説明

ポータブルプリンタ用キャリーケース

【課題】高い防塵及び防水性を有しながら、ポータブルプリンタの出し入れ作業が容易であるキャリーケースを得る。
【解決手段】ケース本体102は、柔軟性を有するシート状の正面部材102aと一対の側面部材102cと背面部材102dとが連結された有底形状を有し、上面にポータブルプリンタを出し入れするための収納用開口103を有し、収納用開口103の上縁をポータブルプリンタの高さと一致させている。収納用開口103の防塵性及び防水性を維持するために、ケース蓋104の先端側裏面と背面部材の表面とを第1の面ファスナ対112によってシール可能とし、一対の側面部材102cの上縁に設けた内フラップ110の表面とケース蓋104の裏面とを第2の面ファスナ対113によってシール可能とすることに加えて、その部分を外フラップ111で覆うようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポータブルプリンタを収納して持ち運ぶのに適したポータブルプリンタ用キャリーケースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、情報通信技術の飛躍的な発展によって各種情報処理機器のダウンサイジングが実現している。その一例として、小型で携帯が可能なポータブルプリンタが各種の分野で用いられている。普及分野としては、配送、流通の分野が代表的である。このようなポータブルプリンタは、一例として、前面に設けられた蓋を開けることでロール紙のセットが可能であり、一面に設けられた操作部からの操作に応じてセットしたロール紙に印字データに基づく印字を行なうことができるようになっている。印字する印字データは、例えば、赤外線通信等の手法でポータブルプリンタに送信され、ポータブルプリンタにおいて蓄えられる。使用に際しては、一例として、ポータブルプリンタに印字データを送信して予め蓄えさせておき、その状態でポータブルプリンタを外部に持ち出し、ポータブルプリンタにて蓄えた印字データに基づいて伝票やラベル等の印字発行を行なう。
【0003】
このようなポータブルプリンタは、本来的に、携帯して持ち運ぶことを前提としている。そこで、従来、ポータブルプリンタを携帯しての持ち運びが便利なように、ポータブルプリンタのキャリーケースが提案されている(特許文献1)。
【0004】
特許文献1に記載されたキャリーケースは、上面に形成された開口部からポータブルプリンタをすっぽり収納し、開口部をケース蓋で開閉自在に覆うようにしている。ケース蓋は、ポータブルプリンタの正面を覆う部材の上部を、開口部を覆ってポータブルプリンタの背面を覆う部材の上方領域に達するまで延出させて形成されている。また、ポータブルプリンタの正面を覆う部材には、ポータブルプリンタの排紙口に連通する排紙用開口が形成されている(段落0035)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−210280公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ポータブルプリンタは、本来的に屋外で使用される。このため、ある程度高い防塵及び防水性能が求められる。そこで、本発明の発明者は、一例として、防塵及び防水の高さを示すIP54(International Protection54)程度の等級を想定し、これを満たすポータブルプリンタ用キャリーケースの開発に着手した。IP54の「5」は防塵性規格等級の値であり、「4」は防水性規格等級の値である。防塵性規格等級値の「5」は、塵埃の侵入を完全に妨げないが、機器の適切な動作及び安全性を阻害する量の塵埃が入らないことを意味している。防水性規格等級値の「4」は、水の飛沫(あらゆる方向からの噴霧)が機器に有害な影響を及ぼさないことを意味している。
【0007】
ところが、従来のポータブルプリンタ用キャリーケース、例えば上記特許文献1に記載されているようなキャリーケースでは、求める防塵及び防水性能の一例ではあるが、IP54を満足するものが見当たらない。このようなことから、本発明の発明者は、防塵性及び防水性という観点からポータブルプリンタ用キャリーケースの開発に鋭意努力を重ねた。そして、その過程で、例えばバッテリの交換やロール紙の補給の必要性から、頻繁にポータブルプリンタを出し入れしなければならないポータブルプリンタ用キャリーケースには、その出し入れ作業が容易であることの重要性にも思い至った。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、高い防塵及び防水性を有しながら、ポータブルプリンタの出し入れ作業が容易であるキャリーケースを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、排紙口を前面に有して操作部を有する矩形形状のポータブルプリンタを収納するキャリーケースであって、前記ポータブルプリンタの正面と両側面と背面とをそれぞれ覆うシート状の正面部材と一対の側面部材と背面部材とが連結された有底形状を有し、上面に前記ポータブルプリンタを出し入れするための収納用開口を有し、前記収納用開口の上縁が前記ポータブルプリンタの高さと一致しているケース本体と、前記正面部材の上部を延出させて形成され、前記収納用開口を覆って前記背面部材の上方領域に達する長さのケース蓋と、前記ケース蓋に形成され、前記ケース本体に収納された前記ポータブルプリンタの操作部を外部から透視可能とする柔軟性及び透光性を有するシート状の透過窓と、前記一対の側面部材の上縁にそれぞれ設けられ、前記収納用開口に延出する一対の内フラップと、前記ケース蓋の両側縁にそれぞれ設けられ、前記ケース蓋が閉じられた状態で前記側面部材をその奥行き全長に渡り覆う外フラップと、前記正面部材に形成され、前記ケース本体に収納された前記ポータブルプリンタの排紙口を露出可能とする排紙用開口と、前記正面部材に取り付けられ、前記排紙用開口をその下方の位置を支点として開閉自在に覆う排紙用開口蓋と、前記正面部材に取り付けられ、前記排紙用開口蓋の上縁部分をその上方の位置を支点として開閉自在に覆う正面フラップと、前記ケース蓋の先端側裏面と前記背面部材の表面とにそれらの全幅に渡り設けられ、両者を着脱自在に接着する第1の面ファスナ対と、前記内フラップの表面と前記ケース蓋の裏面とに前記内フラップの全長に渡り設けられ、両者を着脱自在に接着する第2の面ファスナ対と、前記排紙用開口蓋の裏面と前記正面部材の表面とに前記排紙用開口を取り囲む形状で設けられ、両者を着脱自在に接着する第3の面ファスナ対と、前記排紙用開口蓋の表面と前記正面フラップの裏面とにそれらの全幅に渡り設けられ、両者を着脱自在に接着する第4の面ファスナ対と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ケース蓋の先端側裏面と背面部材の表面とを第1の面ファスナ対によってシールでき、内フラップの表面とケース蓋の裏面とを第2の面ファスナ対によってシールできることに加えてその部分を外フラップで覆うことができ、これにより、収納用開口に対する塵埃や水の浸入を防止することができる。また、排紙用開口蓋の裏面と正面部材の表面とを排紙用開口を取り囲む形状で設けられた第3の面ファスナ対によってシールできることに加えて排紙用開口蓋の表面と正面フラップの裏面とを第4の面ファスナ対でシールすることができ、これにより、排紙用開口に対する塵埃や水の浸入を防止することができる。しかも、ケース本体にポータブルプリンタを収納した状態では、内フラップがポータブルプリンタの上面に位置決めされてその状態でケース蓋を閉じるという一動作によって容易にケース蓋を閉じてポータブルプリンタを収納状態にすることができ、また、ケース蓋の先端を掴んでケース蓋を開くという一動作によって容易にケース蓋を開いてポータブルプリンタを取り出し得る状態にすることができ、したがって、ポータブルプリンタの出し入れ作業を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の一形態であるポータブルプリンタ用キャリーケースに収納されるポータブルプリンタの一例を示す斜視図である。
【図2】ポータブルプリンタ用キャリーケースを正面側から見た斜視図である。
【図3】ポータブルプリンタ用キャリーケースを背面側から見た斜視図である。
【図4】ケース蓋を開いた状態のポータブルプリンタ用キャリーケースを背面側から見た斜視図である。
【図5】排紙用開口蓋を開いて排紙用開口を露出させた状態を示すポータブルプリンタ用キャリーケースを正面側から見た斜視図である。
【図6】排紙用開口蓋を開いた状態のポータブルプリンタ用キャリーケースを底面側から見た斜視図である。
【図7】ケース本体を上方から見た場合の正面部材と一対の側面部材と背面部材との形状傾向とケース蓋(一点差線で示す)との配置関係を例示する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の一形態を図1ないし図7に基づいて説明する。
【0013】
図1は、ポータブルプリンタ用キャリーケースであるキャリーケース101(図2〜図7参照)に収納されるポータブルプリンタ11の一例を示す斜視図である。ポータブルプリンタ11は、矩形形状を基本姿態としており、四隅にプロテクタ12を有している。プロテクタ12は、衝撃からポータブルプリンタ11を保護する。このようなポータブルプリンタ11は、面積が比較的広い正面11aに排紙口13を有し、面積が比較的狭い上面11bに操作部14を有している。操作部14は、電源ボタン等の各種のボタン14aと液晶による表示部14bとを有している。
【0014】
ここで、ポータブルプリンタ11については、その正面11a及び上面11bの他、側面を符号11cで、背面を符号11dで、底面を符号11eでそれぞれ示すものとする。
【0015】
図2は、キャリーケース101を正面側から見た斜視図である。キャリーケース101は、ケース本体102を基本として構成されている。ケース本体102は、ポータブルプリンタ11の正面11aを覆う正面部材102aと、両側面11cを覆う側面部材102cと、背面11dを覆う背面部材102d(図3、図4、図6参照)とがそれぞれ連結された有底形状を有している。これらの正面部材102a、側面部材102c、及び背面部材102dは、柔軟性を有するシート状の部材であり、例えば、ビニール、合成繊維、人工皮革等の素材から形成されている。この場合、一枚のシート状部材によって正面部材102a等を形成しても良く、複数枚のシート状部材を積層して正面部材102a等を形成しても良い。また、複数枚のシート状部材を積層する場合には、個々のシート状部材の間にゴムやフェルト等の柔軟性に優れる部材を介在させるようにしても良い。もっとも、いずれの素材を用いるにせよ、あるいはいずれの構造を採用するにせよ、ケース本体102を形成する各部は防水性を有している必要がある。素材の種類によって本来的に防水性がある場合がある反面、素材そのものには防水性がない場合もある。このような防水性がない素材を用いてケース本体102を形成する場合には、別途防水加工等を施す必要がある。
【0016】
ここで、ケース本体102は、一例として、正面部材102aと側面部材102cと背面部材102dとのそれぞれの側縁102ae、102ce、102deを外縫い方式の縫製によって縫い止めることで形成されている。そして、ケース本体102の底部は、側面部材102cと一体に形成された底面部材102eであり、この底面部材102eの下縁102eeも、正面部材102a及び背面部材102dの下縁に外縫い方式の縫製によって縫い止められている。
【0017】
ケース本体102は、正面部材102aと側面部材102cと背面部材102dと底面部材102eとが縫製によって縫い止められることで、上面に開口部分を形成する。この開口部分は、ポータブルプリンタ11を出し入れするための収納用開口103となる(図4参照)。ケース本体102は、正面部材102aと側面部材102cと背面部材102dと底面部材102eとによって形成される収納用開口103に連絡する内部空間として、ポータブルプリンタ11が僅かな隙間をもって出し入れされるような寸法及び空間の内部空間を形成することが望ましい。その空間がポータブルプリンタ11に対して窮屈に過ぎるとポータブルプリンタ11の出し入れに支障が生ずるし、反対に、その空間がポータブルプリンタ11に対して緩やか過ぎるとポータブルプリンタ11の十分な保持ができなくなるからである。この場合、特に重要なことは、ケース本体102の深さである。ケース本体102では、収納用開口103の上縁がポータブルプリンタ11の高さと一致していなければならない。その理由については後述する。
【0018】
図2に示すように、ケース本体102を形成する正面部材102aは、その上部が延出し、収納用開口103を覆って背面部材102dの上方領域にまで達している(図3、図7参照)。このような正面部材102aの延出部分は、収納用開口103を開閉するためのケース蓋104を形成する。そして、ケース蓋104には、透過窓105が形成されている。透過窓105は、ケース蓋104を閉めた状態であってもケース本体102に収納されたポータブルプリンタ11の操作部14を外部から視認可能とし、かつ、ボタン14aを操作可能とするために設けられている。したがって、透過窓105は、ケース本体102に収納されたポータブルプリンタ11の操作部14の位置に合わせて形成されている。このような透過窓105は、ケース蓋104に形成された窓孔105aに透光性を有するシート状の樹脂フィルム105bを固定することで形成することができる。樹脂フィルム105bの固定は、縫製によってなされている(図4参照)。
【0019】
図2中、106は排紙用開口蓋、107は正面フラップである。排紙用開口蓋106は、収納するポータブルプリンタ11から用紙(図示せず)を排紙させるに際して開く構造のものであり、その際、正面フラップ107も開くようになっている。このような排紙用開口蓋106及び正面フラップ107の詳細については、図5に基づいて後述する。
【0020】
図2中、側面部材102cに設けられているのは、ショルダーストラップ(図示せず)を着脱自在に固定するためのストラップフック108である。このストラップフック108は、両方の側面部材102cにそれぞれ一つずつ設けられている。
【0021】
図3は、キャリーケース101を背面側から見た斜視図である。図3を参照することで、ケース蓋104を形成する正面部材102aが背面部材102dの上方領域まで延出していることが良く分かる。また、図3に示すように、ケース本体102を形成する背面部材102dには、ベルト通し109が取り付けられている。このベルト通し109は、キャリーケース101に収納してポータブルプリンタ11を携帯する作業者がそのベルト(図示せず)を通し、腰にキャリーケース101を固定するために用いられる。
【0022】
図4は、ケース蓋104を開いた状態のキャリーケース101を背面側から見た斜視図である。図4に示すように、一対の側面部材102cにはそれぞれ、その上縁に一対の内フラップ110が取り付けられている。これらの内フラップ110は、収納用開口103に延出しており、略水平状態の姿勢を維持するように側面部材102cの上縁部に縫製されて縫い止められている。また、ケース蓋104の両側縁にはそれぞれ、一対の外フラップ111が取り付けられている。これらの外フラップ111は、ケース蓋104が閉じられた状態で側面部材102cをその奥行き全長に渡り覆うように、ケース蓋104が閉じられた状態で略垂直状態の姿勢を維持するようにケース蓋104の両側縁に縫製されて縫い止められている(図2、図3、図5、図6参照)。
【0023】
ここで、ケース蓋104の先端側裏面と背面部材102dの表面とには、互いに着脱自在に接着する第1の面ファスナ対112が縫製されて縫い付けられている。「面ファスナ(hook-and-loop fastener)」は、二つのものを着脱自在に貼り付けて接着するもので、代表的な一例としては、一方をフック状に起毛させてもう一方をループ状に起毛させた二部材によって形成されている。このような面ファスナは、フック状に起毛した側とループ状に起毛した側とを押し付け合うと両者が張り付いて接着され、離反方向に力を加えると離反する。もっとも、面ファスナとしては、一方をフック状に起毛させてもう一方をループ状に起毛させた二部材によって形成されたものに限らず、着脱自在に接着させようとする面のいずれにもフック状起毛とループ状起毛とを持たせもの、フック面とループ面とに区別がないもの等、各種の構造のもがある。このような面ファスナ対を用いて形成されている第1の面ファスナ対112は、ケース蓋104と背面部材102dとの全幅に渡り設けられている。
【0024】
また、内フラップ110の表面とケース蓋104の裏面とには、互いに着脱自在に接着する第2の面ファスナ対113が縫製されて縫い付けられている。この第2の面ファスナ対113は、内フラップ110の全長に渡り設けられている。
【0025】
図5は、排紙用開口蓋106を開いて排紙用開口114を露出させた状態を示すキャリーケース101を正面側から見た斜視図である。図5に示すように、ケース本体102を形成する正面部材102aには、排紙用開口114が形成されている。排紙用開口114は、ケース本体102に収納されたポータブルプリンタ11の排紙口13の位置に合わせて配置され、排紙口13から用紙(図示せず)を排出させるために設けられている。したがって、排紙用開口114は、ケース本体102に収納されたポータブルプリンタ11の排紙口13を露出可能としている。
【0026】
前述した排紙用開口蓋106は、その排紙用開口114を開閉自在に覆う構造のものである。より詳細な構造として、排紙用開口蓋106は、正面部材102aに縫製されて縫い止められ、排紙用開口114をその下方の位置である正面部材102aの下縁を支点として開閉自在に覆っている。そして、前述した正面フラップ107は、正面部材102aに取り付けられ、排紙用開口蓋106の上縁部分をその上方の位置を支点として開閉自在に覆っている。
【0027】
ここで、排紙用開口蓋106の裏面と正面部材102aの表面とには、互いに着脱自在に接着する第3の面ファスナ対115が縫製されて縫い付けられている。この第3の面ファスナ対115は、排紙用開口蓋106においては、その支点となる下方位置から排紙用開口蓋106の縁部に沿って配置され、正面部材102aにおいては、排紙用開口114を取り囲む形状で設けられている。
【0028】
また、排紙用開口蓋106の表面と正面フラップ107の裏面(図6参照)とには、互いに着脱自在に接着する第4の面ファスナ対116が縫製されて縫い付けられている。この第4の面ファスナ対116は、排紙用開口蓋106と正面フラップ107との全幅に渡り設けられている。
【0029】
図6は、排紙用開口蓋106を開いた状態のキャリーケース101を底面側から見た斜視図である。図6には、正面フラップ107の裏面に縫製されて縫い付けられている第4の面ファスナ対116のうちの一方が示されている。そして、ケース本体102の底面部材102eには、第4の面ファスナ対116のうち排紙用開口蓋106の表面に設けられている側に着脱自在に接着する第5の面ファスナ117が縫製されて縫い付けられている。
【0030】
このような構成において、キャリーケース101にポータブルプリンタ11を収納するには、ケース蓋104を開けて収納用開口103を開放した上で、一対の内フラップ110を起こして収納用開口103からポータブルプリンタ11を収納する。ケース本体102にポータブルプリンタ11が収納されたならば、一対の内フラップ110から手を離すことで、それらの内フラップ110はポータブルプリンタ11の上部に設けられているプロテクタ12に支持される。ケース本体102は、その深さをポータブルプリンタ11の高さと一致させて形成されているからである。そこで、この状態でケース蓋104を閉じるだけで、第1の面ファスナ対112が接着され、第2の面ファスナ対113も接着される。こうして、ポータブルプリンタ11をキャリーケース101に容易に収納させることができる。つまり、ケース本体102にポータブルプリンタ11を収納した状態では、内フラップ110がポータブルプリンタ11の上面であるプロテクタ12によって位置決めされているので、その状態でケース蓋104を閉じるという一動作のみによって容易にケース蓋104を閉じてポータブルプリンタ11を収納状態にすることができるわけである。
【0031】
これに対して、キャリーケース101からのポータブルプリンタ11の取り出しは、ケース蓋104の先端を掴んでケース蓋104を開くという一動作によって容易に行なうことができる。つまり、こうしてケース蓋104を開けば、後はケース本体102からポータブルプリンタ11を容易に取り出すことができる。この際、作業者がキャリーケース101を身に付けているとすると、ケース蓋104は作業者から離反した方向に開くことになるので、ケース本体102からのポータブルプリンタ11の取り出し作業が極めて容易となる。
【0032】
このように、本実施の形態によれば、キャリーケース101に対するポータブルプリンタ11の出し入れ作業が極めて容易である。このことは、例えばバッテリの交換やロール紙の補給の必要性から、キャリーケース101に対するポータブルプリンタの出し入れが頻繁に生じえることを考慮すると、本実施の形態のキャリーケース101が有している大きな利点となる。
【0033】
ここで、キャリーケース101に収納しているポータブルプリンタ11において印字済み用紙(図示せず)の排紙動作を行なう場合について説明する。この場合、作業者は、正面フラップ107を上に起こして第4の面ファスナ対116の接着を解除した状態で、排紙用開口蓋106の上方部分を掴んで下方に捲る。これにより、第3の面ファスナ対115の接着状態が解除され、排紙用開口114が露出する。この状態でポータブルプリンタ11から用紙の排紙を行わせることができ、排紙された用紙を排紙用開口114から外部に排紙させることができる。
【0034】
これでも用紙排紙は可能であるが、本実施の形態のキャリーケース101には、作業者への負担をより少なくするための工夫が盛り込まれている。これについて説明する。作業者は、排紙用開口蓋106の上方部分を掴んで下方に捲り、第3の面ファスナ対115の接着状態を解除した後、排紙用開口蓋106の表面側に設けられている第4の面ファスナ対116のうちの一方をケース本体102の底面部材102eに設けられている第5の面ファスナ117に接着させる。これにより、作業者が手で押さえておかずとも、排紙用開口蓋106を開いたままの状態に維持することができ、用紙印字発行時の作業負担をより減少させることができる。
【0035】
次いで、防塵性及び防水性について説明する。本実施の形態のキャリーケース101は、収納用開口103及び排紙用開口114という二つの開口部を有している。このため、塵埃や水がケース本体102に入り易いのは、それらの開口部からということになる。そこで、以下、本実施の形態のキャリーケース101において、収納用開口103から何故に塵埃や水がケース本体102に入り難いのか、そして、排紙用開口114からも何故に塵埃や水がケース本体102に入り難いのかについて説明する。
【0036】
まず、収納用開口103から塵埃や水がケース本体102に入り難い理由について説明する。本実施の形態のキャリーケース101は、正面部材102aの表面とケース蓋104の裏面とを第1の面ファスナ対112の接着によってシールしている。また、内フラップ110の表面とケース蓋104の裏面とを第2の面ファスナ対113の接着によってシールしている。その上、そのシール部分を、外フラップ111で覆っている。これにより、キャリーケース101は、収納用開口103からの塵埃や水の浸入という現象に対して、強力な防塵及び防水効果を発揮する。この場合、ケース本体102を形成している正面部材102aと一対の側面部材102cと背面部材102dとが、それらの側縁102ae、102ce、102deを外縫い方式で縫い止めていることも、防塵及び防水効果を強力にすることに一役買っている。その理由を図7に基づいて次に説明する。
【0037】
図7は、ケース本体102を上方から見た場合の正面部材102aと一対の側面部材102cと背面部材102dとの形状傾向とケース蓋104(一点差線で示す)との配置関係を例示する模式図である。図7に示すように、正面部材102aの側縁102aeと一対の側面部材102cの側縁102ceと背面部材102dの側縁102deとが外縫い方式で縫製されていれば、一対の側面部材102cはケース本体102の内部方向に向けて反る形状傾向を持つ。このため、ケース本体102の収納用開口103がケース蓋104で覆われた状態において、一対の側面部材102cはケース蓋104との間に隙間を作り難い形状を維持することになる。これにより、防塵及び防水効果がより一層強力になる。
【0038】
次に、排紙用開口114から塵埃や水がケース本体102に入り難い理由について説明する。図5を見ると明らかなように、排紙用開口114は、正面部材102aに対する排紙用開口蓋106の下縁の縫い付けと接着された第3の面ファスナ対115とに取り囲まれている。これにより、排紙用開口114はシールされた状態となっている。その上、排紙用開口蓋106の上縁は正面フラップ107によって覆われ、この覆われた部分が第4の面ファスナ対116によってシールされている。したがって、排紙用開口114に対する強力なシール構造が採用されていることになる。その結果、キャリーケース101は、収納用開口103からの塵埃や水の浸入という現象に対して、強力な防塵及び防水効果を発揮するわけである。
【0039】
以上説明したように、本実施の形態のキャリーケース101によれば、高い防塵及び防水性を有しながら、ポータブルプリンタ11の出し入れ作業が容易であるキャリーケース101を得ることができる。
【符号の説明】
【0040】
11…ポータブルプリンタ,13…排紙口,14…操作部,102…ケース本体,102a…正面部材,102c…側面部材,102d…背面部材,103…収納用開口,104…ケース蓋,105…透過窓,110…内フラップ,111…外フラップ,114…排紙用開口,106…排紙用開口蓋,107…正面フラップ,112…第1の面ファスナ対,113…第2の面ファスナ対,115…第3の面ファスナ対,116…第4の面ファスナ対,117…第5の面ファスナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排紙口を前面に有して操作部を有する矩形形状のポータブルプリンタを収納するキャリーケースであって、
前記ポータブルプリンタの正面と両側面と背面とをそれぞれ覆うシート状の正面部材と一対の側面部材と背面部材とが連結された有底形状を有し、上面に前記ポータブルプリンタを出し入れするための収納用開口を有し、前記収納用開口の上縁が前記ポータブルプリンタの高さと一致しているケース本体と、
前記正面部材の上部を延出させて形成され、前記収納用開口を覆って前記背面部材の上方領域に達する長さのケース蓋と、
前記ケース蓋に形成され、前記ケース本体に収納された前記ポータブルプリンタの操作部を外部から透視可能とする柔軟性及び透光性を有するシート状の透過窓と、
前記一対の側面部材の上縁にそれぞれ設けられ、前記収納用開口に延出する一対の内フラップと、
前記ケース蓋の両側縁にそれぞれ設けられ、前記ケース蓋が閉じられた状態で前記側面部材をその奥行き全長に渡り覆う外フラップと、
前記正面部材に形成され、前記ケース本体に収納された前記ポータブルプリンタの排紙口を露出可能とする排紙用開口と、
前記正面部材に取り付けられ、前記排紙用開口をその下方の位置を支点として開閉自在に覆う排紙用開口蓋と、
前記正面部材に取り付けられ、前記排紙用開口蓋の上縁部分をその上方の位置を支点として開閉自在に覆う正面フラップと、
前記ケース蓋の先端側裏面と前記背面部材の表面とにそれらの全幅に渡り設けられ、両者を着脱自在に接着する第1の面ファスナ対と、
前記内フラップの表面と前記ケース蓋の裏面とに前記内フラップの全長に渡り設けられ、両者を着脱自在に接着する第2の面ファスナ対と、
前記排紙用開口蓋の裏面と前記正面部材の表面とに前記排紙用開口を取り囲む形状で設けられ、両者を着脱自在に接着する第3の面ファスナ対と、
前記排紙用開口蓋の表面と前記正面フラップの裏面とにそれらの全幅に渡り設けられ、両者を着脱自在に接着する第4の面ファスナ対と、
を備えることを特徴とするポータブルプリンタのキャリーケース。
【請求項2】
前記ケース本体は柔軟性を有し、
前記正面部材と前記一対の側面部材と前記背面部材とは、それぞれの側縁を外縫いで縫製して連結されている、
ことを特徴とする請求項1記載のポータブルプリンタのキャリームース。
【請求項3】
前記排紙用開口蓋は、前記正面部材の下縁まで支点としており、
前記ケース本体の底面には、前記第4の面ファスナ対のうち前記排紙用開口蓋の表面に設けられている側に着脱自在に接着する第5の面ファスナが設けられている、
ことを特徴とする請求項1又は2記載のポータブルプリンタのキャリーケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−201744(P2010−201744A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−48737(P2009−48737)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】