説明

ポリ手袋

【課題】本発明は、使い捨てポリ手袋を外す際、容易に離脱出来る機構を備えたポリ手袋を提供することを課題とする。
【解決手段】二枚のプラスチックフィルムを手袋形状の輪郭線に沿って裁断と同時に、手首を除いた外周部を熱溶着して成るポリ手袋に於いて、中指又は小指の先端に固定した糸を、ポリ手袋の内側を通して手の甲の外側に折り曲げ、簡易的に固定することにより、容易に離脱出来る機構を備える。即ち、一方の手で糸を引くことにより、ポリ手袋のフィルムの一部を切断するか、或いは、熱溶着したポリ手袋の一部を引き剥がすことにより、手、指を覆っているポリ手袋を容易に外すことが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用後の離脱を容易にする為の使い捨てポリ手袋に係わるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、食品を扱う際や、塗料、油脂分を扱う際、或いは、医療関係、更には、衛生関係での取り扱いの際、手への直接の汚染防止や付着防止、逆に手からの汚染防止に、使い捨てポリ手袋は、広く用いられて来ている。
これらのポリ手袋は、ポリエチレン等のポリオレフィン系のフィルムを二枚に重ね、手袋の形状の輪郭線に沿って熱溶着と共に裁断して作られている。ポリ手袋では、使用する人の手の大きさが異なることから、サイズを変えて品揃えしたりして生産されているが、基本的には、手、指がスムースに入る様、少し大きめのサイズで作られている。
【0003】
この為、特許文献1に見られる様に、手、指を入れた後、ポリ手袋と手がフィットする様、エンボス加工したフィルムを用いたり、指の通る両側の一部を熱溶着して絞ったり、特許文献2に見られる様に、指の外側縁の一部をあえて湾曲状に突起させ、内部のエアーを抜き易くしたり、或いは、特許文献3に見られる様に、指の付根部分に限り、部分熱溶着して脱落を防止したりする方法が提案され、一部実施されている。更には、特許文献4で示されている様に、二枚貼り合わせのポリ手袋でも、自由に手、指を動かせる様、各指の根元に回曲状の溶着断面を付与する方法も、提案されている。
この為、ポリ手袋を手に付けて作業する際は、手と指が手袋としっかりとフィットし、脱落の心配もなくなり、細かな作業も容易に出来る様になって来た。
【0004】
しかし、ポリ手袋は基本的に、水、油、等と手、指を遮断する為のもので有ることから、ポリ手袋を付けた作業中の手からの発汗は、手袋の内側に留まり、手、指に密着し、作業修了時、ポリ手袋を外そうとしても、簡単に外せなくなる。
一般にポリ手袋で扱うものは、手との接触を避けたいものを取り扱う場合が多いが、外す際、ポリ手袋を付けたままの一方の手で、他方のポリ手袋の手首の部分を掴み脱がす。この際、密着したポリ袋を無理に引き剥がすことから、往々にして、一方の汚染している手袋の先で、他方の手首や手の甲や平を汚すことが多かった。又、ポリ手袋を付けた作業中に、指を負傷したり、或いは携帯電話の応答や、メモ書きの必要、トイレ使用、等、緊急で外す必要が生じた場合、一方の手袋を付けた手で、密着している他方の手袋を無理に外さなければならず、その際も汚れの一部を手に付ける恐れが有った。
【0005】
この様に、ポリ手袋の手の挿入後の密着性、フィット性、作業時の手、指の自由度を高める工夫は各々成されているものの、使用後の取り外し方法に付いての工夫はなく、容易に離脱し、手、指を汚染しない方法が求められていた。
【特許文献1】特開2007−169822
【特許文献2】特開2004−162191
【特許文献3】特開2002−317320
【特許文献4】特開2007−031907
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、使い捨てポリ手袋を付けて各種作業を行う際、手から発汗、等で手袋と手、指が密着している状態で、ポリ手袋を外す際、容易に離脱出来る機構を備えたポリ手袋を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、ポリ手袋の内側に、少なくとも一部を固定した糸を設けることにより、一方のポリ手袋を外す際、糸の他端をもう一方の手で引いて、ポリ手袋のフィルムの一部を切断するか、或いは、熱溶着したポリ手袋の一部を引き剥がすことにより、手、指を覆っているポリ手袋を容易に外すことが出来ることに想到し、本発明に到達した。
即ち、本発明は以下のとおりである。
【0008】
1.二枚重ねのプラスチックフィルム1a、1bを手袋の形に裁断し、熱溶着して成る手袋に於いて、いずれかの指の先端4aに固定し、手首を通して出る糸2aを、手の甲となる手袋の内側のフィルムに固定して成る離脱容易な使い捨てポリ手袋。
2.糸2aを固定する指の先端が中指の先端4aである前記1のポリ手袋
3.二枚重ねのプラスチックフィルム1a、1bを手袋の形に裁断し、熱溶着して成る手袋に於いて、小指の先端4bに固定し、手袋の内側を通し手首を通して出る糸2bを設けた、離脱容易な使い捨てポリ手袋。
4.二枚のプラスチックフィルム1c、1dを直線状に熱溶着してフィルム1eとなし、その直線状の溶着線3aが手の甲の側中指の中央から手首になる様な位置へフィルム1eを配し、他の一枚のフィルム1bとで手袋の形に裁断し、熱溶着して成る手袋に於いて、中指の先端4cに固定し、手袋の内側を通し手首を通して出る糸2cを設けた、離脱容易な使い捨てポリ手袋。
【発明の効果】
【0009】
本発明の離脱容易な使い捨てポリ手袋を手に付けて作業中、急な電話への対応、筆記、トイレへの所用、来客への対応、或いは、切り傷、火傷の様な被災時の対応、等の、緊急にポリ手袋を外す必要の有る場合や、通常の作業終了後ポリ手袋を外す際、一方の指で他方のポリ手袋の糸を引くことにより、手首部分から指の先端へポリ手袋が切断され、容易に外すことが出来る。一方のポリ手袋を外した後、他方も同様な操作で外すことが出来る。
【0010】
従って、従来の様にポリ手袋を着用時、手の汗で指や手と密着し、急ぐ時、なかなか外すことが出来ず、更にはポリ手袋の手首の部分から無理に脱がした際、手首部分を作業中の液体で汚染することは、なくすることが出来、清潔に、著しく容易にポリ手袋を外すことが出来る様になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、その機能を備えたポリ手袋及びその製法に付いて、図面に従って述べる。
【0012】
一般に使い捨てポリ手袋は、ポリエチレン、等のポリオレフィン系プラスチックフィルムを二枚重ねて、手袋形状の輪郭線に沿って裁断し、熱溶着して製造する。通常裁断と熱溶着は同時に行う。
ここで、先ず本請求項1の発明について、図1に従って説明すると、予め、手の甲となる一枚の樹脂フィルム1aの内側となる面に直線状に糸を熱溶着して接合するか、或いは、ホットメルト接着剤、等を用いて、糸2aを直線状に接合する。樹脂フィルムの糸を接合した部分は、熱履歴を受けていることから、周囲のフィルムより僅かに強度的に弱くなる。
【0013】
この様にして予め糸2aを固定した樹脂フィルムを、手の甲とし手袋の内側に糸が来る様に、もう一枚の通常の樹脂フィルム1bと重ね合わせる。この際、糸を固定した樹脂フィルムの糸2aが、手袋形状のいずれかの指、好ましくは中指の先端4aから手首となる位置にセットして、裁断と同時に手袋の輪郭に沿って熱溶着する。この時、手首側の糸については、手袋の手首の位置より人が摘むことが出来る程度に、少し長く出して切断する。手首より過剰に出された糸は、手を手袋へ挿入する際、その端を同時に内側へ入れない様に、ポリ手袋の甲の部分へ折り返し、テープで止めたり、或いはホットメルト接着剤、等で簡易的に固定する。
【0014】
この様にして作成されたポリ手袋を着けて作業後、取り外す際を、図5に従って説明すると、片方のポリ手袋の簡易的に止められた糸2aを他方の手で摘み、手の甲の上に向けて引っ張ることにより、フィルム中央部が手首側から切断され、糸を引く程中指の先端に向かって切断され、手袋を開くことが出来る。もう一方のポリ手袋に付いても、同様な操作で外すことが出来る。
ここで用いられる糸としては、通常の麻や木綿、等、繊維から出来ている糸や、高密度ポリエレンやポリエステル、ナイロン、等の樹脂の一軸延伸によって作られる糸や、所謂、釣り糸も含まれる。又、同様に、ポリエチレンやポリエステルの延伸された細い幅のフィルムを、糸の代わりに用いることが出来る。これらの糸は、赤や青や、任意に着色する方が目立ち、望ましい。
【0015】
次に本請求項3の方法を図2に従って説明すると、二枚の樹脂フィルム1a、1bを裁断と同時に手袋の輪郭に沿って熱溶着する際、糸2bの先端が小指の先端4bに来る様にセットし、二枚の樹脂フィルムの間に挟み、糸2bの先端4bを熱溶着で固定する。その際、小指の先より外にはみ出す余分な糸は同時に裁断し、他方の手袋の内側の糸2bは、そのまま手首より長く出した状態で切断する。この場合、二枚の樹脂フィルムを溶着してなるポリ手袋の他方の端である親指からの糸の導入も考えられるが、小指の先端としたのは、手首から小指の先端の方が親指より長く、切断時、より多くの面が露出し、外し易くなるからである。手首から親指の先端までを糸で切断しても、親指先端と更に人指し指先端までの間も切断しないと露出面は少なく外し難い。
この後、ポリ手袋の内側を通して過剰に出された糸は、手を手袋へ挿入する際、その端を同時に内側へ入れない様に、ポリ手袋の甲の部分へ折り返し、テープで止めたり、或いはホットメルト接着剤、等で簡易的に固定する。
【0016】
この様にして作成されたポリ手袋を着けて作業後、取り外す際を図6に従って説明すると、片方のポリ手袋の簡易的に止められた糸2bを他方の手で摘み、小指脇の外側へ強く引くことにより、ポリ手袋の小指の手首側から熱溶着された箇所に沿って容易に切断され、最終的に小指の先端4bまで溶着部分が剥がれる。これにより、容易に作業後、手に密着していたポリ手袋を外すことが出来る。もう一方のポリ手袋に付いても、同様な操作で外すことが出来る。
【0017】
続いて、請求項4の方法を図3、図4に従って説明すると、予め二枚のプラスチックフィルム1c、1dの端同志を直線状に熱溶着3aする。この接合フィルム1eを手の甲の側とし、しかも、熱溶着された直線部分3aを中指の先端4cから手首に達する位置へ配し、もう一枚の通常のプラスチックフィルム1bと重ね合わせる。
この際、二枚の樹脂フィルムの間に糸2cを挟み、裁断と同時に手袋の輪郭に沿って熱溶着する際、糸の先端が中指の先端4cに来る様にセットし、糸の先端を熱溶着で固定する。その際、中指の先より外にはみ出す余分な糸は同時に裁断し、他方の手袋の内側を通った糸2cはそのまま手首より長く出した状態で切断する。
【0018】
この後、手首より過剰に出された糸は、手を手袋へ挿入する際、その端を同時に内側へ入れない様に、ポリ手袋の甲の部分へ折り返し、市販のビニールテープやセロファンテープで止めたり、或いはホットメルト接着剤やゴム系接着剤で簡易的に固定する。ここで、簡易的とは、糸の端を指で摘み、強く引くとポリ手袋に固定した糸が簡単に外れる程度の固定を意味する。
【0019】
この様にして作成されたポリ手袋を着けて作業後、取り外す際を、図7に従って説明すると、片方のポリ手袋の簡易的に止められた糸2cを他方の手で摘み、手の甲の上側へ強く引くことにより、ポリ手袋の中指の手首側から熱溶着された箇所3aに沿って容易に切断され、最終的に中指の先端4cまで溶着部分が剥がれる。これにより、容易に作業後、手に密着していたポリ手袋を外すことが出来る。もう一方のポリ手袋に付いても、同様な操作で外すことが出来る。
【実施例】
【0020】
本発明のポリ手袋を実施するための最良の実施例としては、手の甲の側に用いるプラスチックフィルムを二枚のプラスチックフィルムの端同志を直線状に熱溶着して作り、その直線状の熱融着部分が中指の先端から手首となる位置とする。ポリ手袋のもう一方の手の平側となる一枚のプラスチックフィルムを準備し、手の甲の側と手の平側の夫々のフィルムを重ね合わせ、手袋形状の輪郭線に沿って裁断と同時に、手首を除いた外周部を熱溶着する。
【0021】
この際、中指の先端から手首を通して出る糸を、手の甲と平となる二枚のプラスチックフィルムの間に挟み、裁断と同時に外周部を熱溶着する時、中指の先端のみ、糸もフィルムと一体に固定する。その後、手首より少し長目の糸を、ポリ手袋の甲の外側へ折り返し、ホットメルトやテープで、簡易的に固定する。ここで、簡易的とは、糸の端を引くと、固定した部分から糸が容易に外れる程度を意味する。
以上の様な最良の形態の具体的な方法としては、本請求項4の方法が推薦される。
【産業上の利用可能性】
【0022】
食品、塗料や油脂分等の化学品、手術等の医療関係、衛生関係で、手への直接の汚染防止や付着防止、逆に手からの汚染防止角ための使い捨てポリ手袋として好適である。
この様に、本発明の離脱容易な使い捨てポリ手袋と同様な取り外し機構は、手と密着させて着用する手術用の手袋や、指サックにも応用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】請求項1のポリ手袋のプラスチックフィルムと切断用の糸を示す。
【図2】請求項3のポリ手袋のプラスチックフィルムと切断用の糸を示す。
【図3】請求項4のポリ手袋の手の甲の側となるプラスチックフィルム同志の接合状態を示す。
【図4】請求項4のポリ手袋のプラスチックフィルムと切断用の糸を示す。
【図5】請求項1の本発明のポリ手袋を離脱のため糸を引き、切断している状態を示す。
【図6】請求項3の本発明のポリ手袋を離脱のため糸を引き、切断している状態を示す。
【図7】請求項4の本発明のポリ手袋を離脱のため糸を引き、切断している状態を示す。
【符号の説明】
【0024】
1a ポリ手袋の甲側のプラスチックフィルムを示す。
1b ポリ手袋の平側のプラスチックフィルムを示す。
1c プラスチックフィルムを示す。
1d プラスチックフィルムを示す。
1e ポリ手袋の甲側の接合されたプラスチックフィルムを示す。
2a 切断用の糸、破線はプラスチックフィルムの内側を示す。
2b 切断用の糸、破線はプラスチックフィルムの内側を示す。
2c 切断用の糸、破線はプラスチックフィルムの内側を示す。
3a フィルム同志の直線状の熱溶着部を、微細斑点着色で示す。
4a 手袋にする際、プラスチックフィルム1a、1bと、切断用の糸2aを固定する中指の先端。
4b 手袋にする際、プラスチックフィルム1a、1bと、切断用の糸2bを固定する小指の先端。
4c 手袋にする際、接合されたプラスチックフィルム1eと通常のプラスチックフィルム1bと切断用の糸2cを固定する中指の先端。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
二枚重ねのプラスチックフィルム1a、1bを手袋の形に裁断し、熱溶着して成る手袋に於いて、いずれかの指の先端に固定し、手首を通して出る糸2aを、手の甲となる手袋の内側のフィルムに固定して成る離脱容易な使い捨てポリ手袋。
【請求項2】
糸2aを固定する指の先端が中指の先端4aである請求項1のポリ手袋。
【請求項3】
二枚重ねのプラスチックフィルム1a、1bを手袋の形に裁断し、熱溶着して成る手袋に於いて、小指の先端4bに固定し、手袋の内側を通し手首を通して出る糸2bを設けた、離脱容易な使い捨てポリ手袋。
【請求項4】
二枚のプラスチックフィルム1c、1dを直線状に熱溶着してフィルム1eとなし、その直線状の溶着線3aが手の甲の側中指の中央から手首になる様な位置へフィルム1eを配し、他の一枚のフィルム1bとで手袋の形に裁断し、熱溶着して成る手袋に於いて、中指の先端4cに固定し、手袋の内側を通し手首を通して出る糸2cを設けた、離脱容易な使い捨てポリ手袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−24553(P2010−24553A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−183325(P2008−183325)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(308009635)
【Fターム(参考)】