説明

ポータブルトイレ

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、排泄物を受ける容器を持ち、その容器内で排泄物を分解処理するポータブルトイレに関するものである。
【0002】
【従来の技術】この種の排泄物の処理を行うトイレの従来技術として特開平2−48320号公報の技術を挙げることができる。
【0003】即ち、上記公報に掲載の技術は、し尿導入口と、そのし尿導入口から適宜離れた位置に分散してし尿取出口を設け、また、内部に適宜の切返手段を設けたし尿貯留槽に、ブロワーに連なる吸気口と排気ファンに連なる排気口を設けると共に、前記給気口に至る給気経路の適所と前記し尿貯留槽内の適所にヒータを設け、前記ヒータは前記し尿貯留槽内のし尿温度が50度またはその近傍温度を設定温度として温度制御するし尿分解装置に関するものである。
【0004】このように構成されたし尿分解装置は、高温発酵菌の発酵環境を良好にすることによりし尿の分解を行うことができるものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記従来のし尿分解装置は、個々の住宅のトイレの下部に配設するものであり、規模的に大きくなり、簡易的に使用することができない。
【0006】しかし、幼児、老人、介護を必要とする人の排泄物を収容するポータブルトイレには、排泄物をポータブルトイレ内で処理するという考え方がない。
【0007】一般的なポータブルトイレは臀部の置かれる便座下にポリバケツ用の便槽を設け使用後(排泄後)は便槽を取外して排泄物の杷木廃棄、便槽の洗浄を行う必要があり、排泄後の処理が煩しく、衛生的にも問題があった。
【0008】特に、ポータブルトイレの排泄物を入れるのに紙バケツを使用した場合、排泄物の入った紙バケツは可燃ゴミとして処理する必要があったが、日本人の実生活からして、数日間専用消臭袋に入れておき、ゴミの収集時に出すという行為は、その排泄後の汚物を生ゴミとして家庭から出すまで、家庭内でそれを保管するには抵抗があり、また不潔感があった。
【0009】そこで、本発明は、排泄物を処理でき、かつ、臭気を発散させることのないポータブルトイレの提供を課題とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】請求項1にかかるポータブルトイレは、臀部が置かれる上部開口を有する本体と、前記本体に対して挿脱自在とし、植物構成体の微粉体及び好気性発酵菌を収容する処理容器と、前記処理容器が前記本体に装着されたとき、その装着により機械的結合が行われて回転力を得る攪拌手段と、前記本体内に取付けられ、前記攪拌手段に回転力を出力する駆動手段と、前記本体内に取付けられ、前記本体に装着された処理容器の温度を所定の温度範囲に維持制御する加温手段と、前記本体に装着された処理容器に外気を導入する給気手段と、前記給気手段による外気の導入に伴なって排出される空気の脱臭を行う脱臭手段とを具備するものである。
【0011】
【作用】請求項1においては、臀部が置かれる上部開口を有する本体に対して挿脱自在とし、植物構成体の微粉体及び好気性発酵菌を収容する処理容器は、その処理容器を前記本体に装着したとき、その装着により駆動手段と機械的結合が行われて回転力を得る攪拌手段によって攪拌され、このとき、前記本体に装着された処理容器の温度が加温手段によって所定の温度範囲に制御されている。これによって、処理容器内の環境を好気性発酵菌の活動に好適な条件とする。また、前記本体に装着された処理容器には脱臭手段によって排出される空気の脱臭を行う。
【0012】
【実施例】以下、本発明のポータブルトイレの実施例について説明する。
【0013】図1は本発明の一実施例のポータブルトイレの全体を示す斜視図、図2は本発明の一実施例のポータブルトイレの構造を示す断面図、図3は本発明の一実施例のポータブルトイレの蓋部の構造を示す要部断面図である。
【0014】図1において、蓋部2は臀部が置かれる上部開口2aを有し、基部3は全体のベースとなり、肘掛部3aを有する。本実施例のポータブルトイレの略全体を形成する本体1は、上部開口2aを有する蓋部2、全体のベースとなり、肘掛部3aを有する基部3から構成されている。しかし、本発明を実施する場合の本体1は、蓋部2と基部3を一体化することもできる。
【0015】図3に示すように、蓋部2の上部開口2aは、臀部が載った状態で排尿及び排便が可能なサイズに形成されている。また、その周囲は人体の体重が分散されて基部3に加わるようになっている。蓋部2の周囲の下面2bは下に凹状になっており、臭気が蓋部2の下面2b側に籠るようになっている。
【0016】本体1の基部3に一体に肘掛部3aが形成されている。この肘掛部3aは身体の支えとして使用でき、また、臀部のガイドとしても使用される。更に、蓋部2を基部3の上面の定位置に載置できるようにガイドする機能も合せ持つ。即ち、蓋部2を基部3の上面に載置する場合には、肘掛部3aに従って両横及び後部の位置を定め、基部3の上面に移動させることにより、蓋部2を基部3の上面の定位置に載置できる。
【0017】図2に示すように、本体1の基部3の前開口部3bに対して挿脱自在とした処理容器4は、蓋部2の上部開口2aよりも広い開口を有する。この処理容器4は基本的に上部開口を有する略直方体の箱方の容器で、前面に取手部41を有し、その挿脱及び持運びを可能としている。処理容器4の中央部には、両側をベアリングで軸支された攪拌手段42が配設されている。攪拌手段42は処理容器4の後方に突出したシャフト42aに取付けられたギヤ43から回転力を得ている。攪拌手段42は複数の攪拌素子42bを有しており、シャフト42aの回転によって攪拌素子42bが処理容器4内を回動する。本実施例の攪拌素子42bは、有底筒体をシャフト42aに平行するようにし、それを杆体でシャフト42a側に接続したものであり、シャフト42aの360度の回転に対してバランスを均一にした配置に接続されている。また、シャフト42aの回転に対しても、均一の負荷になるように配置されている。したがって、処理容器4はギヤ43に加えられる回転力によって、シャフト42aが回転し、複数の攪拌素子42bが回転する。この回転は、ベアリングによってその接触抵抗が小さく、容易に回転が可能になっている。
【0018】なお、処理容器4の後部は取手部41を有する前面よりも低くなっており、後述する排気経路の一部となっている。また、本実施例の本体1は、蓋部2と基部3に分離されているが、両者を一体化した本体1に対しても挿脱自在な処理容器4とすることもできる。
【0019】処理容器4が挿脱される基部3の前開口部3bの下側には、金属薄板31が敷設されている。金属薄板31の上面は略平滑面となっているが、その下面にはサーミスタからなるヒータ32が配設されている。そして、金属薄板31の下面と基部3の底面との間には発泡性合成樹脂からなる断熱材33が充填されている。したがって、ヒータ32が発生する熱量は効率良く、処理容器4側に伝達される。なお、このヒータ32は、本体1内に取付けられ、本体1に装着された処理容器4の温度を所定の温度範囲に制御する加温手段を構成する。なお、本実施の場合のヒータ32はサーミスタからなるものであるから、その温度制御をヒータ自身で行うものであるが、温度検出によって通電電流のオン・オフ制御を行ってもよいし、通電電流値の制御を行ってもよい。
【0020】処理容器4が挿脱される基部3の前開口部3bの反対側には、制御器34が配設されている。この制御器34は本実施例のポータブルトイレの全体の電気的制御を行う。
【0021】制御器34によって定速回転制御される電動機35は、所定の減速がなされた後、出力ギヤ36によって処理容器4のギヤ43に回転力を付与する。即ち、処理容器4が本体1に装着されたとき、その装着により出力ギヤ36とギヤ43との機械的結合が行われて攪拌手段42に回転力を付与する。
【0022】同様に、制御器34によって回転制御される排気ファン37は、処理容器4内の空気を触媒脱臭器38を介して基部3の排気口39を介して排気を行う。即ち、本体1内の空気を触媒脱臭器38を介して排気ファン37が、基部3の排気口39から強制排気を行う。
【0023】次に、このように構成された本実施例のポータブルトイレの動作を説明する。
【0024】まず、処理容器4に粉砕した籾殻、木屑等と好気性高温発酵菌を混合した状態で5〜6割の高さまで入れておく。本実施例では、粉砕した籾殻、木屑等と好気性発酵菌を混合したものを入れたが、本発明を実施する場合には、植物構成体の微粉体及び好気性発酵菌であればよい。また、本実施例で使用した好気性発酵菌は、好気性高温発酵菌を使用した。しかし、本発明を実施する場合には、好気性高温発酵菌に限定されるものではなく、好気性発酵菌であればよい。
【0025】本実施例で使用した好気性高温発酵菌が良好に活動できる温度は、45〜65℃の範囲であるから、加温手段としてのヒータ32によって処理容器4内の温度をその温度範囲50〜60℃範囲内とし、その調整させた温度条件下で、常に、攪拌手段4によって処理容器4内の粉砕した籾殻、木屑等と好気性発酵菌を混合攪拌する。
【0026】また、常に、排気ファン37を駆動させ、本体1内の空気を触媒脱臭器38を介して排気ファン37が、基部3の排気口39から強制排気させる。このとき、触媒脱臭器38はアンモニア系の悪臭を除去するが、通常の排出物の好気性発酵菌による分解処理中は、発酵菌の性質上、悪臭の発生はない。したがって、触媒脱臭器38は、特に、排泄行為中の悪臭除去に寄与する。なお、常に、排気ファン37を駆動させるのは、排出物の分解処理中の好気性発酵菌に対する酸素の供給と、蓋部2の温度が処理容器4内の温度範囲50〜60℃の影響を受け難くして、35〜40℃程度にするためである。本実施例の排気ファン37は本体1に装着された処理容器4に外気を導入する給気手段を構成している。
【0027】この状態で、本体1の蓋部2に腰掛け、蓋部2の上部開口2aから排泄すると、排泄物は処理容器4内の温度範囲50〜60℃の温度条件下で攪拌手段42によって籾殻、木屑等と好気性発酵菌と混合攪拌される。したがって、排泄物は瞬時に攪拌手段42によって籾殻、木屑等と好気性発酵菌と混合攪拌され、アンモニア系の悪臭の発生は僅かであり、触媒脱臭器38によって完全に除去される。
【0028】排泄物が攪拌手段42によって籾殻、木屑等と好気性発酵菌と混合攪拌されると、籾殻、木屑等が活発に活動する好気性高温発酵菌によって微生物及び好気性発酵菌によって発酵分解され、処理容器4内の粉砕した籾殻、木屑の増加となる。この排泄物による増加は、使用回数が、20〜30回に一度のタイミングで処理容器4内の籾殻、木屑等を肥料として施肥することにより、排泄物を自然に返すことができる。
【0029】この間の好気性発酵菌による排泄物の発酵分解は、好気性のために不快臭が発生せず、かつ、大腸菌及び他の人間に対する害のある寄生虫卵も高温で死滅する。また、処理容器4内の籾殻、木屑等を肥料として施肥しても悪臭の発生及びそれにより細菌が繁殖することがない。
【0030】処理容器4内の籾殻、木屑等を肥料として施肥する際または、捨てる際には、処理容器4を本体1から引出す。このとき、その装着により出力ギヤ36とギヤ43との機械的結合が解除される。再度、処理容器4を本体1に装着する場合には、処理容器4を本体1に嵌込む。その挿入により出力ギヤ36とギヤ43との機械的結合が行われる。
【0031】このように、本実施例のポータブルトイレは、臀部が置かれる上部開口2aを有する本体1と、本体1に対して挿脱自在とし、籾殻、木屑等の植物構成体の微粉体及び好気性発酵菌を収容する処理容器4と、処理容器4が本体1に装着されたとき、その装着により機械的結合が行われて回転力を得る攪拌手段42と、本体1内に取付けられ、攪拌手段42に回転力を出力する電動機35からなる駆動手段と、本体1内に取付けられ、本体1に装着された処理容器4の温度を所定の温度範囲に制御するヒータ32からなる加温手段と、本体1に装着された処理容器4に外気を導入する排気ファン37からなる給気手段と、排気ファン37からなる給気手段による外気の導入に伴なって排出される空気の脱臭を行う触媒脱臭器38からなる脱臭手段とを具備するものである。
【0032】本実施例のポータブルトイレの使用は、まず、本体1に装着された処理容器4の温度がヒータ32からなる加温手段によって所定の温度範囲に制御され、処理容器4内の環境を好気性発酵菌の活動に好適な条件としておく。臀部が置かれる上部開口2aを有する本体1に対して挿脱自在とし、植物構成体の微粉体及び好気性発酵菌を収容する処理容器4は、その処理容器4を本体1に装着したとき、その装着により電動機35からなる駆動手段とその出力ギヤ36とギヤ43からなる機械的結合が行われて攪拌手段42が回転し、それによって、排泄物と植物構成体の微粉体及び好気性発酵菌とが攪拌され、籾殻、木屑等が活発に活動する好気性高温発酵菌によって微生物及び好気性発酵菌によって発酵分解され、見掛上、処理容器4内の粉砕した籾殻、木屑の増量となる。この排泄物による籾殻、木屑の増量は、処理容器4内の籾殻、木屑等を肥料として施肥することにより、排泄物を自然に返すことができる。
【0033】故に、排泄物をポータブルトイレ内で処理でき、かつ、臭気を発散させることもない。
【0034】また、処理容器4内の籾殻、木屑等を取出す場合には、処理容器4を本体1から引出す。このとき、その装着により出力ギヤ36とギヤ43との機械的結合が解除される。再度、処理容器4を本体1に装着する場合、その挿入により出力ギヤ36とギヤ43との機械的結合が行われる。したがって、通常、持運びを行う処理容器4には電気的部分を有していないから、水による洗浄が可能であり、また持運びも軽量となる。勿論、機械的部分も少なく、衝撃等によって故障が発生する事態が回避できる。
【0035】なお、本体1に装着された処理容器4には触媒脱臭器38からなる脱臭手段によって排出される空気の脱臭を行う。
【0036】特に、本実施例の植物構成体の微粉体及び好気性発酵菌は、普及された材料を使用しているので、廉価にすることができる。
【0037】ところで、上記実施例の本体1に装着された処理容器4に外気を導入する給気手段は、排気を行う排気ファン37としたものであるが、本発明を実施する場合には、強制的に吸気を行う吸気ファンとすることができる。
【0038】また、上記実施例の脱臭手段は、本体1に装着された処理容器4には触媒脱臭器38からなるが、本発明を実施する場合の脱臭手段は、公知の空気の脱臭を行う除臭手段の使用ができる。
【0039】
【発明の効果】以上のように、この発明におけるポータブルトイレは、本体に装着された処理容器の温度が加温手段によって所定の温度範囲に制御され、処理容器内の環境を好気性発酵菌の活動に好適な条件下とし、植物構成体の微粉体及び好気性発酵菌を収容する処理容器は、その処理容器を本体に装着したとき、その装着により駆動手段と機械的結合が行われて攪拌手段が回転し、それによって、排泄物と植物構成体の微粉体及び好気性発酵菌とが攪拌され、籾殻、木屑等が活発に活動する好気性高温発酵菌によって排出物が微生物及び好気性発酵菌によって発酵分解される。排泄物により見掛上、籾殻、木屑が増量となり、処理容器内の籾殻、木屑等を肥料として施肥することにより、排泄物を自然に返すことができる。
【0040】故に、排泄物をポータブルトイレ内で処理でき、かつ、臭気を発散させることもない。かつ、材料が普通のものを使用するものであるから運転コストが廉価である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明の一実施例のポータブルトイレの全体を示す斜視図である。
【図2】 図2は本発明の一実施例のポータブルトイレの構造を示す断面図である。
【図3】 図3は本発明の一実施例のポータブルトイレの蓋部の構造を示す要部断面図である。
【符号の説明】
1 本体
2 蓋部
2a 上部開口
4 処理容器
42 攪拌手段
35 電動機
32 ヒータ
37 排気ファン
38 触媒脱臭器
なお、図中、同一符号及び記号は同一または相当する構成部分を示すものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 臀部が置かれる上部開口を有する本体と、前記本体に対して挿脱自在とし、植物構成体の微粉体及び好気性発酵菌を収容する処理容器と、前記処理容器が前記本体に装着されたとき、その装着により機械的結合が行われて回転力を得る攪拌手段と、前記本体内に取付けられ、前記攪拌手段に回転力を出力する駆動手段と、前記本体内に取付けられ、前記本体に装着された処理容器の温度を所定の温度範囲に維持制御する加温手段と、前記本体に装着された処理容器に外気を導入する給気手段と、前記給気手段による外気の導入に伴なって排出される空気の脱臭を行う脱臭手段とを具備することを特徴とするポータブルトイレ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【特許番号】特許第3293396号(P3293396)
【登録日】平成14年4月5日(2002.4.5)
【発行日】平成14年6月17日(2002.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−74739
【出願日】平成7年3月31日(1995.3.31)
【公開番号】特開平8−266445
【公開日】平成8年10月15日(1996.10.15)
【審査請求日】平成12年4月6日(2000.4.6)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【参考文献】
【文献】特開 昭51−128827(JP,A)
【文献】実開 昭62−7292(JP,U)