説明

ポンプ装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、特に、不純物除去や混合物の撹拌のために液体などの流体を循環させる循環ポンプとして用いて好適なポンプ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、ベローズを用いて流体を循環させる循環ポンプとしては、例えば、図2のようなポンプ装置が知られている。
【0003】かかるポンプ装置は、上下方向に伸縮するベローズ形態の本体容器3を外部容器4内に備えている。その本体容器3の上端部は外部容器4に保持され、その下端部は、運動変換機構部5および電動機6によって上下方向に往復移動されるようになっている。運動変換機構部5は、例えば、電動機6の回転運動を上下運動に変換するクランク機構である。外部容器4は、本体容器3や運動変換機構部5などの可動部を保護するために、それらを取り囲むものであり、その内部は外気と連通されて大気圧となっている。本体容器3には、吸入バルブ1を備えた流体導入路11と、排出バルブ2を備えた流体導出路12が連通されている。流体導入路11と流体導出路12は、流体の循環路を形成すべく連結されている。
【0004】そして、本体容器3の下端部が上下動されて、その内容積の変化に伴う圧力変動が生じることによって、流体導入路11内の流体が本体容器3内に吸入されてから、流体導出路12に排出されて循環されることになる。すなわち、本体容器3の下端部が下方に引かれて内容積が増大するときに、本体容器3内と流体導入路11との間の差圧によって吸入バルブ1が開き、かつ容器本体3内と流体導出路12との間の差圧によって排出バルブ2が閉じて、流体導入路11から本体容器3内に流体が吸入される。その後、本体容器3の下端部が上方に押されて内容積が減少したときに、本体容器3内と流体導入路11との間の差圧によって吸入バルブ1が閉じ、かつ本体容器3内と流体導出路12との間の差圧によって排出バルブ2が開いて、本体容器3内の流体が流体導出路12に排出される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記従来のポンプ装置によって、所定の圧力に加圧されている加圧流体を循環させるときには、その加圧流体の圧力以上の力で本体容器3を上方に押す必要がある。そのため、電動機6は流体の最大圧力に見合う駆動力を出力するものでなければならず、その電動機6の大型化を招くという問題があった。さらに、流体の圧力が急激に変化した場合に、電動機6の出力を速やかに増大させるべく対応することができず、流体の流れが時間的、空間的に変動して乱流を生じるという問題もあった。
【0006】本発明の目的は、駆動力を軽減し、しかも流体の圧力変動による負荷の変動を小さく抑えて、流体の流れを安定させることができるポンプ装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明のポンプ装置は、本体容器の周壁部を外方に変位させて内容積を増大させることによって、流体導入路から前記本体容器内に流体を吸入し、前記本体容器の周壁部を内方に変位させて内容積を減少させることによって、前記本体容器内の流体を流体導出路に排出するポンプ装置において、前記流体導入路または前記流体導出路のいずれか一方の流体圧を前記本体容器の周壁部の外側に付与する圧力付与手段を備えたことを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態を図1に基づいて説明する。本実施形態は、前述した従来例と同様に、ベローズ形態の本体容器3を用いて流体を循環させる循環ポンプとしての適用例であり、前述した図2と同様の部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0009】本例において、本体容器3を取り囲む外部容器14は密封構造となっており、電動機6の駆動力は、マグネチックカップリング10によって外部容器14の気密性を損なうことなく運動変換機構部5に伝達される。外部容器14の内部と流体導入路11との間は連通路7によって連通されており、その外部容器14の内部に流体導入路11の流体圧が導入され、その流体圧が本体容器3を圧縮方向に加圧するようになっている。
【0010】9は流体の貯蔵容器であり、その貯蔵容器9内の流体は、流体導入路11、本体容器3、流体導出路12を通って循環され、流体導出路12中にフィルター8によって不純物が除去される。
【0011】次に、作用について説明する。
【0012】前述した従来例と同様に、本体容器3の下端部が下方に引かれて内容積が増大するときに、本体容器3内と流体導入路11との間の差圧によって吸入バルブ1が開き、かつ容器本体3内と流体導出路12との間の差圧によって排出バルブ2が閉じて、流体導入路11から本体容器3内に流体が吸入される。そして、本体容器3の下端部が上方に押されて内容積が減少したときに、本体容器3内と流体導入路11との間の差圧によって吸入バルブ1が閉じ、かつ本体容器3内と流体導出路12との間の差圧によって排出バルブ2が開いて、本体容器3内の流体が流体導出路12に排出される。このようにして流体が循環され、その中に含まれる不純物がフィルター8によって除去される。
【0013】ところで、搬送流体が所定の圧力に加圧されている加圧流体である場合、その加圧流体の圧力をP1、外部容器14内の圧力をP2、吸入バルブ1が閉じかつ排出バルブ2が開かれるときにおける流体導入路11と本体容器3との間の差圧を△P、本体容器3の断面積をSとした場合、本体容器3の下端部を上方に押して圧縮するときの力Fは、F=(P1+△P−P2)×Sとなる。本例では、連通路7によって流体導入路11と本体容器3が連通されてP1=P2となるため、F=△P×Sとなる。
【0014】一方、前述した図2の従来例の場合には、外部容器4の内部が大気に開放されて大気圧となっているため、P2=0(大気圧)、F=(P1+△P)×Sとなる。
【0015】結局、本実施形態の場合、本体容器3を圧縮して流体を排出するときに要する力Fは、差圧△P分に相当する小さい力でよくなり、しかも搬送流体の圧力P1に依存しないため、搬送流体の圧力が急激に変化したとしても流体の流れに変化は生じなくなる。また、本体容器3を膨張させるべく下方に引いて、流体を流体導入路11から吸入するときに要する力は、流体の流動抵抗分の小さな力ですむ。
【0016】また、仮に、本体容器3の可動部分が磨耗によって損傷して、流体が本体容器3の外部に流出したとした場合には、その本体容器3が外部容器14によって密封されているため、その流体が外部に漏れ出たり、外気に触れたりすることもない。
【0017】なお、上述した実施形態とは逆に、連通路7によって流体導出路12と外部容器14との間を連通して、流体導出路12の圧力を外部容器14内に導入するようにしてもよい。この場合には、本体容器3を膨張させるべく下方に引いて、流体を流体導入路11から吸引するときに要する力F′がF′=△P×Sとなり、また本体容器3を圧縮させるべく上方に押して、流体を流体導出路12から排出するときに要する力は、流体の流動抵抗分の小さな力ですむ。
【0018】また、本体容器3としては、前述したベローズに代えてダイヤフラムを用いることもでき、要は、内容積を増減させるべく外方および内方に変位する周壁部を有して、その周壁部の外側に、流体導入路11内または流体導出路12内の圧力が付与されるものであればよい。例えば、本体容器3として、ピストンを周壁部として備えたシリンダ構造とすることも可能である。また、そのような本体容器3の周壁部の外側に流体導入路11内または流体導出路12内の圧力を付与させる手段としては、例えば、リンク機構などを用いて、流体導入路11内または流体導出路12内の圧力を周壁部の外側または内側に加える構成とすることもできる。
【0019】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のポンプ装置は、本体容器の内容積を変化させるべく内方および外方に変位する本体容器の周壁部に、流体導入路内または流体導出路内の圧力を作用させる構成であるから、所定の圧力に加圧されている搬送流体の圧力に拘わらず、それを流体導入路から吸入して流体導出路に排出するための差圧分に相当するの小さな力によって作動させることができ、しかも流体の圧力変動による負荷の変動を小さく抑えて、流体の流れを安定させることができる。
【0020】さらに、流体が本体容器の外部に流出した場合に、外部容器によって、その流体が外部に漏れ出たり外気に触れたりすることを防止することもできる。また、本発明のポンプ装置は、特に、流体を循環させる種々の循環ポンプとして広範囲に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の概略構成図である。
【図2】従来例を説明するための概略構成図である。
【符号の説明】
1 吸入バルブ
2 排出バルブ
3 本体容器
5 運動変換機構部
6 電動機
7 連通路
11 流体導入路
12 流体導出路
14 外部容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】 本体容器の周壁部を外方に変位させて内容積を増大させることによって、流体導入路から前記本体容器内に流体を吸入し、前記本体容器の周壁部を内方に変位させて内容積を減少させることによって、前記本体容器内の流体を流体導出路に排出するポンプ装置において、前記流体導入路または前記流体導出路のいずれか一方の流体圧を前記本体容器の周壁部の外側に付与する圧力付与手段を備えたことを特徴とするポンプ装置。
【請求項2】 前記圧力付与手段は、少なくとも前記本体容器の周壁部の外側を囲む外部容器と、該外部容器の内部に前記流体導入路または前記流体導出路のいずれか一方を連通する連通路とを有することを特徴とする請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項3】 前記本体容器はベローズであることを特徴とする請求項1または2に記載のポンプ装置。
【請求項4】 前記本体容器はダイヤフラムであることを特徴とする請求項1または2に記載のポンプ装置。

【図2】
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【図1】
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【特許番号】第2723180号
【登録日】平成9年(1997)11月28日
【発行日】平成10年(1998)3月9日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−272376
【出願日】平成7年(1995)10月20日
【公開番号】特開平9−112433
【公開日】平成9年(1997)5月2日
【実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
【出願人】(000001144)工業技術院長 (75)
【指定代理人】
【氏名又は名称】 工業技術院電子技術総合研究所長