説明

ポンプ式噴霧装置

【課題】薬液噴霧時におけるノズルの開口孔の詰まりを防止することができるポンプ式噴霧装置を提供する。
【解決手段】噴霧ユニット20において、ノズル23内に、先端が開口し薬液Mを吸引する針状部材25を位置決めし、針状部材25の開口25aは、ノズル23の開口孔24の上端開口24aと下端開口24bとの間に位置決めする。そして、ノズル23の開口縁部32を周辺部33よりも高い位置として、その周囲にテーパ面34を介して周辺部33を形成する。この結果、針状部材25の開口から薬液を噴霧した際、薬液が開口縁部32から周辺部33に流れるようになる。従って、開口孔24の縁部で薬液が付着、結晶化することがなく、開口孔24の詰まりを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ式噴霧装置に関し、より詳細には、空気流によって負圧を発生させて液体容器内の薬液を吸引し、噴霧させるポンプ式噴霧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薬液に含まれる芳香剤や害虫防除剤などを噴霧させる手段として、下記特許文献1に示すようなポンプ式噴霧装置(ポンプ式害虫防除装置)が知られている。即ち、このポンプ式噴霧装置は、ノズルに形成したすり鉢状の開口部に連通するノズル孔内に、先端に形成した開口から薬液を噴霧させる針状部材を設けるとともに、ポンプを駆動して上記ノズルの所定位置に位置決めされた針状部材の開口から吸引した薬液を噴霧するように構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−17728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記したポンプ式噴霧装置にあっては、薬液噴霧を続けていると、上記ノズルの開口部付近に噴霧した薬液が付着し、結晶化して、継続した噴霧に不具合が生じることがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ノズルの開口部付近に、噴霧した薬液の付着、結晶化を防止できるポンプ式噴霧装置を提供することにある。
【0006】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1)液体容器に接続される圧送ポンプの作用により、前記液体容器の上部に設けられるノズルから前記液体容器内に収容される薬液を噴霧するポンプ式噴霧装置であって、
前記ノズル内に先端が開口し、前記薬液を吸引する針状部材を有し、
前記ノズルの開口孔の開口縁部が当該開口縁部の周辺部よりも高い位置に形成されていることを特徴とするポンプ式噴霧装置。
【0007】
(2)前記ノズルは、前記開口縁部と前記周辺部との間がテーパ面に形成されていることを特徴とする(1)記載のポンプ式噴霧装置。
【0008】
(3)前記ノズルは、前記開口縁部と前記周辺部との間に段差が形成されていることを特徴とする(1)記載のポンプ式噴霧装置。
【0009】
上記(1)の構成によれば、前記圧送ポンプを駆動することにより、前記ノズルの開口孔内に位置決めされた前記針状部材の開口から薬液が噴霧される。この際、前記ノズル開口孔の開口縁部が当該開口縁部の周辺部よりも高い位置に形成されているので、霧化した薬液が開口縁部に滞留せずに周辺部に流れ、開口縁部における薬液の付着、結晶化を防止できる。
【0010】
上記(2)の構成によれば、周辺部よりも高い位置に形成された前記開口縁部と周辺部との間がテーパ面に形成されているので、薬液噴霧時に霧化した薬液が開口縁部に滞留せずにテーパ面から周辺部に流れ、開口縁部における薬液の付着、結晶化を防止できる。
【0011】
上記(3)の構成によれば、周辺部よりも高い位置に形成された前記開口縁部と周辺部との間に段差が形成されているので、薬液噴霧時に霧化した薬液が開口縁部に滞留せずに周辺部に流れ、開口縁部における薬液の付着、結晶化を防止できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポンプ式噴霧装置によれば、液体容器に接続される圧送ポンプの作用により、液体容器の上部に設けられるノズルから液体容器内に収容される薬液を噴霧する際、前記ノズル開口孔の開口縁部が当該開口縁部の周辺部よりも高い位置に形成されていることにより、霧化した薬液が開口縁部に滞留せずに周辺部に流れ、開口縁部における薬液の付着、結晶化を防止できる。これにより、前記開口孔の詰まりを防止できる。
【0013】
本発明は、結晶状の成分を含んでいる薬液を用いる場合であっても、前述の通り開口孔の詰まりを防止することができるので、結晶化し易い有効成分を用いる場合に有効である。
【0014】
また、前記ノズルの開口縁部と周辺部との間がテーパ面、或いは段差状に形成されているので、噴霧時において薬液の一部が前記開口孔から前記周辺部に円滑に流れ、前記開口孔における前記薬液の付着、結晶化、前記開口孔の詰まりを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るポンプ式噴霧装置の一実施形態を説明するための一部切欠正面図である。
【図2】ノズルに形成したノズル孔の周辺形状を示す図1のA部拡大図である。(第1実施例形態)
【図3】ノズルに形成したノズル孔の周辺形状を示す図1のA部拡大図である。(第2実施例形態)
【図4】ノズルに形成したノズル孔の周辺形状を示す図1のA部拡大図に相当する従来例(比較例)の図である。
【図5】実施例1で用いたノズルの各部の寸法を表す図である。
【図6】実施例2で用いたノズルの各部の寸法を表す図である。
【図7】比較例で用いたノズルの各部の寸法を表す図である。
【図8】粒度分布測定装置の構成図である。
【図9】風量測定装置の構成図である。
【図10】ノズルの変形例の断面図である。
【図11】ノズルの他の変形例の断面図である。
【図12】ノズルの更に他の変形例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るポンプ式噴霧装置の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
[第1実施形態]
図1に示すように、本実施形態のポンプ式噴霧装置10は、薬液Mを収容する液体容器11と、薬液Mを噴霧する噴霧ユニット20と、噴霧ユニット20に圧縮空気を供給する圧送ポンプであるエアポンプ12と、を備える。
【0018】
液体容器11は、害虫防除成分等を含む薬液Mに対して耐性を有する材料、例えば、合成樹脂等を射出成型して形成される容器であり、薬液Mを収容する容器本体13と、蓋体14と、を備える。蓋体14の上面には、後述するニードルホルダ21を取り付けるための取付孔14aと、液体容器11内の圧力を常圧(外気圧)に維持する空気穴14bと、が形成される。空気穴14bは、液体容器11内で発生した圧力を外部に逃がす安全機構としても機能する。蓋体14は、ねじ等によって容器本体13に着脱自在となっている。
【0019】
薬液Mの有効成分としては、各種害虫防除成分、芳香成分、殺菌成分、消臭成分などが挙げられ、害虫防除成分としては、例えば、1−メチル−2−ニトロ−3−[(3−テトラヒドロフリル)メチル]グアニジン、N−[クロロ−3−[ピリジルメチル]−N−エチル−N−メチル−2−ニトロビニリデンジアミン、3−[(2−クロロ−5−チアゾリル)メチル]−5−メチル−ニトロイミノテトラヒドロ−1,3,5−オキサジアジン、ピレトリン、d−アレスリン、フタルスリン、フラメトリン、プラレトリン、テラレスリン、レスメトリン、ペルメトリン、フェノトリン、サイペルメトリン、シフェノトリン、トランスフルトリン、フェンフルスリン、メトフルトリン、プロフルトリン、エンペントリン、エトフェンプロックス、ビフェントリン、ピリミホスメチル、フェニトロチオン、ピリダフェンチオン、プロポクスル、カルバリル、メトキサジアゾン、フィプロニル、クロルフェナビル、アミドフルメト、メトプレン、ハイドロプレン、ピリプロキシフェン、ジフルベンズロン、テフルベンズロン、ディートなどを用いることができる。殺菌剤、除菌剤としては、例えば、塩化セチルピリジニウム、チアベンダゾール、イソプロピルメチルフェノール等が、消臭剤としては、例えば、シクロデキストリンなどを用いることができる。
【0020】
エアポンプ12は、不図示の電源部から供給される電力により回転するモータ部15と、モータ部15により回転駆動され、吸引口16aから空気を吸い込み、それを圧縮して吐出口16bから圧縮空気を吐出する圧縮空気発生部16と、から構成される。そして、本実施形態では、エアポンプ12の吐出口16bは、接続チューブ17により噴霧ユニット20のノズルホルダ22に接続される。また、エアポンプ12の圧力(風量)としては、4L/分以上が好ましく、4L/分〜16L/分がより好ましい。エアポンプ12の圧力(風量)が4L/分未満であると薬液Mの拡散性が不充分となる。また、エアポンプ12の圧力(風量)が16L/分を超えると省力化が難しくなり、使用電力が大きくなる。なお、不図示の電源部としては、商用電源や電池などの任意の電源を使用することができる。
【0021】
噴霧ユニット20は、ニードルホルダ21と、ノズルホルダ22と、ノズル23と、を有する。ニードルホルダ21は、液体容器11に収容される薬液Mを吸上げるための略円筒形状部材であり、その軸心部には、大径孔21a及び小径孔21bが軸方向に沿って形成される。また、小径孔21bには、針状部材であるニードル管(針状部材)25が圧入や接着等により気密に固定される。
【0022】
また、ニードルホルダ21の大径孔21a側の端部には、樹脂製の吸液チューブ26が気密に外嵌されている。この吸液チューブ26は、ニードルホルダ21が蓋体14に固定された状態において、その先端が容器本体13の底面近傍に位置する長さに調節される。
【0023】
ニードル管25は、ステンレス鋼や樹脂などで形成されたパイプ状部材であり、例えば、その外径はφ0.5mm〜φ1.2mm、より好ましくはφ0.6mm〜0.8mm、その内径はφ0.2mm〜0.6mm、より好ましくはφ0.3mm〜0.5mmとするのがよい。
【0024】
ノズルホルダ22は、略円筒形状部材であり、その上端面の軸心部には、ノズル23を取り付けるためのノズル用凸部22aが形成される。また、ノズルホルダ22の側面には、噴霧ユニット20とエアポンプ12とを接続させる接続チューブ17を接続するための接続パイプ22bが形成される。また、ノズルホルダ22の軸心部には、ニードルホルダ21を螺着するためのノズルホルダ取付孔22cと、エアポンプ12から空気が供給される空気供給室22dと、空気供給室22dからノズル23内に空気を供給する空気供給孔22eと、が形成される。
【0025】
ノズル23は、真鍮等の金属又は合成樹脂等を射出成型することにより形成される円筒蓋状体であり、図2に示すように、ノズルホルダ22のノズル用凸部22aに螺合又は嵌合される。また、ノズル23の天面の軸心部には、ニードル管25を挿通するためのノズル孔(開口孔)24が形成される。また、ノズル孔24は、上端開口24a及び下端開口24bを有する。また、ノズル孔24の内径Dは、ニードル管25の外径より0.1mm〜0.8mm大きい方が好ましく、約0.4mm程度大きくするのが好ましい。具体的には、ニードル管25の外径が0.6mmの場合、ノズル孔24の内径Dは、0.7mm〜1.4mmが好ましく、約1.0mm程度とするのが好ましい。また、ノズル孔24の長さLは、0.5mm〜2.5mm程度とするのがよい。
【0026】
ところで、ノズル23の頂部は凹部31に形成されているが、その中心に形成されたノズル孔24の開口縁部32は、その周辺部33よりも高い位置となるように形成されている。そして、開口縁部32と周辺部33との間は、テーパ面34に形成されている。
【0027】
因みに、上記凹部31の深さは例えば0.5〜1mm程度、開口縁部32と周辺部33との間の高低差は例えば0.5〜2mm程度とするのがよい。また、テーパ面34の角度θ2は10度〜80度が好ましい。
【0028】
そして、噴霧ユニット20は、まず、ニードルホルダ21の小径孔21bにニードル管25を固定させ、このニードルホルダ21をノズルホルダ22のノズルホルダ取付孔22cに螺着させる。次いで、ノズルホルダ22に螺着したニードルホルダ21を蓋体14の取付孔14aに挿通させ、ノズルホルダ22との間に蓋体14を挟持するように、ニードルホルダ21にストッパ18を螺着させる。これにより、ノズルホルダ22、ニードルホルダ21、ニードル管25、蓋体14、及びストッパ18が一体的に組み立てられる。そして、ノズルホルダ22のノズル用凸部22aにノズル23を螺合又は嵌合させる。
【0029】
このように構成された噴霧ユニット20では、ニードル管25の先端部の開口25aは、図2に示すように、ノズル孔24の上端開口24aと下端開口24bとの間に配置される。そして、ニードル管25の開口25aは、好ましくはノズル孔24の上端開口24aと下端開口24bとの間の中央付近に配置される。
【0030】
次に、本実施形態のポンプ式噴霧装置10の作用について説明する。
ポンプ式噴霧装置10は、図1に示すように、薬液Mが収容された容器本体11に噴霧ユニット20と一体化された蓋体14を螺着させ、噴霧ユニット20とエアポンプ12とを接続チューブ17で接続させて、モータ部15に電力を供給してエアポンプ12を駆動させることによって、圧縮空気発生部16の吐出口16bから圧縮空気を吐出させる。
【0031】
そして、エアポンプ12から吐出された圧縮空気は、接続チューブ17及び接続パイプ22bを介してノズルホルダ22の空気供給室22dに供給され、 ノズルホルダ22の空気供給孔22eを通って上方に圧送されて、ノズル23のノズル孔24とニードル管25の外周面との僅かな隙間から勢いよく上方に噴出される。
【0032】
このとき、ノズル孔24の上端開口24aとニードル管25の開口25aとの間に負圧が発生するため、液体容器11内の薬液Mが、吸液チューブ26、ニードルホルダ21の大径孔21a、及びニードル管25を介して吸い上げられ、ニードル管25の開口25aから吐出されて、上記の勢いよく噴出される圧縮空気によって霧化して噴霧される。
【0033】
ここで、ノズル23から噴霧される薬液Mの噴霧粒径は、10μm〜60μm程度に調整するのが好ましい。また、ポンプ式噴霧装置10の薬液Mの噴霧量は、約30ml/20分〜約30ml/3分(約0.15ml/分〜約10ml/分)とするのがよい。さらに、モータへの負荷軽減のため、ON=1分、OFF=1分のサイクル等としてもよい。なお、薬液Mをより効率的に拡散するため、シロッコファンやプロペラファン等の送風装置を補助的に噴霧ユニット20の近傍に配置してもよい。
【0034】
本実施形態のポンプ式噴霧装置10によれば、液体容器11に接続される圧送ポンプ12の作用により、液体容器11の上部に設けられるノズル23から液体容器11内に収容される薬液Mを噴霧するポンプ式噴霧装置10であって、ノズル23内に先端が開口し、薬液Mを吸引する針状部材25を有し、ノズル23の開口孔24の上端開口24aの縁部が当該縁部の周辺部よりも高い位置に形成されていることにより、霧化した薬液が上端開口24aの縁部に滞留せずに周辺部に流れ、上端開口24aの縁部における薬液の付着、結晶化を防止できる。これにより、開口孔24の詰まりを防止できる。
【0035】
また、針状部材25の開口25aは、ノズル23の開口孔24の上端開口24aと下端開口24bとの間に位置するため、小型且つ安価な装置により薬液Mを効率的に霧化して噴霧させることができる。
【0036】
[第2実施形態]
図3に示すように、本実施形態は、ノズル41の変形に関するものであり、その他の構成及び作用は上記第1実施形態と同様であってよい。
【0037】
即ち、本実施形態におけるノズル41は、ノズル41に形成した開口縁部42が上記同様に周辺部43よりも高い位置に形成され、開口縁部42から周辺部43に向けて緩やかなテーパ面44に形成されている。
【0038】
本実施形態にあっても、凹部31の深さは上記同様に0.5〜1mm程度であってよく、開口縁部42と周辺部43との高低差は0.3〜2mm程度であってよい。また、テーパ面44の角度θ3は10度〜80度が好ましく、30度程度とするのがよい。
【0039】
本第2実施形態のポンプ式噴霧装置10によれば、液体容器11に接続される圧送ポンプ12の作用により、液体容器11の上部に設けられるノズル41から液体容器11内に収容される薬液Mを噴霧するポンプ式噴霧装置10であって、ノズル41内に先端が開口し、薬液Mを吸引する針状部材25を有し、ノズル41の開口孔24の上端開口24aの縁部が当該縁部の周辺部よりも高い位置に形成されていることにより、霧化した薬液が上端開口24aの縁部に滞留せずに周辺部に流れ、上端開口24aの縁部における薬液の付着、結晶化を防止できる。これにより、開口孔24の詰まりを防止できる。
更に、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0040】
[実施例]
以下に、本発明のポンプ式噴霧装置(実施例)の作用効果を確認するために行った噴霧試験について説明する。
【0041】
本試験では、図1に示すポンプ式噴霧装置10を使用し、ノズルについては開口縁部が周辺部23よりも高い位置に形成されていないノズル(比較例)と、第1実施形態に示したノズル23(実施例1)及び第2実施形態に示したノズル41(実施例2)とについて、薬液Mを噴霧することに伴う結晶の析出による噴霧状況について調べた。なお、ニードル管の開口位置は、ノズル孔24の上端開口24aと下端開口24bとの間の中央に設定した。
【0042】
比較例のノズル形状は図4に示す通りである。なお、図4において本発明の実施形態と同じ部材には同じ符号を付して、その説明は省略する。
【0043】
(1)処方
下記表1による処方1,2の2種の処方
【0044】
【表1】

【0045】
(2)使用したポンプ
吐出量12L/分
【0046】
実施例1,2及び比較例のノズルの各部の寸法は図5〜図7に示す通りである。
【0047】
[試験方法]
(1)比較例と、実施例1,2とを用いて上記処方30mlを霧化した。なお、各ノズル24の内径は1.05mmに設定した。
(2)30mlを最後まで霧化した場合を1回としてカウントし、連続使用で何回まで霧化できるか確認した。このとき、連続噴霧が3回以上可能だった場合、連続噴霧を3回行った後、2時間停止し、更に連続噴霧を繰り返した。
(3)霧化しなくなった時点で試験を終了した。
【0048】
[試験結果]
結果を表2に示す。
【0049】
【表2】

【0050】
表2から明らかなように、比較例では処方1、処方2のいずれも30mlを霧化することができなかった(ノズルクリアランスにジノテフラン又はシクロデキストリンの結晶が見られた)。
実施例1、2は、処方1、処方2で5回以上の霧化が可能であった。
【0051】
なお、上記試験における霧状になった薬液の平均粒子径(D50値)は17〜19μmであり、ノズル出口における気流の速度は196〜202m/秒であった。
【0052】
ここで、表2における平均粒子径(D50値)は、図8に示す粒度分布測定装置による測定値から求め、風速は、図9に示す構成の装置で測定した。
【0053】
[平均粒子径(D50値)の測定]
25℃、無風条件下において、図8に示すように、粒度分布測定装置(東日コンピュータアプリケーションズ株式会社製 LDSA−1400A)の受光側から300mm、レーザー光から40mm下にノズルの先端が位置するように、器具を設置し、薬液を霧化させた。取り込み時間は0.3秒で3回連続測定し、ロージン・ラムラー法により計算した時の平均粒子径(D50値)を求めた。
【0054】
[ノズル出口風量の測定]
図9に示すように、ACアダプターを用いて12Vを印加し、ポンプを作動させた。流量計(0〜20L/分)をノズル先端に接続し、風量を測定した。
【0055】
上記結果により、実施例1,2の形状、即ち第1実施形態に示したノズル23及び第2実施形態に示したノズル41は、霧化したジノテフラン水溶液又はシクロデキストリン水溶液がノズルクリアランス周辺部分に行き難い構造になっているため、ノズルクリアランス周辺部分での付着、結晶析出が起こり難くなり、詰まりが抑制されることが明らかになった。
【0056】
この結果は、薬液の平均粒子径(D50値)が18μm付近(17〜19μm)と、ノズル出口における気流の速度(風速)が200m/秒付近(196〜202m/秒)であることが、本発明において好ましい1つの態様であると考えられる。
【0057】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0058】
例えば、第1及び第2実施形態で示したテーパ面34,44に代えて階段状に形成してもよい。
また、上記テーパ面34,44の表面に放射方向に沿った溝を形成してもよい。
【0059】
また、ノズル23の形状は図10〜図12に示す形状であってもよい。なお、図10〜図12において、上記実施形態と同じ部材には同符号を付してその説明は省略する。図10〜図12のノズル23は、上面に凹部31が形成されておらず、ノズル孔24の開口縁部がノズル23の上面から突出しており、開口縁部が周辺部33よりも高い位置に形成されている構成である。
【0060】
図10に示すノズル孔24は円筒形状である。図11に示すノズル孔24は上端開口24aが下端開口24bよりも大径の部分円錐形状である。図12に示すノズル孔24は図11の構成を更に変形したものであり、ノズル孔24の上端開口23aの周縁部が曲面に形成され、下端開口24bよりも大径に形成された構成である。
【0061】
また、液体容器内に収容される薬液は、上記実施形態における害虫防除剤に代えて、芳香剤、消臭剤等であってもよい。
【符号の説明】
【0062】
10 ポンプ式噴霧装置
11 液体容器
12 エアポンプ(圧送ポンプ)
13 容器本体
14 蓋体
15 モータ部
16 圧縮空気発生部
17 接続チューブ
18 ストッパ
20 噴霧ユニット
21 ニードルホルダ
22 ノズルホルダ
23,41 ノズル
24 ノズル孔(開口孔)
24a 上端開口
24b 下端開口
25 ニードル管(針状部材)
25a 開口
26 吸液チューブ
31 凹部
32,42 開口縁部
33,43 周辺部
34,44 テーパ面
M 薬液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体容器に接続される圧送ポンプの作用により、前記液体容器の上部に設けられるノズルから前記液体容器内に収容される薬液を噴霧するポンプ式噴霧装置であって、
前記ノズル内に先端が開口し、前記薬液を吸引する針状部材を有し、
前記ノズルの開口孔の開口縁部が当該開口縁部の周辺部よりも高い位置に形成されていることを特徴とするポンプ式噴霧装置。
【請求項2】
前記ノズルは、前記開口縁部と前記周辺部との間がテーパ面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のポンプ式噴霧装置。
【請求項3】
前記ノズルは、前記開口縁部と前記周辺部との間に段差が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のポンプ式噴霧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−11181(P2011−11181A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159569(P2009−159569)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(000100539)アース製薬株式会社 (191)