説明

マグネット式固定具

【課題】 マグネットの全体を囲包するケースの表裏両面を磁気吸着面とし、かつケースの表裏両面および左右両側面を表示面とすることができ、また薄いシート状のマグネットの表裏面に印字シートを貼着することにより、磁気吸着機能をもつプリント用紙としても利用し得るマグネット式固定具を提供する。
【解決手段】 マグネット2,22,32,42の少なくとも表裏面を、このマグネットの肉厚よりも薄い非磁性外装体(3,45)で被覆し、この非磁性外装体の表裏面を表示面とした。また、マグネットを薄板状、つまりシート状とした場合は、非磁性外装体はプリントシート45とし、マグネット42の表裏面にプリントシート45が貼着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性ボードやスチール机等に書類等を保持するのに有用なマグネット式固定具に関する。本発明はまた、前記書類等を保持する以外に、プリント媒体としても使用可能なシート状のマグネット式固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば紙片を竪型の磁性ボード等に仮止めする場合、磁性ボード上の紙片をブロック状の永久磁石で上から押さえてその磁気吸着力で紙片を保持することが行われている。通常は、この磁石の片面および側部をプラスチック製のケースで覆うようにしたものが一般的であり、また、例えばA4等の紙シートを固定するために固定具を細長のバー状に形成し、このバーの片面に該バーの略全長にわたる長さの偏平な棒磁石を貼着したものも既に知られている。この場合も、前記棒磁石の側部を化粧を兼ねたケースで覆っているが、特許文献1に示すように、ケースの長手方向4側面および両端面を表示面とするために、磁石全体を完全にケース内に収容したマグネットバーも開示されている。これは、ケースの表示面を大きく確保するために、前記ケースを矩形体で比較的大形に形成し、その中に円柱状の小さな磁石を遊動自在に内装し、前記ケースを磁性ボード等の磁性板に接触させたとき、磁石の吸引力で円柱状磁石がケース内で磁性板側へ転がって前記ケースが前記磁性板に吸着されるようにしている。
【0003】
また他の例として、特許文献2に示すように、アクリル樹脂製の透明ケースの片面に凹部を形成し、この凹部に着色した接着剤層を介して磁石を嵌合させた紙片固定具が知られている。磁石は通常外観が灰黒色ないし黒褐色を呈しているが、接着剤層の着色の種類により磁石の地肌を隠して装飾化でき、透明体のケースにより前記固定具を通して該固定具に重なった紙片の記載文字等を目視できるようにしている。
【0004】
そのほか、横長の板状の係止本体板に伸縮、旋回可能なスライド板を設け、前記本体板と前記スライド板の各端部近くにマグネットを設け、前記スライド板を伸縮あるいは旋回させることで全体の長さを変えたり、屈曲L字状に変形させ得るようにしたマグネット式固定具も知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−208913号公報
【特許文献2】実用新案登録第3048060号公報
【特許文献3】実用新案登録第3153573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、この種のマグネット式固定具は、紙片を磁性ボード等に仮止めすることのほかに、使用状態で前記固定具の前面や側面を例えば装飾や広告等の表示面として利用し得るものである。しかし、従来のこの種の固定具は磁石が固定具の片面に露出、あるいは近接して設けられ、この面は前記磁性ボードに吸着するだけの機能しか持たず、磁石の露出面を表示面として前面(正面)に向けて使用することができない。特許文献2のものにおいても同様にケースの吸着する面は片面に限定されている。
【0007】
特許文献1に示すマグネットバーはこの点磁石をケース内に転動可能に空隙を有して収納し、相手磁性板に対して磁石の吸引転動を利用して前記ケースのいずれの面も吸着面にできるようにしているが、収納する磁石を円滑に転動させるために円柱体とした場合、磁石は円柱体の母線部分で相手磁性板に吸着する、つまり周面の線接触の状態で吸着することになり、十分な吸着力が得られない。また、広い側面をもつ角柱状の磁石とした場合は、磁石の移動がケース内でスムーズになされず、複数の磁石のすべてが必ずしも角柱の側面で相手磁性板に対峙するとは限らず、完全な面接触による吸着となるように摺動させるためには強力な磁石を内蔵しなければならないという問題がある。
【0008】
さらに、前記ケース内での転動を容易にするために角柱状磁石の両端面に鍔状の円板ヨークなどを取り付けた場合には、磁石とケース内壁との間にその分の隙間ができ、相手側磁性板に対して十分な磁気吸着力が確保できなくなるおそれがある。
【0009】
また、本体板とスライド板の双方に小片状のマグネットを設けた特許文献3に示すものは、前記スライド板をスライドさせることにより、全長や形状を可変にできる利点はあるものの、長尺板の端部にのみ小片のマグネットを露出配置しているため、磁性ボードへの吸着力が十分でなく、またその吸着面も片面に限られ、長尺板の両面に文字、記号等の表示機能をもたせることができない。
【0010】
本発明は、マグネットの全体を囲包するケースの表裏両面を磁気吸着面とし、かつ前記ケースの表裏両面および左右両側面を表示面とすることができるマグネット式固定具を提供することを目的とする。
【0011】
本発明はまた、薄いシート状のマグネットの表裏面に印字シートを貼着することにより、磁気吸着機能をもつプリント用紙としても利用し得るマグネット式固定具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、マグネットの少なくとも表裏面を、前記マグネットの肉厚よりも薄い非磁性外装体で被覆し、前記非磁性外装体の表裏面を表示面としたことを特徴とするマグネット式固定具が提供される。
【0013】
本発明の他の形態によれば、前記マグネットが長尺状、薄板状、ブロック状、円柱状またはリング状のマグネット式固定具が提供される。
【0014】
本発明のさらに他の形態によれば、前記マグネットは矩形横断面をもつ長尺状マグネットであり、前記マグネットの各外面を前記非磁性外装体で被覆したことを特徴とするマグネット式固定具が提供される。この形態によれば、外殻となるケースの表裏両面を磁気吸着面とすることができるとともに、この磁気吸着面に種々の表示を施すことができるので、所望の表示面を外側にして書面等を磁性ボード等に固定することができる。
【0015】
本発明のさらに他の形態によれば、前記マグネットはシート状のマグネットであり、前記非磁性外装体は印刷自在のプリントシートであり、前記マグネットの表裏面に前記プリントシートが止着される。これによれば、固定具の広い面積を磁気吸着面とすることができ、大きな書面を固定するのに有利となるとともに、前記固定具が薄いシート状となるため、固定具の吸着面側および吸着面と反対側の面に有効にプリントすることができる。
【0016】
本発明の他の形態によれば、前記マグネットは相対向する表裏面の方向にS,Nの磁極を有する。この場合、例えば磁気吸着面の磁極を1〜3極とし、磁極間の間隔を大きくし、かつ磁力線を外側に大きく通るように配置することで磁力線が磁性ボードに広い範囲で届き、強い磁気吸着力が得られる。
【0017】
本発明のさらに他の形態によれば、前記マグネットは相対向する端面の方向にS,Nの磁極が配列される。これによれば、例えば、N極からS極への磁力線がマグネット式固定具の長手方向に沿って繰り返し発生し、前記固定具の長手方向にまんべんなく吸着力をもたらすことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によるマグネット式固定具は、矩形状ケースの表裏面および左右側面を相手側磁性板に対して磁気吸着面とすることができるとともに、前記ケースの表裏いずれの面にも任意の表示を施すことができ、これによって所望の面を外側に向けて書面等の固定と同時に必要な表示が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例によるマグネット式固定具の斜視図である。
【図2】本発明の他の実施例によるマグネット式固定具の斜視図である。
【図3】本発明のさらに他の実施例によるマグネット式固定具の斜視図である。
【図4】本発明のさらに他の実施例によるマグネット式固定具の斜視図である。
【図5】本発明のさらに他の実施例によるマグネット式固定具の斜視図である。
【図6】図5に示す実施例の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明を各種の実施例について図面を参照しつつ説明する。
【0021】
(実施例1)
図1を参照すれば、この実施例1のマグネット式固定具1は、棒状のマグネットバーであり、横断面が矩形の角柱状マグネットが非磁性の、例えばプラスチックケース3内に緊密状態に収容されている。プラスチックケース3の外面は表面3aと裏面3b、および左右側面3cが平坦面に形成され、かつ長手方向両端面3dが閉塞されている。この実施例では、マグネット2は表面部分にN極が形成され、これに対応して裏面にS極が長手方向に沿って形成されている。
【0022】
マグネット式固定具1は例えば磁性ボード(図示省略)に対する磁気的吸着力により、前記磁性ボードとマグネット式固定具1との間に介在させた紙片等の書面(図示省略)を固定するのに使用されるが、本発明においては、プラスチックケース3は全体として出来るだけ薄肉に形成され、特に表面側および裏面側の肉厚が薄くされ、これによってケース3内のマグネット2と磁性ボード面との距離が小さくなり、強い吸着力が得られる。プラスチックケース3の表面3a(前面)および裏面3b(背面)には図形や記号、あるいは文字等の表示が付されている。したがって、例えばマグネット式固定具1の裏面3b側を前記磁性ボードに吸着させた場合、表面3aに付した表示(図示の例ではABC)が目視され、前記固定具1の表面3a側を前記磁性ボードに吸着させた場合は、裏面3bの表示(図示の例では123)が目視可能となる。場合によっては、ケース3の表裏面だけでなく、左右の側面3cも吸着面とすることができ、したがって両側面に表示を付すことにより、1つの固定具で吸着面を変えることにより、常に吸着した側面と反対側の側面の表示が目視される。
【0023】
このようにして本発明のマグネット式固定具1は長手方向に沿った表裏面がともに磁気吸着面および表示面とすることが可能となる。角柱状のマグネット2は長手方向に沿った中央部のほかにその両側部に近い部分の相対向する表裏面の方向にそれぞれ磁極が形成されており、吸着面の磁極は3極とし磁極間を大きくし磁力線がケースの外側へ大きく通ることになり、磁性ボードに対し強い吸着力を発揮する。
【0024】
(実施例2)
図2は本発明の実施例2に係るマグネット式固定具11を示す斜視図であり、この場合は角柱状マグネット12の磁極が2極となっている。その他は図1の実施例1と同様である。図示のようにマグネット12の表面側(図示のABCが付された側)の片側にN極が、他方の片側にS極が長手方向に沿って形成され、これに対応して裏面側(図示の123が付された側)にS極とN極が長手方向に沿って形成された2極形態のマグネット式固定具11となっている。磁極間、つまり長手方向片側表面のN極(裏面側S極)と他方の片側表面のS極(裏面のN極)との間の距離Lを大きくとり、これによってN極からS極に至る磁力線が外側に大きく磁性ボードを通るようにしている。ケース3の吸着面となるケース表面3aおよびケース裏面3bの肉厚を薄くし、かつ表裏面をともに表示面とすることは図1の場合と同様である。
【0025】
(実施例3)
図3は本発明の実施例3に係るマグネット式固定具21の斜視図である。非磁性プラスチックケース3内に収容されている角柱状マグネット22は図3で模式的に示すようにマグネットの相対向する端面の方向すなわち角柱状マグネット22の長尺方向にN極、S極が交互に配置され、これに対応して裏面側にS極、N極が交互に配置されている。この実施例3でもケース3の表裏面3a,3bだけでなく、左右の側面3cも吸着面とすることができ、したがって両側面3cに表示を付すことにより、1つの固定具21で吸着面を変えることにより、常に吸着面と反対側の側面の表示が目視される。
【0026】
(実施例4)
以上の実施例1〜3ではプラスチックケース3の略全長にわたる長さの一体形の角柱状長尺形マグネット2,22としたが、図4の実施例4に示すように、このマグネット式固定具31では長手方向に複数個に分割した短尺形の矩形マグネット32としてもよい。各マグネット32は互いに密着するように配置するか、あるいは適当な間隔を有して配置してもよい。この場合、各マグネット32はケース3内で遊動しないように例えば各マグネット間に詰物等を入れて内部のマグネットを固定するようにしてもよい。ケース3の表裏面および場合によっては左右側面に表示が付されることは実施例1〜3と同様である。また、実施例1〜3では矩形横断面をもつ長尺状のマグネット式固定具を例に示したが、実施例1〜3に示すよりも短尺なブロック型のマグネット式固定具や、厚みの薄い薄板状のマグネット式固定具としてもよい。さらに、円柱状、リング状のマグネットを用い、これらのマグネットに相応する形状のプラスチックケースにマグネットを収納し、ブロック状、円柱状、リング状のマグネット式固定具としてもよい。
【0027】
(実施例5)
図5、図6は本発明の実施例5に係るマグネット式固定具41の斜視図および横断面図である。この実施例5では、表裏面に各種の印刷ができ、かつ磁性ボード等に書面を固定できるシート状のマグネット式固定具41として構成した例である。図5、図6に示すように、本実施例のマグネット42は薄く広面積のシート状マグネットで構成されている。このシート状マグネット42の表裏面の全面を覆うように該マグネット42の表裏面にプリントシート45が貼着され、これによってその表裏面45a,45bに文字や記号、あるいは各種の図形、模様が印刷できるようになっている。尚、プリントシート45は接着、圧着、熱着等種々の止着方法によりシート状マグネット42に止着される。
【0028】
実施例5でシート状マグネット42とプリントシート45を合せた全体の厚みは1例として0.5mm程度である。平面形状は正方形あるいは直方形のものが望ましいが、他の形状、例えば三角形状、円形その他任意の平面形状に形成してもよい。書面を磁性ボード等に固定するときは、実施例1〜4の場合と同様に磁性ボード上の書面にこのシート状マグネット式固定具41を重ねることにより、該固定具41の磁気吸着力で書面を固定する。プリントシート45は表面側および裏面側とも印刷表示面となるので、表面側を磁性ボードに当てた場合、裏面側を磁性ボードに当てた場合いずれも、プリントシート45の表示面が目視できる。
【0029】
この実施例5ではシート状マグネット式固定具41の吸着面が広いので、面積の大きい書面を固定するのに有利となる。また、シート状マグネット式固定具41の両面にプリンタ等により印刷を施すことができる。
【符号の説明】
【0030】
1,21,31,41 マグネット式固定具
2,12,32,42 マグネット
3 プラスチックケース
45 プリントシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネットの少なくとも表裏面を、前記マグネットの肉厚よりも薄い非磁性外装体で被覆し、前記非磁性外装体の表裏面を表示面としたことを特徴とするマグネット式固定具。
【請求項2】
前記マグネットは長尺状、薄板状、ブロック状、円柱状またはリング状としたことを特徴とする請求項1記載のマグネット式固定具。
【請求項3】
前記マグネットは矩形横断面をもつ長尺状マグネットであり、前記マグネットの各外面を前記非磁性外装体で被覆したことを特徴とする請求項2に記載のマグネット式固定具。
【請求項4】
前記薄板状のマグネットはシート状のマグネットであり、前記非磁性外装体は印刷自在のプリントシートであり、前記マグネットの表裏面に前記プリントシートが止着されることを特徴とする請求項2に記載のマグネット式固定具。
【請求項5】
前記マグネットは相対向する表裏面の方向にS,Nの磁極を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のマグネット式固定具。
【請求項6】
前記マグネットは相対向する端面の方向にS,Nの磁極が配列されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のマグネット式固定具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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