説明

マイコプラズマ・ハイオニューモニエワクチン

本発明は、離乳子豚又は雌豚に、有効量のマイコプラズマ・ハイオニューモニエワクチンの単回用量を投与することにより、マイコプラズマ・ハイオニューモニエに対する、新規なブタワクチン接種方法を提供する。マイコプラズマ・ハイオニューモニエワクチンは、全細胞若しくは部分細胞型の不活化若しくは修飾された生製剤、サブユニットワクチン、又は核酸若しくはDNAワクチンであり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2006年3月3日に出願した米国特許仮出願第60/778987号明細書の利益を主張する。
【0002】
参照するのは、2004年7月26日に出願の米国特許出願第10/899181号明細書、1999年1月15日に出願の米国特許出願第09/232279号明細書であり、現在は2002年4月23日に発行の米国特許第6376473号明細書、1999年1月15日に出願の米国特許出願第09/232469号明細書であり、現在は2002年9月17日に発行の米国特許第6451770号明細書、1999年1月15日に出願の米国特許出願第09/232477号明細書であり、現在は2001年5月8日に発行の米国特許第6228846号明細書、1999年1月15日に出願の米国特許出願第09/232478号明細書であり、現在は2001年3月27日に発行の米国特許第6207166号明細書、1999年1月15日に出願の米国特許出願第09/232479号明細書であり、現在は2001年4月24日に発行の米国特許第6221362号明細書、1999年7月1日に出願の米国特許出願第09/347594号明細書であり、現在は2001年4月17日に発行の米国特許第6217883号明細書、2000年5月31日に出願の米国特許出願第09/583350号明細書であり、現在は2003年2月11日に発行の米国特許第6517843号明細書、2000年7月14日に出願の米国特許出願第09/616781号明細書、現在は2003年3月18日に発行の米国特許第6534066号明細書、2000年10月6日に出願の米国特許出願第09/680228号明細書、2001年2月16日に出願の米国特許出願第09/784962号明細書、2001年2月16日に出願の米国特許出願第09/784982号明細書であり、現在は2003年7月1日に発行の米国特許第6586412号明細書、2001年2月16日に出願の米国特許出願第09/784990号明細書であり、現在は2002年10月15日に発行の米国特許第6464984号明細書、2001年2月16日に出願の米国特許出願第09/785055号明細書であり、現在は2003年5月6日に発行の米国特許第6558674号明細書、2002年2月15日に出願の米国特許出願第10/077489号明細書であり、現在は2004年10月12日に発行の米国特許第6803361号明細書、2002年2月28日に出願の米国特許出願第10/085519号明細書であり、現在は2004年11月16日に発行の米国特許第6818628号明細書、2002年8月2日に出願の米国特許出願第10/211502号明細書、2002年8月28日に出願の米国特許出願第10/229412号明細書、2002年9月10日に出願の米国特許出願第10/238114号明細書、2003年2月18日に出願の米国特許出願第10/368861号明細書、2003年3月18日に出願の米国特許出願第10/391498号明細書、2003年4月4日に出願の米国特許出願第10/406686号明細書、2003年12月8日に出願の米国特許出願第10/730206号明細書であり、現在は2005年6月21日に発行の米国特許第6908620号明細書、2004年5月3日に出願の米国特許出願第10/838122号明細書、2004年11月8日に出願の米国特許出願第10/983928号明細書、2005年1月19日に出願の米国特許出願第11038682号明細書、2005年3月14日に出願の米国特許出願第11/079559号明細書、2005年4月15日に出願の米国特許出願第11/106780号明細書であり、現在は2006年2月14日に発行の米国特許第6998127号明細書、2005年6月20日に出願の米国特許出願第11/156829号明細書、2005年7月19日に出願の米国特許出願第11/184236号明細書、2005年8月3日に出願の米国特許出願第11/196722号明細書、2005年9月25日に出願の米国特許出願第11/211983号明細書、2006年2月6日に出願の米国特許出願第11/348084号明細書、1999年8月31日に出願の米国特許出願第60/151564号明細書、2001年9月12日に出願の米国特許出願第60/318,686号明細書、2002年3月20日に出願の米国特許出願第60/366014号明細書、2002年4月5日に出願の米国特許出願第60/370282号明細書、2002年12月9日に出願の米国特許出願第60/432298号明細書、2003年7月24日に出願の米国特許出願第60/490345号明細書、2003年11月13日に出願の米国特許出願第60/519571号明細書、2004年3月12日に出願の米国特許出願第60/522636号明細書、2004年6月4日に出願の米国特許出願第60/576771号明細書、2004年6月15日に出願の米国特許出願第60/581689号明細書、2004年6月21日に出願の米国特許出願第60/581698号明細書、2004年11月15日に出願の米国特許出願第60/627878号明細書、2005年3月17日に出願の米国特許出願第60/662646号明細書、及び2005年11月14日に出願の米国特許出願第60/736452号明細書である。
【0003】
前述の出願、及びそこで又は審査中に引用された全ての文書(出願引用文書(「aplln cited document」))及び出願引用文書中に引用又は参照された全ての文書、及び本明細書中に引用又は参照された全ての文書(本明細書引用文書(「herein cited document」))、及び本明細書引用文書中に引用又は参照された全ての文書は、本明細書中で、又は参照により本明細書に組み込まれた任意の文書中で言及された任意の製品の、任意の製造元使用説明書、解説書、製品仕様書、及びプロダクトシートと共に、それによって参照により本明細書に組み込まれ、本発明の実施に使用することができる。
【0004】
本発明は、マイコプラズマ・ハイオニューモニエワクチン及びその投与方法を提供する。
【背景技術】
【0005】
マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)は、地方病性肺炎の原因であり、養豚業界では依然として重要な病原体である。この小型で複雑な生物は、気道の繊毛細胞にコロニーを形成し、結果として免疫系にほとんど暴露しない。一般に若齢のブタに観察される肺病変は、上皮細胞の過形成と、血管周囲及び細気管支周囲での単核細胞の集積増加とによって特徴付けられる。ブタでは、M.ハイオニューモニエ感染に続いて、免疫反応が観察され、耐性が誘導される(例えば、Thacker, Anim Health Res Rev. 2004 Dec;5(2):317-20及びKobisch & Friis, Rev Sci Tech. 1996 Dec;15(4):1569-605に総説がある)。臨床症状及び病変の発生は、M.ハイオニューモニエの病原体能力及び肺の防御反応の結果である。肺炎と経済の関連性は、M.ハイオニューモニエの初期感染に引き続いてよく発生する2次感染により、大きく影響される。個々のブタ及び群の肺炎診断には、様々な検査が利用可能である。地方病性肺炎は多因子性疾患であるため、治療及び管理は単純ではない(例えば、Maes et al., Vet Q. 1996 Sep;18(3):104-9に概説)。
【0006】
M.ハイオニューモニエは、幾つかの呼吸器病原体を含む多因子性呼吸器症候群であるブタ呼吸器病症候群(PRDC、porcine respiratory disease complex)とも関連している。PRDCの臨床的徴候があるブタから最も一般的に単離される病原体は、免疫系の細胞に感染するか、又は著しい免疫病理を誘導するかのいずれかである。したがって、PRDCに関連する最も一般的な病原体の2つである、PRRSV及びM.ハイオニューモニエは、呼吸器免疫系がそれら2つの病原体の存在及び他の病原体の存在に応答する能力を変化させる。これら2つの一般的な病原体は、呼吸器免疫系を変化させることにより、PRDCと関連する他の多数の病原体への感受性を増加させる(例えば、Thacker, Vet Clin North Am Food Anim Pract. 2001 Nov;17(3):551-65に総説がある)。
【0007】
M.ハイオニューモニエに対する公知のワクチンの大多数は、アジュバントを使用したM.ハイオニューモニエの不活化全細胞製剤に基づいている。市販品には、RESPIFEND(Fort Dodge社製、American Home Products社製)、HYORESP(Merial Ltd社製)、M+PAC(Schering Plough社製)、PROSYSTEM M(Intervet社製)、INGLEVAC M(Boehringer社製)、RESPISURE(Pfizer Inc.社製)、及びSTELLAMUNE MYCOPLASMA(Pfizer Inc.社製)が含まれる。国際公開第03/003941号パンフレットは、注射針で投与される組成物に関する。
【特許文献1】国際公開第03/003941号パンフレット
【非特許文献1】Thacker, Anim Health Res Rev. 2004 Dec;5(2):317-20
【非特許文献2】Kobisch & Friis, Rev Sci Tech. 1996 Dec;15(4):1569-605
【非特許文献3】Maes et al., Vet Q. 1996 Sep;18(3):104-9
【非特許文献4】Thacker, Vet Clin North Am Food Anim Pract. 2001 Nov;17(3):551-65
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
多数の動物に投与が容易で、対費用効果が高く、単回用量による処置が有効である、有効なM.ハイオニューモニエワクチンが依然として必要とされている。マイコプラズマ病など、幾つかのブタ感染性疾患が過去数年間に渡って流行したことにより、ワクチン及び付随するワクチン接種スケジュールの開発が必要となった。これらのスケジュールには、成熟する前のブタに対するワクチン接種(これはロジスティックな困難性を提示する、すなわちワクチン接種するブタの数が多い)が含まれ、針による注射を介するワクチン接種は、動物を保持したままか(これは多大な労力を要する)、又は動物を保持せずになされるか(接種の投与有効性に関する確実性が妨げられる)のいずれかである。そのようなワクチンは、多回用量の必要性を排除し、それによって、世界中の膨大な養豚群のワクチン接種に関連する費用及び労力は著しく減少しよう。
【0009】
本出願中の任意の文書の引用又は特定は、そのような文書が従来技術として本発明に利用可能であることの承認ではない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、マイコプラズマ・ハイオニューモニエの感染により引き起こされる、動物の、有利にはブタの疾患又は障害を治療又は予防する方法を提供し、この方法は、動物に、有利にはブタに、単回用量のマイコプラズマ・ハイオニューモニエワクチンの有効量を投与することを含み得る。
【0011】
M.ハイオニューモニエワクチンは、全細胞又は部分細胞製剤、例えば、バクテリン又は修飾された生製剤、サブユニットワクチン、例えば、1つ若しくは複数のM.ハイオニューモニエ由来のポリペプチド若しくはタンパク質、そのようなポリペプチド若しくはタンパク質の免疫原性断片、又はそのようなタンパク質、ポリペプチド若しくは免疫原性断片をコードする1つ若しくは複数のM.ハイオニューモニエ遺伝子が含まれていてもよいサブユニットワクチンを含み得る。有利には、M.ハイオニューモニエワクチンは、不活化ワクチンである。別の有利な実施形態では、M.ハイオニューモニエワクチンは、アジュバントをさらに含むことができる。
【0012】
別の本発明は、液体ジェット無針注入器を使用して、動物に、有利にはブタに、有効量のM.ハイオニューモニエワクチンを投与するステップを含むことができる、M.ハイオニューモニエに対するワクチン接種方法であり、投与によって、M.ハイオニューモニエに対する安全な防御免疫応答が誘発される。別の目的は、動物に、有利にはブタにワクチンの投与を実施し、M.ハイオニューモニエに対する安全な防御免疫応答を誘発するように作動可能に組み立てられた、そのような液体ジェット無針注入器と、M.ハイオニューモニエワクチンを含有する少なくとも1つのワクチンバイアルとを含むことができるワクチン接種キット又はセットである。
【0013】
指摘しておくが、本開示において及び特に特許請求の範囲及び/又は段落において、「含む(comprises)」、「含まれた(comprised)」、「含んでいる(comprising)」などの用語は、米国特許法でそれに帰された意味を有していてもよく、例えば、それらは、「含む(includes)」、「含まれた(included)」、「含んでいる(including)」などを意味してもよく;「から本質的になっている(consisting essentially of)」及び「から本質的になる(consists essentially of)」などの用語は、米国特許法でそれらに帰された意味を有し、例えば、明示的に列挙されていない要素を許容するが、従来技術に見られる要素、又は本発明の基礎的又は新規な特徴に影響を与える要素は除外する。
【0014】
これらの及び他の実施形態は、以下の詳細な説明で開示され又は明白であり、以下の詳細な説明により包含される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、マイコプラズマ・ハイオニューモニエの感染により引き起こされる、動物の、有利にはブタの疾患又は障害を治療又は予防する方法を提供し、この方法は、動物に、有利にはブタに、単回用量のマイコプラズマ・ハイオニューモニエワクチンの有効量を投与することを含むことができる。
【0016】
本明細書中で使用される場合、「動物」という用語には、ヒトを含む全ての脊椎動物が含まれる。この用語には、胚期及び胎生期を含む全ての発育段階にある個々の動物も含まれる。特に、「脊椎動物」という用語には、それらに限定されないが、鳥類だけでなく、ヒト、イヌ科の動物(例えば、イヌ)、ネコ科の動物(例えば、ネコ)、ウマ科の動物(例えば、ウマ)、ウシ亜科の動物(例えば、ウシ)、ブタの類(例えば、ブタ)が含まれる。「鳥類」という用語は、本明細書中で使用される場合、それらに限定されないが、ニワトリ(ブリーダー、ブロイラー及びレイヤー)、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、キジ、オウム、フィンチ、タカ、カラス、及びダチョウ、エミュー、及びヒクイドリを含む走鳥類などの、分類学的鳥網の任意の種又は亜種を指す。
【0017】
本明細書中で使用される場合、「ブタ」という用語は、ブタ由来の動物を指す。「ボア(boar)」という用語は、雄親になることが予定された6カ月齢を超えた雄ブタ全体を指す。「ギルト(gilt)」という用語は、最初の分娩まで、最初の同腹仔を出産していない若齢の雌ブタを指す。「ホッグ(hog)」という用語は、去勢された雄ブタを指す。「ピグレット(piglet)」という用語は、若齢のブタを指す。「ポーカ(porker)」という用語は、良質の豚肉片用に飼育されたブタの品種を指す。「ストア(store)」という用語は、約10〜12週齢であり得るブタを指す。「ソウ(sow)」という用語は、生殖齢で生殖能力のある雌、又は最初の同腹仔を出産した後の雌ブタを指す。「離乳ピグレット」又は「離乳仔」という用語は、約11〜約24日齢、約2〜3週齢、約3〜5週齢、又は約5〜8週齢であり得る若齢のブタを指す。
【0018】
本明細書中で使用される場合、「毒性体」という用語は、動物宿主に感染する能力を維持する分離株を意味する。
【0019】
本明細書中で使用される場合、「不活化ワクチン」という用語は、もはや複製又は増殖できない感染性の生物又は病原体を含有するワクチン組成物を意味する。病原体は、由来が細菌性、ウイルス性、原生動物性、又は真菌性であってもよい。不活化は、冷凍解凍、化学処理(例えば、チメロサール又はホルマリン処理)、超音波破砕、放射線照射、加熱又は免疫原性は維持するが、生物の複製又は増殖を防止するのに十分な他の任意な従来手段を含む、多様な方法により達成できる。
【0020】
本明細書中で使用される場合、「免疫応答」という用語は、動物内で誘発される応答を指す。免疫応答は、細胞免疫(CMI, cellular immunity);液性免疫を指してもよく、又はその両方を伴ってもよい。本発明は、免疫系の一部に限定された応答も想定する。例えば、本発明のワクチン組成物は、ガンマインターフェロン応答の増加を特異的に誘導できる。
【0021】
本明細書中で使用される場合、「抗原」又は「免疫原」という用語は、宿主動物内で特異的な免疫応答を誘導する物質を意味する。抗原には、死滅した、弱毒化された又は生きている生物全体;生物のサブユニット又は一部分;宿主動物に提示された際に免疫応答を誘導できる免疫原をコードするポリヌクレオチドを含有する組換えベクター;タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、エピトープ、ハプテン、又はそれらの任意の組合せが含まれ得る。
【0022】
本明細書中で使用される場合、「多価性」という用語は、異なる属又は種の微生物に由来する複数の抗原を含有するワクチン(例えば、パストレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、サルモネラ(Salmonella)、大腸菌(Escherichia coli)、ヘモフィルス・ソムナス(Haemophilus somnus)、及びクロストリジウム(Clostridium)由来の抗原を含むワクチン)を意味する。
【0023】
本明細書中で使用される場合、「アジュバント」という用語は、ワクチンの免疫原性を高めるためにワクチンに添加される物質を意味する。アジュバントの作用機序は、全てが公知というわけではない。あるアジュバントは、抗原を徐放することにより免疫応答を亢進すると考えられているが、他のアジュバントは、より効率的に又は効果的に免疫原を宿主の免疫系に提示する、又は特定のサイトカインの産生を刺激する。
【0024】
本明細書中で使用される場合、「薬学的に許容される担体」及び「薬学的に許容される媒体」は、同義的に使用され、有害作用がなく宿主に注射可能なワクチン抗原を含有するための液体媒体を指す。当技術分野で公知である、好適な薬学的に許容される担体には、それらに限定されないが、滅菌水、生理食塩水、グルコース、デキストロース、又は緩衝液が含まれる。担体には、それらに限定されないが、希釈剤、安定剤(すなわち、糖質及びアミノ酸)、保存剤、湿潤剤、乳化剤、pH緩衝剤、増粘添加剤、着色剤などを含む補助剤が含まれていてもよい。
【0025】
本明細書中で使用される場合、「ワクチン組成物」という用語には、宿主内で免疫応答を誘導するのに有用で、薬学的に許容される媒体中にある、少なくとも1つの抗原又は免疫原が含まれる。ワクチン組成物は、被投与動物の年齢、性別、体重、種、及び状態、並びに投与経路などの要因を考慮し、医学又は獣医学分野の当業者に周知である用量及び技術で投与可能である。投与経路は、経皮的、例えば、皮内、筋肉内、皮下であってもよい。ワクチン組成物は、それだけで投与してもよく、又は他の処置若しくは治療と同時に投与若しくは順次に投与してもよい。組成物は、投与経路及び所望の製剤に依存し、湿潤又は乳化剤、pH緩衝剤、アジュバント、又は増粘添加剤、保存剤、着色剤などの補助的な物質を含有していてもよい。"Remington's Pharmaceutical Sciences", 1990などの標準的な薬学書を参考にすると、過剰な実験をせずに好適な製剤を調製することができる。
【0026】
M.ハイオニューモニエワクチンは、全細胞又は部分細胞製剤及び/又は上澄み液、例えば、バクテリン又は修飾された生製剤、サブユニットワクチン、例えば、1つ若しくは複数のM.ハイオニューモニエ由来のポリペプチド若しくはタンパク質、そのようなポリペプチド若しくはタンパク質の免疫原性断片、又はそのようなタンパク質、ポリペプチド、若しくは免疫原性断片をコードし、遺伝子若しくは核酸である、1つ若しくは複数のM.ハイオニューモニエ遺伝子が含まれていてもよいサブユニットワクチンを含み得る。有利には、M.ハイオニューモニエワクチンは、不活化ワクチンである。別の有利な実施形態では、M.ハイオニューモニエワクチンは、アジュバントをさらに含むことができる。
【0027】
不活化された免疫性又はワクチン組成物を取得するためには、マイコプラズマの増殖を支持可能な培地内で病原体を産生する。選択される培養培地には、R. Ross et al Am. J. Vet. Res. 1984, 45, 1899-1905、B. Kristensen et al Am. J. Vet. Res. 1981, 42, 784-788、 国際公開第91/18627号パンフレット、米国特許第5338543号明細書、又は他の類似文献に記載されているような、当業者に公知であるマイコプラズマ増殖用の培地が含まれていてもよい。マイコプラズマは、好ましくは回収後に不活化し、例えば、ホルマリン又はホルムアルデヒド、ベータプロピオラクトン、エチレンイミン、バイナリーエチレンイミン(BEI, binary ethyleneimine)、チメロサールなどを使用した化学処理、及び/又は物理処理(例えば、熱処理又は超音波破砕)によって清澄化に供してもよい。不活化の方法は、当業者に周知である。マイコプラズマ・ハイオニューモニエ菌は、ホルムアルデヒド処理(Ross R. F. et al., Am. J. Vet. Res., 1984, 45: 1899-1905)により、エチレンイミン又はBEI処理(例えば、国際公開第91/18627号パンフレットを参照)により、又はチメロサール処理(米国特許第5968525号明細書及び第5338543号明細書)により不活化できる。不活化剤は、精製ステップにより、中和又は除去することができる。
【0028】
不活化された病原体は、従来の濃縮技術、具体的には限外ろ過による濃縮が可能であり、且つ/又は、具体的には、ゲルろ過法を含むがそれに限定されないクロマトグラフィー技術を使用する従来の精製手段により、又は限外ろ過により、精製が可能である。本明細書中で使用される場合、「免疫原性」という用語は、1種又は複数の抗原に対して宿主動物内で免疫応答を生じさせ得ることを意味する。この免疫応答は、特定の感染性生物に対するワクチンにより誘発される防御免疫の基盤を形成する。
【0029】
本発明の方法は、精製されたM.ハイオニューモニエ免疫原性タンパク質、ポリペプチド、並びにそのようなタンパク質及びポリペプチドの免疫原性断片を有するサブユニットワクチンを使用して実行できる。そのようなタンパク質及びポリペプチドは、当技術分野で公知の技術を使用して調製することができる。さらに、試料をポリアクリルアミドゲル電気泳動法にかけ、続いて染色ゲル上のポリペプチドの単一バンドを視覚化することなど、当業者に周知である方法を使用して、タンパク質の純度又は均質性を決定することができる。より高次の分解能は、HPLC又は当技術分野で周知である他の類似の方法を使用して決定することができる。特定の実施形態では、本発明で使用されるワクチンは、P46、P65、P97、P102、P70、P50、及びP44などの、しかしそれらに限定されない、少なくとも1つのM.ハイオニューモニエのタンパク質を含む。M.ハイオニューモニエのゲノムの配列については、Minion et al., J Bacteriol. 2004 Nov;l86(21):7123-33を参照されたい。
【0030】
他の実施形態では、本発明の方法で使用されるワクチンは、M.ハイオニューモニエバクテリン(不活化された全細胞又は部分細胞、又は修飾された生の)又はM.ハイオニューモニエのタンパク質、ポリペプチド若しくはそれらの免疫原性断片、及び少なくとも1つの他の免疫原(不活化された全細胞又は部分細胞、又は修飾された生の)又は免疫原性若しくは抗原性タンパク質、ポリペプチド若しくはそれらの免疫原性断片を含み、好ましくはウイルス性、細菌性又は寄生虫ポリペプチドである。さらなる特定の実施形態では、そのようなタンパク質又はポリペプチドの免疫原性断片は、それらに限定されないが、P46、P65、P97、P102、P70、P50、及びP44を含む本発明の方法で使用される免疫原性タンパク質及びポリペプチドの、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも55、少なくとも60、少なくとも65、少なくとも70、少なくとも75、少なくとも80、少なくとも85、少なくとも90、少なくとも95、又は少なくとも100の連続したアミノ酸を含む配列を有する。
【0031】
さらに、ワクチンに使用されるM.ハイオニューモニエのタンパク質は、実質的に純粋又は均質である。本発明の方法では、典型的には、これらのタンパク質をコードする組換えヌクレオチド配列を発現する宿主細胞から精製されるタンパク質又はポリペプチドが使用される。そのようなタンパク質精製は、当技術分野で周知の多様な方法により達成できる。例えば、"Methods In Enzymology", 1990, Academic Press, Inc., San Diego, "Protein Purification: Principles and practice", 1982, Springer-Verlag, New Yorkに記載の技法を参照されたい。
【0032】
本発明はさらに、ベクター分子又は発現ベクター内に含有され、プロモーター要素に作動可能に連結され、エンハンサーに作動可能に連結されていてもよいM.ハイオニューモニエ免疫原を少なくとも1つ含む。
【0033】
有利な実施形態では、プロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV, cytomegalovirus)前初期遺伝子のプロモーターである。
【0034】
別の実施例では、エンハンサー及び/又はプロモーターには、種々の細胞又は組織特異的なプロモーター(例えば、筋肉、内皮細胞、肝臓、体細胞又は幹細胞)、種々のウイルスプロモーター及びエンハンサーが含まれる。筋肉特異的なプロモーター及びエンハンサーの例は報告されおり、当業者に公知である (例えば、Li et al., Gene Ther. December 1999;6(12):2005-11;Li et al., Nat Biotechnol. March 1999;17(3):241-5及びLoirat et al., Virology. Jul. 20, 1999;260(1):74-83を参照;これらの開示は、その全体が参照により組み込まれる)。
【0035】
本発明で使用できるプロモーター及びエンハンサーには、それらに限定されないが、LTR又はラウス肉腫ウイルス、HSV−1のTK、SV40の初期又は後期プロモーター、アデノウイルス主要後期(MLP, adenovirus major late)、ホスホグリセリン酸キナーゼ、メタロチオネイン、アルファ1アンチトリプシン、アルブミン、コラゲナーゼ、エラスターゼI、ベータアクチン、ベータグロビン、ガンマグロビン、アルファフェトプロテイン、筋肉クレアチンキナーゼが含まれる。
【0036】
「ベクター」とは、インビトロ又はインビボのいずれかで標的細胞に送達される異種性ポリヌクレオチドを含む組換えDNA又はRNAプラズミド又はウイルスを指す。異種性ポリヌクレオチドは、治療目的用の対象配列を含むことができ、発現カセットの形態であってもよい。本明細書中で使用される場合、ベクターは、最終的な標的細胞又は対象中で複製可能である必要はない。この用語には、クローニングベクターが含まれ、またウイルスベクターも含まれる。
【0037】
「組換え」という用語は、自然界では生じないか、又は自然界では見られない構成で別のポリヌクレオチドに連結されているかのいずれかである、半合成、又は合成由来のポリヌクレオチドを意味する。
【0038】
「異種性」とは、それが比較される残りの実体と遺伝的に異なる実体に由来することを意味する。例えば、ポリヌクレオチドは、遺伝子工学技術により、異なる供給源に由来するプラズミド又はベクター中に配置することができ、それは異種性のポリヌクレオチドである。天然のコード配列から取り除かれ、天然配列以外のコード配列に作動可能に連結されたプロモーターは、異種性プロモーターである。
【0039】
本発明のポリヌクレオチドは、同一転写ユニット内の追加的コード配列、プロモーターなどの制御要素、リボゾーム結合部位、ポリアデニル化部位、同一の又は異なるプロモーターの制御下にある追加的な転写ユニット、クローニングと、発現と、相同組換えと、宿主の形質転換とを可能にする配列、及び本発明の実施形態を提供するために望ましい可能性のある任意の構築体などの、追加的な配列を含むことができる。
【0040】
本発明は、M.ハイオニューモニエ免疫原又は変異体又は類似体又は断片を発現するベクターを包含する。M.ハイオニューモニエ免疫原の発現用要素は、有利には、本発明のベクター内に存在する。これは、最小限には、開始コドン(ATG)、終止コドン及びプロモーターを含み、から本質的になり、又はからなり、プラズミドなどのある種のベクター及びある種のウイルスベクター、例えばポックスウイルス以外のウイルスベクターでは、ポリアデニル化配列も含んでいてもよい。ポリヌクレオチドがポリタンパク質断片、例えば、M.ハイオニューモニエ免疫原を、有利にはベクター内でコードする場合、ATGはリーディングフレームの5’に配置され、終止コドンは3’に配置される。エンハンサー配列、イントロンなどの安定化配列及びタンパク質の分泌を可能にするシグナル配列など、他の発現制御用の要素が存在していてもよい。
【0041】
本発明の遺伝子の遺伝子産物を、インビボ又はインビトロのいずれかで発現するためのベクター又は組換え体又はプラズミドを作製及び/又は投与する方法は、任意の所望の方法、例えば、米国特許第4603112号明細書;第4769330号明細書;第4394448号明細書;第4722848号明細書;第4745051号明細書;第4769331号明細書;第4945050号明細書;第5494807号明細書;第5514375号明細書;第5744140号明細書;第5744141号明細書;第5756103号明細書;第5762938号明細書;第5766599号明細書;第5990091号明細書;第5174993号明細書;第5505941号明細書;第5338683号明細書;第5494807号明細書;第5591639号明細書;第5589466号明細書;第5677178号明細書;第5591439号明細書;第5552143号明細書;第5580859号明細書;第6130066号明細書;第6004777号明細書;第6130066号明細書;第6497883号明細書;第6464984号明細書;第6451770号明細書;第6391314号明細書;第6387376号明細書;第6376473号明細書;第6368603号明細書;第6348196号明細書;第6306400号明細書;第6228846号明細書;第6221362号明細書;第6217883号明細書;第6207166号明細書;第6207165号明細書;第6159477号明細書;第6153199号明細書;第6090393号明細書;第6074649号明細書;第6045803号明細書;第6033670号明細書;第6485729号明細書;第6103526号明細書;第6224882号明細書;第6312682号明細書;第6348450号明細書及び第6;312683号明細書;1986年10月16日に出願の米国特許出願第920197号明細書;国際公開第90/01543号パンフレット;国際公開第91/11525号パンフレット;国際公開第94/16716号パンフレット;国際公開第96/39491号パンフレット;国際公開第98/33510号パンフレット;EP265785;EP0370573;Andreansky et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1996;93:11313-11318;Ballay et al., EMBO J. 1993;4:3861-65;Felgner et al., J. Biol. Chem. 1994;269:2550-2561;Frolov et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1996;93:11371-11377;Graham, Tibtech 1990;8:85-87;Grunhaus et al., Sem. Virol. 1992;3:237-52;Ju et al., Diabetologia 1998;41:736-739;Kitson et al., J. Virol. 1991;65:3068-3075;McClements et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1996;93:11414-11420;Moss, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1996;93:11341-11348;Paoletti, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1996;93:11349-11353;Pennock et al., Mol. Cell. Biol. 1984;4:399406;Richardson (Ed), Methods in Molecular Biology 1995;39、"Baculovirus Expression Protocols," Humana Press Inc.;Smith et al. (1983) Mol. Cell. Biol. 1983;3:2156-2165;Robertson et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1996;93:11334-11340;Robinson et al., Sem. Immunol. 1997;9:271;及びRoizman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1996;93:11307-11312による方法又はこれらの文献に引用された文書内で開示された方法に類似した方法、又はこれらの文献に引用された文書内で開示された方法であってもよい。したがって、本発明のベクターは、ポックスウイルス(例えば、ワクシニアウイルス、アビポックスウイルス、カナリア痘ウイルス、鶏痘ウイルス、アライグマ痘ウイルス、ブタ痘ウイルスなど)、アデノウイルス(例えば、ヒトアデノウイルス、イヌアデノウイルス)、ヘルペスウイルス(例えば、イヌヘルペスウイルス)、バキュロウイルス、レトロウイルスなどの(参照により本明細書に組み込まれた文書にあるような)、任意の好適な組換えウイルス又はウイルスベクターであってもよく、又はベクターはプラズミドであってもよい。本明細書に引用され、参照により本明細書に組み込まれた文書は、本発明の実行に有用なベクターの例を提供するのに加えて、非M.ハイオニューモニエ免疫原、例えば、本発明の組成物中の又はそれに含まれる1つ又は複数のベクターにより発現される、又は本発明の組成物中に含まれる非M.ハイオニューモニエ免疫原、非M.ハイオニューモニエ免疫原ペプチド又はそれらの断片、サイトカインなどの供給源も提供し得る。
【0042】
また、本発明は、発現ベクターなどのベクターを含む製剤、例えば治療用組成物に関する。製剤は、1つ又は複数のM.ハイオニューモニエ免疫原を含む、から本質的になる、又はからなる(及び有利には発現する)1つ又は複数のベクター、例えばインビボ発現ベクターなどの発現ベクターを含み、から本質的になり、又はからなっていてもよい。有利には、ベクターは、1つ又は複数のM.ハイオニューモニエ免疫原をコードするコード領域、薬学的又は獣医学的に許容される担体、賦形剤又は媒体を含む、から本質的になる、又はからなるポリヌクレオチドを含有及び発現する。したがって、本発明のある実施形態によれば、製剤内の他の1つ又は複数のベクターは、M.ハイオニューモニエ免疫原の他の1つ又は複数のタンパク質又はそれらの断片をコードするポリヌクレオチドを含み、から本質的になり、又はからなり、適切な状況下では、ベクターは、M.ハイオニューモニエ免疫原の他の1つ又は複数のタンパク質又はそれらの断片を発現する。
【0043】
別の実施形態によれば、製剤内の他の1つ又は複数のベクターは、M.ハイオニューモニエ免疫原の1つ又は複数のタンパク質又はそれらの断片(複数可)をコードするポリヌクレオチド(複数可)を含み、又はから本質的になり、又はからなり、1つ又は複数のベクターはポリヌクレオチド(複数可)を発現する。本発明の製剤は、同一のタンパク質及び/又は異なるタンパク質、しかし有利には同一のタンパク質をコードする、異なるM.ハイオニューモニエ分離株由来のポリヌクレオチドを含み、から本質的になり、又はからなり、有利には適切な条件又は好適な条件下のインビボで又は好適な宿主細胞内で有利には発現もする、少なくとも2つのベクターを有利には含み、から本質的になり、又はからなる。M.ハイオニューモニエペプチド、融合タンパク質又はそのエピトープをコードし、有利にはインビボで、有利には発現するポリヌクレオチドを含有する、から本質的になる、又はからなる、1つ又は複数のベクターを含有する製剤。
【0044】
本発明のある実施形態によれば、発現ベクターは、ウイルスベクター、具体的にはインビボ発現ベクターである。有利な実施形態では、発現ベクターは、アデノウイルスベクターである。有利には、アデノウイルスは、ヒトAd5ベクター、E1−欠失型及び/又はE3欠失型アデノウイルスである。
【0045】
ある具体的な実施形態では、ウイルスベクターはポックスウイルス、例えば、ワクシニアウイルス又は弱毒化ワクシニアウイルス(例えば、MVA、ニワトリ胚線維芽細胞上でアンカラワクチン株を570代を超えて継代培養した後に取得された修飾アンカラ株;Stickl & Hochstein-Mintzel, Munch. Med. Wschr., 1971, 113, 1149-1153;Sutter et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 1992, 89, 10847-10851を参照;ATCC VR−1508として入手可能;又はNYVAC、米国特許第5494807号明細書、例えばNYVACの構築を考察し、異種性コード核酸分子のこの組換え体の部位への挿入だけでなく、コペンハーゲン株ワクシニアウイルスゲノムから追加的ORFが欠失したNYVACの変異体も同様に考察し、適合するプロモーターの使用も考察されている米国特許第5494807号明細書の実施例1〜6及び以下参照;国際公開第96/40241号パンフレットも参照)、アビポックスウイルス又は弱毒化アビポックスウイルス(例えば、カナリア痘、鶏痘、コバト痘、ハト痘、ウズラ痘、ALVAC又はTROVAC;例えば、米国特許第5505941号明細書、第5494807号明細書を参照)、ブタ痘、アライグマ痘、ラクダ痘又は粘液腫症ウイルスである。
【0046】
本発明の別の実施形態によれば、ポックスウイルスベクターは、カナリア痘ウイルス又は鶏痘ウイルスベクターであり、有利には、弱毒化カナリア痘ウイルス又は鶏痘ウイルスである。この点について、カナリア痘は、ATCCからアクセッション番号VR−111で入手可能である。弱毒化カナリア痘ウイルスは、米国特許第5756103号明細書(ALVAC)及び国際公開第01/05934号パンフレットに記載されている。多数の鶏痘ウイルスワクチン株、例えば、MERIAL社が販売するDIFTOSEC CT株及びINTERVET社が販売するNOBILIS VARIOLEワクチンも入手可能であり、弱毒化鶏痘株TROVACに関する米国特許第5766599号明細書も参照されたい。
【0047】
その組換え体を産生する方法及びその組換え体をどのように投与するかについての情報は、当業者であれば、本明細書中に引用した文書及び国際公開第90/12882号パンフレットを参照することができ、例えばワクシニアウイルスについては、特に、米国特許第4769330号明細書、第4722848号明細書、第4603112号明細書、第5110587号明細書、第5494807号明細書、及び第5762938号明細書で言及され;鶏痘については、特に、米国特許第5174993号明細書、第5505941号明細書及び米国特許第5766599号明細書で言及され;カナリア痘については、特に、米国特許第5756103号明細書で言及され;ブタ痘については、特に米国特許第5,382,425号明細書で言及され;アライグマ痘については、特に国際公開第00/03030号パンフレットで言及されている。
【0048】
発現ベクターがワクシニアウイルスである場合、発現させる1つ又は複数のポリヌクレオチド用の1つ又は複数の挿入部位は、有利には、チミジンキナーゼ(TK, thymidine kinase)遺伝子又は挿入部位、血球凝集素(HA, hemagglutinin)遺伝子又は挿入部位、A型封入体(ATI, inclusion body of the A type)をコードする領域にある。本明細書中に引用された文書、特にワクシニアウイルスに関するものも参照されたい。カナリア痘の場合、有利には、1つ又は複数の挿入部位は、C3、C5及び/又はC6ORFである。本明細書中に引用された文書、特にカナリア痘ウイルスに関するものも参照されたい。鶏痘の場合、有利には、1つ又は複数の挿入部位は、F7及び/又はF8ORFである。本明細書中に引用された文書、特に鶏痘ウイルスに関するものも参照されたい。MVAウイルス用の1つ又は複数の挿入部位は、有利には、Carroll M. W. et al., Vaccine, 1997, 15 (4), 387-394;Stittelaar K. J. et al., J. Virol., 2000, 74 (9), 4236-4243;Sutter G. et al., 1994, Vaccine, 12 (11), 1032-1040を含む、種々の出版物にあり、この点については、MVAの全ゲノムがAntoine G., Virology, 1998, 244, 365-396に記載されており、当業者であれば、他の挿入部位又は他のプロモーターを使用できることも指摘しておく。
【0049】
有利には、発現させるポリヌクレオチドは、特異的なポックスウイルスプロモーター、例えば、特に、ワクシニア7.5kDaプロモーター(Cochran et al., J. Virology,1985, 54, 30-35)、ワクシニアI3Lプロモーター(Riviere et al., J. Virology, 1992, 66, 3424-3434)、ワクシニアHAプロモーター(Shida, Virology, 1986, 150, 451-457)、牛痘ATIプロモーター(Funahashi et al., J. Gen. Virol., 1988, 69, 35-47)、ワクシニアH6プロモーター(Taylor J. et al., Vaccine, 1988, 6, 504-508;Guo P. et al. J. Virol., 1989, 63, 4189-4198;Perkus M. et al., J. Virol., 1989, 63, 3829-3836)の制御下に挿入する。
【0050】
ある具体的な実施形態では、ウイルスベクターは、ヒトアデノウイルス(HAV, human adenovirus)又はイヌアデノウイルス(CAV, canine adenovirus)などのアデノウイルスである。
【0051】
ある実施形態では、ウイルスベクターは、ヒトアデノウイルスであり、具体的には、アクセッション番号M73260でGenbankに、及び参照文献であるJ. Chroboczek et al Virol. 1992, 186, 280-285に開示されているhAd5配列を参照すると、具体的にはヌクレオチド459付近からヌクレオチド3510付近までのウイルスゲノムのE1領域での欠失により複製不能にされた血清型5型のアデノウイルスである。欠失アデノウイルスは、E1発現型293内(F. Graham et al J. Gen. Virol. 1977, 36, 59-72)又はPER細胞内、具体的にはPER.C6(F. Falloux et al Human Gene Therapy 1998, 9, 1909-1917)内で増殖する。ヒトアデノウイルスは、具体的にはヌクレオチド28592付近からヌクレオチド30470付近までの、E3領域での欠失が可能である。E1領域での欠失は、E3領域での欠失と組み合わせて行うことができる(例えば、J. Shriver et al. Nature, 2002, 415, 331-335、F. Graham et al Methods in Molecular Biology Vol.7: Gene Transfer and Expression Protocols Edited by E. Murray, The Human Press Inc, 1991, p109-128;Y. Ilan et al Proc. Natl. Acad. Sci. 1997, 94, 2587-2592;米国特許第6133028号明細書;米国特許第6692956号明細書;S. Tripathy et al Proc. Natl. Acad. Sci. 1994, 91, 11557-11561;B. Tapnell Adv. Drug Deliv. Rev. 1993, 12, 185-199;X. Danthinne et al Gene Thrapy 2000, 7, 1707-1714;K. Berkner Bio Techniques 1988, 6, 616-629;K. Berkner et al Nucl. Acid Res. 1983, 11, 6003-6020;C. Chavier et al J. Virol. 1996, 70, 4805-4810を参照)。挿入部位は、最終的にE1及び/又はE3領域が部分的又は完全に欠失された後のE1及び/又はE3遺伝子座(領域)であってもよい。有利には、発現ベクターがアデノウイルスである場合、発現させるポリヌクレオチドは、強力プロモーター、好ましくはサイトメガロウイルス前初期遺伝子プロモーター(CMV−IEプロモーター, cytomegalovirus immediate-early gene promoter)、具体的にはM. Boshart et al Cell 1985, 41, 521-530に記載のヌクレオチド−734付近からヌクレオチド+7付近までのエンハンサー/プロモーター領域又はPromega Corp.社製のpCIベクター由来のエンハンサー/プロモーター領域などの、真核細胞内で機能するプロモーターの制御下に挿入する。CMV−IEプロモーターは、有利には、マウス又はヒト由来である。伸長因子1αのプロモーターも使用できる。ある具体的な実施形態では、低酸素により制御されるプロモーター、例えば、K. Boast et al Human Gene Therapy 1999, 13, 2197-2208に記載のHREプロモーターが使用できる。筋肉特異的プロモーター(X. Li et al Nat. Biotechnol. 1999, 17, 241-245)も使用できる。強力プロモーターについてもまた、本明細書中で、プラズミドベクターとの関連で考察している。ある実施形態では、エンハンサー/プロモーター領域の下流に、スプライス配列を配置できる。例えば、CMV−IE遺伝子から単離されたイントロン1(R. Stenberg et al J. Virol. 1984, 49, 190)、ウサギ又はヒトβグロビン遺伝子から単離されたイントロン、具体的にはβグロビン遺伝子由来のイントロン2、免疫グロブリン遺伝子から単離されたイントロン、SV40初期遺伝子由来のスプライス配列、又はマウス免疫グロブリンのアクセプター配列に融合されたヒトβグロビンのドナー配列(ジェンバンクのアクセッション番号CVU47120のヌクレオチド890付近からヌクレオチド1022付近まで)を含む、Promege Corp.社製のpCIベクターから単離されたキメライントロン配列である。ポリ(A)配列及び転写終結配列は、発現させるポリヌクレオチド、例えば、具体的にはジェンバンクのアクセッション番号BOVGHRHのヌクレオチド2339付近からヌクレオチド2550付近までのウシ成長ホルモン遺伝子、ウサギβグロビン遺伝子、又はSV40後期遺伝子ポリアデニル化シグナルの下流に挿入できる。
【0052】
別の実施形態では、ウイルスベクターは、イヌアデノウイルス、具体的にはCAV−2(例えば、L. Fischer et al. Vaccine, 2002, 20, 3485-3497;米国特許第5529780号明細書;米国特許第5688920号明細書;PCT出願第95/14102号パンフレットを参照)である。CAV用には、挿入部位は、E3領域内及び/又はE4領域と右ITR領域との間に位置する領域内(米国特許第6090393号明細書;米国特許第6156567号明細書を参照)であり得る。ある実施形態では、挿入は、サイトメガロウイルス前初期遺伝子プロモーター(CMV−IEプロモーター)又はヒトアデノウイルスベクター用にすでに記載したプロモーターなどのプロモーターの制御下にある。ポリ(A)配列及び転写終結配列は、発現させるポリヌクレオチド、例えば、ウシ成長ホルモン遺伝子又はウサギβグロビン遺伝子ポリアデニル化シグナルの下流に挿入することができる。
【0053】
別の具体的な実施形態では、ウイルスベクターは、仮性狂犬病ウイルス(PRV, pseudorabies virus)などのヘルペスウイルスである。PRV用には、挿入部位は、具体的にはチミジンキナーゼ遺伝子内、gE遺伝子内、又はUL43ORF内(国際公開第96/13575号パンフレット、国際公開第87/04463号パンフレットを参照)であってもよい。ある実施形態では、発現させるポリヌクレオチドは、真核細胞内で機能するプロモーター、有利にはCMV−IEプロモーター(マウス又はヒト)の制御下に挿入する。ある具体的な実施形態では、低酸素により制御されるプロモーター、例えば、K. Boast et al Human Gene Therapy 1999, 13, 2197-2208に記載のHREプロモーターが使用できる。ポリ(A)配列及び転写終結配列は、発現させるポリヌクレオチド、例えば、ウシ成長ホルモン遺伝子又はウサギβグロビン遺伝子ポリアデニル化シグナルの下流に挿入することができる。
【0054】
本発明のさらに別の実施形態によれば、発現ベクターは、プラズミドベクター又はDNAプラズミドベクター、具体的にはインビボ発現ベクターである。非限定的な、特定の実施例では、pVR1020又は1012プラズミド(VICAL Inc.社製;Luke C. et al., Journal of Infectious Diseases, 1997, 175, 91-97;Hartikka J. et al., Human Gene Therapy, 1996, 7, 1205-1217、例えば米国特許第5846946号明細書及び第6451769号明細書を参照)が、ポリヌクレオチド配列の挿入用ベクターとして使用できる。pVR1020プラズミドは、pVR1012に由来し、ヒトtPAシグナル配列を含有する。ある実施形態では、ヒトtPAシグナルは、ジェンバンクのアクセッション番号HUMTPA14のアミノ酸M(1)からアミノ酸S(23)までを含む。非限定的な、別の特定の実施例では、ポリヌクレオチド配列の挿入用ベクターとして使用するプラズミドは、ジェンバンクのアクセッション番号U28070のアミノ酸M(24)からアミノ酸A(48)までのウマIGF1のシグナルペプチド配列を含有できる。実行に際して参考又は使用され得るDNAプラズミドに関する追加的な情報は、例えば、米国特許第6852705号明細書;第6818628号明細書;第6586412号明細書;第6576243号明細書;第6558674号明細書;第6464984号明細書;第6451770号明細書;第6376473号明細書及び第6221362号明細書に見出される。
【0055】
プラズミドという用語は、本発明によるポリヌクレオチドと、所望の宿主又は標的の1つ又は複数の細胞内でのインビボ発現に必要な要素とを含む、任意のDNA転写ユニットを包含し、その点については、直鎖状形態だけでなく、スーパーコイル状の又は非スーパーコイル状の、環形のプラズミドも、本発明の範囲内であることを意図することに留意されたい。
【0056】
各プラズミドは、M.ハイオニューモニエ免疫原又はその変異体、類似体又はその断片をコードし、プロモーターに作動可能に連結された又はプロモーターの制御下にある又はプロモーターに依存しているポリヌクレオチドに加えて、含む、含有する、又は本質的になる。一般的に、真核細胞内で機能する強力プロモーターを使用することが有利である。好ましい強力プロモーターは、ヒト若しくはマウス由来の、又はラット若しくはモルモットなど、他に由来していてもよい、サイトメガロウイルス前初期プロモーター(CMV−IE, immediate early cytomegalovirus promoter)である。CMV−IEプロモーターは、実際のプロモーター部分を含み得るが、エンハンサー部分を伴っていても又はいなくともよい。参照できるのは、PCT出願第87/03905号明細書だけでなく、EP−A−260148、EP−A−323597、米国特許第5168062号明細書、第5385839号明細書及び第4968615号明細書である。CMV−IEプロモーターは、有利には、ヒトCMV−IE(Boshart M. et al., Cell., 1985, 41, 521-530)又はマウスCMV−IEである。
【0057】
より一般的に言えば、プロモーターは、ウイルス又は細胞のいずれか一方に由来を有する。本発明の実行で使用するのに有用であり得る、CMV−IE以外のウイルス性の強力プロモーターは、SV40ウイルスの前期/後期プロモーター又はラウス肉腫ウイルスのLTRプロモーターである。本発明の実行で使用するのに有用であり得る、細胞性の強力プロモーターは、例えば、デスミンプロモーター(Kwissa M. et al., Vaccine, 2000, 18, 2337-2344)、又はアクチンプロモーター(Miyazaki J. et al., Gene, 1989, 79, 269-277)などの細胞骨格遺伝子のプロモーターである。
【0058】
これらのプロモーターの機能的小断片、すなわち、十分なプロモーター活性を維持しているこれらのプロモーターの部分は本発明内に含まれ、例えば、PCT出願第98/00166号パンフレット又は米国特許第6156567号明細書に記載の切断型CMV−IEプロモーターは、本発明の実行に使用できる。本発明の実行におけるプロモーターには、十分なプロモーター活性及びしたがってプロモーターとしての機能、好ましくは、誘導体又は小断片が由来する実際の又は全長プロモーターの活性に実質的に類似したプロモーター活性、例えば、全長CMV−IEプロモーターの活性に対する、米国特許第6156567号明細書の断片型CMV−IEプロモーターの活性に類似したプロモーター活性を維持している、全長プロモーターの誘導体及び小断片が結果的に含まれる。したがって、本発明の実行におけるCMV−IEプロモーターは、誘導体及び小断片だけでなく、全長プロモーターのプロモーター部分及び/又は全長プロモーターのエンハンサー部分を含み、から本質的になり、又はからなっていてもよい。
【0059】
好ましくは、プラズミドは、他の発現制御要素を含み又はから本質的になる。特に有利なのは、安定化配列(複数可)、例えば、イントロン配列(複数可)、好ましくはhCMV−IEの第1イントロン(PCT出願第89/01036号パンフレット)、ウサギβグロビン遺伝子のイントロンII(van Ooyen et al., Science, 1979, 206, 337-344)を組み込むことである。
【0060】
プラズミド及びポックスウイルス以外のウイルスベクター用のポリアデニル化シグナル(ポリA)に関して、より使用され得るのは、ウシ成長ホルモン(bGH, bovine growth hormone)遺伝子のポリ(A)シグナル(米国特許第5122458号明細書を参照)、又はウサギβグロビン遺伝子のポリ(A)シグナル又はSV40ウイルスのポリ(A)シグナルである。
【0061】
本発明の別の実施形態によれば、発現ベクターは、適切な細胞系でタンパク質をインビトロ発現するために使用される発現ベクターである。発現したタンパク質は、分泌後、又は分泌前に、培地の上澄み内で又は上澄みから回収可能であり(分泌されない場合、典型的には、細胞溶解が発生又は実施される)、限外ろ過などの濃縮方法により濃縮してもよく且つ/又はアフィニティ、イオン交換又はゲルろ過型のクロマトグラフィー法などの精製手段により精製してもよい。
【0062】
本発明で使用できる宿主細胞には、それらに限定されないが、筋肉細胞、ケラチン生成細胞、筋芽細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO, Chinese Hamster ovary cell)、ベロ細胞、BHK21、sf9細胞などが含まれる。当業者には理解できることだが、宿主細胞の培養条件は、具体的な遺伝子に従って変動し、M.ハイオニューモニエの最適な培養条件を宿主細胞に依存して決定するには、時には定常の実験が必要である。
【0063】
「宿主細胞」とは、遺伝的に改変された、又は組換えプラズミド若しくはベクターなどの外来性ポリヌクレオチドの投与により遺伝的に改変され得る原核又は真核細胞を示す。遺伝的改変細胞を指す場合、この用語は、初代の改変細胞及びその子孫の両方を指す。
【0064】
所望の配列を含むポリヌクレオチドは、好適なクローニング又は発現ベクターに挿入可能で、次いでベクターは、複製及び増幅用に好適な宿主細胞に導入できる。ポリヌクレオチドは、当技術分野で公知である任意の手段により宿主細胞に導入できる。対象となるポリヌクレオチドを含有するベクターは、直接取り込みと、エンドサイトーシスと、形質移入と、f交配と、電気穿孔法と、塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAE−デキストラン、又は他の物質を使用した形質移入と;微粒子銃と;リポフェクションと;感染(ベクターが感染性、例えばレトロウイルスベクターである)とを含む、任意の多数の適切な手段により宿主細胞に導入可能である。導入するベクター又はポリヌクレオチドの選択は、時には宿主細胞の特性に依存することもあろう。
【0065】
有利な実施形態では、本発明は、M.ハイオニューモニエ免疫原を標的細胞内に送達及び発現するのための製剤を、治療上有効な量で投与することを提供する。治療上有効な量の決定は、当業者にとっては、定常の実験である。ある実施形態では、製剤は、M.ハイオニューモニエ免疫原を発現するポリヌクレオチドを含む発現ベクターと、薬学的又は獣医学的に許容される担体、媒体又は賦形剤とを含む。有利な実施形態では、薬学的又は獣医学的に許容される担体、媒体又は賦形剤は、形質移入を容易にし、且つ/又はベクター又はタンパク質の保存性を向上させる。
【0066】
薬学的又は獣医学的に許容される担体又は媒体又は賦形剤は、当業者に周知である。例えば、薬学的又は獣医学的に許容される担体又は媒体又は賦形剤は、0.9%のNaCl(例えば、生理食塩水)溶液又はリン酸緩衝液であってもよい。本発明の方法に使用可能な、他の薬学的又は獣医学的に許容される担体又は媒体又は賦形剤には、それらに限定されないが、ポリ−(L−グルタメート)又はポリビニルピロリドンが含まれる。薬学的又は獣医学的に許容される担体又は媒体又は賦形剤は、ベクター(又は本発明のベクターからインビトロで発現されたタンパク質)の投与を容易にする任意の化合物又は化合物の組合せであってもよく、有利には、担体、媒体又は賦形剤は、形質移入を容易にし、且つ/又はベクター(又はタンパク質)の保存性を向上させることができる。用量及び用量の容積は、本明細書中の一般的説明で考察しており、当業者であれば、当技術分野の知見と併せて本開示を読むことで、過度の実験をせずに決定することができる。
【0067】
プラズミド用に有利ではあるが、排他的に好適というわけではない4級アンモニウム塩を含有する陽イオン性脂質は、有利には、以下の式を有するものである:
【0068】
【化1】

【0069】
式中、Rは、12〜18個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の直鎖脂肪族基であり、Rは、2個又は3個の炭素原子を含有する別の脂肪族基であり、Xは、アミン又はヒドロキシル基、例えばDMRIEである。別の実施形態では、陽イオン性脂質には、中性脂質、例えばDOPEが付随していてもよい。
【0070】
これらの陽イオン性脂質の中で、好ましいのは、DMRIE(N−(2−ヒドロキシエチル)−N,N−ジメチル−2,3−ビス(テトラデシロキシ)−1−プロパンアンモニウム;国際公開第96/34109号パンフレット)であり、中性脂質、有利にはDOPE(ジオレオイル−ホスファチジル−エタノールアミン;Behr J. P., 1994, Bioconjugate Chemistry, 5, 382-389)を有利には付随して、DMRIE−DOPEを形成する、
【0071】
有利には、アジュバントとのプラズミド混合物は、即時に、有利には製剤の投与と同時に又は製剤の投与の少し前に形成され、例えば、有利には、混合物が複合体を形成するのに十分な投与前の時間、例えば、投与前およそ30分など、投与前約10分から約60分間の時間が投与前にあるように、投与の少し前又は投与の前に、プラズミド−アジュバント混合物を形成する。
【0072】
DOPEが存在する場合、DMRIE:DOPEのモル比は、有利には、約95:約5〜約5:約95まで、より有利には、約1:約1、例えば1:1である。
【0073】
本発明による免疫原組成物及びワクチンは、有利には、1つ又は複数のアジュバントを含む又はから本質的になる。本発明の実行に使用する好適なアジュバントは、(1)アクリル又はメタクリル酸のポリマー、無水マレイン酸及びアルケニル誘導体ポリマー、(2)1つ又は複数の非メチル化CpGユニットを有するオリゴデオキシリボヌクレオチド配列(Klinman D. M. et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 1996, 93, 2879-2883;国際公開第98/16247号パンフレット)などの免疫賦活性配列(ISS, immunostimulating sequence)、(3)"Vaccine Design, The Subunit and Adjuvant Approach" M. Powell, M. Newman, Plenum Press出版1995の147頁に記載のSPT乳剤、及び同文献の183頁に記載のMF59乳剤などの水中油型乳剤、(4)4級アンモニウム塩を含有する陽イオン性脂質、(5)サイトカイン、(6)水酸化アルミニウム又はリン酸アルミニウム又は(7)サポニン、(8)臭化ジオクタデシルジメチルアンモニウム(Vaccine Design p.157)、(9)アリジン(Vaccine Design p.148)、参照により本出願に組み込まれ、引用された任意の文書で考察された他のアジュバント、又は(8)それらの任意の組合せ又は混合物である。
【0074】
水中油型乳剤(3)は、特にウイルスベクターに適切であり、軽質流動パラフィン油(ヨーロッパ薬局方型)、スクアラン、スクアレンなどのイソプレノイド油、例えばイソブテン又はデセンなど、アルケンのオリゴマー化から生じる油、植物油、エチルオレート、プロピレングリコール、ジ(カプリレート/カプレート)、グリセリントリ(カプリレート/カプレート)及びプロピレングリコールジオレートなどの直鎖アルキル基を有する酸又はアルコールのエステル、又は分岐脂肪アルコール又は酸のエステル、特にイソステアリン酸エステルに基づいていてもよい。
【0075】
油は、乳化剤と組み合わせて使用され、乳剤を形成する。乳化剤は、一方では、ソルビタン、マンニド(例えば、無水マンニトールオレート)、グリセリン、ポリグリセリン、又はプロピレングリコールと、もう一方では、オレイン酸、イソステアリン酸、リシノール酸又はヒドロキシステアリン酸とのエステルなど、非イオン性界面活性剤であってもよく、該エステルは、エトキシ化され、又はプルロニック、例えば、L121などのポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンコポリマーブロックであってもよい。
【0076】
アクリル酸又はメタクリル酸のポリマー(1)は、具体的には糖質又はポリアルコールのポリアルケニルエステルと、好ましくは架橋している。これらの化合物は、カルボマーという用語で公知である(Pharmeuropa vol. 8, No. 2, June 1996)。当業者であれば、米国特許第2909462号明細書を参照することも可能で、その明細書には、少なくとも3個のヒドロキシル基の水素原子が少なくとも2個の炭素原子を有する不飽和脂肪族基に置換されている、少なくとも3個の、好ましくは8個以下のヒドロキシル基を有するポリヒドロキシル化化合物と架橋している、そのようなアクリルポリマーが記載されている。好ましい基は、2〜4個の炭素原子を含有する基であり、例えば、ビニル、アリル及び他のエチレン性不飽和基である。不飽和基は、それら自体がメチルなどの他の置換基を含有していてもよい。Carbopol(商標)(BF Goodrich社製、Ohio、米国)という名称で販売されている製品は、特に適切である。それらは、アリルスクロース又はアリルペンタエリスリトールと架橋している。それらの中で、Carbopol(商標)974P、934P及び971Pを挙げることができる。
【0077】
無水マレイン酸の及びアルケニル誘導体のコポリマーの中では、無水マレイン酸の及びエチレンのコポリマーであり、直鎖状又は架橋状であり、例えばジビニルエーテルと架橋しているEMA(商標)コポリマー(Monsanto社製)が好ましい。参照できるのは、J. Fields et al., Nature, 186: 778-780, Jun. 4, 1960である。
【0078】
有用であるアジュバントの割合は、周知であり、当業者であれば容易に入手できる。一例として、アクリル酸若しくはメタアクリル酸のポリマー、又は無水マレイン酸及びアルケニルコポリマーのポリマーの濃度は、最終ワクチン組成物中で、0.01%から1.5%W/Vまで、より具体的には、0.05から1%W/Vまで、好ましくは0.1%から0.4%W/Vまでであろう。
【0079】
有利な実施形態では、アジュバントは、2004年7月26日に出願の米国特許出願第10/899181号明細書で開示され、2005年4月14日に米国特許公開第2005/0079185号明細書として公開されたアジュバントである。有利な実施形態では、アジュバントは、TS6アジュバントである。
【0080】
本発明の方法により使用されるワクチンは、サイトカインを含有できてもよい。サイトカインは、タンパク質として、又は組換えウイルスベクターに挿入した、このサイトカインをコードする遺伝子として存在してもよい。サイトカインは、ネコサイトカイン、例えば、ネコインターロイキン18(fIL−18)(Taylor S. et al., DNA Seq., 2000, 10(6), 387-394)、fIL−16(Leutenegger C. M. et al., DNA Seq., 1998, 9(1), 59-63)、fIL−12(Fehr D. et al., DNA Seq., 1997, 8(1-2), 77-82;Imamura T. et al., J. Vet. Med. Sci., 2000, 62(10), 1079-1087)及びネコ顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF、Granulocyte-Macrophage Colony-Stimulating Factor)(ジェンバンクAF053007)の中から選択してもよい。
【0081】
特定の実施形態では、薬学的組成物はインビボで直接的に投与され、コードされた産生物はベクターにより宿主内で発現される。有利には、本発明による薬学的及び/又は治療用組成物及び/又は製剤は、本明細書中で考察したように、治療応答を誘発するのに有効な量の1つ又は複数の発現ベクター及び/又はポリペプチドを含み、又はから本質的になり、又はからなり、有効量は、本明細書に組み込まれた文書、及び当技術分野の知見を含む本開示から、過度の実験をせずに決定することができる。
【0082】
プラズミドベクターに基づく治療用及び/又は薬学的組成物の場合、用量は、一般的に言えば、約1μg〜約2000μg、有利には約50μg〜約1000μg及びより有利には約100μgから約800μgまでの、M.ハイオニューモニエ免疫原を発現するプラズミドを含み、から本質的になり、又はからなる。プラズミドベクターに基づく治療用及び/又は薬学的組成物を電気穿孔法で投与する場合、プラズミドの用量は、一般的に、約0.1μgと1mgとの間、有利には約1μgと100μgとの間、有利には約2μgと50μgとの間である。治療用及び/又は薬学的組成物は、用量当り、約10から約1011まで、有利には約10から約1010まで、及びより有利には約10から約10までの、M.ハイオニューモニエ免疫原を発現する組換えアデノウイルスのウイルス粒子を含有する。ポックスウイルスに基づく治療用及び/又は薬学的組成物の場合、用量は、約10pfuと約10pfuとの間であり得る。薬学的組成物は、用量当り、約10から約10まで、有利には約10から約10pfuまでの、M.ハイオニューモニエ免疫原を発現するポックスウイルス又はヘルペスウイルス組換え体を含有する。
【0083】
本明細書中の開示は、一例として提供されており、本発明がそれに限定されないことを、当業者であれば理解すべきである。本明細書中の開示及び当技術分野の知見から、当業者であれば、各注射手順に使用される投与回数、投与経路、及び用量は、いかなる過度な実験もせずに決定できる。
【0084】
本発明は、本発明により作製した有効量の治療用組成物を、動物に、少なくとも1回投与することを想定する。動物は、雄、雌、妊娠した雌、及び新生仔であってもよい。この投与は、それらに限定されないが、筋肉内(IM, intramuscular)、皮内(ID, intradermal)、又は皮下(SC, subcutaneous)注射、又は鼻腔内経由又は口径投与を含む、種々の経路を経由してもよい。本発明による治療用組成物はまた、無針装置(例えば、Pigjet、Biojector、又はVitajet装置(Bioject社製、Oreg.、米国)で)によっても投与できる。プラズミド組成物を投与する別の手法は、電気穿孔法の使用である(例えば、S. Tollefsen et al. Vaccine, 2002, 20, 3370-3378;S. Tollefsen et al. Scand. J. Immunol., 2003, 57, 229-238;S. Babiuk et a1., Vaccine, 2002, 20, 3399-3408;PCT出願第99/01158号明細書を参照)。別の実施形態では、遺伝子銃又は金微粒子銃により、プラズミドを動物に送達する。有利な実施形態では、動物はブタである。
【0085】
有利には、M.ハイオニューモニエワクチンは、離乳ブタ(約2〜3週齢)に投与する。ブタは、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24日齢であってもよい。追加免疫投与は、必要なら、初回投与のおよそ3〜5週間後に行うことができる。別の有利な実施形態では、ピグレットがM.ハイオニューモニエに対する免疫を獲得するように、本発明のM.ハイオニューモニエワクチンをソウに投与する。投与は、皮膚(表皮及び真皮)又は真皮下(下皮及び/又は皮下及び/又は筋肉内)に、有利には頚部に、より有利には耳の尾側の頚部領域内にである。この投与経路により、免疫原は樹状ランゲルハンス細胞を標的にできる可能性がある。
【0086】
液体ジェット無針注入器とは、微細な開口部を介して、所定量の液体を高圧で注射する器具である。注入器の機械的仕様は、組織への浸透の深さを制御するために調整又は選択できる。注射器又は無針注入器を使用した液体の投与では、組織内での液体分布が異なる結果となる。注射器を使用すると、局部的なボーラス又はプールに帰着する。注入器を使用すると、国際公開第01/13975号パンフレットに図示されているように、標的組織層内で拡散する分布に帰着する。有利な実施形態では、無針注射は、DERMA-VAC NF経皮ワクチン接種器システム(DERMA-VAC NF transdermal vaccinator system)である。
【0087】
浸透の深さは、主に液体圧力により制御する。この液体圧力は、バネ又は任意の他の推進手段の強度並びにピストン及びノズル開口部の直径などの、注入器の機械的仕様に依存する。これは、当業者であれば、直ちに入手可能である。
【0088】
注射の深さは、好ましくは目的のワクチンと同じ粘性を有する色付の液体を投与した後で、注射部位の組織を解剖することにより容易に決定できる(好ましくはワクチンを投与しようとする箇所と対応し、検査は、有利には、ワクチン接種する集団と同種及び同年齢の動物に実施する)。この検査は、色素をさらに含有する目的のワクチンを使って、直接的に実施できる。当業者であれば、この検査により注入器の機械的仕様を調整できる。
【0089】
無針注入器は、1つ又は幾つかのノズルを備えた頭部を装備できる。幾つかのノズルを使用すると、ワクチンの分散パターンをより広域に広げることができる。1つから10までの、好ましくは1つから6つまでのノズルがあり得る。
【0090】
注入器は、幾つかが商業的に入手可能である。Vitajet(商標)3(Bioject Inc.社製)は、本発明による方法に特に適している。
【0091】
有利なのは、標準的バイアル又はアンプルに注入器を直接装着させる手段を装備した注入器の使用である。加えて、ワクチンバイアルは、何回分かのワクチン用量を含むことができ、注入器及び同一のバイアルを使用して、何回かのワクチン接種及び/又は幾つかの動物のワクチン接種が可能になる。したがって、注入器は、好ましくは、同一のバイアルから連続注射を実施できる。
【0092】
本発明の1つの態様では、M.ハイオニューモニエに対するワクチン接種と、別のブタ疾患に対するワクチン接種を一緒に行うことができる。そのワクチンは、本発明によるM.ハイオニューモニエワクチンと、他のブタ疾患に対して防御可能なワクチン成分とを含む。
【0093】
注射する用量容積は、約0.1mlから約1.0mlまで、好ましくは約0.1ml〜約0.8ml、より好ましくは約0.2mlから約0.5mlまでであり得る。定義上、1回の用量容積とは、1つの動物に一度に投与するワクチンの全容積を意味する。
【0094】
ワクチンは、約104.5から約108.0までのTCID50/用量(ワクチン用量当り、50%の培養組織が感染する用量)及び好ましくは約105.5から約106.5までのTCID50/用量を含有できる。
【0095】
もし必要又は所望であれば、好適な間隔で、例えば初回投与の約2週間後から約8週間後までに、好ましくは初回投与の約3週間後から約5週間後までに、追加免疫投与として投与を繰り返し可能であってもよい。特にソウには、追加免疫投与を毎年繰り返すこともできる。
【0096】
本発明の別の目的は、上述の液体ジェット無針注入器を使用して動物に投与するために設計され、M.ハイオニューモニエに対する安全な防御免疫応答の誘発をもたらすワクチン製剤用に、上述したM.ハイオニューモニエワクチンの及び許容される媒体又は希釈剤の有効量を使用することである。
【0097】
別の目的は、ブタ族の動物にワクチンの投与を実施するように作動可能に組み立てられた、そのような液体ジェット無針注入器と、M.ハイオニューモニエワクチンを含有する少なくとも1つのワクチンバイアルとを含むワクチン接種キット又はセットである。ワクチンは、本質的に真皮及び下皮内に分布する。
【0098】
そのようなワクチン接種キット又はセットは、M.ハイオニューモニエに対する、安全な防御免疫応答を誘発できる。
【0099】
以下の非限定的な実施例により、以下に本発明をさらに説明する。
【実施例1】
【0100】
新規なマイコプラズマ・ハイオニューモニエバクテリンの経皮的無針送達の有効性及び安全性
【0101】
マイコプラズマ・ハイオニューモニエは、依然として、ブタの呼吸器疾患の主要な病原体である。ワクチン接種は、今や地球規模で標準的な管理政策の一部である。ワクチン接種計画の全体的な有効性を増加させるであろう任意の向上は、非常に望ましい。これらには、新しい製剤及び抗原提示、服用尊守の向上、動物及びワクチン接種者の安全性の向上、及び最終製品にある注射針リスクの排除を介した、ワクチン有効性の向上が含まれよう(例えば、Almond G. W. and J. D. Roberts, 2004, Assessment of a Needleless Injection Device for Iron Dextran administration to piglets, Proceedings of the IPVS, 618;Houser T. A., J. G. Sebranek, T. J. Baas, B. J. Thacker, D. Nilubol and E. L. Thacker, 2002, Feasibility of Transdermal, Needleless Injections for Prevention of Pork Carcass Defects http://www.ipic.iastate.edu/reports/02swinereports/as1-1814.pdf;Meredith M. J., 2004, AASV New archive, Needle-Free Vaccination http://www.aasp.org/news/stroy.php?id=1279;Sweat J. M., M. Abdy, B. G. Weniger, R. Harrington, B. Coyle, R. A. Abuknesha and E. P. J. Gibbs, 2000, Safety Testing of Needle Free, Jet Injection Devices to Detect Contamination with Blood and Other Tissue Fluids, Annals of the New York Academy of Sciences 916:681-682及びWillson P., 2004, Council Research News, Needle-Free Immunization as Effective as Needle and Syringe Method http://www.manitobapork.com/admin/docs/research_news_ly.pdfを参照)。
【0102】
この実施例では、DERMA-VAC(商標)NF経皮ワクチン接種器システムを使用して、経皮的に投与するため特に設計した新規製剤の長期的有効性及び安全性を示す。無針投与は、免疫系への最適なワクチン提示を提供するだけでなく、これらの目的の安全性及び品質の両側面に取り組む潜在能力を有する(例えば、Charreyre C., F. Milward, R. Nordgren and G. Royer, 2005, Demonstration of efficacy in pigs of Mycoplasma hyopneumoniae experimental vaccines by an innovative needle-free route, Proceedings of the American Association of Swine Veterinariansを参照)。
【0103】
16日〜19日齢の通常のブタを、マイコプラズマ・ハイオニューモニエの低発生群に由来する通常の母ブタから、48頭取得した。
【0104】
DERMA-VAC NF経皮ワクチン接種器システムを使ってワクチン接種を実施した。この器具は、特別に製剤したバクテリンを、圧縮空気を使用して0.5ml送達する。無針投与用に製剤したマイコプラズマ・ハイオニューモニエバクテリンを、ブタの耳の尾側の頚部領域内に注射した。ワクチンは、動物が治験実施施設に到着した同日に投与した(0日目)。
【0105】
ブタは、同腹仔からなるレプリケート(replicate)の全ての構成動物がいるレプリケートで囲い込んだ。各処置群がレプリケート内で同等に代表されるように、ブタは、レプリケート内で処置群に無作為化した:
・第1群(24頭)は、非ワクチン投与対照からなる。
・第2群(24頭)は、経皮的経路によりワクチン接種した。
【0106】
ブタは、その年齢及び大きさに適切で、環境が制御された建物内に収容した。ブタは、0日目から21日目まで、側面が頑丈な囲いの中にある、市販のブタ用プラスチック製穴付高架式床上の事前養育場内に収容した。21日目から51日目までは、ブタは、通常の養育場に収容した。養育場施設では、亜鉛メッキされた金属かんぬき扉の囲いで、市販のブタ用プラスチック製穴付床をピット上で使用した。51日目から解剖検査まで(189日目、190日目又は191日目)、ブタは、亜鉛メッキされた金属かんぬき扉の囲いで、コンクリート製の羽根板をピット上で使用した仕上げ用の建物内に収容した。本研究中は、レプリケートの囲いを維持した。水と餌は自由に摂取可能であった。
【0107】
血液試料は、2日目(現地外)、21日目、42日目、125日目、155日目(事前負荷)、及び189日目、190日目又は191日目(解剖検査当日)に採取した。血液試料由来の血清を検査して、マイコプラズマ・ハイオニューモニエELISA抗体力価を決定した。
【0108】
160日目及び161日目に、フリースで1/100に希釈した25mlのマイコプラズマ・ハイオニューモニエ肺ホモジネート(マイコプラズマ・ハイオニューモニエ株232)を使って、全てのブタに鼻腔内的に負荷をかけた。162日目に、ブタは、あらかじめ冷凍されていたマイコプラズマ・ハイオニューモニエ株SC2の培養物を20ml、鼻腔経路で受容した。負荷物質は、手作業で拘束した機敏なブタの両鼻孔開口部に、注射器で投与した。
【0109】
解剖検査では、肺を取り除き、写真を撮影し、マイコプラズマ・ハイオニューモニエに特徴的な肺炎性組織のパーセンテージを点数化した。処置指定を不明にした2つの異なる個体により、独立して肺を点数化した。具体的には、病変に冒された肺の全パーセンテージを各動物毎に決定した。肺炎性組織のパーセンテージは、頭側、中部、及び尾側葉の背側及び腹側表面と、副肺の目視可能な全表面とを目視観察することにより推定した。肺炎性組織内の病変パーセンテージの計算は、表1に示したような、各葉によって表される肺の全質量のパーセンテージに基づいた。
【0110】
【表1】

【0111】
別途の実地安全性研究では、米国内の3つの異なる地理的地域(MO、PA、NC)に位置する商用施設の663頭のブタに、無針投与用に製剤された、Merial社製のマイコプラズマ・ハイオニューモニエバクテリンの、2つの異なる事前承認シリアルの1つを使ってワクチン接種した。バクテリンは、DERMA-VAC NF経皮ワクチン接種器システムを使用して投与した。注射後、有害な全身性の異変がないか、ブタを観察した。1日目、3日目、7日目、14日目及び21日目には全てのブタの、34日目又は35日目には持続的に注射部位が膨潤しているブタの注射部位を、目視及び触診で観察した。
【0112】
有効性の研究では、傷害のため、162日目に第1群のブタを1頭取り除いた。第1群のもう1頭のブタの肺点数は、過剰接着が存在したため分析には含めなかった。最終的な群の大きさは:
・第1群、非ワクチン接種対照、ブタ23頭(血清学)、ブタ22頭(肺点数)
・第2群、経皮試験ワクチン、ブタ24頭
マイコプラズマ・ハイオニューモニエ抗体に対する平均ELISA力価は、対照群では、負荷後まで陰性と見なされる数値を維持した。試験ワクチンを接種されたブタは、ワクチン接種後21日目までに抗体陽性状態に血清転換し、125日目まで陽性を維持し、155日目には被疑状態に陥り、負荷後には出血し、かなりの既往反応を示した(表2)。
【0113】
【表2】

【0114】
肺炎性組織の平均パーセンテージは、対照群では4.35%であったのに対し、ワクチン接種群では1.72%であった(表3)。経皮経路で投与したマイコプラズマ・ハイオニューモニエバクテリンでワクチン接種したブタは、非ワクチン接種対照群での観察より、有意に低い(p<0.05)肺炎性肺病変のパーセンテージを示した。
【0115】
実地安全性研究中は、ワクチン接種に伴う有害な全身性の異変は観察されなかった。注射部位の明白な潤膨は、アジュバントを使用したバクテリンに典型的であり、ワクチン接種後35日目までに無視できるレベルまで低下した。
【0116】
【表3】

【0117】
DERMA-VAC NF経皮ワクチン接種器システムを使用して投与したマイコプラズマ・ハイオニューモニエバクテリンは、3週齢以前に投与したワクチン単回注射の160日後、マイコプラズマ・ハイオニューモニエの負荷から、ブタを安全に及び有意に防御した。DERMA-VAC NF経皮ワクチン接種器システムを使用して投与したマイコプラズマ・ハイオニューモニエバクテリンの全体的な安全性も、多数の動物で、実地条件で実証された。この新しいDERMA-VAC NF経皮ワクチン接種器システムは、無針使用用に特別製剤したマイコプラズマ・ハイオニューモニエワクチンの特有な提示を提供し、安全、簡便、及び効果的なワクチン接種手順を達成する。
【実施例2】
【0118】
米国特許出願第2005/0079185号明細書に記載のTS6水中油型乳剤で製剤したマイコプラズマ・ハイオニューモニエバクテリンを、ELISAにより決定した異なる免疫原用量で、16日〜19日齢のピグレットの頚部領域内に、針付の注射器を使って、筋肉内経路(IM)で(2ml)、又は無針器具を使って経皮経路(ID)で(0.5ml)のいずれかにより投与した。無針注入器は、3番ノズルを付けたDERMA-VAC NF経皮ワクチン接種器システムであった。フリース培地で1/100に希釈した10mlのマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(232株)肺ホモジネートを、気管内に投与して免疫した35日後、及び10mlの同一懸濁液を鼻腔内経路により投与して免疫した35日後に、ブタに負荷をかけた。免疫して61日〜62日後に、ブタを解剖検査し、肺病変を実施例1に記載のように点数化した。
【0119】
【表4】

【0120】
ワクチン1〜3の各々に対応する群では、肺炎性の肺組織のパーセントは、対照群と比較して有意に(p<0.0001)減少した。ワクチン接種群1、2及び3の病変点数は異なってはいなかった。無針注入器を使用すると、ワクチン内の免疫原用量を1/4削減することができた。
【0121】
下記の番号付きの項により、さらに本発明を説明する:
1.マイコプラズマ・ハイオニューモニエに対する安全な防御免疫応答を誘発する方法であって、不活化マイコプラズマ・ハイオニューモニエ及びアジュバントを含むワクチンの単回用量を、液体ジェット無針注入器でブタに投与することを含む方法。
【0122】
2.アジュバントがTS6アジュバントである、第1項に記載の方法。
【0123】
3.ブタが離乳ピグレットである、第1項又は第2項に記載の方法。
【0124】
4.離乳ピグレットが約11〜約24日齢である、第3項に記載の方法。
【0125】
5.離乳ピグレットが約2〜3週齢である、第3項に記載の方法。
【0126】
6.ブタがソウである、第1項〜第5項のいずれかに記載の方法。
【0127】
7.無針注入器がDERMA-VAC NF注入器である、第1項〜第5項のいずれかに記載の方法。
【0128】
8.ブタに前記ワクチンの投与を実施し、マイコプラズマ・ハイオニューモニエに対する安全な防御免疫応答を誘発するように作動可能に組み立てられた、液体ジェット無針注入器と、マイコプラズマ・ハイオニューモニエワクチンを含有する少なくとも1つのワクチンバイアルとを含むワクチン接種キット又はセット。
【0129】
9.第1項〜第7項のいずれかに記載の組成物と、第1項〜第7項に記載の方法のいずれか1つを実施するための説明書とを含む、第8項に記載のワクチン接種キット又はセット。
【0130】
このように、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明したが、上記の項目により定義された本発明は、その自明な変形様態が本発明の趣旨又は範囲を逸脱せずに数多く可能であるため、上記の説明で示された具体的な詳細に限定されないことが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイコプラズマ・ハイオニューモニエに対する安全な防御免疫応答を誘発する方法であって、不活化マイコプラズマ・ハイオニューモニエ及びアジュバントを含むワクチンの単回用量を、液体ジェット無針注入器でブタに投与することを含む方法。
【請求項2】
アジュバントがTS6アジュバントである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ブタが離乳ピグレットである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ブタが離乳ピグレットである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
ブタが離乳ピグレットである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
離乳ピグレットが約11〜約24日齢である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
離乳ピグレットが約11〜約24日齢である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
離乳ピグレットが約2〜3週齢である、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
離乳ピグレットが約2〜3週齢である、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
ブタがソウである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
無針注入器がDERMA-VAC NF注入器である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
ブタに前記ワクチンの投与を実施し、マイコプラズマ・ハイオニューモニエに対する安全な防御免疫応答を誘発するように作動可能に組み立てられた、液体ジェット無針注入器と、マイコプラズマ・ハイオニューモニエワクチンを含有する少なくとも1つのワクチンバイアルとを含むワクチン接種キット又はセット。
【請求項13】
アジュバントがTS6アジュバントである、請求項12に記載のワクチン接種キット又はセット。
【請求項14】
無針注入器がDERMA-VAC NF注入器である、請求項12に記載のワクチン接種キット又はセット。
【請求項15】
無針注入器がDERMA-VAC NF注入器である、請求項13に記載のワクチン接種キット又はセット。


【公表番号】特表2009−528361(P2009−528361A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−557331(P2008−557331)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/004978
【国際公開番号】WO2007/103042
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(304040692)メリアル リミテッド (73)
【Fターム(参考)】