説明

マイコプラズマPRRSVに対するワクチン

本発明は、ワクチンの製造のための、マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の免疫原性物質の免疫原性量および生弱毒化PRRSウイルスの免疫原性量の使用、ならびにそのようなワクチンを含むワクチンキットに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワクチンの製造のための、マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の免疫原性物質の免疫原性量および生弱毒化PRRSウイルスの免疫原性量の使用、ならびにそのようなワクチンを含むワクチンキットに関する。
【背景技術】
【0002】
細菌病原体マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)により引き起こされるブタのマイコプラズマ性肺炎は、ブタにおいて広く見られる慢性呼吸器疾患である。特に若いブタはこの非致死性疾患に罹りやすい。該流行性肺炎は、食餌変換不良および成長阻害を招く慢性疾患である。該疾患は非常に伝染しやすく、伝染は通常、例えば咳/くしゃみの後の感染飛沫の形態の感染気道分泌物との直接的な接触によるものである。この疾患の最も問題となる結末は、それがあらゆる種類の呼吸系二次感染症の素因を与えることである。例えば米国においては、全養豚場の99%が感染していると見積もられている。年間損失は1億〜3億ドルであると見積もられている。
【0003】
もう1つの非常に頻繁に見られるブタにおける呼吸器疾患は、ブタ生殖器呼吸器症候群(Porcine Reproductive Respiratory Syndrome)(PRRS)およびブタ流行性流産・呼吸器症候群(Porcine Epidemic Abortion and Respiratory Syndrome)(PEARS)として一般に知られている疾患である。現在、該疾患は世界的にはPRRSと呼ばれている。その病状は呼吸器疾患に限定されるものではなく、流産にも及ぶ。該疾患で通常または時々見られる他の症状としては、拒食、食欲不振、末端部(特に眼)の青退色が挙げられる。該疾患の原因因子は小さな包膜RNAウイルスであることが現在知られている。繁殖用の雌においては、PRRSは成熟雌ブタおよび若い雌ブタにおいて発熱、機能低下および食欲不振を引き起こす。ついで生殖器の問題が生じ、主として妊娠後期の雌を冒す。若いブタにおいては、PPRSは主として呼吸系を冒す。異常に速い呼吸または「動悸(thumping)」が観察される。他の細菌およびウイルス病原体により、しばしば、問題の重大性が増し、その結果、死亡による損失および治療費が発生すると思われる。機能低下が続発することがあり、それが終わるまでにブタは更に数週間を要する。
【0004】
マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)およびPRRSウイルスにより引き起こされる頻繁に見られる疾患に加えて、現在、ブタにおける経済的に重大な呼吸障害が益々頻繁に見られている。この障害は成長遅延、摂食効率の低下、嗜眠、食欲不振、発熱、咳および呼吸困難により特徴づけられる。それは現在、ブタ呼吸疾患症候群(porcine respiratory disease complex)(PRDC)として一般に知られており、PRDCに罹患したブタから分離された2つの最も一般的な病原体はマイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)およびPRRSウイルスである。どうやら、この疾患はそれらの2つの病原体の何らかの複合作用によって引き起こされるようである。
【0005】
養豚業は、マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)感染およびPRRSウイルス感染に対する現在入手可能な有効なワクチンから利益を受けている。そして、特に若い子ブタはマイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)感染およびPRRSウイルス感染に罹りやすいため、同じ早期の時点において両方の疾患に対してワクチン接種することが最も効率的であろう。
【0006】
しかし、これは選択肢とならないことが、ここ数年の間に明らかになった。ブタがPRRSウイルスに感染している又はPRRSウイルスでワクチン接種されている場合、マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)ワクチンの効力は有意に低下することは、現在確立されている事実である。この作用は、PRRSウイルスによる感染またはワクチン接種がマイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)でのワクチン接種中または更には該ワクチン接種の1〜2週間後に生じた場合に見られる。PRRSウイルスの非病原性ワクチン株でさえもこの作用を示す(Pig International 30:9−12(2000),Thacker,E.L.ら,J.Clin.Microbiol.37:620−627(1999),Thacker,E.L.ら,Vaccine 18:1244−1252(2000))。
【0007】
また、PRRS感染はマイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)感染の病状の非常に迅速な発生を誘発することが示された。
【0008】
さらに、マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)感染はPRRS(Thacker,E.L.ら,Vaccine 18:1244−1252(2000))およびブタインフルエンザ(Thacker,E.L.ら,J.Cl.Microbiol.39:2525−2530(2001))のようなウイルス感染全般の持続時間および重症度を増加させる。これは、マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)に襲われる前の出生後可能な限り早期にPRRSおよびブタインフルエンザのようなウイルス感染に対してワクチン接種するもう1つの理由である。
【0009】
したがって、前記の理由により、PRRSウイルスワクチン接種およびマイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)ワクチン接種の両方を適用するのではなく、まず、PRRSウイルスワクチンでワクチン接種することが強く優先される。しかし、その結果として、生弱毒化PRRSワクチン株が体内から消失するまで待つ必要がある。これは、第1(初回免疫用)マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)ワクチンが安全に投与可能となる前に少なくとも2〜3週間、好ましくはそれより長く、そして更にはマイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)ワクチンでの第2ワクチン接種(追加ワクチン接種)を行う前に4週間、好ましくはそれより長く待つ必要があることを意味する。もう1つの結果として、子ブタはPRRSワクチン接種後の少なくとも4週間にわたってマイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)感染に対して無防備のままとなる。しかし、これらの望ましくない結果を回避するための方法は現在存在しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記の問題に対する解決手段を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
驚くべきことに、子ブタをまずマイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)でワクチン接種し、ついでマイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)および生弱毒化PRRSウイルスの両方で第2ワクチン接種を行うと、それらはPRRSウイルス感染およびマイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)感染の両方に対して優れた防御を迅速に現し、そしてより一層意外なことに、有意な有害な反応を伴わずにそれがもたらされることが、本発明において見出された。
【0012】
この新規アプローチは、現在好ましい方法と比べて、出生後非常に短時間のうちに子ブタがマイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)感染およびPRRS感染の両方に対して完全に防御されうるという大きな利点を有する。
【0013】
どうやら、マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)ワクチンで初回免疫されている子ブタにマイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の免疫原性物質の免疫原性量および生弱毒化PRRSウイルスの免疫原性量を組合わせて投与すると、公知の問題が回避されるようである。
【0014】
マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の免疫原性物質は例えば細菌であることが可能であり、あるいはそれは免疫原性サブユニットであることが可能である。この免疫原性物質は同様に、マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の免疫原性サブユニットをコードする遺伝物質を発現しうる生弱毒化ベクターウイルスまたは非マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)細菌ベクターでありうる。
【0015】
免疫原性量は、標的動物において免疫応答を誘導するのに十分な、おそらくはアジュバントと組合される免疫原性物質の量として当技術分野で公知である。
【0016】
したがって、本発明の第1の実施形態は、マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)で初回免疫されたブタへのマイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)ワクチンおよびPRRSVワクチンの組合せ投与に使用するワクチンの製造のための、マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の免疫原性物質の免疫原性量および生弱毒化PRRSウイルスの免疫原性量の使用に関する。
【0017】
経済的な観点からは、マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)細菌は効果的であり、製造が容易であり、安全であり、高価ではない。したがって、商業的に入手可能なマイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)ワクチンのほとんどはバクテリンに基づくものである。
【0018】
したがって、この実施形態の好ましい形態は、マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)で初回免疫されたブタへのマイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)ワクチンおよびPRRSVワクチンの組合せ投与に使用するワクチンの製造のための、マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)バクテリンの免疫原性量および生弱毒化PRRSウイルスの免疫原性量の使用に関する。
【0019】
「バクテリン」なる表現は、当技術分野においては、不活化細菌を意味する。そのような不活化は、例えば化学的処理、例えばホルマリン処理、熱処理、フレンチプレスでの処理および放射線により行われうる。生弱毒化PRRSウイルスは、標的動物に対して非病原性である、あるいは野生型ウイルスと比べてビルレンスの実質的な低下を示すPRRSウイルスである。
【0020】
該組合せ投与に使用するワクチンのマイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の免疫原性物質および生弱毒化PRRSウイルスは混合形態で(すなわち、一緒に混合されて)投与されるのが好ましいが、必ずしも該混合形態で投与される必要はない。この理由は、該活性成分のそれぞれの投与経路が、該成分の製剤処方、ブタの収容場所および農場管理によって異なりうることにある。マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の免疫原性物質(マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ成分とも称される)は、例えば経口的に、鼻腔内に、または注射により投与されうる。該生弱毒化PRRSウイルス(PRRSV成分とも称される)は、例えば、効率上の理由により、皮内適用により投与されることが可能であり、必ずしも筋肉内投与される必要はない。したがって、例えば農場の状況および該ワクチンの製造業者の説明に応じて、該ワクチンのマイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)およびPRRSV成分の投与経路が異なる可能性が十分にある。そのような場合、該ワクチンのマイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)およびPRRSV成分の投与は必然的に、時間的に若干異なる時点で行われることが明らかである。しかし、該組合せ投与に使用する該ワクチンのマイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)およびPRRSV成分が例えば24時間未満、好ましくは8時間未満の比較的短い時間間隔で投与される場合には、本発明の利点は尚も達成されうる。実用上の理由により、該間隔は実際には、好ましくはより一層短くなり、4時間未満、2時間未満、1時間未満、30分未満、15分未満、10分未満、5分未満または2分未満となり、その順序で好ましくなる。したがって、組合せ投与は、24時間未満、8時間未満、4時間未満、2時間未満、1時間未満、30分未満、15分未満、10分未満、5分未満または2分未満(この順序で好ましくなる。)の比較的短い時間間隔でのマイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)およびPRRSV成分の投与である。
【0021】
本発明の好ましい実施形態は、マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)で初回免疫されたブタへのマイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)ワクチンおよびPRRSVワクチンの組合せ投与に使用する、該PRRSV成分および該マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)成分を混合形態で含むワクチンの製造のための、マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の免疫原性物質の免疫原性量および生弱毒化PRRSウイルスの免疫原性量の使用に関する。
【0022】
抗原および遺伝子型の両方の構成において、欧州および北米のPRRSウイルス株の間に有意な相違が見出されている。欧州PRRSウイルスの特徴およびそれが北米株とどのように異なるかは当技術分野でよく知られている。欧州および北米PRRSウイルス株間の相違は、とりわけ、Meng,X.−J.ら,Arch.Virol.140:745−755(1995)、Suarez,P.ら,Virus Research 42:159−165(1996)およびAllende,R.ら,J.Gen Virol.80:307−315(1999)に記載されている。欧州および北米PRRSウイルス株間の交差防御は不十分であるか又は存在さえしないことが、ここ数年で明らかとなった。
【0023】
したがって、本発明のこの実施形態のもう1つの好ましい形態は、マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)で初回免疫されたブタへのマイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)ワクチンおよびPRRSVワクチンの組合せ投与に使用するワクチンの製造のための、マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の免疫原性物質の免疫原性量およびヨーロッパ株の生弱毒化PRRSウイルスの免疫原性量の使用に関する。ブタ呼吸疾患症候群の欧州の症例の数を抑制し減少させるために、これは特に有利である。
【0024】
この実施形態のもう1つの好ましい形態において、マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)ワクチンおよびPRRSVワクチンの組合せ投与に使用するワクチンの製造において、他のブタ病原性生物もしくはウイルスに由来する1以上の抗原またはそのような抗原をコードする遺伝情報を加える。そのような生物およびウイルスは、好ましくは、仮性狂犬病ウイルス、ブタインフルエンザウイルス、ブタパルボウイルス、ブタ伝染性胃腸炎ウイルス、ロタウイルス、大腸菌(Escherichia coli)、エリジペロ・ルジオパシエ(Erysipelo rhusiopathiae)、ローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)、ボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)、サルモネラ・コレレスイス(Salmonella cholerasuis)、ヘモフィルス・パラスイス(Haemophilus parasuis)、パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)、ストレプトコッカス・スイス(Streptococcus suis)、ブラキスピラ・ヒョウディセンテリエ(Brachyspira hyodysenteriae)およびアクチノバシラス・プリュロニュウモニエ(Actinobacillus pleuropneumoniae)の群から選ばれる。
【0025】
言うまでもなく、原則として、この群の細菌またはウイルスは、原則として、それらが本発明の使用の有益な効果に悪影響を及ぼさない限り、初回免疫に使用されるマイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)にも加えられうる。
【0026】
本発明のもう1つの実施形態は、マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)成分が1つの容器内に好ましくは懸濁状態で存在し、PRRSV成分が第2の容器内に好ましくは凍結乾燥形態で存在する形態の、該組合せ投与に使用するワクチンを含むワクチンキットに関する。そのようなキットの利点は以下のとおりである。該マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)成分は第1容器からシリンジの針を介して吸引されることが可能であり、ついで該凍結乾燥PRRSV成分を溶解するために第2容器に加えられることが可能である。ついでこの混合物は組合せ投与にそのまま使用されるであろう。
【0027】
あるいは、該ワクチンキットは、PRRSV成分およびマイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)成分が1つの容器内に存在する、組合せ投与に使用するワクチンを含む。そのような容器は例えばワクチンバイアルでありうる。それらの成分が同一容器内に存在する場合、それらは必ずしも予め混合されている必要はない。例えば、それらは、投与前に、バリヤー(障壁)、例えば膜により隔てられていることが可能である。投与時点で、投与用シリンジの針が該膜に孔をあけ、ついでそれらの成分が混合されることになる。ついでそれらは、該シリンジを満たすために混合物として使用され、混合物として投与されうる。それらの成分は、1つの同一バイアル内に、分離された凍結乾燥ケークまたは凍結乾燥体としても存在しうる。ついで希釈剤の添加は投与前のそれらの成分の混合を誘発するであろう。
【0028】
したがって、この実施形態のもう1つの形態は、本発明のマイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の免疫原性物質および生弱毒化PRRSウイルスの組合せ投与に使用するワクチンを含む、該マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)成分および該PRRSV成分が1つの単一容器内に存在する、ワクチンキットに関する。
【0029】
マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)で初回免疫されたブタは、マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)およびPRRSVワクチンの組合せ投与の前にマイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)ワクチンでワクチン接種されたブタである。該ブタの初回免疫用ワクチン接種の結果として、マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)に対する一次免疫応答が生じる。そのような免疫応答の生成は或る程度の時間を要する。しかし、マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)およびPRRSウイルスの組合せ投与に使用するワクチンがその効力を発揮するためには、マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)に対する適当な初回免疫反応が存在する必要がある。したがって、好ましくは、マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)およびPRRSウイルスの組合せ投与に使用するワクチンはブタの初回免疫の7日以上後に投与されるであろう。マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)およびPRRSVワクチンの組合せ投与は、好ましくは初回免疫後35日以内、より好ましくは初回免疫後14〜35日以内に行われるであろう。マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)(追加ワクチン接種)およびPRRSVウイルスの組合せ投与に使用するワクチンが投与されない限り、該ブタはマイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)感染に対してもPRRSウイルス感染に対しても完全には防御されない。したがって、好ましくは、組合せ投与に使用するワクチンの投与はマイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)初回免疫の7〜35日後、より好ましくはマイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)初回免疫の14〜35日後、より一層好ましくは21〜28日後に行われる。
【0030】
言うまでもなく、ワクチン接種するブタの初回免疫には、明らかにほとんどのマイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)ワクチンが適している。マイコプラズマワクチンは例えばPCT出願WO91/18627、米国特許US5,338,543および欧州特許EP550.477に開示されている。そのようなワクチン(主としてバクテリン)はまた、種々の製造業者から容易に商業的に入手可能である。商業的に入手可能なマイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)ワクチンとしては、Porcilis(登録商標)M Hyo、ProSystem(登録商標)M(Porcilis(登録商標)M)(Intervet Int.B.V.)、ProSystem(登録商標)BPM(Porcilis(登録商標)BPM)(Intervet Int.B.V.)、RespiSure(登録商標)(Pfizer)、Stellamune(登録商標)(Pfizer)、Suvaxyne(登録商標)M.hyo(Fort Dodge)、Hyoresp(登録商標)(Merial)およびM+Pac(登録商標)(Schering−Plough)が挙げられる。
【0031】
本発明の組合せ投与に使用するワクチンの製造において使用するマイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)成分についても同様のことが言える。例えばWO91/18627、米国特許US5,338,543および欧州特許EP550.477に開示されているマイコプラズマワクチンが容易に使用されうる。原則として、商業的に入手可能なマイコプラズマワクチン(例えば、前記のもの)も適している。
【0032】
本発明の組合せ投与に使用するワクチンの製造において使用するワクチンのPRRSV成分に関しては、とりわけ欧州特許EP676.467、EP835.930、米国特許US5,510,258およびUS5,587,164に開示されている生弱毒化PRRSワクチンが容易に使用されうる。原則として、商業的に入手可能なPRRSワクチン、例えばIntervet Int.B.V.から入手可能なもの、例えばPorcilis(登録商標)PRRSも効果的に使用されうる。したがって、当業者は、本発明の組合せ投与に使用するワクチンの製造に必要な基本成分を構成するマイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)成分および生弱毒化PRRS成分の選択に際して何ら問題を伴わず、また、初回免疫用のマイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)ワクチンの選択の際にも何ら問題を伴わないであろう。
【0033】
該ワクチンの投与方法は当業者に公知であろう。マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)ワクチンおよび生弱毒化PRRSワクチンの投与量および投与経路は明らかに、商業用ワクチンを使用する場合には、製造業者により与えられた説明に従って行われ、あるいは非商業用ワクチンの場合には、例えば前記特許のいずれかに開示されている方法に従って行われる。
【0034】
単なる一例として、当業者がマイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)ワクチンとしてPorcilis(登録商標)M Hyoを選択し、PRRSワクチンとしてPorcilis(登録商標)PRRSワクチンを選択した場合、2ml用量での初回免疫が好ましくは5〜9日齢で行われ、本発明のマイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)ワクチンおよび生弱毒化PRRSVワクチンの組合せ投与に使用するワクチンの投与が好ましくは23〜30日齢で行われるであろう。
【0035】
したがって、本発明のもう1つの実施形態は、マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)ワクチンでの第1(初回免疫)ワクチン接種を行い、ついでマイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の免疫原性物質および生弱毒化PRRSウイルスでの組合せワクチン接種を行う段階を含む、PRRSウイルスおよびマイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)による感染に対するブタのワクチン接種のための方法に関する。このように、該組合せワクチン接種は、マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の免疫原性物質を第2(追加)ワクチン接種として機能させるものである。
【0036】
マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)ワクチンで初回免疫されたブタへのマイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)ワクチンおよびPRRSVの組合せ投与に使用するワクチンの有益な効果を、以下に記載する実施例により例示する(該実施例に限定されるものではない)。
【0037】
実施例
【実施例1】
【0038】
マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(M.hyopneumoniae)バクテリン(Porcilis(登録商標)M Hyo)および修飾生PRRSワクチン(Porcilis(登録商標)PRRS)の同時使用の効力を、以下の実験計画に従い、SPF子ブタにおけるワクチン接種−チャレンジ実験において試験した。
【0039】
【表1】

【0040】
マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(M.hyopneumoniae)ワクチンを2mlの筋肉内用量として投与し、また、凍結乾燥PRRSワクチン株を、希釈剤(Diluvac Forte,Intervet Int.B.V.,Wim de Korverstraat 35,Boxmeer,the Netherlands)(群5)またはマイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(M.hyopneumoniae)ワクチン(群1および4)中での還元後、2mlの筋肉内用量として投与した。該実験中、幾頭かの子ブタが、ワクチン接種またはチャレンジ感染とは無関係な理由により死亡した。
【0041】
マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(M.hyopneumoniae)でのチャレンジを、連続した2日間にわたり、低継代マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(M.hyopneumoniae)野外分離株の培養物の108.5 CCUの該子ブタへの気管内接種により行った。チャレンジの3週間後、該ブタを剖検に付し、固質化肺病変をGoodwin&Whittlestone(British Vet.Journ.129:456−464(1973))に従いスコア(得点)化した。マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(M.hyopneumoniae)特異的肺病変は、対照と比較して群1および群2の両方において統計的に有意であった。群1および群2の間の差異は統計的に有意ではなかった(p=0.83,Mann−WhitneyU−検定)。
【0042】
【表2】

【0043】
PRRSVチャレンジを、1mlのPBS中の、外鼻孔当たり10 TCID50の野生型PRRSV株の点鼻により行った。チャレンジの3、5、7、10、14および21日後、ブタ肺胞マクロファージ(PAM)上でのウイルス力価測定のために全ての子ブタから血液サンプルを採取した。簡潔に説明すると、96ウェルプレート内のPAMの単層に該血清サンプルの10倍系列希釈物を4通りに接種し、ついで37℃で7日間インキュベートした。細胞をCPEに関して毎日モニターし、ウイルス力価をReedおよびMuenchの方法に従いTCID50/mlとして表した。全てのサンプル採取日に、該チャレンジウイルスの力価はワクチン接種群4および5においては有意に低かった。群4および5における防御のレベルは異ならなかった。
【0044】
【化1】

【実施例2】
【0045】
また、マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(M.hyopneumoniae)に対するマイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(M.hyopneumoniae)バクテリン(Porcilis M Hyo)および修飾生PRRSワクチン(Porcilis PRRS)の同時使用の効力を商業用子ブタにおいて試験した。
【0046】
【表3】

【0047】
マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(M.hyopneumoniae)ワクチンを2mlの筋肉内用量として投与し、また、凍結乾燥PRRSワクチン株を、希釈剤(群2)またはマイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(M.hyopneumoniae)ワクチン(群1)中での還元後、2mlの筋肉内用量として投与した。該実験中、群2の1頭の子ブタを、劣悪な全身健康状態のため、ワクチン接種前に安楽死させ、群2、3および4群の数頭の子ブタを、胸膜炎のため、病変スコア化から除外しなければならなかった。
【0048】
マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(M.hyopneumoniae)でのチャレンジを、連続した2日間にわたり、低継代マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(M.hyopneumoniae)野外分離株の培養物の108.5 CCUの該子ブタへの気管内接種により行った。チャレンジの3週間後、該ブタを剖検に付し、固質化肺病変をGoodwin&Whittlestoneに従いスコア(得点)化した。マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(M.hyopneumoniae)特異的肺病変は、対照と比較して群1および群3の両方において統計的に有意であった。群1および群3の間の差異は統計的に有意ではなかった(p=0.13,Mann−WhitneyU−検定)。
【0049】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)で初回免疫されたブタへのマイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)ワクチンおよびPRRSVワクチンの組合せ投与に使用するワクチンの製造のための、マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の免疫原性物質の免疫原性量および生弱毒化PRRSウイルスの免疫原性量の使用。
【請求項2】
マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の免疫原性物質がマイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)バクテリンである、請求項1記載の使用。
【請求項3】
生弱毒化PRRSウイルスが欧州株のものである、請求項1または2記載の使用。
【請求項4】
組合せ投与に使用するワクチンが生弱毒化PRRSウイルスおよびマイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の免疫原性物質を混合形態で含む、請求項1から3のいずれか1項記載の使用。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項記載のマイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の免疫原性物質および生弱毒化PRRSウイルスの組合せ投与に使用するワクチンを含んでなり、マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の免疫原性物質および生弱毒化PRRSウイルスがそれぞれ別々の容器内に存在することを特徴とするワクチンキット。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか1項記載のマイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の免疫原性物質および生弱毒化PRRSウイルスの組合せ投与に使用するワクチンを含んでなり、マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の免疫原性物質および生弱毒化PRRSウイルスが1つの単一の容器内に存在することを特徴とするワクチンキット。
【請求項7】
マイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)ワクチンでの第1(初回免疫)ワクチン接種を行い、ついでマイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の免疫原性物質および生弱毒化PRRSウイルスでの組合せワクチン接種を行う段階を含んでなる、PRRSウイルスおよびマイコプラズマ・ヒョウニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)による感染に対するブタのワクチン接種のための方法。

【公表番号】特表2009−533381(P2009−533381A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504706(P2009−504706)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【国際出願番号】PCT/EP2007/053420
【国際公開番号】WO2007/116032
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(506196247)インターベツト・インターナシヨナル・ベー・ベー (85)
【Fターム(参考)】