マイコバクテリアの熱ショックタンパク質70を含む治療用ワクチン
本発明は、治療用ワクチンの製造のための熱ショックタンパク質の使用に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療用ワクチンの製造のための熱ショックタンパク質の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
今日知られている感染性疾患の多くは急速に発症し、医薬のワクチンの助けを得て又は得ずに、同じく急速に消失する。しかしながら、初期段階にはほとんど又は全く検出できない緩やかな進行性感染を引き起こす微生物の群が存在する。(真実の又は推定上の)潜伏状態のこの期間は、何年間も持続し得る。
【0003】
遅い進行性疾患を引き起こすことで有名な微生物の主な属は、マイコバクテリウム属であり、より具体的には、その種M.チュバキュロシス(M.tuberculosis)、M.アビウム(M.avium)、M.アビウム属種パラチュバキュロシス(M.aviumspp.paratuberculosis)及M.ボビス(M.bovis)である。M.チュバキュロシスは、特にヒトにおける結核(tb)の原因であり、M.アビウム属種パラチュバキュロシスは特にウシにおける傍結核(paratb)を引き起こし、M.ボビスはヒト結核のウシ変形物(ウシtb)として観察することができる病気の原因である。これらの3つのマイコバクテリアは、それらの表現型/遺伝子型に関して及びそれらが引き起こす遅い進行性疾患の性質に関して、極めて密接に関連している。
【0004】
これら3つの種の密接な関連性の単なる例示として、マイコバクテリウム・ボビスBCGワクチンは、(M.チュバキュロシスによって引き起こされる)ヒトtb及び(M.ボビスによって引き起こされる)ウシtbの両方に対して保護するために(但し、限定的な保護である。)現在利用可能な唯一のワクチンである。これは、Vordermeier,H.M.他(Veterinary Journal 171:229−244(2006))によって、及びDietrich,J.他(Tuberculosis 86:163−168(2006))によって例証されている。
【0005】
3つのマイコバクテリウム種間の密接な関連性の別の側面、又はよりよい側面、その結果は、それらが様々な哺乳動物種に対して感染性であるという確立された事実である。ネコにおけるマイコバクテリウム・ボビスの結核が記載されている。動物、特にネコからヒトへのマイコバクテリウム・ボビスの伝染が記載されている。ヒトから動物、とりわけイヌへのマイコバクテリウム・チュバキュロシスの伝染が記載されており、ネコ結核のヒトに対する危険性が記載されている。(Monies,B. et al.,veterinary Record 158:280(2006),Monies,B. et al.,veterinary Record 158:245−246(2006),Liu,S.,Journ.Am.VetMed.Ass.177:164−167(1980),Snider,W.,Am.Rev.Resp.Dis.104:877−887(1971),Pavlik,I. et al,Veterinarni Medicina 50:291−299(2005),Baker,M.G. et al.,Epidem & Inf.134:1068−1073(2006))。
【0006】
種間感染の頻度が相対的に低いことに鑑みれば、ペットとして飼われている全てのネコ及びイヌに予防的なワクチン接種を検討することは有用でなく、又は賢明でさえない。しかしながら、極めて魅力的な可能性は、動物がマイコバクテリア種によって感染された状態となった事例における治療的なワクチン接種である。このようなアプローチは、現在、幾つかの抗生物質に対して耐性を示す多くのマイコバクテリア種が存在するという事実のみに関しても、現行の治療(抗生物質を用いた治療)よりずっと魅力的である。しかしながら、このような治療的ワクチンは、現在入手できない。
【0007】
結核は、全世界において大きな健康上の問題であり、毎年、200万を超える死亡をもたらすことが知られている。抗生物質を用いた治療は有効であり、比較的容易であるが、特に疾病が風土病である世界の領域の脆弱な社会経済構造によって著しく妨げられる。従って、ヒトの疾病に対する有効なワクチンは極めて望ましい。
【0008】
ウシ結核は、特に、1988年以来増加を続けている英国において、極めて高い発生率を有する。ウシ結核は、北アイルランドにおいても、この10年間にわたって、深刻化している問題である。ウシ結核は、ニュージーランド及びアイルランドなどの風土病を有する野生動物保有宿主を有する国々において、経済的な問題でもあり続けている。他方で、オーストラリア及び西ヨーロッパの大半の国は、この病気を根絶した。それにも関わらず、発展途上国では、この病気はなお問題であり続け、その結果、世界の人口の94%が、ウシ及び/又はバッファロー中のウシ結核の駆除が存在しない国に暮らしている。従って、反芻動物の疾病に対する有効なワクチンも極めて望ましい。
【0009】
しかしながら、マイコバクテリウム・ボビスBCGワクチンは、世界中で最も広く使用されているワクチンであるにも関わらず、ヒト結核及びウシ結核に対して限定的な保護を与えるに過ぎないことが知られている。上に挙げられている刊行物には、マイコバクテリウム・ボビスBCGワクチンにおいて遭遇する問題が例示されている。
【0010】
反芻動物中の傍結核又はヨーネ病(JD)は小腸の感染性疾患であり、畜産業の世界的問題であると考えられている。この疾病は、マイコバクテリウム・アビウム属種パラチュバキュロシス(MAP)によって引き起こされ、甚大な経済的損失をもたらす(Johnson−Ifearulundu,Y.,J.B.Kaneene,及びJ.W.Lloyd,J.Am.Vet.Med.Assoc,1999.214(6):p.822−5)。MAPがヒトのクローン病の発病に関与していることが示唆されているので、動物及びヒトの健康の両面から、改良された診断ツールの使用とワクチン接種を組み合わせた戦略による該疾病を(根絶ではなくても)駆除することを目指して、傍結核の免疫病因にさらなる研究を行うことが正当化される。(Collins,M.T.,J Dairy Sci,1997. 80(12):p.3445−8.Biet,F.,M.L. Boschiroli,M.F.Thorel,及び L.A. Guilloteau,Vet Res,2005.36(3):p.411−36.Greenstein,RJ.,Lancet Infect Dis,2003.3(8):p.507−14..Chiodini,R.J.及び CA.Rossiter,Vet Clin North Am Food Anim Pract,1996. 12(2):p.457−67)。
【0011】
幼いウシは、感染したウシの初乳、乳若しくは糞便の経口摂取を通じて、生後1ヶ月で感染し、又は子宮内経路を介した感染を通じて出生前に感染する。幼いウシは首尾よく感染を除去し、又は生涯にわたって感染した状態になる。感染した動物は、およそ2歳以降から断続的に又は継続的に、糞便及び乳の中に細菌を排出する(Payne,J. 及び J. Rankin,Res.Vet.Sci.,1961.2:p.175−179.Payne,J. 及び J. Rankin,Res.Vet.Sci.,1961.2:p.167−174)。4から5年の潜伏期間後、感染した動物の割合は無症候性段階から臨床段階へと移行し、慢性的な下痢を伴うタンパク質喪失性の腸疾患の治療不能な進行性形態を発症して、死に至る。最も感受性が高い動物の感染を予防し、より短いワクチン接種にすることを目指して、感染した動物を群れから除去する検査及び選別、牛の管理などの様々な戦略を通じて、疾病の管理及び最終的には根絶が試みられてきた。MAPの伝染は、経口的な糞便経路を通じて生じるのみならず、子宮内伝染を通じても生じるので、若い牛の感染を予防することを目的とした措置の幾つかは完全には有効であり得ない(Sweeney,R.W.,Vet Clin North Am Food Anim Pract,1996. 12(2):p.305−12.Sweeney,R.W.,R.H.Whitlock,及びA.E.Rosenberger,Am J Vet Res,1992.53(4):p.477−80.Seitz,S.E.,L.E.Heider,W.D.Heuston,S.Bech−Nielsen,D.M.Rings,及び L.Spangler,J Am Vet Med Assoc,1989.194(10):p.1423−6)。
【0012】
約75年前に、Vallee及びRinjardの古典的な実験によって、本疾病の臨床徴候の開始を遅らせるためにワクチン接種を使用できることが示された。この効果は、罹病した動物中の感染の進行をより遅くすることによるものである可能性が最も高い。
【0013】
現在利用可能なワクチンは、アジュバントを加えた完全なバクテリンの変形物である。これらのワクチンは、現場研究において、異なる効果を有することが示されている。(Kohler,H.,et al.,J Vet Med B Infect Dis Vet Public Health 2001,48(3),185−195.Muskens,J.,van Zijderveld,F.,Eger,A. 及び Bakker,D.,Veterinary Microbiology 2002,86(3),269−278)。
【0014】
これらの研究から、完全な細胞型のワクチン(不活化されている。)での生後1ヶ月のウシのワクチン接種は、一定程度まで、本疾病の臨床段階の発達を妨げ、従って、経済的な損害を低下させることが明らかとなっている。しかしながら、ワクチン接種された群れとワクチン接種されていない群れにおいて、無症候的に感染した動物は概ね同じ頻度で検出されたので、ウシでは、ワクチン接種のこの種類は、マイコバクテリアの排除をもたらさない。従って、このワクチンは感染を予防せず、糞便中に断続的に細菌を排出する無症候性に感染した動物の頻度をせいぜい僅かに限定するに過ぎない。
【0015】
さらに、このワクチン接種戦略はウシ結核の診断を妨害し、その結果、不活化された完全な細胞ワクチンの使用は限定され、又は(例えば、オランダにおいて)禁止されている。
【0016】
最後に、不活化された完全な細胞ワクチンは、ワクチン接種部位に大規模な組織損傷も引き起こし、ウシでのワクチンの誤用及び例えば、獣医師による偶発的な自己接種は深刻な副作用を有し得る。これらの深刻な欠点は、疫学的な動物の健康及びヒトの健康の観点から、現在世界中でウシのワクチン接種の使用を制約し、傍結核を根絶する上で大きな問題となっている。
【0017】
マイコバクテリアのサブユニットのサブユニットの組み合わせでのワクチン接種は、関連するマイコバクテリウム・ボビスに対する保護において、少なくともいくらかの効果を有することが示されている。Skinnerは、組み合わされたHsp65、Hsp70及びApaDNAワクチン並びにBCGに基づくワクチンでの初回強化ワクチン接種を記載した(Skinner,M.A.et al,Infection and Immunity,2005,73(7):4441−4444)。しかしながら、このようなワクチンは、それぞれ、タンパク質ワクチン及びDNAワクチンでの又はその逆での初回接種及び強化接種を必要とし、さらに、3つの異なる抗原を全て必要とする。
【0018】
米国特許出願公開第2003/0073094号では、個体の免疫応答を調節する方法として、マイコバクテリウム・チュバキュロシスのストレスタンパク質の使用が記載されている。この出願では、熱ショックタンパク質Hsp70などのストレスタンパク質が非特異的な様式で、特に予防において、並びに癌及び自己免疫疾患に対する一般的で、非特異的な刺激物質として、免疫系を刺激する方法として使用されている。
【0019】
PCT出願WO02/067982号は、このようなストレスタンパク質が過剰発現されている完全細胞ワクチンを記載している。しかしながら、このような完全細胞ワクチンは、上記のようなウシ結核診断を妨害するので、選択されるワクチンではない。
【0020】
KoetsA.他は、マイコバクテリウム・アビウム属種パラチュバキュロシスHsp70での予防的ワクチン接種は、保護的ではないが、最初の2年の間に、糞便中のマイコバクテリウム・アビウム属種パラチュバキュロシスの排出のレベルを減少させることを示した(Koets,A.,et al.,Vaccine 2006,24:2550−2559)。EP1510821号では、同じ著者が治療剤としてのHsp70の使用を示唆した。しかしながら、この示唆された治療用途の陽性効果は示されなかった。さらに、この欧州特許出願において、患者が排出者となった後のHsp70の治療的適用は挙げられておらず、示唆もされていない。
【0021】
しかしながら、2年の期間後に、排出は益々悪化し、このことを別としても、臨床段階の開始は、2年後でなければ生じず、典型的には2年と5年の間に生じる。
【0022】
上述のことから明らかであるように、新生ウシの汚染を回避することは、不可能ではないとしても、極めて困難である。新生ウシは、出生の間に、既に感染状態となっている場合もあり得る。このことは、実際の予防的ワクチン接種が可能でない場合があり得ることを示唆する。約10年前に、関連する細菌マイコバクテリウム・チュバキュロイスに関して、曝露後ワクチン接種の方法として、予防的な様式でなく、治療的な様式で、完全細胞ワクチンを用いた試み及びワクチン接種が示唆されている(Fine,P.E.,Novartis Foundation symposium 1998)。しかしながら、結果は失望するものであった。Turner,J.他は、このようなアプローチがマイコバクテリウム・チュバキュロシスへのエアロゾル感染の過程を全く調節するものではないことを明確に示した(Turner,J et al.,Infection and Immunity 2000,68(3):1706−1709)。
【0023】
このことは、少なくともマイコバクテリウム・アビウム属種パラチュバキュロシスに密接に関連するマイコバクテリウム・チュバキュロシスに関しては、このワクチン接種後アプローチは無用であることを強く示唆する。
【0024】
LowrieD.B.他は、この現象に対して可能な説明を与えた。LowrieD.B.他は、タンパク質抗原によって引き起こされるような2型細胞免疫応答は、マイコバクテリウム・チュバキュロシス感染の間、大量に存在するが、保護に寄与するものではないことを示した。従って、1型細胞免疫応答の方向へのバランスのシフトは有益であり得る。このシフトは、タンパク質をベースとするワクチンに代えてDNAワクチンを使用することによって誘導することができる。実際に、LowrieD.B.他は、65kDの熱ショックタンパク質(Hsp65)を含むDNAワクチンでの曝露後ワクチン接種は、タンパク質そのものでのワクチン接種とは異なり、疾病に対する有意な保護を与え、細菌を死滅させさえする免疫応答を実際に誘導することを示した。Hsp70を含むDNAワクチンに対しては、ずっと顕著でない保護が見出された。これらの知見は、上記のSkinner,M.A.の知見と合致する。
【0025】
従って、治療的ワクチン接種又は曝露後ワクチン接種に関しては、実行可能であれば、DNAワクチン、より具体的にはHsp65を含むDNAワクチンでのワクチン接種は好ましいワクチン接種アプローチであるように思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0073094号明細書
【特許文献2】国際公開第02/067982号
【特許文献3】欧州特許出願公開第1510821号明細書
【非特許文献】
【0027】
【非特許文献1】Vordermeier,H.M.他、Veterinary Journal 171、2006年、p.229−244
【非特許文献2】Dietrich,J.他、Tuberculosis 86、2006年、p.163−168
【非特許文献3】Monies,B.他、veterinary Record 158、2006年、p.280
【非特許文献4】Monies,B.他、veterinary Record 158、2006年、p.245−246
【非特許文献5】Liu,S.,Journ.Am.VetMed.Ass.177、1980年、p.164−167
【非特許文献6】Snider,W.,Am.Rev.Resp.Dis.104、1971年、p.877−887
【非特許文献7】Pavlik,I. et al,Veterinarni Medicina 50、2005年、p.291−299
【非特許文献8】Baker,M.G.他、Epidem & Inf.134、2006年、p.1068−1073
【非特許文献9】Johnson−Ifearulundu,Y.,J.B.Kaneene,及びJ.W.Lloyd,J.Am.Vet.Med.Assoc、214(6)、1999年、p.822−5
【非特許文献10】Collins,M.T.,J Dairy Sci、12、1980年、p.3445−8
【非特許文献11】Biet,F.,M.L. Boschiroli,M.F.Thorel,及び L.A. Guilloteau、Vet Res、36(3)、2005年、p.411−36
【非特許文献12】Greenstein,RJ.,Lancet Infect Dis、3(8)、2003年、p.507−14
【非特許文献13】Chiodini,R.J.及び CA.Rossiter,Vet Clin North Am Food Anim Pract、12(2)、1996年、p.457−67
【非特許文献14】Payne,J. 及び J. Rankin,Res.Vet.Sci.,2、1961年、p.175−179
【非特許文献15】Payne,J. 及び J. Rankin,Res.Vet.Sci.,2、1961年、p.167−174
【非特許文献16】Sweeney,R.W.,Vet Clin North Am Food Anim Pract,12(2)、1996年、p.305−12
【非特許文献17】Sweeney,R.W.,R.H.Whitlock,及びA.E.Rosenberger,Am J Vet Res、53(4)、1996年、p.477−80
【非特許文献18】Seitz,S.E.,L.E.Heider,W.D.Heuston,S.Bech−Nielsen,D.M.Rings,及び L.Spangler,J Am Vet Med Assoc、194(10)、1989年、p.1423−6
【非特許文献19】Kohler,H.他、J Vet Med B Infect Dis Vet Public Health、48(3)、2001年、p.185−195
【非特許文献20】Muskens,J.,van Zijderveld,F.,Eger,A. 及び Bakker,D.,Veterinary Microbiology、86(3)、2002年、p.269−278
【非特許文献21】Skinner,M.A.他、Infection and Immunity、73(7)、2005年、p.4441−4444
【非特許文献22】Koets,A.他、Vaccine、24、2006年、p.2550−2559
【非特許文献23】Fine,P.E.,Novartis Foundation symposium 1998
【非特許文献24】Turner,J他、Infection and Immunity、68(3)、2000年、p.1706−1709
【発明の概要】
【0028】
70kD熱ショックタンパク質(Hsp70)を含むワクチンでの感染後ワクチン接種は、感染した哺乳動物が排出者となった場合でさえ、極めて著しく排出のレベルを減少させることが、驚くべきことに、ここに見出された。これは、著しく排出している動物に対してさえ当てはまる。これは、上に論述されているようにLowrieによって及びSkinnerによって記載された知見に照らせば、極めて予想外である。Hsp70は、感染の間に既に強力な1型T細胞応答を誘導するが、一切保護をもたらさないことが知られている極めて免疫優性のタンパク質である。従って、単一サブユニットとしてのHsp70での感染後、排出発症後接種の後における保護効果の出現は、確実に予想することができなかった。
【0029】
さらに驚くべきことに、感染の臨床的段階に罹患している動物において、Hsp70ワクチンの治療的投与後に、この段階が悪化するのを停止することができること、又は改善さえ可能であることが見出された。長期間の無症候性段階から感染の臨床的徴候の段階への進行は常に不可逆的で、致死的であると常に考えられていたので、このことは、実際に極めて予想外である。排出の減少は、感染の時点から何年も後でさえ、すなわち、排出を通じて疾病を見ることができるようになった時点に、疾病が到達した時点で、疾病の進行を遅らせることができ、おそらくは、停止させることさえ可能であることを示す単なるパラメータである。例えば、ヒト結核の場合には、この時期は、潜伏の何年も後に、感染したヒトが病的な咳を示し、従って、細菌の拡散を開始する時期と同じである。重要なことは、排出の減少によって反映されるとおり、治療的なワクチン接種の結果、感染の時期の何年も後にさえ、明らかに、疾病の進行を遅らせ又は停止させることができるということである。M.チュバキュロシス、M.アビウム、M.アビウム属種パラチュバキュロシス及びM.ボビスは遺伝型及び表現型が極めて近縁関係にあり、これらが引き起こす疾病の進行は極めて似通っているので、これらの予想できない知見は、M.チュバキュロシス、M.アビウム、M.アビウム属種パラチュバキュロシス及びM.ボビスに対しても等しく当てはまる。ウシ及びヒト結核並びにイヌ、ネコ及び他の感受性動物中の結核の進行は、等しく遅らせることができ、最終的には停止させることができる。
【0030】
従って、本発明の第一の実施形態は、マイコバクテリウム属の細菌に感染し、及びこれらの細菌を排出し始めた哺乳動物における治療用ワクチンの製造のための、マイコバクテリアのHsp70タンパク質又はその免疫原性断片の免疫学的に活性な量の使用に関する。本発明においてこれらの細菌を排出するとは、細菌がそれらの宿主組織に到達した後(すなわち、コロニー形成後)に、病原性細菌の増殖後に、哺乳動物の糞便中に同属の細菌を排出することを意味する。
【0031】
好ましくは、哺乳動物は、ヒト、イヌ、ネコ又は反芻動物である。
【0032】
治療的使用とは、ワクチンの標準的な使用、すなわち予防的な使用とは異なり、治療的ワクチンとしてワクチンを使用することである。予防的使用とは、感染が起こる前の使用又は感染時期の付近での使用である。本願において治療的使用は、感染に最初に曝露した後に、本発明のワクチンを使用することであると考えられる。これは、動物及びヒトの感染に対して当てはまる。この次に、ワクチンは、排出を開始したヒト又は動物において使用される。
【0033】
実際には、ヒト、イヌ及びネコにおける感染の場合には、このような治療的使用は排出が顕著になった時期に始まり、これは、通常感染から3ヶ月、より一般的には6ヶ月、より一般的には12ヶ月又はそれ以降になって起こる。
【0034】
免疫原性用量は、おそらくはアジュバントと組み合わされて、標的哺乳動物種内の免疫応答を引き起こすのに十分な免疫原性物質の量として本分野で知られている。
【0035】
完全なHsp70タンパク質の代わりにHsp70の免疫原性断片でワクチン接種を行うという概念は、以下でさらに記載されている。
【0036】
本発明のHsp70タンパク質をコードする核酸配列は本分野において公知であるので(以下参照)、十分な量のこのタンパク質を取得することは現在では実行可能である。これは、例えば、Hsp70タンパク質をコードする遺伝子の全部又は一部を発現するための発現系を使用することによって行うことが可能である。核酸配列を発現するために必要不可欠であるのは、核酸配列がプロモーターの制御下にあるように核酸配列に機能的に連結された十分なプロモーターである。プロモーターの選択が、タンパク質発現のための宿主細胞として使用される細胞中で遺伝子転写を誘導することが可能な全ての真核、原核又はウイルスプロモータに及ぶことは、当業者に自明である。
【0037】
機能的に連結されたプロモーターは、それらが連結された核酸配列の転写を制御することが可能なプロモーターである。機能的に連結されたプロモーターの制御下にあるHsp70タンパク質をコードする核酸配列を含む構築物は、さらに組換えDNA分子と称される。このようなプロモーターは、発現のために使用される細胞内においてプロモーターが機能的である限り、タンパク質遺伝子の固有のプロモーター又は別のプロモーターであり得る。プロモーターは、異種のプロモーターとすることも可能である。宿主細胞が細菌である場合には、使用され得る有用な発現調節配列には、Trpプロモーター及びオペレーター(Goeddel,et al.,Nucl.Acids Res.,8,4057,1980);lacプロモーター及びオペレーター(Chang,et al.,Nature,275,615,1978);外膜タンパク質プロモーター(Nakamura,K. and Inouge,M.,EMBO J.,1,771−775,1982);バクテリオファージλプロモーター及びオペレーター(Remaut,E. et al.,Nucl.Acids Res.,11,4677−4688,1983);α−アミラーゼ(B.スブチリス)プロモーター及びオペレーター、終結配列並びに選択された宿主細胞と適合性があるその他の発現増強及び調節配列が含まれる。宿主細胞が酵母である場合、有用な発現調節配列には、例えば、α−接合因子が含まれる。昆虫細胞の場合、バキュロウイルスのポリヘドリン又はp10プロモーターを使用することが可能である(Smith,G.E. et al.,Mol.Cell.Biol.3,2156−65,1983)。宿主細胞が脊椎動物起源である場合には、有用な発現制御配列の例には、(ヒト)サイトメガロウイルス最初期プロモーター(Seed,B.et al.,Nature 329,840−842,1987;Fynan,E.F.et al.,PNAS 90,11478−11482,1993;Ulmer,J.B.et al.,Science 259,1745−1748,1993)、ラウス肉腫ウイルスLTR(RSV,Gorman,C.M.et al.,PNAS 79,6777−6781,1982;Fynan et al.,上記;Ulmer et al.,上記)、MPSVLTR(Stacey et al.,J. Virology 50,725−732,1984)、SV40最初期プロモーター(Sprague J.et al.,J.Virology 45,773,1983)、SV−40プロモーター(Berman,P.W.et al.,Science,222,524−527,1983)、メタロチオネインプロモーター(Brinster,R.L.et al.,Nature 296,39−42,1982)、熱ショックプロモーター(Voellmy et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82,4949−53,1985)、Ad2の主要後期プロモーター及びβ−アクチンプロモーター(Tang et al.,Nature356,152−154,1992)が含まれる。制御配列は、ターミネーター及びポリアデニル化配列も含み得る。使用することができる配列には、周知のウシ成長ホルモンポリアデニル化配列、SV40ポリアデニル化配列、ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)ターミネーター及びポリアデニル化配列がある。
【0038】
細菌、酵母、真菌、昆虫及び脊椎動物の細胞発現系は、極めて頻繁に使用される系である。このような系は、本分野において周知であり、例えば、Clontech Laboratories、Inc.4030 Fabian Way,Palo Alto,California 94303−4607,USAを通じて商業的に一般に入手可能である。これらの発現系に次いで、寄生生物を基礎とした発現系が、魅力的な発現系である。このような系は、例えば、公開番号2714074のフランス特許出願及びUS NTIS公開番号 US 08/043109(Hoffman,S. and Rogers,W.:Public.Date 1 December 1993)に記載されている。
【0039】
マイコバクテリウム・アビウム、M.ボビス又はM.チュバキュロシスに由来するHsp70タンパク質の使用が好ましい。
【0040】
従って、本発明のこの実施形態の好ましい形態は、Hsp70タンパク質がマイコバクテリウム・アビウム、M.ボビス又はM.チュバキュロシスHsp70である、哺乳動物における治療用ワクチンの製造のための、マイコバクテリアのHsp70タンパク質又はその免疫原性断片の免疫学的に活性な量の使用に関する。
【0041】
哺乳動物、好ましくは反芻動物を傍結核に対して保護するためのワクチンにおいて使用するのにより好ましいのは、マイコバクテリウム・アビウム属種パラチュバキュロシスを起源とするHsp70タンパク質の使用である。
【0042】
従って、本発明のこの実施形態のより好ましい形態は、Hsp70タンパク質がマイコバクテリウム・アビウム属種パラチュバキュロシスHsp70である、哺乳動物、好ましくは反芻動物における治療用ワクチンの製造のための、マイコバクテリアのHsp70タンパク質又はその免疫原性断片の免疫学的に活性な量の使用に関する。
【0043】
哺乳動物、好ましくは反芻動物、イヌ又はネコをM.ボビス感染に対して保護するためのワクチンにおいて使用するのにより好ましいのは、マイコバクテリウム・ボビスを起源とするHsp70タンパク質の使用である。
【0044】
哺乳動物、好ましくはヒト、イヌ又はネコをM.チュバキュロシス感染に対して保護するためのワクチンにおいて使用するのにより好ましいのは、マイコバクテリウム・チュバキュロシスを起源とするHsp70タンパク質の使用である。
【0045】
マイコバクテリアのHsp70配列は本分野において公知であり、とりわけ、以下の参照番号で見出すことができる。
マイコバクテリウム・レプラエ(Mycobacterium leprae):M95576
マイコバクテリウム・チュバキュロシス:P0A5B9
マイコバクテリウム・ボビス:P0A5C0
マイコバクテリウム・アビウム属種パラチュバキュロシス:AF254578
【0046】
例えば、ワクチン接種の目的のために、又は抗体を産生されるために、タンパク質が使用される場合には、完全なタンパク質を使用する必要はない。タンパク質に対する免疫応答を誘導することが可能なタンパク質の断片(そのままの状態であるか、又は例えばKLHなどの担体に連結されている。)、いわゆる、免疫原性断片を使用することも可能である。「免疫原性断片」とは、宿主中で免疫反応を誘導する能力をなお保持する、すなわち、B細胞又はT細胞エピトープを含む完全長タンパク質の断片であると理解される。この時点で、抗原性断片(決定因子)をコードするDNA断片を容易に同定するために、様々な技術が利用可能である。Geysenら(特許出願WO84/03564、特許出願WO86/06487、米国特許第4,833,092号、Proc.Natl Acad.Sci.81:3998−4002(1984),J.Imm.Meth.102,259−274(1987))によって記載された方法、いわゆるPEPSCAN法は、タンパク質の免疫学的に重要な領域であるエピトープの検出のための、実行が容易で、迅速な、十分に確立された方法である。この方法は、世界中で使用されており、従って、当業者に周知である。この(経験的な)方法は、B細胞エピトープの検出のために特に適している。また、何れかのタンパク質をコードする遺伝子の配列が与えられれば、現在公知であるエピトープとの配列的及び/又は構造的な一致に基づき、コンピュータアルゴリズムは、免疫学的に重要なエピトープとして、具体的なタンパク質断片を指定することが可能である。これらの領域の決定は、Hopp及びWoods(Proc.Natl.Acad.Sci.78:38248−3828(1981))に従う親水性基準とChou及びFasman(Advances in Enzymology 47:45−148(1987)及び米国特許第4,554,101号)に従う二次構造要因の組み合わせに基づいている。同様に、Berzofskyの両親媒性基準の補助を得て、コンピュータによって、配列からT細胞エピトープを予測することが可能である(Science 235,1059−1062(1987)及び米国特許出願NTIS US07/005,885)。要約された概説は、共通原理について、Shan Lu:Tibtech 9:238242(1991)、マラリアエピトープについて、Good et al;Science 235:1059−1062(1987)、概説として、Lu;Vaccine 10:3−7(1992)、HIV−エピトープについて、Berzowsky;The FASEB Journal 5:2412−2418(1991)に見出される。
【0047】
マイコバクテリア感染に対するワクチン接種のための別の極めて魅力的なアプローチは、医薬として許容される担体と一緒に、マイコプラズマのHsp70又はその免疫原性断片をコードする遺伝子又はその断片を含む生組換え担体(LRC)を使用することによるものである。これらのLRCは、さらなる遺伝的情報(この事例では、マイコバクテリアのHsp70又はその免疫原性断片をコードする遺伝子又はその断片)がクローニングされた微生物又はウイルスである。このようなLRCに感染した動物は、担体の免疫原に対してのみならず、遺伝子コードが、LRC中にさらにクローニングされているタンパク質(例えば、Hsp70)の免疫原性部分に対しても免疫応答を産生する。
【0048】
細菌のLRCの例として、本分野で公知の弱毒化されたサルモネラ株は、魅力的に使用することが可能である。生組換え担体寄生生物が、とりわけ、Vermeulen,A.N.(Int.Journ.Parasitol.28:1121−1130(1998))によって記載されている。また、LRCウイルスは、核酸を標的細胞中に輸送する手段として使用し得る。生組換え担体ウイルスは、ベクターウイルスとも称される。ベクターとしてしばしば使用されるウイルスは、ワクシニアウイルス(Panicali et al;Proc.Natl.Acad.Sci.USA,79:4927(1982)、ヘルペスウイルス(欧州特許出願0473210A2)及びレトロウイルス(Valerio,D. et al;in Baum,S.J.,Dicke,K.A.,Lotzova,E. and Pluznik,D.H.(Eds.),Experimental Haematology today−1988.Springer Verlag,New York:pp.92−99(1989))である。
【0049】
本分野で周知の、インビボ相同組換えの技術は、本発明の挿入された核酸の発現を宿主動物中で誘導することが可能な組換え核酸を、選択した細菌、寄生生物又はウイルスのゲノム中に導入するために使用することが可能である。
【0050】
従って、本発明のさらに別の実施形態は、マイコバクテリウム属の細菌に感染し、及びこれらの細菌を排出し始めた哺乳動物、特にヒト又は反芻動物における治療用ワクチンの製造のための、機能的に連結されたプロモーターの制御下にあるマイコバクテリアのHsp70又はその免疫原性断片をコードする生組換え担体の使用に関する。
【0051】
機能的に連結されたプロモーターの調節下にある、マイコバクテリアのHsp70又はその免疫原性断片をコードする遺伝子又はその断片を含む宿主細胞を、Hsp70の生産のために使用できることが明らかである。Hsp70をワクチンとして使用する前に、まず、宿主細胞からHsp70を抽出する必要は存在しない。すなわち、宿主細胞は、そのまま使用することも可能である。宿主細胞が、Hsp70を発現するLRCを含む場合も、同じことが当てはまる。その例は、ウイルス又は細菌のLRCを含む真核細胞である。
【0052】
従って、本発明のさらに別の実施形態は、マイコバクテリウム属の細菌に感染し、及びこれらの細菌を排出し始めた哺乳動物、特にヒト又は反芻動物における治療用ワクチンの製造のための、機能的に連結されたプロモーターの制御下にあるマイコバクテリアのHsp70又はその免疫原性断片をコードする遺伝子又はその断片を含む宿主細胞の使用に関する。
【0053】
この実施形態は、機能的に連結されたプロモーターの制御下にあるマイコバクテリアのHsp70又はその免疫原性断片をコードする遺伝子又はその断片を含む生組換え担体を含有する宿主細胞にも関する。
【0054】
宿主細胞は、pBR322として細菌を基礎としたプラスミド又はpGEXとして細菌の発現ベクター又はバクテリオファージと組み合わせた、細菌起源の細胞、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)、バシラス・スブチリス(Bacillus subtilis)及びラクトバシラス(Lactobacillus)種であり得る。宿主細胞は、真核細胞起源の宿主細胞、例えば、酵母特異的ベクター分子と組み合わせた酵母細胞、又はベクター若しくは組換えバキュロウイスルと組み合わせた、昆虫細胞のようなより高等な真核細胞(Luckow et al;Bio−technology 6:47−55(1988))、例えば、Ti−プラスミドを基礎としたベクター若しくは植物ウイルスベクター(Barton,K.A. et al;Cell 32:1033(1983))と組み合わせた植物細胞、適切なベクター若しくは組換えウイルスを有するHela細胞、ウシ細胞及び細胞株チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)又はクランデルネコ腎臓細胞のような哺乳動物細胞でもあり得る。
【0055】
例えば、サルモネラ担体又はウイルス担体を基礎とする、Hsp70又はその免疫原性断片を発現することが可能な上記生組換え担体を基礎とするワクチンは、マイコバクテリアの感染の天然経路をよりよく模倣する点で、サブユニットワクチンを上回る利点を有する。さらに、免疫化のために、組換え担体の少量が必要であるに過ぎないので、それらの自己増殖は有利である。
【0056】
特に(但し、この場合だけではない。)、本発明に従って製造された治療用ワクチンが若い動物に投与される場合には、別のウイルス又は微生物に対するワクチンを同時に投与することが有益である。
【0057】
このような組み合わせワクチンの好ましい形態は、Hsp70又はその免疫原性断片のほかに、別の哺乳動物、好ましくはヒト、ネコ、イヌ若しくは反芻動物の病原性ウイルス若しくは微生物、該ウイルス又は微生物の抗原性物質又は該抗原性物質をコードする遺伝情報を含むワクチンである。このような組み合わせワクチンは、マイコバクテリウム・ボビス、チュバキュロシス、アビウム又はアビウム属種バラチュバキュロシスの有害な効果に対する保護のみならず、他の病原体に対する保護も誘導する。
【0058】
ウシ病原性のマイコバクテリア種に対する保護用のワクチンが作製される場合には、このような反芻動物の病原性微生物及びウイルスは、好ましくは、ウシヘルペスウイルス、ウシウイルス性下痢症ウイルス、パラインフルエンザ3型ウイルス、ウシパラミクソウイルス、口蹄疫ウイルス、ウシ呼吸器多核体ウイルス、ブタサーコウイルス、ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルス、別のマイコバクテリウム属種、マイコプラズマ属種、パスツレラ・ヘモリティカ、スタフィロコッカス・オーレウス、エシェリヒア・コリ、レプトスピラ属種、スタフィロコッカス・ウベリス、タイレリアパルバ、タイレリア・アヌラタ、バベシア・ボビス、バベシア・ビゲミナ、バベシア・マジョール、トリパノソーマ種、アナプラズマ・マジナーレ、アナプラズマ・セントラーレ及びネオスポラ・カニナムの群から選択される。
【0059】
本発明のワクチンは、好ましい提示形態において、アジュバントも含有し得る。一般に、アジュバントは、非特異的様式で、宿主の免疫応答を強化する物質を含む。様々な多数のアジュバントが、本分野において公知である。アジュバントの例は、フロイントの完全及び不完全アジュバント、ビタミンE、非イオン性ブロックポリマー、ムラミルジペプチド、QuillA(R)、鉱物油、例えばBayol(R)又はMarkol(R)、植物油及びCarbopol(R)(ホモポリマー)又はDiluvac(R)Forteである。ワクチンは、いわゆる「ビヒクル」も含み得る。ビヒクルとは、ビヒクルに対する共有結合なしに、ポリペプチドが付着する化合物である。しばしば使用されるビヒクル化合物は、例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム又は酸化アルミニウム、シリカ、カオリン及びベントナイトである。
【0060】
抗原がビヒクル中に部分的に埋め込まれている、このようなビヒクルの特殊な形態は、いわゆるISCOMである(EP109.942,EP180.564,EP242.380)。
【0061】
より好ましくは、アジュバントは、1型応答を誘導するアジュバント又は1型/2型バランスを1型応答へシフトさせるアジュバントである。免疫応答のアジュバント調節は、特に、Lindblad,E.他(Infection and Immunity 1997,65:623−629)によって記載されている。
【0062】
さらにより好ましくは、アジュバントは、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDA)である。
【0063】
さらに、ワクチンは、1つ又はそれ以上の適切な界面活性化合物又は乳化剤、例えばSpan又はTweenを含み得る。しばしば、例えば、分解し易いポリペプチドを分解から保護して、ワクチンの保存寿命を増大させるために、又は凍結乾燥効率を改善するために、ワクチンは安定化剤と混合される。凍結乾燥は、保存寿命を著しく向上させるための及び低温保存を避けるための好ましい方法である。有用な安定化剤は、とりわけ、SPGA(Bovarnik et al;J. Bacteriology 59:509(1950)、炭水化物、例えば、ソルビトール、マニトール、トレハロース、デンプン、スクロース、デキストラン又はグルコース、アルブミン又はカゼイン又はこれらの分解産物などのタンパク質及びアルカリ金属リン酸塩などの緩衝液である。さらに、ワクチンは、生理的に許容される希釈剤中に懸濁され得る。アジュバント化し、ビヒクル化合物又は希釈剤を添加し、ポリペプチドを乳化し、又は安定化させる別の方法も、本発明における実施形態であることは言うまでもない。
【0064】
本発明のワクチンは、タンパク質の1及び200μgの間の量で、極めて適切に投与することが可能であるが、より少量を使用することが原理的に可能である。免疫学的には極めて適切であるが、200μgを超える用量は、商業的な理由で、より魅力的でない。
【0065】
上記LRCウイルス及び細菌などの、弱毒化された生組換え担体に基づくワクチンは、感染中に自身を増幅するので、ずっと少ない用量で投与することが可能である。従って、極めて適切な量は、それぞれ、細菌及びウイルスに対して、103と109CFU/PFUの間の範囲である。
【0066】
多くの投与方法を使用することが可能である。経口適用は、労力を要しないので、投与の極めて魅力的な方法である。経口投与の好ましい方法は、胃の高度に酸性の環境を通過した後にのみ崩壊するカプセル中にワクチンを包装することであり、本分野において公知であり、頻繁に使用されている。また、ワクチンは、胃のpHを一時的に増大させるために、本分野で公知の化合物と混合することが可能である。
【0067】
例えば、ワクチンの筋肉内適用による、全身適用も適切である。この経路が採用される場合には、全身適用のために本分野で公知の標準的な手法が非常に適している。好ましい経路は、皮下投与である。
【0068】
マイコバクテリアのHsp70に基づくワクチンも、マーカーワクチンとして極めて適切である。マーカーワクチンは、例えば、野生型感染によって誘導される抗体パネルとは異なる、特徴的な抗体パネルに基づいて、予防接種された動物と野外感染した動物との識別を可能とするワクチンである。精製されたマイコバクテリアのHsp70に基づくワクチンは、このタンパク質に対する抗体を誘導するのみであるが、生の野生型、生の弱毒化又は不活化された完全なマイコバクテリアに基づくワクチン及び野外感染は、マイクバクテリアのタンパク質の多くに対して抗体を誘導する。これは、明らかに、極めて異なる抗体パネルを与える。精製されたマイコプラズマのHsp70を含むウェル及び別のマイコバクテリアのタンパク質を含むウェルを有する単純なELISA検査は、動物からの血清を試験し、動物が、本発明のワクチンを接種されたか、又はマイコバクテリア野外感染に罹患しているかどうかを識別するのに十分である。精製されたマイコバクテリアのHsp70を含むワクチンを接種された動物は、マイコバクテリアのHsp70以外の他のマイコバクテリアのタンパク質に対する抗体を有しない。しかしながら、生弱毒化ワクチンを接種された動物又はマイコバクテリウムの野外感染に遭遇した動物は、全ての免疫原性マイコバクテリウムタンパク質に対する抗体を有しており、従って、他の非マイコバクテリアのHsp70タンパク質に対する抗体も有する。上記検査において適切な他のマイコバクテリアのタンパク質は、例えばHsp65及びApaである。
【0069】
従って、本発明の別の実施形態は、一方で本発明のワクチンを用いた予防接種と、他方で完全細胞ワクチンを用いた予防接種又は野外感染とを識別するための診断検査に関し、このような検査は、精製されたマイコバクテリアのHsp70又はその免疫原性断片を含み、別個に、別の非Hsp70タンパク質を含む。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1A】パネルAには、表1に概説されている定量を用いて検査された13の時点に対して、全ての各動物から得られた糞便培養の結果が図示されている。技術的な失敗のために、336日の時点ではデータが取得されなかった。動物は、210日の時点で、Hsp70サブユニットワクチンを接種した。動物1373は、220日目に死亡した。合計糞便培養スコアはパネルBに図示されており、糞便培養スコアは、総排泄に対する指標として、時点ごとに合計した。
【図1B】パネルAには、表1に概説されている定量を用いて検査された13の時点に対して、全ての各動物から得られた糞便培養の結果が図示されている。技術的な失敗のために、336日の時点ではデータが取得されなかった。動物は、210日の時点で、Hsp70サブユニットワクチンを接種した。動物1373は、220日目に死亡した。合計糞便培養スコアはパネルBに図示されており、糞便培養スコアは、総排泄に対する指標として、時点ごとに合計した。
【図2】ツベルクリン皮膚襞反応が、全ての各動物に対して図示されている。生後1ヶ月にMAPで実験的に感染させ、比較皮膚検査の8週前にMAPHsp70をワクチン接種した28匹のウシから得られた皮膚検査のデータ。丸は、ワクチン接種前の6つの試験において、少なくとも1回、糞便培養陽性であったウシを示し、三角は糞便培養陰性であったウシを示す。検査した全ての動物は、比較結核皮膚検査において陰性であった。(公式に無結核の群れの状態の確立及び維持に関する皮内比較試験に対するEU指針による基準)。
【図3A】IFN−γElispotアッセイでのIFN−γの産生は、スポット形成細胞の数(sfc)/2.105PBMCとして表されている。検査した抗原は培地対照、コンカナバリンA(陽性)、Hsp70タンパク質及びPPDPである。ワクチン接種前(パネルA)及びアクチン接種から30日後(パネルB)の全ての動物から得た細胞から得られた平均sfc結果+SMEが示されている。IFN−γElispotアッセイでのIFN−γの産生は、デルタ−sfcとして表されている。スポット形成細胞の数(sfc)/2.105PBMCは培地対照に対して補正されている。検査した抗原はコンカナバリンA(陽性対照)(パネルC)及びHsp70タンパク質(パネルD)である。全ての動物(糞便培養陰性動物及び糞便培養陽性動物)から得た細胞から得られた平均デルタ−sfc結果+SEMが示されている。ワクチン接種前及びワクチン接種から30日後のPBMCの増殖性応答は、陽性対照コンカナバリンA(パネルE)及びHsp70タンパク質(パネルF)に対する刺激指数(SI)として表されている。全ての動物(糞便培養陰性動物及び糞便培養陽性動物)から得た細胞から得られた平均結果+SEMが示されている。
【図3B】IFN−γElispotアッセイでのIFN−γの産生は、スポット形成細胞の数(sfc)/2.105PBMCとして表されている。検査した抗原は培地対照、コンカナバリンA(陽性)、Hsp70タンパク質及びPPDPである。ワクチン接種前(パネルA)及びアクチン接種から30日後(パネルB)の全ての動物から得た細胞から得られた平均sfc結果+SMEが示されている。IFN−γElispotアッセイでのIFN−γの産生は、デルタ−sfcとして表されている。スポット形成細胞の数(sfc)/2.105PBMCは培地対照に対して補正されている。検査した抗原はコンカナバリンA(陽性対照)(パネルC)及びHsp70タンパク質(パネルD)である。全ての動物(糞便培養陰性動物及び糞便培養陽性動物)から得た細胞から得られた平均デルタ−sfc結果+SEMが示されている。ワクチン接種前及びワクチン接種から30日後のPBMCの増殖性応答は、陽性対照コンカナバリンA(パネルE)及びHsp70タンパク質(パネルF)に対する刺激指数(SI)として表されている。全ての動物(糞便培養陰性動物及び糞便培養陽性動物)から得た細胞から得られた平均結果+SEMが示されている。
【図3C】IFN−γElispotアッセイでのIFN−γの産生は、スポット形成細胞の数(sfc)/2.105PBMCとして表されている。検査した抗原は培地対照、コンカナバリンA(陽性)、Hsp70タンパク質及びPPDPである。ワクチン接種前(パネルA)及びアクチン接種から30日後(パネルB)の全ての動物から得た細胞から得られた平均sfc結果+SMEが示されている。IFN−γElispotアッセイでのIFN−γの産生は、デルタ−sfcとして表されている。スポット形成細胞の数(sfc)/2.105PBMCは培地対照に対して補正されている。検査した抗原はコンカナバリンA(陽性対照)(パネルC)及びHsp70タンパク質(パネルD)である。全ての動物(糞便培養陰性動物及び糞便培養陽性動物)から得た細胞から得られた平均デルタ−sfc結果+SEMが示されている。ワクチン接種前及びワクチン接種から30日後のPBMCの増殖性応答は、陽性対照コンカナバリンA(パネルE)及びHsp70タンパク質(パネルF)に対する刺激指数(SI)として表されている。全ての動物(糞便培養陰性動物及び糞便培養陽性動物)から得た細胞から得られた平均結果+SEMが示されている。
【図3D】IFN−γElispotアッセイでのIFN−γの産生は、スポット形成細胞の数(sfc)/2.105PBMCとして表されている。検査した抗原は培地対照、コンカナバリンA(陽性)、Hsp70タンパク質及びPPDPである。ワクチン接種前(パネルA)及びアクチン接種から30日後(パネルB)の全ての動物から得た細胞から得られた平均sfc結果+SMEが示されている。IFN−γElispotアッセイでのIFN−γの産生は、デルタ−sfcとして表されている。スポット形成細胞の数(sfc)/2.105PBMCは培地対照に対して補正されている。検査した抗原はコンカナバリンA(陽性対照)(パネルC)及びHsp70タンパク質(パネルD)である。全ての動物(糞便培養陰性動物及び糞便培養陽性動物)から得た細胞から得られた平均デルタ−sfc結果+SEMが示されている。ワクチン接種前及びワクチン接種から30日後のPBMCの増殖性応答は、陽性対照コンカナバリンA(パネルE)及びHsp70タンパク質(パネルF)に対する刺激指数(SI)として表されている。全ての動物(糞便培養陰性動物及び糞便培養陽性動物)から得た細胞から得られた平均結果+SEMが示されている。
【図3E】IFN−γElispotアッセイでのIFN−γの産生は、スポット形成細胞の数(sfc)/2.105PBMCとして表されている。検査した抗原は培地対照、コンカナバリンA(陽性)、Hsp70タンパク質及びPPDPである。ワクチン接種前(パネルA)及びアクチン接種から30日後(パネルB)の全ての動物から得た細胞から得られた平均sfc結果+SMEが示されている。IFN−γElispotアッセイでのIFN−γの産生は、デルタ−sfcとして表されている。スポット形成細胞の数(sfc)/2.105PBMCは培地対照に対して補正されている。検査した抗原はコンカナバリンA(陽性対照)(パネルC)及びHsp70タンパク質(パネルD)である。全ての動物(糞便培養陰性動物及び糞便培養陽性動物)から得た細胞から得られた平均デルタ−sfc結果+SEMが示されている。ワクチン接種前及びワクチン接種から30日後のPBMCの増殖性応答は、陽性対照コンカナバリンA(パネルE)及びHsp70タンパク質(パネルF)に対する刺激指数(SI)として表されている。全ての動物(糞便培養陰性動物及び糞便培養陽性動物)から得た細胞から得られた平均結果+SEMが示されている。
【図3F】IFN−γElispotアッセイでのIFN−γの産生は、スポット形成細胞の数(sfc)/2.105PBMCとして表されている。検査した抗原は培地対照、コンカナバリンA(陽性)、Hsp70タンパク質及びPPDPである。ワクチン接種前(パネルA)及びアクチン接種から30日後(パネルB)の全ての動物から得た細胞から得られた平均sfc結果+SMEが示されている。IFN−γElispotアッセイでのIFN−γの産生は、デルタ−sfcとして表されている。スポット形成細胞の数(sfc)/2.105PBMCは培地対照に対して補正されている。検査した抗原はコンカナバリンA(陽性対照)(パネルC)及びHsp70タンパク質(パネルD)である。全ての動物(糞便培養陰性動物及び糞便培養陽性動物)から得た細胞から得られた平均デルタ−sfc結果+SEMが示されている。ワクチン接種前及びワクチン接種から30日後のPBMCの増殖性応答は、陽性対照コンカナバリンA(パネルE)及びHsp70タンパク質(パネルF)に対する刺激指数(SI)として表されている。全ての動物(糞便培養陰性動物及び糞便培養陽性動物)から得た細胞から得られた平均結果+SEMが示されている。
【図4A】Hsp70特異的抗体−イソタイプ応答が図示されている。ワクチン接種の時点は、210日(白抜き四角)であり、ツベルクリン皮膚検査は266日後に行われる(白抜き四角)。結果は、糞便培養陽性(ひし形)及び陰性動物(四角)のそれぞれに対して、平均血清/陰性(SN)比+SEMである。図AはIgA応答を図示し、図BはIgM応答を図示し、図CはIgG1応答を図示し、図DはIgG2応答を図示する。
【図4B】Hsp70特異的抗体−イソタイプ応答が図示されている。ワクチン接種の時点は、210日(白抜き四角)であり、ツベルクリン皮膚検査は266日後に行われる(白抜き四角)。結果は、糞便培養陽性(ひし形)及び陰性動物(四角)のそれぞれに対して、平均血清/陰性(SN)比+SEMである。図AはIgA応答を図示し、図BはIgM応答を図示し、図CはIgG1応答を図示し、図DはIgG2応答を図示する。
【図4C】Hsp70特異的抗体−イソタイプ応答が図示されている。ワクチン接種の時点は、210日(白抜き四角)であり、ツベルクリン皮膚検査は266日後に行われる(白抜き四角)。結果は、糞便培養陽性(ひし形)及び陰性動物(四角)のそれぞれに対して、平均血清/陰性(SN)比+SEMである。図AはIgA応答を図示し、図BはIgM応答を図示し、図CはIgG1応答を図示し、図DはIgG2応答を図示する。
【図4D】Hsp70特異的抗体−イソタイプ応答が図示されている。ワクチン接種の時点は、210日(白抜き四角)であり、ツベルクリン皮膚検査は266日後に行われる(白抜き四角)。結果は、糞便培養陽性(ひし形)及び陰性動物(四角)のそれぞれに対して、平均血清/陰性(SN)比+SEMである。図AはIgA応答を図示し、図BはIgM応答を図示し、図CはIgG1応答を図示し、図DはIgG2応答を図示する。
【図5A】Hsp70N末端断片(RBS70)特異的抗体−イソタイプ応答が図示されている。ワクチン接種の時点(白抜き四角、210日)及びツベルクリン皮膚検査(白抜き四角、266日)が示されている。結果は、糞便培養陽性(ひし形)及び陰性動物(四角)の別々に対して、平均血清/陰性(SN)比+SEMである。図AはIgA応答を図示し、図BはIgM応答を図示し、図CはIgG1応答を図示し、図DはIgG2応答を図示する。
【図5B】Hsp70N末端断片(RBS70)特異的抗体−イソタイプ応答が図示されている。ワクチン接種の時点(白抜き四角、210日)及びツベルクリン皮膚検査(白抜き四角、266日)が示されている。結果は、糞便培養陽性(ひし形)及び陰性動物(四角)の別々に対して、平均血清/陰性(SN)比+SEMである。図AはIgA応答を図示し、図BはIgM応答を図示し、図CはIgG1応答を図示し、図DはIgG2応答を図示する。
【図5C】Hsp70N末端断片(RBS70)特異的抗体−イソタイプ応答が図示されている。ワクチン接種の時点(白抜き四角、210日)及びツベルクリン皮膚検査(白抜き四角、266日)が示されている。結果は、糞便培養陽性(ひし形)及び陰性動物(四角)の別々に対して、平均血清/陰性(SN)比+SEMである。図AはIgA応答を図示し、図BはIgM応答を図示し、図CはIgG1応答を図示し、図DはIgG2応答を図示する。
【図5D】Hsp70N末端断片(RBS70)特異的抗体−イソタイプ応答が図示されている。ワクチン接種の時点(白抜き四角、210日)及びツベルクリン皮膚検査(白抜き四角、266日)が示されている。結果は、糞便培養陽性(ひし形)及び陰性動物(四角)の別々に対して、平均血清/陰性(SN)比+SEMである。図AはIgA応答を図示し、図BはIgM応答を図示し、図CはIgG1応答を図示し、図DはIgG2応答を図示する。
【実施例】
【0071】
(実施例1)
2.材料と方法
2.1動物及び実験の設計
本研究では、新生仔のウシ計28匹(雄16匹及び雌12匹)を使用した。ウシは、慣用の手順及び給餌を用いて育て、一般的な健康状態に関して毎日チェックした。ウシは、3つのグループの飼育用檻(それぞれ、9匹又は10匹のウシ)うちの1つに無作為に割り当てた。6週毎に、血液及び糞便試料を採取した。リンパ球を単離するために、ヘパリン処理された血液試料を使用し、血清学的分析のために血清試料を採取した。血液試料の採取と同時に、体重を記録した。糞便試料は、実験の間、感染から0、42、91、126、168、210、252、294、336、378、462、504及び561日後に、13回採取した。
【0072】
2.2ウシの感染
マイコバクチン−J依存性及びIS900PCR陽性のMAPの糞便培養によって一貫した排出個体として特定されたMAP感染ウシから得られた糞便を経口的に使用して、全てのウシを感染させた。一定の間隔で、実験の最初の21日の間、経管栄養法給餌による投薬当り100mLの代用乳と混合された糞便20gをウシに9回与えた。半定量的な糞便培養は、100cfu超/g糞便が接種材料中に存在することを示した。従って、ウシには、それぞれ、1.8×104cfuの最小合計用量が与えられた。
【0073】
2.3ウシの免疫化
全てのウシは、実験の217日目に、1回免疫化された。免疫化は、20mg/mLのジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDA)アジュバント(SigmaAldrich,US)を含有するリン酸緩衝化生理的食塩水(PBS)1mL中の組換えM.a.パラチュバキュロシスHsp70の200μgの胸垂中への皮下投与から成った。組換えM.a.パラチュバキュロシスHsp70は、以前に公表されたとおりに作製した(Koets,A.P.,Rutten,V.P.,de Boer,M.,Bakker,D.,Valentin−Weigand,P.& van Eden,W. Infect Immun 2001,69(3),1492−1498)。
【0074】
2.4MAPの糞便培養
パラチュバキュロシス感染の診断は、公表された方法(Jorgensen,J.B.,Acta Vet Scand 1982,23(3),325−335)に基づいて、Veterinary Health Service、デベンター(Deventer)、オランダにおいて、定型的な糞便培養系を用いて行った。4週毎にコロニーを計数することによって(最初の観察は、接種後8週に行う。)、細菌の増殖に関して試料をチェックし、16週の培養期間後に、細菌の増殖が観察されなければ陰性と考えた。培養物のマイコバクチンJ依存性及びPCRによる特異的なIS900挿入配列の存在の確認に基づいて、細菌の増殖はM.アビウム属種パラチュバキュロシスであることが確認された(Vary,P.H.,Andersen,P.R.,Green,E.,Hermon−Taylor,J. & McFadden,J.J.,J Clin Microbiol 1990,28(5),933−937)。表1に概説されているように、糞便培養の結果は、陽性になるまでの時間(TTP;time to positive)(それぞれ8、12又は16週)と糞便1g当りのカウントされたコロニーの数(CFU)の組み合わせに基づいて、0と9の間に半定量的にスコア化した。
【0075】
【表1】
【0076】
2.5比較ツベルクリン皮膚検査
ワクチン接種から8週後に、比較ツベルクリン皮膚検査を行った。公式のEUガイドライン(L179,9.7.2002)に従って、ウシツベルクリン0.1mL(2500IU)及びトリツベルクリン0.1mL(2500IU)(Central Institute for Animal Disease Control(CIDC),Lelystad,The NetherlandsによるEU及びOIE規則に従って調製)を、各動物の首に皮内適用した。ツベルクリン皮膚検査から72時間後に、皮膚の襞の厚さを測定し、適用時の皮膚の襞の厚さに対して補正した。トリの反応と比べたときに、陽性のウシ反応が4mmを超えていた場合に、反応を陽性と記録した。トリの反応と比べたときに、陽性のウシ反応が1mmと4mmの間でより大きかった場合に、反応を疑わしいと記録した。陽性又は不確定なトリの反応と等しい又は下回る陽性又は不確定なウシの反応の場合に、陰性反応を記録した。
【0077】
2.6末梢血単核細胞の単離
無菌的に採取された、ヘパリン処理された血液試料から、密度勾配遠心を用いて末梢血単核細胞(PBMC)を単離し、以前に公表されたように培養した(Koets,A.P.,Rutten,V.P.,Hoek,A. et al,Vet Immunol Immunopathol 1999,70(1−2),105−115)。
【0078】
2.7抗原
組換えM.a.パラチュバキュロシスHsp65kD及びHsp70kDは、以前に詳しく記載された方法に従って作製した(Koets,A.P.,Rutten,V.P.,de Boer,M.,Bakker,D.,Valentin−Weigand,P.& van Eden,W.,Infect Immun 2001,69(3),1492−1498,Colston,A.,McConnell,I. & Bujdoso,R.,Microbiology 1994,140,3329−3336)。組換えHsp65及びHsp70の純度はSDS−PAGEを用いてチェックし、Limulusアッセイによって、LPSの汚染に関して調製物を検査した(Sigma,St. Louis,USA)。
【0079】
制限エンドヌクレアーゼAfIII(NEBioLabs)及びHindIII(Gibco−Invitrogen)を用いた酵素的消化を通じて、元のpTrcHisC−Hsp70発現プラスミド(酵素5単位/μgDNA)からC末端「タンパク質結合ドメイン」を除去することによって、Hsp70N末端タンパク質断片を作製した。アガロースゲル電気泳動を用いて断片を分離し、QIAEXIIゲル抽出キット(Qiagen)を用いて、巨大な断片をゲルから単離した。T4ポリメラーゼを使用することによって、制限部位を平滑末端化し、DNAクリーニングキット(ZymoResearch)を用いてDNAを単離した。続いて、製造業者によって提供された指示書に従って、QuickLigationKit(NEBiolabs)を含有するT4DNAリガーゼを用いて、ベクターDNAを連結した。製造業者によって提供された指示書に従ってイー・コリ(E.coli)DH5α(LibararyEfficiencyDH5αCompetentCells,LifeTechnologies)を形質転換するために、ベクターを使用した。タンパク質発現の誘導及びタンパク質精製は、野生型Hsp70タンパク質に対して記載された方法と同様に行った。RBS70と名付けられた欠失変異タンパク質は、野生型Hsp70タンパク質を含有する623アミノ酸の最初の357アミノ酸を含有した(これは、プラスミドDNA配列決定、PAGE及びウェスタンブロッティングによって確認された。)。
【0080】
精製されたタンパク質逸脱物(deviate)は、OIEマニュアル(Gilmour,N.J.L.&Wood,G.W.傍結核(ヨーネ病)In OIE Manual of Standards for Diagnostic Tests and Vaccines Office International des Epizooties,Paris,1996.218−228)に従って、Central Institute for Animal Disease Control(CIDC)、レリスタッド、オランダにおいて、M.a.パラチュバキュロシス株3+5/C培養上清(PPD−P)及びM.a.アビウム株D4培養上清(PPD−A)から調製した。M.a.パラチュバキュロシス株316F及びM.a.アビウム株D4は、Institute for Animal Health and Science(レリスタッド、オランダ)で増殖させた。イー・コリ株DH5αは、37℃でLuria・Bertani(LB)培地中において一晩増殖させた。コンカナバリンA(2.5μg/mL)を陽性対照として使用し、培地のみを陰性対照として使用した。
【0081】
2.8ウシIFNγ分泌細胞に対するElispotアッセイ
ウシIFNγ分泌細胞に対するElispotアッセイは、以前に公表されたとおりに行った(Koets,A.,Hoek,A.,Langelaar,M.et al,Vaccine 2006,24(14),2550−2559)。スポットを計数し、製造業者(A.EL.VIS GmbH,Hanover,Germany)によって提供された指示書に従って、自動化されたElispot読取装置を用いて、スポット総面積を算出した。スポットの計数結果は、別段の記載がなければ、抗原刺激されたウェル中のスポットの数から培地対照ウェル中のスポットの数を差し引くことによって計算されたデルタスポット形成細胞(dSFC)として表した。培地のみを陰性対照として使用し、コンカナバリンA(2.5μg/mL)を陽性対照として使用した。PPD−P、PPD−A,Hsp70及びHsp65は、10μg/mLの所定の最適濃度で使用した。M.a.パラチュバキュロシス株316F、M.a.アビウム株D4及びイー・コリDH5αは、PBMCとともにMOI1:1で使用した。全ての試験は、3つ組みで行った。
【0082】
2.9リンパ球刺激試験
リンパ球刺激試験(LST)は、以前に詳しく記載されているとおりに(Koets,A.,Rutten,V.,Hoek,A. et al.Progressive bovine paratuberculosis is associated with local loss of CD4(+)T cells,increased frequency of gamma delta T cells,and related changes in T−cell function. Infect Immun 2002,70(7),3856−3864)、96ウェルマイクロタイタープレート(Costar,Cambridge,MA,USA)中で行った。要約すると、密度勾配によって単離されたPBMC懸濁液100μL(2.106細胞/mL)及び抗原100μL/ウェル、全ての試験は3つ組みで行った。マイコバクテリアの抗原PPD−P、Hsp65及びHsp70は、それぞれ10μg/mLの所定の最適濃度で使用した。株316F細菌を短時間音波処理し、計数し、1.107CFU/mLの濃度で使用した。コンカナバリンA(2.5μg/mL)を陽性対照として使用し、培地のみを陰性対照として使用した。加湿された温置装置中で3日間、37℃及び5%CO2で細胞を培養した。次いで、0.4μCuの3Hチミジン(Amersham International)を各ウェルに添加し、細胞をさらに18時間培養した。続いて、ガラスファイバーのフィルター上に細胞を採取し、液体シンチレーション計数によって3Hチミジンの取り込みを測定し、特定的刺激のcpmを培地対照のcpmによって除することによって計算した刺激指数(S.I.)として表した。
【0083】
2.10ウシの血清学
組換えM.a.パラチュバキュロシスHsp70タンパク質に対する血清学的応答は、以前に記載されたELISA技術(Koets,A.P.,Rutten,V.P.,de Boer,M.,Bakker,D.,Valentin−Weigand,P.& van Eden,W. Infect Immun 2001,69(3),1492−1498)に若干修飾を加えて用いて測定した。全ての血清はブロッキング緩衝液中に10倍希釈し、100μLを2つ組みで測定した。さらに、各プレート中に、陽性及び陰性対照試料を2つ組みで添加した。修飾は、イソタイプ特異的二次抗原(マウス抗ウシIgG1、IgG2、IgA及びIgM(Cedi−Diagnostics,Lelystad,Netherlands))1μg/mLの使用、その後3回の洗浄、及びペルオキシダーゼが連結されたポリクローナルヤギ抗マウス抗体(NordicLaboratories,The Netherlands)との温置からなった。最後に、プレートを3回洗浄し、405nmでのELISA読取装置(Biorad)上で読み取られる発色反応を展開するために、ABTS基質緩衝液100μL(Boehringer Mannheim,Mannheim,Germany)を使用した。結果は、S/N(試料/陰性)比として表されている。
【0084】
3.結果
3.1一般的な健康状態に対する観察
実験を通じて動物の成長をモニターし、結果は、従来どおりに育てられたワクチンを接種していないウシと同様に、ウシが成長することを示した(データは示さず。)。治療に対して非応答性である重い呼吸器感染後に、1匹の動物を間引いた。
【0085】
3.2ワクチン接種の副作用
胸垂中にDDAアジュバントとともにHsp70で単回ワクチン接種することの効果は、免疫から1週後に、2.6cm±0.2(SEM)の平均直径を有する触診可能な腫脹であった。7匹の動物が、4cmを超える最大直径を有する腫脹を有していた。症例の大半で、腫脹は痛みを伴うものではなく、3週間の間に、約1cmの直径の明らかに不活発な小結節に消散した。
【0086】
3.3糞便培養の結果
糞便培養試験から得られた結果は、図1に要約されている。実験的感染後の最初の210日の間、糞便陽性動物の数の指数関数的な増加が観察された。この時点で、28匹の動物のうち12匹(43%)が、少なくとも1回、糞便培養陽性であり、210日の時点で、時点当りの合計累積的糞便培養スコアは32に達した。ワクチン接種後、細菌の糞便排出の鋭い低下が観察された。実験の残りの間、合計累積的糞便培養スコアは12より高くなることはなく、単回ワクチン接種後に、62.5%の排出の低下が示された。
【0087】
3.4ツベルクリン皮膚検査(図2)
図2に図示されているように、Hsp70サブユニットワクチンでのワクチン接種から8週後に検査したときに、全ての動物は比較皮膚検査において陽性反応を示さなかった。一般に、糞便培養陽性動物は、糞便培養陰性動物と比べて、傍結核感染の指標である低いウシツベルクリン反応とともに、より高いトリ反応を有していた。
【0088】
3.4IFN−γElispot(図3)
ワクチン接種前とワクチン接種後(ワクチン接種から30日後)を比較すると、刺激を受けていない対照試料(スチューデントt検定、p<0.05)と比べて、PPD−Pに対する顕著なIFN−γ応答がワクチン接種前及びワクチン接種後に認められた。しかしながら、ワクチン接種前及び後の何れにおいても、それらの糞便培養状態に関わらず、28匹の動物中に、Hsp70免疫原に対する陽性応答は観察されなかった。
【0089】
3.5リンパ球刺激試験(図3)
ワクチン接種後に、Hsp70免疫原に対する増加した応答が増殖アッセイ中で観察されたが、これは、糞便培養陽性動物中においてのみ検出された。
【0090】
3.6血清学的応答(図4)
糞便培養陽性動物及び糞便培養陰性動物の両者において、ワクチン接種後に、明瞭な抗体応答が測定された。抗体応答は、IgG1イソタイプに対して最も顕著であった。ワクチン接種の直後に、IgG2に対して典型的なスパイク応答が観察された。IgMに関しては、糞便培養状態は感染状態に関連する最高の応答差を誘導した。糞便培養陽性動物は、糞便培養陰性動物と比べて、より高く、より長いIgM応答を示した。血清IgA応答は、一般に低かった。ツベルクリン皮膚検査操作は、検査したイソタイプの何れについても、Hsp70タンパク質に対する抗体応答を誘導しなかった。
【0091】
3.7血清学的応答(図5)
糞便培養陽性動物及び糞便培養陰性動物の何れにおいても、ワクチン接種後に、Hsp70−N末端タンパク質断片(RBS70)に対する明瞭な抗体応答が測定された。抗体応答は、IgG1イソタイプに対して最も顕著であった。ワクチン接種の直後に、IgG2に対して典型的なスパイク応答が観察された。IgMに関しては、糞便培養状態は感染状態に関連する最高の応答差を誘導した。糞便培養陽性動物は、糞便培養陰性動物と比べて、より高く、より長いIgM応答を示した。血清IgA応答は、一般に低かった。ツベルクリン皮膚検査操作は、検査したイソタイプの何れについても、RBS70タンパク質に対する抗体応答を誘導しなかった。
【0092】
結論:Hsp70/DDAワクチンによるウシの治療的ワクチン接種は、糞便中のMAPの排出を著しく低下させ、次いで、この低下は感染の伝染を低減し得、直接の及び長期の副作用をほとんど有さず、現在の結核診断を妨害せず、ワクチン接種された動物と感染した動物の識別を可能とし、従って、傍結核根絶戦略に寄与し得る。
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療用ワクチンの製造のための熱ショックタンパク質の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
今日知られている感染性疾患の多くは急速に発症し、医薬のワクチンの助けを得て又は得ずに、同じく急速に消失する。しかしながら、初期段階にはほとんど又は全く検出できない緩やかな進行性感染を引き起こす微生物の群が存在する。(真実の又は推定上の)潜伏状態のこの期間は、何年間も持続し得る。
【0003】
遅い進行性疾患を引き起こすことで有名な微生物の主な属は、マイコバクテリウム属であり、より具体的には、その種M.チュバキュロシス(M.tuberculosis)、M.アビウム(M.avium)、M.アビウム属種パラチュバキュロシス(M.aviumspp.paratuberculosis)及M.ボビス(M.bovis)である。M.チュバキュロシスは、特にヒトにおける結核(tb)の原因であり、M.アビウム属種パラチュバキュロシスは特にウシにおける傍結核(paratb)を引き起こし、M.ボビスはヒト結核のウシ変形物(ウシtb)として観察することができる病気の原因である。これらの3つのマイコバクテリアは、それらの表現型/遺伝子型に関して及びそれらが引き起こす遅い進行性疾患の性質に関して、極めて密接に関連している。
【0004】
これら3つの種の密接な関連性の単なる例示として、マイコバクテリウム・ボビスBCGワクチンは、(M.チュバキュロシスによって引き起こされる)ヒトtb及び(M.ボビスによって引き起こされる)ウシtbの両方に対して保護するために(但し、限定的な保護である。)現在利用可能な唯一のワクチンである。これは、Vordermeier,H.M.他(Veterinary Journal 171:229−244(2006))によって、及びDietrich,J.他(Tuberculosis 86:163−168(2006))によって例証されている。
【0005】
3つのマイコバクテリウム種間の密接な関連性の別の側面、又はよりよい側面、その結果は、それらが様々な哺乳動物種に対して感染性であるという確立された事実である。ネコにおけるマイコバクテリウム・ボビスの結核が記載されている。動物、特にネコからヒトへのマイコバクテリウム・ボビスの伝染が記載されている。ヒトから動物、とりわけイヌへのマイコバクテリウム・チュバキュロシスの伝染が記載されており、ネコ結核のヒトに対する危険性が記載されている。(Monies,B. et al.,veterinary Record 158:280(2006),Monies,B. et al.,veterinary Record 158:245−246(2006),Liu,S.,Journ.Am.VetMed.Ass.177:164−167(1980),Snider,W.,Am.Rev.Resp.Dis.104:877−887(1971),Pavlik,I. et al,Veterinarni Medicina 50:291−299(2005),Baker,M.G. et al.,Epidem & Inf.134:1068−1073(2006))。
【0006】
種間感染の頻度が相対的に低いことに鑑みれば、ペットとして飼われている全てのネコ及びイヌに予防的なワクチン接種を検討することは有用でなく、又は賢明でさえない。しかしながら、極めて魅力的な可能性は、動物がマイコバクテリア種によって感染された状態となった事例における治療的なワクチン接種である。このようなアプローチは、現在、幾つかの抗生物質に対して耐性を示す多くのマイコバクテリア種が存在するという事実のみに関しても、現行の治療(抗生物質を用いた治療)よりずっと魅力的である。しかしながら、このような治療的ワクチンは、現在入手できない。
【0007】
結核は、全世界において大きな健康上の問題であり、毎年、200万を超える死亡をもたらすことが知られている。抗生物質を用いた治療は有効であり、比較的容易であるが、特に疾病が風土病である世界の領域の脆弱な社会経済構造によって著しく妨げられる。従って、ヒトの疾病に対する有効なワクチンは極めて望ましい。
【0008】
ウシ結核は、特に、1988年以来増加を続けている英国において、極めて高い発生率を有する。ウシ結核は、北アイルランドにおいても、この10年間にわたって、深刻化している問題である。ウシ結核は、ニュージーランド及びアイルランドなどの風土病を有する野生動物保有宿主を有する国々において、経済的な問題でもあり続けている。他方で、オーストラリア及び西ヨーロッパの大半の国は、この病気を根絶した。それにも関わらず、発展途上国では、この病気はなお問題であり続け、その結果、世界の人口の94%が、ウシ及び/又はバッファロー中のウシ結核の駆除が存在しない国に暮らしている。従って、反芻動物の疾病に対する有効なワクチンも極めて望ましい。
【0009】
しかしながら、マイコバクテリウム・ボビスBCGワクチンは、世界中で最も広く使用されているワクチンであるにも関わらず、ヒト結核及びウシ結核に対して限定的な保護を与えるに過ぎないことが知られている。上に挙げられている刊行物には、マイコバクテリウム・ボビスBCGワクチンにおいて遭遇する問題が例示されている。
【0010】
反芻動物中の傍結核又はヨーネ病(JD)は小腸の感染性疾患であり、畜産業の世界的問題であると考えられている。この疾病は、マイコバクテリウム・アビウム属種パラチュバキュロシス(MAP)によって引き起こされ、甚大な経済的損失をもたらす(Johnson−Ifearulundu,Y.,J.B.Kaneene,及びJ.W.Lloyd,J.Am.Vet.Med.Assoc,1999.214(6):p.822−5)。MAPがヒトのクローン病の発病に関与していることが示唆されているので、動物及びヒトの健康の両面から、改良された診断ツールの使用とワクチン接種を組み合わせた戦略による該疾病を(根絶ではなくても)駆除することを目指して、傍結核の免疫病因にさらなる研究を行うことが正当化される。(Collins,M.T.,J Dairy Sci,1997. 80(12):p.3445−8.Biet,F.,M.L. Boschiroli,M.F.Thorel,及び L.A. Guilloteau,Vet Res,2005.36(3):p.411−36.Greenstein,RJ.,Lancet Infect Dis,2003.3(8):p.507−14..Chiodini,R.J.及び CA.Rossiter,Vet Clin North Am Food Anim Pract,1996. 12(2):p.457−67)。
【0011】
幼いウシは、感染したウシの初乳、乳若しくは糞便の経口摂取を通じて、生後1ヶ月で感染し、又は子宮内経路を介した感染を通じて出生前に感染する。幼いウシは首尾よく感染を除去し、又は生涯にわたって感染した状態になる。感染した動物は、およそ2歳以降から断続的に又は継続的に、糞便及び乳の中に細菌を排出する(Payne,J. 及び J. Rankin,Res.Vet.Sci.,1961.2:p.175−179.Payne,J. 及び J. Rankin,Res.Vet.Sci.,1961.2:p.167−174)。4から5年の潜伏期間後、感染した動物の割合は無症候性段階から臨床段階へと移行し、慢性的な下痢を伴うタンパク質喪失性の腸疾患の治療不能な進行性形態を発症して、死に至る。最も感受性が高い動物の感染を予防し、より短いワクチン接種にすることを目指して、感染した動物を群れから除去する検査及び選別、牛の管理などの様々な戦略を通じて、疾病の管理及び最終的には根絶が試みられてきた。MAPの伝染は、経口的な糞便経路を通じて生じるのみならず、子宮内伝染を通じても生じるので、若い牛の感染を予防することを目的とした措置の幾つかは完全には有効であり得ない(Sweeney,R.W.,Vet Clin North Am Food Anim Pract,1996. 12(2):p.305−12.Sweeney,R.W.,R.H.Whitlock,及びA.E.Rosenberger,Am J Vet Res,1992.53(4):p.477−80.Seitz,S.E.,L.E.Heider,W.D.Heuston,S.Bech−Nielsen,D.M.Rings,及び L.Spangler,J Am Vet Med Assoc,1989.194(10):p.1423−6)。
【0012】
約75年前に、Vallee及びRinjardの古典的な実験によって、本疾病の臨床徴候の開始を遅らせるためにワクチン接種を使用できることが示された。この効果は、罹病した動物中の感染の進行をより遅くすることによるものである可能性が最も高い。
【0013】
現在利用可能なワクチンは、アジュバントを加えた完全なバクテリンの変形物である。これらのワクチンは、現場研究において、異なる効果を有することが示されている。(Kohler,H.,et al.,J Vet Med B Infect Dis Vet Public Health 2001,48(3),185−195.Muskens,J.,van Zijderveld,F.,Eger,A. 及び Bakker,D.,Veterinary Microbiology 2002,86(3),269−278)。
【0014】
これらの研究から、完全な細胞型のワクチン(不活化されている。)での生後1ヶ月のウシのワクチン接種は、一定程度まで、本疾病の臨床段階の発達を妨げ、従って、経済的な損害を低下させることが明らかとなっている。しかしながら、ワクチン接種された群れとワクチン接種されていない群れにおいて、無症候的に感染した動物は概ね同じ頻度で検出されたので、ウシでは、ワクチン接種のこの種類は、マイコバクテリアの排除をもたらさない。従って、このワクチンは感染を予防せず、糞便中に断続的に細菌を排出する無症候性に感染した動物の頻度をせいぜい僅かに限定するに過ぎない。
【0015】
さらに、このワクチン接種戦略はウシ結核の診断を妨害し、その結果、不活化された完全な細胞ワクチンの使用は限定され、又は(例えば、オランダにおいて)禁止されている。
【0016】
最後に、不活化された完全な細胞ワクチンは、ワクチン接種部位に大規模な組織損傷も引き起こし、ウシでのワクチンの誤用及び例えば、獣医師による偶発的な自己接種は深刻な副作用を有し得る。これらの深刻な欠点は、疫学的な動物の健康及びヒトの健康の観点から、現在世界中でウシのワクチン接種の使用を制約し、傍結核を根絶する上で大きな問題となっている。
【0017】
マイコバクテリアのサブユニットのサブユニットの組み合わせでのワクチン接種は、関連するマイコバクテリウム・ボビスに対する保護において、少なくともいくらかの効果を有することが示されている。Skinnerは、組み合わされたHsp65、Hsp70及びApaDNAワクチン並びにBCGに基づくワクチンでの初回強化ワクチン接種を記載した(Skinner,M.A.et al,Infection and Immunity,2005,73(7):4441−4444)。しかしながら、このようなワクチンは、それぞれ、タンパク質ワクチン及びDNAワクチンでの又はその逆での初回接種及び強化接種を必要とし、さらに、3つの異なる抗原を全て必要とする。
【0018】
米国特許出願公開第2003/0073094号では、個体の免疫応答を調節する方法として、マイコバクテリウム・チュバキュロシスのストレスタンパク質の使用が記載されている。この出願では、熱ショックタンパク質Hsp70などのストレスタンパク質が非特異的な様式で、特に予防において、並びに癌及び自己免疫疾患に対する一般的で、非特異的な刺激物質として、免疫系を刺激する方法として使用されている。
【0019】
PCT出願WO02/067982号は、このようなストレスタンパク質が過剰発現されている完全細胞ワクチンを記載している。しかしながら、このような完全細胞ワクチンは、上記のようなウシ結核診断を妨害するので、選択されるワクチンではない。
【0020】
KoetsA.他は、マイコバクテリウム・アビウム属種パラチュバキュロシスHsp70での予防的ワクチン接種は、保護的ではないが、最初の2年の間に、糞便中のマイコバクテリウム・アビウム属種パラチュバキュロシスの排出のレベルを減少させることを示した(Koets,A.,et al.,Vaccine 2006,24:2550−2559)。EP1510821号では、同じ著者が治療剤としてのHsp70の使用を示唆した。しかしながら、この示唆された治療用途の陽性効果は示されなかった。さらに、この欧州特許出願において、患者が排出者となった後のHsp70の治療的適用は挙げられておらず、示唆もされていない。
【0021】
しかしながら、2年の期間後に、排出は益々悪化し、このことを別としても、臨床段階の開始は、2年後でなければ生じず、典型的には2年と5年の間に生じる。
【0022】
上述のことから明らかであるように、新生ウシの汚染を回避することは、不可能ではないとしても、極めて困難である。新生ウシは、出生の間に、既に感染状態となっている場合もあり得る。このことは、実際の予防的ワクチン接種が可能でない場合があり得ることを示唆する。約10年前に、関連する細菌マイコバクテリウム・チュバキュロイスに関して、曝露後ワクチン接種の方法として、予防的な様式でなく、治療的な様式で、完全細胞ワクチンを用いた試み及びワクチン接種が示唆されている(Fine,P.E.,Novartis Foundation symposium 1998)。しかしながら、結果は失望するものであった。Turner,J.他は、このようなアプローチがマイコバクテリウム・チュバキュロシスへのエアロゾル感染の過程を全く調節するものではないことを明確に示した(Turner,J et al.,Infection and Immunity 2000,68(3):1706−1709)。
【0023】
このことは、少なくともマイコバクテリウム・アビウム属種パラチュバキュロシスに密接に関連するマイコバクテリウム・チュバキュロシスに関しては、このワクチン接種後アプローチは無用であることを強く示唆する。
【0024】
LowrieD.B.他は、この現象に対して可能な説明を与えた。LowrieD.B.他は、タンパク質抗原によって引き起こされるような2型細胞免疫応答は、マイコバクテリウム・チュバキュロシス感染の間、大量に存在するが、保護に寄与するものではないことを示した。従って、1型細胞免疫応答の方向へのバランスのシフトは有益であり得る。このシフトは、タンパク質をベースとするワクチンに代えてDNAワクチンを使用することによって誘導することができる。実際に、LowrieD.B.他は、65kDの熱ショックタンパク質(Hsp65)を含むDNAワクチンでの曝露後ワクチン接種は、タンパク質そのものでのワクチン接種とは異なり、疾病に対する有意な保護を与え、細菌を死滅させさえする免疫応答を実際に誘導することを示した。Hsp70を含むDNAワクチンに対しては、ずっと顕著でない保護が見出された。これらの知見は、上記のSkinner,M.A.の知見と合致する。
【0025】
従って、治療的ワクチン接種又は曝露後ワクチン接種に関しては、実行可能であれば、DNAワクチン、より具体的にはHsp65を含むDNAワクチンでのワクチン接種は好ましいワクチン接種アプローチであるように思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0073094号明細書
【特許文献2】国際公開第02/067982号
【特許文献3】欧州特許出願公開第1510821号明細書
【非特許文献】
【0027】
【非特許文献1】Vordermeier,H.M.他、Veterinary Journal 171、2006年、p.229−244
【非特許文献2】Dietrich,J.他、Tuberculosis 86、2006年、p.163−168
【非特許文献3】Monies,B.他、veterinary Record 158、2006年、p.280
【非特許文献4】Monies,B.他、veterinary Record 158、2006年、p.245−246
【非特許文献5】Liu,S.,Journ.Am.VetMed.Ass.177、1980年、p.164−167
【非特許文献6】Snider,W.,Am.Rev.Resp.Dis.104、1971年、p.877−887
【非特許文献7】Pavlik,I. et al,Veterinarni Medicina 50、2005年、p.291−299
【非特許文献8】Baker,M.G.他、Epidem & Inf.134、2006年、p.1068−1073
【非特許文献9】Johnson−Ifearulundu,Y.,J.B.Kaneene,及びJ.W.Lloyd,J.Am.Vet.Med.Assoc、214(6)、1999年、p.822−5
【非特許文献10】Collins,M.T.,J Dairy Sci、12、1980年、p.3445−8
【非特許文献11】Biet,F.,M.L. Boschiroli,M.F.Thorel,及び L.A. Guilloteau、Vet Res、36(3)、2005年、p.411−36
【非特許文献12】Greenstein,RJ.,Lancet Infect Dis、3(8)、2003年、p.507−14
【非特許文献13】Chiodini,R.J.及び CA.Rossiter,Vet Clin North Am Food Anim Pract、12(2)、1996年、p.457−67
【非特許文献14】Payne,J. 及び J. Rankin,Res.Vet.Sci.,2、1961年、p.175−179
【非特許文献15】Payne,J. 及び J. Rankin,Res.Vet.Sci.,2、1961年、p.167−174
【非特許文献16】Sweeney,R.W.,Vet Clin North Am Food Anim Pract,12(2)、1996年、p.305−12
【非特許文献17】Sweeney,R.W.,R.H.Whitlock,及びA.E.Rosenberger,Am J Vet Res、53(4)、1996年、p.477−80
【非特許文献18】Seitz,S.E.,L.E.Heider,W.D.Heuston,S.Bech−Nielsen,D.M.Rings,及び L.Spangler,J Am Vet Med Assoc、194(10)、1989年、p.1423−6
【非特許文献19】Kohler,H.他、J Vet Med B Infect Dis Vet Public Health、48(3)、2001年、p.185−195
【非特許文献20】Muskens,J.,van Zijderveld,F.,Eger,A. 及び Bakker,D.,Veterinary Microbiology、86(3)、2002年、p.269−278
【非特許文献21】Skinner,M.A.他、Infection and Immunity、73(7)、2005年、p.4441−4444
【非特許文献22】Koets,A.他、Vaccine、24、2006年、p.2550−2559
【非特許文献23】Fine,P.E.,Novartis Foundation symposium 1998
【非特許文献24】Turner,J他、Infection and Immunity、68(3)、2000年、p.1706−1709
【発明の概要】
【0028】
70kD熱ショックタンパク質(Hsp70)を含むワクチンでの感染後ワクチン接種は、感染した哺乳動物が排出者となった場合でさえ、極めて著しく排出のレベルを減少させることが、驚くべきことに、ここに見出された。これは、著しく排出している動物に対してさえ当てはまる。これは、上に論述されているようにLowrieによって及びSkinnerによって記載された知見に照らせば、極めて予想外である。Hsp70は、感染の間に既に強力な1型T細胞応答を誘導するが、一切保護をもたらさないことが知られている極めて免疫優性のタンパク質である。従って、単一サブユニットとしてのHsp70での感染後、排出発症後接種の後における保護効果の出現は、確実に予想することができなかった。
【0029】
さらに驚くべきことに、感染の臨床的段階に罹患している動物において、Hsp70ワクチンの治療的投与後に、この段階が悪化するのを停止することができること、又は改善さえ可能であることが見出された。長期間の無症候性段階から感染の臨床的徴候の段階への進行は常に不可逆的で、致死的であると常に考えられていたので、このことは、実際に極めて予想外である。排出の減少は、感染の時点から何年も後でさえ、すなわち、排出を通じて疾病を見ることができるようになった時点に、疾病が到達した時点で、疾病の進行を遅らせることができ、おそらくは、停止させることさえ可能であることを示す単なるパラメータである。例えば、ヒト結核の場合には、この時期は、潜伏の何年も後に、感染したヒトが病的な咳を示し、従って、細菌の拡散を開始する時期と同じである。重要なことは、排出の減少によって反映されるとおり、治療的なワクチン接種の結果、感染の時期の何年も後にさえ、明らかに、疾病の進行を遅らせ又は停止させることができるということである。M.チュバキュロシス、M.アビウム、M.アビウム属種パラチュバキュロシス及びM.ボビスは遺伝型及び表現型が極めて近縁関係にあり、これらが引き起こす疾病の進行は極めて似通っているので、これらの予想できない知見は、M.チュバキュロシス、M.アビウム、M.アビウム属種パラチュバキュロシス及びM.ボビスに対しても等しく当てはまる。ウシ及びヒト結核並びにイヌ、ネコ及び他の感受性動物中の結核の進行は、等しく遅らせることができ、最終的には停止させることができる。
【0030】
従って、本発明の第一の実施形態は、マイコバクテリウム属の細菌に感染し、及びこれらの細菌を排出し始めた哺乳動物における治療用ワクチンの製造のための、マイコバクテリアのHsp70タンパク質又はその免疫原性断片の免疫学的に活性な量の使用に関する。本発明においてこれらの細菌を排出するとは、細菌がそれらの宿主組織に到達した後(すなわち、コロニー形成後)に、病原性細菌の増殖後に、哺乳動物の糞便中に同属の細菌を排出することを意味する。
【0031】
好ましくは、哺乳動物は、ヒト、イヌ、ネコ又は反芻動物である。
【0032】
治療的使用とは、ワクチンの標準的な使用、すなわち予防的な使用とは異なり、治療的ワクチンとしてワクチンを使用することである。予防的使用とは、感染が起こる前の使用又は感染時期の付近での使用である。本願において治療的使用は、感染に最初に曝露した後に、本発明のワクチンを使用することであると考えられる。これは、動物及びヒトの感染に対して当てはまる。この次に、ワクチンは、排出を開始したヒト又は動物において使用される。
【0033】
実際には、ヒト、イヌ及びネコにおける感染の場合には、このような治療的使用は排出が顕著になった時期に始まり、これは、通常感染から3ヶ月、より一般的には6ヶ月、より一般的には12ヶ月又はそれ以降になって起こる。
【0034】
免疫原性用量は、おそらくはアジュバントと組み合わされて、標的哺乳動物種内の免疫応答を引き起こすのに十分な免疫原性物質の量として本分野で知られている。
【0035】
完全なHsp70タンパク質の代わりにHsp70の免疫原性断片でワクチン接種を行うという概念は、以下でさらに記載されている。
【0036】
本発明のHsp70タンパク質をコードする核酸配列は本分野において公知であるので(以下参照)、十分な量のこのタンパク質を取得することは現在では実行可能である。これは、例えば、Hsp70タンパク質をコードする遺伝子の全部又は一部を発現するための発現系を使用することによって行うことが可能である。核酸配列を発現するために必要不可欠であるのは、核酸配列がプロモーターの制御下にあるように核酸配列に機能的に連結された十分なプロモーターである。プロモーターの選択が、タンパク質発現のための宿主細胞として使用される細胞中で遺伝子転写を誘導することが可能な全ての真核、原核又はウイルスプロモータに及ぶことは、当業者に自明である。
【0037】
機能的に連結されたプロモーターは、それらが連結された核酸配列の転写を制御することが可能なプロモーターである。機能的に連結されたプロモーターの制御下にあるHsp70タンパク質をコードする核酸配列を含む構築物は、さらに組換えDNA分子と称される。このようなプロモーターは、発現のために使用される細胞内においてプロモーターが機能的である限り、タンパク質遺伝子の固有のプロモーター又は別のプロモーターであり得る。プロモーターは、異種のプロモーターとすることも可能である。宿主細胞が細菌である場合には、使用され得る有用な発現調節配列には、Trpプロモーター及びオペレーター(Goeddel,et al.,Nucl.Acids Res.,8,4057,1980);lacプロモーター及びオペレーター(Chang,et al.,Nature,275,615,1978);外膜タンパク質プロモーター(Nakamura,K. and Inouge,M.,EMBO J.,1,771−775,1982);バクテリオファージλプロモーター及びオペレーター(Remaut,E. et al.,Nucl.Acids Res.,11,4677−4688,1983);α−アミラーゼ(B.スブチリス)プロモーター及びオペレーター、終結配列並びに選択された宿主細胞と適合性があるその他の発現増強及び調節配列が含まれる。宿主細胞が酵母である場合、有用な発現調節配列には、例えば、α−接合因子が含まれる。昆虫細胞の場合、バキュロウイルスのポリヘドリン又はp10プロモーターを使用することが可能である(Smith,G.E. et al.,Mol.Cell.Biol.3,2156−65,1983)。宿主細胞が脊椎動物起源である場合には、有用な発現制御配列の例には、(ヒト)サイトメガロウイルス最初期プロモーター(Seed,B.et al.,Nature 329,840−842,1987;Fynan,E.F.et al.,PNAS 90,11478−11482,1993;Ulmer,J.B.et al.,Science 259,1745−1748,1993)、ラウス肉腫ウイルスLTR(RSV,Gorman,C.M.et al.,PNAS 79,6777−6781,1982;Fynan et al.,上記;Ulmer et al.,上記)、MPSVLTR(Stacey et al.,J. Virology 50,725−732,1984)、SV40最初期プロモーター(Sprague J.et al.,J.Virology 45,773,1983)、SV−40プロモーター(Berman,P.W.et al.,Science,222,524−527,1983)、メタロチオネインプロモーター(Brinster,R.L.et al.,Nature 296,39−42,1982)、熱ショックプロモーター(Voellmy et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82,4949−53,1985)、Ad2の主要後期プロモーター及びβ−アクチンプロモーター(Tang et al.,Nature356,152−154,1992)が含まれる。制御配列は、ターミネーター及びポリアデニル化配列も含み得る。使用することができる配列には、周知のウシ成長ホルモンポリアデニル化配列、SV40ポリアデニル化配列、ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)ターミネーター及びポリアデニル化配列がある。
【0038】
細菌、酵母、真菌、昆虫及び脊椎動物の細胞発現系は、極めて頻繁に使用される系である。このような系は、本分野において周知であり、例えば、Clontech Laboratories、Inc.4030 Fabian Way,Palo Alto,California 94303−4607,USAを通じて商業的に一般に入手可能である。これらの発現系に次いで、寄生生物を基礎とした発現系が、魅力的な発現系である。このような系は、例えば、公開番号2714074のフランス特許出願及びUS NTIS公開番号 US 08/043109(Hoffman,S. and Rogers,W.:Public.Date 1 December 1993)に記載されている。
【0039】
マイコバクテリウム・アビウム、M.ボビス又はM.チュバキュロシスに由来するHsp70タンパク質の使用が好ましい。
【0040】
従って、本発明のこの実施形態の好ましい形態は、Hsp70タンパク質がマイコバクテリウム・アビウム、M.ボビス又はM.チュバキュロシスHsp70である、哺乳動物における治療用ワクチンの製造のための、マイコバクテリアのHsp70タンパク質又はその免疫原性断片の免疫学的に活性な量の使用に関する。
【0041】
哺乳動物、好ましくは反芻動物を傍結核に対して保護するためのワクチンにおいて使用するのにより好ましいのは、マイコバクテリウム・アビウム属種パラチュバキュロシスを起源とするHsp70タンパク質の使用である。
【0042】
従って、本発明のこの実施形態のより好ましい形態は、Hsp70タンパク質がマイコバクテリウム・アビウム属種パラチュバキュロシスHsp70である、哺乳動物、好ましくは反芻動物における治療用ワクチンの製造のための、マイコバクテリアのHsp70タンパク質又はその免疫原性断片の免疫学的に活性な量の使用に関する。
【0043】
哺乳動物、好ましくは反芻動物、イヌ又はネコをM.ボビス感染に対して保護するためのワクチンにおいて使用するのにより好ましいのは、マイコバクテリウム・ボビスを起源とするHsp70タンパク質の使用である。
【0044】
哺乳動物、好ましくはヒト、イヌ又はネコをM.チュバキュロシス感染に対して保護するためのワクチンにおいて使用するのにより好ましいのは、マイコバクテリウム・チュバキュロシスを起源とするHsp70タンパク質の使用である。
【0045】
マイコバクテリアのHsp70配列は本分野において公知であり、とりわけ、以下の参照番号で見出すことができる。
マイコバクテリウム・レプラエ(Mycobacterium leprae):M95576
マイコバクテリウム・チュバキュロシス:P0A5B9
マイコバクテリウム・ボビス:P0A5C0
マイコバクテリウム・アビウム属種パラチュバキュロシス:AF254578
【0046】
例えば、ワクチン接種の目的のために、又は抗体を産生されるために、タンパク質が使用される場合には、完全なタンパク質を使用する必要はない。タンパク質に対する免疫応答を誘導することが可能なタンパク質の断片(そのままの状態であるか、又は例えばKLHなどの担体に連結されている。)、いわゆる、免疫原性断片を使用することも可能である。「免疫原性断片」とは、宿主中で免疫反応を誘導する能力をなお保持する、すなわち、B細胞又はT細胞エピトープを含む完全長タンパク質の断片であると理解される。この時点で、抗原性断片(決定因子)をコードするDNA断片を容易に同定するために、様々な技術が利用可能である。Geysenら(特許出願WO84/03564、特許出願WO86/06487、米国特許第4,833,092号、Proc.Natl Acad.Sci.81:3998−4002(1984),J.Imm.Meth.102,259−274(1987))によって記載された方法、いわゆるPEPSCAN法は、タンパク質の免疫学的に重要な領域であるエピトープの検出のための、実行が容易で、迅速な、十分に確立された方法である。この方法は、世界中で使用されており、従って、当業者に周知である。この(経験的な)方法は、B細胞エピトープの検出のために特に適している。また、何れかのタンパク質をコードする遺伝子の配列が与えられれば、現在公知であるエピトープとの配列的及び/又は構造的な一致に基づき、コンピュータアルゴリズムは、免疫学的に重要なエピトープとして、具体的なタンパク質断片を指定することが可能である。これらの領域の決定は、Hopp及びWoods(Proc.Natl.Acad.Sci.78:38248−3828(1981))に従う親水性基準とChou及びFasman(Advances in Enzymology 47:45−148(1987)及び米国特許第4,554,101号)に従う二次構造要因の組み合わせに基づいている。同様に、Berzofskyの両親媒性基準の補助を得て、コンピュータによって、配列からT細胞エピトープを予測することが可能である(Science 235,1059−1062(1987)及び米国特許出願NTIS US07/005,885)。要約された概説は、共通原理について、Shan Lu:Tibtech 9:238242(1991)、マラリアエピトープについて、Good et al;Science 235:1059−1062(1987)、概説として、Lu;Vaccine 10:3−7(1992)、HIV−エピトープについて、Berzowsky;The FASEB Journal 5:2412−2418(1991)に見出される。
【0047】
マイコバクテリア感染に対するワクチン接種のための別の極めて魅力的なアプローチは、医薬として許容される担体と一緒に、マイコプラズマのHsp70又はその免疫原性断片をコードする遺伝子又はその断片を含む生組換え担体(LRC)を使用することによるものである。これらのLRCは、さらなる遺伝的情報(この事例では、マイコバクテリアのHsp70又はその免疫原性断片をコードする遺伝子又はその断片)がクローニングされた微生物又はウイルスである。このようなLRCに感染した動物は、担体の免疫原に対してのみならず、遺伝子コードが、LRC中にさらにクローニングされているタンパク質(例えば、Hsp70)の免疫原性部分に対しても免疫応答を産生する。
【0048】
細菌のLRCの例として、本分野で公知の弱毒化されたサルモネラ株は、魅力的に使用することが可能である。生組換え担体寄生生物が、とりわけ、Vermeulen,A.N.(Int.Journ.Parasitol.28:1121−1130(1998))によって記載されている。また、LRCウイルスは、核酸を標的細胞中に輸送する手段として使用し得る。生組換え担体ウイルスは、ベクターウイルスとも称される。ベクターとしてしばしば使用されるウイルスは、ワクシニアウイルス(Panicali et al;Proc.Natl.Acad.Sci.USA,79:4927(1982)、ヘルペスウイルス(欧州特許出願0473210A2)及びレトロウイルス(Valerio,D. et al;in Baum,S.J.,Dicke,K.A.,Lotzova,E. and Pluznik,D.H.(Eds.),Experimental Haematology today−1988.Springer Verlag,New York:pp.92−99(1989))である。
【0049】
本分野で周知の、インビボ相同組換えの技術は、本発明の挿入された核酸の発現を宿主動物中で誘導することが可能な組換え核酸を、選択した細菌、寄生生物又はウイルスのゲノム中に導入するために使用することが可能である。
【0050】
従って、本発明のさらに別の実施形態は、マイコバクテリウム属の細菌に感染し、及びこれらの細菌を排出し始めた哺乳動物、特にヒト又は反芻動物における治療用ワクチンの製造のための、機能的に連結されたプロモーターの制御下にあるマイコバクテリアのHsp70又はその免疫原性断片をコードする生組換え担体の使用に関する。
【0051】
機能的に連結されたプロモーターの調節下にある、マイコバクテリアのHsp70又はその免疫原性断片をコードする遺伝子又はその断片を含む宿主細胞を、Hsp70の生産のために使用できることが明らかである。Hsp70をワクチンとして使用する前に、まず、宿主細胞からHsp70を抽出する必要は存在しない。すなわち、宿主細胞は、そのまま使用することも可能である。宿主細胞が、Hsp70を発現するLRCを含む場合も、同じことが当てはまる。その例は、ウイルス又は細菌のLRCを含む真核細胞である。
【0052】
従って、本発明のさらに別の実施形態は、マイコバクテリウム属の細菌に感染し、及びこれらの細菌を排出し始めた哺乳動物、特にヒト又は反芻動物における治療用ワクチンの製造のための、機能的に連結されたプロモーターの制御下にあるマイコバクテリアのHsp70又はその免疫原性断片をコードする遺伝子又はその断片を含む宿主細胞の使用に関する。
【0053】
この実施形態は、機能的に連結されたプロモーターの制御下にあるマイコバクテリアのHsp70又はその免疫原性断片をコードする遺伝子又はその断片を含む生組換え担体を含有する宿主細胞にも関する。
【0054】
宿主細胞は、pBR322として細菌を基礎としたプラスミド又はpGEXとして細菌の発現ベクター又はバクテリオファージと組み合わせた、細菌起源の細胞、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)、バシラス・スブチリス(Bacillus subtilis)及びラクトバシラス(Lactobacillus)種であり得る。宿主細胞は、真核細胞起源の宿主細胞、例えば、酵母特異的ベクター分子と組み合わせた酵母細胞、又はベクター若しくは組換えバキュロウイスルと組み合わせた、昆虫細胞のようなより高等な真核細胞(Luckow et al;Bio−technology 6:47−55(1988))、例えば、Ti−プラスミドを基礎としたベクター若しくは植物ウイルスベクター(Barton,K.A. et al;Cell 32:1033(1983))と組み合わせた植物細胞、適切なベクター若しくは組換えウイルスを有するHela細胞、ウシ細胞及び細胞株チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)又はクランデルネコ腎臓細胞のような哺乳動物細胞でもあり得る。
【0055】
例えば、サルモネラ担体又はウイルス担体を基礎とする、Hsp70又はその免疫原性断片を発現することが可能な上記生組換え担体を基礎とするワクチンは、マイコバクテリアの感染の天然経路をよりよく模倣する点で、サブユニットワクチンを上回る利点を有する。さらに、免疫化のために、組換え担体の少量が必要であるに過ぎないので、それらの自己増殖は有利である。
【0056】
特に(但し、この場合だけではない。)、本発明に従って製造された治療用ワクチンが若い動物に投与される場合には、別のウイルス又は微生物に対するワクチンを同時に投与することが有益である。
【0057】
このような組み合わせワクチンの好ましい形態は、Hsp70又はその免疫原性断片のほかに、別の哺乳動物、好ましくはヒト、ネコ、イヌ若しくは反芻動物の病原性ウイルス若しくは微生物、該ウイルス又は微生物の抗原性物質又は該抗原性物質をコードする遺伝情報を含むワクチンである。このような組み合わせワクチンは、マイコバクテリウム・ボビス、チュバキュロシス、アビウム又はアビウム属種バラチュバキュロシスの有害な効果に対する保護のみならず、他の病原体に対する保護も誘導する。
【0058】
ウシ病原性のマイコバクテリア種に対する保護用のワクチンが作製される場合には、このような反芻動物の病原性微生物及びウイルスは、好ましくは、ウシヘルペスウイルス、ウシウイルス性下痢症ウイルス、パラインフルエンザ3型ウイルス、ウシパラミクソウイルス、口蹄疫ウイルス、ウシ呼吸器多核体ウイルス、ブタサーコウイルス、ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルス、別のマイコバクテリウム属種、マイコプラズマ属種、パスツレラ・ヘモリティカ、スタフィロコッカス・オーレウス、エシェリヒア・コリ、レプトスピラ属種、スタフィロコッカス・ウベリス、タイレリアパルバ、タイレリア・アヌラタ、バベシア・ボビス、バベシア・ビゲミナ、バベシア・マジョール、トリパノソーマ種、アナプラズマ・マジナーレ、アナプラズマ・セントラーレ及びネオスポラ・カニナムの群から選択される。
【0059】
本発明のワクチンは、好ましい提示形態において、アジュバントも含有し得る。一般に、アジュバントは、非特異的様式で、宿主の免疫応答を強化する物質を含む。様々な多数のアジュバントが、本分野において公知である。アジュバントの例は、フロイントの完全及び不完全アジュバント、ビタミンE、非イオン性ブロックポリマー、ムラミルジペプチド、QuillA(R)、鉱物油、例えばBayol(R)又はMarkol(R)、植物油及びCarbopol(R)(ホモポリマー)又はDiluvac(R)Forteである。ワクチンは、いわゆる「ビヒクル」も含み得る。ビヒクルとは、ビヒクルに対する共有結合なしに、ポリペプチドが付着する化合物である。しばしば使用されるビヒクル化合物は、例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム又は酸化アルミニウム、シリカ、カオリン及びベントナイトである。
【0060】
抗原がビヒクル中に部分的に埋め込まれている、このようなビヒクルの特殊な形態は、いわゆるISCOMである(EP109.942,EP180.564,EP242.380)。
【0061】
より好ましくは、アジュバントは、1型応答を誘導するアジュバント又は1型/2型バランスを1型応答へシフトさせるアジュバントである。免疫応答のアジュバント調節は、特に、Lindblad,E.他(Infection and Immunity 1997,65:623−629)によって記載されている。
【0062】
さらにより好ましくは、アジュバントは、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDA)である。
【0063】
さらに、ワクチンは、1つ又はそれ以上の適切な界面活性化合物又は乳化剤、例えばSpan又はTweenを含み得る。しばしば、例えば、分解し易いポリペプチドを分解から保護して、ワクチンの保存寿命を増大させるために、又は凍結乾燥効率を改善するために、ワクチンは安定化剤と混合される。凍結乾燥は、保存寿命を著しく向上させるための及び低温保存を避けるための好ましい方法である。有用な安定化剤は、とりわけ、SPGA(Bovarnik et al;J. Bacteriology 59:509(1950)、炭水化物、例えば、ソルビトール、マニトール、トレハロース、デンプン、スクロース、デキストラン又はグルコース、アルブミン又はカゼイン又はこれらの分解産物などのタンパク質及びアルカリ金属リン酸塩などの緩衝液である。さらに、ワクチンは、生理的に許容される希釈剤中に懸濁され得る。アジュバント化し、ビヒクル化合物又は希釈剤を添加し、ポリペプチドを乳化し、又は安定化させる別の方法も、本発明における実施形態であることは言うまでもない。
【0064】
本発明のワクチンは、タンパク質の1及び200μgの間の量で、極めて適切に投与することが可能であるが、より少量を使用することが原理的に可能である。免疫学的には極めて適切であるが、200μgを超える用量は、商業的な理由で、より魅力的でない。
【0065】
上記LRCウイルス及び細菌などの、弱毒化された生組換え担体に基づくワクチンは、感染中に自身を増幅するので、ずっと少ない用量で投与することが可能である。従って、極めて適切な量は、それぞれ、細菌及びウイルスに対して、103と109CFU/PFUの間の範囲である。
【0066】
多くの投与方法を使用することが可能である。経口適用は、労力を要しないので、投与の極めて魅力的な方法である。経口投与の好ましい方法は、胃の高度に酸性の環境を通過した後にのみ崩壊するカプセル中にワクチンを包装することであり、本分野において公知であり、頻繁に使用されている。また、ワクチンは、胃のpHを一時的に増大させるために、本分野で公知の化合物と混合することが可能である。
【0067】
例えば、ワクチンの筋肉内適用による、全身適用も適切である。この経路が採用される場合には、全身適用のために本分野で公知の標準的な手法が非常に適している。好ましい経路は、皮下投与である。
【0068】
マイコバクテリアのHsp70に基づくワクチンも、マーカーワクチンとして極めて適切である。マーカーワクチンは、例えば、野生型感染によって誘導される抗体パネルとは異なる、特徴的な抗体パネルに基づいて、予防接種された動物と野外感染した動物との識別を可能とするワクチンである。精製されたマイコバクテリアのHsp70に基づくワクチンは、このタンパク質に対する抗体を誘導するのみであるが、生の野生型、生の弱毒化又は不活化された完全なマイコバクテリアに基づくワクチン及び野外感染は、マイクバクテリアのタンパク質の多くに対して抗体を誘導する。これは、明らかに、極めて異なる抗体パネルを与える。精製されたマイコプラズマのHsp70を含むウェル及び別のマイコバクテリアのタンパク質を含むウェルを有する単純なELISA検査は、動物からの血清を試験し、動物が、本発明のワクチンを接種されたか、又はマイコバクテリア野外感染に罹患しているかどうかを識別するのに十分である。精製されたマイコバクテリアのHsp70を含むワクチンを接種された動物は、マイコバクテリアのHsp70以外の他のマイコバクテリアのタンパク質に対する抗体を有しない。しかしながら、生弱毒化ワクチンを接種された動物又はマイコバクテリウムの野外感染に遭遇した動物は、全ての免疫原性マイコバクテリウムタンパク質に対する抗体を有しており、従って、他の非マイコバクテリアのHsp70タンパク質に対する抗体も有する。上記検査において適切な他のマイコバクテリアのタンパク質は、例えばHsp65及びApaである。
【0069】
従って、本発明の別の実施形態は、一方で本発明のワクチンを用いた予防接種と、他方で完全細胞ワクチンを用いた予防接種又は野外感染とを識別するための診断検査に関し、このような検査は、精製されたマイコバクテリアのHsp70又はその免疫原性断片を含み、別個に、別の非Hsp70タンパク質を含む。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1A】パネルAには、表1に概説されている定量を用いて検査された13の時点に対して、全ての各動物から得られた糞便培養の結果が図示されている。技術的な失敗のために、336日の時点ではデータが取得されなかった。動物は、210日の時点で、Hsp70サブユニットワクチンを接種した。動物1373は、220日目に死亡した。合計糞便培養スコアはパネルBに図示されており、糞便培養スコアは、総排泄に対する指標として、時点ごとに合計した。
【図1B】パネルAには、表1に概説されている定量を用いて検査された13の時点に対して、全ての各動物から得られた糞便培養の結果が図示されている。技術的な失敗のために、336日の時点ではデータが取得されなかった。動物は、210日の時点で、Hsp70サブユニットワクチンを接種した。動物1373は、220日目に死亡した。合計糞便培養スコアはパネルBに図示されており、糞便培養スコアは、総排泄に対する指標として、時点ごとに合計した。
【図2】ツベルクリン皮膚襞反応が、全ての各動物に対して図示されている。生後1ヶ月にMAPで実験的に感染させ、比較皮膚検査の8週前にMAPHsp70をワクチン接種した28匹のウシから得られた皮膚検査のデータ。丸は、ワクチン接種前の6つの試験において、少なくとも1回、糞便培養陽性であったウシを示し、三角は糞便培養陰性であったウシを示す。検査した全ての動物は、比較結核皮膚検査において陰性であった。(公式に無結核の群れの状態の確立及び維持に関する皮内比較試験に対するEU指針による基準)。
【図3A】IFN−γElispotアッセイでのIFN−γの産生は、スポット形成細胞の数(sfc)/2.105PBMCとして表されている。検査した抗原は培地対照、コンカナバリンA(陽性)、Hsp70タンパク質及びPPDPである。ワクチン接種前(パネルA)及びアクチン接種から30日後(パネルB)の全ての動物から得た細胞から得られた平均sfc結果+SMEが示されている。IFN−γElispotアッセイでのIFN−γの産生は、デルタ−sfcとして表されている。スポット形成細胞の数(sfc)/2.105PBMCは培地対照に対して補正されている。検査した抗原はコンカナバリンA(陽性対照)(パネルC)及びHsp70タンパク質(パネルD)である。全ての動物(糞便培養陰性動物及び糞便培養陽性動物)から得た細胞から得られた平均デルタ−sfc結果+SEMが示されている。ワクチン接種前及びワクチン接種から30日後のPBMCの増殖性応答は、陽性対照コンカナバリンA(パネルE)及びHsp70タンパク質(パネルF)に対する刺激指数(SI)として表されている。全ての動物(糞便培養陰性動物及び糞便培養陽性動物)から得た細胞から得られた平均結果+SEMが示されている。
【図3B】IFN−γElispotアッセイでのIFN−γの産生は、スポット形成細胞の数(sfc)/2.105PBMCとして表されている。検査した抗原は培地対照、コンカナバリンA(陽性)、Hsp70タンパク質及びPPDPである。ワクチン接種前(パネルA)及びアクチン接種から30日後(パネルB)の全ての動物から得た細胞から得られた平均sfc結果+SMEが示されている。IFN−γElispotアッセイでのIFN−γの産生は、デルタ−sfcとして表されている。スポット形成細胞の数(sfc)/2.105PBMCは培地対照に対して補正されている。検査した抗原はコンカナバリンA(陽性対照)(パネルC)及びHsp70タンパク質(パネルD)である。全ての動物(糞便培養陰性動物及び糞便培養陽性動物)から得た細胞から得られた平均デルタ−sfc結果+SEMが示されている。ワクチン接種前及びワクチン接種から30日後のPBMCの増殖性応答は、陽性対照コンカナバリンA(パネルE)及びHsp70タンパク質(パネルF)に対する刺激指数(SI)として表されている。全ての動物(糞便培養陰性動物及び糞便培養陽性動物)から得た細胞から得られた平均結果+SEMが示されている。
【図3C】IFN−γElispotアッセイでのIFN−γの産生は、スポット形成細胞の数(sfc)/2.105PBMCとして表されている。検査した抗原は培地対照、コンカナバリンA(陽性)、Hsp70タンパク質及びPPDPである。ワクチン接種前(パネルA)及びアクチン接種から30日後(パネルB)の全ての動物から得た細胞から得られた平均sfc結果+SMEが示されている。IFN−γElispotアッセイでのIFN−γの産生は、デルタ−sfcとして表されている。スポット形成細胞の数(sfc)/2.105PBMCは培地対照に対して補正されている。検査した抗原はコンカナバリンA(陽性対照)(パネルC)及びHsp70タンパク質(パネルD)である。全ての動物(糞便培養陰性動物及び糞便培養陽性動物)から得た細胞から得られた平均デルタ−sfc結果+SEMが示されている。ワクチン接種前及びワクチン接種から30日後のPBMCの増殖性応答は、陽性対照コンカナバリンA(パネルE)及びHsp70タンパク質(パネルF)に対する刺激指数(SI)として表されている。全ての動物(糞便培養陰性動物及び糞便培養陽性動物)から得た細胞から得られた平均結果+SEMが示されている。
【図3D】IFN−γElispotアッセイでのIFN−γの産生は、スポット形成細胞の数(sfc)/2.105PBMCとして表されている。検査した抗原は培地対照、コンカナバリンA(陽性)、Hsp70タンパク質及びPPDPである。ワクチン接種前(パネルA)及びアクチン接種から30日後(パネルB)の全ての動物から得た細胞から得られた平均sfc結果+SMEが示されている。IFN−γElispotアッセイでのIFN−γの産生は、デルタ−sfcとして表されている。スポット形成細胞の数(sfc)/2.105PBMCは培地対照に対して補正されている。検査した抗原はコンカナバリンA(陽性対照)(パネルC)及びHsp70タンパク質(パネルD)である。全ての動物(糞便培養陰性動物及び糞便培養陽性動物)から得た細胞から得られた平均デルタ−sfc結果+SEMが示されている。ワクチン接種前及びワクチン接種から30日後のPBMCの増殖性応答は、陽性対照コンカナバリンA(パネルE)及びHsp70タンパク質(パネルF)に対する刺激指数(SI)として表されている。全ての動物(糞便培養陰性動物及び糞便培養陽性動物)から得た細胞から得られた平均結果+SEMが示されている。
【図3E】IFN−γElispotアッセイでのIFN−γの産生は、スポット形成細胞の数(sfc)/2.105PBMCとして表されている。検査した抗原は培地対照、コンカナバリンA(陽性)、Hsp70タンパク質及びPPDPである。ワクチン接種前(パネルA)及びアクチン接種から30日後(パネルB)の全ての動物から得た細胞から得られた平均sfc結果+SMEが示されている。IFN−γElispotアッセイでのIFN−γの産生は、デルタ−sfcとして表されている。スポット形成細胞の数(sfc)/2.105PBMCは培地対照に対して補正されている。検査した抗原はコンカナバリンA(陽性対照)(パネルC)及びHsp70タンパク質(パネルD)である。全ての動物(糞便培養陰性動物及び糞便培養陽性動物)から得た細胞から得られた平均デルタ−sfc結果+SEMが示されている。ワクチン接種前及びワクチン接種から30日後のPBMCの増殖性応答は、陽性対照コンカナバリンA(パネルE)及びHsp70タンパク質(パネルF)に対する刺激指数(SI)として表されている。全ての動物(糞便培養陰性動物及び糞便培養陽性動物)から得た細胞から得られた平均結果+SEMが示されている。
【図3F】IFN−γElispotアッセイでのIFN−γの産生は、スポット形成細胞の数(sfc)/2.105PBMCとして表されている。検査した抗原は培地対照、コンカナバリンA(陽性)、Hsp70タンパク質及びPPDPである。ワクチン接種前(パネルA)及びアクチン接種から30日後(パネルB)の全ての動物から得た細胞から得られた平均sfc結果+SMEが示されている。IFN−γElispotアッセイでのIFN−γの産生は、デルタ−sfcとして表されている。スポット形成細胞の数(sfc)/2.105PBMCは培地対照に対して補正されている。検査した抗原はコンカナバリンA(陽性対照)(パネルC)及びHsp70タンパク質(パネルD)である。全ての動物(糞便培養陰性動物及び糞便培養陽性動物)から得た細胞から得られた平均デルタ−sfc結果+SEMが示されている。ワクチン接種前及びワクチン接種から30日後のPBMCの増殖性応答は、陽性対照コンカナバリンA(パネルE)及びHsp70タンパク質(パネルF)に対する刺激指数(SI)として表されている。全ての動物(糞便培養陰性動物及び糞便培養陽性動物)から得た細胞から得られた平均結果+SEMが示されている。
【図4A】Hsp70特異的抗体−イソタイプ応答が図示されている。ワクチン接種の時点は、210日(白抜き四角)であり、ツベルクリン皮膚検査は266日後に行われる(白抜き四角)。結果は、糞便培養陽性(ひし形)及び陰性動物(四角)のそれぞれに対して、平均血清/陰性(SN)比+SEMである。図AはIgA応答を図示し、図BはIgM応答を図示し、図CはIgG1応答を図示し、図DはIgG2応答を図示する。
【図4B】Hsp70特異的抗体−イソタイプ応答が図示されている。ワクチン接種の時点は、210日(白抜き四角)であり、ツベルクリン皮膚検査は266日後に行われる(白抜き四角)。結果は、糞便培養陽性(ひし形)及び陰性動物(四角)のそれぞれに対して、平均血清/陰性(SN)比+SEMである。図AはIgA応答を図示し、図BはIgM応答を図示し、図CはIgG1応答を図示し、図DはIgG2応答を図示する。
【図4C】Hsp70特異的抗体−イソタイプ応答が図示されている。ワクチン接種の時点は、210日(白抜き四角)であり、ツベルクリン皮膚検査は266日後に行われる(白抜き四角)。結果は、糞便培養陽性(ひし形)及び陰性動物(四角)のそれぞれに対して、平均血清/陰性(SN)比+SEMである。図AはIgA応答を図示し、図BはIgM応答を図示し、図CはIgG1応答を図示し、図DはIgG2応答を図示する。
【図4D】Hsp70特異的抗体−イソタイプ応答が図示されている。ワクチン接種の時点は、210日(白抜き四角)であり、ツベルクリン皮膚検査は266日後に行われる(白抜き四角)。結果は、糞便培養陽性(ひし形)及び陰性動物(四角)のそれぞれに対して、平均血清/陰性(SN)比+SEMである。図AはIgA応答を図示し、図BはIgM応答を図示し、図CはIgG1応答を図示し、図DはIgG2応答を図示する。
【図5A】Hsp70N末端断片(RBS70)特異的抗体−イソタイプ応答が図示されている。ワクチン接種の時点(白抜き四角、210日)及びツベルクリン皮膚検査(白抜き四角、266日)が示されている。結果は、糞便培養陽性(ひし形)及び陰性動物(四角)の別々に対して、平均血清/陰性(SN)比+SEMである。図AはIgA応答を図示し、図BはIgM応答を図示し、図CはIgG1応答を図示し、図DはIgG2応答を図示する。
【図5B】Hsp70N末端断片(RBS70)特異的抗体−イソタイプ応答が図示されている。ワクチン接種の時点(白抜き四角、210日)及びツベルクリン皮膚検査(白抜き四角、266日)が示されている。結果は、糞便培養陽性(ひし形)及び陰性動物(四角)の別々に対して、平均血清/陰性(SN)比+SEMである。図AはIgA応答を図示し、図BはIgM応答を図示し、図CはIgG1応答を図示し、図DはIgG2応答を図示する。
【図5C】Hsp70N末端断片(RBS70)特異的抗体−イソタイプ応答が図示されている。ワクチン接種の時点(白抜き四角、210日)及びツベルクリン皮膚検査(白抜き四角、266日)が示されている。結果は、糞便培養陽性(ひし形)及び陰性動物(四角)の別々に対して、平均血清/陰性(SN)比+SEMである。図AはIgA応答を図示し、図BはIgM応答を図示し、図CはIgG1応答を図示し、図DはIgG2応答を図示する。
【図5D】Hsp70N末端断片(RBS70)特異的抗体−イソタイプ応答が図示されている。ワクチン接種の時点(白抜き四角、210日)及びツベルクリン皮膚検査(白抜き四角、266日)が示されている。結果は、糞便培養陽性(ひし形)及び陰性動物(四角)の別々に対して、平均血清/陰性(SN)比+SEMである。図AはIgA応答を図示し、図BはIgM応答を図示し、図CはIgG1応答を図示し、図DはIgG2応答を図示する。
【実施例】
【0071】
(実施例1)
2.材料と方法
2.1動物及び実験の設計
本研究では、新生仔のウシ計28匹(雄16匹及び雌12匹)を使用した。ウシは、慣用の手順及び給餌を用いて育て、一般的な健康状態に関して毎日チェックした。ウシは、3つのグループの飼育用檻(それぞれ、9匹又は10匹のウシ)うちの1つに無作為に割り当てた。6週毎に、血液及び糞便試料を採取した。リンパ球を単離するために、ヘパリン処理された血液試料を使用し、血清学的分析のために血清試料を採取した。血液試料の採取と同時に、体重を記録した。糞便試料は、実験の間、感染から0、42、91、126、168、210、252、294、336、378、462、504及び561日後に、13回採取した。
【0072】
2.2ウシの感染
マイコバクチン−J依存性及びIS900PCR陽性のMAPの糞便培養によって一貫した排出個体として特定されたMAP感染ウシから得られた糞便を経口的に使用して、全てのウシを感染させた。一定の間隔で、実験の最初の21日の間、経管栄養法給餌による投薬当り100mLの代用乳と混合された糞便20gをウシに9回与えた。半定量的な糞便培養は、100cfu超/g糞便が接種材料中に存在することを示した。従って、ウシには、それぞれ、1.8×104cfuの最小合計用量が与えられた。
【0073】
2.3ウシの免疫化
全てのウシは、実験の217日目に、1回免疫化された。免疫化は、20mg/mLのジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDA)アジュバント(SigmaAldrich,US)を含有するリン酸緩衝化生理的食塩水(PBS)1mL中の組換えM.a.パラチュバキュロシスHsp70の200μgの胸垂中への皮下投与から成った。組換えM.a.パラチュバキュロシスHsp70は、以前に公表されたとおりに作製した(Koets,A.P.,Rutten,V.P.,de Boer,M.,Bakker,D.,Valentin−Weigand,P.& van Eden,W. Infect Immun 2001,69(3),1492−1498)。
【0074】
2.4MAPの糞便培養
パラチュバキュロシス感染の診断は、公表された方法(Jorgensen,J.B.,Acta Vet Scand 1982,23(3),325−335)に基づいて、Veterinary Health Service、デベンター(Deventer)、オランダにおいて、定型的な糞便培養系を用いて行った。4週毎にコロニーを計数することによって(最初の観察は、接種後8週に行う。)、細菌の増殖に関して試料をチェックし、16週の培養期間後に、細菌の増殖が観察されなければ陰性と考えた。培養物のマイコバクチンJ依存性及びPCRによる特異的なIS900挿入配列の存在の確認に基づいて、細菌の増殖はM.アビウム属種パラチュバキュロシスであることが確認された(Vary,P.H.,Andersen,P.R.,Green,E.,Hermon−Taylor,J. & McFadden,J.J.,J Clin Microbiol 1990,28(5),933−937)。表1に概説されているように、糞便培養の結果は、陽性になるまでの時間(TTP;time to positive)(それぞれ8、12又は16週)と糞便1g当りのカウントされたコロニーの数(CFU)の組み合わせに基づいて、0と9の間に半定量的にスコア化した。
【0075】
【表1】
【0076】
2.5比較ツベルクリン皮膚検査
ワクチン接種から8週後に、比較ツベルクリン皮膚検査を行った。公式のEUガイドライン(L179,9.7.2002)に従って、ウシツベルクリン0.1mL(2500IU)及びトリツベルクリン0.1mL(2500IU)(Central Institute for Animal Disease Control(CIDC),Lelystad,The NetherlandsによるEU及びOIE規則に従って調製)を、各動物の首に皮内適用した。ツベルクリン皮膚検査から72時間後に、皮膚の襞の厚さを測定し、適用時の皮膚の襞の厚さに対して補正した。トリの反応と比べたときに、陽性のウシ反応が4mmを超えていた場合に、反応を陽性と記録した。トリの反応と比べたときに、陽性のウシ反応が1mmと4mmの間でより大きかった場合に、反応を疑わしいと記録した。陽性又は不確定なトリの反応と等しい又は下回る陽性又は不確定なウシの反応の場合に、陰性反応を記録した。
【0077】
2.6末梢血単核細胞の単離
無菌的に採取された、ヘパリン処理された血液試料から、密度勾配遠心を用いて末梢血単核細胞(PBMC)を単離し、以前に公表されたように培養した(Koets,A.P.,Rutten,V.P.,Hoek,A. et al,Vet Immunol Immunopathol 1999,70(1−2),105−115)。
【0078】
2.7抗原
組換えM.a.パラチュバキュロシスHsp65kD及びHsp70kDは、以前に詳しく記載された方法に従って作製した(Koets,A.P.,Rutten,V.P.,de Boer,M.,Bakker,D.,Valentin−Weigand,P.& van Eden,W.,Infect Immun 2001,69(3),1492−1498,Colston,A.,McConnell,I. & Bujdoso,R.,Microbiology 1994,140,3329−3336)。組換えHsp65及びHsp70の純度はSDS−PAGEを用いてチェックし、Limulusアッセイによって、LPSの汚染に関して調製物を検査した(Sigma,St. Louis,USA)。
【0079】
制限エンドヌクレアーゼAfIII(NEBioLabs)及びHindIII(Gibco−Invitrogen)を用いた酵素的消化を通じて、元のpTrcHisC−Hsp70発現プラスミド(酵素5単位/μgDNA)からC末端「タンパク質結合ドメイン」を除去することによって、Hsp70N末端タンパク質断片を作製した。アガロースゲル電気泳動を用いて断片を分離し、QIAEXIIゲル抽出キット(Qiagen)を用いて、巨大な断片をゲルから単離した。T4ポリメラーゼを使用することによって、制限部位を平滑末端化し、DNAクリーニングキット(ZymoResearch)を用いてDNAを単離した。続いて、製造業者によって提供された指示書に従って、QuickLigationKit(NEBiolabs)を含有するT4DNAリガーゼを用いて、ベクターDNAを連結した。製造業者によって提供された指示書に従ってイー・コリ(E.coli)DH5α(LibararyEfficiencyDH5αCompetentCells,LifeTechnologies)を形質転換するために、ベクターを使用した。タンパク質発現の誘導及びタンパク質精製は、野生型Hsp70タンパク質に対して記載された方法と同様に行った。RBS70と名付けられた欠失変異タンパク質は、野生型Hsp70タンパク質を含有する623アミノ酸の最初の357アミノ酸を含有した(これは、プラスミドDNA配列決定、PAGE及びウェスタンブロッティングによって確認された。)。
【0080】
精製されたタンパク質逸脱物(deviate)は、OIEマニュアル(Gilmour,N.J.L.&Wood,G.W.傍結核(ヨーネ病)In OIE Manual of Standards for Diagnostic Tests and Vaccines Office International des Epizooties,Paris,1996.218−228)に従って、Central Institute for Animal Disease Control(CIDC)、レリスタッド、オランダにおいて、M.a.パラチュバキュロシス株3+5/C培養上清(PPD−P)及びM.a.アビウム株D4培養上清(PPD−A)から調製した。M.a.パラチュバキュロシス株316F及びM.a.アビウム株D4は、Institute for Animal Health and Science(レリスタッド、オランダ)で増殖させた。イー・コリ株DH5αは、37℃でLuria・Bertani(LB)培地中において一晩増殖させた。コンカナバリンA(2.5μg/mL)を陽性対照として使用し、培地のみを陰性対照として使用した。
【0081】
2.8ウシIFNγ分泌細胞に対するElispotアッセイ
ウシIFNγ分泌細胞に対するElispotアッセイは、以前に公表されたとおりに行った(Koets,A.,Hoek,A.,Langelaar,M.et al,Vaccine 2006,24(14),2550−2559)。スポットを計数し、製造業者(A.EL.VIS GmbH,Hanover,Germany)によって提供された指示書に従って、自動化されたElispot読取装置を用いて、スポット総面積を算出した。スポットの計数結果は、別段の記載がなければ、抗原刺激されたウェル中のスポットの数から培地対照ウェル中のスポットの数を差し引くことによって計算されたデルタスポット形成細胞(dSFC)として表した。培地のみを陰性対照として使用し、コンカナバリンA(2.5μg/mL)を陽性対照として使用した。PPD−P、PPD−A,Hsp70及びHsp65は、10μg/mLの所定の最適濃度で使用した。M.a.パラチュバキュロシス株316F、M.a.アビウム株D4及びイー・コリDH5αは、PBMCとともにMOI1:1で使用した。全ての試験は、3つ組みで行った。
【0082】
2.9リンパ球刺激試験
リンパ球刺激試験(LST)は、以前に詳しく記載されているとおりに(Koets,A.,Rutten,V.,Hoek,A. et al.Progressive bovine paratuberculosis is associated with local loss of CD4(+)T cells,increased frequency of gamma delta T cells,and related changes in T−cell function. Infect Immun 2002,70(7),3856−3864)、96ウェルマイクロタイタープレート(Costar,Cambridge,MA,USA)中で行った。要約すると、密度勾配によって単離されたPBMC懸濁液100μL(2.106細胞/mL)及び抗原100μL/ウェル、全ての試験は3つ組みで行った。マイコバクテリアの抗原PPD−P、Hsp65及びHsp70は、それぞれ10μg/mLの所定の最適濃度で使用した。株316F細菌を短時間音波処理し、計数し、1.107CFU/mLの濃度で使用した。コンカナバリンA(2.5μg/mL)を陽性対照として使用し、培地のみを陰性対照として使用した。加湿された温置装置中で3日間、37℃及び5%CO2で細胞を培養した。次いで、0.4μCuの3Hチミジン(Amersham International)を各ウェルに添加し、細胞をさらに18時間培養した。続いて、ガラスファイバーのフィルター上に細胞を採取し、液体シンチレーション計数によって3Hチミジンの取り込みを測定し、特定的刺激のcpmを培地対照のcpmによって除することによって計算した刺激指数(S.I.)として表した。
【0083】
2.10ウシの血清学
組換えM.a.パラチュバキュロシスHsp70タンパク質に対する血清学的応答は、以前に記載されたELISA技術(Koets,A.P.,Rutten,V.P.,de Boer,M.,Bakker,D.,Valentin−Weigand,P.& van Eden,W. Infect Immun 2001,69(3),1492−1498)に若干修飾を加えて用いて測定した。全ての血清はブロッキング緩衝液中に10倍希釈し、100μLを2つ組みで測定した。さらに、各プレート中に、陽性及び陰性対照試料を2つ組みで添加した。修飾は、イソタイプ特異的二次抗原(マウス抗ウシIgG1、IgG2、IgA及びIgM(Cedi−Diagnostics,Lelystad,Netherlands))1μg/mLの使用、その後3回の洗浄、及びペルオキシダーゼが連結されたポリクローナルヤギ抗マウス抗体(NordicLaboratories,The Netherlands)との温置からなった。最後に、プレートを3回洗浄し、405nmでのELISA読取装置(Biorad)上で読み取られる発色反応を展開するために、ABTS基質緩衝液100μL(Boehringer Mannheim,Mannheim,Germany)を使用した。結果は、S/N(試料/陰性)比として表されている。
【0084】
3.結果
3.1一般的な健康状態に対する観察
実験を通じて動物の成長をモニターし、結果は、従来どおりに育てられたワクチンを接種していないウシと同様に、ウシが成長することを示した(データは示さず。)。治療に対して非応答性である重い呼吸器感染後に、1匹の動物を間引いた。
【0085】
3.2ワクチン接種の副作用
胸垂中にDDAアジュバントとともにHsp70で単回ワクチン接種することの効果は、免疫から1週後に、2.6cm±0.2(SEM)の平均直径を有する触診可能な腫脹であった。7匹の動物が、4cmを超える最大直径を有する腫脹を有していた。症例の大半で、腫脹は痛みを伴うものではなく、3週間の間に、約1cmの直径の明らかに不活発な小結節に消散した。
【0086】
3.3糞便培養の結果
糞便培養試験から得られた結果は、図1に要約されている。実験的感染後の最初の210日の間、糞便陽性動物の数の指数関数的な増加が観察された。この時点で、28匹の動物のうち12匹(43%)が、少なくとも1回、糞便培養陽性であり、210日の時点で、時点当りの合計累積的糞便培養スコアは32に達した。ワクチン接種後、細菌の糞便排出の鋭い低下が観察された。実験の残りの間、合計累積的糞便培養スコアは12より高くなることはなく、単回ワクチン接種後に、62.5%の排出の低下が示された。
【0087】
3.4ツベルクリン皮膚検査(図2)
図2に図示されているように、Hsp70サブユニットワクチンでのワクチン接種から8週後に検査したときに、全ての動物は比較皮膚検査において陽性反応を示さなかった。一般に、糞便培養陽性動物は、糞便培養陰性動物と比べて、傍結核感染の指標である低いウシツベルクリン反応とともに、より高いトリ反応を有していた。
【0088】
3.4IFN−γElispot(図3)
ワクチン接種前とワクチン接種後(ワクチン接種から30日後)を比較すると、刺激を受けていない対照試料(スチューデントt検定、p<0.05)と比べて、PPD−Pに対する顕著なIFN−γ応答がワクチン接種前及びワクチン接種後に認められた。しかしながら、ワクチン接種前及び後の何れにおいても、それらの糞便培養状態に関わらず、28匹の動物中に、Hsp70免疫原に対する陽性応答は観察されなかった。
【0089】
3.5リンパ球刺激試験(図3)
ワクチン接種後に、Hsp70免疫原に対する増加した応答が増殖アッセイ中で観察されたが、これは、糞便培養陽性動物中においてのみ検出された。
【0090】
3.6血清学的応答(図4)
糞便培養陽性動物及び糞便培養陰性動物の両者において、ワクチン接種後に、明瞭な抗体応答が測定された。抗体応答は、IgG1イソタイプに対して最も顕著であった。ワクチン接種の直後に、IgG2に対して典型的なスパイク応答が観察された。IgMに関しては、糞便培養状態は感染状態に関連する最高の応答差を誘導した。糞便培養陽性動物は、糞便培養陰性動物と比べて、より高く、より長いIgM応答を示した。血清IgA応答は、一般に低かった。ツベルクリン皮膚検査操作は、検査したイソタイプの何れについても、Hsp70タンパク質に対する抗体応答を誘導しなかった。
【0091】
3.7血清学的応答(図5)
糞便培養陽性動物及び糞便培養陰性動物の何れにおいても、ワクチン接種後に、Hsp70−N末端タンパク質断片(RBS70)に対する明瞭な抗体応答が測定された。抗体応答は、IgG1イソタイプに対して最も顕著であった。ワクチン接種の直後に、IgG2に対して典型的なスパイク応答が観察された。IgMに関しては、糞便培養状態は感染状態に関連する最高の応答差を誘導した。糞便培養陽性動物は、糞便培養陰性動物と比べて、より高く、より長いIgM応答を示した。血清IgA応答は、一般に低かった。ツベルクリン皮膚検査操作は、検査したイソタイプの何れについても、RBS70タンパク質に対する抗体応答を誘導しなかった。
【0092】
結論:Hsp70/DDAワクチンによるウシの治療的ワクチン接種は、糞便中のMAPの排出を著しく低下させ、次いで、この低下は感染の伝染を低減し得、直接の及び長期の副作用をほとんど有さず、現在の結核診断を妨害せず、ワクチン接種された動物と感染した動物の識別を可能とし、従って、傍結核根絶戦略に寄与し得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイコバクテリウム属の細菌に感染し、及びこれらの細菌を排出し始めた哺乳動物における治療用ワクチンの製造のための、マイコバクテリアのHsp70タンパク質又はその免疫原性断片の免疫学的に活性な量の使用。
【請求項2】
前記ワクチンがヒトにおける治療用であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記ワクチンが反芻動物における治療用であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記ワクチンがネコ又はイヌにおける治療用であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
マイコバクテリアのHsp70タンパク質がマイコバクテリウム・アビウムのHsp70タンパク質であることを特徴とする、請求項1から4に記載の使用。
【請求項6】
マイコバクテリアのHsp70タンパク質がマイコバクテリウム・アビウム属種パラチュバキュロシスのHsp70タンパク質であることを特徴とする、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
マイコバクテリアのHsp70タンパク質がマイコバクテリウム・チュバキュロシスのHsp70タンパク質であることを特徴とする、請求項1から4に記載の使用。
【請求項8】
マイコバクテリアのHsp70タンパク質がマイコバクテリウム・ボビスのHsp70タンパク質であることを特徴とする、請求項1から4に記載の使用。
【請求項9】
マイコバクテリウム属の細菌に感染し、及びこれらの細菌を排出し始めた哺乳動物における治療用ワクチンの製造のための、機能的に連結されたプロモーターの制御下にあるマイコバクテリアのHsp70又はその免疫原性断片をコードする生組換え担体の使用。
【請求項10】
マイコバクテリウム属の細菌に感染し、及びこれらの細菌を排出し始めた哺乳動物における治療用ワクチンの製造のための、機能的に連結されたプロモーターの制御下にあるマイコバクテリアのHsp70又はその免疫原性断片をコードする遺伝子又はその断片を含む宿主細胞の使用。
【請求項11】
ワクチンの製造のために、さらなる病原性微生物又はウイルス、これらの抗原性物質又は前記抗原性物質をコードする遺伝物質が使用されることを特徴とされる、請求項1から10に記載の使用。
【請求項12】
前記さらなる病原性微生物又はウイルスが、ウシヘルペスウイルス、ウシウイルス性下痢症ウイルス、パラインフルエンザ3型ウイルス、ウシパラミクソウイルス、口蹄疫ウイルス、ウシ呼吸器多核体ウイルス、ブタサーコウイルス、ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルス、別のマイコバクテリウム属種、マイコプラズマ属種、パスツレラ・ヘモリティカ、スタフィロコッカス・オーレウス、エシェリヒア・コリ、レプトスピラ属種、スタフィロコッカス・ウベリス、タイレリア・パルバ、タイレリア・アヌラタ、バベシア・ボビス、バベシア・ビゲミナ、バベシア・マジョール、トリパノソーマ種、アナプラズマ・マジナーレ、アナプラズマ・セントラーレ及びネオスポラ・カニナムの群から選択されることを特徴とする、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
ワクチンの製造のために、さらにアジュバントが使用されることを特徴とする、請求項1から12に記載の使用。
【請求項14】
アジュバントがDDAであることを特徴とする、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記ワクチンが凍結乾燥された形態であることを特徴とする、請求項1から14に記載の使用。
【請求項1】
マイコバクテリウム属の細菌に感染し、及びこれらの細菌を排出し始めた哺乳動物における治療用ワクチンの製造のための、マイコバクテリアのHsp70タンパク質又はその免疫原性断片の免疫学的に活性な量の使用。
【請求項2】
前記ワクチンがヒトにおける治療用であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記ワクチンが反芻動物における治療用であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記ワクチンがネコ又はイヌにおける治療用であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
マイコバクテリアのHsp70タンパク質がマイコバクテリウム・アビウムのHsp70タンパク質であることを特徴とする、請求項1から4に記載の使用。
【請求項6】
マイコバクテリアのHsp70タンパク質がマイコバクテリウム・アビウム属種パラチュバキュロシスのHsp70タンパク質であることを特徴とする、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
マイコバクテリアのHsp70タンパク質がマイコバクテリウム・チュバキュロシスのHsp70タンパク質であることを特徴とする、請求項1から4に記載の使用。
【請求項8】
マイコバクテリアのHsp70タンパク質がマイコバクテリウム・ボビスのHsp70タンパク質であることを特徴とする、請求項1から4に記載の使用。
【請求項9】
マイコバクテリウム属の細菌に感染し、及びこれらの細菌を排出し始めた哺乳動物における治療用ワクチンの製造のための、機能的に連結されたプロモーターの制御下にあるマイコバクテリアのHsp70又はその免疫原性断片をコードする生組換え担体の使用。
【請求項10】
マイコバクテリウム属の細菌に感染し、及びこれらの細菌を排出し始めた哺乳動物における治療用ワクチンの製造のための、機能的に連結されたプロモーターの制御下にあるマイコバクテリアのHsp70又はその免疫原性断片をコードする遺伝子又はその断片を含む宿主細胞の使用。
【請求項11】
ワクチンの製造のために、さらなる病原性微生物又はウイルス、これらの抗原性物質又は前記抗原性物質をコードする遺伝物質が使用されることを特徴とされる、請求項1から10に記載の使用。
【請求項12】
前記さらなる病原性微生物又はウイルスが、ウシヘルペスウイルス、ウシウイルス性下痢症ウイルス、パラインフルエンザ3型ウイルス、ウシパラミクソウイルス、口蹄疫ウイルス、ウシ呼吸器多核体ウイルス、ブタサーコウイルス、ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルス、別のマイコバクテリウム属種、マイコプラズマ属種、パスツレラ・ヘモリティカ、スタフィロコッカス・オーレウス、エシェリヒア・コリ、レプトスピラ属種、スタフィロコッカス・ウベリス、タイレリア・パルバ、タイレリア・アヌラタ、バベシア・ボビス、バベシア・ビゲミナ、バベシア・マジョール、トリパノソーマ種、アナプラズマ・マジナーレ、アナプラズマ・セントラーレ及びネオスポラ・カニナムの群から選択されることを特徴とする、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
ワクチンの製造のために、さらにアジュバントが使用されることを特徴とする、請求項1から12に記載の使用。
【請求項14】
アジュバントがDDAであることを特徴とする、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記ワクチンが凍結乾燥された形態であることを特徴とする、請求項1から14に記載の使用。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図1B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【公表番号】特表2010−505792(P2010−505792A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530860(P2009−530860)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【国際出願番号】PCT/EP2007/060351
【国際公開番号】WO2008/040691
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(506308769)ウニフェルジテイト・ユトレヒト・ホールディング・ベスローテン・フェンノートシャップ (4)
【氏名又は名称原語表記】Universiteit Utrecht Holding B.V.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【国際出願番号】PCT/EP2007/060351
【国際公開番号】WO2008/040691
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(506308769)ウニフェルジテイト・ユトレヒト・ホールディング・ベスローテン・フェンノートシャップ (4)
【氏名又は名称原語表記】Universiteit Utrecht Holding B.V.
【Fターム(参考)】
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