説明

マシニングセンタのパレット交換機構

【課題】 パレット交換機構を備えるマシニングセンタにおいて、油圧チャックを備えたパレットに対応する油圧供給装置を提供する。
【解決手段】 マシニングセンタは加工ステーションKに装備する加工テーブル10と段取りステーションDに装備する段取りテーブル12を有する。油圧チャックパレット200aはチャック爪210を用いて段取りテーブル上でワークWを内径把握する。この際に油圧アクチュエータ250には設定圧力Pが供給される。この油圧チャックパレット200aが加工テーブル10側へ交換されたときに、油圧供給装置は同じ設定圧力Pを供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マシニングセンタ(複合加工機)におけるパレットチェンジ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、横型マシニングセンタでは、複数のパレットを使用し、一つのパレットに載置されたワークに対して工具による加工を行っている間に、他方のパレットに載置されているワークを交換する等の段取り作業が行われる。そのため、この種のマシニングセンタとしては、従来から、下記の特許文献1に記載されるようなパレットチェンジャー付きマシニングセンタが知られている。
また、下記の特許文献2は、種々のチャックを着脱できるように構成したパレットシステム用チャック交換装置を開示している。
【特許文献1】特開平8−300245号公報
【特許文献2】実開平2−63943号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
油圧チャックをパレット交換装置に使用する場合、段取り側にあるパレットの油圧チャックの圧力を設定した後に、そのパレットを本機側へ交換したときには、段取り側で設定した圧力を本機側へ切り換える必要がある。
これはワークに対する荒加工、仕上げ加工やワークの種類毎に個々の圧力設定が必要となる。
しかしながら、従来の装置にあっては、段取り側及び本機側で個々の油圧回路を備えているので、自動で切り換えることができなかった。
本発明の目的は、上述した問題を解決するパレット交換機構を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明のパレット交換機構の加工テーブルと段取りテーブルは、油圧チャックを備えた油圧チャックパレットに対して油圧を供給するカプラを備えるとともに、油圧供給装置は、段取りテーブル上で油圧を設定した油圧チャックパレットが、加工テーブル上に交換されたときに、段取りテーブル上で設定した油圧を加工テーブル上の油圧チャックパレットに供給する切替弁を備えるものである。
そして、油圧供給装置は、異なる設定圧力に対応する複数の油圧制御回路を備え、油圧チャックパレットは、チャック爪を操作する油圧ピストンを備え、加工テーブルは、油圧チャックパレットの油圧ピストンが正常な位置にあることを確認する近接センサーを備えるものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、段取りテーブル上で設定した油圧を加工テーブル上で自動的に再現することができ、加工能率も向上する。
また、油圧チャックのミスクランプを検知する手段を加工テーブルは備えるので、加工不良も防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1は、本発明が適用されるマシニングセンタの概要を示す斜視図、図2は、マシニングセンタの正面図、図3は、パレット交換機構を示す。
【0007】
全体を符号1で示すマシニングセンタは、加工ステーションKと段取りステーションDを備え、パレット20を両ステーション間で交換するパレット交換アーム30を備える。
加工ステーションKと段取りステーションDとの間はドア60で画成され、ドア60はパレット交換時のみ開かれる。パレット交換アーム30は、フック32を有し、フック32をパレット20の溝22に嵌合させてパレット20を交換する。
【0008】
加工ステーションK内にあっては、ワークWを載置したパレット20は、クランプ装置11によりテーブル10上に固定され、工具主軸50により必要な加工が施される。テーブル10や工具主軸50等は、マシニングセンタの駆動部40により操作される。
マシニングセンタ1は段取りステーションDにアクセスするためのドア70を有し、オペレータはこのドア70を開いて段取りを行う。
【0009】
図4は、段取りステーションD側に配設されるテーブル12の説明図、図5は、加工ステーションK側に配設されるテーブル10の説明図である。
段取りステーションD側のテーブル12は、パレットや油圧チャックをクランプするための4本のクランプ装置120を有する。このクランプ装置120は、その中心に開口部を有するコーン状のテーパー部を有し、油圧チャックパレットの裏面に設けたテーパー状の穴の中心から突出するプルボルトに係合する。クランプ装置120は、開口部の中に配設された上下動するドローバー(図示せず)が油圧チャックパレットを把持する。
テーブル12上には、2基の油圧カプラ130が装備され、油圧チャックパレットの油圧回路に接続される。
【0010】
図5に示す加工ステーションK側のテーブル10も4本のクランプ装置120と2基の油圧カプラ130を備える。
テーブル10の中心部には油圧チャックパレット200の爪がストロークしてワークを把持したことを確認するシャフト150が設けられる。このシャフト150は油圧チャックパレット200の爪の操作用ピストンロッドにより押し込められると、近接スイッチを作動させて、油圧チャックが確実にクランプされたことを確認する。
【0011】
図6は、加工ステーションKのテーブル10上にワークWを把持した油圧チャックパレット200がクランプされた状態を示す。テーブル10は回転し、工具主軸50の工具TはワークWに対して切削加工を施す。
工具主軸50に対しては、種々の工具が自動交換され、ワークWに対して旋削加工やミル加工等の必要な加工が施される。
【0012】
図7は、加工ステーションK内でテーブル10に対して油圧チャックパレット200がクランプされた状態を示す。
テーブル10上に設けた油圧カプラ130の継手132に対して油圧チャックパレット200の油圧カプラ230が連結されて油圧回路300を形成した状態を示す。
テーブル10の中央にとりつけたクランプ確認用シャフト150は、油圧チャックパレット200の爪操作用ピストンが下降していると、シャフト150はスプリング152に抗して押し込まれる。このシャフト150の位置を近接センサー160,161で検知して、クランプ状態を確認する。
【0013】
図8は、本発明の油圧チャックの交換システムの全体構成を示す説明図である。
段取りステーションD側で第1の油圧チャックパレット200aの爪210でワークWの内径をチャッキングして段取りする際に、例えば、圧力設定値PKg/cmで把握させる。
この第1の油圧チャックパレット200aを機内の加工ステーションKのテーブル10に交換したときには、油圧チャックパレット200aの爪210に同じ圧力であるPKg/cmが供給されるように油圧回路が構成される。
同様に、ワークWが外径把握される第2の油圧チャックパレット200bで圧力設定値PKg/cmの場合には、この油圧チャックパレット200bに対して、同じ圧力設定値が段取りステーションD側のテーブル12と加工ステーションK側のテーブル10に供給される。
【0014】
図9は、テーブル12,10と油圧チャックパレット200を連結する油圧回路の概要を示す。
段取りステーションDのテーブル12上には、第1の油圧チャックパレット200aがクランプされており、油圧カプラ130を介して、設定圧力Pの油圧が供給される。油圧チャックパレット200aはチャック爪210を操作する油圧アクチュエータ250を備える。この油圧アクチュエータは、ピストンロッド252を有し、油圧アクチュエータが作動してチャック爪210がワークWを内径把握したときに、ピストンロッド252も移動する。
【0015】
油圧チャックパレット200aの油圧回路中には、チェックバルブ260が設けてあり、パレット交換装置により油圧チャックパレット200aが段取りステーションDのテーブル12から外されたときにも、チャック爪210のワークWに対する把握力は保持される。
パレット交換装置により第1の油圧チャックパレット200aが加工ステーションKのテーブル10上にクランプされると、後述する油圧供給装置により、テーブル10側から設定圧力Pの油圧が油圧チャックパレットに供給される。
同様に、第2の油圧チャックパレット200bは、ワークWの外径把握用の油圧チャックパレットであって、チャック爪210は、ワークWを外径把握する。
【0016】
段取りステーションDのテーブル12上にクランプされた第2の油圧チャックパレット200bには、設定圧力Pの油圧が供給され、ワークWを外径把握する。
この第2の油圧チャックパレット200bは、パレット交換装置により加工ステーションKのテーブル10上に搬送され、クランプされる。
【0017】
後述する油圧供給装置は、テーブル10から油圧チャックパレット200bに設定圧力Pの油圧を供給する。
油圧チャックパレット200a,200bは、油圧アクチュエータ250が作動して、チャック爪210がワークW,Wを把握している状態にあっては、ピストンロッド252の下端位置は、所定の範囲内にある。
加工ステーションKのテーブル10は、チャックミスクランプ確認用シャフト150を有し、ピストンロッド252によりこのシャフト150はスプリング152に抗して押し込まれる。
1対の近接センサー161,162は、このシャフト150の位置を検知し、シャフト150の位置が一定の範囲内であれば、チャック爪が正常にワークを把握しているものと確認する。それ以外の場合は、チャック爪のワーク把握が正常でないものと判断し、制御装置側へ警報を送出する。
【0018】
図10は、本発明の油圧チャックパレットの交換機構に適用される油圧供給装置の構成を示す回路図である。
全体を符号400で示す油圧供給装置は、油圧供給元405に接続される第1の油圧チャックパレット用の油圧制御装置410と第2の油圧チャックパレット用の油圧制御装置420を有し、2種類の設定圧力に対応する油圧チャックパレットの供給圧力を制御することができる。
【0019】
第1の油圧制御装置410は、第1の油圧チャックパレットの設定圧力P用の圧力調整弁412と圧力ゲージと、切替弁414を備える。
第2の油圧制御装置420は、第2の油圧チャックパレットの設定圧力P用の圧力調整弁422と圧力ゲージと、切替弁424を備える。
第1及び第2の油圧制御装置410,420は、それぞれ段取りステーションD側のテーブル12と加工ステーションK側のテーブル10の油圧回路450,460に接続される。
【0020】
段取りステーションD側の油圧回路450は、油圧チャックのチャック爪がワークの内径把握か外径把握かあるいは現状の油圧状態を暫時保持するか(中立状態)、に対応して切替えられる切替弁を備える。
同様に、加工ステーションK側の油圧回路460も、油圧チャックのチャック爪がワークの内径把握か外径把握かあるいは現状の油圧状態を暫時保持するか(中立状態)、に対応して切替えられる切替弁を備える。また、この油圧回路460は油圧により作動する圧力スイッチ464を備える。
【0021】
図11は、本発明の油圧チャックパレットの交換機構の作動のフロー図である。
ステップS10でスタートした油圧チャックパレット交換は、ステップS11で段取りステーションD側のテーブル12にクランプされているパレットと加工ステーションK側のテーブル10にクランプされているパレットのアンクランプを行う。
ステップS12では、パレット交換装置のフックを油圧チャックパレットの溝に係合し、油圧チャックパレットをテーブルから引き上げる。ステップS13でパレット交換装置のアームを180度旋回させる。ステップS14で、油圧チャックパレットの油圧回路を段取りステーションD側と加工ステーションK側の間で切替する。
具体的には、段取りステーションのテーブル12と加工ステーションのテーブル10の間で油圧チャックパレットの供給圧力を切替弁414,424を操作して切替る。ステップS15では、油圧チャックのクランプを切替弁452,462を操作して中立状態とし、ステップS16で油圧チャックパレットをそれぞれのテーブル上に降下させ、ステップS17でテーブルのクランプ機構を操作して油圧チャックパレットをクランプする。
ステップS18で切替弁452,462を操作して油圧チャックをワークの外径把握または内径把握にクランプしてステップS19で操作を終了する。
なお説明は省略したが、パレット1またはパレット2の把握方向(外径把握または内径把握)は、別途電気的なスイッチで選択されており、そのスイッチの状態に応じて、切替弁を操作する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明が適用されるマシニングセンタの概要を示す斜視図。
【図2】本発明が適用されるマシニングセンタの正面図。
【図3】パレット交換機構を示す図。
【図4】段取りステーション側に配設されるテーブルの説明図。
【図5】加工ステーション側に配設されるテーブルの説明図。
【図6】加工ステーションのテーブル上にワークを把持した油圧チャックパレットがクランプされた状態を示す説明図。
【図7】加工ステーション内でテーブルに対して油圧チャックパレットがクランプされた状態を示す説明図。
【図8】本発明の油圧チャックの交換システムの全体構成を示す説明図。
【図9】テーブルと油圧チャックパレットを連結する油圧回路の概要を示す説明図。
【図10】本発明の油圧チャックパレットの交換機構に適用される油圧供給装置の構成を示す回路図。
【図11】本発明の油圧チャックパレットの交換機構の作動のフロー図。
【符号の説明】
【0023】
1 マシニングセンタ
10 加工テーブル
12 段取りテーブル
20 パレット
30 パレット交換アーム
50 工具主軸
60 ドア
120 クランプ装置
130 油圧カプラ
150 クランプ確認用シャフト
161,162 近接センサー
200 油圧チャックパレット
210 チャック爪
230 油圧カプラ
250 油圧アクチュエータ
400 油圧供給装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マシニングセンタの加工テーブルと段取りテーブルの間でパレットを交換する機構であって、
加工テーブルと段取りテーブルは、油圧チャックを備えた油圧チャックパレットに対して油圧を供給するカプラを備えるとともに、油圧供給装置は、段取りテーブル上で油圧を設定した油圧チャックパレットが、加工テーブル上に交換されたときに、段取りテーブル上で設定した油圧を加工テーブル上の油圧チャックパレットに供給する切替弁を備えるマシニングセンタのパレット交換機構。
【請求項2】
油圧供給装置は、異なる設定圧力に対応する複数の油圧制御回路を備える請求項1記載のマシニングセンタのパレット交換機構。
【請求項3】
油圧チャックパレットは、チャック爪を操作する油圧ピストンを備え、加工テーブルは、油圧チャックパレットの油圧ピストンが正常な位置にあることを確認する近接センサーを備える請求項1記載のマシニングセンタのパレット交換機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−15093(P2007−15093A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−202041(P2005−202041)
【出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【出願人】(000114787)ヤマザキマザック株式会社 (80)
【Fターム(参考)】