説明

ポリプロピレン樹脂組成物およびその製造方法

【課題】耐衝撃性と溶融成形時の流動性のバランスに優れたポリプロピレン樹脂組成物およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】反応性官能基を有するポリプロピレン樹脂(A)30〜99重量部、(A)の反応性官能基と反応しない反応性官能基を有するゴム質重合体(B)1〜70重量部の合計100重量部に対して、(A)の反応性官能基と反応する反応性官能基を少なくとも1つ、および(B)の反応性官能基と反応する反応性官能基を少なくとも1つ有する化合物(C)を0.01〜5重量部配合してなることを特徴とするポリプロピレン樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐衝撃性と溶融成形時の流動性のバランスに優れたポリプロピレン樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン樹脂は、耐熱性、成形加工性、機械的性質、耐薬品性などに優れ、しかも安価であることから、電気・電子部品、家庭電化製品、ハウジング、包装材料、自動車部品など、工業的に幅広く用いられている。さらに、近年、自動車軽量化の要望から、バンパー、内外装部品など自動車用途にも幅広く用いられている。
【0003】
ポリプロピレン樹脂は、分子内に極性基を有していないので、化学的に不活性で安定性に優れる。しかし、ポリプロピレン樹脂単体では耐衝撃性に乏しく、ポリマーブレンドによる耐衝撃性付与改良が行われてきた。例えば、変性ポリプロピレン樹脂と変性エチレン−プロピレン共重合体からなる樹脂組成物(特許文献1参照)、未変性ポリプロピレン樹脂、変性エチレン−プロピレン共重合体、アミノ基含有化合物からなる樹脂組成物(特許文献2参照)、ポリプロピレン樹脂、官能基をグラフト重合したポリプロピレン樹脂、特定のカルボキシル基含有エチレン系混合物、グリシジル基あるいはヒドロキシル基を有するエチレン系共重合体、および反応促進剤からなる樹脂組成物(特許文献3参照)、ポリプロピレン樹脂、ヒドロキシル基変性ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、不飽和カルボン酸変性エチレン・プロピレンゴムからなる組成物(特許文献4参照)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−222254号公報
【特許文献2】特開平3−281646号公報
【特許文献3】特開平6−166777号公報
【特許文献4】特開平8−283488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1には、極性基の導入により被塗装性に優れる樹脂組成物が開示されているが、変性ポリプロピレン樹脂と変性エチレン−プロピレン共重合体の官能基間の反応が十分ではないため、分散粒径が数マイクロメートルオーダーと大きく、耐衝撃性が不十分であった。また特許文献2に開示されている樹脂組成物は、未変性のポリプロピレン樹脂を使用しているため、ポリプロピレン樹脂と変性エチレン−プロピレン共重合体は化学反応することがなく、耐衝撃性が不十分であった。また、耐衝撃性を付与するために高分子量の未変性ポリプロピレン樹脂を使用すると、溶融成形時の流動性が低下する懸念があった。特許文献3〜4は、変性ポリプロピレン樹脂およびその変性ポリプロピレン樹脂と化学反応可能なエチレン系共重合体からなる組成物が開示されているが、耐衝撃性が不十分であった。
【0006】
本発明では、上記のような従来技術では得られなかった、耐衝撃性と溶融成形時の流動性のバランスに優れたポリプロピレン樹脂組成物およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため主として以下の構成を有する。すなわち、反応性官能基を有するポリプロピレン樹脂(A)30〜99重量部、(A)の反応性官能基と反応しない反応性官能基を有するゴム質重合体(B)1〜70重量部の合計100重量部に対して、(A)の反応性官能基と反応する反応性官能基を少なくとも1つ、および(B)の反応性官能基と反応する反応性官能基を少なくとも1つ有する化合物(C)を0.01〜5重量部配合してなるポリプロピレン樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、耐衝撃性と溶融成形時の流動性のバランスに優れたポリプロピレン樹脂組成物を提供することが可能となる。本発明により得られるポリプロピレン樹脂組成物は、自動車用内外装部品およびバンパーをはじめとした耐衝撃性と溶融成形時の流動性の求められる様々な用途に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例9で得られた樹脂組成物のTEMによるモルホロジー観察結果である。
【図2】比較例6で得られた樹脂組成物のTEMによるモルホロジー観察結果である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0011】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、反応性官能基を有するポリプロピレン樹脂(A)、(A)の反応性官能基と反応しない反応性官能基を有するゴム質重合体(B)、(A)の反応性官能基と反応する反応性官能基を少なくとも1つ、および(B)の反応性官能基と反応する反応性官能基を少なくとも1つ有する化合物(C)を配合してなるポリプロピレン樹脂組成物である。通常、反応性官能基を有するポリプロピレン樹脂(A)、(A)の反応性官能基と反応しない反応性官能基を有するゴム質重合体(B)を溶融混練すると、これらは互いに均一に溶解することはなく、(A)、(B)のいずれが分散相を形成してもよいが、一般的には、反応性官能基を有するポリプロピレン樹脂(A)が連続相、反応性官能基を有するゴム質重合体(B)が分散相を形成する。このような系に対して(A)の反応性官能基と反応する反応性官能基を少なくとも1つ、および(B)の反応性官能基と反応する反応性官能基を少なくとも1つ有する化合物(C)を配合して溶融混練することにより、(C)を介して(A)/(B)間の反応物が生成し、これにより2種のポリマー(A)/(B)間の界面の親和性が改良され、分散相の微細化が起こる。その結果、得られる成形品の耐衝撃性が向上する。以下、前記ポリプロピレン樹脂(A)の反応性官能基を反応性官能基(a)、前記ゴム質重合体(B)の反応性官能基を反応性官能基(b)、前記化合物(C)の反応性官能基を反応性官能基(c)と記載する場合がある。
【0012】
本発明に用いられる反応性官能基を有するポリプロピレン樹脂(A)のポリプロピレン樹脂は、ホモ、ブロック、ランダムのいずれの構造を有していてもよいが、得られる成形品の強度および剛性の面からホモポリプロピレンを用いることが好ましい。
【0013】
本発明に用いられる反応性官能基を有するポリプロピレン樹脂(A)は、主鎖もしくは末端に反応性官能基(a)を有するものである。反応性官能基(a)としては、例えば、酸無水物基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、オキサゾリン基、ヒドロキシ基などが挙げられ、これらを2種以上有してもよい。反応性の観点から酸無水物、エポキシ基、アミノ基が好ましい。
【0014】
反応性官能基(a)をポリプロピレン樹脂の主鎖に導入する方法としては、例えば、反応性官能基(a)を有する単量体をポリプロピレン樹脂の原料である単量体と共重合する方法、未変性のポリプロピレン樹脂に反応性官能基(a)を有する化合物をグラフト化させる方法などを挙げることができる。また、反応性官能基(a)をポリプロピレン樹脂の末端に導入する方法としては、例えば、未変性のポリプロピレン樹脂を分解し、生じた二重結合に対して反応性官能基(a)を導入する方法などを挙げることができる。この中でも、特にグラフト化により反応性官能基(a)を主鎖に導入したポリプロピレン樹脂が好適に用いることができる。
【0015】
酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸,無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水フマル酸、無水エンディック酸、1−ブテン−3,4−ジカルボン酸無水物、炭素数が多くとも18である末端に二重結合を有するアルケニル無水コハク酸、炭素数が多くとも18である末端に二重結合を有するアルカジエニル無水コハク酸等を挙げることできる。これらを2種以上併用しても差し支えない。酸無水物基を未変性のポリプロピレン樹脂に導入する方法としては、通常公知の技術が挙げられ、特に制限はないが、例えば、酸無水物とポリプロピレン樹脂の原料である単量体とを共重合する方法、酸無水物基を有する重合開始剤または連鎖移動剤を用いてポリプロピレン樹脂を重合する方法、酸無水物をポリプロピレン樹脂にグラフト化させる方法などを用いることができる。酸無水物のグラフト化には、例えば、先に例示した酸無水物を用いることができる。
【0016】
カルボキシル基を未変性のポリプロピレン樹脂に導入する方法としては、通常公知の技術が挙げられ、特に制限はないが、例えば、カルボキシル基を有する不飽和カルボン酸系単量体をポリプロピレン樹脂の原料である単量体と共重合する方法、カルボキシル基を有する重合開始剤または連鎖移動剤を用いてポリプロピレン樹脂を重合する方法、カルボキシル基含有化合物をポリプロピレン樹脂にグラフト化させる方法などを用いることができる。カルボキシル基含有化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチル等を用いることができる。
【0017】
エポキシ基を未変性のポリプロピレン樹脂に導入する方法としては、通常公知の技術が挙げられ、特に制限はないが、例えば、エポキシ基を有するビニル系単量体をポリプロピレンの原料である単量体と共重合する方法、エポキシ基を有する重合開始剤または連鎖移動剤を用いてポリプロピレン樹脂を重合する方法、エポキシ基含有化合物をポリプロピレン樹脂にグラフト化させる方法などを用いることができる。エポキシ基含有化合物としては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ビニルエポキシシクロヘキサン、スチリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等を用いることができる。
【0018】
アミノ基を未変性のポリプロピレン樹脂に導入する方法としては、通常公知の技術が挙げられ、特に制限はないが、例えば、アミノ基を有するビニル系単量体をポリプロピレンの原料である単量体と共重合する方法、アミノ基を有する重合開始剤または連鎖移動剤を用いてポリプロピレン樹脂を重合する方法、アミノ基含有化合物をポリプロピレン樹脂にグラフト化させる方法などを用いることができる。アミノ基含有化合物としては、例えば、アミノメチルアクリレート、アミノエチルアクリレート、アミノメチルメタクリレート、アミノエチルメタクリレート、アクリルアミン、アミノプロピルアクリレート、アミノ−n−ブチルアクリレート、アミノ−n−ブチルメタクリレート、アミノヘキシルアクリレート、N−t−ブチルアミノアクリレート、N−メチルアミノアクリレート、N−メチルアミノメタアクリレート、アミノヒドロキシプロピルアクリレート等のアミノ基含有アクリレート化合物、クロトンアミン、アリルアミン、メタアクリルアミン、N−メチルアクリルアミン等を用いることができる。
【0019】
オキサゾリン基を未変性のポリプロピレン樹脂に導入する方法としては、通常公知の技術が挙げられ、特に制限はないが、例えば、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリン、2−スチリル−オキサゾリンなどのオキサゾリン基を有するビニル系単量体をポリプロピレンの原料である単量体と共重合する方法などを用いることができる。
【0020】
ヒドロキシ基を未変性のポリプロピレン樹脂に導入する方法としては、通常公知の技術が挙げられ、特に制限はないが、例えば、ヒドロキシ基を有するビニル系単量体をポリプロピレンの原料である単量体と共重合する方法、ヒドロキシ基を有する重合開始剤または連鎖移動剤を用いてポリプロピレン樹脂を重合する方法、ヒドロキシ基含有化合物をポリプロピレン樹脂にグラフト化させる方法などを用いることができる。ヒドロキシ基含有化合物としては、例えば、2−ヒドロキシメチルアクリレート、2−ヒドロキシメチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタアクリレート、2−ヒドロキシエチルエトキシアクリレート、2−ヒドロキシエチルエトキシメタアクリレート、ジプロピレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、アリルアルコール等を用いることができる。これらのグラフト成分は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上併用しても差し支えない。
【0021】
反応性官能基を有するポリプロピレン樹脂(A)の粘度は、後述するゴム質重合体(B)との混練性の観点から230℃、2.16kgfにおけるMFRが100g/10min以下であることが好ましい。
【0022】
本発明で用いられる反応性官能基(b)を有するゴム質重合体(B)のゴム質重合体とは、一般的にガラス転移温度が室温より低く、分子間の一部が共有結合・イオン結合・ファンデルワールス力・絡み合い等により、互いに拘束されている重合体のことを指す。例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエンのランダム共重合体およびブロック共重合体、該ブロック共重合体の水素添加物、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ブタジエン−イソプレン共重合体などのジエン系ゴム、エチレン−プロピレンのランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレン−ブテンのランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレンとα−オレフィンとの共重合体、エチレン−アクリル酸エステル、エチレン−メタクリル酸エステルなどのエチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体、アクリル酸エステル−ブタジエン共重合体、例えばブチルアクリレート−ブタジエン共重合体などのアクリル系弾性重合体、エチレン−酢酸ビニルなどのエチレンと脂肪酸ビニルとの共重合体、エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン−プロピレン−ヘキサジエン共重合体などのエチレン−プロピレン非共役ジエン3元共重合体、ブチレン−イソプレン共重合体、塩素化ポリエチレン、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマーなどの熱可塑性エラストマーなどが好ましい例として挙げられる。
【0023】
本発明で用いられる反応性官能基(b)を有するゴム質重合体(B)は、主鎖もしくは末端に反応性官能基(b)を有するものである。反応性官能基(b)としては、例えば、酸無水物基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、オキサゾリン基、ヒドロキシ基などが挙げられ、これらを2種以上有してもよい。本発明において、反応性官能基(a)と反応性官能基(b)の組合せとしては、例えば、酸無水物基と酸無水物基、カルボキシル基とカルボキシル基、エポキシ基とエポキシ基、アミノ基とアミノ基、オキサゾリン基とオキサゾリン基、ヒドロキシ基とヒドロキシ基など同種の反応性官能基の組み合わせや、酸無水物基とカルボキシル基、酸無水物とエポキシ基、アミノ基とヒドロキシ基、アミノ基とオキサゾリン基等の組み合わせが好ましい。反応性官能基(a)と反応性官能基(b)が同一であることがより好ましい。反応性官能基(a)と反応性官能基(b)が同一の官能基を有する場合、後に記載する化合物(C)の反応性官能基(c)との反応がより均一に起こる。
【0024】
反応性官能基(b)をゴム質重合体(B)の主鎖に導入する方法としては、例えば、反応性官能基(b)を有する単量体をゴム質重合体の原料である単量体と共重合する方法、未変性のゴム質重合体に反応性官能基(b)を有する化合物をグラフト化させる方法などを挙げることができる。また、反応性官能基(b)をゴム質重合体(B)の末端に導入する方法としては、例えば、反応性官能基(b)を有する重合開始剤または連鎖移動剤、停止剤を用いてゴム質重合体を重合する方法、未変性のゴム質重合体を分解し、生じた二重結合に対して反応性官能基(b)を導入する方法などを挙げることができる。
【0025】
酸無水物としては、反応性官能基(a)を有するポリプロピレン樹脂(A)の説明において酸無水物として例示したものを挙げることができる。これらを2種以上併用しても差し支えない。このうち、無水マレイン酸が好適に用いられる。酸無水物基をゴム質重合体に導入する方法としては、通常公知の技術が挙げられ、特に制限はないが、例えば、酸無水物とゴム質重合体の原料である単量体とを共重合する方法、酸無水物をゴム質重合体にグラフト化させる方法などを用いることができる。酸無水物のグラフト化には、例えば、先に例示した酸無水物を用いることができる。
【0026】
カルボキシル基をゴム質重合体に導入する方法としては、通常公知の技術が挙げられ、特に制限はないが、例えば、カルボキシル基を有するビニル系単量体をゴム質重合体の原料である単量体と共重合する方法、カルボキシル基を有する重合開始剤または連鎖移動剤を用いてゴム質重合体を重合する方法、カルボキシル基含有化合物をゴム質重合体にグラフト化させる方法などを用いることができる。カルボキシル基を有するビニル系単量体およびカルボキシル基含有化合物の具体的な例としては、反応性官能基(a)を有するポリプロピレン樹脂(A)の説明においてカルボキシル基含有化合物として例示したものを挙げることができる。これらを2種以上併用しても差し支えない。
【0027】
エポキシ基をゴム質重合体に導入する方法としては、通常公知の技術が挙げられ、特に制限はないが、例えば、エポキシ基を有するビニル系単量体をゴム質重合体の原料である単量体と共重合する方法、エポキシ基を有する重合開始剤または連鎖移動剤を用いてゴム質重合体を重合する方法、エポキシ基含有化合物をゴム質重合体にグラフト化させる方法などを用いることができる。エポキシ基を有するビニル系単量体およびエポキシ基含有化合物としては、例えば、反応性官能基(a)を有するポリプロピレン樹脂(A)の説明においてエポキシ基含有化合物として例示したものを挙げることができる。これらを2種以上併用しても差し支えない。
【0028】
アミノ基をゴム質重合体に導入する方法としては、通常公知の技術が挙げられ、特に制限はないが、例えば、アミノ基を有するビニル系単量体をゴム質重合体の原料である単量体と共重合する方法、アミノ基を有する重合開始剤または連鎖移動剤を用いてゴム質重合体を重合する方法、アミノ基含有化合物をゴム質重合体にグラフト化させる方法などを用いることができる。アミノ基を有するビニル系単量体およびアミノ基含有化合物としては、例えば、反応性官能基(a)を有するポリプロピレン樹脂(A)の説明においてアミノ基含有化合物として例示したものを挙げることができる。これらを2種以上併用しても差し支えない。
【0029】
オキサゾリン基をゴム質重合体に導入する方法としては、通常公知の技術が挙げられ、特に制限はないが、例えば、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリン、2−スチリル−オキサゾリンなどのオキサゾリン基を有するビニル系単量体をゴム質重合体の原料である単量体と共重合する方法などを用いることができる。
【0030】
ヒドロキシ基をゴム質重合体に導入する方法としては、通常公知の技術が挙げられ、特に制限はないが、例えば、ヒドロキシ基を有するビニル系単量体をゴム質重合体の原料である単量体と共重合する方法、ヒドロキシ基を有する重合開始剤または連鎖移動剤を用いてゴム質重合体を重合する方法、ヒドロキシ基含有化合物をゴム質重合体にグラフト化させる方法などを用いることができる。ヒドロキシ基を有するビニル系単量体よびヒドロキシ基含有化合物としては、例えば、反応性官能基(a)を有するポリプロピレン樹脂(A)の説明においてヒドロキシ基含有化合物として例示したものを挙げることができる。これらを2種以上併用しても差し支えない。
【0031】
反応性官能基(a)を有するポリプロピレン樹脂(A)、反応性官能基(b)を有するゴム質重合体(B)は、いずれもその変性率が、好ましくは0.01〜10重量%、より好ましくは0.05〜6重量%、さらに好ましくは0.5〜2重量%の範囲内である。変性率が10重量%以下の場合、分子量および反応性官能基量のバランスが良く、得られる成形品の耐衝撃性がより向上する。ここで、変性率とは樹脂1gあたりに含有される反応性官能基の重量%を指す。変性率は、あらかじめ真空乾燥機などで乾燥したポリマーを熱キシレン中に溶解させ酸または塩基による滴定により測定することができる。滴定液としては、酸滴定の場合、例えば、塩酸/エタノールを挙げることができる。また、塩基滴定の場合、例えば、水酸化カリウム/エタノール溶液やナトリウムメトキシド/メタノール溶液を用いることができる。また、指示薬としては、例えば、フェノールフタレイン/エタノール溶液やチモールブルー溶液を用いることができる。変性率をかかる範囲とするように前記グラフトモノマーを効率よくグラフト化させるためには、ラジカル開始剤の存在下にて反応を実施することが好ましい。グラフト反応は通常60〜350℃の範囲内で行われ、好ましくは120〜250℃、さらに好ましくは180〜230℃の範囲内である。ラジカル開始剤の使用割合は、反応性官能基を有さない未変性ポリプロピレンまたは未変性ゴム質重合体100重量部に対して通常0.001〜5重量部であり、主鎖切断と官能基の導入量のバランスから、好ましくは0.01〜1重量部の範囲である。ラジカル開始剤としては、例えば、有機ペルオキシド、有機ペルエステル、アゾ化合物などが好ましく用いられる。有機ペルオキシド、有機ペルエステルの具体的な例としては、ベンゾイルペルオキシド、ジクロルベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ペルオキシドベンゾエート)ヘキシン−3、1,4−ビス(tert―ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチルペルアセテート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3,2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert−ブチルペルベンゾエート、tert−ブチルペルフェニルアセテート、tert−ブチルペルイソブチレート、tert−ブチルペル−sec−オクトエート、tert−ブチルペルビバレート、クミルペルビバレートおよびtert−ブチルペルジエチルアセテート等を挙げることができる。また、アゾ化合物の具体的な例としては、アゾビスイソブチロニトリルおよびジメチルアゾイソブチレートなどを挙げることができる。これらのうちで、ベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシド)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,4−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン等のジアルキルペルオキシドが好ましく用いられる。
【0032】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物において、反応性官能基(a)を有するポリプロピレン樹脂(A)と反応性官能基(b)を有するゴム質重合体(B)との配合比は、((A)の重量)/(B)の重量))が30/70〜99/1である。反応性官能基(a)を有するポリプロピレン樹脂(A)が30重量部未満であり、反応性官能基(b)を有するゴム質重合体(B)が70重量部を超える場合、ゴム質重合体としての性質が強くなり、耐衝撃性は良好であるものの、流動性、成形時の離型性や成形品の強度、剛性が著しく低下する。一方、反応性官能基(a)を有するポリプロピレン樹脂(A)が99重量部を超え、反応性官能基(b)を有するゴム質重合体(B)が1重量部未満である場合、ポリプロピレン樹脂としての性質が強くなり、流動性、成形時の離型性や成形品の強度、剛性は良好であるものの、耐衝撃性が著しく低下する。また、耐衝撃性と強度、剛性、離型性のバランスの観点から、((A)の重量)/(B)の重量))は50/50〜80/20の範囲がより好ましく、60/40〜70/30の範囲が最も好ましい。
【0033】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、反応性官能基(a)と反応する反応性官能基を少なくとも1つ、および反応性官能基(b)と反応する反応性官能基を少なくとも1つ有する化合物(C)を配合する必要がある。化合物(C)の反応性官能基(c)としては、例えば、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基などが挙げられる。これらを2種以上有してもよい。また、反応性官能基(c)として、反応性官能基(a)および反応性官能基(b)のいずれとも反応する1種の反応性官能基を2つ以上有してもよい。反応性官能基(a)と反応性官能基(b)が同一である場合、反応性官能基(c)は反応性官能基(a)および反応性官能基(b)のいずれとも反応する1種の反応性官能基を2つ以上有することが好ましく、化合物(C)を介したポリプロピレン樹脂(A)/ゴム質重合体(B)間の反応をより均一に進めることができる。例えば、反応性官能基(a)および(b)がいずれも酸無水物基の場合、反応性官能基(c)は酸無水物との反応性の観点からアミノ基またはエポキシ基が好ましく、さらに好ましくはアミノ基である。また、反応性官能基(a)または(b)の一方が酸無水物基、他方がエポキシ基の場合、反応性官能基(c)は酸無水物およびエポキシ基との反応性の観点からアミノ基が好ましい。上記の組み合わせにおいて、反応性官能基(c)としてアミノ基を選択することにより、(A)/(B)間の反応が十分に起こり、2種ポリマー間の界面の親和性が改良され、耐衝撃性がより向上する。
【0034】
化合物(C)に好ましく用いられる、アミノ基を一分子中に2つ以上有する化合物の例としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、1,3,6−トリスアミノメチルヘキサン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ビスプロピレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミンおよびポリオキシアルキレンポリアミン等の脂肪族アミン類、メンセンジアミン、イソフォロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタンおよび1、3−ジアミノシクロヘキサンなどの脂環式アミン類、メタキシリレンジアミンなどの脂肪芳香族アミン類、o−,m−,p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、2,4−ジアミノアニソール、2,4−トルエンジアミン、2,4−ジアミノジフェニルアミン、ジアミノジキシリルスルホンなどの芳香族アミン類、3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラスピロ[5,5]ウンデカンなどのビススピロ環ジアミンなどを挙げることができる。アミノ基の反応性、活性の観点から、1級アミノ基を有する化合物が好ましい。このようなアミノ基を有する化合物(C)は単独であるいは組み合わせて使用することができる。
【0035】
本発明において、化合物(C)の配合量は、(A)と(B)との合計100重量部に対して、0.01〜5重量部である。化合物(C)の配合量が0.01重量部より少ない場合、(A)/(B)間の反応が不十分となり、耐衝撃性が発現しにくくなる。0.05重量部以上が好ましく、0.1重量部以上がより好ましい。さらに、好ましくは0.3重量部以上であり、最も好ましくは0.5重量部以上である。一方、化合物(C)の配合量が5重量部を超えると、(C)による(A)/(B)間の反応が過剰となりゲル化が進行し、溶融成形時の流動性が低下する。3重量部以下が好ましく、1重量部以下がより好ましい。
【0036】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物には、その特性を損なわない範囲で、必要に応じて、前記(A)(B)(C)以外の成分を配合しても構わない。例えば耐衝撃性を維持しつつ、流動性を損なわない範囲で反応性官能基を有するポリプロピレン樹脂(A)以外の熱可塑性樹脂類を添加してもよい。かかる(A)以外の熱可塑性樹脂類としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリスルホン樹脂、四フッ化ポリエチレン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエチレン樹脂、未変性ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂やABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリアルキレンオキサイド樹脂等が挙げられる。かかる熱可塑性樹脂類は2種以上併用することも可能である。一般に、2種以上のポリマーの溶融混錬において、各ポリマーの粘度をそろえることにより、物理的な混練効果を得やすいことが知られている。例えば、(A)が特に低粘度(例えば、230℃、2.16kgfにおけるMFRが100g/10min以上)であり、(B)が特に高粘度(例えば、230℃、2.16kgfにおけるMFRが10g/10min以下)である場合には、(A)(B)(C)以外の成分として、(A)よりも高粘度の未変性ポリプロピレンを系に配合し、粘度を調整することで溶融混練時にゴム質重合体(B)との混練性が向上し、分散相が微細化し、その結果耐衝撃性の向上が期待できる。
【0037】
また、例えば耐衝撃性を維持しつつ、流動性を損なわない範囲で反応性官能基(b)を有するゴム質重合体(B)以外のゴム類を配合してもよい。かかるゴム類としては、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエンのランダム共重合体およびブロック共重合体、該ブロック共重合体の水素添加物、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ブタジエン−イソプレン共重合体などのジエン系ゴム、エチレン−プロピレンのランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレン−ブテンのランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレンとα−オレフィンとの共重合体、エチレン−アクリル酸、エチレン−メタクリル酸などのエチレン−不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル、エチレン−メタクリル酸エステルなどのエチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体、不飽和カルボン酸の一部が金属塩である、エチレン−アクリル酸−アクリル酸金属塩、エチレン−メタクリル酸−メタクリル酸金属塩などのエチレン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸金属塩共重合体、アクリル酸エステル−ブタジエン共重合体、例えばブチルアクリレート−ブタジエン共重合体などのアクリル系弾性重合体、エチレン−酢酸ビニルなどのエチレンと脂肪酸ビニルとの共重合体、エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン−プロピレン−ヘキサジエン共重合体などのエチレン−プロピレン非共役ジエン3元共重合体、ブチレン−イソプレン共重合体、塩素化ポリエチレン、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマーなどの熱可塑性エラストマーおよびそれらの変性物などが好ましい例として挙げられる。かかるゴム類は2種以上併用することも可能である。
【0038】
これら(A)以外の熱可塑性樹脂類や(B)以外のゴム類を用いる場合、その配合量は、特に制限はないが、(A)と(B)との合計100重量部に対して、(A)以外の熱可塑性樹脂類および(B)以外のゴム類の合計を100重量部未満とすることが好ましい。
【0039】
また、その特性を損なわない範囲で、必要に応じて、各種添加剤を添加してもよい。かかる各種添加剤類としては、好ましくは、結晶核剤、着色防止剤、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体、ハロゲン化銅、ヨウ化化合物などの酸化防止剤や熱安定剤、レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系などの耐候剤、脂肪族アルコール、脂肪族アミド、脂肪族ビスアミド、エチレンビスステアリルアミドや高級脂肪酸エステルなどの離型剤、p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミドなどの可塑剤、滑剤、ニグロシン、アニリンブラックなどの染料系、硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラックなどの顔料系の着色剤、アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートなどの非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンオキシド、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせなどの難燃剤、発泡剤などが挙げられる。各種添加剤類は2種以上併用することも可能である。その配合量は、特に制限はないが、(A)と(B)との合計100重量部に対して0.01〜20重量部が好ましい。
【0040】
酸化防止剤や熱安定剤としては、ヒンダードフェノール系化合物、リン系化合物が好ましく用いられる。
【0041】
ヒンダードフェノール系化合物の具体例としては、トリエチレングリコール−ビス[3−t−ブチル−(5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N、N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ペンタエリスリチルテトラキス[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−s−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート、3,9−ビス[2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンなどが挙げられる。
【0042】
中でも、エステル型高分子ヒンダードフェノールタイプが好ましく、具体的には、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ペンタエリスリチルテトラキス[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス[2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどが好ましく用いられる。
【0043】
リン系化合物の具体例としては、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,4−ジ−クミルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビスフェニレンホスファイト、ジ−ステアリルペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、トリフェニルホスファイト、3,5−ジ−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスフォネートジエチルエステルなどが挙げられる。
【0044】
また、その特性を損なわない範囲で、無機充填材を配合することができる。無機充填材としては、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、硼酸アルミニウムウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などの繊維状無機充填材、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケートなどの珪酸塩、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素および炭化珪素などの非繊維状無機充填材が挙げられ、これらは中空であってもよい。これら無機充填材を2種以上併用することも可能である。また、これら繊維状および/または非繊維状無機充填材は、イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理されていてもよい。
【0045】
前記に示した無機充填材の中でも、ガラス繊維、炭素繊維、ワラステナイト、カオリン、マイカ、クレー、タルク、アルミナ、ガラスビーズが好ましく、ガラス繊維、炭素繊維がより好ましく用いられる。本発明に用いられるガラス繊維には特に制限はなく、公知のものが使用できる。通常、ガラス繊維は、所定長さにカットしたチョップドストランド、ロービングストランド、ミルドファイバーなどの形状があり、平均繊維径5〜15μmのものが好ましく使用される。チョップドストランドを使用する場合、繊維長に特に制限はないが、押出混練作業性の高いストランド長3mmのガラス繊維が好ましく使用される。ロービングストランドを使用する場合、押出機にロービングストランドを直接投入する公知の技術により複合することができる。これらのガラス繊維を2種以上併用してもよい。
【0046】
本発明に用いられる炭素繊維には特に制限がなく、公知の各種炭素繊維、例えばポリアクリロニトリル(PAN)、ピッチ、レーヨン、リグニン、炭化水素ガス等を用いて製造される炭素質繊維や黒鉛質繊維や、これらの繊維を金属でコートした繊維が使用できる。中でも機械的特性向上が可能なPAN系炭素繊維が好ましく使用できる。炭素繊維は通常、所定長さにカットしたチョップドストランド、ロービングストランド、ミルドファイバーなどの形状があり、直径15μm以下、好ましくは5〜10μmである。チョップドストランドを使用する場合、繊維長に特に制限はないが、押出混練作業性の高いストランド長のものを使用することが好ましい。ロービングストランドを使用する場合、押出機にロービングストランドを直接投入する公知の技術により複合することができる。本発明ではチョップドストランドを用いることが好ましく、チョップド炭素繊維の前駆体である炭素繊維ストランドのフィラメント数は、製造コストおよび生産工程における安定性の観点から、1,000〜150,000本が好ましい。
【0047】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物における無機充填材の配合量は、反応性官能基(a)を有するポリプロピレン樹脂(A)と反応性官能基(b)を有するゴム質重合体(B)の合計100重量部に対し、通常1〜200重量部である。無機充填材の配合量を1重量部以上とすることにより、成形品の強度および剛性を向上させることができる。10重量部以上がより好ましく、20重量部以上がさらに好ましい。一方、無機充填材の配合量を200重量部以下とすることにより、樹脂組成物の溶融粘度を適度な範囲に抑え、成形性を維持することができる。150重量部以下がより好ましく、100重量部以下がさらに好ましい。
【0048】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、(A)、(B)のいずれが分散相を形成してもよいが、一般的には、反応性官能基を有するポリプロピレン樹脂(A)が連続相、反応性官能基を有するゴム質重合体(B)が分散相を形成する。分散相の分散粒径は1μm以下であることが好ましく、0.8μm以下であることがより好ましく、さらに好ましくは0.5μm以下である。分散相を上記範囲に微細化することにより、得られる成形品の耐衝撃性をより向上させることができる。
【0049】
ここでモルホロジー観察には公知の技術が適用できる。一般に、ポリプロピレン樹脂組成物中のモルホロジーは溶融成形後にも維持されるため、本発明においては、ポリプロピレン樹脂組成物を射出成形してなる成形体を用いてモルホロジーを観察する。すなわち、ポリプロピレン樹脂(A)の融点+20〜35℃のシリンダー温度で射出成形したISO試験片の断面方向中心部を1〜2mm角に切削し、四酸化ルテニウムで反応性官能基を有するゴム質重合体(B)を染色後、0.1μm以下(約80nm)の超薄切片をウルトラミクロトームにより−196℃で切削し、3万5千倍に拡大して透過型電子顕微鏡で観察する方法が挙げられる。前記分散粒径は以下の方法により求めることができる。透過型電子顕微鏡で観察した任意の100個の分散粒子について、まずそれぞれの最大径と最小径を測定してその平均値を求めて各分散粒子の粒径とする。100個の分散粒子の粒径の数平均値を算出して分散粒径とする。
【0050】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、例えば、上記(A)〜(C)および必要により他の成分を溶融状態または溶液状態で混練または混合する方法により得ることができるが、反応性向上の点から、溶融状態で混練する方法が好ましく使用できる。溶融状態で混練する方法としては、例えば、押出機による溶融混練やニーダーによる溶融混練等が使用できるが、生産性の点から、連続的に製造可能な押出機による溶融混練が好ましく使用できる。押出機としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、四軸押出機等の多軸押出機、二軸単軸複合押出機等が挙げられ、これらを2種以上用いてもよい。
【0051】
本発明におけるポリプロピレン樹脂組成物の製造には、(A)および(B)と(C)の反応性の観点から、伸張流動しつつ溶融混練する方法が好ましく用いられる。ここで伸張流動とは、反対方向に流れる2つの流れの中で、溶融した樹脂が引き伸ばされる流動方法のことである。一方、一般的に用いられる剪断流動とは、同一方向で速度の異なる2つの流れの中で、溶融した樹脂が変形を受ける流動方法のことである。伸張流動混練では、溶融混練時に一般的に用いられる剪断流動と比較し、分散効率が高いことから、特に反応を伴うアロイ化の場合、反応が効率的に進行することが可能となる。
【0052】
伸張流動しつつ溶融混練してポリプロピレン樹脂組成物を製造する場合、押出機を用いた溶融混練が好ましく用いられ、押出機としては、単軸押出機と二軸押出機が好ましく用いられ、特に二軸押出機が好ましく用いられる。またかかる二軸押出機のスクリューとしては、特に制限はなく、完全噛み合い型、不完全噛み合い型、非噛み合い型等のスクリューが使用できるが、混練性、反応性の観点から、好ましくは、完全噛み合い型である。また、スクリューの回転方向としては、同方向、異方向どちらでもよいが、混練性、反応性の観点から、好ましくは同方向回転である。本発明において、最も好ましいスクリューは、同方向回転完全噛み合い型である。
【0053】
伸張流動しつつ溶融混練する場合、伸張流動しつつ溶融混練するゾーン(伸張流動ゾーン)の前後での流入効果圧力降下が10〜1000kg/cm(0.98〜98MPa)であることが好ましい。かかる伸張流動しつつ溶融混練するゾーン(伸張流動ゾーン)の前後での流入効果圧力降下とは、伸張流動ゾーン手前の圧力差(ΔP)から、伸張流動ゾーン内での圧力差(ΔP)を差し引くことで求めることができる。伸張流動ゾーンの前後での流入効果圧力降下が10kg/cm(0.98MPa)以上である場合には、伸張流動ゾーン内での伸張流動の形成される割合が高く、また圧力分布をより均一にすることができる。また、伸張流動ゾーンの前後での流入効果圧力降下が1000kg/cm(98MPa)以下である場合には、押出機内での背圧が適度な範囲に抑制され、安定的な製造が容易となる。また伸張流動しつつ溶融混練するゾーン(伸張流動ゾーン)の前後での流入効果圧力降下は、50〜600kg/cm(4.9〜59MPa)の範囲がより好ましく、さらには100〜500kg/cm(9.8〜49MPa)の範囲が最も好ましい。
【0054】
押出機を使用して伸張流動しつつ溶融混練する場合、反応に適した伸張流動場を付与するためには、押出機のスクリューの全長に対する伸張流動しつつ溶融混練するゾーン(伸張流動ゾーン)の合計の長さの割合が、5〜60%の範囲が好ましく、より好ましくは10〜55%、さらに好ましくは、15〜50%の範囲である。
【0055】
押出機を使用して伸張流動しつつ溶融混練する場合、押出機のスクリューにおける一つの伸張流動しつつ溶融混練するゾーン(伸張流動ゾーン)の長さをLkとし、スクリュー直径をDとすると、混練性、反応性の観点から、Lk/D=0.2〜10であることが好ましい。より好ましくは0.3〜9、さらに好ましくは0.5〜8である。また、本発明において、二軸押出機の伸張流動しつつ溶融混練するゾーン(伸張流動ゾーン)は、スクリュー内の特定の位置に偏在することなく、全域に渡って配置されることが好ましい。
【0056】
押出機を使用して伸張流動しつつ溶融混練する場合、伸張流動しつつ溶融混練するゾーンの具体的な方法としては、ニーディングディスクよりなり、かかるニーディングディスクのディスク先端側の頂部とその後面側の頂部との角度である螺旋角度θが、スクリューの半回転方向に0°<θ<90°の範囲内にあるツイストニーディングディスクであることや、フライトスクリューからなり、かかるフライトスクリューのフライト部にスクリュー先端側から後端側に向けて断面積が縮小されてなる樹脂通路が形成されていることや、押出機中に溶融樹脂の通過する断面積が暫時減少させた樹脂通路からなることが好ましい例として挙げられる。
【0057】
(A)、(B)および(C)を押出機で溶融混練する際、押出機吐出口から吐出されるポリプロピレン樹脂組成物の温度は、(A)の融点と(B)の融点のうち高い方の融点+0〜120℃であることが好ましい。
【0058】
二軸押出機を用いた溶融混練方法としては、(A)および(B)をあらかじめ溶融混練した後、さらに化合物(C)および必要により他の成分を添加して溶融混練する方法が好ましく使用される。具体的には、(A)と(B)を溶融混練して、(A)中に(B)が分散した構造を有するペレットを調製した後、このペレットと(C)とを再度押出機で溶融混練する方法(混練方法:b)、押出機の根元から(A)と(B)を投入して溶融混練した後、押出機途中から(C)を添加して溶融混練する方法(混練方法:c)などが挙げられる。
【0059】
例えば、反応性官能基(a)および反応性官能基(b)がいずれも酸無水物基であり、反応性官能基(c)がアミノ基である場合、(A)および(B)を溶融混練することにより、(A)と(B)とを分散させる。さらに(C)を添加して溶融混練することにより、(A)および(B)に導入されている酸無水物基の少なくとも一部がアミノ基と反応し、(A)/(B)間を(C)により架橋された分子間反応物が形成されるものと考えられる。そして、該反応物の形成により(A)/(B)間の界面張力が低下し、分散粒径が微細化することで、本発明のポリプロピレン樹脂組成物から形成される成形体が良好な耐衝撃性を有するようになる。
【0060】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物を成形することにより、成形品を得ることができる。成形方法としては、任意の方法が可能であり、成形形状は、任意の形状が可能である。成形方法としては、例えば、射出成形、押出成形、中空成形、カレンダ成形、圧縮成形、真空成形、発泡成形等が挙げられ、ペレット状、板状、繊維状、ストランド状、フィルムまたはシート状、パイプ状、中空状、箱状等の形状に成形することができる。
【0061】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、耐衝撃性と溶融成形時の流動性のバランスに優れるため、例えば、自動車用内外装部品およびバンパーをはじめとした耐衝撃性と溶融成形時の流動性の求められる様々な用途に好ましく用いられる。
【0062】
また、本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、強度・剛性・耐衝撃性・耐熱性のバランスにも優れるため、上記用途の他、コネクター、コイルをはじめとして、センサー、LEDランプ、ソケット、抵抗器、リレーケース、小型スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品等に代表される電機・電子部品用途に適している他、発電機、電動機、変圧器、変流器、電圧調整器、整流器、インバーター、継電器、電力用接点、開閉器、遮断機、ナイフスイッチ、他極ロッド、電気部品キャビネットなどの電気機器部品用途、VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクトディスク、DVD等の音声・映像機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品、パソコンやノートパソコン等の電子機器筐体に代表される家庭、事務電気製品部品;オフィスコンピューター関連部品、電話器関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品:顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計等に代表される光学機器、精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター,ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンシオメーターベース、排気ガスバルブ等の各種バルブ、燃料関係・冷却系・ブレーキ系・ワイパー系・排気系・吸気系各種パイプ・ホース・チューブ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキパッド摩耗センサー、電池周辺部品、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビューター、スタータースイッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ワイヤーハーネスコネクター、SMJコネクター、PCBコネクター、ドアグロメットコネクター、ヒューズ用コネクター等の各種コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、トルクコントロールレバー、安全ベルト部品、レジスターブレード、ウオッシャーレバー、ウインドレギュレーターハンドル、ウインドレギュレーターハンドルのノブ、パッシングライトレバー、サンバイザーブラケット、インストルメントパネル、エアバッグ周辺部品、ドアパッド、ピラー、コンソールボックス、各種モーターハウジング、ルーフレール、フェンダー、ガーニッシュ、ルーフパネル、フードパネル、トランクリッド、ドアミラーステー、スポイラー、フードルーバー、ホイールカバー、ホイールキャップ、グリルエプロンカバーフレーム、ランプベゼル、ドアハンドル、ドアモール、リアフィニッシャー、ワイパー等の自動車・車両関連部品等にも好ましく使用される。
【0063】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物を溶融成形してなる成形品は、建材としても好適であり、土木建築物の壁、屋根、天井材関連部品、窓材関連部品、断熱材関連部品、床材関連部品、免震・制振部材関連部品、ライフライン関連部品等にも好ましく使用される。
【0064】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物を溶融成形してなる成形品は、スポーツ用品としても好適であり、ゴルフクラブやシャフト等のゴルフ関連用品、アメリカンフットボールや野球、ソフトボール等のマスク、ヘルメット、胸当て、肘当て、膝当て等のスポーツ用身体保護用品、スポーツシューズの底材等のシューズ関連用品、釣り竿、釣り糸等の釣り具関連用品、サーフィン等のサマースポーツ関連用品、スキー・スノーボード等のウィンタースポーツ関連用品、その他インドアおよびアウトドアスポーツ関連用品等にも好ましく使用される。
【実施例】
【0065】
以下、実施例を挙げて本発明の効果をさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0066】
本実施例および比較例に用いた反応性官能基(a)を有するポリプロピレン樹脂(A)および未変性ポリプロピレン樹脂(A’)は以下の通りである。上記(A)はいずれもホモポリプロピレンベースの樹脂である。
(A−1):変性率1重量%、230℃、2.16kgfにおけるMFR230g/10min、無水マレイン酸変性ポリプロピレングラフト共重合体「フサボンドP−613」(Du Pont社製)
(A−2):変性率5重量%、230℃、2.16kgfにおけるMFR230g/10min以上、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂「ユーメックス1001」(三洋化成工業社製)
(A−3):変性率0.8重量%、230℃,2.16kgfにおけるMFR140g/10min、ヒドロキシエチルメタクリレート変性ポリプロピレングラフト共重合体。
(A−4):変性率1.3重量%、230℃,2.16kgfにおけるMFR5.0g/10min、N,N’−ジメチルアミノエチルアクリルアミド変性ポリプロピレングラフト共重合体。
(A−5):変性率:0.5重量%、230℃,2.16kgfにおけるMFR30g/10min、グリシジルメタクリレート変性ポリプロピレングラフト共重合体。
(A’):未変性ホモポリプロピレン樹脂「プライムポリプロ E111G」(プライムポリマー社製)。
【0067】
同様に、反応性官能基(b)を有するゴム質重合体(B)は以下の通りである。
(B−1):変性率6重量%、エチレン−アクリル酸メチル−メタクリル酸グリシジルグラフト共重合体「ボンドファースト BF−7M」(住友化学社製)。
(B−2):変性率2重量%、無水マレイン酸変性エチレン−1−ブテングラフト共重合体「タフマー MH7020」(三井化学社製)。
(B−3):変性率0.8重量%、230℃,2.16kgfにおけるMFR2.5g/10min、無水マレイン酸変性エチレン−プロピレングラフト共重合体。
(B−4):変性率0.8重量%、230℃,2.16kgfにおけるMFR0.2g/10min、N,N’−ジメチルアミノエチルアクリレート変性無定形エチレン−プロピレングラフト共重合体。
(B−5):変性率0.9重量%、230℃,2.16kgfにおけるMFR1.5g/10min、グリシジルメタクリレート変性無定形エチレン−プロピレングラフト共重合体。
(B’):230℃,2.16kgfにおけるMFR8.6g/10min、未変性エチレン−プロピレン共重合体。
【0068】
同様に、(A)の反応性官能基と反応する反応性官能基を少なくとも1つ、および(B)の反応性官能基と反応する反応性官能基を少なくとも1つ有する化合物(C)は以下の通りである。
(C−1):ポリエーテルジアミン「Baxxodur EC130」(三井化学ファイン社製)。
(C−2):ヘキサメチレンジアミン「HMDA」(シグマアルドリッチ社製)。
【0069】
同様に、反応促進剤は以下の通りである。
(D−1):「ステアリン酸ナトリウム」(昭和化学社製)。
【0070】
(1)試験片の射出成形
各実施例および比較例により得られたポリプロピレン樹脂組成物ペレットを70℃で2時間以上熱風乾燥した後、住友重機社製射出成形機(SG75H−MIV)を用いて、シリンダー温度200℃、金型温度40℃、射出圧力下限圧+5kgf/cmの条件により、1/8インチノッチ付きアイゾット衝撃試験片を作製した。
【0071】
(2)離型性の評価
上記(1)に記載の方法により10回射出成形を行い、成形品の金型への張り付きの有無を評価した。金型への張り付きが3本以下の場合を○、4〜5本の場合を△、6〜10本の場合を×とした。
【0072】
(3)流動性の評価
各実施例および比較例により得られたポリプロピレン樹脂組成物ペレットを70℃で2時間以上熱風乾燥した後、東洋精機社製メルトインデクサーを用いて、230℃で3分間溶融滞留させた後、荷重2.16kgfでメルトフローレートを測定し、流動性評価の指標とした。
【0073】
(4)衝撃特性の評価
上記(1)に記載の方法により作製した1/8インチノッチ付きアイゾット衝撃試験片を用い、ASTMD−256に従って、23℃、湿度50%の雰囲気下で、アイゾット衝撃強度を評価した。また、アイゾット衝撃強度を評価した試験片5個中、折れなかった試験片の個数を表中「ノンブレイク数」として示した。
【0074】
(5)モルホロジー観察
上記(1)に記載の方法により作製した1/8インチノッチ付きアイゾット衝撃試験片の断面方向中心部を1〜2mm角に切削し、四酸化ルテニウムでゴム質重合体(B)を染色後、0.1μm以下(約80nm)の超薄切片をウルトラミクロトームにより−196℃で切削し、3万5千倍に拡大して透過型電子顕微鏡で観察した。観察した任意の100個の分散粒子について、まずそれぞれの最大径と最小径を測定してその平均値を求めて各分散粒子の粒径とした。100個の分散粒子の粒径の数平均値を算出することにより分散粒径を求めた。
【0075】
参考例1
未変性ポリプロピレン樹脂(A’)100重量部、無水マレイン酸0.5重量部、ラジカル開始剤として2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン0.05重量部をドライブレンドし、窒素フローを行いながら、スクリュー径が30mm、2条ネジの2本のスクリューを備えたL/D=45の同方向回転完全噛み合い型二軸押出機(日本製鋼所社製、TEX−30α)の押出機根元(L/D=1の位置)より投入した。シリンダー温度230℃、スクリュー回転数150rpm、押出量20kg/hで溶融混練を行い、吐出口(L/D=45)よりストランド状の溶融樹脂を吐出した。ベント真空ゾーンはL/D=38の位置に設け、ゲージ圧力−0.1MPaで揮発成分の除去を行った。ダイヘッドを通過して4mmφ×3ホールから吐出された溶融樹脂はストランド状に引いて冷却バスを通過させて冷却し、ペレタイザーにより引取りながら裁断することにより、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂ペレットを得た。得られた無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂の変性量は0.5重量%、230℃、2.16kgfにおけるMFRは50g/10minであった。
【0076】
実施例1〜14
表1〜2に示す配合組成で反応性官能基(a)を有するポリプロピレン樹脂(A)と反応性官能基(b)を有するゴム質重合体(B)をドライブレンドし、窒素フローを行いながら、スクリュー径が30mm、2条ネジの2本のスクリューを備えたL/D=45の同方向回転完全噛み合い型二軸押出機(日本製鋼所社製、TEX−30α)の押出機根元(L/D=1の位置)より投入した。シリンダー設定温度230℃、スクリュー回転数300rpm、押出量20kg/hの条件で溶融混練し、吐出口(L/D=45)よりストランド状の溶融樹脂を吐出した。その際のスクリュー構成としては、L/D=14、23、30の位置から、それぞれ、Lk/D=4.0、4.0、5.0としたニーディングディスク先端側の頂部とその後面側の頂部との角度である螺旋角度θが、スクリューの半回転方向に20°としたツイストニーディングディスクを設け、伸張流動しつつ溶融混練するゾーン(伸張流動ゾーン)を形成させた。さらに各伸張流動ゾーンの下流側に、逆スクリューゾーンを設け、各逆スクリューゾーンの長さLr/Dは、順番にLr/D=0.5、0.5、0.5とした。スクリュー全長に対する伸張流動ゾーンの合計の長さの割合(%)を、(伸張流動ゾーンの合計長さ)÷(スクリュー全長)×100により算出すると、29%であった。また、ツイストニーディングディスクの手前の圧力差(ΔP)から、伸張流動ゾーン内での圧力差(ΔP)を差し引くことで、伸張流動ゾーン前後での流入効果圧力降下を求めた結果、200kg/cmであった。ベント真空ゾーンはL/D=38の位置に設け、ゲージ圧力−0.1MPaで揮発成分の除去を行った。ダイヘッドを通過して4mmφ×3ホールから吐出された溶融樹脂はストランド状に引いて冷却バスを通過させて冷却し、ペレタイザーにより引取りながら裁断することにより、(B)が(A)中に分散した構造を有する樹脂組成物ペレットを得た。該ペレットを70℃で2時間以上熱風オーブンを用いて乾燥した後、該ペレット100重量部に対して化合物(C−1)を表1〜2に示す割合で添加し、再度同じスクリュー構成を有した二軸押出機(シリンダー温度230℃、スクリュー回転数300rpm、押出量20kg/h)で混練し、上記と同様にしてポリプロピレン樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットを用いて、前記した射出成形、離型性・流動性・衝撃特性評価およびモルホロジー観察を実施した。評価結果を表1〜2に示す。表1〜2より明らかなように、実施例1〜14にて得られたポリプロピレン樹脂組成物は、成形品の耐衝撃性と流動性のバランスに優れるとともに、離型性に優れる。
【0077】
実施例9により得られた樹脂組成物のTEMによるモルホロジー観察結果を図1に示す。図中の色の濃い部分がゴム質重合体相を表し、薄い部分がポリプロピレン樹脂相を表す。
【0078】
比較例1
化合物(C)を使用しなかったこと、また(A−1)および(B−2)をドライブレンドした混合物を押出機根元(L/D=1の位置)より投入して溶融混練を行った(混練方法:a)こと以外は、実施例1〜3と同様の方法によりポリプロピレン樹脂組成物を得た後、特性評価を行った。評価結果を表3に示す。表3に記載した結果から明らかなように、比較例1のポリプロピレン樹脂組成物から得られる成形品は、化合物(C)による(A−1)/(B−2)間の反応物が存在しないため、界面の親和性が低く成形品の衝撃強度が低い。
【0079】
比較例2
(A−1)70重量部および(B−2)30重量部の合計100重量部に対して化合物(C−1)を6重量部添加したこと以外は、実施例1〜3と同様にして(混練方法:b)ポリプロピレン樹脂組成物を得た。評価結果を表3に示す。化合物(C−1)が6重量部と多い領域では、二度目の溶融混練時にゲル化が起こり、その後の射出成形、流動性・耐衝撃性の評価を行うことができなかった。
【0080】
比較例3
(A−1)および(B−2)の配合組成を変更した以外は、比較例1と同様にしてポリプロピレン樹脂組成物を得た。評価結果を表3に示す。表3に記載した結果から明らかなように、ゴム質重合体量が80重量部と多いため、流動性が悪く、また離型性も悪い。さらに比較例3のポリプロピレン樹脂組成物から得られる成形品は、化合物(C)による(A−1)/(B−2)間の反応物が存在しないため、界面の親和性が低く衝撃強度が低い。
【0081】
比較例4
(A−1)、(B−2)および(C−1)の配合組成を変更した以外は、比較例2と同様にしてポリプロピレン樹脂組成物を得た(混練方法:b)。評価結果を表3に示す。表3に記載した結果から明らかなように、ゴム質重合体量が80重量部と多いため、流動性が悪く、また離型性も悪い。
【0082】
比較例5
(A−1)および(B−2)の配合組成を変更した以外は、比較例2と同様にしてポリプロピレン樹脂組成物を得た(混練方法:b)。表3に記載した結果から明らかなように、化合物(C−1)が6重量部と多い領域では、二度目の溶融混練時にゲル化が起こり、その後の射出成形、流動性・耐衝撃性の評価を行うことができなかった。
【0083】
比較例6〜9
(A)と(B)の配合組成を変更した以外は、比較例1と同様の方法によりポリプロピレン樹脂組成物を得た(混練方法:a)。評価結果を表3に示す。表3に記載した結果から明らかなように、比較例6〜9のポリプロピレン樹脂組成物から得られる成形品は、化合物(C−1)による(A−1)/(B−2)間または(A−2)/(B−2)間の反応物が存在しないため、界面の親和性が低く衝撃強度が低い。
【0084】
比較例6により得られた樹脂組成物のTEMによるモルホロジー観察結果を図2に示す。図中の色の濃い部分がゴム質重合体相を表し、薄い部分がポリプロピレン樹脂相を表す。
【0085】
比較例10
未変性ポリプロピレン樹脂(A’)70重量部および無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体(B−3)30重量部の合計100重量部に対して、化合物(C−2)を0.5重量部添加したこと以外は、実施例1〜3と同様にしてポリプロピレン樹脂組成物を得た(混練方法:b)。表4に記載した結果から明らかなように、高粘度かつ未変性のポリプロピレン樹脂(A’)を使用しているため流動性が悪く、また化合物(C−2)による(A’)/(B−3)間の反応物が存在しないため界面の親和性が低く、成形品の衝撃強度が低い。
【0086】
比較例11
未変性ポリプロピレン樹脂(A’)50重量部、ヒドロキシエチルメタクリレート変性ポリプロピレン樹脂(A−3)20重量部、未変性エチレン−プロピレン共重合体(B’)10重量部、無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体(B−3)20重量部の合計100重量部をドライブレンドし、比較例1と同様にしてポリプロピレン樹脂組成物を得た(混練方法:a)。その後、特性評価を行った。結果を表4に示す。表4より明らかなように、粘度の低い変性ポリプロピレンおよび変性エチレン−プロピレン共重合体を使用しているため流動性、離型性には優れるが、ヒドロキシ基と無水マレイン酸基の反応性が低く、反応が不十分であるため成形品の衝撃強度が極めて低い。
【0087】
比較例12
未変性ポリプロピレン樹脂(A’)50重量部、ヒドロキシエチルメタクリレート変性ポリプロピレン樹脂(A−3)20重量部、未変性エチレン−プロピレン共重合体(B’)10重量部、無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体(B−3)20重量部の合計100重量部に対して、ヒドロキシ基と無水マレイン酸基の反応を促進する目的で、反応促進剤(D−1)としてステアリン酸ナトリウムを0.3重量部添加したこと以外は、比較例11と同様にして、ポリプロピレン樹脂組成物を得た(混練方法:a)。評価結果を表4に示す。表4より明らかなように、粘度の低い変性ポリプロピレンおよび変性エチレン−プロピレン共重合体を使用しているため流動性、離型性には優れるものの、反応促進剤を添加してもヒドロキシ基と無水マレイン酸基との反応が不十分であるため成形品の衝撃強度が低い。
【0088】
比較例13
N,N’−ジメチルアミノエチルアクリルアミド変性ポリプロピレン樹脂(A−4)70重量部、N,N’−ジメチルアミノエチルアクリレート変性エチレン−プロピレン共重合体(B−4)30重量部の合計100重量部をドライブレンドし、比較例11と同様にして、ポリプロピレン樹脂組成物を得た(混練方法:a)。評価結果を表4に示す。粘度の高い変性ポリプロピレンおよび変性エチレン−プロピレン共重合体を使用しているため流動性が悪く、また、アミノ基どうしは反応しないため(A−4)/(B−4)間の界面の親和性が低く、成形品の衝撃強度も低い。
【0089】
比較例14
グリシジルメタクリレート変性ポリプロピレン樹脂(A−5)70重量部、グリシジルメタクリレート変性無定形エチレン−プロピレン共重合体(B−5)30重量部の合計100重量部をドライブレンドし、比較例11と同様にして、ポリプロピレン樹脂組成物を得た(混練方法:a)。評価結果を表4に示す。粘度の高い変性ポリプロピレンおよび変性エチレン−プロピレン共重合体を使用しているため流動性が悪く、また、エポキシ基どうしは反応しないため(A−5)/(B−5)間の界面の親和性が低く、成形品の衝撃強度も低い。
【0090】
実施例15
表2に示す配合組成で反応性官能基(a)を有するポリプロピレン樹脂(A−1)70重量部と、反応性官能基(b)を有するゴム質重合体(B−1)30重量部をドライブレンドした(A−1)および(B−1)からなる合計100重量部の混合物に化合物(C−1)を0.3重量部添加し、窒素フローを行いながら、スクリュー径が30mm、スクリューは2条ネジの2本のスクリューのL/D=45の同方向回転完全噛み合い型二軸押出機(日本製鋼所社製、TEX−30α)の押出機根元(L/D=1の位置)より投入した。溶融混練は、シリンダー設定温度230℃、スクリュー回転数300rpm、押出量20kg/hの条件で行い、吐出口(L/D=45)よりストランド状の溶融樹脂を吐出した。その際のスクリュー構成としては、L/D=14、23、30の位置から、それぞれ、Lk/D=4.0、4.0、5.0としたニーディングディスク先端側の頂部とその後面側の頂部との角度である螺旋角度θが、スクリューの半回転方向に20°としたツイストニーディングディスクを設け、伸張流動しつつ溶融混練するゾーン(伸張流動ゾーン)を形成させた。さらに各伸張流動ゾーンの下流側に、逆スクリューゾーンを設け、各逆スクリューゾーンの長さLr/Dは、順番にLr/D=0.5、0.5、0.5とした。スクリュー全長に対する伸張流動ゾーンの合計の長さの割合(%)を、(伸張流動ゾーンの合計長さ)÷(スクリュー全長)×100により算出すると、29%であった。また、ツイストニーディングディスクの手前の圧力差(ΔP)から、伸張流動ゾーン内での圧力差(ΔP)を差し引くことで、伸張流動ゾーン前後での流入効果圧力降下を求めた結果、200kg/cmであった。ベント真空ゾーンはL/D=38の位置に設け、ゲージ圧力−0.1MPaで揮発成分の除去を行った。ダイヘッドを通過して4mmφ×3ホールから吐出された溶融樹脂はストランド状に引いて冷却バスを通過させて冷却し、ペレタイザーにより引取りながら裁断することにより、ポリプロピレン樹脂組成物ペレットを得た。得られたペレットを用いて、前記した射出成形、離型性・流動性・衝撃特性評価およびモルホロジー観察を実施した。評価結果を表2に示す。表2より明らかなように、実施例15にて得られたポリプロピレン樹脂組成物は、成形品の耐衝撃性と流動性のバランスに優れるとともに、離型性に優れる。
【0091】
実施例16
表2に示す配合組成で反応性官能基(a)を有するポリプロピレン樹脂(A−1)70重量部と、反応性官能基(b)を有するゴム質重合体(B−2)30重量部をドライブレンドした、(A−1)および(B−2)からなる合計100重量部からなる混合物を、窒素フローを行いながら、スクリュー径が30mm、スクリューは2条ネジの2本のスクリューのL/D=45の同方向回転完全噛み合い型二軸押出機(日本製鋼所社製、TEX−30α)の押出機根元(L/D=1の位置)より投入し、さらに押出機途中L/D=23の位置から化合物(C−1)0.3重量部を添加して溶融混練を行った(混練方法:c)。
【0092】
溶融混練は、シリンダー設定温度230℃、スクリュー回転数300rpm、押出量20kg/hの条件で行い、吐出口(L/D=45)よりストランド状の溶融樹脂を吐出した。その際のスクリュー構成としては、L/D=14、23、30の位置から、それぞれ、Lk/D=4.0、4.0、5.0としたニーディングディスク先端側の頂部とその後面側の頂部との角度である螺旋角度θが、スクリューの半回転方向に20°としたツイストニーディングディスクを設け、伸張流動しつつ溶融混練するゾーン(伸張流動ゾーン)を形成させた。さらに各伸張流動ゾーンの下流側に、逆スクリューゾーンを設け、各逆スクリューゾーンの長さLr/Dは、順番にLr/D=0.5、0.5、0.5とした。スクリュー全長に対する伸張流動ゾーンの合計の長さの割合(%)を、(伸張流動ゾーンの合計長さ)÷(スクリュー全長)×100により算出すると、29%であった。また、ツイストニーディングディスクの手前の圧力差(ΔP)から、伸張流動ゾーン内での圧力差(ΔP)を差し引くことで、伸張流動ゾーン前後での流入効果圧力降下を求めた結果、200kg/cmであった。
【0093】
ベント真空ゾーンはL/D=38の位置に設け、ゲージ圧力−0.1MPaで揮発成分の除去を行った。ダイヘッドを通過して4mmφ×3ホールから吐出された溶融樹脂はストランド状に引いて冷却バスを通過させて冷却し、ペレタイザーにより引取りながら裁断することにより、ポリプロピレン樹脂組成物ペレットを得た。得られたペレットを用いて、前記した射出成形、離型性・流動性・衝撃特性評価およびモルホロジー観察を実施した。評価結果を表2に示す。表2より明らかなように、実施例16にて得られたポリプロピレン樹脂組成物は、成形品の耐衝撃性と流動性のバランスに優れるとともに、離型性に優れる。
【0094】
実施例17
表2に示す配合組成で参考例1記載の反応性官能基(a)を有するポリプロピレン樹脂70重量部と反応性官能基(b)を有するゴム質重合体(B−2)30重量部をドライブレンドし、窒素フローを行いながら、スクリュー径が30mm、2条ネジの2本のスクリューを備えたL/D=45の同方向回転完全噛み合い型二軸押出機(日本製鋼所社製、TEX−30α)の押出機根元(L/D=1の位置)より投入した。シリンダー設定温度230℃、スクリュー回転数300rpm、押出量20kg/hの条件で溶融混練し、吐出口(L/D=45)よりストランド状の溶融樹脂を吐出した。その際のスクリュー構成としては、L/D=14、23、30の位置から、それぞれ、Lk/D=4.0、4.0、5.0としたニーディングディスク先端側の頂部とその後面側の頂部との角度である螺旋角度θが、スクリューの半回転方向に20°としたツイストニーディングディスクを設け、伸張流動しつつ溶融混練するゾーン(伸張流動ゾーン)を形成させた。さらに各伸張流動ゾーンの下流側に、逆スクリューゾーンを設け、各逆スクリューゾーンの長さLr/Dは、順番にLr/D=0.5、0.5、0.5とした。スクリュー全長に対する伸張流動ゾーンの合計の長さの割合(%)を、(伸張流動ゾーンの合計長さ)÷(スクリュー全長)×100により算出すると、29%であった。また、ツイストニーディングディスクの手前の圧力差(ΔP)から、伸張流動ゾーン内での圧力差(ΔP)を差し引くことで、伸張流動ゾーン前後での流入効果圧力降下を求めた結果、200kg/cmであった。ベント真空ゾーンはL/D=38の位置に設け、ゲージ圧力−0.1MPaで揮発成分の除去を行った。ダイヘッドを通過して4mmφ×3ホールから吐出された溶融樹脂はストランド状に引いて冷却バスを通過させて冷却し、ペレタイザーにより引取りながら裁断することにより、(B)が(A)中に分散した構造を有する樹脂組成物ペレットを得た。該ペレットを70℃で2時間以上熱風オーブンを用いて乾燥した後、該ペレット100重量部に対して化合物(C−1)0.5重量部添加し、再度同じスクリュー構成を有した二軸押出機(シリンダー温度230℃、スクリュー回転数300rpm、押出量20kg/h)で混練し、上記と同様にしてポリプロピレン樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットを用いて、前記した射出成形、離型性・流動性・衝撃特性評価およびモルホロジー観察を実施した。評価結果を表2に示す。表2より明らかなように、実施例17にて得られたポリプロピレン樹脂組成物は、成形品の耐衝撃性と流動性のバランスに優れるとともに、離型性に優れる。
【0095】
【表1】

【0096】
【表2】

【0097】
【表3】

【0098】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性官能基を有するポリプロピレン樹脂(A)30〜99重量部、(A)の反応性官能基と反応しない反応性官能基を有するゴム質重合体(B)1〜70重量部の合計100重量部に対して、(A)の反応性官能基と反応する反応性官能基を少なくとも1つ、および(B)の反応性官能基と反応する反応性官能基を少なくとも1つ有する化合物(C)を0.01〜5重量部配合してなることを特徴とするポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリプロピレン樹脂(A)およびゴム質重合体(B)が連続相および分散相を有する相分離構造を形成し、分散相の分散粒径が1μm以下であることを特徴とする請求項1記載のポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項3】
反応性官能基を有するポリプロピレン樹脂(A)の反応性官能基が、酸無水物基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、オキサゾリン基およびヒドロキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項4】
反応性官能基を有するゴム質重合体(B)の反応性官能基が、酸無水物基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、オキサゾリン基およびヒドロキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項5】
化合物(C)の反応性官能基が、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基およびイソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項6】
反応性官能基を有するポリプロピレン樹脂(A)の反応性官能基と反応性官能基を有するゴム質重合体(B)の反応性官能基が同一であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項7】
前記反応性官能基が酸無水物基またはエポキシ基であることを特徴とする請求項6に記載のポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項8】
化合物(C)の反応性官能基がアミノ基であることを特徴とする請求項7に記載のポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項9】
反応性官能基を有するポリプロピレン樹脂(A)および(A)の反応性官能基と反応しない反応性官能基を有するゴム質重合体(B)をあらかじめ溶融混練した後、さらに化合物(C)を添加して溶融混練することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のポリプロピレン樹脂組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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