説明

マイクロカプセル及びその製造方法

【課題】水分の影響を受けやすい物質の保管が可能なマイクロカプセルを提供する。
【解決手段】芯物質が、反応性シリル基を有する有機重合体の該反応性シリル基の架橋硬化触媒による架橋反応で前記有機重合体が架橋されて成形された高分子壁により内包されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロカプセル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロカプセルは、その芯物質の物性と目的に応じた製法とに関する検討が多く行なわれている。例えば、ポリカチオン性高分子とポリアニオン性高分子とによる複合コアセルベーションや、ポリアニオン高分子多価金属塩による硬化、界面重合反応によるポリアミド形成(メラミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ポリウレア樹脂など)、微粒化液滴の乾燥・析出による硬膜、粉床上における液滴表面での凝集、など多岐にわたる方法が試みられている。
【0003】
マイクロカプセルは、芯物質の物性と目的等に応じて、様々な機能を付与することができることから、(1)芯部に内包する物質の高い保管性(外界刺激からの保護)、(2)粉体のようにガスやオイル等の液体を液中や固体中に狙いの濃度で分散させ得る分散機能、(3)予定された刺激(熱、圧力、pH、光、音波など)に応答した容器破壊による芯物質放出動態などの設計が可能であるという特性を多方面からデザインできる特徴がある。
【0004】
一方、反応性シリル基を有する重合体は、室温で優れた硬化性を有し、配合設計が容易で劣化が少ないことから、シーリング材など建材用途等に広く硬化性組成物として用いられている。反応性シリル基の架橋を利用した微粒子としては、反応性シリル基含有の重合体中において、反応性シリル基を有するポリマーが3次元架橋された粒子を得る技術が開示されている(例えば、特許文献1〜8参照)。
【0005】
また、RnSiX(4−n)の加水分解物を直接縮重合して合成したオルガノポリシロキサンを壁膜とする内包済み微小カプセルに関する開示がある(例えば、特許文献9参照)。
【特許文献1】特開昭62−257939号公報
【特許文献2】特開昭62−243621号公報
【特許文献3】特開昭63−202658号公報
【特許文献4】特開2003−226812号公報
【特許文献5】特開2005−290162号公報
【特許文献6】特開2005−290164号公報
【特許文献7】特開2005−290168号公報
【特許文献8】特開2005−290174号公報
【特許文献9】特開平11−221459号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マイクロカプセルは、このように様々な産業用途に利用されているが、改善すべき課題がある。課題の1つとして、例えば、複合コアセルベーションやポリアニオン高分子金属塩は、硬膜剤として生体の皮膚感作性があるアルデヒドやグリシジル化合物を用いないとマイクロカプセルを成形し得ないことが挙げられる。また、複合コアセルベーションの場合は、電荷による凝集でマイクロカプセルを成形しているので、水溶液中で保管する場合に、水溶性高分子の部分溶解(成形崩壊)を避けることが極めて困難であり、保管性を得るのに適当とは言いがたい。
【0007】
融点が低いワックス状物質を水中に分散し、温度低下により析出固化してマイクロカプセルを形成する方法も知られている。この場合、油滴形成のときの芯物質の濃度分布はワックスとの相溶性で決まるので、芯物質は相分離しない物質に限定され、界面近傍の物質の保管性の制御は充分とは言い難い。
【0008】
一方、非相溶な界面重合によりマイクロカプセルを成形する方法としては、メラミン・アルデヒド樹脂、尿素アルデヒド樹脂、ポリウレタン・ウレア樹脂などが知られているが、製品安全性が望まれる近年では、メラミンあるいは尿素のアルデヒド樹脂に用いられるホルムアルデヒドは感作性が高く、将来的には社会に受け入れがたいものであり、アルデヒドフリーの樹脂製造が求められている。
【0009】
また、水に溶解しない疎水性モノマーを重合して得られるポリマーでマイクロカプセル壁を成形する方法も知られているが、概して水や酸素、あるいはアミン性物質のような触媒毒に敏感な開始剤あるいは重合反応点を契機として重合反応が進行するものであるため、重合反応場において、芯に重合反応点と反応する若しくは触媒毒になる物質を含んではならない。したがって、マイクロカプセルに内包される物質にこれらを含むことは許されない。
【0010】
また、混和しないポリマーを凝集・析出させてマイクロカプセル壁を成形する技術は知られているが、ポリマーの凝集によるマイクロカプセル形成では、高次な架橋がないので、保管性を高める設計を付与しにくい。
【0011】
ポリウレア・ポリウレタン樹脂の形成によりマイクロカプセルを成形する場合、コアとしての油相(O相)を外水相(W相)中に分散することによるO/W系界面重合でマイクロカプセルが形成される。この反応は概して重合時の加熱が必要であり、さらに水中の油滴界面が反応場であるから、芯物質として内包される物質は決して水溶性物質であってはならない。すなわち、O/W界面重合反応中には、疎水的なO相であっても、水の影響(微量の侵入、界面での接触など)を排除することが実質的に困難である。したがって、親水性物質や、疎水性物質であっても水に反応性を持つ物質などの水分との接触を回避する必要のある物質を芯物質として内包することができない。
【0012】
また、上記した反応性シリル基を有するポリマーが3次元架橋された粒子を得る技術は、反応性シリル基を有する有機化合物重合体による高次架橋体の形成に過剰な水を介在させる必要がなく、酸性・アルカリ性触媒存在下で比較的穏やかに架橋させることが可能ではあるものの、ポリマー中で3次元架橋粒子を得るための技術に留まり、微粒体中に溶液や分散物を保管する目的には適さない。
【0013】
また、透湿性が低いポリマーとして、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリアルキレン、ポリフッ化ビニリデンなどが知られているが、これらは一般に数百度の高温で溶解し、射出成型などで容器として利用されている。これらは有機溶媒に溶かして形成するような工程には全く不向きであり、成型温度が高すぎて、有機化合物を内包することは実質不可能である。したがってこのようなポリマーを用いた低透湿性カプセルの検討はなされたことがなかった。
【0014】
また、RnSiX(4−n)の加水分解物を直接縮重合して合成したオルガノポリシロキサンの壁膜を持つ内包済み微小カプセルでは、一旦加水分解してから水性溶媒中でプレポリマーを予め形成し、これに疎水性物質や非水性溶媒を混合してエマルジョンとするものであり、水分に敏感であるなど水分の影響を受けやすい物質を芯物質として内包したい系には不適であり、微粒体中に溶液や分散物を保管する目的にも適さない。
【0015】
上記のように、従来から、例えば水に対する反応性が高い物質を内包する公知マイクロカプセルに関する技術は存在しないことはないものの、水に対する反応性が高いなど水に敏感な物質を環境に曝されないように保管できる技術は確立されるには至っていないのが実状である。かかる技術が確立されることにより、このような物質の特性を生かし得る様々なデザインが可能になるものと期待される。
【0016】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、水分の影響を受けやすい物質の保管が可能なマイクロカプセル、及び水分の影響を受けやすい物質を水分の介在を回避してカプセル化することができるマイクロカプセルの製造方法を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、穏やかな条件で内部に例えば水に敏感な物質を保管させることができるマイクロカプセルに関する検討のもと、反応性シリル基が結合した有機重合体を、該有機重合体とは相溶性を有しない有機溶液中に存在させてゾル−ゲル反応を進行させることにより、芯物質の内包に過剰な水を介在させる必要がなく、酸素−珪素間架橋反応でポリマー同士を連結することで、水が透過する等の影響を受けにくいカプセル形成が可能であること、従来は高温で加工成型に用いられていてマイクロカプセル壁には到底応用できなかったポリマーであっても本発明の下記具体的手段によるとカプセルを得ることができるとの知見を得、かかる知見に基づいて達成されたものである。
【0018】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 芯物質が、反応性シリル基を有する有機重合体の該反応性シリル基の架橋硬化触媒による架橋反応で前記有機重合体が架橋されて成形された高分子壁により内包されたマイクロカプセルである。
【0019】
<2> 前記高分子壁は、シロキサン構造を有する複数の層からなる多重壁構造を有し、前記芯物質をシロキサン構造を有する第1のカプセル壁により内包するコア部が、シロキサン構造を有する第2のカプセル壁により少なくとも内包されたことを特徴とする前記<1>に記載のマイクロカプセルである。
【0020】
<3> 平均外径が5mm以下であることを特徴とする前記<1>又は前記<2>に記載のマイクロカプセルである。
<4> 全質量中に占める第1のカプセル壁及び第2のカプセル壁の質量比率が5%以上であることを特徴とする前記<2>又は前記<3>に記載のマイクロカプセルである。
【0021】
<5> 反応性シリル基を有する有機重合体を含む第1の有機溶液中に、芯物質と前記有機重合体を架橋硬化させる架橋硬化触媒とを含むコア材を分散し、分散された前記コア材を覆うようにシロキサン構造を有する第1のカプセル壁を形成することにより、前記芯物質を少なくとも内包するコア粒子が分散されたプレエマルジョンを調製する工程と、前記第1の有機溶液中の前記有機重合体に対して非相溶性の第2の有機溶液中に、前記プレエマルジョンと前記有機重合体を架橋硬化させる架橋硬化触媒とを加えて分散し、第2の有機溶液中の分散粒子を覆うようにシロキサン構造を有する第2のカプセル壁を形成することにより、多重壁構造粒子が分散されたエマルジョンを形成する工程と、を有するマイクロカプセルの製造方法である。
【0022】
<6> 第1のカプセル壁及び第2のカプセル壁中に含まれるシロキサン結合の総和は、前記第1の有機溶液中に含有された前記有機重合体中の0.05質量%以上の反応性シリル基が架橋反応したものであることを特徴とする前記<5>に記載のマイクロカプセルの製造方法である。
【0023】
<7> 前記反応性シリル基を有する有機重合体の少なくとも1種は、ポリエチレン、ポリプロピレン、炭素数1〜12の分岐アルキル基を有するポリエチレン、炭素数1〜12の分岐アルキル基を有するポリプロピレン、炭素数1〜12の分岐アルキル基を有するポリブチレン、ポリハロゲン化アルキレン、ポリアルコキシビニル、ポリビニルアシレート、ポリ(メタ)アクリル酸及び炭素数1〜12のアルキルポリ(メタ)アクリレート及びこれらのコポリマー、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリマレイン酸、ポリマレイン酸イミド、ポリマレイン酸無水物、アルキルポリシアノアクリル酸の炭素数1〜12のアルキルエステル、ポリビニルスルホン、ポリシアノアクリル酸、ポリ−L−ラクチド、ポリカプロラクトン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニルと酢酸ビニルとのコポリマー、塩化ビニルと酢酸ビニルとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとのコポリマー、ポリビニルアセトフタレート、セルロースアセトフタレート、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、ポリ(エチレン/酢酸ビニル)、ポリアクリロニトリル、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(炭素数1〜4のヒドロキシアルキルメタクリレート)セルロース誘導体、ポリスチレン及びそのコポリマー、スチレン/アルキルアルコールオリゴマー、酢酸ビニル及び無水マレイン酸のターポリマー、及びこれらの混合物に反応性シリル基が付加された化合物群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする前記<5>又は前記<6>に記載のマイクロカプセルの製造方法である。
【0024】
<8> 前記反応性シリル基を有する有機重合体の重量平均分子量が500〜500000の範囲であることを特徴とする前記<5>〜前記<7>のいずれか1つに記載のマイクロカプセルの製造方法である。
<9> 前記多重壁構造粒子の平均外径が5mm以下であることを特徴とする前記<5>〜前記<8>のいずれか1つに記載のマイクロカプセルの製造方法である。
<10> 前記コア材、前記第1の有機溶液、及び前記第2の有機溶液の少なくとも1つが非イオン性界面活性剤を含み、該非イオン性界面活性剤の前記コア材、前記第1の有機溶液、又は前記第2の有機溶液中における含有量が、前記コア材、前記第1の有機溶液、又は前記第2の有機溶液の全質量に対して、それぞれ0.05〜25質量%であることを特徴とする前記<5>〜前記<9>のいずれか1つに記載のマイクロカプセルの製造方法である。
【0025】
<11> 前記非イオン性界面活性剤が、2〜50個のエチレンオキシド及び炭素数12〜22の少なくとも1つのアルキル鎖(エーテルのためのアルコール又はエステルのための酸のアルキル鎖)を含むエトキシル化脂肪酸エーテル又はエトキシル化脂肪エステル、ソルビタンのオキシエチレン化又は非オキシエチレン化脂肪酸エステル、糖脂肪エステル又は糖脂肪エーテル、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマー、ホスファチジルコリンの構造を有する水素化又は非水素化大豆又は卵レシチン、1〜10個のグリセロール構造を有するグリセロール又はポリグリセロールと炭素数12〜22の少なくとも1つのアルキル鎖(エステルのための酸又はエーテルのためのアルコールのアルキル鎖)とのアルキルエステル又はエーテル、脂肪酸又は脂肪アルコール、カルボン酸とグリセロールとの混合エステル、少なくとも1つのオキシエチレン鎖及び/又はオキシプロピレン鎖を含むシリコーン系界面活性剤、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記<10>に記載のマイクロカプセルの製造方法である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、水分の影響を受けやすい物質の保管が可能なマイクロカプセルを提供することができる。また、
本発明によれば、水分の影響を受けやすい物質を水分の介在を回避してカプセル化することができるマイクロカプセルの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明のマイクロカプセル及びその製造方法について詳細に説明する。
本発明のマイクロカプセルは、芯物質が、反応性シリル基を有する有機重合体の該反応性シリル基の架橋硬化触媒による架橋反応で前記有機重合体が架橋されて成形された高分子壁により内包されて構成されたものである。
【0028】
本発明のマイクロカプセルにおいては、芯物質はその周囲にて、有機重合体に結合している反応性シリル基の架橋硬化触媒による架橋反応で有機重合体間に架橋構造を形成して、高分子に取り囲まれた構成であることで、芯物質が影響を受けやすい物質との接触、例えば水分との反応性が高い等の場合には水分との接触が回避されるので、長期間安定に芯物質の保管が行なえる。
【0029】
本発明のマイクロカプセルの高分子壁は、反応性シリル基の架橋反応によるシロキサン構造を有する層が2層以上重ねられた多重壁構造に構成することができる。
この場合、芯物質をシロキサン構造を有する第1のカプセル壁により内包するコア部が、シロキサン構造を有する第2のカプセル壁により内包された形態に構成することができる。例えば、芯物質がシロキサン構造を有する第1のカプセル壁により内包されたコア部と、コア部を内包するようにシロキサン構造を有する第2のカプセル壁が設けられて形成されたシェル部とを設けた構造を有してもよい。第1のカプセル壁で包まれたコア部が更に第2のカプセル壁をその外殻として成形したシェル部で包まれた多層構造にすることで、芯物質としてコア部に内包される芯物質は、芯物質が影響を受けやすい物質との接触、例えば水分との反応性が高い等の場合には水分との接触が効果的に回避される。これより、長期間安定に芯物質を保管するうえで有利である。
【0030】
本発明のマイクロカプセルが多重壁構造を有する場合のコア部は、カプセル中に閉じ込められる芯物質と、この芯物質を包み込んで密閉する、シロキサン構造を有する第1のカプセル壁とを有するカプセル形状に構成される。
【0031】
芯物質としては、特に制限されるものではなく、親水性物質又は疎水性物質、あるいは水性溶液又は油性溶液のいずれでもよい。本発明では、後述するように例えばOil/Oil型のエマルションの形成が可能であるので、芯物質には例えば、水分との反応性が高い物質、吸湿・吸水性物質、水分存在下で変化しやすい物質などを選択することができる。芯物質の具体的な例として、ポリアクリル酸、シアノアクリル酸アルキル(アルキル部位の炭素数1〜12)エステル、アルカリ金属類、アルカリ土類金属類、金属水素化物、アルキル金属類、ルイス酸類、酸クロライド類、金属アルコキシド、カルボジイミド類、カルボネート類、アルキルリチウム類、4フッ化ゲルマニウム、水性染料、油溶性染料、油溶性香料などを挙げることができる。
【0032】
本発明における高分子壁、例えば上記の第1のカプセル壁及び第2のカプセル壁は、反応性シリル基を有する有機重合体間に反応性シリル基の架橋で形成されたシロキサン構造を有している。本発明における高分子壁は、好ましくは後述するように、反応性シリル基が結合した有機重合体を、この有機重合体とは相溶性を有しない有機溶液中でゾル−ゲル反応を進行させて架橋させることによって、有機重合体間に反応性シリル基の架橋によるシロキサン構造を有して形成されている。このゾル−ゲル反応による方法(本発明のマイクロカプセルの製造方法)の詳細については後述する。
【0033】
高分子壁(前記第1及び第2のカプセル壁を含む)は、下記の高分子化合物が、該高分子化合物に結合されている反応性シリル基により高分子間が架橋されて硬化されてなるものが好ましい。
高分子壁を構成する高分子化合物としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、炭素数1〜12の分岐アルキル基を有するポリエチレン、炭素数1〜12の分岐アルキル基を有するポリプロピレン(アルキル基は、例えば、エチル基、n−ブチル基、ヘキシル基、イソブチル基、及びイソヘキシル基が好ましい。)、末端水酸基ポリイソプレン、炭素数1〜12の分岐アルキル基を有するポリブチレン(アルキル基は、例えば、エチル基、n−ブチル基、ヘキシル基、イソブチル基、及びイソヘキシル基が好ましい。)などのポリアルキレンや、ポリハロゲン化アルキレン(ハロゲン元素はフッ素もしくは塩素が好ましい)、ポリアルコキシビニル(アルコキシ部位は、例えば、エトキシ、n−ブトキシ、ヘキシロキシ、イソブトキシ、及びイソヘキシロキシが好ましい。)、ポリビニルアシレート(アシレート部位は、アセテート、プロピオネート、ブチレートが好ましい。)、ポリ(メタ)アクリル酸及び炭素数1〜12のアルキルポリ(メタ)アクリレート及びこれらのコポリマー(例えば、メタクリル酸とメタクリル酸エステルとのコポリマーとして、Rohm Pharma社製のEudragit(商品名))、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリマレイン酸、ポリマレイン酸イミド、ポリマレイン酸無水物、アルキルポリシアノアクリル酸の炭素数1〜12のアルキルエステル(アルキル部位は、エチル、n−ブチル、ヘキシル、イソブチル、及びイソヘキシルが好ましい。)、ポリビニルスルホン、ポリシアノアクリル酸、ポリ−L−ラクチド、ポリカプロラクトン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニルと酢酸ビニルとのコポリマー、塩化ビニルと酢酸ビニルとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとのコポリマー、ポリビニルアセトフタレート、セルロースアセトフタレート、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、ポリ(エチレン/酢酸ビニル)、ポリアクリロニトリル、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(炭素数1〜4のヒドロキシアルキルメタクリレート)セルロース誘導体、ポリスチレン及びそのコポリマー、スチレン/アルキルアルコールオリゴマー、酢酸ビニル及び無水マレイン酸のターポリマー及びこれらの混合物が好ましい。
【0034】
上記の中でも、高分子化合物は、低透湿性の観点でカプセル形成を行なう目的であれば、ポリアルキレン、ポリハロゲン化アルキレン(中でもポリハロゲン化ビニリデン)が好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、炭素数1〜12の分岐アルキル基を有するポリブチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンがより好ましい。
【0035】
第1のカプセル壁を外殻とするコア部は、更にシロキサン構造を有する第2のカプセル壁で内包された構造に構成することができるが、第1のカプセル壁は、芯物質に不溶性である。ここで、「不溶性」とは、カプセル壁の芯物質への溶解量(0〜100℃)が5%以下である性質をいう。
【0036】
マイクロカプセルの粒子全質量中に占める高分子壁の質量比率(例えば、第1のカプセル壁及び第2のカプセル壁を有する場合は、該2つのカプセル壁の合計の質量比率)は、5質量%以上であることが好ましく、8質量%以上がより好ましい。該質量比率が5質量%以上であると、膜強度が強く、保管性の信頼性の点で有利である。
【0037】
また、マイクロカプセルの最外殻をなすカプセル壁の壁厚としては、0.02〜100μmの範囲が好ましく、0.05〜50μmの範囲がより好ましい。壁厚は、0.02μm以上であると水分低透過性が得られ、100μm以下であると壁の外界面〜中界面間の厚みの均質性確保の点で有利である。
【0038】
本発明のマイクロカプセルの平均外径としては、外界面〜中界面間の厚みの均質性確保の点から、体積平均粒子径で5mm以下が好ましく、2mm以下がより好ましく、500μm以下が更に好ましく、200μm以下が特に好ましい。平均外径の下限値は、0.05μmが望ましい。
マイクロカプセルの平均外径は、(株)堀場製作所製の粒度分布測定装置LA910()を用いて測定されるものである。
【0039】
本発明のマイクロカプセルは、芯物質として有機化合物が前記第1のカプセル壁により内包されたコア部と、コア部を内包するように更に前記第2のカプセル壁が設けられて形成された多重壁構造を備え、前記第1及び第2のカプセル壁が、下記具体例(1)〜(5)のいずれかで表される反応性シリル基の少なくとも1種を有するポリアルキレン及び/又はポリハロゲン化アルキレン(中でもポリハロゲン化ビニリデン)を用いて形成された高分子壁である場合が好ましい。
【0040】
次に、本発明のマイクロカプセルを製造する製造方法について説明する。
本発明のマイクロカプセルは、反応性シリル基を有する有機重合体を含む第1の有機溶液中に、芯物質と「反応性シリル基を有する有機重合体」を架橋硬化させる架橋硬化触媒とを含むコア材を分散し、分散された前記コア材を覆うようにシロキサン構造を有する第1のカプセル壁を形成することにより、前記芯物質を少なくとも内包するコア粒子が分散されたプレエマルジョンを調製する工程(以下、「プレエマルジョン調製工程」ということがある。)と、第1の有機溶液中の「反応性シリル基を有する有機重合体」に対して非相溶性の第2の有機溶液中に、前記プレエマルジョンと「反応性シリル基を有する有機重合体」を架橋硬化させる架橋硬化触媒とを加えて分散し、第2の有機溶液中の分散粒子を覆うようにシロキサン構造を有する第2のカプセル壁を形成することにより、多重壁構造が分散されたエマルジョンを形成する工程(以下、「エマルジョン形成工程」ということがある。)と、を設けて構成されたものである。
【0041】
本発明のマイクロカプセルの製造方法は、必要に応じて、更に、ゾルゲル反応とは異なる重合反応工程(例えば、反応性シリル基を有する有機重合体を含む第1の有機溶液中に3−トリエトキシシリルプロピルアクリレートを加えて、ゾル−ゲル反応後に光や熱重合などで、ポリアクリレート部分を設けるような高分子合成工程など)等の他の工程を設けて構成することができる。
【0042】
本発明のマイクロカプセルの製造方法においては、反応性シリル基が結合した有機重合体を、該有機重合体とは非相溶性の有機溶液中に存在させてゾル−ゲル反応を進行させることにより、芯物質の内包に過剰な水を介在させる必要がなくなり、酸素−珪素間架橋反応でポリマー同士を連結させてカプセルを形成することができる。これにより、芯物質となる芯物質を、芯物質が影響を受けやすい物質、例えば水分との反応性が高い等の場合には水分との接触を回避しつつ、水分移動しにくい水分非浸透性のカプセル壁に内包し、長期間安定に保管できるマイクロカプセルが得られる。
【0043】
−プレエマルジョン調製工程−
プレエマルジョン調製工程は、反応性シリル基を有する有機重合体を含む第1の有機溶液中に、芯物質と「反応性シリル基を有する有機重合体」を架橋硬化させる架橋硬化触媒とを含むコア材を分散し、分散されたコア材を覆うようにシロキサン構造を有する第1のカプセル壁を形成することにより、前記芯物質を少なくとも内包するコア粒子が分散されたプレエマルジョンを調製する。
【0044】
プレエマルジョン調製工程では、第1の有機溶液中にコア材を分散させる必要があることから、第1の有機溶液とコア材とが互いに非相溶性を示す関係にあることが必要とされる。例えば芯物質として、水分との反応性が高い物質、吸湿・吸水性物質、水分存在下で変化しやすい物質など、水分との接触を回避する必要のある物質を用いた系では、コア材は疎水性溶液として調製され、コア材と第1の有機溶液とはともに油性同士となるが、例えば両者に含有する溶剤間の極性に差を設ける等して非相溶性を保つ必要がある。
【0045】
ここで、「非相溶性」とは、2種類の液体様物質に対して剪断力を与える攪拌操作を行なった場合でも、その界面が安定的に存在する状態が継続して認められることをいう。具体的には、「非相溶性」を判断する観察方法の一例として以下を示す。コア材と第1の有機溶液とを同一容器内に混ぜ合わせて(100ml)100℃下、ホモジナイザー(日本精機(株)製)を用いて回転数1000r.p.m.以上で10分間撹拌した後、30分間静置する。これを目視又は光学顕微鏡にて観察した場合に、屈折率差異を確認できる界面が安定的に存在する、あるいは液滴界面で光散乱して混合物が濁っている状態が継続して認められる場合を非相溶と認める。
【0046】
コア材と第1の有機溶液との関係を非相溶性に調整するには、例えば、両者の調製に用いる溶媒の極性を異ならせることにより行なうことができる。この場合、コア材と第1の有機溶液とが非相溶性である組み合わせ例としては、両者が含有する溶媒の組み合わせとして、例えば、疎水性有機溶媒と水、酢酸エチルとシリコーンオイル、あるいはテトラヒドロフラン、アクリロニトリル、酢酸ブチル、酢酸エチル等の極性溶媒とシクロヘキサン、トルエン、塩化メチレン、クロロホルム等の非極性溶媒、などが挙げられる。
【0047】
プレエマルジョンの調製は、多孔性膜乳化法、オリフィス法、超音波乳化法、超音波微粒液滴形成装置から連続相に落下させる方法、マイクロチャンネル乳化法を用いて一方の液の微少粒子を作成し他方の液中に押し出す方法、磁場や電場、オリフィスの振動、あるいは液体や気体などによるフローなど、外部から加えた応力によって剪断が与えてられることにより液滴を形成する方法、分岐したマイクロ流路を用いた液滴形成法、ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ナノマイザー、Coflowing Streamのような複数の流体を組み合わせた液滴形成法など、既知の機器を用いて行なえる。
【0048】
[第1の有機溶液]
本工程では、コア材の分散に先立ち、反応性シリル基を有する有機重合体を含む第1の有機溶液を調製する。第1の有機溶液は、反応性シリル基を有する有機重合体を溶解し得る有機溶剤を用いて調製することができる。
【0049】
第1の有機溶液は、反応性シリル基を有する有機重合体を含んでなり、一般には有機溶剤を含み、必要に応じて、更に界面活性剤や、反応性シリル基含有有機物(分子量500以下)、あるいは反応性シリル基を有する有機重合体と相溶性の高い高分子体等の、第1のカプセル壁の硬化を阻害しない物質、等を用いて構成することができる。
【0050】
(反応性シリル基を有する有機重合体等)
前記反応性シリル基は、ケイ素原子に結合した水酸基及び/又は加水分解性基を含有し、湿気や架橋剤の存在下、必要に応じて触媒などを使用することにより、縮合反応を起こしシロキサン結合を形成することで架橋し得るシリル基含有基である。
【0051】
反応性シリル基を有する有機重合体中に含まれる反応性シリル基の数としては、ポリマー主鎖あたり2個以上である。また、反応性シリル基の結合位置は、主鎖末端、主鎖途中、側鎖(グラフト体)中、側鎖末端のいずれでもよいが、架橋反応性の点で、ポリマー主鎖末端、側鎖末端が好ましい。
【0052】
反応性シリル基の具体例を下記に示す。但し、本発明においては、これらに限定されるものではない。
【0053】
【化1】

【0054】
上記の具体例中、炭素数1〜5のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、炭素数2〜5のアルケニル基の例としては、エチレニル基、プロペニル基、ビニル基、アリル基等が挙げられ、炭素数2〜5のアシル基の例としては、アセチル基、イソブチリル基、メトキシアルキリル基、アクリル基、メタクリル基等が挙げられる。また、ハロゲン原子の例としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0055】
前記反応性シリル基を有する有機重合体は、反応性シリル基を有するモノマーを単独重合又は複数種を共重合することにより、あるいは高分子化合物に反応性シリル基を導入することにより得られる。
【0056】
高分子化合物に反応性シリル基を導入する場合、高分子化合物としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、炭素数1〜12の分岐アルキル基を有するポリエチレンもしくはポリプロピレン(アルキル基は、例えば、エチル基、n−ブチル基、ヘキシル基、イソブチル基、及びイソヘキシル基が好ましい。)、末端水酸基ポリイソプレン、炭素数1〜12の分岐アルキル基を有するポリブチレン(アルキル基は、例えば、エチル基、n−ブチル基、ヘキシル基、イソブチル基、及びイソヘキシル基が好ましい。)などのポリアルキレンや、ポリハロゲン化アルキレン(ハロゲン元素はフッ素もしくは塩素が好ましい)、ポリアルコキシビニル(アルコキシ部位は、例えば、エトキシ、n−ブトキシ、ヘキシロキシ、イソブトキシ、及びイソヘキシロキシが好ましい。)、ポリビニルアシレート(アシレート部位は、アセテート、プロピオネート、ブチレートが好ましい。)、ポリ(メタ)アクリル酸、炭素数1〜12のアルキルポリ(メタ)アクリレート及びこれらのコポリマー(例えば、メタクリル酸とメタクリル酸エステルとのコポリマーとして、Rohm Pharma社製のEudragit(商品名))、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリマレイン酸、ポリマレイン酸イミド、ポリマレイン酸無水物、アルキルポリシアノアクリル酸の炭素数1〜12のアルキルエステル(アルキル部位は、エチル、n−ブチル、ヘキシル、イソブチル、及びイソヘキシルが好ましい。)、ポリビニルスルホン、ポリシアノアクリル酸、ポリ−L−ラクチド、ポリカプロラクトン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニルと酢酸ビニルとのコポリマー、塩化ビニルと酢酸ビニルとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとのコポリマー、ポリビニルアセトフタレート、セルロースアセトフタレート、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、ポリ(エチレン/酢酸ビニル)、ポリアクリロニトリル、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(炭素数1〜4のヒドロキシアルキルメタクリレート)セルロース誘導体、ポリスチレン及びそのコポリマー、スチレン/アルキルアルコールオリゴマー、酢酸ビニル及び無水マレイン酸のターポリマー、及びこれらの混合物を挙げることができる。
中でも、低透湿性の観点においては、前記ポリアルキレン、前記ポリハロゲン化アルキレン(中でもポリハロゲン化ビニリデン)が好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、炭素数1〜12の分岐アルキル基を有するポリブチレン、ポリフッ化ビニリデンがより好ましい。
【0057】
高分子化合物への反応性シリル基の導入は、例えば、通常の有機合成手法による共有結合生成反応(アルキル基化、エステル化、アミド化、ウレタン化、ハイドロシリレーションなど)により行なえる。
【0058】
反応性シリル基を有する有機重合体の主鎖を構成する高分子化合物は、分子量が増大するほど高粘度でハンドリングしにくく、液滴形成に適さないことから、重量平均分子量が500〜500,000であることが好ましく、より好ましくは1,500〜100,000である。
【0059】
反応性シリル基を有する有機重合体が、前記高分子化合物に反応性シリル基を導入してなるものである場合、高分子化合物が複数種のモノマー成分の共重合により構成されるときには、得られる高分子化合物は、ランダムコポリマー、ブロックポリマー、グラジェントコポリマー、グラフトポリマー(櫛型、スターバースト型など)などのいずれの形態であってもよい。本発明においては、これらに特に制限されるものではない。
【0060】
また、本発明においては、コア材をマイクロカプセル中に内包する目的に応じ、カプセル壁の機械的強度などの物性を調整するために、反応性シリル基を有する低分子化合物を適宜混合して架橋反応に供するようにしてもよい。
【0061】
前記反応性シリル基を有する低分子化合物としては、例えば、1,2−(ビストリエトキシシリル)エタン、1,6−(ビストリエトキシシリル)ヘキサンなどの複数の反応性シリル基を有して架橋に参加できる化合物類などを挙げることができる。低分子化合物の含有比率としては、「反応性シリル基を有する有機重合体」に対して、0.5〜5質量%の範囲が好ましい。
【0062】
前記反応性シリル基を有する有機重合体の第1の有機溶液中における含有量としては、第1の有機溶液の全質量の2〜40質量%の範囲が好ましく、5〜30質量%の範囲がより好ましい。該有機重合体の含有量は、2質量%以上であるとカプセル壁の形成性が良好であり、40質量%以下であると粒径制御の点で有利である。
【0063】
(有機溶剤)
第1の有機溶液に用いる有機溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、アクリロニトリル、酢酸ブチル、酢酸エチル等の極性溶媒、並びにシクロヘキサン、トルエン、塩化メチレン、クロロホルム等の非極性溶媒などが挙げられ、反応性シリル基を有する有機重合体の溶解性及び後述のコア材との非相溶性の観点から選択することができる。
【0064】
前記有機溶剤の第1の有機溶液中における含有量としては、特に制限はなく、所望により適宜選択することができる。
【0065】
第1の有機溶液には、上記成分以外に、必要に応じて、更に界面活性剤、反応性シリル基含有有機物(分子量500以下)、あるいは反応性シリル基を有する有機重合体と相溶性の高い高分子体等の、第1のカプセル壁の硬化を阻害しない物質などの他の成分を含有してもよい。
【0066】
前記界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤が好ましく、その詳細については後述のコア材に使用可能なものを使用することができ、好ましい範囲も同様である。
界面活性剤の第1の有機溶液中における含有量としては、第1の有機溶液の全質量に対して、0.01〜5質量%の範囲が好ましく、0.1〜2質量%の範囲がより好ましい。第1の有機溶液中の界面活性剤の含有量が前記範囲内であると、界面安定性の点で好ましい。
【0067】
[コア材]
前記第1の有機溶液に分散されるコア材は、芯物質と、前記反応性シリル基を有する有機重合体を架橋硬化させる架橋硬化触媒とを少なくとも含み、必要に応じて、更に界面活性剤、脂溶性の油、ポリマー成分、保管と放出を目的とする芯物質等の成分を用いて構成することができる。
なお、芯物質については、既述した通りである。
【0068】
(架橋硬化触媒)
架橋硬化触媒は、少なくとも前記「反応性シリル基を有する有機重合体」を架橋硬化させるものであり、反応性シリル基を有する低分子化合物を架橋するものであってもよい。架橋硬化触媒としては、有機酸、無機酸、ルイス酸、周期律表のIIIb、IVb、Vb、IVa、Va族金属含有の有機化合物が挙げられる。
【0069】
前記有機酸としては、酢酸、トリハロ酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸などが挙げられ、中でもメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸が好ましい。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0070】
前記無機酸としては、塩酸、硫酸などが挙げられる。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0071】
前記ルイス酸としては、二酸化硫黄、トリフルオロホウ素エーテルコンプレックス、ランタノイド金属有機酸塩などが挙げられる。中でも、トリフルオロホウ素エーテルコンプレックスが好ましい。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0072】
前記周期律表のIIIb、IVb、Vb、IVa、Va族金属含有の有機化合物としては、金属元素として、チタン、バナジウム、錫、ビスマス、ジルコニアなどが挙げられ、また、有機化合物部位として、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、ブトキシなどのアルコキシ部位、アセチロキシ、プロパノイロキシ、ピバロイロキシ、オクチロイロキシなどのアシロキシ部位、アセチルアセトネートなどが挙げられる。中でも、有機化合物としては、テトライソプロポキシチタン等のチタン化合物類、ビスマスジオクチレート等のビスマス化合物類、ジブチル錫ジオクチレート、ブチル錫トリオクチレート等の錫化合物類などが好ましい。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
中でも、前記架橋硬化触媒は、取扱い性の点で、メタンスルホン酸、チタン化合物類、ビスマス化合物類が好ましい。
【0073】
本発明においては、前記具体例(1)〜(5)のいずれかで表される反応性シリル基を有するポリアルキレン及び/又はポリハロゲン化アルキレン(中でもポリハロゲン化ビニリデン)から選ばれる1種又は2種以上と、メタンスルホン酸、チタン類、及びビスマス類から選ばれる1種又は2種以上との組み合わせ態様が好ましい。
【0074】
前記架橋硬化触媒は、前記第1の有機溶液中に含まれる反応性シリル基を有する有機重合体や有機溶剤の種類に応じて選択すればよく、コア材が第1の有機溶液中に投入された後に架橋硬化触媒が第1の有機溶液中に拡散し易くならないように選択することが好ましい。
【0075】
架橋硬化触媒のコア材中における含有量としては、コア材の全質量に対して、0.1〜5質量%の範囲が好ましい。架橋硬化触媒の含有量は、0.1質量%以上であるとゾル−ゲル反応によるシロキサン結合の形成で架橋されてなるカプセル壁の形成性が良好であり、5質量%以下であると架橋硬化触媒の第1の有機溶液中への拡散を少なく抑えることができる。
【0076】
(界面活性剤)
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤を好適に用いることができる。非イオン性界面活性剤を含有することにより、液滴界面の安定化を達成することができる。また、本発明の効果を損なわない範囲で、カチオン性、アニオン性、又は両性の界面活性剤を含有してもよい。
【0077】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、2〜50個のエチレンオキシド単位及び炭素数12〜22の少なくとも1つのアルキル鎖(エーテルのためのアルコール又はエステルのための酸のアルキル鎖)を含むエトキシル化脂肪エーテル又はエトキシル化脂肪エステル、ソルビタンのオキシエチレン化又は非オキシエチレン化脂肪酸エステル(少なくとも1つのソルビタン単位、及びソルビタン単位がオキシエチレン化されているときには2〜50個のエチレンオキシド単位及び炭素数12〜22個の少なくとも1つのアルキル鎖(脂肪酸基)を含む;例えば、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシチエレンペンタエリスリトール脂肪酸エステルなど)、糖脂肪エステル又は糖脂肪エーテル(例えば、スクロース、マルトース、グルコース、及びフラクトースの炭素数8〜22の脂肪酸エステル、メチルグルコース、アルキルポリグルコシドの炭素数14〜22の脂肪酸エステル、及びこれらの混合物から選ばれ、アルキル鎖は飽和又は不飽和のいずれでもよく、かつ分岐又は非分岐のいずれでもよい。)、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマー(例えば、特にBASF社製のPluronic又はLutrol(商品名)又はUniqema社製のSymperonic(商品名))、ホスファチジルコリンの構造を有する水素化又は非水素化大豆又は卵レシチン、1〜10個のグリセロール構造を有するグリセロール又はポリグリセロールと炭素数12〜22の少なくとも1つのアルキル鎖(エステルのための酸又はエーテルのためのアルコールのアルキル鎖)とのアルキルエステル又はエーテル(例えば、グリセロールモノオレエート、ジグリセリルモノステアレート、デカグリセリルジイソステアレート、グリセリルシトレート/ラクテート/リノレート/オレエート混合物)、脂肪酸又は脂肪アルコール、カルボン酸及びグリセロールの混合エステル(例えば、エトキシル化脂肪アルコール、エトキシル化ステアレート、PEG 400イソステアレート)、少なくとも1つのオキシエチレン鎖及び/又はオキシプロピレン鎖を含むシリコーン系界面活性剤、及びこれらの混合物、等が好適に挙げられる。
【0078】
中でも、好ましくは、HLB2〜10の非イオン界面活性剤である。HLB(Hydrophile-Lipophile Balance)は、親水・疎水バランスを示し、界面活性剤の水と油(水に不溶性の有機化合物)への親和性の程度を表すものである。HLB値(親水性‐親油性バランス)は通常、エマルジョンの形成に有利なように調節されてよい。
【0079】
界面活性剤のコア材中における含有量としては、コア材の全質量に対して、0.05〜25質量%の範囲が界面安定化の点で好ましい。
【0080】
界面活性剤は、予めコア材中に芯物質と共に混合してもよく、あるいは前記第1の有機溶液中に混合してもよく、後述の第2の有機溶液に添加してもよい。また、分散を安定化させるために、コア材、第1の有機溶液、及び第2の有機溶液のいずれか2つ以上に添加するようにしてもよい。
【0081】
(脂溶性の油)
コア材は、硬化触媒や保管放出される芯物質を損なわない限り、脂溶性の油を含有することができる。
【0082】
(ポリマー成分)
コア材は、硬化触媒や保管放出される芯物質を損なわず、また、第1のカプセル壁の形成過程に障害を与えない限り、ポリマー成分を含んでもよい。
【0083】
コア材の第1の有機溶液中への分散によりプレエマルジョンを調製する場合、既存の乳化法を用いて段階的にあるいは同時に形成されてよく、また、プレエマルジョンの形成は、多孔性膜乳化法、オリフィス法、超音波乳化法、超音波微粒液滴形成装置から連続相に落下させる方法、マイクロチャンネル乳化法を用いて一方の液の微少粒子を作成し他方の液中に押し出す方法、マイクロ流路分岐乳化法、ホモジナイザー、高圧保持文字ナイザー、ナノマイザー、など既知の機器を用いて行なえる。
【0084】
コア材の分散後は、コア材中の架橋硬化触媒と反応性シリル基を有する有機重合体の反応性シリル基との反応でシロキサン結合が形成されて架橋が行なわれることにより、分散されたコア材を覆うようにシロキサン構造を有する第1のカプセル壁が形成される。このとき、芯物質への影響が許される場合には、反応性シリル基のアルコキシ基離脱を促進する目的で、架橋反応を促進するために加熱してもよい。具体的には、コア材投入後の分散時における第1の有機溶液の温度が20〜70℃の温度域となるように温調されてもよい。加熱は、全体の加熱、加熱蒸気の投入もしくは加熱された気体・液体中への投入などにより行なえる。また、架橋硬化触媒と反応性シリル基を有する有機重合体とを接触させる場合、架橋硬化触媒を含む液滴と第1の有機溶液とを液中又は気相中で衝突させるなどの方法を採ってもよい。
【0085】
以上のようにして、少なくとも芯物質が内包されたコア粒子が第1の有機溶液中に分散されたプレエマルジョンが形成される。このとき、コア粒子中には、架橋硬化触媒が残存して含有されてもよい。
【0086】
−エマルジョン形成工程−
エマルジョン形成工程は、第1の有機溶液中の「反応性シリル基を有する有機重合体」に対して非相溶性の第2の有機溶液中に、前記プレエマルジョン調製工程で調製されたプレエマルジョンと、「反応性シリル基を有する有機重合体」を架橋硬化させる架橋硬化触媒とを加えて分散し、第2の有機溶液中の分散粒子を覆うようにシロキサン構造を有する第2のカプセル壁を形成することにより、多重壁構造が分散されたエマルジョンを形成する。架橋硬化触媒は、プレエマルジョンの投入前もしくは投入と同時に、又はプレエマルジョンの投入後に加えることができる。
【0087】
エマルジョン形成工程では、第2の有機溶液中にプレエマルジョンを投入して分散させ、これらの界面で反応性シリル基を有する有機重合体を架橋硬化させる必要があることから、第2の有機溶液とプレエマルジョンとが互いに非相溶性を示す関係にあって、かつ第1の有機溶液中の「反応性シリル基を有する有機重合体」が第2の有機溶液に対して非相溶性であることが必要とされる。この場合、第1の有機溶液と第2の有機溶液とは、極性に差を設ける等して非相溶性を保つ必要がある。
なお、「非相溶性」とは、前記プレエマルジョン調製工程における場合と同義である。非相溶な関係は、プレエマルジョンの第1の有機溶液と第2の有機溶液とに用いる溶媒の極性の選択により形成できる。
【0088】
また、プレエマルジョンと第2の有機溶液とが非相溶性である組み合わせ例としては、プレエマルジョンの第1の有機溶液と第2の有機溶液とが各々含有する溶媒の組み合わせとして、例えば、疎水性有機溶媒と水、酢酸エチルとシリコーンオイル、あるいはDMSO(ジメチルスルホキシド)やDMF(ジメチルホルムアミド)等の極性溶媒とシクロヘキサンやベンゼン等の非極性溶媒、などが挙げられる。
【0089】
[第2の有機溶液]
本工程では、プレエマルジョンの分散に先立ち、第2の有機溶液を準備する。第2の有機溶液は、有機溶剤を含み、架橋硬化触媒が含有されるほか、必要に応じて、更に界面活性剤、非相溶性を支援するような高分子等を用いて構成することができる。
【0090】
第2の有機溶液は、例えば、「反応性シリル基を有する有機重合体」を架橋硬化させる架橋硬化触媒を溶解し得る有機溶剤を用いて調製することができる。架橋硬化触媒の詳細については、前記コア材の項で既述した通りであり、好ましい態様も同様である。また、有機溶剤の詳細及び好ましい態様は、第1の有機溶液における場合と同様である。
【0091】
第2の有機溶液には、前記プレエマルジョンの投入前もしくは投入と同時に、又はプレエマルジョンの投入後の分散中又は分散後に、架橋硬化触媒が加えられる。プレエマルジョンの第1の有機溶液は、反応性シリル基を有する有機重合体を含むため、架橋硬化触媒が添加されることで、プレエマルジョンの分散粒子と第2の有機溶液との界面でゾル−ゲル反応が進行して架橋し、プレエマルジョン粒子を覆うように第2のカプセル壁が形成される。
【0092】
架橋硬化触媒の第2の有機溶液中における含有量としては、第2の有機溶液の全質量に対して、0.1〜5質量%の範囲が好ましい。架橋硬化触媒の含有量は、0.1質量%以上であるとゾル−ゲル反応によるシロキサン結合の形成で架橋されてなるカプセル壁の形成性が良好であり、5質量%以下であると凝集抑制の点で有利である。
【0093】
プレエマルジョンの第2の有機溶液中への分散により多重壁構造粒子を分散形成する場合、既存の乳化法を用いて段階的にあるいは同時に形成されてよく、また、多重壁構造が分散されたエマルジョンの形成は、多孔性膜乳化法、オリフィス法、超音波乳化法、超音波微粒液滴形成装置から連続相に落下させる方法、マイクロチャンネル乳化法を用いて一方の液の微少粒子を作成し他方の液中に押し出す方法、マイクロ流路分岐乳化法、ホモジナイザー、高圧保持文字ナイザー、ナノマイザー、など既知の機器を用いて行なえる。
【0094】
プレエマルジョンの分散後は、第2の有機溶液中の架橋硬化触媒とプレエマルジョン(第1の有機溶液)中の反応性シリル基を有する有機重合体の反応性シリル基との反応でシロキサン結合が形成されて架橋が行なわれることにより、分散されたプレエマルジョンを覆うようにシロキサン構造を有する第2のカプセル壁が形成される。このとき、芯物質への影響が許される場合には、反応性シリル基のアルコキシ基離脱を促進する目的で、架橋反応を促進するために加熱してもよい。具体的には、プレエマルジョン投入後の分散時における第2の有機溶液の温度が20〜70℃の温度域となるように温調されてもよい。加熱は、投入後の液全体の加熱、加熱蒸気の投入もしくは加熱された気体・液体中への投入などにより行なえる。また、架橋硬化触媒と反応性シリル基を有する有機重合体とを接触させる場合、架橋硬化触媒を含む液滴と第1の有機溶液とを液中又は気相中で衝突させるなどの方法を採ってもよい。
【実施例】
【0095】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0096】
(実施例1)
末端水酸基ポリイソプレン水添体(出光興産(株)製のエポール)10部と、トリエトキシシリルプロピルイソシアネート2部と、ジブチル錫ジオクチレート0.25部とをテトラヒドロフラン中で加熱還流し、溶媒を留去して、トリエトキシシリル基末端のポリイソプレン水添体A(重量平均分子量4000)を得た。
【0097】
次に、2−ジフェニルアミノ−3−メトキシ−6−ジエチルアミノフルオラン(染料)0.5部と、菜種油5部と、メタンスルホン酸0.14部と、SPAN83(東京化成(株)製のセスキオレイン酸ソルビタン(非イオン性界面活性剤);以下同様)0.1部とを均一に混合し、混合液(コア材)を調製した。得られた混合液(コア材)を、上記のトリエトキシシリル基末端のポリイソプレン水添体A5部、シクロヘキサン10部、ビストリメトキシシリルエタン1部、及びSPAN83(セスキオレイン酸ソルビタン)0.1部を均一に混合した液に、ダブルオリフィス(内管径200μm、外管径1.2mm)を介して添加し、プレエマルジョンを調製した。このプレエマルジョンを、ジメチルシリコーンオイル(SH200、ダウコーニング社製)100部中にスリーワンモータ(ヘイドン(株)製)にて200r.p.m.で攪拌しながら滴下した。その後、これにメタンスルホン酸の0.1%酢酸エチル溶液5部を徐々に滴下し、攪拌を継続することにより、多重壁構造が分散されたエマルジョンを得た。このようにして、マイクロカプセルが分散されたマイクロカプセル液を作製した。
その後、得られたマイクロカプセル液を濾過することにより、体積平均径460μmのマイクロカプセルを濾収し、ヘキサン洗浄した。得られたマイクロカプセルを潰すと、カプセル内部から染料液が漏洩するのが確認された。
なお、マイクロカプセルの体積平均径は、(株)堀場製作所製の粒度分布測定装置LA910を用いて測定した(以下、同様である)。
【0098】
(実施例2)
実施例1において、2−ジフェニルアミノ−3−メトキシ−6−ジエチルアミノフルオラン0.5部を酢酸リナリル0.1部に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、体積平均径490μmのマイクロカプセルが分散されたマイクロカプセル液を作製した。
得られたマイクロカプセルを潰すと、カプセル内部から香料液が漏洩するのが確認された。
【0099】
(実施例3)
特許3949385号に記載のフタロシアニン染料(一般式(I)で表されるフタロシアニン化合物)0.1%水溶液2部と、テトライソプロポキシチタンのイソプロピルアルコール溶液0.04部と、プロピオン酸0.5部とを均一に混合し、混合液(コア材)を得た。得られた混合液(コア材)を、実施例1で得たトリエトキシシリル基末端のポリイソプレン水添体A5部、シクロヘキサン10部、ビストリメトキシシリルエタン1部、及びSPAN83(セスキオレイン酸ソルビタン)0.1部を均一に混合した液に実施例1と同様に添加してプレエマルジョンを調製した。
そして、得られたプレエマルジョンを用い、実施例1と同様にして、体積平均径370μmのマイクロカプセルが分散されたマイクロカプセル液を作製し、マイクロカプセルを得た。得られたマイクロカプセルを潰すと、カプセル内部から染料液が漏洩するのが確認された。
【0100】
(実施例4)
2−ジフェニルアミノ−3−メトキシ−6−ジエチルアミノフルオラン(染料)0.5部と、菜種油5部と、メタンスルホン酸0.13部とを均一に混合し、混合液(コア材)を得た。得られた混合液(コア材)を、実施例1で得たトリエトキシシリル基末端のポリイソプレン水添体A5部、シクロヘキサン10部、ビストリメトキシシリルエタン1部、及びSPAN83(セスキオレイン酸ソルビタン)0.1部を均一に混合した液に実施例1と同様に添加してプレエマルジョンを調製した。このプレエマルジョンを、メタンスルホン酸0.5質量%、ソルビタンモノオレート0.1質量%になるように添加した流動パラフィン100部中に実施例1と同様に200r.p.m.で攪拌しながら滴下した。その後、これにメタンスルホン酸の0.1質量%酢酸エチル溶液5部を徐々に滴下し、攪拌を継続することにより、多重壁構造が分散されたエマルジョンを得た。このようにして、体積平均径480μmのマイクロカプセルが分散されたマイクロカプセル液を作製した。その後、得られたマイクロカプセル液を濾過することによりマイクロカプセルを濾収し、ヘキサン洗浄した。
得られたマイクロカプセルを潰すと、カプセル内部から染料液が漏洩するのが確認された。
【0101】
(実施例5)
実施例1において、コア材の調製に用いた菜種油5部を、エチルシアノメタクリレート1部、シアノ酢酸エチル3部、及びポリ酢酸ビニル塩化ビニル共重合体1部に代え、さらにコア材の調製に用いたメタンスルホン酸0.14部を0.35部に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、体積平均径280μmのマイクロカプセルが分散されたマイクロカプセル液を作製し、マイクロカプセルを得た。
得られたマイクロカプセルを潰すと、カプセル内部から染料液が漏洩するのが確認された。
【0102】
(実施例6)
特許3949385号に記載のフタロシアニン染料(一般式(I)で表されるフタロシアニン化合物)0.1質量%水溶液2部と、テトライソプロポキシチタンのイソプロピルアルコール溶液0.04部と、メタンスルホン酸0.14部とを均一に混合し、混合液(コア材)を得た。
重合体(カネカポリアクリレート SA−100A、鐘淵化学工業社製)6部と、1,2−(ビストリエトキシシリル)エタン2部とをヘキサン15部に加え、SPAN83(セスキオレイン酸ソルビタン)0.2部を均一に混合した液に、上記で得られた混合液(コア材)を、実施例1と同様に添加してプレエマルジョンを調製した。得られたプレエマルジョンを用い、実施例1に記載のプレエマルジョンの代わりに用いたこと以外は、実施例1と同様にして、体積平均径250μmのマイクロカプセルが分散されたマイクロカプセル液を作製し、マイクロカプセルを得た。
得られたマイクロカプセルを潰すと、カプセル内部から染料液が漏洩するのが確認された。
【0103】
(実施例7)
特開2007−154009号公報の記載にしたがって、アルケニル基を有するポリブチルメタクリレート重合体(重量平均分子量3万)を得た。ジメトキシメチルシランの代わりにトリエトキシシランを用いた以外は、該公報の記載にしたがって、末端に反応性シリル基を有するポリブチルメタクリレート重合体を得た。
実施例6において、重合体(カネカポリアクリレート SA−100A)に代えて、末端に反応性シリル基を有するポリブチルメタクリレート重合体を用い、ヘキサン15部の代わりにシクロヘキサン8部、シクロヘキサノン6部、及びセバシン酸ジオクチル1部の混合液を用いたこと以外は、実施例6と同様にして、プレエマルジョンを調製し、体積平均径200μmのマイクロカプセルを得た。
得られたマイクロカプセルを潰すと、カプセル内部から染料液が漏洩するのが確認された。
【0104】
(比較例1)
実施例1において、プレエマルジョンの調製に用いたトリエトキシシリル基末端のポリイソプレン水添体A5部に代えて、1,2−(ビストリエトキシシリル)エタン、メチルエトキシシラン、及びフェニルトリエトキシシランを各2部加え、実施例1と同様の操作を行なってプレエマルジョンを調製したが、分散液の安定性が全く得られず、プレエマルジョンは得られなかった。したがって、シロキサン結合を含有する壁を有するマイクロカプセルが分散されたマイクロカプセル液も得られなかった。
【0105】
以下に、上記の実施例及び比較例における詳細を示す。
なお、「カプセル壁全質量/カプセル粒子質量」の値は、顕微鏡を用いて画像からコア直径と粒子外径を計測し、得られた値から球体として算出したものである。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯物質が、反応性シリル基を有する有機重合体の該反応性シリル基の架橋硬化触媒による架橋反応で前記有機重合体が架橋されて成形された高分子壁により内包されたマイクロカプセル。
【請求項2】
前記高分子壁は、シロキサン構造を有する複数の層からなる多重壁構造を有し、
前記芯物質をシロキサン構造を有する第1のカプセル壁により内包するコア部が、シロキサン構造を有する第2のカプセル壁により少なくとも内包されたことを特徴とする請求項1に記載のマイクロカプセル。
【請求項3】
平均外径が5mm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のマイクロカプセル。
【請求項4】
粒子全質量中に占める第1のカプセル壁及び第2のカプセル壁の質量比率が5%以上であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のマイクロカプセル。
【請求項5】
反応性シリル基を有する有機重合体を含む第1の有機溶液中に、芯物質と前記有機重合体を架橋硬化させる架橋硬化触媒とを含むコア材を分散し、分散された前記コア材を覆うようにシロキサン構造を有する第1のカプセル壁を形成することにより、前記芯物質を少なくとも内包するコア粒子が分散されたプレエマルジョンを調製する工程と、
前記第1の有機溶液中の前記有機重合体に対して非相溶性の第2の有機溶液中に、前記プレエマルジョンと前記有機重合体を架橋硬化させる架橋硬化触媒とを加えて分散し、第2の有機溶液中の分散粒子を覆うようにシロキサン構造を有する第2のカプセル壁を形成することにより、多重壁構造粒子が分散されたエマルジョンを形成する工程と、
を有するマイクロカプセルの製造方法。
【請求項6】
第1のカプセル壁及び第2のカプセル壁中に含まれるシロキサン結合の総和は、前記第1の有機溶液中に含有された前記有機重合体中の0.05質量%以上の反応性シリル基が架橋反応したものであることを特徴とする請求項5に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項7】
前記反応性シリル基を有する有機重合体の少なくとも1種は、ポリエチレン、ポリプロピレン、炭素数1〜12の分岐アルキル基を有するポリエチレン、炭素数1〜12の分岐アルキル基を有するポリプロピレン、炭素数1〜12の分岐アルキル基を有するポリブチレン、ポリハロゲン化アルキレン、ポリアルコキシビニル、ポリビニルアシレート、ポリ(メタ)アクリル酸及び炭素数1〜12のアルキルポリ(メタ)アクリレート及びこれらのコポリマー、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリマレイン酸、ポリマレイン酸イミド、ポリマレイン酸無水物、アルキルポリシアノアクリル酸の炭素数1〜12のアルキルエステル、ポリビニルスルホン、ポリシアノアクリル酸、ポリ−L−ラクチド、ポリカプロラクトン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニルと酢酸ビニルとのコポリマー、塩化ビニルと酢酸ビニルとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとのコポリマー、ポリビニルアセトフタレート、セルロースアセトフタレート、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、ポリ(エチレン/酢酸ビニル)、ポリアクリロニトリル、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(炭素数1〜4のヒドロキシアルキルメタクリレート)セルロース誘導体、ポリスチレン及びそのコポリマー、スチレン/アルキルアルコールオリゴマー、酢酸ビニル及び無水マレイン酸のターポリマー、及びこれらの混合物に反応性シリル基が付加された化合物群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項8】
前記反応性シリル基を有する有機重合体の重量平均分子量が500〜500,000の範囲であることを特徴とする請求項5〜請求項7のいずれか1項に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項9】
前記多重壁構造粒子の平均外径が5mm以下であることを特徴とする請求項5〜請求項8のいずれか1項に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項10】
前記コア材、前記第1の有機溶液、及び前記第2の有機溶液の少なくとも1つが非イオン性界面活性剤を含み、該非イオン性界面活性剤の前記コア材、前記第1の有機溶液、又は前記第2の有機溶液中における含有量が、前記コア材、前記第1の有機溶液、又は前記第2の有機溶液の全質量に対して、それぞれ0.05〜25質量%であることを特徴とする請求項5〜請求項9のいずれか1項に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項11】
前記非イオン性界面活性剤が、2〜50個のエチレンオキシド及び炭素数12〜22の少なくとも1つのアルキル鎖(エーテルのためのアルコール又はエステルのための酸のアルキル鎖)を含むエトキシル化脂肪酸エーテル又はエトキシル化脂肪エステル、ソルビタンのオキシエチレン化又は非オキシエチレン化脂肪酸エステル、糖脂肪エステル又は糖脂肪エーテル、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマー、ホスファチジルコリンの構造を有する水素化又は非水素化大豆又は卵レシチン、1〜10個のグリセロール構造を有するグリセロール又はポリグリセロールと炭素数12〜22の少なくとも1つのアルキル鎖(エステルのための酸又はエーテルのためのアルコールのアルキル鎖)とのアルキルエステル又はエーテル、脂肪酸又は脂肪アルコール、カルボン酸とグリセロールとの混合エステル、少なくとも1つのオキシエチレン鎖及び/又はオキシプロピレン鎖を含むシリコーン系界面活性剤、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項10に記載のマイクロカプセルの製造方法。

【公開番号】特開2009−241044(P2009−241044A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−94265(P2008−94265)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】