニンまたはオキシチタンフタロシアニンが、800ナノメートル付近の近赤外線を吸収することが知られている好適な電荷発生顔料であり、例えばヒドロキシガリウムフタロシアニン等の他の顔料と比べて感度の向上を示し得る。一般的に、チタニルフタロシアニンは、I、II、III、X、およびIV型として知られる5種類の主な結晶形を有することが知られている。例えば、米国特許第5,189,155号および同第5,189,156号は、種々の多形体のチタニルフタロシアニンを得るための種々の方法を開示している。更に、米国特許第5,189,155号および同第5,189,156号は、I型、X型、およびIV型のフタロシアニンを得るためのプロセスに関する。米国特許第5,153,094号は、I、II、III、およびIV型の多形体を含むチタニルフタロシアニン多形体の製造に関する。米国特許第5,166,339号は、I、IV、およびX型のチタニルフタロシアニン多形体の製造プロセスならびにZ−1型およびZ−2型と呼ばれる2種類の多形体の製造を開示している。
【0034】
近赤外線に高い感度を有するチタニルフタロシアニンベースの感光体を得るためには、有機光導電体の場合に一般的なように顔料の純度および化学構造を制御するだけでなく、特定の結晶に調節された顔料を製造することが重要であると考えられる。したがって、高感度チタニルフタロシアニンを形成するプロセスによりチタニルフタロシアニンが作製されている光導電体を提供することが更に好ましい。
【0035】
ある実施形態では、電荷発生層に含まれるV型フタロシアニン顔料は、トリハロ酢酸およびアルキレンハライドを含む溶液にI型チタニルフタロシアニンを溶解し、得られた溶解I型チタニルフタロシアニンを含む混合物をアルコールおよびアルキレンハライドを含む溶液に添加することでY型チタニルフタロシアニンを沈殿させ、得られたY型チタニルフタロシアニンをモノクロロベンゼンで処理することで作製することができる。
【0036】
電荷発生層用に選択されるチタニルフタロシアニンに関して更に、そのようなフタロシアニンは、その他の公知のチタニルフタロシアニン多形体と区別可能な結晶相を示し、これはV型多形体と呼ばれ、I型チタニルフタロシアニンをV型チタニルフタロシアニン顔料に変換することで製造される。このプロセスは、I型チタニルフタロシアニンをY型チタニルフタロシアニンと呼ばれる中間体チタニルフタロシアニンに変換し、その後、Y型チタニルフタロシアニンをV型チタニルフタロシアニンに変換することを含む。
【0037】
本明細書に記載のプロセスは更に、他の公知のチタニルフタロシアニンと区別可能な結晶相を有するチタニルフタロシアニンを提供する。本開示に係るプロセスにより製造されるV型チタニルフタロシアニンは、例えば、9.0°、9.6°、24.0°、および27.2°に4つの特徴的ピークを有するX線粉末回折スペクトルを示し、一方IV型チタニルフタロシアニンは通常9.6°、24.0°、および27.2°における3つの特徴的ピークしか示さない点で、該V型チタニルフタロシアニンはIV型チタニルフタロシアニンと区別可能である。
【0038】
ある実施形態では、電荷発生層用のマトリックスとして選択できるポリマーバインダー材料の例として、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂が挙げられ、例えばポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリアリールシラノール、ポリアリールスルホン、ポリブタジエン、ポリスルホン、ポリシラノールスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリメチルペンテン、ポリ(フェニレンスルフィド)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリビニルアセタール、ポリアミド、ポリイミド、アミノ樹脂、フェニレンオキサイド樹脂、テレフタル酸樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリスチレンとアクリロニトリルのコポリマー、ポリ(塩化ビニル)、塩化ビニルと酢酸ビニルのコポリマー、アクリレートコポリマー、アルキド樹脂、セルロース膜形成剤(cellulosic film former)、ポリ(アミドイミド)、スチレンブタジエンコポリマー、塩化ビニリデン−塩化ビニルコポリマー、酢酸ビニル−塩化ビニリデンコポリマー、スチレン−アルキド樹脂、ポリ(ビニルカルバゾール)等が含まれる。これらのポリマーはブロックコポリマー、ランダムコポリマー、または交互コポリマーであってよい。
【0039】
電荷発生性の成分、組成物、または顔料は、樹脂系バインダー組成物中に種々の量で存在する。しかし一般的には、約5〜約90重量パーセントの電荷発生顔料が約10〜約95重量パーセントの樹脂系バインダーに分散されるか、約20〜約50重量パーセントの電荷発生顔料が約80〜約50重量パーセントの樹脂系バインダー組成物に分散される。ある一実施形態では、約50重量パーセントの電荷発生顔料が約50重量パーセントの樹脂系バインダー組成物に分散される。電荷発生層中の成分の全重量パーセントは約100である。
【0040】
電荷発生層コーティング混合物を混合した後塗布するために、スプレー、ディップコーティング、ロールコーティング、巻線ロッドコーティング、真空昇華等の種々の好適な従来公知のプロセスを用いてよい。いくつかの用途では、電荷発生層をドットパターンまたはラインパターンに加工してもよい。溶媒コーティングされた電荷発生層からの溶媒の除去は、オーブン乾燥、赤外線照射乾燥、風乾等の任意の公知の従来技術で行ってよい。
【0041】
本開示のある実施形態における電荷発生層のコーティングは、本明細書に記載されているような電荷発生層の最終的な乾燥厚さ、例えば約40〜約150℃で約1〜約90分間乾燥した後に例えば約0.01〜約30μmになるように行われ得る。より具体的には、厚さが例えば約0.1〜約30μmまたは約0.5〜約2μmの電荷発生層を、基体の上や、基体と電荷輸送層の間の他の表面等の上に塗布または堆積してよい。電荷発生層を塗布する前に、必要に応じて電気伝導性表面に電荷阻止層または正孔阻止層を塗布してもよい。所望であれば、電荷阻止層と電荷発生層の間、正孔阻止層と電荷発生層の間、または界面層と電荷発生層の間に接着層を含めてもよい。通常、電荷発生層は阻止層上に塗布され、電荷発生層の上に1または複数の電荷輸送層が形成される。電荷発生層を電荷輸送層の上または下に塗布してもよい。
【0042】
ある実施形態では、好適な公知の接着層を光導電体に含めることができる。典型的な接着層材料としては、例えばポリエステル、ポリウレタン等が含まれる。接着層の厚さは変わり得るが、ある実施形態では例えば約0.05〜約0.3μmである。接着層は、スプレー、ディップコーティング、ロールコーティング、巻線ロッドコーティング、グラビアコーティング、バードアプリケータコーティング等により正孔阻止層上に堆積することができる。堆積されたコーティングの乾燥は、オーブン乾燥、赤外線照射乾燥、風乾等により達成されてよい。
【0043】
通常正孔阻止層および電荷発生層に接触しているかその間に位置する必要に応じて用いる1または複数の接着層として、コポリエステル、ポリアミド、ポリ(ビニルブチラール)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリウレタン、およびポリアクリロニトリルを含む種々の公知の物質を選択することができる。この層の厚さは、例えば約0.001〜約1μmまたは約0.1〜約0.5μmである。必要に応じて、この層は、例えば本開示のある実施形態において更に望ましい電気的特性および光学的特性を提供するために、酸化亜鉛、二酸化チタン、窒化ケイ素、カーボンブラック等の導電性粒子および非導電性粒子を、例えば約1〜約10重量パーセントの効果的且つ好適な量で含んでもよい。
【0044】
本開示の光導電体用の1または複数の正孔阻止層または下引き層は、アミノシラン、ドープ金属酸化物、チタン、クロム、亜鉛、スズ等の金属の酸化物;フェノール化合物とフェノール樹脂の混合物、または2種類のフェノール樹脂の混合物、および必要に応じてSiO2等のドーパント等の公知の正孔阻止成分を含む種々の成分を含有してよい。フェノール化合物は通常、少なくとも2個のフェノール基を含み、例えばビスフェノールA(4,4’−イソプロピリデンジフェノール)、ビスフェノールE(4,4’−エチリデンビスフェノール)、ビスフェノールF(ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン)、ビスフェノールM(4,4’−(1,3−フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール)、ビスフェノールP(4,4’−(1,4−フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール)、ビスフェノールS(4,4’−スルホニルジフェノール),およびビスフェノールZ(4,4’−シクロヘキシリデンビスフェノール);ヘキサフルオロビスフェノールA(4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフェノール)、レゾルシノール、ヒドロキシキノン、カテキン等である。
【0045】
正孔阻止層は、例えば、約20〜約80重量パーセント、より具体的には約55〜約65重量パーセントのTiO2等の金属酸化物のような好適な成分;約20〜約70重量パーセント、より具体的には約25〜約50重量パーセントのフェノール樹脂;約2〜約20重量パーセント、より具体的には約5〜約15重量パーセントの、例えばフェノール基を少なくとも2個含む、ビスフェノールS等のフェノール化合物;および約2〜約15重量パーセント、より具体的には約4〜約10重量パーセントの、SiO2等の積層材効果抑制ドーパント(plywood suppression dopant)を含み得る。正孔阻止層コーティング分散液は、例えば以下のように調製することができる。まず、分散液中の金属酸化物のメジアン粒径が約10ナノメートル未満、例えば約5〜約9ナノメートルになるまで、ボールミリングまたはダイノミリングすることで、金属酸化物/フェノール樹脂分散液を調製する。上記分散液にフェノール化合物およびドーパントを添加した後、混合する。正孔阻止層コーティング分散液はディップコーティングまたはウェブコーティングで塗布することができ、この層はコーティング後に熱硬化することができる。得られた正孔阻止層の厚さは、例えば約0.01〜約30μm、より具体的には約0.1〜約8μmである。フェノール樹脂の例としては、フェノール、p−tert−ブチルフェノール、クレゾールとのホルムアルデヒドポリマー、例えばVARCUM(登録商標)29159および29101(オキシケム・カンパニー(OxyChem Company)から入手可能)、およびDURITE(登録商標)97(ボーデンケミカル社(Borden Chemical)から入手可能);アンモニア、クレゾール、およびフェノールとのホルムアルデヒドポリマー、例えばVARCUM(登録商標)29112(オキシケム・カンパニーから入手可能);4,4’−(1−メチルエチリデン)ビスフェノールとのホルムアルデヒドポリマー、例えばVARCUM(登録商標)29108および29116(オキシケム・カンパニーから入手可能);クレゾールおよびフェノールとのホルムアルデヒドポリマー、例えばVARCUM(登録商標)29457(オキシケム・カンパニーから入手可能)、DURITE(登録商標)SD−423A、SD−422A(ボーデンケミカル社から入手可能);またはフェノールおよびp−tert−ブチルフェノールとのホルムアルデヒドポリマー、例えばDURITE(登録商標)ESD556C(ボーデンケミカル社から入手可能)が含まれる。
【0046】
電荷輸送層の成分および分子としては、本明細書に記載したもの等の種々の公知の材料、例えばアリールアミンが含まれ、この層の厚さは通常、約5〜約75μm、より具体的には約10〜約40μmである。電荷輸送層成分の例としては、
【0047】
【化2】

【0048】
(式中、Xはアルキル、アルコキシ、アリール、ハロゲン、またはその混合であり、特に、Cl、OCH3、およびCH3からなる群から選択される置換基である。)ならびに以下の式で表される分子:
【0049】
【化3】

【0050】
(式中、XおよびYは、独立して、アルキル、アルコキシ、アリール、ハロゲン、またはその混合である。)が含まれる。
【0051】
アルキルおよびアルコキシは、例えば1〜約25個の炭素原子、より具体的には1〜約12個の炭素原子を含み、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、およびこれらに対応するアルコキシドが含まれる。アリールは6〜約36個の炭素原子を含み得、例えばフェニル等が含まれる。ハロゲンとしては、塩化物、臭化物、ヨウ化物、およびフッ化物が含まれる。ある実施形態では、置換されたアルキル、アルコキシ、およびアリールを選択してもよい。
【0052】
具体的な電荷輸送化合物の例としては、アルキルがメチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル等からなる群から選択されるN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(アルキルフェニル)−1,1−ビフェニル−4,4’−ジアミン;ハロ置換基がクロロ置換基であるN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(ハロフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン;N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ジ−p−トリル−[p−テルフェニル]−4,4’’−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ジ−m−トリル−[p−テルフェニル]−4,4’’−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ジ−o−トリル−[p−テルフェニル]−4,4’’−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス−(4−イソプロピルフェニル)−[p−テルフェニル]−4,4’’−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス−(2−エチル−6−メチルフェニル)−[p−テルフェニル]−4,4’’−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス−(2,5−ジメチルフェニル)−[p−テルフェニル]−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−クロロフェニル)−[p−テルフェニル]−4,4’’−ジアミン、テトラ−p−トリル−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−メトキシフェニル)−1,1−ビフェニル−4,4’−ジアミン等が含まれる。その他の公知の電荷輸送層分子を、例えば米国特許第4,921,773号および同第4,464,450号を参照して選択することができる。
【0053】
ある実施形態では、電荷輸送成分は以下の式/構造で表すことができる。
【0054】
【化4】

【0055】
電荷輸送層用に選択されるバインダー材料の例としては、ポリカーボネート、ポリアリーレート、アクリレートポリマー、ビニルポリマー、セルロースポリマー、ポリエステル、ポリシロキサン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ(シクロオレフィン)、エポキシ、およびこれらのランダムコポリマーまたは交互コポリマー;より具体的には、ポリ(4,4’−イソプロピリデン−ジフェニレン)カーボネート(これはビスフェノール−A−ポリカーボネートともいう)、ポリ(4,4’−シクロヘキシリジンジフェニレン)カーボネート(これはビスフェノール−Z−ポリカーボネートともいう)、ポリ(4,4’−イソプロピリデン−3,3’−ジメチル−ジフェニル)カーボネート(これはビスフェノール−C−ポリカーボネートともいう)等のポリカーボネートが含まれる。ある実施形態では、電荷輸送層バインダーは、重量平均分子量が約20,000〜約100,000、または好ましくは分子量Mwが約50,000〜約100,000のポリカーボネート樹脂を含む。一般的に、ある実施形態では、輸送層は約10〜約75重量パーセントの電荷輸送材料、より具体的には約35〜約50パーセントの電荷輸送材料を含有する。
【0056】
1または複数の電荷輸送層、より具体的には電荷発生層に接触している第1の電荷輸送層およびその上のトップまたは第2の電荷輸送オーバーコート層は、ポリカーボネート等の電気的に不活性な膜形成ポリマーに溶解または分子的に分散された電荷輸送小分子を含んでもよい。ある実施形態において、「溶解された」とは、例えば、小分子がポリマー中に溶解されて均一な相が形成されている溶液を形成することを指し;ある実施形態において、「分子的に分散された」とは、例えば、ポリマー中に分散されている電荷輸送分子を指し、この小分子はポリマー中に分子スケールで分散されている。1または複数の電荷輸送層用に種々の電荷輸送小分子または電気的活性小分子を選択することができる。ある実施形態において、電荷輸送とは、例えば、電荷発生層で生成した自由電荷が輸送層を通って輸送されることを可能にするモノマーとしての電荷輸送分子を指す。
【0057】
正孔輸送分子、特に第1および第2の電荷輸送層用の正孔輸送分子の例としては、例えば1−フェニル−3−(4’−ジエチルアミノスチリル)−5−(4’’−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン等のピラゾリン類;N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン、テトラ−p−トリル−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−メトキシフェニル)−1,1−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ジ−p−トリル−[p−テルフェニル]−4,4’’−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ジ−m−トリル−[p−テルフェニル]−4,4’’−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ジ−o−トリル−[p−テルフェニル]−4,4’’−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス−(4−イソプロピルフェニル)−[p−テルフェニル]−4,4’’−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス−(2−エチル−6−メチルフェニル)−[p−テルフェニル]−4,4’’−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス−(2,5−ジメチルフェニル)−[p−テルフェニル]−4,4’’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−クロロフェニル)−[p−テルフェニル]−4,4’’−ジアミン等のアリールアミン;N−フェニル−N−メチル−3−(9−エチル)カルバジルヒドラゾン、および4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,2−ジフェニルヒドラゾン等のヒドラゾン類;および2,5−ビス(4−N,N’−ジエチルアミノフェニル)−1,2,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール類、スチルベン類等が含まれる。しかし、ある実施形態では、プリンター等のハイスループットの機器中のサイクルアップを最小限に抑えるか回避するために、電荷輸送層はジまたはトリアミノトリフェニルメタンを実質的に含まないべきである(約2パーセント未満)。電荷発生層への正孔の高効率な注入を可能にし、バインダーを含む電荷輸送層を通して短い輸送時間で正孔を輸送する小分子電荷輸送化合物としては、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン、テトラ−p−トリル−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−メトキシフェニル)−1,1−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ジ−p−トリル−[p−テルフェニル]−4,4’’−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ジ−m−トリル−[p−テルフェニル]−4,4’’−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ジ−o−トリル−[p−テルフェニル]−4,4’’−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス−(4−イソプロピルフェニル)−[p−テルフェニル]−4,4’’−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス−(2−エチル−6−メチルフェニル)−[p−テルフェニル]−4,4’’−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス−(2,5−ジメチルフェニル)−[p−テルフェニル]−4,4’’−ジアミン、およびN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−クロロフェニル)−[p−テルフェニル]−4,4’’−ジアミン、またはその混合物が含まれる。所望であれば、電荷輸送層中の電荷輸送材料は、高分子電荷輸送材料または小分子電荷輸送材料と高分子電荷輸送材料の組合せを含んでもよい。
【0058】
ある実施形態では各電荷輸送層の厚さは約5〜約75μmであるが、ある実施形態でこの範囲外の厚さを選択してもよい。電荷輸送層は、正孔輸送層上に置かれた静電荷が、その上の静電潜像の形成および保持を防止するのに十分な割合の照射がない場合には伝導されない程度に、絶縁体であるべきである。一般的に、電荷輸送層と電荷発生層の厚さの比率は約2:1〜200:1、場合によっては400:1であってよい。電荷輸送層は、意図された使用領域において可視光または可視線を実質的に吸収しないが、光導電層すなわち電荷発生層で光により発生した正孔の注入を可能にし、これらの正孔を輸送して活性層表面上で表面電荷を選択的に放電することを可能にするという点で、電気的に「活性」である。
【0059】
選択される連続的電荷輸送オーバーコート層の厚さは、採用する系中の帯電部(バイアス帯電ロール)、クリーニング部(ブレードまたはウェブ)、現像部(ブラシ)、転写部(バイアス転写ロール)等の摩耗性に依存し、最大で約10μmになり得る。ある実施形態では、この各層の厚さは約1〜約5μmである。種々の好適な従来の方法を用いて、オーバーコート層コーティング混合物を混合し、その後、光導電体に塗布することができる。典型的な塗布技術としては、スプレー、ディップコーティング、ロールコーティング、巻線ロッドコーティング等が含まれる。堆積されたコーティングの乾燥は、任意の好適な従来技術、例えばオーブン乾燥、赤外線照射乾燥、風乾等で行ってよい。乾燥させた本開示のオーバーコート層は、画像形成中に正孔を輸送するべきであり、フリーキャリア濃度が高すぎないべきである。
【0060】
オーバーコートは、電荷輸送層と同じ成分を含んでよく、電荷輸送分子と好適な電気的に不活性な樹脂バインダーの重量比は、例えば約0/100〜約60/40または約20/80〜約40/60である。
【0061】
例えば側方電荷移動(lateral charge migration:LCM)抵抗の改善を可能にするために必要に応じて少なくとも1つの電荷輸送層中に導入される成分または材料の例としては、テトラキスメチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)メタン(IRGANOX(登録商標)1010、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社(Ciba Specialties Chemicals)から入手可能)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)等のヒンダードフェノール系酸化防止剤、ならびにSUMILIZER(商標)BHT−R、MDP−S、BBM−S、WX−R、NW、BP−76、BP−101、GA−80、GM、およびGS(住友化学株式会社から入手可能)、IRGANOX(登録商標)1035、1076、1098、1135、1141、1222、1330、1425WL、1520L、245、259、3114、3790、5057、および565(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社から入手可能)、およびADEKA STAB(商標)AO−20、AO−30、AO−40、AO−50、AO−60、AO−70、AO−80、およびAO−330(旭電化工業株式会社から入手可能)等のその他のヒンダードフェノール系酸化防止剤;SANOL(商標)LS−2626、LS−765、LS−770、およびLS−744(三共株式会社から入手可能)、TINUVIN(登録商標)144および622LD(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社から入手可能)、MARK(商標)LA57、LA67、LA62、LA68、およびLA63(旭電化工業株式会社から入手可能)、SUMILIZER(商標)TPS(住友化学株式会社から入手可能)等のヒンダードアミン系酸化防止剤;SUMILIZER(商標)TP−D(住友化学株式会社から入手可能)等のチオエーテル系酸化防止剤;MARK(商標)2112、PEP−8、PEP−24G、PEP−36、329K、およびHP−10(旭電化工業株式会社から入手可能)等のフォスファイト系酸化防止剤;ビス(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン(BDETPM)、ビス−[2−メチル−4−(N−2−ヒドロキシエチル−N−エチル−アミノフェニル)]−フェニルメタン(DHTPM)等のその他の分子が含まれる。電荷輸送層の少なくとも1つにおける酸化防止剤の重量パーセントは、約0〜約20重量パーセント、約1〜約10重量パーセント、または約3〜約8重量パーセントである。
【0062】
主に簡潔さのために、本明細書に具体的に開示されている各層の各置換基および各成分/化合物/分子、ポリマー(成分)の例は、網羅性を意図したものではない。したがって、具体的に開示されていないまたは請求されていない種々の成分、ポリマー、式、構造、およびR基、または置換基の例および炭素鎖長も本開示および特許請求項の範囲に包含されることが意図される。また、炭素鎖長は、開示または請求または想定される値の間の全ての数を含むことを意図しており、したがって、1〜約20個の炭素原子、および6〜約36個の炭素原子は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15...36またはそれ以上を含む。例えば、少なくとも1つとは、1〜約5、1〜約2、1、2等を意味する。同様に、開示および請求されている各層の厚さ、各層の成分の例、各成分の量の範囲も網羅的ではなく、本開示および特許請求の範囲は、開示されていないまたは想定され得るその他の好適なパラメータを包含することを意図する。
【0063】
比較例1
30ミリメートルのアルミニウムドラム基体上に、以下のように下引き層を調製して堆積させた。ジルコニウムアセチルアセトナートトリブトキシド(35.5部)、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(4.8部)、およびポリ(ビニルブチラール)BM−S(2.5部)をn−ブタノール(52.2部)に溶解した。次いで、得られた溶液を、ディップコーターを用いて上記アルミニウムドラム基体上にコーティングし、コーティング溶液層を59℃で13分間予熱し、58℃で17分間加湿し(露点=54℃)、135℃で8分乾燥させた。下引き層の厚さは約1.3μmであった。
【0064】
クロロガリウムフタロシアニン(C型)を含む電荷発生層を上記下引き層上に厚さ約0.2μmで堆積させた。電荷発生層コーティング分散液は以下のように調製した。2.7グラムのC型クロロガリウムフタロシアニン(ClGaPc)顔料を、2.3グラムのポリマーバインダー(カルボキシル修飾ビニルコポリマー、VMCH、ダウ・ケミカル・カンパニー社製)、15グラムの酢酸n−ブチル、および30グラムのキシレンと混合した。得られた混合物をアトライターミル中で約200グラムの1ミリメートルHi−Beaボロシリケートガラスビーズと約3時間混合した。次いで、得られた分散液混合物を、20μmのナイロン布フィルターでろ過し、分散液の固形分が約6重量パーセントになるように希釈した。
【0065】
その後、N,N’−ジフェニル−N,N−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(mTBD、4グラム)および三菱ガス化学株式会社から入手可能な膜形成ポリマーバインダーPCZ−400[ポリ(4,4’−ジヒドロキシ−ジフェニル−1−1−シクロヘキサン、Mw=40,000)](6グラム)を21グラムのテトラヒドロフラン(THF)と9グラムのトルエンとの溶媒混合物に溶解して調製した溶液から、32μmの電荷輸送層を電荷発生層の上にコーティングした。電荷輸送層のPCZ−400/mTBD比は60/40であり、約120℃で約40分間乾燥させた。
【0066】
比較例2
CAVIPRO(商標)300ナノマイザー(オハイオ州クリーブランドのファイブ・スター・テクノロジー社(Five Star Technology)製)を用いて21グラムのテトラヒドロフラン(THF)と9グラムのトルエンとの溶媒混合物に溶解/分散させたN,N’−ジフェニル−N,N−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(4グラム)、三菱ガス化学株式会社から入手可能な膜形成ポリマーバインダーPCZ400[ポリ(4,4’−ジヒドロキシ−ジフェニル−1−1−シクロヘキサン、Mw=40,000)](6グラム)、およびダイキン工業株式会社から入手可能なポリテトラフルオロエチレンであるPTFE POLYFLON(商標)L−2微粒子(1グラム)から調製した分散液から32μmの電荷輸送層を電荷発生層の上にコーティングしたこと以外は、比較例1と同様に光導電体を作製した。電荷輸送層のPCZ−400/mTBD/PTFE L−2比は54.5/36.4/9.1であり、約120℃で約40分間乾燥させた。
【0067】
比較例3
21グラムのテトラヒドロフラン(THF)と9グラムのトルエンとの溶媒混合物に溶解/分散させたN,N’−ジフェニル−N,N−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(4グラム)、三菱ガス化学株式会社から入手可能な膜形成ポリマーバインダーPCZ400[ポリ(4,4’−ジヒドロキシ−ジフェニル−1−1−シクロヘキサン、Mw=40,000)](6グラム)、およびドイツ、フランクフルトのエボニック社から入手可能なコアシェルフィラーVP STX801[85重量パーセントの酸化チタンコアおよび15重量パーセントの1,1,1−トリメチル−N−(トリメチルシリル)−シラナミン処理シリカシェル、直径約40ナノメートル](1グラム)から調製した分散液から32μmの電荷輸送層を電荷発生層の上にコーティングしたこと以外は、比較例1と同様に光導電体を作製した。電荷輸送層のPCZ−400/mTBD/コアシェルフィラーVP STX801比は54.5/36.4/9.1であり、約120℃で約40分間乾燥させた。
【0068】
実施例1
21グラムのテトラヒドロフラン(THF)と9グラムのトルエンとの溶媒混合物に溶解/分散させたN,N’−ジフェニル−N,N−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(4グラム)、三菱ガス化学株式会社から入手可能な膜形成ポリマーバインダーPCZ400[ポリ(4,4’−ジヒドロキシ−ジフェニル−1−1−シクロヘキサン、Mw=40,000)](6グラム)、ドイツ、フランクフルトのエボニック・インダストリー社から入手可能なコアシェルフィラーVP STX801[85重量パーセントの酸化チタンコアおよび15重量パーセントの1,1,1−トリメチル−N−(トリメチルシリル)−シラナミン処理シリカシェル、直径約40ナノメートル](0.3グラム)、およびダイキン工業株式会社から入手可能なポリテトラフルオロエチレンであるPTFE POLYFLON(商標)L−2微粒子(0.8グラム)から調製した分散液から32μmの電荷輸送層を電荷発生層の上にコーティングしたこと以外は、比較例1と同様に光導電体を作製した。電荷輸送層のPCZ−400/mTBD/コアシェルフィラーVP STX801/PTFE L−2比は54.5/36.4/2.7/6.4であり、約120℃で約40分間乾燥させた。
【0069】
実施例II
アトライターを用いて21グラムのテトラヒドロフラン(THF)と9グラムのトルエンとの溶媒混合物に溶解/分散させたN,N’−ジフェニル−N,N−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(4グラム)、三菱ガス化学株式会社から入手可能な膜形成ポリマーバインダーPCZ400[ポリ(4,4’−ジヒドロキシ−ジフェニル−1−1−シクロヘキサン、Mw=40,000)](6グラム)、コアシェルフィラー(85重量パーセントの酸化アルミニウムコアおよび15重量パーセントのシリカシェル、直径約20ナノメートル)(0.3グラム)、およびダイキン工業株式会社から入手可能なポリテトラフルオロエチレンであるPOLYFLON(商標)L−2微粒子(0.7グラム)から調製した分散液から32μmの電荷輸送層を電荷発生層の上にコーティングすること以外は、比較例1と同様に光導電体を作製する。電荷輸送層のPCZ−400/mTBD/酸化アルミニウムシリカコアシェルフィラー/PTFE L−2比は54.5/36.4/2.7/6.4であり、約120℃で約40分間乾燥させる。
【0070】
電気的特性試験
上記で作製した比較例1、2、および3ならびに実施例Iの光導電体を、1回の帯電−除電サイクルに続けて1回の帯電−露光−除電サイクルの順で行う光放電サイクルが得られるように設定したスキャナを用いて試験した。サイクルと共に光強度を漸増させて、種々の露光強度における感光性および表面電位が測定される一連の光放電特性(PIDC)曲線を得た。また、表面電位を漸増させながら一連の帯電−除電サイクルを行い種々の電圧に対する電荷密度曲線を描き、更なる電気的特性を得た。スキャナには、種々の表面電位で一定の電圧を帯電するように設定したスコロトロンを取り付けた。4つの光導電体を、一連のニュートラルデンシティーフィルターを調整することで露光強度を漸増させながら、表面電位700ボルトで試験した。露光光源は780ナノメートルの発光ダイオードであった。ゼログラフィーのシミュレーションは、周囲条件(相対湿度40パーセント、22℃)に環境が調節された遮光チャンバーで行った。
【0071】
比較例1、2、および3ならびに実施例Iの光導電体は実質的に同じPIDCを示した。
【0072】
摩耗試験
FX469(富士ゼロックス株式会社製)磨耗設備(wear fixture)を用いて上記4つの光導電体の摩耗試験を行った。各磨耗試験を開始する前に、パーマスコープを用いて各光導電体の総厚を測定した。その後、光導電体を別々に摩耗設備中に5万サイクル分置いた。再度、総厚を測定し、厚さの差を用いて光導電体の摩耗率(ナノメートル/キロサイクル)を算出した。摩耗率が小さいほど、光導電体の摩耗抵抗性が大きい。摩耗率のデータ概要を表1に示す。
【0073】
実施例Iの光導電体は、摩耗率が15に改善されており、例えば、1,000,000回のゼログラフィー画像形成サイクルの長寿命光導電体を可能にするものであり、優れた解像度でにじみがない又は最小限の現像画像が得られたが、比較例の光導電体はそのようなものではなかった。
【0074】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電荷発生層と、電荷輸送成分、フッ化ポリマー、およびコアシェル成分を含有する電荷輸送層と、を含む光導電体であって、前記コアが金属酸化物を含み、前記シェルがシリカを含む、光導電体。
【請求項2】
前記シェルが疎水性剤で化学的に修飾されており、
前記フッ化ポリマーが、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンのコポリマー、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)のコポリマー、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ(エチルビニルエーテル)のコポリマー、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ(メチルビニルエーテル)のコポリマー、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとフッ化ビニリデンのコポリマー、およびその混合物からなる群から選択され、
前記疎水性剤が、ヘキサメチルジシラザン、2,2,4,4,6,6−ヘキサメチルシクロトリシラザン、1,3−ジエチル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジフェニルジシラザン、1,3−ジメチル−1,1,3,3−テトラフェニルジシラザン、およびその混合物からなる群から選択されるシラザンあり、
前記金属酸化物が、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化アルミニウム亜鉛、二酸化アンチモンチタン、酸化アンチモンスズ、酸化インジウム、酸化インジウムスズ、またはその混合物である、請求項1に記載の光導電体。
【請求項3】
前記電荷輸送成分が、
【化1】

(式中、Xは、アルキル、アルコキシ、アリール、およびハロゲン、ならびにその混合物からなる群から選択される。)の少なくとも1つで表されるか、あるいは、前記電荷輸送成分が、
【化2】

(式中、X、Y、およびZは、独立して、アルキル、アルコキシ、アリール、ハロゲン、およびその混合物からなる群から選択される。)で表され、
前記フッ化ポリマーが、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンのコポリマー、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)のコポリマー、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ(エチルビニルエーテル)のコポリマー、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ(メチルビニルエーテル)のコポリマー、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとフッ化ビニリデンのコポリマーからなる群から選択される、請求項1に記載の光導電体。
【請求項4】
前記電荷発生層が、チタニルフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、アルコキシガリウムフタロシアニン、ハロガリウムフタロシアニン、無金属フタロシアニン、ペリレン、およびその混合物の少なくとも1つを含む顔料を含有し、
前記シェルが、トリアルキル−N−(トリアルキルシリル)−シラナミンを含み、
更に、前記光導電体が、支持基体、正孔阻止層および接着層を含み、前記正孔阻止層が前記支持基体と前記電荷発生層の間に設けられ、前記接着層が前記正孔阻止層と前記電荷発生層の間に設けられている、請求項1に記載の光導電体。

【公開番号】特開2011−8266(P2011−8266A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147470(P2010−147470)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】