説明

ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)の新規な使用

ポリ(アリールエーテルケトン)(P1)および、場合によってはさらにポリ(アリールエーテルケトン)(P1)およびポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)以外の1種または複数の成分(A)からなるポリマー組成物(C1)中に含まれるポリ(アリールエーテルケトン)(P1)を希釈するための、有効量(ε)のポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)の使用であって、しかも、ポリ(アリールエーテルケトン)(P1)に対してよりもポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)に対しての攻撃性の方が強い化学的環境(E)における、ポリマー組成物(C1)の耐薬品性が、少なくとも実質的に維持される、使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国仮特許出願第60/752,922号明細書および米国仮特許出願第60/752,951号明細書(いずれも、2005年12月23日出願)の利益を主張するものであり、それらの内容のすべてを参考として引用し、本明細書に組み入れる。
本発明は、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)の新規な使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)は、ポリ(アリールエーテルスルホン)の特殊な一部門を形成している。これら非晶質のテクノポリマーは、最高の靱性で知られ、ポリ(アリールエーテルケトン)などの超高性能ポリマーよりは劣るものの市販されている透明樹脂のほとんどのものよりは優れたかなり良好な耐薬品性を有する、よりすぐりの材料である。
正確に言えば、ポリ(アリールエーテルケトン)は、技術的性質、すなわち高融点、優れた熱安定性、高い剛性および強度、良好な靱性、ならびに優れた耐環境応力破壊性を含めた真に優れた耐薬品性を、格段のバランスで提供する。しかしながら、それらの物質のガラス転移点がいくぶん低いために、使用温度が170℃を超えるようなある特殊な用途の場合にはその使用に限界があるが、その理由は主として、ガラス転移が移行する(the glass transition is traversed)につれてモジュラスの損失が起きるからである。
【0003】
多くの用途において、ポリ(アリールエーテルケトン)により得られる技術的性質の格段のバランスは率直に評価されるが、前記の用途において、たとえば、純粋のポリ(アリールエーテルケトン)のTgよりも上で改良された耐荷重力を持つ物質が必要とされることはない。それでもなお重要な問題が残っていて、ポリ(アリールエーテルケトン)のコストが高いということが原因で、当業者が、前記ポリ(アリールエーテルケトン)を包含された用途(encompassed application)において技術的に望ましいものとして広く使用することができないでいるが、これは特に、成形物品またはその少なくともいくつかの部品を、一時的または恒久的に、攻撃的な化学的環境に接触させたとき、さらに詳しくは、成形物品、またはその少なくとも一つまたは複数の部品を、一時的または恒久的に、応力にさらしたときにあてはまる。
ポリ(アリールエーテルケトン)組成物よりも低コストであるが、前記ポリ(アリールエーテルケトン)組成物によって得られるものと少なくとも実質的に同等の耐薬品性を有するポリマー組成物に対する大きな必要性が依然として存在している。
その課題は、特に米国特許第4,804,724号明細書の教示(以下において説明する)を見ると、本出願人には難しいものと思える。
【0004】
米国特許第4,804,724号明細書(その内容のすべてを参考として引用し、本明細書に組み入れる)には、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)およびポリ(アリールエーテルケトン)を含むブレンド物の記載がある。米国特許第4,804,724号明細書においては、それらのブレンド物は、中間の組成(たとえば、50部のPPSUおよび50部のPEEK)では、考えられる「興味ある」性質のバランス、特に、(低い)ポリ(アリールエーテルケトン)のTgと(高い)ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)のTgとの間の範囲の中間的な靱性およびモジュラス(すなわち、中間的な耐荷重力)ならびに、ある化学的環境(酢酸エチル、1,1,1−トリクロロエタン、トルエン、およびアセトン)における、ポリ(アリールエーテルケトン)の(高い)耐薬品性とポリ(ビフェニルエーテルスルホン)の(実質的に低い)耐薬品性との間の範囲の中間的な耐薬品性(中間的な耐環境応力破壊性を含む)を示す。したがって、米国特許第4,804,724号明細書の教示は、二重の意味合いを有している:(1)ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)は、純粋のポリ(アリールエーテルケトン)のTgを超えての耐荷重力を向上させるために使用することが可能である、そして(2)ポリ(アリールエーテルケトン)にポリ(ビフェニルエーテルスルホン)を添加することによって、耐薬品性の実質的な低下が起きることが予想される。
【0005】
したがって、簡潔に述べれば、当業者は米国特許第4,804,724号明細書の教示からは、以下のように理解するであろう:すなわち、ポリ(アリールエーテルケトン)組成物中に含まれるポリ(アリールエーテルケトン)の一部を、通常コスト的により魅力のあるポリマー特にポリ(ビフェニルエーテルスルホン)で置き換えることは、ポリ(アリールエーテルケトン)によって得られる耐薬品性を実質的に維持しながら、ポリ(アリールエーテルケトン)組成物のコスト削減の込み入った問題を解決するための適切な手段とはなり得ないであろう。
【発明の開示】
【0006】
本発明の第一の態様は、ポリ(アリールエーテルケトン)(P1)ならびに場合によってはさらにポリ(アリールエーテルケトン)(P1)およびポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)以外の1種または複数の成分(A)からなる、ポリマー組成物(C1)中に含まれるポリ(アリールエーテルケトン)(P1)を希釈するために、有効量(ε)のポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)を使用し、しかも、ポリ(アリールエーテルケトン)(P1)に対してよりもポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)に対しての攻撃性の方が強い化学的環境(E)における、ポリマー組成物(C1)の耐薬品性が、少なくとも実質的に維持されることを目的とする。
【0007】
本発明の別な態様は、ポリマー組成物(C1)の耐薬品性をその必要に合わせて少なくとも実質的に維持しながらも、ポリマー組成物(C1)の中に含まれるポリ(アリールエーテルケトン)(P1)を希釈するための方法を目的としており、
前記ポリマー組成物(C1)が、ポリ(アリールエーテルケトン)(P1)ならびに、場合によってはさらに、ポリ(アリールエーテルケトン)(P1)およびポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)以外の1種または複数の成分(A)からなり、
前記ポリマー組成物(C1)の耐薬品性が、ポリ(アリールエーテルケトン)(P1)に対してよりもポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)に対して一層攻撃的な化学的環境(E)において、少なくとも実質的に維持され、
前記方法が、有効量(ε)のポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)によってポリ(アリールエーテルケトン)(P1)を希釈する、
ことを含んでいる。
【0008】
上述の2つの態様においては、そのポリマー組成物(C1)は、成形物品の形態であるかまたは成形物品の一部(S1)であってよい。
ポリ(アリールエーテルケトン)(P1)を希釈した後に得られるポリマー組成物を(C2)で表示し、それとは対照的に、希釈前のポリマー組成物を(C1)で表示することとする。
【0009】
次いで、本発明のさらに別な態様は、以下のものからなるポリマー組成物(C2)を目的としている:
ポリ(アリールエーテルケトン)(P1)
有効量(ε)のポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)、および
場合によってはさらにポリ(アリールエーテルケトン)(P1)およびポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)以外の1種または複数の成分(A)からなり、
ここで、ポリマー組成物(C2)に含まれるポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)が、質量対質量で、ポリ(アリールエーテルケトン)(P1)によって完全に置き換えられていることを除いては、ポリマー組成物(C2)と同一であるポリマー組成物(C1)の耐薬品性と比較したときに、ポリ(アリールエーテルケトン)(P1)に対してよりもポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)に対して一層攻撃的な化学的環境(E)における前記ポリマー組成物(C2)の耐薬品性が、少なくとも実質的に維持される。
【0010】
100質量部(pbw)のポリ(アリールエーテルケトン)(P1)および、場合によってはさらにポリ(アリールエーテルケトン)(P1)およびポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)以外の1種または複数の成分(A)からなるポリマー組成物(C1)から通常出発して、以下のものからなるポリマー組成物(C2)を:
(100−ε)pbwの量のポリ(アリールエーテルケトン)(P1)(εについては以下において定義される)、
有効量(εpbw)のポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)、および
場合によってはさらにポリ(アリールエーテルケトン)(P1)およびポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)以外の1種または複数の成分(A)、
下記の工程、すなわち、
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)を準備する工程;
ポリ(アリールエーテルケトン)(P1)を準備する工程;
必要であれば、成分(A)を準備する工程;
有効量、すなわちεpbwのポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)を、(100−ε)pbwのポリ(アリールエーテルケトン)(P1)と、場合によっては成分(A)とを接触、好ましくは混合する工程、
を含む方法によって調製して、ポリマー組成物(C2)を得ることが可能である。
【0011】
本発明のさらに別の態様は、上述のようなポリマー組成物(C2)からなる成形物品または成形物品の部品(S2)を目的としている。本発明の最後の態様は、前記部品を含む物品の組立品を目的としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
明確性のために、「ポリマー組成物(C1)に含まれるポリ(アリールエーテルケトン)(P1)を希釈するための」という表現は、本明細書においては、その広い意味合いで、すなわち「ポリマー組成物(C1)中に含まれるポリ(アリールエーテルケトン)(P1)の濃度を低下させるための」と理解するべきである。典型的には、そのような希釈は、ポリ(アリールエーテルケトン)(P1)の一部をポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)によって置き換えることにより達成される。「濃縮された」ポリマー組成物[すなわち、ポリマー組成物(C1)]を希釈することにより往々にして得られる利点は、そのようにして得られる「希釈された」ポリマー組成物[すなわち、ポリマー組成物(C2)]が、コスト的により魅力的となることであって、それは、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)は通常、ポリ(アリールエーテルケトン)ほどには高価でないからである。
【0013】
ある当業者によって、前記当業者が、本発明の使用に従ってポリマー組成物(C1)の中に含まれるポリ(アリールエーテルケトン)(P1)を希釈するためにポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)を使用する前に、ポリマー組成物(C1)が調製されていたかもしれないし、その耐薬品性が評価されていたかもしれない。しかしながら、このシナリオはまったく不要である。それというのも、本発明の使用は、ある環境(E)において、特に、ポリマー組成物(C2)が、ポリ(アリールエーテルケトン)含有でポリ(ビフェニルエーテルスルホン)非含有のポリマー組成物(C1)の効果的に測定されるかまたは合理的に推測された耐薬品性に少なくとも実質的に等しい耐薬品性を示すという目的で当業者によって納得されるや直ちに、良好に実施されたと理解するべきであり、その当業者が、どのような方法で、ポリマー組成物(C1)の効果的に測定されるかまたは合理的に推測された耐薬品性を知っていたとしても、このように認識されたポリマー組成物(C2)がこのことを根拠に調製されたことになる。
【0014】
本発明においては、ポリマー組成物(C1)の耐薬品性が少なくとも実質的に維持されるという事実は通常、そのポリマー組成物(C2)(「希釈された」ポリマー組成物)が、その環境(E)における耐薬品性を有しているということを意味していて、ポリマー組成物(C1)(「濃縮された」ポリマー組成物)のそれより低いがそれに近いか、ポリマー組成物(C1)のそれに等しいか、ポリマー組成物(C1)のそれよりも高いかのいずれかである。別な言い方をすれば、環境(E)において、ポリマー組成物(C2)が、ポリマー組成物(C1)の耐薬品性よりも実質的に低い耐薬品性を有していない。
【0015】
好ましくは、本発明においては、ポリマー組成物(C1)の耐薬品性が少なくとも実質的に維持されている、すなわち、ポリマー組成物(C2)が、ポリマー濃度(C1)のそれと同等または実質的に同等であるかまたは、ポリマー濃度(C1)のそれよりも高い、環境(E)における耐薬品性を通常有している。
【0016】
ポリマー組成物(C1)中に含まれるポリ(アリールエーテルケトン)(P1)を希釈するために使用したときに、環境(E)におけるポリマー組成物(C1)の耐薬品性を少なくとも実質的に維持する[すなわち、実質的に損なうことがない]ことを可能とするような、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)の量を、本発明の意味合いにおいて、有効量(ε)とみなすこととする。
【0017】
すでに説明したように、有効量(ε)のポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)で、100質量部(pbw)の量でポリマー組成物(C1)の中に含まれるポリ(アリールエーテルケトン)(P1)を希釈することが可能であるが、それには、前記ポリマー組成物(C1)の中で、εpbwのポリ(アリールエーテルケトン)(P1)をεpbwのポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)に置き換え、それによって、(100−ε)pbwのポリ(アリールエーテルケトン)(P1)とεpbwのポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)とを含むポリマー組成物(C2)を得ることができる。そのような定義をすれば、εは0〜100pbwの範囲とすることができる。
【0018】
理論的な観点からは、εは技術的に可能な限り低いものとすることもできるが、1pbw未満のポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)の量εは、前の段落で定義したように、望ましいといえることはほとんどなく、その理由は、この場合、そのようにして得られた希釈のメリットが通常不十分であるからである。したがって、有効量(ε)のポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)とは、好ましくは2pbwを超え、極めて好ましくは、5pbwを超える場合である。
【0019】
その一方で、有効量(ε)は通常、ある上限を超えてはならないが、その上限は主として、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)の性質、ポリ(アリールエーテルケトン)の性質、(1種または複数の)任意成分(A)の性質と量、および環境(E)の性質に依存する。したがって、当業者がしばしば観察するところであるが、ポリ(アリールエーテルケトン)(P1)を、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)によって、質量対質量で、量を増やしながら置き換えていくと、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)の量が臨界限度を超えない限りにおいては、そのポリマー組成物(C1)の耐薬品性が、少なくとも維持されるか、少なくとも実質的に維持される[「プラトー」または「擬似プラトー」挙動を示す]が、臨界限度を超えると、それぞれ耐薬品性が、場合によっては急激に、実質的に低下し、最終的には、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P1)のそれに近いレベルにまで達するので(図1および2参照,本明細書の実施例の項で説明)、総合的な耐薬品性曲線[すなわち、0〜100部のポリ(アリールエーテルケトン)(P1)を、質量対質量で、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)によって置き換え]は、場合によってはS字形のように見える(図3参照,本明細書の実施例の項で説明)。
【0020】
したがって:
本発明のある種の実施態様においては、有効量(ε)のポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)は、先に定義されたように、好ましくは60pbw未満であり;
本発明のある種の他の実施態様においては、εは好ましくは50pbw未満であり;
さらに別なある種の実施態様においては、εは好ましくは40pbw未満であり;さらに別なある種の実施態様においては、εは好ましくは35pbw未満であり;さらに別なある種の実施態様においては、εは好ましくは30pbw未満であり;さらに別なある種の実施態様においては、εは好ましくは25pbw未満であり;さらに別なある種の実施態様においては、εは好ましくは20pbw未満であり;さらに別なある種の実施態様においては、εは好ましくは15pbw未満である。
当業者ならば、主として、先に示したパラメーターのすべてに依存して、自分にとって最も都合の良いεの値を容易に決めることができる。
【0021】
一般的には、本発明においては、ポリマー組成物(C1)および(C2)は、一時的または恒久的に、化学的環境(E)との接触の影響を受けやすく、多くの場合、そのような一時的または恒久的な接触が実際に実現される。
化学的環境(E)を構成するかその一部となり得る化学物質(cE)の例を非限定的に挙げれば、カルボン酸エステル、カルボン酸、グリコールエーテル、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素たとえばベンゼンおよびトルエン、モノスチレン、フェノール、エポキシ、エポキシ前駆体たとえばプロピレングリコールモノエーテルおよびエチレングリコールジグリシジルエーテル、ケトン、塩素化炭化水素、ならびに硝酸および硫酸などの無機酸の水溶液などがある。
【0022】
環境(E)にハロゲン化炭化水素、特に塩素化炭化水素たとえば、四塩化炭素、クロロホルム、および塩化メチレンが含まれている場合には特に、良好な結果が得られた。その塩素化炭化水素には、1〜12個の炭素原子が含まれていてよい。
環境(E)にケトンが含まれている場合にまた良好な結果が得られた。そのケトンは、少なくとも1個のケトン基を含むC3〜C12非環状化合物たとえば、メチルエチルケトンおよびアセトンなどであってよく、少なくとも1個のケトン基を含むホモ環状またはヘテロ環状化合物(その環に、4〜10個の原子、たとえば炭素または窒素原子が含まれているのが好ましい)、たとえばN−メチルピロリジノンであってもよい。
【0023】
特に(cE)がハロゲン化炭化水素またはケトンである場合には、その化学物質(cE)の量は、環境(E)の全質量を基準にして、10、20、50、75または90%よりも高くてよく、ある種の実施態様においては、その環境(E)が実質的に、または完全に化学物質(cE)からなっていてもよい。
環境(E)におけるポリマー組成物(C1)および(C2)の耐薬品性は各種適切なパラメーターによって評価することができるが、前記パラメーターはそれ自体、各種適切な方法によって得ることができる。そのような適切なパラメーターの一例が、「保持率」であって、これは、ポリマー組成物(C1)および(C2)が一時的または恒久的に化学的環境(E)と接触するより前のそれらのある物理的または化学的性質の値の、ポリマー組成物(C1)および(C2)が、同一の化学的環境(E)と接触した後の、それらの同一の物理的または化学的性質の値に対する比率である。
【0024】
問題となる性質は、特に機械的性質、たとえば引張強度、引張モジュラス、曲げ強度、または曲げモジュラスである。引張特性は主としてASTM試験法D−638に従って求めることができるが、それに対して曲げ特性は主としてASTM試験法D−790に従って求めることができる。
本発明のある種の実施態様においては、ポリマー組成物(C1)および(C2)に応力がかかることはない。
本発明の他のある種の実施態様においては、ポリマー組成物(C1)および(C2)には応力がかかるが、事情によってはそれらに、一時的または恒久的のいずれかの応力がかかってもよい。
【0025】
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)
本発明の目的では、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)は、その繰り返し単位の50質量%を超えるものが、少なくとも1個のp−ビフェニレン基:
【化1】

少なくとも1個のエーテル基(−O−)および少なくとも1個のスルホン基(−SO2−)を含む1種または複数の式の繰り返し単位(R2)であるような重縮合ポリマーを表すことを意図している。
【0026】
繰り返し単位(R2)が次の一般式の1種または複数の式であるのが好ましい:
【化2】

[式中、R1〜R4は、−O−、−SO2−、−S−、−C(=O)−であるが、ただしR1〜R4の少なくとも1個は−SO2−であり、かつR1〜R4の少なくとも1個は−O−であり;Ar1、Ar2およびAr3は、6〜24個の炭素原子を含むアリーレン基、好ましくはフェニレンまたはp−ビフェニレンであり;そしてaおよびbは0または1のいずれかである。]
【0027】
より好ましくは、繰り返し単位(R2)は以下のものから選択される。
【化3】

【0028】
さらにより好ましくは、繰り返し単位(R2)は次式のものである。
【化4】

【0029】
本発明の目的では、ポリフェニルスルホン(PPSU)ポリマーは、その繰り返し単位の50質量%を超えるものが、式(2)の繰り返し単位(R2)である各種ポリマーを表すことを意図している。
【0030】
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)は、主として、ホモポリマー、ランダムコポリマー、交互コポリマー、またはブロックコポリマーであってよい。ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)がコポリマーである場合には、その繰り返し単位は主として、(i)式(2)〜(6)から選択される少なくとも2種の異なった式の繰り返し単位(R2)、または(ii)1種または複数の式(2)〜(6)繰り返し単位(R2)と繰り返し単位(R2)とは異なったたとえば次式のような繰り返し単位(R2*)からなっていてよい:
【化5】

【0031】
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)の繰り返し単位の好ましくは70質量%を超えるもの、より好ましくは85質量%を超えるものが、繰り返し単位(R2)である。さらにより好ましくは、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)の実質的に全部の繰り返し単位が繰り返し単位(R2)である。最も好ましくは、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)の全部の繰り返し単位が繰り返し単位(R2)である。
【0032】
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)がPPSUホモポリマーである、すなわち、ポリマー内で完全に全部ではなくても、実質的に全部で、その繰り返し単位が式(2)であるような場合には、優れた結果が得られた。ソルベイ・アドバンスト・ポリマーズ・L.L.C.(Solvay Advanced Polymers,L.L.C.)製のレイデル(RADEL)(登録商標)Rポリフェニルスルホンは、PPSUホモポリマーの一例である。
【0033】
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)は各種の方法で調製することができる。当業者に周知の方法は、米国特許第3,634,355号明細書、米国特許第4,008,203号明細書、米国特許第4,108,837号明細書および米国特許第4,175,175号明細書に記載されている(それらの内容のすべてを参考として引用し、本明細書に組み入れる)。
【0034】
ポリ(アリールエーテルケトン)(P1)
先にも述べたように、ポリマー組成物(C1)にはポリ(アリールエーテルケトン)(P1)が含まれている。
【0035】
本発明の目的では、「ポリ(アリールエーテルケトン)」という用語は、その繰り返し単位の50質量%を超えるものが、少なくとも1個のアリーレン基、少なくとも1個のエーテル基(−O−)および少なくとも1個のケトン基[−C(=O)−]を含む1種または複数の式の繰り返し単位(R1)である、各種のポリマーを表すことを意図している。
【0036】
好ましくは、繰り返し単位(R1)以下のものから選択される:
【化6】

[式中、
Arは独立して、フェニレン、ビフェニレンまたはナフチレンから選択される2価の芳香族ラジカルであり、
Xは独立して、O、C(=O)または単結合(direct bond)であり、
nは、0〜3の整数であり、
b、c、dおよびeは、0または1であり、
aは、1〜4の整数であり、そして
好ましくは、bが1の場合にはdが0である。]
【0037】
より好ましくは、繰り返し単位(R1)は以下のものから選択される。
【化7】

【化8】

【0038】
さらにより好ましくは、繰り返し(R1)は以下のものから選択される。
【化9】

【0039】
最も好ましくは、繰り返し単位(R1)は次式のものである。
【化10】

【0040】
本発明の目的では、PEEKポリマーは、その繰り返し単位の50質量%を超えるものが、式(VII)の繰り返し単位(R1)である各種ポリマーを表すことを意図している。
【0041】
ポリ(アリールエーテルケトン)(P1)は、主として、ホモポリマー、ランダムコポリマー、交互コポリマー、またはブロックコポリマーであってよい。ポリ(アリールエーテルケトン)(P1)がコポリマーである場合には、それには主として、(i)式(VI)〜(XXI)から選択される少なくとも2種の異なった式の繰り返し単位(R1)、または(ii)式(VI)〜(XXI)の1種または2種の繰り返し単位(R1)および繰り返し単位(R1)とは異なる繰り返し単位(R1*)を含む。
【0042】
ポリ(アリールエーテルケトン)(P1)の繰り返し単位の好ましくは70質量%を超えるもの、より好ましくは85質量%を超えるものが、繰り返し単位(R1)である。さらにより好ましくは、ポリ(アリールエーテルケトン)(P1)の実質的に全部の繰り返し単位が繰り返し単位(R1)である。最も好ましくは、ポリ(アリールエーテルケトン)(P1)の全部の繰り返し単位が繰り返し単位(R1)である。
ポリ(アリールエーテルケトン)(P1)がPEEKホモポリマーである、すなわち、ポリマーの内で完全に全部ではなくても、実質的に全部で、その繰り返し単位が式(VII)であるような場合には、優れた結果が得られた。
【0043】
ポリ(アリールエーテルケトン)(P1)は、有利には、少なくとも0.55dL/g、好ましくは少なくとも0.70dL/gの還元粘度(RV)を有し、さらにポリ(アリールエーテルケトン)(P1)のRVは、有利には、多くとも1.10dL/g、好ましくは多くとも0.90dL/gである。還元粘度(RV)は、95〜98%硫酸(d=1.84g/mL)中、ポリ(アリールエーテルケトン)濃度1g/100mLで測定する。その測定は、No.50キャノン−フレスケ(Cannon−Fleske)粘度計を使用して実施する。スルホン化を避けるために、溶解後4時間未満の間に、25℃でRVを測定する。
【0044】
ポリ(アリールケトン)(P1)は各種の方法で調整することができる。
当業者に周知の一つの方法には、少なくとも1種のビスフェノールと少なくとも1種のジハロベンゾイド化合物または少なくとも1種のハロフェノール化合物との実質的に等モルの混合物を反応させることが含まれる(カナダ国特許第847,963号明細書に記載あり)。このようなプロセスにおいて好適なビスフェノールは、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、および4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノンであり;このようなプロセスにおいて好適なジハロベンゾイド化合物は、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、および4−クロロ−4’−フルオロベンゾフェノンであり;このようなプロセスにおいて好適なハロフェノール化合物は、4−(4−クロロベンゾイル)フェノールおよび(4−フルオロベンゾイル)フェノールである。したがって、PEEKホモポリマーは主として、たとえば米国特許第4,176,222号明細書に記載されているような求核プロセスによって製造することができる(その内容のすべてを参考として引用し、本明細書に組み入れる)。
【0045】
PEEKホモポリマーを製造するための、当業者に周知のまた別な方法には、溶媒としてアルカンスルホン酸を使用し縮合剤の存在下に、フェノキシフェノキシ安息香酸などを求電子的に重合させることが含まれるが、そのようなプロセスは、米国特許第6,566,484号明細書に記載がある(その内容のすべてを参考として引用し、本明細書に組み入れる)。その他のポリ(アリールエーテルケトン)も、たとえば米国特許出願公開第2003/0130476号明細書に記載があるように、フェノキシフェノキシ安息香酸とは異なったモノマーから出発して、同じ方法で製造することができる(その内容のすべてもまた参考として引用し、本明細書に組み入れる)。
【0046】
ポリマー組成物(C1)および(C2)の任意成分(A)
ポリマー組成物(C1)および(C2)には、ポリ(アリールエーテルケトン)組成物で慣用される成分がさらに含まれていてもよいが、そのようなものとしては、たとえば平滑剤、熱安定剤、静電防止剤、有機および/または無機顔料たとえばTiO2、カーボンブラック、酸捕捉剤たとえばMgO、安定剤すなわち、金属の酸化物および硫化物たとえば酸化亜鉛および硫化亜鉛、抗酸化剤、難燃化剤、発煙抑制剤、ならびに充填剤などが挙げられるが、これらをまとめて成分(A)と呼ぶ。
【0047】
成分(A)を存在させる場合、ポリマー組成物(C1)の全質量を基準にした[またはポリマー組成物(C2)の全質量を基準にした]それらの質量は、有利には50%未満、好ましくは30質量%未満、より好ましくは10%未満、さらにより好ましくは5%未満である。ポリマー組成物(C1)および(C2)が成分(A)をまったく含まない、すなわちそれらがポリ(アリールエーテルケトン)(P1)およびポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)からなっている場合に、優れた結果が観察された。
【0048】
ポリマー組成物(C1)および(C2)は、各種慣用される混合方法によって有利に調製することができる。好適な方法に含まれるのは、粉状または粒体状の形態の対象としているポリマー組成物の成分を、たとえば機械式ブレンダーを使用して乾燥混合する工程と、次いでその混合物を押出し加工してストランドとし、そのストランドを切断してペレットとする工程である。
【0049】
本発明に従うことが可能な成形物品または成形物品の部品の例を非限定的に挙げれば、航空機の旅客サービスユニットの部品、航空機のエアリターングリル、航空機の加熱システムの部品、航空機換気システムの部品、乾式トランス(dry transformer)もしくはモーターコイルの封入部品、フードサービス装置、歯科用ケース、医療装置、衛生器具、装置、ボールベアリングおよびボールベアリング保持ケージ、ポンプベアリング、針、医療用トレー、コーティング、ワイヤーおよびケーブルのコーティング、絶縁フィルム、およびスラストワッシャーなどがある。
【0050】
以下において本発明を説明するための実施例を提供するが、それらは本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0051】
PEEKをPPSUに各種の量でブレンドすることにより、5種のポリマー組成物、すなわちポリマー組成物E1、E2、E3、E4およびE5を調製した。一方ではPEEKのみからなるポリマー組成物、および他方ではPPSUのみからなるポリマー組成物もまた、比較例すなわちポリマー組成物CE1およびCE2として調製した。例に使用したポリマー組成物に含まれる全部の成分の種類と量とを表1にまとめた。
【0052】
【表1】

【0053】
ビクトレックス(VICTREX)(登録商標)150Pの粉体化PEEK樹脂は、ビクトレックス・マニュファクチャリングLtd.(VICTREX Manufacturing Ltd.)から入手可能であり、レイデル(RADEL)(登録商標)R5000NTのPPSU樹脂は、ソルベイ・アドバンスト・ポリマーズL.L.C(SOLVAY ADVANCED POLYMERS,L.L.C.)から入手可能であった。
【0054】
ポリマー組成物の試験片の調製
すべてのポリマー組成物は、バーストーフ(Berstorff)25mm2軸スクリュー押出機(8バレルセグメント、7加熱ゾーン、全長対直径比33:1)を使用して、表1に記載された成分を溶融コンパウンディングすることによって調製した。その押出機では、バレル6のところに真空ベントが設けられていて、すべてのコンパウンディング作業の間、真空に維持した。重量計量式フィーダーを使用して押出機のフィードスロートの中へ成分を計量することにより押出機に組成物をフィードしたが、それらのフィード速度を適切に調節して、それぞれの場合で所望のブレンド比が得られるようにした。コンパウンディング条件の詳細を表2に示す。コンパウンディングされた樹脂を、冷却および固化のための水槽の中でストランドとし、次いで切断してペレットとした。
【0055】
【表2】

【0056】
次いで、それぞれのポリマー組成物(E1、E2、E3、E4、E5、CE1およびCE2)のペレットを、25mmのスクリューを備え、51cm3の射出能力を有する50トン住友(Sumitomo)射出成形機を使用して、ASTMによる厚み3.2mmの曲げ試験片に射出成形した。射出成形条件は、すべてのサンプルで樹脂溶融温度が385〜400℃に維持され、金型温度が170〜180℃に維持されるようにした。次いで、試験片はすべて200℃で1時間かけてアニールしてすべての部分が可能な限り最大限まで結晶化されるようにしてから、耐薬品性の評価にかけた。
【0057】
化学物質暴露実験
各種の組成物の耐薬品性の評価は、成形したままの試験片、ならびに同一の試験片であるが、3種の異なった溶媒すなわち、メチルエチルケトン(MEK)、クロロホルムおよびN−メチルピロリジノン(NMP)の中に10日および30日の浸漬暴露させたものについて、室温(23℃)で曲げ特性の測定をすることにより、実施した。これらの溶媒がすべて、多くのプラスチックスに対して攻撃的な溶媒であることは周知である。NMPおよびクロロホルムは極めて攻撃性が強いので、実際にPPSUを溶解させることが可能であるが、MEKは、PPSUの弱い溶媒であるので、機械的な完全性にはやはり好ましくない。
【0058】
試験片は、化学物質暴露浴から取り出してから紙タオルを用いて簡単に乾かし、その後で曲げ特性の測定を実施した。溶媒暴露の前後における曲げ特性の測定はすべて、ASTM試験法D−790に従って実施した。
【0059】
結果
MEKに浸漬させた後でのポリマー組成物の試験結果を表3に示す。
【0060】
【表3】

【0061】
レイデル(Radel)(登録商標)Rのサンプル(CE2)は、MEKの中に部分的に溶解し、わずか10日間の浸漬後には破損していた。その一方で、純粋なPEEKのサンプル(CE1)と同様に、最大50pbwのPPSUを含む実施例E1〜E5(PPSU/PEEK質量比=1、実施例E5)は、意外にも、30日の浸漬の後であってさえも、「成形したままのもの」と同じそれらの曲げ特性のレベルを維持しており、これは保持率が約1であることからも明らかである。
【0062】
図1には、MEKでの30日間暴露の後の曲げ強度保持率をグラフ表示したものを示している。曲げ強度保持率を、試験した各種のポリマーブレンド物のPEEK質量%に対してプロットした。この場合、曲げ特性の保持という面からPEEKとの等価性が、予想もしなかったことであるが、PPSU/PEEKの比が少なくとも50/50の高さとなるまで達成されていた。さらに驚いたことには、あるブレンド物の保持率の方が、純粋のPEEKのそれよりもある程度超えていることを本出願人は見出した。
【0063】
クロロホルムに浸漬させた後でのポリマー組成物の試験結果を表4に示す。
【0064】
【表4】

【0065】
レイデル(Radel)(登録商標)Rのサンプル(CE2)がわずか10日間の浸漬でクロロホルム中に完全に溶解してしまったのに対して、意外にも、サンプルE1〜E3は、30日の浸漬の後であってさえも、「成形したままのもの」と同じそれらの曲げ特性のレベルを維持していた。
【0066】
図2には、クロロホルムでの30日間暴露の後の曲げ強度保持率をグラフ表示したものを示している。曲げ強度保持率を、試験した各種のポリマーブレンド物のPEEK質量%に対してプロットした。化学的環境(E)としてクロロホルムを用いた場合、曲げ特性の保持という面からPEEKとの等価性が、予想もしなかったことであるが、PPSU/PEEKの比が30/70の高さとなるまで達成されていた。
【0067】
NMPに浸漬させた後でのポリマー組成物の試験結果を表5に示す。
【0068】
【表5】

【0069】
レイデル(Radel)(登録商標)Rのサンプル(CE2)がわずか10日間の浸漬でNMP中に完全に溶解してしまったのに対して、予想もしなかったことであるが、サンプルE1〜E3は、30日の浸漬の後であってさえも、それらの曲げ特性のレベルを維持していた。
【0070】
図3には、NMPでの30日間暴露の後の曲げ強度保持率をグラフ表示したものを示している。曲げ強度保持率を、試験した各種のポリマーブレンド物のPEEK質量%に対してプロットした。化学的環境(E)としてNMPを用いた場合、曲げ特性の保持という面からPEEKとの等価性が、予想もしなかったことであるが、この場合もまたPPSU/PEEKの比が30/70の高さとなるまで達成されていた。
【0071】
これらの実験データすべてから、意外にも、有効量のPPSUを用いてPEEKを希釈すると、(この試験が、PEEKに対してよりもPPSUに対しての方がはるかに攻撃的である化学的環境で実施されたにもかかわらず)純粋のPEEKと少なくとも実質的に同等の耐薬品性を有するPEEK−PPSUブレンド物が得られること、およびポリマー材料のコストを実質的に低下させるための魅力的な手段であることが判った。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】MEKでの30日間暴露の後の曲げ強度保持率をグラフ表示したものを示す。曲げ強度保持率を、試験した各種のポリマーブレンド物のPEEK質量%に対してプロットした。
【図2】クロロホルムでの30日間暴露の後の曲げ強度保持率をグラフ表示したものを示す。曲げ強度保持率を、試験した各種のポリマーブレンド物のPEEK質量%に対してプロットした。
【図3】NMPでの30日間暴露の後の曲げ強度保持率をグラフ表示したものを示す。曲げ強度保持率を、試験した各種のポリマーブレンド物のPEEK質量%に対してプロットした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(アリールエーテルケトン)(P1)および、場合によってはさらにポリ(アリールエーテルケトン)(P1)およびポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)以外の1種または複数の成分(A)からなるポリマー組成物(C1)中に含まれるポリ(アリールエーテルケトン)(P1)を希釈するための、有効量(ε)のポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)の使用であって、
ポリ(アリールエーテルケトン)(P1)に対してよりもポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)に対しての攻撃性の方が強い化学的環境(E)における、ポリマー組成物(C1)の耐薬品性が、少なくとも実質的に維持される、使用。
【請求項2】
有効量(ε)のポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)が50質量部(pbw)未満であり、
前記有効量(ε)のポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)が、ポリマー組成物(C1)中に100pbwの量で含まれるポリ(アリールエーテルケトン)(P1)を、前記ポリマー組成物(C1)の中で、εpbwのポリ(アリールエーテルケトン)(P1)をεpbwのポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)で置換することにより、希釈する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
有効量(ε)のポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)が30pbw未満である、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
ポリマー組成物(C1)の耐薬品性が少なくとも実質的に維持される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)が、その実質的に全部の繰り返し単位が少なくとも1個のp−ビフェニレン基:
【化1】

少なくとも1個のエーテル基(−O−)および少なくとも1個のスルホン基(−SO2−)を含む1種または複数の式の繰り返し単位(R2)であるようなポリマーである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)が、その50質量%を超える繰り返し単位が式
【化2】

の繰り返し単位(R2)であるポリマーである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
ポリ(アリールエーテルケトン)(P1)が、その実質的に全部の繰り返し単位が少なくとも1個のアリーレン基、少なくとも1個のエーテル基(−O−)および少なくとも1個のケトン基[−C(=O)−]を含む1種または複数の式の繰り返し単位(R1)であるポリマーである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
ポリ(アリールエーテルケトン)(P1)が、その50質量%を超える繰り返し単位が式
【化3】

の繰り返し単位(R1)であるポリマーである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記化学的環境(E)が、カルボン酸エステル、カルボン酸、グリコールエーテル、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、モノスチレン、フェノール、エポキシ、エポキシ前駆体、ケトン、塩素化炭化水素、ならびにたとえば硝酸および硫酸などの無機酸の水溶液から選択される化学物質(cE)を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
ポリマー組成物(C1)が、成形物品の形態または成形物品の部品(S1)である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
ポリマー組成物(C1)の耐薬品性をその必要に合わせて少なくとも実質的に維持しながらも、ポリマー組成物(C1)の中に含まれるポリ(アリールエーテルケトン)(P1)を希釈するための方法であって、
前記ポリマー組成物(C1)が、ポリ(アリールエーテルケトン)(P1)ならびに、場合によってはさらに、ポリ(アリールエーテルケトン)(P1)およびポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)以外の1種または複数の成分(A)からなり、
前記ポリマー組成物(C1)の耐薬品性が、ポリ(アリールエーテルケトン)(P1)に対してよりもポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)に対して一層攻撃的な化学的環境(E)において、少なくとも実質的に維持され、
前記方法が、有効量(ε)のポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)によってポリ(アリールエーテルケトン)(P1)を希釈することを含んでいる、方法。
【請求項12】
ポリマー組成物(C1)が、成形物品の形態または成形物品の部品(S1)である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ポリマー組成物(C2)であって:
ポリ(アリールエーテルケトン)(P1)
有効量(ε)のポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)、および
場合によってはさらにポリ(アリールエーテルケトン)(P1)およびポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)以外の1種または複数の成分(A)からなり、
ポリマー組成物(C2)に含まれるポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)が、質量対質量で、ポリ(アリールエーテルケトン)(P1)によって完全に置き換えられていることを除いては、ポリマー組成物(C2)と同一であるポリマー組成物(C1)の耐薬品性と比較したときに、ポリ(アリールエーテルケトン)(P1)に対してよりもポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(P2)に対して一層攻撃的な化学的環境(E)における前記ポリマー組成物(C2)の耐薬品性が、少なくとも実質的に維持される、ポリマー組成物(C2)。
【請求項14】
請求項13に記載のポリマー組成物(C2)からなる成形物品(S2)。
【請求項15】
請求項13に記載のポリマー組成物(C2)からなる成形物品の部品(S2)。
【請求項16】
請求項15に記載の部品を含む、物品の組立品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−520858(P2009−520858A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546477(P2008−546477)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【国際出願番号】PCT/EP2006/070145
【国際公開番号】WO2007/071780
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(502030880)ソルヴェイ アドバンスド ポリマーズ リミテッド ライアビリティ カンパニー (39)
【Fターム(参考)】