マグネット式吸着ホルダ
【課題】寸法の異なる複数品種の筒状の相手側部材に共用化可能であり、かつ相手側部材を保持した状態であっても相手側部材に所望の処置を容易に施すことが可能なマグネット式吸着ホルダを提供することを課題とする。
【解決手段】マグネット式吸着ホルダ1は、ホルダ本体2と、ホルダ本体2に対して突出して配置され、筒状の相手側部材8の軸方向一端に配置される被吸着面80を、磁力を利用して吸着する吸着面300を有すると共に、放射状に延びる少なくとも三本の吸着リブ3と、を備える。
【解決手段】マグネット式吸着ホルダ1は、ホルダ本体2と、ホルダ本体2に対して突出して配置され、筒状の相手側部材8の軸方向一端に配置される被吸着面80を、磁力を利用して吸着する吸着面300を有すると共に、放射状に延びる少なくとも三本の吸着リブ3と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば防振ゴムの金具など、筒状の相手側部材を保持するのに用いられるマグネット式吸着ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
工場の製造ラインにおいて、ワークは、例えばホルダにより保持され、コンベアに搭載され、工程間を搬送される。製造ラインにおいては、少量多品種の製品が、同一の製造ラインで製造される場合がある。この場合、同一の製品と言えども、品種により寸法が異なる。このため、寸法の相違に対応すべく、各品種ごとに独自のホルダが使用される。
【0003】
例えば、車両などにおいて振動の減衰に用いられる防振ゴムは、小径のインナ金具と、大径のアウタ金具と、を備えている。また、用途に応じて防振ゴムの寸法が異なるため、インナ金具自体あるいはアウタ金具自体の寸法も大小様々である。したがって、防振ゴムの製造ラインにおいても、インナ金具とアウタ金具間、あるいはインナ金具間、あるいはアウタ金具間の多種多様の寸法の相違に対応すべく、各品種ごとに独自のホルダが使用されている。
【0004】
防振ゴムの製造方法は、成形後のインナ金具およびアウタ金具を洗浄する洗浄工程と、インナ金具外周面およびアウタ金具内周面に接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、インナ金具およびアウタ金具を金型にセットしてインナ金具とアウタ金具との間にゴム原料を注入し架橋させる加硫工程と、を有している。
【0005】
図16に、防振ゴムの製造方法の接着剤塗布工程に用いられる接着剤塗布設備の模式上面図を示す。図16(a)は品種Aのワークに接着剤を塗布する様子を、図16(b)は品種Bのワークに接着剤を塗布する様子を、それぞれ示す。図16(a)に示すように、接着剤塗布設備100は、ホルダ供給コンベア101と、搬送コンベア102と、ワーク供給装置103と、スプレー装置104と、を備えている。
【0006】
ホルダ供給コンベア101には、品種A専用のホルダ101aが搭載されている。ワーク供給装置103には、品種Aのワーク(金具)103aが装填されている。ワーク103aは、ホルダ101aに保持された状態で、搬送コンベア102に搭載され搬送される。搬送途中で、スプレー装置104により、ワーク103aの所定の部位に、接着剤が塗布される。その後、加硫設備に搬送される。
【0007】
ここで、ホルダ101aは、ワーク103a専用である。このため、搬送対象(加硫対象)を品種Aから品種Bに切り替える場合は、流通している全てのホルダ101aを品種B専用に交換する必要がある。すなわち、図16(b)に示すように、ホルダ供給コンベア101および搬送コンベア102に、品種B専用(つまりワーク103b専用)のホルダ101bをセットする必要がある。
【0008】
また、同一の製造ラインに複数品種のワークが混在する場合もある。図17に、防振ゴムの製造方法の接着剤塗布工程に用いられる接着剤塗布設備(複数品種混在ライン)の模式上面図を示す。図17(a)は品種Aのワークを供給する様子を、図17(b)は品種Bのワークを供給する様子を、それぞれ示す。なお、図16と対応する部位については、同じ符号で示す。
【0009】
図17(a)に示すように、搬送コンベア102の上流側には、二基のバッファコンベア101A、101Bが配置されている。ワーク供給装置103からワーク103aが供給される場合は、バッファコンベア101Aが搬送コンベア102に接続される。そして、ワーク103a専用のホルダ101aが、搬送コンベア102に供給される。一方、図17(b)に示すように、ワーク供給装置103からワーク103bが供給される場合は、バッファコンベア101Bが搬送コンベア102に接続される。そして、ワーク103b専用のホルダ101bが、搬送コンベア102に供給される。
【特許文献1】特開2001−2227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように、従来は、製品の品種ごとに専用のホルダが必要であった。このため、ホルダ製造に要するコストが高かった。また、前出図16に示すように、品種を切り替える場合は、多数のホルダを全て交換する必要があった。また、前出図17に示すように、複数品種混在ラインの場合は、製品の品種ごとにバッファコンベアが必要だった。このため、多品種に対応するために、広い敷地が必要だった。また、バッファコンベアの切り替えが必要なので、不可避的に設備が複雑化していた。
【0011】
この点、特許文献1には、複雑な形状の部品を、磁力により位置決めする位置決め装置が紹介されている。同文献記載の位置決め装置によると、位置決め対象部品の品種が異なる場合であっても、一対の磁石間に位置決め対象部品を介装することにより、位置決め対象部品の長手方向を磁力線方向に整列させることができる。仮に、同文献記載の位置決め装置を、筒状のワーク用のホルダに転用すれば、寸法の異なる多種多様のワークにおいて、ホルダを共用化することができる。
【0012】
しかしながら、同文献記載の位置決め装置を、筒状のワーク用のホルダに転用する場合、長手方向両側つまり軸方向両側に、磁石を配置する必要がある。このため、ワークに例えば接着剤の塗布などの処置を施す場合、磁石が邪魔になる。したがって、磁石を回避しながら処置を施す必要があるため、設備が複雑化してしまう。
【0013】
本発明のマグネット式吸着ホルダは、上記課題に鑑みて完成されたものである。したがって、本発明は、寸法の異なる複数品種の筒状の相手側部材に共用化可能であり、かつ相手側部材を保持した状態であっても相手側部材に所望の処置を容易に施すことが可能なマグネット式吸着ホルダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)上記課題を解決するため、本発明のマグネット式吸着ホルダは、ホルダ本体と、該ホルダ本体に対して突出して配置され、筒状の相手側部材の軸方向一端に配置される被吸着面を、磁力を利用して吸着する吸着面を有すると共に、放射状に延びる少なくとも三本の吸着リブと、を備えてなることを特徴とする(請求項1に対応)。
【0015】
ここで、吸着リブの吸着面が「磁力を利用して」被吸着面を吸着するとは、吸着面自体が磁気的吸着力を有している場合は勿論、別部材が磁気的吸着力を有しており当該磁気的吸着力が吸着面を介して被吸着面に作用している場合も含むものである。
【0016】
吸着リブは、放射状に延在している。また、吸着リブは、三本以上配置されている。例えば、相手側部材が小径筒状である場合は、放射中心側に相手側部材を吸着することができる。一方、相手側部材が大径筒状である場合は、放射外径側に相手側部材を吸着することができる。
【0017】
このように、本発明のマグネット式吸着ホルダによると、放射状に延在する吸着リブを備えているため、径の異なるあらゆる相手側部材を、全ての吸着面を使った状態で、吸着し、かつ保持することができる。このため、本発明のマグネット式吸着ホルダは、径の異なる複数品種の相手側部材に、対応することができる。すなわち、複数品種の相手側部材において、共用化することができる。
【0018】
本発明のマグネット式吸着ホルダによると、従来のように、品種ごとの専用ホルダは不要である。このため、ホルダ製造に要するコストを削減することができる。また、前出図16に示すように、品種を切り替える場合であっても、ホルダを交換する必要がない。また、前出図17に示すように、複数品種混在ラインの場合であっても、単一のバッファコンベアで対応することができる。このため、工場の敷地面積が狭くて済む。言い換えると、敷地面積あたりの生産性が向上する。また、品種切り替え時においてもバッファコンベアの切り替えが不要なので、設備を単純化することができる。
【0019】
また、吸着リブは放射状に延在している。このため、吸着面上において相手側部材を摺動させる場合、当該摺動方向と、任意の吸着リブの延在方向と、が揃いやすい。したがって、あらゆる方向に摺動させても、摺動抵抗が大きくなりにくい。並びに、摺動抵抗のばらつき(指向性)が小さい。
【0020】
また、相手側部材の摺動方向は、磁力線の向きに対して、略垂直方向になる。このため、磁力(吸着力)の分力が、摺動方向に作用しにくい。したがって、この点においても、摺動抵抗が大きくなりにくい。
【0021】
また、本発明のマグネット式吸着ホルダによると、吸着対象となるのは、筒状の相手側部材の軸方向一端側のみである。すなわち、軸方向他端側は開放されている。このため、相手側部材を保持した状態であっても、相手側部材に所望の処置を容易に施すことができる。
【0022】
また、本発明のマグネット式吸着ホルダによると、突出した吸着リブにより、相手側部材が保持されている。このため、相手側部材とマグネット式吸着ホルダとの間に、隙間が確保されている。したがって、相手側部材の内径側空間の軸方向一端側が、袋状に閉塞するのを抑制することができる。
【0023】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記ホルダ本体は、前記吸着リブを介して前記被吸着面に対向すると共に、少なくとも三本の該吸着リブに対応する磁石を内蔵しており、前記吸着面は、該磁石の発生する磁力により、該被吸着面を吸着する構成とする方がよい(請求項2に対応)。
【0024】
つまり、本構成は、ホルダ本体に内蔵された磁石の磁力を、吸着リブを介して、言わば間接的に作用させることにより、相手側部材の被吸着面を吸着するものである。一例として、吸着リブが非磁性体製の場合は、相手側部材に作用する磁力を弱くすることができる。このため、吸着リブからの相手側部材の取り外しが容易になる。一方、吸着リブが磁性体製の場合、磁石の有する磁界により、吸着リブも磁化される。このため、相手側部材を吸着しやすくなる。
【0025】
(3)好ましくは、上記(2)の構成において、前記吸着リブは、強磁性体製である構成とする方がよい(請求項3に対応)。本構成によると、吸着リブは、磁石の有する磁界の方向に、強く磁化される。このため、さらに相手側部材を吸着しやすくなる。
【0026】
(4)好ましくは、上記(3)の構成において、前記磁石は、前記被吸着面に対向する磁力発生面を有しており、前記吸着リブの延在方向に対して略垂直方向における前記吸着面の幅は、同方向における該磁力発生面の幅よりも、狭い構成とする方がよい(請求項3に対応)。
【0027】
本構成によると、吸着リブに磁力線が集中する。このため、吸着面における磁力線の密度が高くなる。したがって、さらに吸着力が強くなる。言い換えると、所望の吸着力を確保するのに必要な磁石の体格を、より小型化することができる。
【0028】
(5)好ましくは、上記(1)ないし(4)のいずれかの構成において、前記吸着リブは、略120°ごとに三本配置されている構成とする方がよい(請求項5に対応)。本構成によると、三本の吸着リブの各々の吸着面を、確実に相手側部材の被吸着面に接触させることができる。このため、吸着した際における相手側部材のがたつきを、抑制することができる。
【0029】
(6)好ましくは、上記(1)ないし(5)のいずれかの構成において、前記磁力は、永久磁石により発生する構成とする方がよい(請求項6に対応)。本構成によると、電気的な配線をすることなく、磁力を発生させることができる。このため、マグネット式吸着ホルダの構造を単純化することができる。また、配線不要なため、マグネット式吸着ホルダを、隣接する設備から、独立して搬送することができる。したがって、搬送性に優れている。また、電気火花が生じるおそれがないため、防爆仕様が要求される設備であっても、マグネット式吸着ホルダを用いることができる。
【0030】
(7)好ましくは、上記(2)ないし(6)のいずれかの構成において、さらに、ガイドシャフトと、該ガイドシャフトの一端に固定され、前記吸着リブが取り付けられるリブ取付溝を有するリブ取付部材と、を有し、前記ホルダ本体は、該ガイドシャフトが挿通される挿通孔を有し、前記相手側部材を取り付ける際および保持し続ける際は、該ガイドシャフトに沿って該ホルダ本体を該リブ取付部材に近接させ、前記被吸着面に作用する磁力を強くし、該相手側部材を取り外す際は、該ガイドシャフトに沿って該ホルダ本体を該リブ取付部材から離間させ、該被吸着面に作用する磁力を弱くする構成とする方がよい(請求項7に対応)。
【0031】
つまり、本構成は、ホルダ本体とリブ取付部材との相対位置、すなわち磁石と吸着リブとの相対位置を、近接あるいは離間させることにより、吸着面に作用する磁力を調整するものである。
【0032】
本構成によると、取り付け時および保持時(例えば搬送時など)においては、相手側部材を堅固に吸着することができる。一方、取り外し時においては、相手側部材を簡単に取り外すことができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によると、寸法の異なる複数品種の筒状の相手側部材に共用化可能であり、かつ相手側部材を保持した状態であっても相手側部材に所望の処置を容易に施すことが可能なマグネット式吸着ホルダを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
次に、本発明のマグネット式吸着ホルダを、防振ゴム製造方法の接着剤塗布工程におけるワーク搬送用として具現化した実施の形態について説明する。
【0035】
<第一実施形態>
[マグネット式吸着ホルダの構成]
まず、本実施形態のマグネット式吸着ホルダの構成について説明する。図1に、本実施形態のマグネット式吸着ホルダの斜視図を示す。図2に、同マグネット式吸着ホルダの分解斜視図を示す。図3に、同マグネット式吸着ホルダの吸着リブとリブ取付部材との分解斜視図を示す。図4に、同マグネット式吸着ホルダのホルダ本体の分解斜視図を示す。図5に、同マグネット式吸着ホルダの軸方向断面図を示す。図6に、同マグネット式吸着ホルダの上面図を示す。図1〜図6に示すように、本実施形態のマグネット式吸着ホルダ1は、ホルダ本体2と、吸着リブ3と、ガイドシャフト4と、リブ取付部材5と、磁石6と、を備えている。
【0036】
リブ取付部材5は、SUS304(ステンレス鋼)製であって、円板状を呈している。リブ取付部材5には、リブ取付溝50と止着孔51とが穿設されている(特に図3、図5参照)。止着孔51は、円形を呈しており、リブ取付部材5の円中心に配置されている。リブ取付溝50は、長孔状を呈している。また、リブ取付溝50は、リブ取付部材5の円中心から、外径方向に延在している。また、リブ取付溝50は、リブ取付部材5の円中心に対して、120°ずつ離間して、合計三つ配置されている。
【0037】
ガイドシャフト4は、SUS304製であって、丸棒状を呈している。ガイドシャフト4の軸方向一端(上端)は、リブ取付部材5の止着孔51に、挿入され止着されている。
【0038】
吸着リブ3は、S45C(炭素鋼)製であって、突出部30と圧入部31とを備えている。圧入部31は、細長い直方体状を呈している。突出部30は、圧入部31の上方に形成されている。突出部30は、圧入部31よりも長い直方体状を呈している。突出部30の長手方向両端面のコーナ部には、面取処理が施されている。リブ取付溝50に圧入部31が圧入されることにより、吸着リブ3はリブ取付部材5に取り付けられている。リブ取付部材5に取り付けられた吸着リブ3のうち、圧入部31は、リブ取付部材5に埋設されている。一方、突出部30は、リブ取付部材5の上面から突出している。吸着リブ3も、リブ取付溝50同様に、リブ取付部材5の円中心に対して、120°ずつ離間して、合計三本配置されている(図6参照)。吸着リブ3の突出部30の上面は、吸着面300となっている。吸着面300は、平面状を呈している。リブ取付部材5の上面に対する三つの突出部30の突出量は、一致している。このため、三つの吸着面300は、リブ取付部材5の上面から、同じ高さに配置されている。
【0039】
ホルダ本体2は、磁石収容部材20と、封止部材21と、を備えている(特に図4、図5参照)。磁石収容部材20は、A2017(ジュラルミン)製であって、リブ取付部材5よりは若干長軸の、円板状を呈している。磁石収容部材20には、挿通孔200が穿設されている。挿通孔200は、リブ取付部材5の止着孔51よりも若干大径の円形を呈しており、磁石収容部材20の円中心に配置されている。磁石収容部材20の軸方向一端面(下面)には、図4中に点線で示すように、収容凹部201とスクリュー止着孔202とが凹設されている。
【0040】
収容凹部201の内部空間は、直方体状を呈している。収容凹部201の上底面は、磁石収容部材20の軸方向他端面(上面)付近まで到達している。収容凹部201は、磁石収容部材20の円中心から、外径方向に延在している。また、収容凹部201は、磁石収容部材20の円中心に対して、120°ずつ離間して、合計三つ配置されている。また、収容凹部201は、吸着リブ3と、上下方向に対向している。
【0041】
スクリュー止着孔202は、円形を呈している。スクリュー止着孔202の内周面には、雌ねじ部(図略)が螺設されている。スクリュー止着孔202は、収容凹部201の外周縁付近に配置されている。また、スクリュー止着孔202は、磁石収容部材20の円中心に対して、90°ずつ離間して、合計四つ配置されている。
【0042】
磁石6は、ネオジウム磁石製であって、直方体状を呈している。磁石6は、収容凹部201に収容されている。磁石6は、上方がN極に下方がS極になるように、配置されている。磁石6も、収容凹部201同様に、磁石収容部材20の円中心に対して、120°ずつ離間して、合計三つ配置されている。図6に点線ハッチングで示すように、上方から見て、吸着リブ3と磁石6とは、重なっている。すなわち、磁石6は、吸着リブ3と、上下方向に対向している。磁石6の上面は、磁力発生面60となっている。
【0043】
封止部材21は、SUS304製であって、リブ取付部材5と略同形状の、円板状を呈している。封止部材21は、磁石収容部材20の下面に固定されている。封止部材21により、三つの収容凹部201の下方開口は、全て封止されている。封止部材21には、挿通孔210およびスクリュー挿通孔211とが穿設されている。挿通孔210は、磁石収容部材20の挿通孔200と略同径の円形を呈しており、封止部材21の円中心に配置されている。封止部材の挿通孔210および磁石収容部材20の挿通孔200には、ガイドシャフト4が挿通されている。このため、ホルダ本体2は、ガイドシャフト4の軸方向に沿って、往復動可能である。
【0044】
スクリュー挿通孔211は、上方に向かって縮径するテーパ状を呈している。スクリュー挿通孔211は、封止部材21の外周縁付近に配置されている。また、スクリュー挿通孔211は、封止部材21の円中心に対して、90°ずつ離間して、合計四つ配置されている。また、スクリュー挿通孔211は、スクリュー止着孔202と上下方向に対向している。四本のスクリュー212の外周面には、各々、雄ねじ部(図略)が螺設されている。スクリュー212は、封止部材21の下方からスクリュー挿通孔211を貫通し、スクリュー止着孔202に挿入される。スクリュー212の雄ねじ部とスクリュー止着孔202の雌ねじ部とが螺合することにより、封止部材21が磁石収容部材20に堅固に固定されている。
【0045】
[マグネット式吸着ホルダの磁力線]
次に、本実施形態のマグネット式吸着ホルダ1の磁力線の様子について説明する。図7に、図6のVII−VII断面図を示す。図6、図7に示すように、吸着リブ3の延在方向(径方向)に対して略垂直方向(接線方向)における、吸着面300の幅W3は、同方向における磁石6の磁力発生面60の幅W6よりも、狭くなっている。このため、図7に示すように、磁力発生面60から発生する磁力線Lは、吸着リブ3内を通過する際に、幅差(=W6−W3)に応じて密集することになる。このため、吸着面300に作用する磁力線Lの密度は、磁力発生面60から発生する磁力線Lの密度よりも、高くなる。
【0046】
[接着剤塗布設備の構成]
次に、本実施形態のマグネット式吸着ホルダ1が使用されている接着剤塗布設備の構成について説明する。図8に、本実施形態のマグネット式吸着ホルダが使用されている接着剤塗布設備の模式上面図を示す。なお、図8における方位(左右)は、上流側から下流側を見た場合を基準に定義している。図9〜図12における方位も同様である。
【0047】
前述したように、防振ゴムの製造方法は、成形後のインナ金具およびアウタ金具を洗浄する洗浄工程と、インナ金具外周面およびアウタ金具内周面に接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、インナ金具およびアウタ金具を金型にセットしてインナ金具とアウタ金具との間にゴム原料を注入し架橋させる加硫工程と、を有している。このうち、図8の接着剤塗布設備9は、接着剤塗布工程を実施するのに用いられる。すなわち、接着剤塗布設備9の上流側には、洗浄設備が配置されている。一方、接着剤塗布設備9の下流側には、図示しない加硫設備が配置されている。
【0048】
図8に示すように、接着剤塗布設備9は、バッファコンベア90と搬送コンベア91とワーク供給装置92とワーク取出装置93とテーブル94と把持装置95と上流側リフト96aと下流側リフト96bと下塗り用スプレー装置97aと上塗り用スプレー装置97bとセンタリング装置98とを備えている。
【0049】
バッファコンベア90には、パレット7が搭載されている。パレット7には、マグネット式吸着ホルダ1が搭載されている。
【0050】
上流側リフト96aは、バッファコンベア90の下流側に配置されている。上流側リフト96aには、後述するリターンコンベア(図略)から受け取ったパレット7が、搭載される。上流側リフト96aは、搭載された当該パレット7を、上昇させる。
【0051】
搬送コンベア91は、上流側リフト96aの下流側に配置されている。搬送コンベア91は、上流側から下流側に向かって、パレット7を搬送する。ワーク供給装置92は、搬送コンベア91の上流端に接続されている。ワーク供給装置92には、ワーク8が装填されている。ワーク供給装置92は、パレット7に搭載されたマグネット式吸着ホルダ1に、ワーク8を供給する。ここで、ワーク8は、磁力により吸着可能な鋼製であって、円筒状を呈している。ワーク8は、防振ゴムのアウタ金具である。ワーク8は、本発明の相手側部材に含まれる。
【0052】
センタリング装置98は、ワーク供給装置92の接続部よりも下流側において、搬送コンベア91に介装されている。センタリング装置98は、ワーク8の位置合わせを行う。ワーク取出装置93は、搬送コンベア91の下流端に配置されている。ワーク取出装置93は、パレット7に搭載されたマグネット式吸着ホルダ1から、ワーク8を取り出す。
【0053】
下流側リフト96bは、搬送コンベア91の下流側に配置されている。下流側リフト96bには、ワーク8が取り出された後のパレット7が、搭載される。下流側リフト96bは、搭載された当該パレット7を、下降させる。搬送コンベア91の下方には、リターンコンベアが配置されている。リターンコンベアは、搬送コンベア91とは逆に、下流側から上流側に向かって、パレット7を搬送する。
【0054】
テーブル94は、搬送コンベア91に並設されている。テーブル94と搬送コンベア91との間には、把持装置95が介装されている。把持装置95を介して、ワーク8を保持したマグネット式吸着ホルダ1を、搬送コンベア91とテーブル94との間で、双方向に受渡しすることができる。
【0055】
テーブル94は、円形を呈しており、固定部940と回転部941とを備えている。回転部941は、リング状を呈しており、固定部940の外径側に配置されている。回転部941は、図8中、白抜き矢印で示すように、上方から見て反時計回り方向に回転可能である。回転部941には、搬送コンベア91から受け継いだマグネット式吸着ホルダ1が、搭載される。
【0056】
下塗り用スプレー装置97aおよび上塗り用スプレー装置97bは、固定部940に配置されている。下塗り用スプレー装置97aは回転方向上流側に、上塗り用スプレー装置97bは回転方向下流側に、それぞれ配置されている。
【0057】
[接着剤塗布設備におけるマグネット式吸着ホルダの動き]
次に、接着剤塗布設備9におけるマグネット式吸着ホルダ1の動きについて説明する。マグネット式吸着ホルダ1は、パレット7に搭載された状態で、バッファコンベア90から搬送コンベア91に、予め設定された数だけ、搬送される。ワーク供給装置92は、パレット7に搭載されたマグネット式吸着ホルダ1に、ワーク8を供給する。
【0058】
図9に、ワークを保持したマグネット式吸着ホルダが搭載されたパレットの斜視図を示す。なお、説明の便宜上、ワーク8を透過して示す。図9に示すように、パレット7は、図示しない搬送コンベアの搬送ベルト上に、一列に並んで配置されている。パレット7は、平板部70と一対のボス部71とを備えている。
【0059】
平板部70は、矩形板状を呈している。平板部70は、搬送ベルト上に載置されている。一対のボス部71は、各々、平板部70の上面から突設されている。ボス部71の略中央には、シャフト保持孔710(図9中、点線で示す)が穿設されている。シャフト保持孔710は、上下方向に延在している。シャフト保持孔710は、下方に向かって縮径するテーパ状を呈している。シャフト保持孔710には、マグネット式吸着ホルダ1のガイドシャフト4が挿入されている。すなわち、マグネット式吸着ホルダ1は、ガイドシャフト4がシャフト保持孔710に挿入され、かつホルダ本体2の下面がボス部71の上端面に当接した状態で、パレット7に保持されている。ワーク8は、マグネット式吸着ホルダ1の三本の吸着リブ3の吸着面300上に、磁力により吸着され保持される。
【0060】
図8に戻って、ワーク供給装置92から供給された直後のワーク8の軸心と、マグネット式吸着ホルダ1の軸心とは、ずれている場合がある。ここで、後述する下塗り用スプレー装置97aおよび上塗り用スプレー装置97bは、予め教えられた軌跡でのみ、接着剤をスプレーすることができる。このため、ワーク8の軸心とマグネット式吸着ホルダ1の軸心とがずれていると、下塗り用スプレー装置97aおよび上塗り用スプレー装置97bが、ワーク8の所定の部位に、正確に接着剤を塗布できないおそれがある。そこで、センタリング装置98を用いて、ワーク8の軸心とマグネット式吸着ホルダ1の軸心とを一致させる。
【0061】
図10に、センタリング装置の模式斜視図を示す。図10に示すように、センタリング装置98は、一対の上段アーム980と、一対の下段アーム981と、を備えている。上段アーム980の先端部および下段アーム981の先端部は、各々、矩形板状を呈している。上段アーム980はパレット7の左側に、下段アーム981はパレット7の右側に、対向して配置されている。上段アーム980と下段アーム981とは、上下方向に幅W10だけずれた状態で配置されている。上段アーム980の右端面には、V字状の切欠部980aが凹設されている。同様に、下段アーム981の左端面には、V字状の切欠部981aが凹設されている。
【0062】
図11に、センタリング作業前の本実施形態のマグネット式吸着ホルダの模式上面図を示す。図12に、同作業後の本実施形態のマグネット式吸着ホルダの模式上面図を示す。なお、図11、図12においては、説明の便宜上、ワーク8、上段アーム980、下段アーム981を透過して示す。図11に示すように、上段アーム980は左側から、下段アーム981は右側から、それぞれワーク8に接近する。ワーク8は、上段アーム980と下段アーム981との間に挟み込まれる過程で、切欠部980a、981aに案内されながら、三本の吸着リブ3の吸着面300上を摺動する。
【0063】
ここで、ワーク8の軸心O2と、マグネット式吸着ホルダ1の軸心O1とは、ずれている。しかしながら、マグネット式吸着ホルダ1の軸心O1は、切欠部980a、981aの溝底部同士を結ぶ直線L1上に配置されている。このため、ワーク8を切欠部980a、981aで案内することで、図12に示すように、ワーク8の軸心O2を、マグネット式吸着ホルダ1の軸心O1と一致させることができる。
【0064】
図8に戻って、センタリング作業後のワーク8を搭載したマグネット式吸着ホルダ1は、把持装置95により、テーブル94の回転部941に引き渡される。回転部941の搬送経路に従って、ワーク8には二層(下塗り、上塗り)に接着剤が塗布される。下塗り作業は、下塗り用スプレー装置97aが行う。上塗り作業は、上塗り用スプレー装置97bが行う。
【0065】
図13に、下塗り作業中のワークの模式斜視図を示す。前述したように、ワーク8は防振ゴムのアウタ金具である。このため、図13に示すように、内周面に接着剤Sがスプレーされる。下塗り用スプレー装置のスプレーガン(図略)は、上下方向に移動可能である。一方、マグネット式吸着ホルダ1は、軸周りに回転可能である。スプレーガンおよびマグネット式吸着ホルダ1を共に動かすことにより、ワーク8の内周面の所定部位に、まんべんなく接着剤Sを塗布することができる。ところで、ワーク8の下端面(被接着面)とリブ取付部材5との間には、隙間C1が確保されている。このため、スプレーされた接着剤Sの余剰分は、ワーク8内部に籠もることなく、隙間C1を介して、ワーク8外部に放出される。なお、上塗り作業も、上記下塗り作業と同様に行われる。したがって、ここでは説明を割愛する。
【0066】
図8に戻って、接着剤塗布後のワーク8を搭載したマグネット式吸着ホルダ1は、把持装置95により、再び、搬送コンベア91に引き渡される。そして、ワーク取出装置93により、マグネット式吸着ホルダ1からワーク8が分離される。
【0067】
図14に、ワーク取出作業中の本実施形態のマグネット式吸着ホルダの模式断面図を示す。図14に白抜き矢印で示すように、ワーク取出装置は、ガイドシャフト4を上方に押し上げる。前述したように、リブ取付部材5は、ガイドシャフト4の上端に固定されている。一方、ホルダ本体2は、ガイドシャフト4に対して、相対的に移動可能である。このため、ガイドシャフト4を押し上げると、ホルダ本体2を残したまま、リブ取付部材5および三本の吸着リブ3も上昇する。したがって、磁石6と吸着リブ3とが上下方向に離間することになる。磁石6と吸着リブ3とが離間すると、ワーク8の被吸着面80に作用する磁力が弱くなる。このため、吸着面300から、容易にワーク8を取り外すことができる。取り外されたワーク8は、後工程である加硫工程に搬送される。
【0068】
図8に戻って、ワーク8取り出し後のマグネット式吸着ホルダ1を搭載したパレット7は、下流側リフト96bにより下降する。そして、リターンコンベアと上流側リフト96aとを介して、再び上流端から搬送コンベア91に復帰する。
【0069】
以上説明したように、バッファコンベア90から供給されたマグネット式吸着ホルダ1は、搬送コンベア91(接着剤塗布前)→テーブル94の回転部941(接着剤塗布)→搬送コンベア91(接着剤塗布後)→下流側リフト96b→リターンコンベア→上流側リフト96a→再び搬送コンベア91(接着剤塗布前)という経路を辿り、接着剤塗布設備9を循環する。
【0070】
[作用効果]
次に、本実施形態のマグネット式吸着ホルダ1の作用効果について説明する。本実施形態のマグネット式吸着ホルダ1によると、放射状に延在する吸着リブ3を備えているため、径の異なるあらゆるワーク8を、全ての吸着面300を使った状態で、吸着し、かつ保持することができる。このため、本実施形態のマグネット式吸着ホルダ1は、径の異なる複数品種のワーク8に、用いることができる。すなわち、複数品種のワーク8において、共用化することができる。
【0071】
また、本実施形態のマグネット式吸着ホルダ1によると、従来のように、品種ごとの専用ホルダは不要である。このため、ホルダ製造に要するコストを削減することができる。また、前出図16に示すように、品種を切り替える場合であっても、ホルダを交換する必要がない。また、前出図17に示すように、混在ラインの場合であっても、単一のバッファコンベアで対応することができる。このため、工場の敷地面積が狭くて済む。言い換えると、敷地面積あたりの生産性が向上する。また、品種切り替え時においてもバッファコンベアの切り替えが不要なので、設備を単純化することができる。
【0072】
また、吸着リブ3は放射状に延在している。このため、前出図10〜図12に示すセンタリング作業の際、吸着面300に対するワーク8の摺動方向と、任意の吸着リブ3の延在方向と、が揃いやすい。したがって、あらゆる方向に摺動させても、摺動抵抗が大きくなりにくい。並びに、摺動抵抗のばらつき(指向性)が小さい。
【0073】
加えて、センタリング作業時の摺動方向は、前出図7に示す磁力線Lの向きに対して、略垂直方向である。このため、センタリング作業の際、磁力(吸着力)の分力が、摺動方向に作用しにくい。したがって、この点においても、摺動抵抗が大きくなりにくい。
【0074】
また、本実施形態のマグネット式吸着ホルダ1によると、吸着対象となるのは、ワーク8の下端のみである。すなわち、上端は開放されている。このため、前出図13に示す下塗り作業や上塗り作業の際、接着剤Sをスプレーしやすい。
【0075】
また、前出図13に示すように、ワーク8とマグネット式吸着ホルダ1との間には、隙間C1が確保されている。言い換えると、接着剤Sの脱出通路が確保されている。このため、ワーク8内部において、接着剤Sの余剰分が籠もるのを抑制することができる。したがって、ワーク8内周面に塗布された接着剤Sが、むらになりにくい。
【0076】
また、本実施形態のマグネット式吸着ホルダ1によると、吸着リブ3はS45C製である。S45Cは、強磁性体である。このため、磁石6を介して、ワーク8を吸着しやすい。また、前出図7に示すように、吸着リブ3の延在方向に対して略垂直方向における吸着面300の幅W3は、同方向における磁力発生面60の幅W6よりも、狭くなっている。このため、吸着リブ3に磁力線Lが集中する。したがって、磁石6をそのまま用いる場合と比較して、単位面積あたりの吸着力を強くすることができる。言い換えると、所望の吸着力を確保するのに必要な磁石6の体格、延いてはマグネット式吸着ホルダ1の体格を、より小型化することができる。
【0077】
また、本実施形態のマグネット式吸着ホルダ1によると、前出図6に示すように、吸着リブ3は、120°ごとに三本配置されている。このため、三本の吸着リブ3の各々の吸着面300を、確実にワーク8の被吸着面80に接触させることができる。このため、ワーク8のがたつきを、抑制することができる。
【0078】
また、ワーク8吸着用の磁力は、ホルダ本体2に内蔵された磁石6から供給されている。このため、電磁石を使用する場合と比較して、マグネット式吸着ホルダ1の構造を単純化することができる。また、電気的な配線が不要なため、マグネット式吸着ホルダ1を、隣接する設備から、独立して搬送することができる。したがって、搬送性に優れている。また、電気火花が生じるおそれがないため、防爆仕様が要求される設備であっても、マグネット式吸着ホルダ1を用いることができる。
【0079】
また、本実施形態のマグネット式吸着ホルダ1によると、前出図14に示すように、ホルダ本体2とリブ取付部材5との相対位置、すなわち磁石6と吸着リブ3との相対位置を、近接あるいは離間させることができる。このため、ワーク8をマグネット式吸着ホルダ1に供給する際や搬送する際においては、ワーク8を堅固に吸着することができる。一方、ワーク8をマグネット式吸着ホルダ1から取り外す際においては、ワーク8を小さな力で取り外すことができる。
【0080】
<第二実施形態>
本実施形態と第一実施形態との相違点は、磁石および吸着リブが各々四つずつ配置されている点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。図15に、本実施形態のマグネット式吸着ホルダの上面図を示す。なお、図6と対応する部位については同じ符号で示す。
【0081】
図15に示すように、吸着リブ3は、リブ取付部材5の円中心に対して、90°ずつ離間して、合計四本配置されている。磁石6も四つ配置されている。磁石6と吸着リブ3とは、上下方向に対向している。
【0082】
本実施形態のマグネット式吸着ホルダ1と第一実施形態のマグネット式吸着ホルダとは、構成が共通する部分については、同様の作用効果を有する。また、本実施形態のマグネット式吸着ホルダ1によると、吸着リブ3が四本配置されている。このため、吸着力が強い。
【0083】
また、吸着リブ3が四本配置されているため、吸着リブ3が三本配置されている場合と比較して、センタリング作業の際、吸着面300に対するワークの摺動方向と、任意の吸着リブ3の延在方向と、がさらに揃いやすい。したがって、あらゆる方向に摺動させても、さらに摺動抵抗が大きくなりにくい。並びに、摺動抵抗のばらつき(指向性)がさらに小さくなる。
【0084】
<その他>
以上、本発明のマグネット式吸着ホルダの実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0085】
例えば、上記実施形態においては、ワーク8としてアウタ金具を搬送したが、勿論インナ金具であってもよい。また、吸着リブ3は、S45C以外の他の強磁性体製であってもよい。また、吸着リブ3は、例えば木や紙など、非磁性体製であってもよい。また、吸着リブ3を介さずに、磁石6により直接ワーク8を吸着してもよい。
【0086】
また、上記実施形態においては、磁石6の材質をネオジウム磁石としたが、例えば、KS鋼、MK鋼、フェライト磁石、希土類磁石(サマリウムコバルト磁石など)、アルニコ磁石(アルミニウム−ニッケル−コバルト磁石)などとしてもよい。また、磁石6として、電磁石を用いてもよい。
【0087】
また、上記実施形態においては、接着剤塗布設備9のワーク8搬送用として、本発明のマグネット式吸着ホルダを用いたが、塗装設備など、他の設備のワーク搬送用として用いてもよい。また、上記実施形態においては、マグネット式吸着ホルダ1の上方にワーク8を保持したが、マグネット式吸着ホルダ1とワーク8との位置関係は特に限定しない。例えば、上下逆でもよい。あるいは、上下方向ではなく水平方向にワーク8を保持してもよい。
【0088】
また、上記実施形態においては、吸着リブ3と磁石6とを同数配置したが、両部材の配置数は同数でなくてもよい。例えば、六本の吸着リブ3に対して三つの磁石6を配置してもよい。また、三本の吸着リブ3に対して六つの磁石6を配置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】第一実施形態のマグネット式吸着ホルダの斜視図である。
【図2】同マグネット式吸着ホルダの分解斜視図である。
【図3】同マグネット式吸着ホルダの吸着リブとリブ取付部材との分解斜視図である。
【図4】同マグネット式吸着ホルダのホルダ本体の分解斜視図である。
【図5】同マグネット式吸着ホルダの軸方向断面図である。
【図6】同マグネット式吸着ホルダの上面図である。
【図7】図6のVII−VII断面図である。
【図8】同マグネット式吸着ホルダが使用されている接着剤塗布設備の模式上面図である。
【図9】ワークを保持した同マグネット式吸着ホルダが搭載されたパレットの斜視図である。
【図10】センタリング装置の模式斜視図である。
【図11】センタリング作業前の同マグネット式吸着ホルダの模式上面図である。
【図12】同作業後の同マグネット式吸着ホルダの模式上面図である。
【図13】下塗り作業中のワークの模式斜視図である。
【図14】ワーク取出作業中の同マグネット式吸着ホルダの模式断面図である。
【図15】第二実施形態のマグネット式吸着ホルダの上面図である。
【図16】従来の防振ゴムの製造方法の接着剤塗布工程に用いられる接着剤塗布設備の模式上面図である。(a)は品種Aのワークに接着剤を塗布する様子を、(b)は品種Bのワークに接着剤を塗布する様子を、それぞれ示す。
【図17】従来の防振ゴムの製造方法の接着剤塗布工程に用いられる接着剤塗布設備(複数品種混在ライン)の模式上面図である。(a)は品種Aのワークを供給する様子を、(b)は品種Bのワークを供給する様子を、それぞれ示す。
【符号の説明】
【0090】
1:マグネット式吸着ホルダ。
2:ホルダ本体、20:磁石収容部材、200:挿通孔、201:収容凹部、202:スクリュー止着孔、21:封止部材、210:挿通孔、211:スクリュー挿通孔、212:スクリュー。
3:吸着リブ、30:突出部、300:吸着面、31:圧入部。
4:ガイドシャフト。
5:リブ取付部材、50:リブ取付溝、51:止着孔。
6:磁石、60:磁力発生面。
7:パレット、70:平板部、71:ボス部、710:シャフト保持孔。
8:ワーク(相手側部材)、80:被吸着面。
9:接着剤塗布設備、90:バッファコンベア、91:搬送コンベア、92:ワーク供給装置、93:ワーク取出装置、94:テーブル、940:固定部、941:回転部、95:把持装置、96a:上流側リフト、96b:下流側リフト、97a:下塗り用スプレー装置、97b:上塗り用スプレー装置、98:センタリング装置、980:上段アーム、980a:切欠部、981:下段アーム、981a:切欠部。
C1:隙間、L:磁力線、L1:直線、O1:軸心、O2:軸心、S:接着剤、W3:幅、W6:幅、W10:幅。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば防振ゴムの金具など、筒状の相手側部材を保持するのに用いられるマグネット式吸着ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
工場の製造ラインにおいて、ワークは、例えばホルダにより保持され、コンベアに搭載され、工程間を搬送される。製造ラインにおいては、少量多品種の製品が、同一の製造ラインで製造される場合がある。この場合、同一の製品と言えども、品種により寸法が異なる。このため、寸法の相違に対応すべく、各品種ごとに独自のホルダが使用される。
【0003】
例えば、車両などにおいて振動の減衰に用いられる防振ゴムは、小径のインナ金具と、大径のアウタ金具と、を備えている。また、用途に応じて防振ゴムの寸法が異なるため、インナ金具自体あるいはアウタ金具自体の寸法も大小様々である。したがって、防振ゴムの製造ラインにおいても、インナ金具とアウタ金具間、あるいはインナ金具間、あるいはアウタ金具間の多種多様の寸法の相違に対応すべく、各品種ごとに独自のホルダが使用されている。
【0004】
防振ゴムの製造方法は、成形後のインナ金具およびアウタ金具を洗浄する洗浄工程と、インナ金具外周面およびアウタ金具内周面に接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、インナ金具およびアウタ金具を金型にセットしてインナ金具とアウタ金具との間にゴム原料を注入し架橋させる加硫工程と、を有している。
【0005】
図16に、防振ゴムの製造方法の接着剤塗布工程に用いられる接着剤塗布設備の模式上面図を示す。図16(a)は品種Aのワークに接着剤を塗布する様子を、図16(b)は品種Bのワークに接着剤を塗布する様子を、それぞれ示す。図16(a)に示すように、接着剤塗布設備100は、ホルダ供給コンベア101と、搬送コンベア102と、ワーク供給装置103と、スプレー装置104と、を備えている。
【0006】
ホルダ供給コンベア101には、品種A専用のホルダ101aが搭載されている。ワーク供給装置103には、品種Aのワーク(金具)103aが装填されている。ワーク103aは、ホルダ101aに保持された状態で、搬送コンベア102に搭載され搬送される。搬送途中で、スプレー装置104により、ワーク103aの所定の部位に、接着剤が塗布される。その後、加硫設備に搬送される。
【0007】
ここで、ホルダ101aは、ワーク103a専用である。このため、搬送対象(加硫対象)を品種Aから品種Bに切り替える場合は、流通している全てのホルダ101aを品種B専用に交換する必要がある。すなわち、図16(b)に示すように、ホルダ供給コンベア101および搬送コンベア102に、品種B専用(つまりワーク103b専用)のホルダ101bをセットする必要がある。
【0008】
また、同一の製造ラインに複数品種のワークが混在する場合もある。図17に、防振ゴムの製造方法の接着剤塗布工程に用いられる接着剤塗布設備(複数品種混在ライン)の模式上面図を示す。図17(a)は品種Aのワークを供給する様子を、図17(b)は品種Bのワークを供給する様子を、それぞれ示す。なお、図16と対応する部位については、同じ符号で示す。
【0009】
図17(a)に示すように、搬送コンベア102の上流側には、二基のバッファコンベア101A、101Bが配置されている。ワーク供給装置103からワーク103aが供給される場合は、バッファコンベア101Aが搬送コンベア102に接続される。そして、ワーク103a専用のホルダ101aが、搬送コンベア102に供給される。一方、図17(b)に示すように、ワーク供給装置103からワーク103bが供給される場合は、バッファコンベア101Bが搬送コンベア102に接続される。そして、ワーク103b専用のホルダ101bが、搬送コンベア102に供給される。
【特許文献1】特開2001−2227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように、従来は、製品の品種ごとに専用のホルダが必要であった。このため、ホルダ製造に要するコストが高かった。また、前出図16に示すように、品種を切り替える場合は、多数のホルダを全て交換する必要があった。また、前出図17に示すように、複数品種混在ラインの場合は、製品の品種ごとにバッファコンベアが必要だった。このため、多品種に対応するために、広い敷地が必要だった。また、バッファコンベアの切り替えが必要なので、不可避的に設備が複雑化していた。
【0011】
この点、特許文献1には、複雑な形状の部品を、磁力により位置決めする位置決め装置が紹介されている。同文献記載の位置決め装置によると、位置決め対象部品の品種が異なる場合であっても、一対の磁石間に位置決め対象部品を介装することにより、位置決め対象部品の長手方向を磁力線方向に整列させることができる。仮に、同文献記載の位置決め装置を、筒状のワーク用のホルダに転用すれば、寸法の異なる多種多様のワークにおいて、ホルダを共用化することができる。
【0012】
しかしながら、同文献記載の位置決め装置を、筒状のワーク用のホルダに転用する場合、長手方向両側つまり軸方向両側に、磁石を配置する必要がある。このため、ワークに例えば接着剤の塗布などの処置を施す場合、磁石が邪魔になる。したがって、磁石を回避しながら処置を施す必要があるため、設備が複雑化してしまう。
【0013】
本発明のマグネット式吸着ホルダは、上記課題に鑑みて完成されたものである。したがって、本発明は、寸法の異なる複数品種の筒状の相手側部材に共用化可能であり、かつ相手側部材を保持した状態であっても相手側部材に所望の処置を容易に施すことが可能なマグネット式吸着ホルダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)上記課題を解決するため、本発明のマグネット式吸着ホルダは、ホルダ本体と、該ホルダ本体に対して突出して配置され、筒状の相手側部材の軸方向一端に配置される被吸着面を、磁力を利用して吸着する吸着面を有すると共に、放射状に延びる少なくとも三本の吸着リブと、を備えてなることを特徴とする(請求項1に対応)。
【0015】
ここで、吸着リブの吸着面が「磁力を利用して」被吸着面を吸着するとは、吸着面自体が磁気的吸着力を有している場合は勿論、別部材が磁気的吸着力を有しており当該磁気的吸着力が吸着面を介して被吸着面に作用している場合も含むものである。
【0016】
吸着リブは、放射状に延在している。また、吸着リブは、三本以上配置されている。例えば、相手側部材が小径筒状である場合は、放射中心側に相手側部材を吸着することができる。一方、相手側部材が大径筒状である場合は、放射外径側に相手側部材を吸着することができる。
【0017】
このように、本発明のマグネット式吸着ホルダによると、放射状に延在する吸着リブを備えているため、径の異なるあらゆる相手側部材を、全ての吸着面を使った状態で、吸着し、かつ保持することができる。このため、本発明のマグネット式吸着ホルダは、径の異なる複数品種の相手側部材に、対応することができる。すなわち、複数品種の相手側部材において、共用化することができる。
【0018】
本発明のマグネット式吸着ホルダによると、従来のように、品種ごとの専用ホルダは不要である。このため、ホルダ製造に要するコストを削減することができる。また、前出図16に示すように、品種を切り替える場合であっても、ホルダを交換する必要がない。また、前出図17に示すように、複数品種混在ラインの場合であっても、単一のバッファコンベアで対応することができる。このため、工場の敷地面積が狭くて済む。言い換えると、敷地面積あたりの生産性が向上する。また、品種切り替え時においてもバッファコンベアの切り替えが不要なので、設備を単純化することができる。
【0019】
また、吸着リブは放射状に延在している。このため、吸着面上において相手側部材を摺動させる場合、当該摺動方向と、任意の吸着リブの延在方向と、が揃いやすい。したがって、あらゆる方向に摺動させても、摺動抵抗が大きくなりにくい。並びに、摺動抵抗のばらつき(指向性)が小さい。
【0020】
また、相手側部材の摺動方向は、磁力線の向きに対して、略垂直方向になる。このため、磁力(吸着力)の分力が、摺動方向に作用しにくい。したがって、この点においても、摺動抵抗が大きくなりにくい。
【0021】
また、本発明のマグネット式吸着ホルダによると、吸着対象となるのは、筒状の相手側部材の軸方向一端側のみである。すなわち、軸方向他端側は開放されている。このため、相手側部材を保持した状態であっても、相手側部材に所望の処置を容易に施すことができる。
【0022】
また、本発明のマグネット式吸着ホルダによると、突出した吸着リブにより、相手側部材が保持されている。このため、相手側部材とマグネット式吸着ホルダとの間に、隙間が確保されている。したがって、相手側部材の内径側空間の軸方向一端側が、袋状に閉塞するのを抑制することができる。
【0023】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記ホルダ本体は、前記吸着リブを介して前記被吸着面に対向すると共に、少なくとも三本の該吸着リブに対応する磁石を内蔵しており、前記吸着面は、該磁石の発生する磁力により、該被吸着面を吸着する構成とする方がよい(請求項2に対応)。
【0024】
つまり、本構成は、ホルダ本体に内蔵された磁石の磁力を、吸着リブを介して、言わば間接的に作用させることにより、相手側部材の被吸着面を吸着するものである。一例として、吸着リブが非磁性体製の場合は、相手側部材に作用する磁力を弱くすることができる。このため、吸着リブからの相手側部材の取り外しが容易になる。一方、吸着リブが磁性体製の場合、磁石の有する磁界により、吸着リブも磁化される。このため、相手側部材を吸着しやすくなる。
【0025】
(3)好ましくは、上記(2)の構成において、前記吸着リブは、強磁性体製である構成とする方がよい(請求項3に対応)。本構成によると、吸着リブは、磁石の有する磁界の方向に、強く磁化される。このため、さらに相手側部材を吸着しやすくなる。
【0026】
(4)好ましくは、上記(3)の構成において、前記磁石は、前記被吸着面に対向する磁力発生面を有しており、前記吸着リブの延在方向に対して略垂直方向における前記吸着面の幅は、同方向における該磁力発生面の幅よりも、狭い構成とする方がよい(請求項3に対応)。
【0027】
本構成によると、吸着リブに磁力線が集中する。このため、吸着面における磁力線の密度が高くなる。したがって、さらに吸着力が強くなる。言い換えると、所望の吸着力を確保するのに必要な磁石の体格を、より小型化することができる。
【0028】
(5)好ましくは、上記(1)ないし(4)のいずれかの構成において、前記吸着リブは、略120°ごとに三本配置されている構成とする方がよい(請求項5に対応)。本構成によると、三本の吸着リブの各々の吸着面を、確実に相手側部材の被吸着面に接触させることができる。このため、吸着した際における相手側部材のがたつきを、抑制することができる。
【0029】
(6)好ましくは、上記(1)ないし(5)のいずれかの構成において、前記磁力は、永久磁石により発生する構成とする方がよい(請求項6に対応)。本構成によると、電気的な配線をすることなく、磁力を発生させることができる。このため、マグネット式吸着ホルダの構造を単純化することができる。また、配線不要なため、マグネット式吸着ホルダを、隣接する設備から、独立して搬送することができる。したがって、搬送性に優れている。また、電気火花が生じるおそれがないため、防爆仕様が要求される設備であっても、マグネット式吸着ホルダを用いることができる。
【0030】
(7)好ましくは、上記(2)ないし(6)のいずれかの構成において、さらに、ガイドシャフトと、該ガイドシャフトの一端に固定され、前記吸着リブが取り付けられるリブ取付溝を有するリブ取付部材と、を有し、前記ホルダ本体は、該ガイドシャフトが挿通される挿通孔を有し、前記相手側部材を取り付ける際および保持し続ける際は、該ガイドシャフトに沿って該ホルダ本体を該リブ取付部材に近接させ、前記被吸着面に作用する磁力を強くし、該相手側部材を取り外す際は、該ガイドシャフトに沿って該ホルダ本体を該リブ取付部材から離間させ、該被吸着面に作用する磁力を弱くする構成とする方がよい(請求項7に対応)。
【0031】
つまり、本構成は、ホルダ本体とリブ取付部材との相対位置、すなわち磁石と吸着リブとの相対位置を、近接あるいは離間させることにより、吸着面に作用する磁力を調整するものである。
【0032】
本構成によると、取り付け時および保持時(例えば搬送時など)においては、相手側部材を堅固に吸着することができる。一方、取り外し時においては、相手側部材を簡単に取り外すことができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によると、寸法の異なる複数品種の筒状の相手側部材に共用化可能であり、かつ相手側部材を保持した状態であっても相手側部材に所望の処置を容易に施すことが可能なマグネット式吸着ホルダを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
次に、本発明のマグネット式吸着ホルダを、防振ゴム製造方法の接着剤塗布工程におけるワーク搬送用として具現化した実施の形態について説明する。
【0035】
<第一実施形態>
[マグネット式吸着ホルダの構成]
まず、本実施形態のマグネット式吸着ホルダの構成について説明する。図1に、本実施形態のマグネット式吸着ホルダの斜視図を示す。図2に、同マグネット式吸着ホルダの分解斜視図を示す。図3に、同マグネット式吸着ホルダの吸着リブとリブ取付部材との分解斜視図を示す。図4に、同マグネット式吸着ホルダのホルダ本体の分解斜視図を示す。図5に、同マグネット式吸着ホルダの軸方向断面図を示す。図6に、同マグネット式吸着ホルダの上面図を示す。図1〜図6に示すように、本実施形態のマグネット式吸着ホルダ1は、ホルダ本体2と、吸着リブ3と、ガイドシャフト4と、リブ取付部材5と、磁石6と、を備えている。
【0036】
リブ取付部材5は、SUS304(ステンレス鋼)製であって、円板状を呈している。リブ取付部材5には、リブ取付溝50と止着孔51とが穿設されている(特に図3、図5参照)。止着孔51は、円形を呈しており、リブ取付部材5の円中心に配置されている。リブ取付溝50は、長孔状を呈している。また、リブ取付溝50は、リブ取付部材5の円中心から、外径方向に延在している。また、リブ取付溝50は、リブ取付部材5の円中心に対して、120°ずつ離間して、合計三つ配置されている。
【0037】
ガイドシャフト4は、SUS304製であって、丸棒状を呈している。ガイドシャフト4の軸方向一端(上端)は、リブ取付部材5の止着孔51に、挿入され止着されている。
【0038】
吸着リブ3は、S45C(炭素鋼)製であって、突出部30と圧入部31とを備えている。圧入部31は、細長い直方体状を呈している。突出部30は、圧入部31の上方に形成されている。突出部30は、圧入部31よりも長い直方体状を呈している。突出部30の長手方向両端面のコーナ部には、面取処理が施されている。リブ取付溝50に圧入部31が圧入されることにより、吸着リブ3はリブ取付部材5に取り付けられている。リブ取付部材5に取り付けられた吸着リブ3のうち、圧入部31は、リブ取付部材5に埋設されている。一方、突出部30は、リブ取付部材5の上面から突出している。吸着リブ3も、リブ取付溝50同様に、リブ取付部材5の円中心に対して、120°ずつ離間して、合計三本配置されている(図6参照)。吸着リブ3の突出部30の上面は、吸着面300となっている。吸着面300は、平面状を呈している。リブ取付部材5の上面に対する三つの突出部30の突出量は、一致している。このため、三つの吸着面300は、リブ取付部材5の上面から、同じ高さに配置されている。
【0039】
ホルダ本体2は、磁石収容部材20と、封止部材21と、を備えている(特に図4、図5参照)。磁石収容部材20は、A2017(ジュラルミン)製であって、リブ取付部材5よりは若干長軸の、円板状を呈している。磁石収容部材20には、挿通孔200が穿設されている。挿通孔200は、リブ取付部材5の止着孔51よりも若干大径の円形を呈しており、磁石収容部材20の円中心に配置されている。磁石収容部材20の軸方向一端面(下面)には、図4中に点線で示すように、収容凹部201とスクリュー止着孔202とが凹設されている。
【0040】
収容凹部201の内部空間は、直方体状を呈している。収容凹部201の上底面は、磁石収容部材20の軸方向他端面(上面)付近まで到達している。収容凹部201は、磁石収容部材20の円中心から、外径方向に延在している。また、収容凹部201は、磁石収容部材20の円中心に対して、120°ずつ離間して、合計三つ配置されている。また、収容凹部201は、吸着リブ3と、上下方向に対向している。
【0041】
スクリュー止着孔202は、円形を呈している。スクリュー止着孔202の内周面には、雌ねじ部(図略)が螺設されている。スクリュー止着孔202は、収容凹部201の外周縁付近に配置されている。また、スクリュー止着孔202は、磁石収容部材20の円中心に対して、90°ずつ離間して、合計四つ配置されている。
【0042】
磁石6は、ネオジウム磁石製であって、直方体状を呈している。磁石6は、収容凹部201に収容されている。磁石6は、上方がN極に下方がS極になるように、配置されている。磁石6も、収容凹部201同様に、磁石収容部材20の円中心に対して、120°ずつ離間して、合計三つ配置されている。図6に点線ハッチングで示すように、上方から見て、吸着リブ3と磁石6とは、重なっている。すなわち、磁石6は、吸着リブ3と、上下方向に対向している。磁石6の上面は、磁力発生面60となっている。
【0043】
封止部材21は、SUS304製であって、リブ取付部材5と略同形状の、円板状を呈している。封止部材21は、磁石収容部材20の下面に固定されている。封止部材21により、三つの収容凹部201の下方開口は、全て封止されている。封止部材21には、挿通孔210およびスクリュー挿通孔211とが穿設されている。挿通孔210は、磁石収容部材20の挿通孔200と略同径の円形を呈しており、封止部材21の円中心に配置されている。封止部材の挿通孔210および磁石収容部材20の挿通孔200には、ガイドシャフト4が挿通されている。このため、ホルダ本体2は、ガイドシャフト4の軸方向に沿って、往復動可能である。
【0044】
スクリュー挿通孔211は、上方に向かって縮径するテーパ状を呈している。スクリュー挿通孔211は、封止部材21の外周縁付近に配置されている。また、スクリュー挿通孔211は、封止部材21の円中心に対して、90°ずつ離間して、合計四つ配置されている。また、スクリュー挿通孔211は、スクリュー止着孔202と上下方向に対向している。四本のスクリュー212の外周面には、各々、雄ねじ部(図略)が螺設されている。スクリュー212は、封止部材21の下方からスクリュー挿通孔211を貫通し、スクリュー止着孔202に挿入される。スクリュー212の雄ねじ部とスクリュー止着孔202の雌ねじ部とが螺合することにより、封止部材21が磁石収容部材20に堅固に固定されている。
【0045】
[マグネット式吸着ホルダの磁力線]
次に、本実施形態のマグネット式吸着ホルダ1の磁力線の様子について説明する。図7に、図6のVII−VII断面図を示す。図6、図7に示すように、吸着リブ3の延在方向(径方向)に対して略垂直方向(接線方向)における、吸着面300の幅W3は、同方向における磁石6の磁力発生面60の幅W6よりも、狭くなっている。このため、図7に示すように、磁力発生面60から発生する磁力線Lは、吸着リブ3内を通過する際に、幅差(=W6−W3)に応じて密集することになる。このため、吸着面300に作用する磁力線Lの密度は、磁力発生面60から発生する磁力線Lの密度よりも、高くなる。
【0046】
[接着剤塗布設備の構成]
次に、本実施形態のマグネット式吸着ホルダ1が使用されている接着剤塗布設備の構成について説明する。図8に、本実施形態のマグネット式吸着ホルダが使用されている接着剤塗布設備の模式上面図を示す。なお、図8における方位(左右)は、上流側から下流側を見た場合を基準に定義している。図9〜図12における方位も同様である。
【0047】
前述したように、防振ゴムの製造方法は、成形後のインナ金具およびアウタ金具を洗浄する洗浄工程と、インナ金具外周面およびアウタ金具内周面に接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、インナ金具およびアウタ金具を金型にセットしてインナ金具とアウタ金具との間にゴム原料を注入し架橋させる加硫工程と、を有している。このうち、図8の接着剤塗布設備9は、接着剤塗布工程を実施するのに用いられる。すなわち、接着剤塗布設備9の上流側には、洗浄設備が配置されている。一方、接着剤塗布設備9の下流側には、図示しない加硫設備が配置されている。
【0048】
図8に示すように、接着剤塗布設備9は、バッファコンベア90と搬送コンベア91とワーク供給装置92とワーク取出装置93とテーブル94と把持装置95と上流側リフト96aと下流側リフト96bと下塗り用スプレー装置97aと上塗り用スプレー装置97bとセンタリング装置98とを備えている。
【0049】
バッファコンベア90には、パレット7が搭載されている。パレット7には、マグネット式吸着ホルダ1が搭載されている。
【0050】
上流側リフト96aは、バッファコンベア90の下流側に配置されている。上流側リフト96aには、後述するリターンコンベア(図略)から受け取ったパレット7が、搭載される。上流側リフト96aは、搭載された当該パレット7を、上昇させる。
【0051】
搬送コンベア91は、上流側リフト96aの下流側に配置されている。搬送コンベア91は、上流側から下流側に向かって、パレット7を搬送する。ワーク供給装置92は、搬送コンベア91の上流端に接続されている。ワーク供給装置92には、ワーク8が装填されている。ワーク供給装置92は、パレット7に搭載されたマグネット式吸着ホルダ1に、ワーク8を供給する。ここで、ワーク8は、磁力により吸着可能な鋼製であって、円筒状を呈している。ワーク8は、防振ゴムのアウタ金具である。ワーク8は、本発明の相手側部材に含まれる。
【0052】
センタリング装置98は、ワーク供給装置92の接続部よりも下流側において、搬送コンベア91に介装されている。センタリング装置98は、ワーク8の位置合わせを行う。ワーク取出装置93は、搬送コンベア91の下流端に配置されている。ワーク取出装置93は、パレット7に搭載されたマグネット式吸着ホルダ1から、ワーク8を取り出す。
【0053】
下流側リフト96bは、搬送コンベア91の下流側に配置されている。下流側リフト96bには、ワーク8が取り出された後のパレット7が、搭載される。下流側リフト96bは、搭載された当該パレット7を、下降させる。搬送コンベア91の下方には、リターンコンベアが配置されている。リターンコンベアは、搬送コンベア91とは逆に、下流側から上流側に向かって、パレット7を搬送する。
【0054】
テーブル94は、搬送コンベア91に並設されている。テーブル94と搬送コンベア91との間には、把持装置95が介装されている。把持装置95を介して、ワーク8を保持したマグネット式吸着ホルダ1を、搬送コンベア91とテーブル94との間で、双方向に受渡しすることができる。
【0055】
テーブル94は、円形を呈しており、固定部940と回転部941とを備えている。回転部941は、リング状を呈しており、固定部940の外径側に配置されている。回転部941は、図8中、白抜き矢印で示すように、上方から見て反時計回り方向に回転可能である。回転部941には、搬送コンベア91から受け継いだマグネット式吸着ホルダ1が、搭載される。
【0056】
下塗り用スプレー装置97aおよび上塗り用スプレー装置97bは、固定部940に配置されている。下塗り用スプレー装置97aは回転方向上流側に、上塗り用スプレー装置97bは回転方向下流側に、それぞれ配置されている。
【0057】
[接着剤塗布設備におけるマグネット式吸着ホルダの動き]
次に、接着剤塗布設備9におけるマグネット式吸着ホルダ1の動きについて説明する。マグネット式吸着ホルダ1は、パレット7に搭載された状態で、バッファコンベア90から搬送コンベア91に、予め設定された数だけ、搬送される。ワーク供給装置92は、パレット7に搭載されたマグネット式吸着ホルダ1に、ワーク8を供給する。
【0058】
図9に、ワークを保持したマグネット式吸着ホルダが搭載されたパレットの斜視図を示す。なお、説明の便宜上、ワーク8を透過して示す。図9に示すように、パレット7は、図示しない搬送コンベアの搬送ベルト上に、一列に並んで配置されている。パレット7は、平板部70と一対のボス部71とを備えている。
【0059】
平板部70は、矩形板状を呈している。平板部70は、搬送ベルト上に載置されている。一対のボス部71は、各々、平板部70の上面から突設されている。ボス部71の略中央には、シャフト保持孔710(図9中、点線で示す)が穿設されている。シャフト保持孔710は、上下方向に延在している。シャフト保持孔710は、下方に向かって縮径するテーパ状を呈している。シャフト保持孔710には、マグネット式吸着ホルダ1のガイドシャフト4が挿入されている。すなわち、マグネット式吸着ホルダ1は、ガイドシャフト4がシャフト保持孔710に挿入され、かつホルダ本体2の下面がボス部71の上端面に当接した状態で、パレット7に保持されている。ワーク8は、マグネット式吸着ホルダ1の三本の吸着リブ3の吸着面300上に、磁力により吸着され保持される。
【0060】
図8に戻って、ワーク供給装置92から供給された直後のワーク8の軸心と、マグネット式吸着ホルダ1の軸心とは、ずれている場合がある。ここで、後述する下塗り用スプレー装置97aおよび上塗り用スプレー装置97bは、予め教えられた軌跡でのみ、接着剤をスプレーすることができる。このため、ワーク8の軸心とマグネット式吸着ホルダ1の軸心とがずれていると、下塗り用スプレー装置97aおよび上塗り用スプレー装置97bが、ワーク8の所定の部位に、正確に接着剤を塗布できないおそれがある。そこで、センタリング装置98を用いて、ワーク8の軸心とマグネット式吸着ホルダ1の軸心とを一致させる。
【0061】
図10に、センタリング装置の模式斜視図を示す。図10に示すように、センタリング装置98は、一対の上段アーム980と、一対の下段アーム981と、を備えている。上段アーム980の先端部および下段アーム981の先端部は、各々、矩形板状を呈している。上段アーム980はパレット7の左側に、下段アーム981はパレット7の右側に、対向して配置されている。上段アーム980と下段アーム981とは、上下方向に幅W10だけずれた状態で配置されている。上段アーム980の右端面には、V字状の切欠部980aが凹設されている。同様に、下段アーム981の左端面には、V字状の切欠部981aが凹設されている。
【0062】
図11に、センタリング作業前の本実施形態のマグネット式吸着ホルダの模式上面図を示す。図12に、同作業後の本実施形態のマグネット式吸着ホルダの模式上面図を示す。なお、図11、図12においては、説明の便宜上、ワーク8、上段アーム980、下段アーム981を透過して示す。図11に示すように、上段アーム980は左側から、下段アーム981は右側から、それぞれワーク8に接近する。ワーク8は、上段アーム980と下段アーム981との間に挟み込まれる過程で、切欠部980a、981aに案内されながら、三本の吸着リブ3の吸着面300上を摺動する。
【0063】
ここで、ワーク8の軸心O2と、マグネット式吸着ホルダ1の軸心O1とは、ずれている。しかしながら、マグネット式吸着ホルダ1の軸心O1は、切欠部980a、981aの溝底部同士を結ぶ直線L1上に配置されている。このため、ワーク8を切欠部980a、981aで案内することで、図12に示すように、ワーク8の軸心O2を、マグネット式吸着ホルダ1の軸心O1と一致させることができる。
【0064】
図8に戻って、センタリング作業後のワーク8を搭載したマグネット式吸着ホルダ1は、把持装置95により、テーブル94の回転部941に引き渡される。回転部941の搬送経路に従って、ワーク8には二層(下塗り、上塗り)に接着剤が塗布される。下塗り作業は、下塗り用スプレー装置97aが行う。上塗り作業は、上塗り用スプレー装置97bが行う。
【0065】
図13に、下塗り作業中のワークの模式斜視図を示す。前述したように、ワーク8は防振ゴムのアウタ金具である。このため、図13に示すように、内周面に接着剤Sがスプレーされる。下塗り用スプレー装置のスプレーガン(図略)は、上下方向に移動可能である。一方、マグネット式吸着ホルダ1は、軸周りに回転可能である。スプレーガンおよびマグネット式吸着ホルダ1を共に動かすことにより、ワーク8の内周面の所定部位に、まんべんなく接着剤Sを塗布することができる。ところで、ワーク8の下端面(被接着面)とリブ取付部材5との間には、隙間C1が確保されている。このため、スプレーされた接着剤Sの余剰分は、ワーク8内部に籠もることなく、隙間C1を介して、ワーク8外部に放出される。なお、上塗り作業も、上記下塗り作業と同様に行われる。したがって、ここでは説明を割愛する。
【0066】
図8に戻って、接着剤塗布後のワーク8を搭載したマグネット式吸着ホルダ1は、把持装置95により、再び、搬送コンベア91に引き渡される。そして、ワーク取出装置93により、マグネット式吸着ホルダ1からワーク8が分離される。
【0067】
図14に、ワーク取出作業中の本実施形態のマグネット式吸着ホルダの模式断面図を示す。図14に白抜き矢印で示すように、ワーク取出装置は、ガイドシャフト4を上方に押し上げる。前述したように、リブ取付部材5は、ガイドシャフト4の上端に固定されている。一方、ホルダ本体2は、ガイドシャフト4に対して、相対的に移動可能である。このため、ガイドシャフト4を押し上げると、ホルダ本体2を残したまま、リブ取付部材5および三本の吸着リブ3も上昇する。したがって、磁石6と吸着リブ3とが上下方向に離間することになる。磁石6と吸着リブ3とが離間すると、ワーク8の被吸着面80に作用する磁力が弱くなる。このため、吸着面300から、容易にワーク8を取り外すことができる。取り外されたワーク8は、後工程である加硫工程に搬送される。
【0068】
図8に戻って、ワーク8取り出し後のマグネット式吸着ホルダ1を搭載したパレット7は、下流側リフト96bにより下降する。そして、リターンコンベアと上流側リフト96aとを介して、再び上流端から搬送コンベア91に復帰する。
【0069】
以上説明したように、バッファコンベア90から供給されたマグネット式吸着ホルダ1は、搬送コンベア91(接着剤塗布前)→テーブル94の回転部941(接着剤塗布)→搬送コンベア91(接着剤塗布後)→下流側リフト96b→リターンコンベア→上流側リフト96a→再び搬送コンベア91(接着剤塗布前)という経路を辿り、接着剤塗布設備9を循環する。
【0070】
[作用効果]
次に、本実施形態のマグネット式吸着ホルダ1の作用効果について説明する。本実施形態のマグネット式吸着ホルダ1によると、放射状に延在する吸着リブ3を備えているため、径の異なるあらゆるワーク8を、全ての吸着面300を使った状態で、吸着し、かつ保持することができる。このため、本実施形態のマグネット式吸着ホルダ1は、径の異なる複数品種のワーク8に、用いることができる。すなわち、複数品種のワーク8において、共用化することができる。
【0071】
また、本実施形態のマグネット式吸着ホルダ1によると、従来のように、品種ごとの専用ホルダは不要である。このため、ホルダ製造に要するコストを削減することができる。また、前出図16に示すように、品種を切り替える場合であっても、ホルダを交換する必要がない。また、前出図17に示すように、混在ラインの場合であっても、単一のバッファコンベアで対応することができる。このため、工場の敷地面積が狭くて済む。言い換えると、敷地面積あたりの生産性が向上する。また、品種切り替え時においてもバッファコンベアの切り替えが不要なので、設備を単純化することができる。
【0072】
また、吸着リブ3は放射状に延在している。このため、前出図10〜図12に示すセンタリング作業の際、吸着面300に対するワーク8の摺動方向と、任意の吸着リブ3の延在方向と、が揃いやすい。したがって、あらゆる方向に摺動させても、摺動抵抗が大きくなりにくい。並びに、摺動抵抗のばらつき(指向性)が小さい。
【0073】
加えて、センタリング作業時の摺動方向は、前出図7に示す磁力線Lの向きに対して、略垂直方向である。このため、センタリング作業の際、磁力(吸着力)の分力が、摺動方向に作用しにくい。したがって、この点においても、摺動抵抗が大きくなりにくい。
【0074】
また、本実施形態のマグネット式吸着ホルダ1によると、吸着対象となるのは、ワーク8の下端のみである。すなわち、上端は開放されている。このため、前出図13に示す下塗り作業や上塗り作業の際、接着剤Sをスプレーしやすい。
【0075】
また、前出図13に示すように、ワーク8とマグネット式吸着ホルダ1との間には、隙間C1が確保されている。言い換えると、接着剤Sの脱出通路が確保されている。このため、ワーク8内部において、接着剤Sの余剰分が籠もるのを抑制することができる。したがって、ワーク8内周面に塗布された接着剤Sが、むらになりにくい。
【0076】
また、本実施形態のマグネット式吸着ホルダ1によると、吸着リブ3はS45C製である。S45Cは、強磁性体である。このため、磁石6を介して、ワーク8を吸着しやすい。また、前出図7に示すように、吸着リブ3の延在方向に対して略垂直方向における吸着面300の幅W3は、同方向における磁力発生面60の幅W6よりも、狭くなっている。このため、吸着リブ3に磁力線Lが集中する。したがって、磁石6をそのまま用いる場合と比較して、単位面積あたりの吸着力を強くすることができる。言い換えると、所望の吸着力を確保するのに必要な磁石6の体格、延いてはマグネット式吸着ホルダ1の体格を、より小型化することができる。
【0077】
また、本実施形態のマグネット式吸着ホルダ1によると、前出図6に示すように、吸着リブ3は、120°ごとに三本配置されている。このため、三本の吸着リブ3の各々の吸着面300を、確実にワーク8の被吸着面80に接触させることができる。このため、ワーク8のがたつきを、抑制することができる。
【0078】
また、ワーク8吸着用の磁力は、ホルダ本体2に内蔵された磁石6から供給されている。このため、電磁石を使用する場合と比較して、マグネット式吸着ホルダ1の構造を単純化することができる。また、電気的な配線が不要なため、マグネット式吸着ホルダ1を、隣接する設備から、独立して搬送することができる。したがって、搬送性に優れている。また、電気火花が生じるおそれがないため、防爆仕様が要求される設備であっても、マグネット式吸着ホルダ1を用いることができる。
【0079】
また、本実施形態のマグネット式吸着ホルダ1によると、前出図14に示すように、ホルダ本体2とリブ取付部材5との相対位置、すなわち磁石6と吸着リブ3との相対位置を、近接あるいは離間させることができる。このため、ワーク8をマグネット式吸着ホルダ1に供給する際や搬送する際においては、ワーク8を堅固に吸着することができる。一方、ワーク8をマグネット式吸着ホルダ1から取り外す際においては、ワーク8を小さな力で取り外すことができる。
【0080】
<第二実施形態>
本実施形態と第一実施形態との相違点は、磁石および吸着リブが各々四つずつ配置されている点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。図15に、本実施形態のマグネット式吸着ホルダの上面図を示す。なお、図6と対応する部位については同じ符号で示す。
【0081】
図15に示すように、吸着リブ3は、リブ取付部材5の円中心に対して、90°ずつ離間して、合計四本配置されている。磁石6も四つ配置されている。磁石6と吸着リブ3とは、上下方向に対向している。
【0082】
本実施形態のマグネット式吸着ホルダ1と第一実施形態のマグネット式吸着ホルダとは、構成が共通する部分については、同様の作用効果を有する。また、本実施形態のマグネット式吸着ホルダ1によると、吸着リブ3が四本配置されている。このため、吸着力が強い。
【0083】
また、吸着リブ3が四本配置されているため、吸着リブ3が三本配置されている場合と比較して、センタリング作業の際、吸着面300に対するワークの摺動方向と、任意の吸着リブ3の延在方向と、がさらに揃いやすい。したがって、あらゆる方向に摺動させても、さらに摺動抵抗が大きくなりにくい。並びに、摺動抵抗のばらつき(指向性)がさらに小さくなる。
【0084】
<その他>
以上、本発明のマグネット式吸着ホルダの実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0085】
例えば、上記実施形態においては、ワーク8としてアウタ金具を搬送したが、勿論インナ金具であってもよい。また、吸着リブ3は、S45C以外の他の強磁性体製であってもよい。また、吸着リブ3は、例えば木や紙など、非磁性体製であってもよい。また、吸着リブ3を介さずに、磁石6により直接ワーク8を吸着してもよい。
【0086】
また、上記実施形態においては、磁石6の材質をネオジウム磁石としたが、例えば、KS鋼、MK鋼、フェライト磁石、希土類磁石(サマリウムコバルト磁石など)、アルニコ磁石(アルミニウム−ニッケル−コバルト磁石)などとしてもよい。また、磁石6として、電磁石を用いてもよい。
【0087】
また、上記実施形態においては、接着剤塗布設備9のワーク8搬送用として、本発明のマグネット式吸着ホルダを用いたが、塗装設備など、他の設備のワーク搬送用として用いてもよい。また、上記実施形態においては、マグネット式吸着ホルダ1の上方にワーク8を保持したが、マグネット式吸着ホルダ1とワーク8との位置関係は特に限定しない。例えば、上下逆でもよい。あるいは、上下方向ではなく水平方向にワーク8を保持してもよい。
【0088】
また、上記実施形態においては、吸着リブ3と磁石6とを同数配置したが、両部材の配置数は同数でなくてもよい。例えば、六本の吸着リブ3に対して三つの磁石6を配置してもよい。また、三本の吸着リブ3に対して六つの磁石6を配置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】第一実施形態のマグネット式吸着ホルダの斜視図である。
【図2】同マグネット式吸着ホルダの分解斜視図である。
【図3】同マグネット式吸着ホルダの吸着リブとリブ取付部材との分解斜視図である。
【図4】同マグネット式吸着ホルダのホルダ本体の分解斜視図である。
【図5】同マグネット式吸着ホルダの軸方向断面図である。
【図6】同マグネット式吸着ホルダの上面図である。
【図7】図6のVII−VII断面図である。
【図8】同マグネット式吸着ホルダが使用されている接着剤塗布設備の模式上面図である。
【図9】ワークを保持した同マグネット式吸着ホルダが搭載されたパレットの斜視図である。
【図10】センタリング装置の模式斜視図である。
【図11】センタリング作業前の同マグネット式吸着ホルダの模式上面図である。
【図12】同作業後の同マグネット式吸着ホルダの模式上面図である。
【図13】下塗り作業中のワークの模式斜視図である。
【図14】ワーク取出作業中の同マグネット式吸着ホルダの模式断面図である。
【図15】第二実施形態のマグネット式吸着ホルダの上面図である。
【図16】従来の防振ゴムの製造方法の接着剤塗布工程に用いられる接着剤塗布設備の模式上面図である。(a)は品種Aのワークに接着剤を塗布する様子を、(b)は品種Bのワークに接着剤を塗布する様子を、それぞれ示す。
【図17】従来の防振ゴムの製造方法の接着剤塗布工程に用いられる接着剤塗布設備(複数品種混在ライン)の模式上面図である。(a)は品種Aのワークを供給する様子を、(b)は品種Bのワークを供給する様子を、それぞれ示す。
【符号の説明】
【0090】
1:マグネット式吸着ホルダ。
2:ホルダ本体、20:磁石収容部材、200:挿通孔、201:収容凹部、202:スクリュー止着孔、21:封止部材、210:挿通孔、211:スクリュー挿通孔、212:スクリュー。
3:吸着リブ、30:突出部、300:吸着面、31:圧入部。
4:ガイドシャフト。
5:リブ取付部材、50:リブ取付溝、51:止着孔。
6:磁石、60:磁力発生面。
7:パレット、70:平板部、71:ボス部、710:シャフト保持孔。
8:ワーク(相手側部材)、80:被吸着面。
9:接着剤塗布設備、90:バッファコンベア、91:搬送コンベア、92:ワーク供給装置、93:ワーク取出装置、94:テーブル、940:固定部、941:回転部、95:把持装置、96a:上流側リフト、96b:下流側リフト、97a:下塗り用スプレー装置、97b:上塗り用スプレー装置、98:センタリング装置、980:上段アーム、980a:切欠部、981:下段アーム、981a:切欠部。
C1:隙間、L:磁力線、L1:直線、O1:軸心、O2:軸心、S:接着剤、W3:幅、W6:幅、W10:幅。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルダ本体と、
該ホルダ本体に対して突出して配置され、筒状の相手側部材の軸方向一端に配置される被吸着面を、磁力を利用して吸着する吸着面を有すると共に、放射状に延びる少なくとも三本の吸着リブと、
を備えてなるマグネット式吸着ホルダ。
【請求項2】
前記ホルダ本体は、前記吸着リブを介して前記被吸着面に対向すると共に、少なくとも三本の該吸着リブに対応する磁石を内蔵しており、
前記吸着面は、該磁石の発生する磁力により、該被吸着面を吸着する請求項1に記載のマグネット式吸着ホルダ。
【請求項3】
前記吸着リブは、強磁性体製である請求項2に記載のマグネット式吸着ホルダ。
【請求項4】
前記磁石は、前記被吸着面に対向する磁力発生面を有しており、
前記吸着リブの延在方向に対して略垂直方向における前記吸着面の幅は、同方向における該磁力発生面の幅よりも、狭い請求項3に記載のマグネット式吸着ホルダ。
【請求項5】
前記吸着リブは、略120°ごとに三本配置されている請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のマグネット式吸着ホルダ。
【請求項6】
前記磁力は、永久磁石により発生する請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のマグネット式吸着ホルダ。
【請求項7】
さらに、ガイドシャフトと、
該ガイドシャフトの一端に固定され、前記吸着リブが取り付けられるリブ取付溝を有するリブ取付部材と、を有し、
前記ホルダ本体は、該ガイドシャフトが挿通される挿通孔を有し、
前記相手側部材を取り付ける際および保持し続ける際は、該ガイドシャフトに沿って該ホルダ本体を該リブ取付部材に近接させ、前記被吸着面に作用する磁力を強くし、
該相手側部材を取り外す際は、該ガイドシャフトに沿って該ホルダ本体を該リブ取付部材から離間させ、該被吸着面に作用する磁力を弱くする請求項2ないし請求項6のいずれかに記載のマグネット式吸着ホルダ。
【請求項1】
ホルダ本体と、
該ホルダ本体に対して突出して配置され、筒状の相手側部材の軸方向一端に配置される被吸着面を、磁力を利用して吸着する吸着面を有すると共に、放射状に延びる少なくとも三本の吸着リブと、
を備えてなるマグネット式吸着ホルダ。
【請求項2】
前記ホルダ本体は、前記吸着リブを介して前記被吸着面に対向すると共に、少なくとも三本の該吸着リブに対応する磁石を内蔵しており、
前記吸着面は、該磁石の発生する磁力により、該被吸着面を吸着する請求項1に記載のマグネット式吸着ホルダ。
【請求項3】
前記吸着リブは、強磁性体製である請求項2に記載のマグネット式吸着ホルダ。
【請求項4】
前記磁石は、前記被吸着面に対向する磁力発生面を有しており、
前記吸着リブの延在方向に対して略垂直方向における前記吸着面の幅は、同方向における該磁力発生面の幅よりも、狭い請求項3に記載のマグネット式吸着ホルダ。
【請求項5】
前記吸着リブは、略120°ごとに三本配置されている請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のマグネット式吸着ホルダ。
【請求項6】
前記磁力は、永久磁石により発生する請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のマグネット式吸着ホルダ。
【請求項7】
さらに、ガイドシャフトと、
該ガイドシャフトの一端に固定され、前記吸着リブが取り付けられるリブ取付溝を有するリブ取付部材と、を有し、
前記ホルダ本体は、該ガイドシャフトが挿通される挿通孔を有し、
前記相手側部材を取り付ける際および保持し続ける際は、該ガイドシャフトに沿って該ホルダ本体を該リブ取付部材に近接させ、前記被吸着面に作用する磁力を強くし、
該相手側部材を取り外す際は、該ガイドシャフトに沿って該ホルダ本体を該リブ取付部材から離間させ、該被吸着面に作用する磁力を弱くする請求項2ないし請求項6のいずれかに記載のマグネット式吸着ホルダ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2008−235394(P2008−235394A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−69884(P2007−69884)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
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