説明

マイクロ化学チップ

【課題】所望の種類の細胞のみを、破壊することなく的確に捕捉することができ、捕捉された細胞の顕微鏡下での観察が容易である、マイクロ化学チップを提供すること
【解決手段】マイクロ化学チップは、特定の細胞を捕捉するためのものであり、基板と、該基板内に設けられたマイクロ流路を具備し、該マイクロ流路は細胞捕捉領域を有し、該細胞捕捉領域は、その深さ又は幅が、捕捉すべき細胞のサイズよりも小さく、かつ、細胞を破壊することなく挟み込むことができる寸法を有し、該細胞捕捉領域の表面には、捕捉すべき細胞表面上に発現している抗原と抗原抗体反応する抗体又はその抗原結合性断片が固定化されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞を捕捉するために用いられるマイクロ化学チップに関する。
【背景技術】
【0002】
がんの診断や研究、遺伝子の変異が関係するその他の様々な疾患の診断や研究等のために、個々の細胞を捕捉して検査することが提案されている。個々の細胞を捕捉することができれば、その細胞に対して例えばRCA法(in situ padlock probe rolling circle amplification)(非特許文献1)等を行うことにより、その細胞が、特定のがん遺伝子やSNPs等を有しているか否かを調べることができる。
【0003】
一方、マイクロ化学チップは、スライドガラス等の基板上に細い流路(マイクロ流路)を設けたチップであり、様々な化学分析や化学プロセスに用いることが近年、広く研究され、実用化もされている。個々の細胞を捕捉するために、マイクロ化学チップを用いることも提案されている。例えば、捕捉すべき細胞の表面上に発現する抗原に対する抗体を固定化した円柱状のピラーを、マイクロ流路内に分散して配置し、これらのピラーと衝突した目的の細胞を捕捉する方法が知られている(非特許文献2)。
【0004】
また、本願発明者らは先に、マイクロ流路中の一部の領域の深さを細胞のサイズよりも小さくして細胞を捕捉する方法を開示している(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】M. Nilson et al., Science, 265, 1994
【非特許文献2】S. Nagrath et al., Nature 450, 2007
【非特許文献3】The proceedings of the 14th International Conference on Miniaturized Systems for Chemistry and Life Sciences (μTAS2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献2記載のマイクロ化学チップを用いて細胞を捕捉し、RCA法を行って蛍光を蛍光顕微鏡で観察しようとすると、目的の細胞がなかなか見つからず、視野を変えながら細胞を探す必要があり不便であることがわかった。これは、流れを妨害しないように分散して配置されている複数のピラーのどのピラーに目的の細胞が捕捉されるか不明であり、また、細胞表面上の抗原とピラーに固相化された抗体との抗原抗体反応では適格に細胞を捕捉しにくいことが原因と考えられる。一方、非特許文献3記載の方法では、被検試料中に種々の細胞が含まれる際に所望の細胞のみを捕捉することが困難であり、また、破壊される細胞もかなり発生する。
【0007】
従って、本発明の目的は、所望の種類の細胞のみを、破壊することなく的確に捕捉することができ、捕捉された細胞の顕微鏡下での観察が容易である、マイクロ化学チップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者らは、鋭意研究の結果、マイクロ流路内に、深さ又は幅が、捕捉しようとする細胞のサイズよりも小さいが、細胞が流通しても破壊されない寸法を有する細胞捕捉領域を設けるとともに、この細胞捕捉領域の表面に、捕捉すべき細胞表面上に発現している抗原と抗原抗体反応する抗体を固定化することにより、目的の細胞のみを破壊することなく的確に捕捉することができ、かつ、細胞捕捉領域の寸法を、顕微鏡の一視野で観察できる程度の大きさにすることにより、捕捉した細胞を顕微鏡下で容易に観察できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、特定の細胞を捕捉するためのマイクロ化学チップであって、基板と、該基板内に設けられたマイクロ流路を具備し、該マイクロ流路は細胞捕捉領域を有し、該細胞捕捉領域は、その深さ又は幅が、捕捉すべき細胞のサイズよりも小さく、かつ、細胞を破壊することなく挟み込むことができる寸法を有し、該細胞捕捉領域の表面には、捕捉すべき細胞表面上に発現している抗原と抗原抗体反応する抗体又はその抗原結合性断片が固定化されているマイクロ化学チップを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、所望の種類の細胞のみを、破壊することなく的確に捕捉することができるマイクロ化学チップが初めて提供された。また、本発明のマイクロ化学チップにおいて、細胞捕捉領域の寸法を、顕微鏡の一視野で観察できる程度の大きさとすることにより、捕捉した細胞にRCA法を行った場合等、個々の細胞を顕微鏡で観察する際、容易に顕微鏡観察を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例で作製したマイクロ化学チップの模式図及びそれを用いて細胞を捕捉した結果の顕微鏡写真である。
【図2】本発明の実施例で測定された、本発明のマイクロ化学チップと、抗体を固定化していないマイクロ化学チップのマイクロ流路に、抗体に対応する表面抗原を発現する捕捉すべき細胞と、この抗原を発現していない捕捉すべき細胞ではない細胞の捕捉率と流速の関係を示す図である。
【図3】マイクロ流路に捕捉したHL-60細胞について行ったin situ RCA法の結果を示す図である。
【符号の説明】
【0012】
10 基板
12 マイクロ流路
14 ダム部
16 細胞捕捉領域
18 細胞捕捉領域に捕捉された細胞
【発明を実施するための形態】
【0013】
本願発明のマイクロ化学チップは、マイクロ流路中に後で詳細に説明する細胞捕捉領域を設けた点を特徴とし、その他の点では、公知のマイクロ化学チップと同様である。すなわち、本発明のマイクロ化学チップを構成する基板は、従来のマイクロ化学チップと同様、ガラスや、ポリジメチルシロキサンのようなシリコーンゴムで形成することができる。基板内にはマイクロ流路が設けられている。マイクロ流路の断面形状は、矩形や逆台形等、向かい合う辺が平行な多角形が好ましい。マイクロ流路の深さは、通常、30〜500μm程度、好ましくは30〜50μm程度である。また、マイクロ流路の幅は、通常、50〜1000μm程度、好ましくは100〜300μm程度である。マイクロ流路の長さは何ら限定されないが、通常、1cm〜6cm程度である。なお、マイクロ流路の上面は、通常のマイクロ化学チップと同様、透明なガラス板やプラスチック板で被覆されている。
【0014】
上記の通り、本発明のマイクロ化学チップでは、マイクロ流路に細胞捕捉領域が設けられている。細胞捕捉領域は、その深さ又は幅が、捕捉すべき細胞のサイズよりも小さくなっており、細胞捕捉領域を通過する細胞を、上面と下面又は両側面の間に挟み込むことができる。捕捉した細胞を顕微鏡下で観察する場合の容易さの観点から、深さを捕捉すべき細胞のサイズよりも小さくすることが好ましい。また、細胞捕捉領域の深さ又は幅(以下、簡便のため、細胞捕捉領域は、深さを細胞のサイズよりも小さい場合について記述するので「細胞捕捉領域の深さ又は幅」は「細胞捕捉領域の深さ」と記述する)は、細胞を破壊することなく挟み込むことができるサイズであり、好ましくは、捕捉すべき細胞のサイズの70%以上、100%未満、さらに好ましくは、70%以上90%以下である。ここで、「捕捉すべき細胞のサイズ」は、細胞が球形の場合にはその直径であり、球形以外の場合には、平行な2辺で細胞を挟んだ際に2辺の間の距離が最小となるように細胞を挟んだ際の2辺間の距離を意味する。従って、例えば、赤血球のような扁平な細胞の場合には、「細胞のサイズ」は、扁平な面を下にして細胞を載置した際の細胞の高さになる。細胞捕捉領域の深さが、捕捉すべき細胞のサイズの70%以上の場合には、多くの場合、細胞は破壊されずに変形して細胞捕捉領域内に進入することができる。もっとも、破壊ができるだけ起きないように、細胞の種類に応じて、70%以上〜100%未満の範囲内で適宜選択することができる。
【0015】
細胞捕捉領域の、細胞と接触する表面、すなわち、細胞捕捉領域の上面と下面には、捕捉すべき細胞表面上に発現している抗原と抗原抗体反応する抗体又はその抗原結合性断片が固定化されている。例えば、がん細胞を捕捉しようとする場合、そのがん細胞の表面抗原と抗原抗体反応する抗体又はその抗原結合性断片が固定化されている。このような細胞表面抗原の例として、転移性乳癌細胞(MCF-7株等)のEpCAM(Epithelial cell adhesion molecule)、同じく転移性乳癌細胞SKBR3株等のHER2等を例示することができるがこれらに限定されるものではない。また、抗体に代えて、抗体の抗原結合性断片、すなわち、抗体のFab断片やF(ab')2等を固定化してもよい。
【0016】
抗体又はその抗原結合性断片(以下、文脈からそうでないことが明らかな場合を除き、単に「抗体」と呼ぶ)を固相に固定化する方法自体は、免疫測定の分野で常用されており、周知である。基板がプラスチックの場合には、抗体の固定化は物理吸着でもよいが、共有結合により抗体を結合することが好ましい。共有結合により抗体を固相に結合する方法も周知であり、固相にアミノ基又はカルボキシル基を付与し、抗体のカルボキシル基又はアミノ基とアミド結合等により共有結合させることができる。例えば、ガラス基板の場合には、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)を作用させてアミノ基を固相に付与し、これを、カップリング試薬を介して抗体のC末端のカルボキシル基と共有結合させることができる。
【0017】
なお、本発明における「細胞捕捉領域」は、上記した寸法の深さを有し、かつ、上記した抗体が固相化されている領域を意味し、抗体が固定化されていない部分は、深さが上記した寸法であっても細胞捕捉領域とは呼ばない。細胞捕捉領域の平面的な寸法は、顕微鏡での観察が容易になるように、縦横いずれも500μm以下であることが好ましく、縦横いずれも50μm以上、500μm以下であることが好ましい。なお、細胞捕捉領域は、深さが浅くなるので、液の流通をできるだけ妨げないように、幅は、マイクロ流路の他の部分よりも広くすることが望ましい(深さが他の部分よりも浅く、幅が広い領域を便宜的に「ダム部」と呼ぶ)。ダム部の全部に抗体を固定化して細胞捕捉領域とすることもできるし、ダム部の一部にのみ抗体を固定化して細胞捕捉領域とすることもできる。なお、抗体は、細胞捕捉領域のみに固定化することが好ましいが、マイクロ化学チップ作製上の簡便さから、ダム部以外の流路にも抗体が固定化されていてもよい。この場合、ダム部以外の部分は、マイクロ流路の寸法による挟み込みがないため、細胞はそれほど抗体に結合されないので、実用上の問題はない。
【0018】
マイクロ化学チップを使用する際には、捕捉すべき細胞を含む被検試料液(細胞浮遊液)をマイクロ流路の一端からシリンジポンプ等により注入する。この際の流速は、できるだけ多くの細胞が破壊されることなく捕捉され、かつ、捕捉すべき細胞とサイズが同様な他の細胞も被検試料液中に含まれる場合には、できるだけ捕捉すべき細胞のみが捕捉されるように適宜設定する。流速は、通常、0.3〜6 mm/sec、好ましくは0.5〜4 mm/sec程度である。
【0019】
被検試料液が細胞捕捉領域に到達すると、目的の細胞は、細胞捕捉領域において、上面と下面の間に挟み込まれると共に、細胞表面の抗原が、細胞捕捉領域に固定化されている抗体と抗原抗体反応して細胞捕捉領域に捕捉される。一方、捕捉しようとしていない細胞は、そのサイズから細胞捕捉領域に入れないか、又は、入った場合でも抗体と結合しないために細胞捕捉領域を素通りする。これにより、所定の表面抗原を発現する目的の細胞だけが捕捉される。
【0020】
捕捉した目的の細胞は、in situ RCA法やFISH法等の周知の方法で検査することができる。これにより、がんの診断や研究、各種遺伝病の診断や研究、感染症の診断や研究、各種治療薬(抗癌剤等)が有効か否かの事前予測等を行うことができる。特に、本発明によれば、単一の細胞を捕捉することができるので、単一の細胞について、上記の診断や研究を行うことができる。また、in situ RCA法等によれば、単一分子を検出できるので、本発明のマイクロ化学チップを用いることにより単一細胞中の単一分子を検出することができる。これらの検査を行う場合、検査に必要な試薬類も、マイクロ流路の一端から注入して供給することができる。例えば、in situ RCA法を行う場合、細胞を上記の通り捕捉した後、必要な試薬を順次マイクロ流路の一端からシリンジポンプ等により注入して供給することができる。in situ RCA法自体は周知であり、非特許文献3にも記載されており、下記参考例にも詳しく記載されている。
【0021】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0022】
1.マイクロ化学チップの作製
図1に模式的に示すマイクロ化学チップを作製した。図1中、10はガラス基板、12はマイクロ流路、14がダム部、16がダム部に設けられた細胞捕捉領域、18は細胞捕捉領域に捕捉された細胞である。本実施例では、マイクロ流路の長さが60mm、幅が0.2mm、深さが30μmであり、ダム部の長さが10mm、幅が500μm、深さが16μmである。このマイクロ化学チップは具体的には次のようにして作製した。材料は3x7 cm ホウケイ酸ガラス(テンパックスまたはパイレックス(登録商標))である。上板は厚さ0.7 mmで、フォトリソグラフィーによるパターン形成とフッ化水素酸によるウェットエッチングにより流路を加工し、さらに溶液導入用の孔をドリルで作製している。下板は厚さ0.2 mmのガラスを使用している。上板と下板をパイレックス(登録商標)は650℃、 テンパックスは 635℃で5時間程度熱融着している。
【0023】
2.抗体の固定化
本実施例では、捕捉すべき細胞が転移性乳癌細胞株であるMCF-7細胞であるので、その表面に発現している抗原であるEpCAMに対する市販の抗体をダム部の一部の表面上に固定化した。
【0024】
まず、シランカップリング剤であるAPTESを結合させてマイクロ流路にアミノ基を付与した。この操作は具体的に次のようにして行った。まずマイクロ流路を1 M NaOH で洗浄してシラノール基を表出させた。その後、水洗浄、ホットプレートでの乾燥をさせ、70℃で40 分から1 時間真空引きをしながらAPTES の気相修飾を行った。次に120℃で2 時間ベイクした。この後に接触角を見て修飾されていることを確認した。APTES で修飾されていれば水の接触角約70°まで疎水化されていた。そして、毛管力によって抗体溶液100 μg/mL〜1 mg/mL を導入し室温で4時間から一晩静置した。抗体としてはCTC 細胞において発現が知られており、上皮細胞にみられるEpCAM(Epithelial cell adhesion molecule)をFITC で蛍光ラベルしたものを使用した(LifeSpan BioScience 製 EPCAM Mouse anti-HumanMonoclonal (FITC) Antibody)。なお、蛍光標識した抗体を用いたのは、抗体がマイクロ流路に固定化されたことを確認するためである。APTES を修飾したチャネルと未修飾チャネルを比較すると、修飾チャネルにのみ抗体をラベルしているFITC 由来の蛍光が観測されたことから、アミノ基を介した抗体の結合が行われたことを確認した。
【0025】
3.細胞の選択的捕捉
捕捉すべき細胞であるMCF-7細胞と、EpCAMを表面に発現していない白血球細胞株RPMI1788(ともにヒューマンサイエンス研究資源バンクから分譲)を緩衝液中にそれぞれ106個/mL程度の濃度で含む細胞浮遊液を被検試料液とした。これを、マイクロ流路の一端から、シリンジポンプにより種々の流速で注入した。比較のため、抗体を固定化していない、同じ寸法のマイクロ流路(同じ寸法のダム部を有する)を用いて同じ実験を行った。
【0026】
結果を図2に示す。図2中、横軸は流速、縦軸は捕捉率を示す。「抗原抗体あり」は、抗体を固定化した細胞捕捉領域におけるMCF-7細胞についての結果を示し、「抗原なし」は、抗体を固定化した細胞捕捉領域におけるRPMI1788の捕捉率を示し、「抗体なし」は、抗体を固定化していないダム部におけるMCF-7細胞についての結果を示す。抗体を固定化した本発明のマイクロ流路を用い、流速を2mm/secとすることにより、MCF-7細胞のみを選択的に捕捉することができた。これにより、本発明のマイクロ化学チップを用いて、目的の種類の細胞を選択的に捕捉することができることがわかる。また、図1下部の顕微鏡写真に示す通り、100μm四方の視野を取れば、捕捉された複数の細胞を観察可能であった。
【0027】
参考例
in situ RCA法
上記のようにして本発明のマイクロ化学チップにより細胞を捕捉すれば、その細胞についてin situ RCA法を行い、細胞に含まれる特定のDNAを特異的に検出することができる。以下、マイクロ流路のダム部(深さ8μm)に捕捉された白血病細胞(HL-60)について、そのミトコンドリアDNAを検出する方法を具体的に記載する。
【0028】
(1) 固定
シリンジポンプによって流量を制御しながら細胞を導入した。細胞は4%パラホルムアルデヒド-リン酸緩衝液に懸濁してから導入し、捕捉後室温で30 分程度静置させた。その後、1xPBS で1μL/min、10分洗浄した。
(2) 細胞膜透過
0.1M塩酸を1μL/min で2 分間導入し、すぐに1xPBS で1 μL/min、10 分洗浄した。
(3) 制限酵素分解
反応溶液を1 μL/min で10 分間導入した。37℃で40 分間静置し、洗浄バッファー(0.1 M Tris-HCl pH7.5、0.15 M NaCl、0.05% Tween 20)で1 μL/min、10 分洗浄した。
(4) ライゲーション
反応溶液を1 μL/min で10 分間導入した。37℃で20 分間静置し、洗浄バッファーで1 μL/min、10 分洗浄した。
(5) RCA
反応溶液を1 μL/min で10 分間導入した。30℃で90 分間静置し、洗浄バッファーで1 μL/min、10 分洗浄した。
(6) 蛍光プローブハイブリダイゼーション
反応溶液を1 μL/min で10 分間導入した。37℃で20 分間静置し、洗浄バッファーで1 μL/min、10 分洗浄した。
(7) 核染色
1xPBS で2 μg/mL に希釈したDAPI を1 μL/min で1 分間導入し、すぐに1xPBS で洗浄し、観察した。また、反応中に流れを発生させると、反応し終わる前に流出してしまうことが考えられたので、流れを止めて反応させた。
【0029】
なお、用いたパッドロックプローブ及び検出プローブの塩基配列は次の通りであった。
パッドロックプローブ
5'-P-CTGCCATCTTAACAACCTTTCCTACGACCTCAATGCACATGTTTGGCTCCTCCTTCTGCGATTACCGGGCC(配列番号1)
検出プローブ
5'-FITC-CCTCAATGCACATGTTTGGCTCC(配列番号2)
【0030】
プローブ濃度と、測定されたシグナル数との関係を図3に示す。理論値以上のシグナルを検出したことから、ターゲットが少量であっても一分子レベルで確実に検出することが可能であるといえる。またプローブ濃度の上昇に従ってシグナル数も上昇していることから、このシグナルは増幅産物由来のものであるといえるので、in situ RCA 法をマイクロ化学チップへ集積化することに成功したといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の細胞を捕捉するためのマイクロ化学チップであって、基板と、該基板内に設けられたマイクロ流路を具備し、該マイクロ流路は細胞捕捉領域を有し、該細胞捕捉領域は、その深さ又は幅が、捕捉すべき細胞のサイズよりも小さく、かつ、細胞を破壊することなく挟み込むことができる寸法を有し、該細胞捕捉領域の表面には、捕捉すべき細胞表面上に発現している抗原と抗原抗体反応する抗体又はその抗原結合性断片が固定化されているマイクロ化学チップ。
【請求項2】
前記細胞捕捉領域の深さ又は幅が、捕捉すべき細胞のサイズの70%以上100%未満である請求項1記載のマイクロ化学チップ。
【請求項3】
前記細胞捕捉領域は、深さが捕捉すべき細胞のサイズよりも小さい請求項1又は2記載のマイクロ化学チップ。
【請求項4】
前記細胞捕捉領域の平面的な寸法が、縦横いずれも500μm以下である請求項3記載のマイクロ化学チップ。
【請求項5】
前記細胞捕捉領域の平面的な寸法が、縦横いずれも50μm以上である請求項4記載のマイクロ化学チップ。
【請求項6】
前記抗体は、がん細胞の表面に発現するがん特異抗原と抗原抗体反応する抗体である請求項1〜5のいずれか1項に記載のマイクロ化学チップ。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−189541(P2012−189541A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55447(P2011−55447)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(511066665)
【出願人】(505051404)
【出願人】(511066676)
【出願人】(511067145)