説明

ポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体

【課題】ゴム強化AS系樹脂とポリプロピレン系樹脂との相溶化剤として有用な重合体であって、かつ、それ自体成形材料として使用できるものを提供する。
【解決手段】ポリプロピレン系樹脂の存在下に、芳香族ビニル単量体及びシアン化ビニル単量体からなる単量体成分をグラフト共重合してなるポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体であって、下記条件で得られる値Kが450以上であるグラフト共重合体。条件:値Kは、ポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体10部を、ポリプロピレン樹脂80部及びAES樹脂20部と充分に溶融混練して得た樹脂組成物からなる比重0.92〜0.96の射出成形体のIZOD衝撃強度と曲げ弾性率から下記式(1)に従って求めた値である。 K = IS +(0.225 × FM) …(1)(式(1)中、ISはIZOD衝撃強度(単位:J/m)であり、FMは曲げ弾性率(単位:MPa)である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂とゴム強化AS系樹脂との相溶化剤として有用であり、低比重で、しかも耐衝撃性、剛性、流動性、耐熱性、外観および成形収縮率に優れたポリプロピレン系樹脂組成物を提供することのできるポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体に関する。したがって、本発明のポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体は、他の熱可塑性樹脂と配合して種々の性能を有する樹脂組成物を得るのに有用である。また、本発明のポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体は、それ自体、耐衝撃性、剛性、流動性、耐薬品性等に優れた成形品を提供する成形材料としても有用である。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系樹脂は、低比重で、耐水性、耐加水分解性、耐薬品性、ヒンジ特性、および、成形性に優れ、自動車部品、電気部品、家庭日用品、雑貨等の用途に幅広く使用されている。しかし、耐衝撃性、剛性、耐熱性、外観、成形収縮、および、塗装性に問題を有している。
【0003】
一方、共役ジエン系ゴムに、芳香族ビニル単量体及びシアン化ビニル単量体をグラフト重合したABS樹脂などのゴム強化AS系樹脂は、成形性、耐衝撃性、剛性、外観、および、塗装性に優れているため、自動車部品、電気製品、建材、家庭日用品、雑貨等の用途に用いられてきている。しかし、有機溶剤に対しては耐性が低く、しかも、ポリプロピレン系樹脂と比較して比重が高く軽量化に限界があるいという問題がある。
【0004】
そこで、ポリプロピレン系樹脂とゴム強化AS系樹脂をポリマーアロイ化することにより、両者のそれぞれの欠点を補い、それぞれの特性を生かしたポリマーアロイ材の開発が検討されてきた。しかし、ポリプロピレン系樹脂とゴム強化AS系樹脂は、相溶性に乏しいためポリマーアロイ化することが難しく、物性を向上させることは困難であった。
【0005】
これまでポリプロピレン系樹脂とゴム強化AS系樹脂とのポリマーアロイ化を目的に、種々の相溶化剤が検討されてきた。相溶化剤は、反応タイプのものと、非反応タイプのものに大別できる。反応タイプの相溶化剤として、例えば、無水マレイン酸変性ポリプロピレンとエポキシ変性アクリロニトリル・スチレン系共重合体が知られている。そして、これらを相溶化剤として添加してなる組成物が種々提案されている(特許文献1、特許文献2)。しかしながら、これらの相溶化剤によっても、上記した2つの樹脂の相溶化は十分に達成されず、副反応による物性低下も大きいため、物性の向上はほとんど認められない。また、非反応タイプの相溶化剤として、プロピレン重合体セグメントとビニル系共重合体セグメントとからなるグラフト共重合体が提案されている。そして、このグラフト共重合体を相溶化剤として配合することにより一方の共重合体セグメントを粒子径0.001〜10μmの分散相として他方のセグメントにより形成されたマトリックス中に分散させた多相構造熱可塑性樹脂(特許文献3)が提案されている。しかし、この多相構造だけでは依然として相溶性が不足し、衝撃強度と剛性の物性バランスの向上はほとんど認められない。
【0006】
また、同じオレフィン系重合体であるため比較的ポリプロピレン系樹脂との相溶性に優れているAES樹脂を、AS系樹脂とポリプロピレン系樹脂との相溶性の向上を目的に混合する方法(特許文献4)が提案されているが、この方法でも依然として相溶性の改善が不十分で、物性の向上、とりわけ、剛性の向上が不充分で、耐衝撃性と剛性の物性バランスに劣る。さらに、この相溶性の不足を補うために、ポリオレフィン系樹脂を含有するエチレン−プロピレン系ゴムにビニル単量体を重合してなるグラフト共重合体を相溶化剤として配合する方法(特許文献5)が提案されているが、ポリオレフィン系樹脂とエチレン−プロピレン系ゴムの反応性の違いからエチレン−プロピレン系ゴムに優先的にビニル単量体がグラフト重合するため、この方法では、相溶性の向上及び物性の向上はほとんど認められず、また、低比重の成形品は得られない。
また、グラフト変性したポリプロピレン樹脂は従来から知られているが、通常、未変性のポリプロピレン樹脂と混合して使用されるものであり、グラフト体単独での使用は、各種機械的物性のバランスが不十分なため行われていない(特許文献6参照)。
【特許文献1】特開平5−9343号公報
【特許文献2】特開平6−279545号公報
【特許文献3】特開平1−69651号公報
【特許文献4】特開昭57−76047号公報
【特許文献5】特開2004−99828号公報
【特許文献6】特開2006−83367号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ポリプロピレン系樹脂及びゴム強化AS系樹脂の備える上記課題を解決し、ゴム強化AS系樹脂とポリマーアロイ化したポリプロピレン系樹脂であって、低比重で、しかも、耐衝撃性、剛性、流動性、耐熱性、外観および成形収縮率に優れたものを提供できる相溶化剤として有用な重合体であって、さらに、該重合体自体成形材料として使用できるものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、ポリプロピレン系樹脂の存在下に、芳香族ビニル単量体及びシアン化ビニル単量体、並びに、必要に応じて、これらと共重合可能な他の単量体からなる単量体成分をグラフト共重合してなるポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体であって、下記条件で得られる値Kが450以上であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体が提供される。
【0009】
条件:値Kは、ポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体10部を、プロピレン単独重合体80部及びAES樹脂20部と充分に溶融混練して得た樹脂組成物からなる比重0.92〜0.96の射出成形体のIZOD衝撃強度と曲げ弾性率から下記式(1)に従って求めた値である。
K = IS +(0.225 × FM) …(1)
(式(1)中、ISはIZOD衝撃強度(単位:J/m)であり、FMは曲げ弾性率(単位:MPa)である。また、上記条件におけるプロピレン単独重合体は、JIS K7210:1999に従い230℃、2.16kgの条件で求めたMFRが7〜15g/10minのものであり、上記条件におけるAES樹脂は、エチレン/プロピレン/非共役ジエン=60〜80/20〜40/0〜10(質量%)(ただし、エチレン、プロピレン及び非共役ジエンの合計は100質量%)の組成からなり且つムーニー粘度(ML1+4、100℃)が15〜40であるエチレン−プロピレン系共重合体29〜34質量%、スチレン43〜47質量%及びアクリロニトリル23〜27質量%(ただし、エチレン−プロピレン系共重合体、スチレン及びアクリロニトリルの合計は100質量%)からなるグラフト率45〜65%、アセトン可溶分の極限粘度[η](溶媒としてメチルエチルケトンを使用し、30℃で測定)0.3〜0.5dl/g、及び透過型電子顕微鏡写真にて求めた数平均ゴム粒子径0.4〜0.7μmのものである。)
【0010】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明のポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体は、ポリプロピレン系樹脂含有量が10〜60質量%、グラフト率が20〜200質量%、アセトン可溶分の極限粘度(溶媒としてメチルエチルケトンを使用し、30℃で測定)が0.1〜1.2dl/gを充足する。
【0011】
本発明のポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体は、芳香族炭化水素を主体とする溶剤、及び重合開始剤の存在下でグラフト共重合したものであることが好ましい。上記重合開始剤は、10時間半減期温度が80〜120℃であるパーオキシエステル系化合物であることが好ましい。
【0012】
本発明の他の局面によれば、ポリプロピレン系樹脂10〜60質量%に、芳香族ビニル単量体及びシアン化ビニル単量体、並びに、必要に応じて、これらと共重合可能な他の単量体からなる単量体成分90〜40質量%(前記ポリプロピレン系樹脂と前記単量体成分の合計は100質量%)を、芳香族炭化水素を主体とする溶剤中で重合開始剤を用いてグラフト共重合する前記本発明のポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体の製造方法であって、前記ポリプロピレン系樹脂と前記単量体成分の合計100質量部に対して前記溶剤50〜200質量部及び前記重合開始剤0.05〜3質量部使用することを特徴とする製造方法が提供される。
【0013】
本発明の製造方法においては、前記ポリプロピレン系樹脂を前記溶剤に100〜200℃で2〜5時間溶解した後、該溶液に前記単量体成分及び前記重合開始剤を添加し、下記式(2)を満たす温度(T)の範囲でグラフト共重合を行うことが好ましい。
10≦T≦T10+30(℃) …(2)
(式(2)中、T10は前記重合開始剤の10時間半減期温度(℃)である。)
【0014】
本発明の更に他の局面によれば、ポリプロピレン系樹脂10〜60質量%の存在下に、芳香族ビニル単量体及びシアン化ビニル単量体、並びに、必要に応じて、これらと共重合可能な他の単量体からなる単量体成分90〜40質量%(前記ポリプロピレン系樹脂と前記単量体成分の合計は100質量%)を、芳香族炭化水素を主体とする溶剤中で重合開始剤として10時間半減期温度が80〜120℃であるパーオキシエステル系化合物を用いてグラフト共重合してなるポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体が提供される。ここにおいて、パーオキシエステル系化合物は、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシラウレート、およびt−ブチルパーオキシベンゾエートからなる群より選ばれた少なくとも1つであることが特に好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、従来の相溶化剤に比べ、ポリプロピレン系樹脂とゴム強化AS系樹脂との相溶化性能に優れたポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体が提供される。
したがって、ポリプロピレン系樹脂とゴム強化AS系樹脂からなるポリマーアロイに本発明のポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体を相溶剤として配合することにより、低比重で、しかも、耐衝撃性、剛性、流動性、耐熱性、外観および成形収縮率に優れたポリプロピレン系樹脂が提供される。
また、本発明のポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体は、それ自体成形材料として使用でき、耐衝撃性、剛性、流動性、耐薬品性等に優れた成形品が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
本発明のポリプロピレン系樹脂含有グラフト共重合体は、ポリプロピレン系樹脂(A)の存在下に、芳香族ビニル単量体及びシアン化ビニル単量体、並びに、必要に応じて、これらと共重合可能な他の単量体からなる単量体成分(B)をグラフト共重合して得られる。
【0018】
(A)ポリプロピレン系樹脂
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂(A)としては、プロピレン単独重合体、プロピレンを主成分とし、更にエチレンまたは炭素数4以上のα―オレフィンをコモノマーとして含有するランダムまたはブロック共重合体、並びにこれらの混合物等が挙げられる。これらのうち、プロピレン単独重合体が特に好ましい。
【0019】
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂(A)は、その製造法が限定されるものではないが、通常、チーグラー(ZN)触媒、またはメタロセン触媒を用いて製造されたものが使用される。
チーグラー(ZN)触媒としては、高活性触媒が好ましく、特に、マグネシウム、チタン、ハロゲン、電子供与体を必須成分とする固体触媒成分と有機アルミニウム化合物を組み合わせた高活性触媒が好ましい。
【0020】
メタロセン触媒としては、ジルコニウム、ハフニウム、チタンなどの遷移金属にシクロペンタジエニル骨格を有する有機化合物、ハロゲン原子などが配位したメタロセン錯体と、アルモキサン化合物、イオン交換性珪酸塩、有機アルミニウム化合物などを組み合わせた触媒が有効である。
【0021】
プロピレンと共重合させるコモノマーとしては、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチル−ペンテン−1等が挙げられる。これらコモノマー成分の含有量は、共重合体全体を100質量%として、通常0〜15質量%、好ましくは0〜10質量%である。これらのうち、特に好ましいものは、プロピレンとエチレンおよび/又はブテン−1とのブロック共重合体である。
【0022】
反応系中の各モノマーの量比は経時的に一定である必要はなく、各モノマーを一定の混合比で供給することも可能であるし、供給するモノマーの混合比を経時的に変化させることも可能である。また、共重合反応比を考慮してモノマーのいずれかを分割添加することもできる。
【0023】
重合様式は、触媒成分と各モノマーが効率よく接触するならば、あらゆる様式の方法を採用することができる。具体的には、不活性溶媒を用いるスラリー法、不活性溶媒を実質的に用いずプロピレンを溶媒として用いるバルク法、溶液法、実質的に液体溶媒を用いず各モノマーを実質的にガス状に保つ気相法などを採用することができる。
【0024】
また、連続重合、回分式重合のいずれを用いてもよい。スラリー重合の場合には、重合溶媒としてヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の飽和脂肪族または芳香族炭化水素を単独で又は混合して用いることができる。
【0025】
重合条件としては重合温度が通常−78〜160℃、好ましくは0〜150℃であり、そのときの分子量調節剤として補助的に水素を用いることができる。また、重合圧力は通常0〜90kg/cm2・G、好ましくは0〜60kg/cm2・G、特に好ましくは1〜50kg/cm2・Gである。
【0026】
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂(A)は、230℃ 2.16kgの条件で測定したメルトフローレート(MFR)が、通常1〜100g/10分、好ましくは3〜50g/10分、より好ましくは5〜30g/10分、特に好ましくは5〜20g/10分で、GPCで測定した分子量分布(Mw/Mn)が、通常1.2〜10、好ましくは1.5〜8、より好ましくは2〜6であり、融点(Tm)は、通常150〜170℃、好ましくは155〜167℃である。
【0027】
(B)単量体成分
本発明で用いられる単量体成分(B)は、芳香族ビニル単量体及びシアン化ビニル単量体を必須成分とし、必要に応じて、これらと共重合可能な他の単量体を含有する。
【0028】
芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ο−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、メチル−α−メチルスチレン、臭素化スチレン、ヒドロキシスチレン等が挙げられ、これらは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
【0029】
シアン化ビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、アクリロニトリルが好ましい。
【0030】
上記2種のビニル単量体と共重合可能な他の単量体としては、各種のビニル単量体が挙げられる。各種ビニル単量体の具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸エステル;無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等の不飽和無水物;アクリル酸、メタアクリル酸等の不飽和酸;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド化合物などが挙げられる。これらは、本発明のポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体に支障のない範囲で1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
本発明のポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体におけるポリプロピレン系樹脂(A)の含有量は、ポリプロピレン系樹脂(A)と単量体成分(B)の合計を100質量%として、好ましくは10〜60質量%、更に好ましくは20〜50質量%の範囲である。5質量%より小さくても、70質量%より大きくても相溶性が不足する傾向を示し、好ましくない。
【0032】
単量体成分(B)における芳香族ビニル単量体とシアン化ビニル単量体の質量比率は、芳香族ビニル単量体/シアン化ビニル単量体として、好ましくは30/70〜98/2、より好ましくは60/40〜95/5である。
【0033】
共重合可能な他の単量体を用いる場合、その使用量は、芳香族ビニル単量体とシアン化ビニル単量体の合計を100質量部として、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。
【0034】
本発明のポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体の製造方法としては、乳化重合、塊状重合、懸濁重合、溶液重合などの公知の方法を用いることができるが、特に品質の観点から溶液重合が好ましい。また、溶液重合は、回分式重合法と連続式重合法の何れの方法によっても実施できるが、経済性の点から連続式重合法が好ましい。
【0035】
溶液重合に用いることのできる溶剤としては、例えば、芳香族炭化水素を主体とする不活性溶剤が挙げられる。芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、i−プロピルベンゼンなどが挙げられるが、経済性および品質の観点からトルエンが好ましい。また、ケトン類、エステル類、エーテル類、アミド類、ハロゲン化炭化水素などの極性溶剤を溶剤中の30質量%以下で用いることは差し支えないが、脂肪族炭化水素との併用は好ましくない。不活性溶剤の使用量はポリプロピレン系樹脂(A)と単量体成分(B)の合計100質量部に対して通常50〜200質量部、好ましくは60〜180質量部である。重合温度は、好ましくは80〜140℃、更に好ましくは90〜135℃、特に好ましくは100〜130℃の範囲である。
【0036】
グラフト共重合を行う際、ポリプロピレン系樹脂(A)を10〜60質量%、単量体成分(B)を90〜40質量%(前記ポリプロピレン系樹脂と前記単量体成分の合計は100質量%)用いることが好ましい。
また、ポリプロピレン系樹脂(A)を前記溶媒に予め溶解した後、単量体成分(B)を添加してグラフト共重合を行うことが好ましい。このとき、ポリプロピレン系樹脂が、必ずしも均一に溶解している必要はなく、一部が溶解または膨潤している状態でもよい場合がある。溶解を行う際の前記溶媒の好ましい温度は100℃以上であり、より好ましくは105℃以上であり、特に好ましくは110〜200℃、更に好ましくは110〜170℃である。この溶解は、前記温度範囲で2〜5時間程度の時間をかけて行うことが好ましい。ポリプロピレン系樹脂(A)の溶解性は、反応容器の仕様によって異なるが、通常、100℃未満では溶解性が低く、グラフト率が下がり、目的とする性能を得ることができない。
グラフト共重合を行う際の重合時間は、好ましくは1〜10時間、より好ましくは1.5〜8時間、特に好ましくは2〜6時間である。重合時間が短すぎると重合率が上がらず、グラフト率が低くなる場合があり、長すぎると生産性が低下する。
【0037】
グラフト共重合に際しては、重合開始剤を用いてもよいし、重合開始剤を使用せずに熱重合で重合してもよいが、重合開始剤を用いる方が好ましい。重合開始剤としては、通常公知のものを用いることができるが、グラフト反応に効果的な有機過酸化物を用いることが好ましい。有機過酸化物としては、パーオキシエステル系化合物、ジアルキルパーオキサイド系化合物、ジアシルパーオキサイド系化合物、パーオキシジカーボネート系化合物、パーオキシケタール系化合物などが挙げられる。パーオキシエステル系化合物としては、例えば、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−3−メチルベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエートなどが挙げられる。ジアルキルパーオキサイド系化合物としては、例えば、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3などが挙げられる。ジアシルパーオキサイド系化合物としては、例えば、ジイソブチリルパーオキサイド、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジコハク酸パーオキサイド、ジ−(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキサイドなどが挙げられる。パーオキシジカーボネート系化合物としては、例えば、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネートなどが挙げられる。パーオキシケタール系化合物としては、例えば、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル4,4−ジ−(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ジ(4,4−ジ−(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパンなどが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種類以上を併用することできる。これらのうち、パーオキシエステル系化合物が好ましく、さらに好ましくは10時間半減期温度(T10)が80〜120℃であるパーオキシエステル系化合物であり、特に好ましくはt―ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートである。
【0038】
重合開始剤の使用量は、ポリプロピレン系樹脂(A)と単量体成分(B)の合計100質量部に対して0.01〜5質量部、好ましくは0.05〜3質量部、更に好ましくは0.1〜2質量部である。また、連鎖移動剤を用いることもでき、例えば、メルカプタン類、α−メチルスチレンダイマー等を挙げることができる。さらに、必要に応じて酸化防止剤を添加してもよく、その添加方法としては最終製品に混合してもよいし、重合反応前後に添加してもよい。
重合開始剤として10時間半減期温度(T10)が80〜120℃であるパーオキシエステル系化合物を用いて溶液重合を行う場合、下記式(2)を満たす温度(T)の範囲で重合を行うことが好ましい。
10≦T≦T10+30(℃) …(2)
(式(2)中、T10は前記重合開始剤の10時間半減期温度(℃)である。)
【0039】
本発明のポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体のグラフト率は、好ましくは20〜200質量%、更に好ましくは30〜150質量%、特に好ましくは40〜120質量%である。このグラフト率(%)は、次式により求められる。
【0040】
グラフト率(質量%)={(T−S)/S}×100
【0041】
上記式中、Tはポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体1gをアセトン20mlに投入し、振とう機により2時間振とうした後、遠心分離機(回転数;23,000rpm)で60分遠心分離し、不溶分と可溶分とを分離して得られる不溶分の質量(g)であり、Sは該ポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体1gに含まれるポリプロピレン系樹脂の質量(g)である。
【0042】
また、本発明のポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体のアセトン可溶分の極限粘度〔η〕(溶媒としてメチルエチルケトンを使用し、30℃で測定)は、好ましくは0.1〜1.2dl/g、更に好ましくは0.2〜1dl/g、特に好ましくは0.2〜0.8dl/gである。
また、本発明のポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体は、220℃、10kgの条件で測定したメルトフローレート(MFR)が、5g/10分以上であることが好ましく、10〜200g/10分であることが更に好ましい。
また、本発明のポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体は、IZOD(アイゾット)衝撃強度が、20〜200J/mであることが好ましく、90〜200J/mであることがより好ましい。
また、本発明のポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体は、曲げ弾性率が、1400〜3000MPaであることが好ましく、1500〜3000MPaであることがより好ましい。
【0043】
なお、ポリプロピレン系樹脂(A)の存在下、単量体成分(B)を共重合して得られる本発明のポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体には、通常、単量体成分がポリプロピレン系樹脂にグラフトした共重合体と単量体成分がポリプロピレン系樹脂にグラフトしていない未グラフト成分(すなわち、単量体同士の単独および共重合体)が含まれる。
【0044】
ポリプロピレン系樹脂及びゴム強化AS系樹脂
本発明のポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体は、それ自体を成形材料として用いて、耐衝撃性、剛性、流動性、耐薬品性等に優れた成形品を得ることができるが、ポリプロピレン系樹脂とゴム強化AS系樹脂と混合して相溶化剤として使用することもできる。本発明のポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体を相溶化剤として使用した場合、ポリプロピレン系樹脂とゴム強化AS系樹脂からなるポリマーアロイであって、低比重で、しかも、耐衝撃性、剛性、流動性、耐熱性、外観および成形収縮率に優れたものが得られる。
【0045】
かかるポリマーアロイを構成するポリプロピレン系樹脂としては、上記成分(A)として説明したものと同じものを使用できる。
【0046】
ゴム強化AS系樹脂としては、特に制限されるものではなく、ゴム質重合体の存在下に、芳香族ビニル単量体及びシアン化ビニル単量体、並びに、必要に応じて、これらと共重合可能な他の単量体からなる単量体成分をグラフト共重合してなるグラフト共重合体を使用することができる。このグラフト共重合体には、通常、単量体成分がゴム質重合体にグラフトした共重合体と単量体成分がゴム質重合体にグラフトしていない未グラフト成分(すなわち、単量体同士の単独および共重合体)が含まれる。前記ゴム強化AS系樹脂は、ゴム質重合体の非存在下に、芳香族ビニル単量体及びシアン化ビニル単量体、並びに、必要に応じて、これらと共重合可能な他の単量体からなる単量体成分を共重合して得られた所謂AS系共重合体を前記グラフト共重合体に添加した所謂グラフトブレンド型のものであってもよい。
【0047】
上記ゴム質重合体としては、特に限定されないが、ポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン・ブテン−1−非共役ジエン共重合体、ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS、SEBS等)、アクリルゴム、シリコーンゴム、シリコーン・アクリル系IPNゴム等が挙げられ、これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらのうち、本発明のポリプロピレン系樹脂グラフト共重合の相溶化性能の点から、エチレン−プロピレン共重合体(EPM)、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体(EPDM)が好ましく、さらに耐衝撃性の点から、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体(EPDM)が特に好ましい。すなわち、ゴム強化AS系樹脂としては、ゴム質重合体としてEPMまたはEPDMを用いたAES樹脂が好ましい。EPMまたはEPDMのMw/Mnは通常1.2〜4.5、好ましくは1.5〜4.0、更に好ましくは1.8〜4.0である。また、EPMまたはEPDMのムーニー粘度(ML1+4、100℃)は通常5〜90、好ましくは10〜80、更に好ましくは12〜70である。エチレン/プロピレンの重量比は90/10〜20/80、好ましくは85/15〜40/60である。EPDMの不飽和基量はヨウ素価に換算して4〜40の範囲が好ましく、用いられるジエンの種類はアルケニルノルボルネン類、環状ジエン類、脂肪族ジエン類であり、好ましくは5−エチリデン−2−ノルボルネンおよびジシクロペンタジエンである。また、2種以上のエチレン−プロピレン系ゴムを混合して使用することもできる。
【0048】
ゴム強化AS系樹脂を構成する単量体成分、すなわち、芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体、及び、これらと共重合可能な他の単量体としては、上記成分(B)として記述したものを用いることができる。
【0049】
ゴム強化AS系樹脂のグラフト率は、好ましくは20〜200質量%、更に好ましくは30〜150質量%、特に好ましくは40〜120質量%である。このグラフト率(%)は、次式により求められる。
【0050】
グラフト率(質量%)={(T−S)/S}×100
【0051】
上記式中、Tはゴム強化AS系樹脂1gをアセトン20mlに投入し、振とう機により2時間振とうした後、遠心分離機(回転数;23,000rpm)で60分遠心分離し、不溶分と可溶分とを分離して得られる不溶分の質量(g)であり、Sはゴム強化AS系樹脂1gに含まれるゴムの質量(g)である。
【0052】
また、ゴム強化AS系樹脂のアセトン可溶分の極限粘度〔η〕(溶媒としてメチルエチルケトンを使用し、30℃で測定)は、好ましくは0.2〜1.2dl/g、より好ましくは0.2〜1dl/g、更に好ましくは0.3〜0.8dl/gである。
【0053】
本発明のポリプロピレン系樹脂グラフト共重合をポリオレフィン系樹脂とゴム強化AS系樹脂の相溶化剤として使用する場合、ポリオレフィン系樹脂とゴム強化AS系樹脂の合計100質量部に対する本発明のポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体の配合比は、1〜100質量部、好ましくは2〜50質量部、より好ましくは5〜30質量部である。1質量部より小さいと耐衝撃性並びに剛性の向上が期待できず、100質量部より大きいと比重が大きくなり軽量化に好ましくない。この場合、ポリオレフィン系樹脂とゴム強化AS系樹脂の配合割合(ポリオレフィン系樹脂/ゴム強化AS系樹脂)は、質量比率で、95/5〜50/50、好ましくは90/10〜60/40、より好ましくは85/15〜70/30である。95/5より大きいと耐衝撃性並びに剛性の向上が期待できず、50/50より小さいと比重が大きくなり軽量化に好ましくない。また、ポリオレフィン系樹脂とゴム強化AS系樹脂と本発明のポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体とからなるポリプロピレン系樹脂組成物において、ゴム強化AS系樹脂に由来するゴム成分の量は、該樹脂組成物100質量部に対して1〜50質量部であることが好ましく、更に好ましくは2〜40質量部、特に好ましくは3〜30質量部である。ゴム成分の量が少な過ぎると、樹脂組成物の耐衝撃性が低下する傾向があり、多すぎると成形性が低下し比重が高くなる傾向がある。
【0054】
上記ポリオレフィン系樹脂とゴム強化AS系樹脂と本発明のポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体とからなるポリプロピレン系樹脂組成物は、必要に応じて、無機充填材などの他の添加剤を含んでもよい。無機充填材としては、例えば、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、マイカ、カオリン、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、チタンホワイト、ホワイトカーボン、カーボンブラック、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ガラス繊維、カーボン繊維、及び、炭化ケイ素ウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、塩基性硫酸マグネシウムウィスカー等のウィスカーなどが挙げられ、これらは単独または2種類以上を混合して用いることができる。これらのなかでも、タルク、酸化亜鉛ウィスカー、及び塩基性硫酸マグネシウムウィスカーが好ましい。
【0055】
無機充填材以外の添加剤としては、酸化防止剤、加工安定剤、紫外吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、結晶化核剤、滑剤、可塑剤、金属不活性剤、着色顔料、各種無機充填剤、ガラス繊維、強化剤、難燃剤、離型剤、発泡剤などの各種添加剤が挙げられる。また、上記ゴム強化AS系樹脂は、必要に応じ他の樹脂、例えば、ポリエチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアミドなどを含有してもよい。
【0056】
本発明のポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体を相溶化剤として配合したポリプロピレン系樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂、ゴム強化AS系樹脂、本発明のポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体等の各成分を所定の配合比で、タンブラーミキサーやヘンシェルミキサーなどで混合した後、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、フィーダールーダー等の混練機を用いて適当な条件下で溶融混練して製造することができる。好ましい混練機は、二軸押出機である。更に、各々の成分を混練するに際しては、それらの成分を一括して混練しても、多段、分割配合して混練してもよい。尚、バンバリーミキサー、ニーダー等で混練したあと、押出機によりペレット化することもできる。また、無機充填材のうち繊維状のものは、混練中での切断を防止するためにサイドフィーダーにより押出機の途中から供給する方が好ましい。溶融混練温度は、通常200〜250℃、好ましくは210〜230℃である。
【0057】
かくして、各成分を溶融混練して得られるポリプロピレン系樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂が連続相を形成し、この連続相中にゴム強化AS系樹脂および本発明のポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体から構成される成分が分散相を形成する。かくして得られたポリプロピレン系樹脂組成物は、本発明のポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体が相溶性化性能に優れるため、衝撃強度と曲げ弾性率の両者が向上した成形品を得ることができる。
一般に、ポリプロピレン系樹脂のIZOD衝撃強度と曲げ弾性率はトレードオフの関係にあることが知られている。そこで、本発明者が種々のポリプロピレン系樹脂のIZOD衝撃強度と曲げ弾性率をグラフの縦軸と横軸にそれぞれプロットして検討した結果、式(1)において0.225の係数が求められ、さらに、値Kは、耐衝撃性と剛性の物性バランスを示す指標として用いることができることが判明した。
本発明によれば、成形品が耐衝撃性と曲げ弾性率の両者に優れていることは、下記条件で得られる値Kで代表させることができる。
【0058】
条件:値Kは、ポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体10部を、プロピレン単独重合体80部及びAES樹脂20部と充分に溶融混練して得た樹脂組成物からなる比重0.92〜0.96の射出成形体のIZOD衝撃強度と曲げ弾性率から下記式(1)に従って求めた値である。
K = IS +(0.225 × FM) …(1)
(式(1)中、ISはIZOD衝撃強度(単位:J/m)であり、FMは曲げ弾性率(単位:MPa)である。また、上記条件におけるプロピレン単独重合体は、JIS K7210:1999に従い230℃、2.16kgの条件で求めたMFRが7〜15g/10minのものであり、上記条件におけるAES樹脂は、エチレン/プロピレン/非共役ジエン=60〜80/20〜40/0〜10(質量%)(ただし、エチレン、プロピレン及び非共役ジエンの合計は100質量%)の組成からなり且つムーニー粘度(ML1+4、100℃)が15〜40であるエチレン−プロピレン系共重合体29〜34質量%、スチレン43〜47質量%及びアクリロニトリル23〜27質量%(ただし、エチレン−プロピレン系共重合体、スチレン及びアクリロニトリルの合計は100質量%)からなるグラフト率45〜65%、アセトン可溶分の極限粘度[η](溶媒としてメチルエチルケトンを使用し、30℃で測定)0.3〜0.5dl/g、及び透過型電子顕微鏡写真にて求めた数平均ゴム粒子径0.4〜0.7μmのものである。)
上記条件におけるAES樹脂の上記エチレン−プロピレン系共重合体が非共役ジエンを含む場合は、エチレン/プロピレン/非共役ジエン=60〜64/30〜34/2〜10(質量%)(ただし、エチレン、プロピレン及び非共役ジエンの合計は100質量%)の組成からなり且つムーニー粘度(ML1+4、100℃)が25〜35であるエチレン−プロピレン−非共役ジエン系共重合体32質量部、スチレン44質量部及びアクリロニトリル24質量部から構成されるグラフト率45〜55%、アセトン可溶分の極限粘度[η](溶媒としてメチルエチルケトンを使用し、30℃で測定)0.35〜0.45dl/g、及び透過型電子顕微鏡写真にて求めた数平均ゴム粒子径0.4〜0.7μmのAES樹脂が好ましい。非共役ジエンとしては、ジシクロペンタジエンが好ましい。
【0059】
本発明のポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体は、上記値Kが450以上を達成する相溶化性能を備えるものであり、好ましくは480以上の値Kを達成するものであり、特に好ましくは500以上の値Kを達成するものである。ここにおいて、好ましい曲げ弾性率は1450〜1850MPaであり、より好ましい曲げ弾性率は1600〜1850MPaであり、特に好ましい曲げ弾性率は1700〜1850MPaであり、好ましいIZOD衝撃強度は95〜135J/mであり、より好ましいIZOD衝撃強度は100〜135J/mであり、特に好ましいIZOD衝撃強度は110〜135J/mである。
【0060】
本発明のポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体及びこれを相溶化剤として配合したポリプロピレン系樹脂組成物は、熱可塑性樹脂組成物であって、射出成形、プレス成形、シート押出成形、真空成形、異形押出成形、発泡成形等の公知の成形法により、成形品を得ることができる。
【0061】
本発明のポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体及びこれを相溶化剤として配合したポリプロピレン系樹脂組成物は、上記のような優れた性質を有するので、上記成形法によって得られる各種成形品は、その優れた性質を利用して、自動車分野の外板部品、外装部品、内装部品等の各種部品、家電製品の各種ハウジング、電気・電子分野の各種ハウジング、雑貨などに使用することができる。
【実施例】
【0062】
以下、例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら制約されるものではない。尚、実施例中、部および%は、特に断らない限り質量基準である。
【0063】
(1)評価方法
本実施例において用いられる各種評価方法は、以下の通りである。また、下記の評価方法は、本明細書における各種物性値の測定方法を定義するものである。
【0064】
(1−1)比重
ASTM D792に準拠して23℃にて測定した。
(1−2)流動性
ポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体の流動性は、MFRをASTM D1238に準拠して220℃、10kgの条件で測定して、評価した。また、ポリプロピレン系樹脂組成物の流動性は、同様に、230℃、2.16kgの条件で測定して、評価した。
(1−3)耐衝撃性
耐衝撃性は、IZOD(アイゾット)衝撃強度をASTM D256に準拠して、厚み1/8インチ、ノッチつきの試験片を用いて測定して、評価した。
【0065】
(1−4)曲げ弾性率
剛性は、曲げ弾性率をASTM D790に準拠して、厚み1/4インチの試験片を用いて、曲げスパン100mm、曲げ速度30mm/分の条件で測定して、評価した。
【0066】
(1−5)光沢
光沢は、下記の成形条件で作成された試験片をASTM D523に準拠して、測定角度60°で測定した。
(成形条件)
成形機;新潟鐵工所社製射出成形機「NN30B」、
試験片:2.4×55×80mmプレート、
ゲート種;フィルムゲート、
シリンダー温度;220℃、
射出速度;30%、
金型温度;50℃。
【0067】
(1−6)K値
ポリプロピレン樹脂として下記(i)に示すPP−5を80質量部、AES樹脂として下記(ii)のAES樹脂を20質量部、酸化防止剤として下記(iii)の酸化防止剤1を0.1質量部及び酸化防止剤2を0.1質量部用い、これらの成分と、評価に供するポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体10質量部とをヘンシェルミキサーを用いて10分間混合した後、二軸押出機(日本製鋼所社製「TEX44αII」、バレル設定温度220℃)で充分に混練し、ペレット化した。得られたペレットを射出成形機(東芝機械社製IS1006N、設定温度220℃、金型温度50℃)を用い、各種評価用の試験片を成形した。その後、得られた試験片を用いて、前記の方法で測定し、値Kを得た。
【0068】
(i)PP−5:
日本ポリプロ社製「ノバテック MA3」(プロピレン単独重合体)MFR(JIS K7210:1999 230℃、2.16kg) 11g/10min。
【0069】
(ii)AES樹脂:
リボン型攪拌機翼、助剤連続添加装置、温度計などを装備した容積20リットルのステンレス製オートクレーブに、エチレン−プロピレン系ゴム(エチレン/プロピレン=78/22(%)、ムーニー粘度(ML1+4、100℃)20であるエチレン−プロピレン系共重合体)32部、スチレン44部、アクリロニトリル24部、トルエン110部を仕込み、内温を75℃に昇温して、オートクレーブ内容物を1時間攪拌して均一溶液とした。その後、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート0.45部を添加し、内温を更に昇温し、100℃に達した後は、この温度を保持しながら、攪拌回転数100rpmとして重合反応を行った。重合反応開始後4時間目から、内温を120℃に昇温し、この温度を保持しながら更に2時間反応を行って終了した。最終コンバージョンは95%であった。
内温を100℃まで冷却した後、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)−プロピオネート0.2部を添加した後、反応混合物をオートクレーブより抜き出し、水蒸気蒸留により未反応物と溶媒とを留去し、40mmφベント付き押出機でシリンダー温度を220℃、真空度を770mmHgに調節して揮発分を実質的に脱気させ、ペレット化した。得られたAES樹脂のグラフト率は60%、アセトン可溶分の極限粘度[η]は0.4dl/g、透過型電子顕微鏡写真にて求めた数平均ゴム粒子径は0.57μmであった。
【0070】
(iii) 酸化防止剤:
酸化防止剤1: チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製のフェノール系酸化防止剤である「イルガノックス1010」(商品名)。
酸化防止剤2: 旭電化製のリン系酸化防止剤である「アデカスタブPEP−36」(商品名)。
【0071】
(2)各種成分
(2−1)ポリプロピレン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体製造用):
PP−1:ホモタイプポリプロピレン、日本ポリプロ社製「ノバテック MA3」(商品名)MFR(JIS K7210:1999 230℃、2.16kg) 11g/10min。
PP−2:ホモタイプポリプロピレン、日本ポリプロ社製「ノバテック MA03」(商品名)MFR(JIS K7210:1999 230℃、2.16kg) 25g/10min。
PP−3:ブロックタイプポリプロピレン、日本ポリプロ社製「ノバテック BC6C」(商品名)MFR(JIS K7210:1999 230℃、2.16kg) 2.5g/10min。
PP−4:ホモタイプポリプロピレン、日本ポリプロ社製「ノバテック EA9」(商品名)MFR(JIS K7210:1999 230℃、2.16kg) 0.5g/10min。
【0072】
(2−2)重合開始剤
PO−1:パーオキシエステル系化合物、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、日本油脂社製「パーブチルI」(商品名)、10時間半減期温度(T10)98.7℃。
PO−2:パーオキシエステル系化合物、t−ブチルパーオキシラウレート、日本油脂社製「パーブチルL」(商品名)、10時間半減期温度(T10)98.3℃。
PO−3:パーオキシエステル系化合物、t−ブチルパーオキシベンゾエート、日本油脂社製「パーブチルZ」(商品名)、10時間半減期温度(T10)104.3℃。
PO−4:ジアルキルパーオキサイド系化合物、ジクミルパーオキサイド、日本油脂社製「パークミルD」(商品名)、10時間半減期温度(T10)116.4℃。
PO−5:ジアルキルパーオキサイド系化合物、ジt−ブチルパーオキサイド、日本油脂社製「パーブチルD」(商品名)、10時間半減期温度(T10)123.7℃。
(2−3)連鎖移動剤
連鎖移動剤として、t−ドデシルメルカプタンを使用した。
【0073】
実施例1
リボン型攪拌機翼、助剤連続添加装置、温度計などを装備した容積20リットルのステンレス製オートクレーブに、ポリプロピレン系樹脂として上記PP−1を30部、トルエンを140部仕込み、内温を120℃に昇温してこの温度を保持しながら、オートクレーブ内容物を攪拌回転数100rpmで2時間攪拌して溶解操作を行った。攪拌回転数100rpmで攪拌しながら内温を95℃に降温して、スチレン49部、アクリロニトリル21部、重合開始剤として上記PO−1を0.5部添加して、再び内温を120℃に昇温し、この温度を保持しながら3時間反応を行った。その後、内温を100℃に冷却し、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)−プロピオネート0.2部を添加した後、反応混合物をオートクレーブより抜き出し、水蒸気蒸留を行って未反応単量体と溶媒とを留去した。得られたポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体のグラフト率は43.3%で、極限粘度[η]は0.243dl/gであった。評価結果を表1に示す。なお、ポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体単独での評価は、PP−5、AES樹脂を配合しない以外、前述の値Kの評価と同様にして実施した(表1中のグラフト共重合体評価結果参照)。
【0074】
実施例2〜16、比較例2〜4、参考例
表1〜3に示すポリプロピレン系樹脂の処方を用い、スチレンとアクリロニトリルをポリプロピレン系樹脂との合計が100質量部となるように加えた。その際、スチレンとアクリロニトリルの質量比は7対3とした。その他は実施例1と同様の方法にて、ポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体を製造した。分析結果、及び評価結果を表1〜3に示す。
【0075】
比較例1
ポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体として、日本油脂社製「モディパーA3400」(商品名)を用いた。分析結果、及び評価結果を表3に示す。
【0076】
【表1】

【0077】
【表2】

【0078】
【表3】

【0079】
表1〜3に示された結果から、以下のことが明らかである。
本発明のポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体を用いた実施例1〜16によれば、比重が0.98以下で、曲げ弾性率1450MPa以上で且つ耐衝撃性95J/m以上を満たすポリオレフィン系樹脂組成物が得られることがわかる。これに対し、従来の相溶化剤を使用した比較例1は曲げ弾性率が劣る。また、比較例2〜4は、本発明の製造条件を満たさないため、成形品の曲げ弾性率と耐衝撃性のバランスに劣る。
【0080】
図1は、これらの実施例及び比較例における曲げ弾性率と耐衝撃性の相関関係をプロットしたものであるが、本発明のポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体は、値Kが450以上の場合に従来の相溶化剤よりも性能が優れ、値Kが480以上である場合により性能が優れ、値Kが500以上である場合に特に性能が優れることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明のポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体は、ポリプロピレン系樹脂とゴム強化AS系樹脂をポリマーアロイ化する際の相溶化剤として有用であり、また、それ自体、成形材料としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】実施例及び比較例で得られた曲げ弾性率と耐衝撃性の相関図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂の存在下に、芳香族ビニル単量体及びシアン化ビニル単量体、並びに、必要に応じて、これらと共重合可能な他の単量体からなる単量体成分をグラフト共重合してなるポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体であって、下記条件で得られる値Kが450以上であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体。
条件:値Kは、ポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体10部を、プロピレン単独重合体80部及びAES樹脂20部と充分に溶融混練して得た樹脂組成物からなる比重0.92〜0.96の射出成形体のIZOD衝撃強度と曲げ弾性率から下記式(1)に従って求めた値である。
K = IS +(0.225 × FM) …(1)
(式(1)中、ISはIZOD衝撃強度(単位:J/m)であり、FMは曲げ弾性率(単位:MPa)である。また、上記条件におけるプロピレン単独重合体は、JIS K7210:1999に従い230℃、2.16kgの条件で求めたMFRが7〜15g/10minのものであり、上記条件におけるAES樹脂は、エチレン/プロピレン/非共役ジエン=60〜80/20〜40/0〜10(質量%)(ただし、エチレン、プロピレン及び非共役ジエンの合計は100質量%)の組成からなり且つムーニー粘度(ML1+4、100℃)が15〜40であるエチレン−プロピレン系共重合体29〜34質量%、スチレン43〜47質量%及びアクリロニトリル23〜27質量%(ただし、エチレン−プロピレン系共重合体、スチレン及びアクリロニトリルの合計は100質量%)からなるグラフト率45〜65%、アセトン可溶分の極限粘度[η](溶媒としてメチルエチルケトンを使用し、30℃で測定)0.3〜0.5dl/g、及び透過型電子顕微鏡写真にて求めた数平均ゴム粒子径0.4〜0.7μmのものである。)
【請求項2】
上記ポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体が、ポリプロピレン系樹脂含有量が10〜60質量%、グラフト率が20〜200質量%、アセトン可溶分の極限粘度(溶媒としてメチルエチルケトンを使用し、30℃で測定)が0.1〜1.2dl/gであることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体。
【請求項3】
上記ポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体が、芳香族炭化水素を主体とする溶剤、及び重合開始剤の存在下でグラフト共重合したものである請求項1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体。
【請求項4】
上記重合開始剤が、10時間半減期温度が80〜120℃であるパーオキシエステル系化合物である請求項3に記載のポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体。
【請求項5】
ポリプロピレン系樹脂10〜60質量%の存在下に、芳香族ビニル単量体及びシアン化ビニル単量体、並びに、必要に応じて、これらと共重合可能な他の単量体からなる単量体成分90〜40質量%(前記ポリプロピレン系樹脂と前記単量体成分の合計は100質量%)を、芳香族炭化水素を主体とする溶剤中で重合開始剤を用いてグラフト共重合する請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体の製造方法であって、前記ポリプロピレン系樹脂と前記単量体成分の合計100質量部に対して前記溶剤50〜200質量部及び前記重合開始剤0.05〜3質量部使用することを特徴とする製造方法。
【請求項6】
前記ポリプロピレン系樹脂を前記溶剤に100〜200℃で2〜5時間溶解した後、該溶液に前記単量体成分及び前記重合開始剤を添加し、下記式(2)を満たす温度(T)の範囲でグラフト共重合を行うことを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
10≦T≦T10+30(℃) …(2)
(式(2)中、T10は前記重合開始剤の10時間半減期温度(℃)である。)
【請求項7】
ポリプロピレン系樹脂10〜60質量%の存在下に、芳香族ビニル単量体及びシアン化ビニル単量体、並びに、必要に応じて、これらと共重合可能な他の単量体からなる単量体成分90〜40質量%(前記ポリプロピレン系樹脂と前記単量体成分の合計は100質量%)を、芳香族炭化水素を主体とする溶剤中で重合開始剤として10時間半減期温度が80〜120℃であるパーオキシエステル系化合物を用いてグラフト共重合してなるポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体。
【請求項8】
前記ポリプロピレン系樹脂と前記単量体成分の合計100質量部に対して、前記溶剤を50〜200質量部、及び、前記重合開始剤を0.05〜3質量部使用してなる請求項7に記載のポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体。
【請求項9】
前記パーオキシエステル系化合物が、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシラウレート、およびt−ブチルパーオキシベンゾエートからなる群より選ばれた少なくとも1つである請求項7又は8に記載のポリプロピレン系樹脂グラフト共重合体。

【図1】
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【公開番号】特開2008−31434(P2008−31434A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−154728(P2007−154728)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【出願人】(396021575)テクノポリマー株式会社 (278)
【Fターム(参考)】