マスカラ塗布具
【課題】まつ毛を放射状に広がった状態に梳くことができるマスカラ塗布具を提供すること。
【解決手段】マスカラ化粧料を塗布する塗布部12が、塗布部軸20と該塗布部軸20に沿って配列された複数の櫛歯21からなる櫛歯列とを有するマスカラ塗布具10である。塗布部軸20を横からみたときに、塗布部12の長手方向前方域12F及び後方域12Rそれぞれに位置する櫛歯21が、長手方向中央域12Cに向けて傾斜しているとともに、中央域12Cから前方域12F及び後方域12Rそれぞれに向かうにつれ、櫛歯21の傾斜の程度が徐々に大きくなっている。
【解決手段】マスカラ化粧料を塗布する塗布部12が、塗布部軸20と該塗布部軸20に沿って配列された複数の櫛歯21からなる櫛歯列とを有するマスカラ塗布具10である。塗布部軸20を横からみたときに、塗布部12の長手方向前方域12F及び後方域12Rそれぞれに位置する櫛歯21が、長手方向中央域12Cに向けて傾斜しているとともに、中央域12Cから前方域12F及び後方域12Rそれぞれに向かうにつれ、櫛歯21の傾斜の程度が徐々に大きくなっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、まつ毛にマスカラ化粧料を塗布するための塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
マスカラ化粧料に求められる効果としては、まつ毛をより太く濃く見せるボリュームアップ効果、より長く見せるロング効果、まつ毛をカールさせて目を大きくはっきりと見せるカールアップ効果、マスカラ化粧料がダマになってまつ毛付着したりしないようにするセパレート効果などがある。これらの効果は、マスカラ化粧料と塗布具との相乗効果によって発現するものである。
【0003】
また、前記効果に加えて、まつ毛をまつ毛の根元から広がるように放射状に梳いてクセ付けることによって、目周りにより美しく魅力的で洗練された外観を与えることができる。しかしながら、簡単にまつ毛を放射状に梳くことのできる塗布具はこれまでにはなく、放射状の美しい仕上がりは個人の技量によるところが大きかった。すなわち、従来の塗布具ではまつ毛を平行に梳くことしかできず、使用者がまつ毛を放射状に梳くためには、梳く箇所を部分毎に分けて、それぞれ異なる方向に梳かなければならず、面倒であった。また、梳いたそれぞれの部分毎ではまつ毛同士は平行なので、まつ毛全体として見たときに等間隔のきれいな放射状にならなかったり、又はきれいな放射状にするためにはまつ毛を梳く部分を更に細分化して梳いたりしなければならず、多大な時間を必要としていた。
【0004】
また、まぶたは眼球の曲面に沿って円弧状になっており、一方、1本1本のまつ毛はまぶたの縁にほぼ垂直に生えているので、まつ毛全体では、そのままでも自然と略放射状になっているが、櫛歯が平行に延びる従来の塗布具(図13(b))ではまつ毛を平行にしか梳けないので放射状の角度を減少させてしまい、仕上がりの魅力を減退させてしまう不具合があった。
【0005】
更にまた、樹脂成型によって多数の突起を形成され、放射状に延びる櫛歯を有するマスカラ塗布具も存在するが、これでまつ毛を梳くと、まつ毛が櫛歯の先から櫛歯の根元へと移動するにつれて、逆にまつ毛先端同士が集まる方向に梳かれる(まつ毛が放射状に広がるのではなくて、閉じてしまう)ので、仕上がりの魅力をより減退させてしまう不具合があった(図13(c)参照)。
【0006】
マスカラ塗布具として、樹脂成形によって多数の突起を形成してなるものが知られている(例えば特許文献1参照)。同文献に記載の塗布具は、支持体及び該支持体と一体に作られた多数の歯の列を有している。支持体は直線状であるか、又は湾曲した形状になっている。そして支持体がいずれの形状の場合であっても、歯は支持体の法線方向に延びている。このような塗布具を用いれば、まつ毛を梳くことはできるが、まつ毛を放射状に広げるように梳くことはできない。
【0007】
前記の特許文献1には、歯が支持体の法線方向に対して傾斜している実施形態の塗布具も開示されている(同文献の図7)。しかし歯の傾斜方向が、歯の列に含まれるすべての歯において同方向なので、やはりまつ毛を広げるように梳くことはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−51350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得るマスカラ塗布具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、マスカラ化粧料を塗布する塗布部が、塗布部軸と該塗布部軸に沿って配列された複数の櫛歯からなる櫛歯列とを有し、
塗布部軸を横からみたときに、塗布部の長手方向前方域及び後方域それぞれに位置する櫛歯が、長手方向中央域に向けて傾斜しているとともに、中央域から前方域及び後方域それぞれに向かうにつれ、櫛歯の傾斜の程度が徐々に大きくなっているマスカラ塗布具を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、まつ毛を普通に梳くだけで、まつ毛が放射状に広がった状態になり、その状態下にマスカラ化粧料が塗布されるので、ボリューム感のあるきれいな仕上がりとなる(例えば図13(a)参照)。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明のマスカラ塗布具の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図2(a)は、図1に示すマスカラ塗布具を横から見た図であり、図2(b)は、図1に示すマスカラ塗布具を、塗布部軸の軸線から見た図である。
【図3】図3は、図1に示すマスカラ塗布具でまつ毛を梳いたときの、まつ毛の位置を示す模式図である。
【図4】図4(a)は、図1に示すマスカラ塗布具でまつ毛を梳き始めたときのまつ毛の広がりを示す模式図であり、図4(b)はまつ毛の梳きが終了したときのまつ毛の広がりを示す模式図である。
【図5】図5は、図1に示すマスカラ塗布具でまつ毛を梳いたときのまつ毛の移動の経路を示す模式図である。
【図6】図6は、本発明のマスカラ塗布具の別の実施形態における塗布部の要部を拡大して示す模式図である。
【図7】図7は、図1に示すマスカラ塗布具における塗布部のうち、前方域及び中央域の要部を拡大して示す模式図である。
【図8】図8(a)及び(b)は、本発明のマスカラ塗布具の別の実施形態における塗布部の要部を拡大して示す模式図である。
【図9】図9は、本発明のマスカラ塗布具の別の実施形態における塗布部を示す斜視図である。
【図10】図10(a)は、図9に示すマスカラ塗布具を横から見た図であり、図10(b)は、図9に示すマスカラ塗布具を、塗布部軸の軸線から見た図である。
【図11】図11は、本発明のマスカラ塗布具の更に別の実施形態における塗布部を示す斜視図である。
【図12】図12(a)ないし(d)は、図9に示す実施形態のマスカラ塗布具を用いてまつ毛を梳くときの様子を示す模式図である。
【図13】図13(a)は本発明のマスカラ塗布具を使用したときの典型的なまつ毛の方向を示した図であり、図13(b)は従来のマスカラ塗布具のうち、櫛歯が平行に延びるものを使用したときの典型的なまつ毛の方向を示した図であり、図13(c)は従来のマスカラ塗布具のうち、櫛歯が放射状に延びるものを使用したときの典型的なまつ毛の方向を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1及び図2に示す実施形態のマスカラ塗布具10は、支持軸11の先端に、マスカラ化粧料を塗布する塗布部12を有している。図1及び図2においては、支持軸11は、塗布部12との連結部付近しか示されていないが、支持軸11はその全体が直線の棒状体から構成されている。支持軸11と塗布部12とは、樹脂の一体成形によって形成されているか、あるいは別々に製造された支持軸11と塗布部12とが、接着剤による接着、嵌合、螺合等の手段によって連結されている。
【0014】
塗布部12は、一方向に延びる塗布部軸20と、該塗布部軸20に沿って配列された複数の櫛歯21からなる櫛歯列とを有している。塗布部軸20は、その長手方向を、支持軸11の長手方向と一致させて、支持軸11の先端に連結している。塗布部12は、塗布部軸20を横からみたときに(つまり、図2(a)に示す方向からみたときに)、塗布部軸20の長手方向中央域12Cと、該中央域12Cよりも先端側に位置する前方域12Fと、該中央域12Cよりも後端側(支持軸11との連結部側)に位置する後方域12Rとに大別される。
【0015】
塗布部12に配置された櫛歯列は一列である。各櫛歯21は、塗布部軸20の上方に向けて突出している主櫛歯部21aと、塗布部軸20の下方及び側方に向けて突出している副櫛歯部21bとから構成されている。各櫛歯21においては、主櫛歯部21aと副櫛歯部21bとは一体的に形成されている。主櫛歯部21aと、副櫛歯部21bとの突出の程度を比較すると、主櫛歯部21aの方が突出の程度が大きくなっている。主櫛歯部21aは、塗布部軸20の軸線からみて略三角形の板状をしている。
【0016】
各櫛歯21は、その板面が塗布部軸20の長手方向と略直交するように配置されている。また各櫛歯21は、その板面が互いに略平行になるように配置されている。各櫛歯21の大きさは同じでもよく、あるいは塗布部12のうちの各部位(中央域12C、前方域12F、後方域12R)に応じて大きさが異なっていてもよい。また場合によっては、塗布部12のうちの各部位に応じて櫛歯21の形状が異なっていてもよい。
【0017】
図2(a)に示すように、塗布部12における塗布部軸20は、櫛歯21の突出する方向に向けて(図2(a)中、上方に向けて)、凸状に緩やかに湾曲している。塗布部軸20の湾曲の頂部は、上述した中央域12Cの位置とほぼ一致している。そして、各櫛歯21は、湾曲した塗布部軸20における上側の面(凸側の面。以下、この面を「基面20A」という。)から上方へ向けて突出している。塗布部軸20がこのように湾曲していることで、マスカラ塗布具10を用い、これを下方から上方へ向けて移動させてまつ毛を梳いたときに、塗布部12がまぶたに沿う状態となるので好ましい。また、マスカラ化粧料を塗布したあと、塗布具10を180度反転させて、塗布部軸20のうち、凹状に湾曲している側をまつ毛に押し当てて、マスカラ化粧料が乾燥するまでの間、副櫛歯部21bでまつ毛を押さえることで、まつ毛のカールアップ効果が期待できる。特に副櫛歯部21bは、突出高さが低いので、まつ毛の押さえつけ効果が高く、かつまつ毛を押さえつけているときに副櫛歯部21bの先端(図2(a)中、各副櫛歯部21bの下側)がまぶたなどに触れないために、まぶたなどをマスカラ化粧料で汚すことがない。
【0018】
本実施形態のマスカラ塗布具10は、櫛歯21の傾斜状態に特徴の一つを有する。詳細には次のとおりである。塗布部12の中央域12Cに位置する2本の櫛歯21Cは、塗布部軸20を横からみたときに、該塗布部軸20の基面20Aに対して略法線方向に延びている。すなわち、櫛歯21Cと基面20Aとは略直交している。これに対して、塗布部12の前方域12Fに位置する櫛歯21Fは、中央域12Cに向けて傾斜している。一方、塗布部12の後方域12Rに位置する櫛歯21Rも、中央域12Cに向けて傾斜している。ここでいう傾斜とは、板状体からなる櫛歯21の板面が、塗布部軸20の基面20Aの法線に対して角度をなしていることをいう。したがって、傾斜の程度が大きいとは、櫛歯21の板面と基面20Aの法線とのなす角度(以後「傾斜角」ともいう)が大きいことをいう。
【0019】
櫛歯21(21C,21F,21R)は、塗布部12の中央域12Cから前方域12F及び後方域12Rそれぞれに向かうにつれ、傾斜の角度が徐々に大きくなっている。つまり櫛歯21は、その配置位置が中央域12Cから先端側及び後端側に向けて離れるにつれて、該櫛歯21の板面が塗布部軸20の基面20Aに近づいていく。櫛歯21がこのように傾斜しているマスカラ塗布具10を用いてまつ毛を梳くことで、まつ毛を放射状にきれいに広げることができる。このことを、図3及び図4を参照しながら説明する。
【0020】
図3に示すように、塗布部12の櫛歯21内に入り込んだ初期時点でのまつ毛EL1は、まつ毛がもともとあった場所の近傍の隣り合う櫛歯21の先端の間に振り分けられる。この状態でのまつ毛EL1の広がりは、図4(a)に示すとおりである。この状態からマスカラ塗布具10を上方に移動させることで、櫛歯21の奥(櫛歯21の根元)に入り込んだまつ毛EL2は、傾斜している櫛歯21に沿って、塗布部軸20の先端方向及び後端方向に移動していく。その結果、初期時点に比較して、まつ毛の間隔が大きくなり、放射状に広げられる。この状態でのまつ毛EL2の広がりは、図4(b)に示すとおりである。塗布部12にはマスカラ化粧料が保持されているから、以上の操作を行うことで、放射状に広がった状態のまつ毛にマスカラ化粧料が塗布されることになる。その結果、ボリューム感のあるきれいな仕上がりのまつ毛となる。まつ毛EL1及びEL2は、1本1本のまつ毛、又は数本のまつ毛が束になった毛束を表している。
【0021】
先に述べたとおり塗布部12の塗布部軸20は、上方へ向けて凸の湾曲形状になっている。したがって、例えば図5に示すように、塗布部軸20を横からみたときに、塗布部12の前方域12Fにおいては、塗布部軸20の基面20Aは、櫛歯21Fの傾斜する方向(図5中、矢印Aで示す方向)と反対方向(図5中、矢印Bで示す方向)に傾斜している。櫛歯21Fと基面20Aとがこのような位置関係になっていることで、マスカラ塗布具10を用い、これを図5中、矢印Cで示す方向に向けて(下方から上方に向けて)移動させ、まつ毛を梳くと、まつ毛は、図5中、櫛歯21Fの板面及び基面20Aに沿って移動する。つまり、同図中、EL1→EL2→EL3という順序で移動する。その結果、まつ毛の梳き始めから梳き終わりの間におけるまつ毛の水平移動量が大きくなり、まつ毛が放射状に広がる効果が一層向上する。この効果は、塗布部12の後方域12Rにおいても同様に奏される。後方域12Rにおいても、基面20Aは、櫛歯21Rの傾斜する方向と反対方向に傾斜しているからである。なお、塗布部12の中央域12Cにおいては、基面20Aと櫛歯21Cとは略直交しているので、まつ毛の梳き始めと梳き終わりとで、まつ毛の広がりの程度に大きな差は生じない。したがって、まつ毛の梳き始めから梳き終わりの間におけるまつ毛の水平移動量は、塗布部12の先端及び後端に近づくほど大きくなる。
【0022】
中央域12Cにおいては、櫛歯21Cの傾斜角はほぼ0°である。前方域12Fにおいては、櫛歯21Fの傾斜角は、図2に示すように、塗布部軸20の先端側に向うにつれて徐々に増していく。一方、後方域12Rにおける櫛歯21の傾斜角は、図2に示すように、塗布部軸20後端側に向うにつれて徐々に増していく。塗布部軸20の先端及び塗布部軸20の後端の櫛歯21の傾斜角は75°以下であることが好ましく、45°以下であることが更に好ましい。塗布部軸20の先端及び塗布部軸20の後端の櫛歯21の傾斜角をこの範囲にすることで、まつ毛と櫛歯との摩擦力による作業性の低下を少なくでき、またまつ毛を最も美しく放射状に広げることができる。塗布部軸20の先端及び後端の櫛歯の傾斜角は、まつ毛を広げる効果の観点から、好ましくは15°以上であり、より好ましくは30°以上である。
【0023】
前方領域F及び後方領域Rにおいては、櫛歯の傾斜角の増分は必ずしも均等である必要はない。例えば、あえて塗布部軸20の先端側あるいは根元側の数本の櫛歯の傾斜角を大きくして放射状の広がり感を強調するなど、マスカラメイクの表現意図によって角度を設定することができる。更に例えば、塗布部軸20の先端側あるいは後端側にいくにつれて、基本的には徐々に角度を増すが、部分的に角度の増分を減少させるか、又は部分的に角度の増分を増加させてもよく、そうすることで放射状に広がったまつ毛に粗密を与えることができ、また違ったまつ毛の表現が可能になる。
【0024】
図5に示す実施形態は、塗布部軸20が湾曲しており、基面20Aが連続面であることを前提としたものであるが、塗布部軸20が直線状である場合にも、基面20Aを、櫛歯21の傾斜する方向と反対方向に傾斜させることができる。例えば、塗布部軸20を直線状となすとともに、図6に示すように、塗布部軸20を横からみたときの縦断面視における基面20Aが、鋸歯状となるように、該基面20Aを形成し、水平線(図示せず)に対して基面20Aの傾斜方向と反対方向に櫛歯21を傾斜させることで、上述した効果と同様の効果を発現させることができる。なお、前記の水平線とは、塗布部軸20が直線状であれば塗布部軸20の軸線と一致する線又は該軸線と平行な線をいい、塗布部軸20が湾曲していれば、塗布部軸20の先端の断面の中心点と後端の断面の中心点とを結んだ直線と一致する線又は該直線と平行な線をいう(以下の説明においても同じ。)。
基面20Aと水平線との角度は特に制限はなく、仕上がりの放射状の形状やマスカラ塗布具10のデザインなどを考慮して決定すればよいが、櫛歯21と水平線のなす角度以下であることを条件としては0°〜90°の範囲内で設定することができ、好ましくは0°〜80°、更に好ましくは0°〜70°とすることができる。基面20Aと水平線との角度は、まつ毛をより広く広げる観点からは小さい方が好ましく、まつ毛をより容易に広げる観点からは大きい方が好ましい。
【0025】
塗布部12においては、櫛歯21の傾斜の程度が大きい部位に位置する櫛歯21ほど、隣り合う櫛歯21の根元間の距離及び先端間の距離が大きくなっている。例えば、図7に示すように、塗布部12の前方域12Fは、中央域12Cよりも櫛歯21の傾斜の程度が大きいところ、前方域12Fに位置する櫛歯21Fにおける根元間の距離Da1と、中央域12Cに位置する櫛歯21Cにおける根元間の距離Da2とを対比すると、Da1の方がDa2よりも大きくなっている。櫛歯の先端に関しては、根元部における距離の差よりも小さくなっており、前方域12Fに位置する櫛歯21Fにおける先端間の距離Db1と、中央域12Cに位置する櫛歯21Cにおける先端間の距離Db2とを対比すると、ほとんど同じになっている。このような関係になっていることで、まつ毛を梳くときに、隣り合う櫛歯21の間に均等にまつ毛が入りやすくなり、まつ毛の梳きを効率的に行うことができる。Db2の具体的な値は0.3mm以上5mm以下が好ましく、0.8mm以上3mm以下がより好ましい。また、Db1とDb2との比Db1/Db2は、0.5以上5以下が好ましく、0.8以上2以下がより好ましい。以上の距離関係及びそれに起因して奏される効果は、中央域12Cと後方域12Rについても同様に適用される。
【0026】
以上の実施形態においては、櫛歯21の傾斜の程度は、櫛歯21の根元から先端までで一定であったが、これに代えて一つの櫛歯21内において、傾斜の程度を異ならせてもよい。例えば図8(a)に示すように、櫛歯21を、塗布部軸20側に位置する下方部211と、下方部211に連接しかつ塗布具軸20から遠い側に位置する上方部212とから構成することができる。下方部211及び上方部212はいずれも同じ方向に傾斜している。この場合には、下方部211の傾斜の程度を、上方部212の傾斜の程度よりも大きくすることが有利である。こうすることによって、隣り合う櫛歯21において櫛歯の根元間の距離を大きく確保しつつ、櫛歯21の先端から根元へ向けてまつ毛を通過させやすくできる。櫛歯の根元間の距離を大きく確保できることは、まつ毛を梳いたときの水平移動量を大きくできるという利点につながる。このような実施形態の櫛歯21は、塗布部12における中央域12C、前方域12F及び後方域12Rのすべての部位に配置されていてもよく、これらの部位のうちの任意の2箇所の部位に配置されていてもよく、あるいはこれらの部位のうちのいずれか1箇所の部位に配置されていてもよい。下方部211の傾斜角は、上方部212の傾斜角よりも大きいことを条件とし、好ましくは0°〜80°、更に好ましくは0°〜70°とすることができ、仕上がりの放射状の形状やマスカラ塗布具10のデザインなどを考慮して決定すればよい。
【0027】
図5に示す実施形態の変形例として、図8(b)に示す実施形態がある。図8(b)に示す実施形態においては、下方部211は基面20A及び水平線Hに対して傾斜しているが、上方部212は水平線Hに対して傾斜していない。つまり、上方部212は水平線Hに対して直交している。本実施形態によれば、マスカラ塗布具を上下に移動する方向と、上方部212の延びる方向とが一致しているので、隣り合う櫛歯21間にまつ毛が一層入りやすくなり、まつ毛が更に移動して斜面に接触して摩擦力を受けても容易に櫛歯間から外れたり、隣の櫛歯へと飛び越えたりすることがなくなり、きれいな放射状のまつ毛に梳くことができる。まつ毛が受ける摩擦力は櫛歯の傾斜角が大きいほど大きくなることから、この実施形態の櫛歯21は、少なくとも前方域12F、又は後方部12Rに配置されていることが、塗布部12の場所によりまつ毛の入り易さの偏りが少なくなる点で好ましい。この実施形態の櫛歯21は、塗布部12全体に配置しても良い。
【0028】
また、前記の各実施形態において櫛歯21の高さは、塗布部12の全域にわたって同じであってもよく、また部分的に異なっていてもよい。例えば、前方域15F及び/又は後方域15Rに位置する櫛歯21の高さをその端に向かうにつれて徐々に低くしてもよい。また、中央域15Cに位置する櫛歯21の高さを他の櫛歯21よりも低くすることによって、中央域15Cに窪みを設けることもできる。更に、適当な幅で、櫛歯21の高さを不ぞろいにすることもできる。
【0029】
塗布部、櫛歯の寸法は目的とする効果のレベルやマスカラ剤の性質によって変わるが、まつ毛全体を放射状に広げる効果の観点から、下記の範囲が好ましい。 塗布部12の全長は15〜40mmであることが好ましく、20〜35mmであることがより好ましい。主櫛歯21aの長さは、まつ毛を2〜20mmが好ましく、3〜12mmがより好ましい。ここで、櫛歯の長さとは、基面20Aから、櫛歯の先端までの長さを、櫛歯に沿って測ったときの長さである。櫛歯21の厚みは0.1〜2mmが好ましく、0.2〜1mmがより好ましい。櫛歯21の数は5〜40本が好ましく8〜30本がより好ましい。
【0030】
マスカラ塗布部10は、熱可塑性樹脂の成形によって製造することができる。また、櫛歯21に関しては、成形によって大まかな形状(例えばディスク状)を形成しておき、その後に切削加工等の後加工によって、所望の形状に形成してもよい。用いることのできる樹脂は、当該技術分野においてこれまで用いられてきた樹脂と同様のものである。
【0031】
図9及び図10には、本発明のマスカラ塗布具の別の実施形態が示されている。本実施形態については、先の実施形態と異なる点について主として説明し、特に説明しない点については、先の実施形態に関する説明が適宜適用される。
【0032】
本実施形態の塗布具10は、塗布部12の前方域12Fの更に前方に、最前方域12FFを有している。最前方域12FF位置する櫛歯21FFは、塗布部12の先端側に位置するものほどその高さが徐々に低くなっている。このようにすることで、最前方域12FFを利用した『部分使い』が行いやすくなり、マスカラ化粧料の細かな塗布や塗布の仕上げを容易に行うことができる。すなわち、塗布部12の前方域12F、中央域12C及び後方域12Rを使ってまつ毛の全体形状を放射状に整えた後、最前方域12FF部分を使って、まつ毛の角度の微調整や、過度に束になったまつ毛のセパレートができる。
【0033】
このことに関連して、最前方域12FFに位置する櫛歯21FFは、中央域12C向きではなく、水平線に対して垂直か、先端向きに傾斜していることが好ましい。このようにすることで、最前方域12FFを利用した部分使いがより行いやすくなる。すなわち、櫛歯21FFは軸先端側に傾いていて、しかも先端に向うにつれて高さが低くなることで、最前方域12FFの櫛歯21FFを、まつ毛列に当てようとすると、自然に軸を傾けることになり、最前方域12FFよりも後端側の櫛歯列が下に下がる。結果、まつ毛を微調整する際、前方域12F、中央域12C及び後方域Rの櫛歯21が他のまつ毛に触れないので、微調整を所望するまつ毛以外のまつ毛を乱すことがない。
【0034】
マスカラ化粧料の細かな塗布を行うことに関連し、図9、10に示すように、塗布部12の先端には、塗布部12の長手方向に延びる錐体突起22が複数形成されていてもよい。錐体突起22の延びる方向と水平線(支持軸11の軸線)とのなす角度は0度であるか、あるいは30度以内の比較的小さい角度である。錐体突起22は、細かい部分、例えば目頭付近及び目尻付近のまつ毛の部分やまつ毛の本数の少ない部分、例えば下まつ毛の部分にマスカラ化粧料を塗布するのに適している。
【0035】
図10(a)に示すように、塗布部12における前方域12Fと最前方域12FFとの境界付近には、主櫛歯部21のみを有する櫛歯21’が配置させることができる。この櫛歯21’は、他の櫛歯21における隣り合う主櫛歯部21aの間の距離を適正に確保するとともに、隣り合う副櫛歯部21bの間の距離を適正に確保することを目的として配置されている。
【0036】
図11には、本発明のマスカラ塗布具の更に別の実施形態が示されている。本実施形態については、先の実施形態と異なる点について主として説明し、特に説明しない点については、先の実施形態に関する説明が適宜適用される。
【0037】
本実施形態の塗布具10は、第1の櫛歯列210及び第2の櫛歯列220の2列の櫛歯列を有している。各櫛歯列は、塗布部軸20の全長にわたって配置されている。各櫛歯列210,220における櫛歯211,221の傾斜の様子は、先に述べた実施形態と同様である。また各櫛歯は、その板面が互いに略平行になるように配置されている。したがって、本実施形態においては、第1の櫛歯列210の櫛歯211及び第2の櫛歯列220の櫛歯221は、その板面が、塗布部軸20の先端側又は後端側に向うにつれてねじれた形状となっている。塗布部軸20の延びる方向と直交する方向において同じ位置にある櫛歯211と櫛歯221との傾斜の程度は同じでもよく、あるいは異なっていてもよい。
【0038】
本実施形態においては、塗布部軸20の軸線からみたとき、第1の櫛歯列210の櫛歯211と、第2の櫛歯列220の櫛歯221とが、略V字をなすように各櫛歯211,221が配列されている。各櫛歯211,221がこのように配列されていることで、2つの櫛歯列210,220間に凹状の窪んだ空間が形成される。この空間にはマスカラ化粧料を多量に保持させることができるので、まつ毛に多量のマスカラ化粧料を塗布することができる。その結果、まつ毛が放射状に広がることと相まって、まつ毛のボリュームアップの効果が一層顕著になる。
【0039】
図11に示すように、塗布部12の先端部においては、そこに配置された複数の先端櫛歯215によって、第1の櫛歯列210と第2の櫛歯列220とが滑らかに連結されている。先端櫛歯215は、塗布部12をその上側(主櫛歯部21aが突出している側)からみたときに、塗布部12の先端部において扇状に(放射状に)配置されている。このような先端櫛歯215を備えることで、先の実施形態の塗布具10における錐体突起22と同様に、細かい部分にマスカラ化粧料を塗布することが容易になる。特に、先端櫛歯215が、第1の櫛歯列210の櫛歯211や第2の櫛歯列220の櫛歯221と同様に、上方に向けて突出していると、該先端櫛歯215を用いたマスカラ化粧料の塗布の際に、まつ毛をすくいあげるように化粧料を塗布することができるという利点がある。また、櫛歯211,221がなす略V字と同様に、先端櫛歯215によって凹状の窪んだ空間が形成され、マスカラ化粧料を多量に保持させることができるので、まつ毛に多量のマスカラ化粧料を塗布することができる。その結果、まつ毛のボリュームアップ効果が一層顕著になる。
【0040】
図11に示すように、第1の櫛歯列210と第2の櫛歯列220との間には、第3の櫛歯列230が配置されている。第3の櫛歯列230も、塗布部軸20の全長にわたって配置されている。第1の櫛歯列210及び第2の櫛歯列220と異なり、第3の櫛歯列230を構成する各櫛歯231は、細長い截頭円錐状又は細長い円柱状をしている。櫛歯231は、塗布部軸20の基面20Aと直交するように突出している。つまり、櫛歯231は基面20Aの法線に対して傾斜していない。したがって、第3の櫛歯列230においては、それを構成する櫛歯231の傾斜の程度が、塗布部軸20の延びる方向と直交する方向で隣接する第1の櫛歯列210の櫛歯211の傾斜の程度及び第2の櫛歯列220の櫛歯221の傾斜の程度と異なっている。この場合、塗布部12の全長にわたって、櫛歯231の傾斜の程度と、櫛歯211及び櫛歯212の傾斜の程度が異なっていることは要せず、塗布部12の長手方向の少なくとも一部の部位において、櫛歯231の傾斜の程度と、櫛歯211及び櫛歯212の傾斜の程度が異なっていればよい。
【0041】
第1の櫛歯列210及び第2の櫛歯列220に加え第3の櫛歯列230を有し、かつ各櫛歯列を構成する櫛歯の傾斜の程度が上述のとおりとなっていることで、本実施形態のマスカラ塗布具10によれば、まつ毛を梳いたときの梳き心地感が向上するという利点がもたらされる。この利点を、図12を参照しながら説明する。
【0042】
本実施形態のマスカラ塗布具10を用いたまつ毛の梳き始めにおいては、図12(a)及び(b)に示すように、まつ毛ELは、3本の櫛歯211,221,231によって蛇行状に絡めとられる。なお図12(a)は、塗布部12を上からみた図であり、図12(b)は、塗布部12を横からみた図である。塗布具10を下方から上方へ向けて移動してまつ毛を梳いていくと、まつ毛ELが櫛歯の根元側へ向けて移動する。この移動によってまつ毛ELと櫛歯との絡みの度合いが大きくなり、まつ毛ELの撓みが大きくなる。その結果、梳きの抵抗の増大を使用者が感じるようになる。梳きの後半のから終了にかけては、3本の櫛歯211,221,231に絡まっていたまつ毛ELが、図12(c)及び(d)に示すように、2本の櫛歯221,231にのみ絡み、最後は1本の櫛歯231のみに絡む。したがって、まつ毛ELと櫛歯との絡みの度合いが次第に小さくなり、梳きの抵抗の低下を使用者が感じるようになる。これ以降更に梳き進めると、まつ毛は傾斜した櫛歯221に従い、まつ毛全体としては開いた放射状に梳かれることになる。このように、本実施形態のマスカラ塗布具10を用いてまつ毛を梳くと、梳きの抵抗感の増大及びそれに続く抵抗感の低下の差が非常に顕著なので、例えばまつ毛の本数が少ない、あるいはまつ毛が短い使用者においてもその差を使用者が知覚しやすく、満足な梳き心地を使用者に与えることができる。
【0043】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記の各実施形態においては、塗布部12の塗布部軸20が、上方に向けて凸状に湾曲していたが、これに代えて塗布部軸20は略直線状でもよい。
【0044】
また、図1に示す実施形態のマスカラ塗布具10においては、櫛歯21の主櫛歯部21aは、略三角形の板状であったが、これに代えて、柱状や錐状、截頭錐状の櫛歯を用いてもよい。
【0045】
また、図11に示す実施形態のマスカラ塗布具10においては、第3の櫛歯列230を構成する櫛歯231が、基面20Aの法線に対して傾斜していなかったが、これに代えて、傾斜の程度が異なることを条件として、櫛歯231を、第1の櫛歯列210や第2の櫛歯列220を構成する櫛歯211,221と同様の態様で傾斜させてもよい。
【0046】
また、当業者の通常の知識の範囲内で、上述の各実施形態を適宜組み合わせて新たな実施形態とすることができる。例えば、図9に示す実施形態のマスカラ塗布具10における錐体突起22を、図11に示す実施形態のマスカラ塗布具10における先端櫛歯215の代わりに用いてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10 マスカラ塗布具
11 支持軸
12 塗布部
12C 中央域
12F 前方域
12R 後方域
12FF 最前方域
20 塗布部軸
21 櫛歯
【技術分野】
【0001】
本発明は、まつ毛にマスカラ化粧料を塗布するための塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
マスカラ化粧料に求められる効果としては、まつ毛をより太く濃く見せるボリュームアップ効果、より長く見せるロング効果、まつ毛をカールさせて目を大きくはっきりと見せるカールアップ効果、マスカラ化粧料がダマになってまつ毛付着したりしないようにするセパレート効果などがある。これらの効果は、マスカラ化粧料と塗布具との相乗効果によって発現するものである。
【0003】
また、前記効果に加えて、まつ毛をまつ毛の根元から広がるように放射状に梳いてクセ付けることによって、目周りにより美しく魅力的で洗練された外観を与えることができる。しかしながら、簡単にまつ毛を放射状に梳くことのできる塗布具はこれまでにはなく、放射状の美しい仕上がりは個人の技量によるところが大きかった。すなわち、従来の塗布具ではまつ毛を平行に梳くことしかできず、使用者がまつ毛を放射状に梳くためには、梳く箇所を部分毎に分けて、それぞれ異なる方向に梳かなければならず、面倒であった。また、梳いたそれぞれの部分毎ではまつ毛同士は平行なので、まつ毛全体として見たときに等間隔のきれいな放射状にならなかったり、又はきれいな放射状にするためにはまつ毛を梳く部分を更に細分化して梳いたりしなければならず、多大な時間を必要としていた。
【0004】
また、まぶたは眼球の曲面に沿って円弧状になっており、一方、1本1本のまつ毛はまぶたの縁にほぼ垂直に生えているので、まつ毛全体では、そのままでも自然と略放射状になっているが、櫛歯が平行に延びる従来の塗布具(図13(b))ではまつ毛を平行にしか梳けないので放射状の角度を減少させてしまい、仕上がりの魅力を減退させてしまう不具合があった。
【0005】
更にまた、樹脂成型によって多数の突起を形成され、放射状に延びる櫛歯を有するマスカラ塗布具も存在するが、これでまつ毛を梳くと、まつ毛が櫛歯の先から櫛歯の根元へと移動するにつれて、逆にまつ毛先端同士が集まる方向に梳かれる(まつ毛が放射状に広がるのではなくて、閉じてしまう)ので、仕上がりの魅力をより減退させてしまう不具合があった(図13(c)参照)。
【0006】
マスカラ塗布具として、樹脂成形によって多数の突起を形成してなるものが知られている(例えば特許文献1参照)。同文献に記載の塗布具は、支持体及び該支持体と一体に作られた多数の歯の列を有している。支持体は直線状であるか、又は湾曲した形状になっている。そして支持体がいずれの形状の場合であっても、歯は支持体の法線方向に延びている。このような塗布具を用いれば、まつ毛を梳くことはできるが、まつ毛を放射状に広げるように梳くことはできない。
【0007】
前記の特許文献1には、歯が支持体の法線方向に対して傾斜している実施形態の塗布具も開示されている(同文献の図7)。しかし歯の傾斜方向が、歯の列に含まれるすべての歯において同方向なので、やはりまつ毛を広げるように梳くことはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−51350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得るマスカラ塗布具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、マスカラ化粧料を塗布する塗布部が、塗布部軸と該塗布部軸に沿って配列された複数の櫛歯からなる櫛歯列とを有し、
塗布部軸を横からみたときに、塗布部の長手方向前方域及び後方域それぞれに位置する櫛歯が、長手方向中央域に向けて傾斜しているとともに、中央域から前方域及び後方域それぞれに向かうにつれ、櫛歯の傾斜の程度が徐々に大きくなっているマスカラ塗布具を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、まつ毛を普通に梳くだけで、まつ毛が放射状に広がった状態になり、その状態下にマスカラ化粧料が塗布されるので、ボリューム感のあるきれいな仕上がりとなる(例えば図13(a)参照)。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明のマスカラ塗布具の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図2(a)は、図1に示すマスカラ塗布具を横から見た図であり、図2(b)は、図1に示すマスカラ塗布具を、塗布部軸の軸線から見た図である。
【図3】図3は、図1に示すマスカラ塗布具でまつ毛を梳いたときの、まつ毛の位置を示す模式図である。
【図4】図4(a)は、図1に示すマスカラ塗布具でまつ毛を梳き始めたときのまつ毛の広がりを示す模式図であり、図4(b)はまつ毛の梳きが終了したときのまつ毛の広がりを示す模式図である。
【図5】図5は、図1に示すマスカラ塗布具でまつ毛を梳いたときのまつ毛の移動の経路を示す模式図である。
【図6】図6は、本発明のマスカラ塗布具の別の実施形態における塗布部の要部を拡大して示す模式図である。
【図7】図7は、図1に示すマスカラ塗布具における塗布部のうち、前方域及び中央域の要部を拡大して示す模式図である。
【図8】図8(a)及び(b)は、本発明のマスカラ塗布具の別の実施形態における塗布部の要部を拡大して示す模式図である。
【図9】図9は、本発明のマスカラ塗布具の別の実施形態における塗布部を示す斜視図である。
【図10】図10(a)は、図9に示すマスカラ塗布具を横から見た図であり、図10(b)は、図9に示すマスカラ塗布具を、塗布部軸の軸線から見た図である。
【図11】図11は、本発明のマスカラ塗布具の更に別の実施形態における塗布部を示す斜視図である。
【図12】図12(a)ないし(d)は、図9に示す実施形態のマスカラ塗布具を用いてまつ毛を梳くときの様子を示す模式図である。
【図13】図13(a)は本発明のマスカラ塗布具を使用したときの典型的なまつ毛の方向を示した図であり、図13(b)は従来のマスカラ塗布具のうち、櫛歯が平行に延びるものを使用したときの典型的なまつ毛の方向を示した図であり、図13(c)は従来のマスカラ塗布具のうち、櫛歯が放射状に延びるものを使用したときの典型的なまつ毛の方向を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1及び図2に示す実施形態のマスカラ塗布具10は、支持軸11の先端に、マスカラ化粧料を塗布する塗布部12を有している。図1及び図2においては、支持軸11は、塗布部12との連結部付近しか示されていないが、支持軸11はその全体が直線の棒状体から構成されている。支持軸11と塗布部12とは、樹脂の一体成形によって形成されているか、あるいは別々に製造された支持軸11と塗布部12とが、接着剤による接着、嵌合、螺合等の手段によって連結されている。
【0014】
塗布部12は、一方向に延びる塗布部軸20と、該塗布部軸20に沿って配列された複数の櫛歯21からなる櫛歯列とを有している。塗布部軸20は、その長手方向を、支持軸11の長手方向と一致させて、支持軸11の先端に連結している。塗布部12は、塗布部軸20を横からみたときに(つまり、図2(a)に示す方向からみたときに)、塗布部軸20の長手方向中央域12Cと、該中央域12Cよりも先端側に位置する前方域12Fと、該中央域12Cよりも後端側(支持軸11との連結部側)に位置する後方域12Rとに大別される。
【0015】
塗布部12に配置された櫛歯列は一列である。各櫛歯21は、塗布部軸20の上方に向けて突出している主櫛歯部21aと、塗布部軸20の下方及び側方に向けて突出している副櫛歯部21bとから構成されている。各櫛歯21においては、主櫛歯部21aと副櫛歯部21bとは一体的に形成されている。主櫛歯部21aと、副櫛歯部21bとの突出の程度を比較すると、主櫛歯部21aの方が突出の程度が大きくなっている。主櫛歯部21aは、塗布部軸20の軸線からみて略三角形の板状をしている。
【0016】
各櫛歯21は、その板面が塗布部軸20の長手方向と略直交するように配置されている。また各櫛歯21は、その板面が互いに略平行になるように配置されている。各櫛歯21の大きさは同じでもよく、あるいは塗布部12のうちの各部位(中央域12C、前方域12F、後方域12R)に応じて大きさが異なっていてもよい。また場合によっては、塗布部12のうちの各部位に応じて櫛歯21の形状が異なっていてもよい。
【0017】
図2(a)に示すように、塗布部12における塗布部軸20は、櫛歯21の突出する方向に向けて(図2(a)中、上方に向けて)、凸状に緩やかに湾曲している。塗布部軸20の湾曲の頂部は、上述した中央域12Cの位置とほぼ一致している。そして、各櫛歯21は、湾曲した塗布部軸20における上側の面(凸側の面。以下、この面を「基面20A」という。)から上方へ向けて突出している。塗布部軸20がこのように湾曲していることで、マスカラ塗布具10を用い、これを下方から上方へ向けて移動させてまつ毛を梳いたときに、塗布部12がまぶたに沿う状態となるので好ましい。また、マスカラ化粧料を塗布したあと、塗布具10を180度反転させて、塗布部軸20のうち、凹状に湾曲している側をまつ毛に押し当てて、マスカラ化粧料が乾燥するまでの間、副櫛歯部21bでまつ毛を押さえることで、まつ毛のカールアップ効果が期待できる。特に副櫛歯部21bは、突出高さが低いので、まつ毛の押さえつけ効果が高く、かつまつ毛を押さえつけているときに副櫛歯部21bの先端(図2(a)中、各副櫛歯部21bの下側)がまぶたなどに触れないために、まぶたなどをマスカラ化粧料で汚すことがない。
【0018】
本実施形態のマスカラ塗布具10は、櫛歯21の傾斜状態に特徴の一つを有する。詳細には次のとおりである。塗布部12の中央域12Cに位置する2本の櫛歯21Cは、塗布部軸20を横からみたときに、該塗布部軸20の基面20Aに対して略法線方向に延びている。すなわち、櫛歯21Cと基面20Aとは略直交している。これに対して、塗布部12の前方域12Fに位置する櫛歯21Fは、中央域12Cに向けて傾斜している。一方、塗布部12の後方域12Rに位置する櫛歯21Rも、中央域12Cに向けて傾斜している。ここでいう傾斜とは、板状体からなる櫛歯21の板面が、塗布部軸20の基面20Aの法線に対して角度をなしていることをいう。したがって、傾斜の程度が大きいとは、櫛歯21の板面と基面20Aの法線とのなす角度(以後「傾斜角」ともいう)が大きいことをいう。
【0019】
櫛歯21(21C,21F,21R)は、塗布部12の中央域12Cから前方域12F及び後方域12Rそれぞれに向かうにつれ、傾斜の角度が徐々に大きくなっている。つまり櫛歯21は、その配置位置が中央域12Cから先端側及び後端側に向けて離れるにつれて、該櫛歯21の板面が塗布部軸20の基面20Aに近づいていく。櫛歯21がこのように傾斜しているマスカラ塗布具10を用いてまつ毛を梳くことで、まつ毛を放射状にきれいに広げることができる。このことを、図3及び図4を参照しながら説明する。
【0020】
図3に示すように、塗布部12の櫛歯21内に入り込んだ初期時点でのまつ毛EL1は、まつ毛がもともとあった場所の近傍の隣り合う櫛歯21の先端の間に振り分けられる。この状態でのまつ毛EL1の広がりは、図4(a)に示すとおりである。この状態からマスカラ塗布具10を上方に移動させることで、櫛歯21の奥(櫛歯21の根元)に入り込んだまつ毛EL2は、傾斜している櫛歯21に沿って、塗布部軸20の先端方向及び後端方向に移動していく。その結果、初期時点に比較して、まつ毛の間隔が大きくなり、放射状に広げられる。この状態でのまつ毛EL2の広がりは、図4(b)に示すとおりである。塗布部12にはマスカラ化粧料が保持されているから、以上の操作を行うことで、放射状に広がった状態のまつ毛にマスカラ化粧料が塗布されることになる。その結果、ボリューム感のあるきれいな仕上がりのまつ毛となる。まつ毛EL1及びEL2は、1本1本のまつ毛、又は数本のまつ毛が束になった毛束を表している。
【0021】
先に述べたとおり塗布部12の塗布部軸20は、上方へ向けて凸の湾曲形状になっている。したがって、例えば図5に示すように、塗布部軸20を横からみたときに、塗布部12の前方域12Fにおいては、塗布部軸20の基面20Aは、櫛歯21Fの傾斜する方向(図5中、矢印Aで示す方向)と反対方向(図5中、矢印Bで示す方向)に傾斜している。櫛歯21Fと基面20Aとがこのような位置関係になっていることで、マスカラ塗布具10を用い、これを図5中、矢印Cで示す方向に向けて(下方から上方に向けて)移動させ、まつ毛を梳くと、まつ毛は、図5中、櫛歯21Fの板面及び基面20Aに沿って移動する。つまり、同図中、EL1→EL2→EL3という順序で移動する。その結果、まつ毛の梳き始めから梳き終わりの間におけるまつ毛の水平移動量が大きくなり、まつ毛が放射状に広がる効果が一層向上する。この効果は、塗布部12の後方域12Rにおいても同様に奏される。後方域12Rにおいても、基面20Aは、櫛歯21Rの傾斜する方向と反対方向に傾斜しているからである。なお、塗布部12の中央域12Cにおいては、基面20Aと櫛歯21Cとは略直交しているので、まつ毛の梳き始めと梳き終わりとで、まつ毛の広がりの程度に大きな差は生じない。したがって、まつ毛の梳き始めから梳き終わりの間におけるまつ毛の水平移動量は、塗布部12の先端及び後端に近づくほど大きくなる。
【0022】
中央域12Cにおいては、櫛歯21Cの傾斜角はほぼ0°である。前方域12Fにおいては、櫛歯21Fの傾斜角は、図2に示すように、塗布部軸20の先端側に向うにつれて徐々に増していく。一方、後方域12Rにおける櫛歯21の傾斜角は、図2に示すように、塗布部軸20後端側に向うにつれて徐々に増していく。塗布部軸20の先端及び塗布部軸20の後端の櫛歯21の傾斜角は75°以下であることが好ましく、45°以下であることが更に好ましい。塗布部軸20の先端及び塗布部軸20の後端の櫛歯21の傾斜角をこの範囲にすることで、まつ毛と櫛歯との摩擦力による作業性の低下を少なくでき、またまつ毛を最も美しく放射状に広げることができる。塗布部軸20の先端及び後端の櫛歯の傾斜角は、まつ毛を広げる効果の観点から、好ましくは15°以上であり、より好ましくは30°以上である。
【0023】
前方領域F及び後方領域Rにおいては、櫛歯の傾斜角の増分は必ずしも均等である必要はない。例えば、あえて塗布部軸20の先端側あるいは根元側の数本の櫛歯の傾斜角を大きくして放射状の広がり感を強調するなど、マスカラメイクの表現意図によって角度を設定することができる。更に例えば、塗布部軸20の先端側あるいは後端側にいくにつれて、基本的には徐々に角度を増すが、部分的に角度の増分を減少させるか、又は部分的に角度の増分を増加させてもよく、そうすることで放射状に広がったまつ毛に粗密を与えることができ、また違ったまつ毛の表現が可能になる。
【0024】
図5に示す実施形態は、塗布部軸20が湾曲しており、基面20Aが連続面であることを前提としたものであるが、塗布部軸20が直線状である場合にも、基面20Aを、櫛歯21の傾斜する方向と反対方向に傾斜させることができる。例えば、塗布部軸20を直線状となすとともに、図6に示すように、塗布部軸20を横からみたときの縦断面視における基面20Aが、鋸歯状となるように、該基面20Aを形成し、水平線(図示せず)に対して基面20Aの傾斜方向と反対方向に櫛歯21を傾斜させることで、上述した効果と同様の効果を発現させることができる。なお、前記の水平線とは、塗布部軸20が直線状であれば塗布部軸20の軸線と一致する線又は該軸線と平行な線をいい、塗布部軸20が湾曲していれば、塗布部軸20の先端の断面の中心点と後端の断面の中心点とを結んだ直線と一致する線又は該直線と平行な線をいう(以下の説明においても同じ。)。
基面20Aと水平線との角度は特に制限はなく、仕上がりの放射状の形状やマスカラ塗布具10のデザインなどを考慮して決定すればよいが、櫛歯21と水平線のなす角度以下であることを条件としては0°〜90°の範囲内で設定することができ、好ましくは0°〜80°、更に好ましくは0°〜70°とすることができる。基面20Aと水平線との角度は、まつ毛をより広く広げる観点からは小さい方が好ましく、まつ毛をより容易に広げる観点からは大きい方が好ましい。
【0025】
塗布部12においては、櫛歯21の傾斜の程度が大きい部位に位置する櫛歯21ほど、隣り合う櫛歯21の根元間の距離及び先端間の距離が大きくなっている。例えば、図7に示すように、塗布部12の前方域12Fは、中央域12Cよりも櫛歯21の傾斜の程度が大きいところ、前方域12Fに位置する櫛歯21Fにおける根元間の距離Da1と、中央域12Cに位置する櫛歯21Cにおける根元間の距離Da2とを対比すると、Da1の方がDa2よりも大きくなっている。櫛歯の先端に関しては、根元部における距離の差よりも小さくなっており、前方域12Fに位置する櫛歯21Fにおける先端間の距離Db1と、中央域12Cに位置する櫛歯21Cにおける先端間の距離Db2とを対比すると、ほとんど同じになっている。このような関係になっていることで、まつ毛を梳くときに、隣り合う櫛歯21の間に均等にまつ毛が入りやすくなり、まつ毛の梳きを効率的に行うことができる。Db2の具体的な値は0.3mm以上5mm以下が好ましく、0.8mm以上3mm以下がより好ましい。また、Db1とDb2との比Db1/Db2は、0.5以上5以下が好ましく、0.8以上2以下がより好ましい。以上の距離関係及びそれに起因して奏される効果は、中央域12Cと後方域12Rについても同様に適用される。
【0026】
以上の実施形態においては、櫛歯21の傾斜の程度は、櫛歯21の根元から先端までで一定であったが、これに代えて一つの櫛歯21内において、傾斜の程度を異ならせてもよい。例えば図8(a)に示すように、櫛歯21を、塗布部軸20側に位置する下方部211と、下方部211に連接しかつ塗布具軸20から遠い側に位置する上方部212とから構成することができる。下方部211及び上方部212はいずれも同じ方向に傾斜している。この場合には、下方部211の傾斜の程度を、上方部212の傾斜の程度よりも大きくすることが有利である。こうすることによって、隣り合う櫛歯21において櫛歯の根元間の距離を大きく確保しつつ、櫛歯21の先端から根元へ向けてまつ毛を通過させやすくできる。櫛歯の根元間の距離を大きく確保できることは、まつ毛を梳いたときの水平移動量を大きくできるという利点につながる。このような実施形態の櫛歯21は、塗布部12における中央域12C、前方域12F及び後方域12Rのすべての部位に配置されていてもよく、これらの部位のうちの任意の2箇所の部位に配置されていてもよく、あるいはこれらの部位のうちのいずれか1箇所の部位に配置されていてもよい。下方部211の傾斜角は、上方部212の傾斜角よりも大きいことを条件とし、好ましくは0°〜80°、更に好ましくは0°〜70°とすることができ、仕上がりの放射状の形状やマスカラ塗布具10のデザインなどを考慮して決定すればよい。
【0027】
図5に示す実施形態の変形例として、図8(b)に示す実施形態がある。図8(b)に示す実施形態においては、下方部211は基面20A及び水平線Hに対して傾斜しているが、上方部212は水平線Hに対して傾斜していない。つまり、上方部212は水平線Hに対して直交している。本実施形態によれば、マスカラ塗布具を上下に移動する方向と、上方部212の延びる方向とが一致しているので、隣り合う櫛歯21間にまつ毛が一層入りやすくなり、まつ毛が更に移動して斜面に接触して摩擦力を受けても容易に櫛歯間から外れたり、隣の櫛歯へと飛び越えたりすることがなくなり、きれいな放射状のまつ毛に梳くことができる。まつ毛が受ける摩擦力は櫛歯の傾斜角が大きいほど大きくなることから、この実施形態の櫛歯21は、少なくとも前方域12F、又は後方部12Rに配置されていることが、塗布部12の場所によりまつ毛の入り易さの偏りが少なくなる点で好ましい。この実施形態の櫛歯21は、塗布部12全体に配置しても良い。
【0028】
また、前記の各実施形態において櫛歯21の高さは、塗布部12の全域にわたって同じであってもよく、また部分的に異なっていてもよい。例えば、前方域15F及び/又は後方域15Rに位置する櫛歯21の高さをその端に向かうにつれて徐々に低くしてもよい。また、中央域15Cに位置する櫛歯21の高さを他の櫛歯21よりも低くすることによって、中央域15Cに窪みを設けることもできる。更に、適当な幅で、櫛歯21の高さを不ぞろいにすることもできる。
【0029】
塗布部、櫛歯の寸法は目的とする効果のレベルやマスカラ剤の性質によって変わるが、まつ毛全体を放射状に広げる効果の観点から、下記の範囲が好ましい。 塗布部12の全長は15〜40mmであることが好ましく、20〜35mmであることがより好ましい。主櫛歯21aの長さは、まつ毛を2〜20mmが好ましく、3〜12mmがより好ましい。ここで、櫛歯の長さとは、基面20Aから、櫛歯の先端までの長さを、櫛歯に沿って測ったときの長さである。櫛歯21の厚みは0.1〜2mmが好ましく、0.2〜1mmがより好ましい。櫛歯21の数は5〜40本が好ましく8〜30本がより好ましい。
【0030】
マスカラ塗布部10は、熱可塑性樹脂の成形によって製造することができる。また、櫛歯21に関しては、成形によって大まかな形状(例えばディスク状)を形成しておき、その後に切削加工等の後加工によって、所望の形状に形成してもよい。用いることのできる樹脂は、当該技術分野においてこれまで用いられてきた樹脂と同様のものである。
【0031】
図9及び図10には、本発明のマスカラ塗布具の別の実施形態が示されている。本実施形態については、先の実施形態と異なる点について主として説明し、特に説明しない点については、先の実施形態に関する説明が適宜適用される。
【0032】
本実施形態の塗布具10は、塗布部12の前方域12Fの更に前方に、最前方域12FFを有している。最前方域12FF位置する櫛歯21FFは、塗布部12の先端側に位置するものほどその高さが徐々に低くなっている。このようにすることで、最前方域12FFを利用した『部分使い』が行いやすくなり、マスカラ化粧料の細かな塗布や塗布の仕上げを容易に行うことができる。すなわち、塗布部12の前方域12F、中央域12C及び後方域12Rを使ってまつ毛の全体形状を放射状に整えた後、最前方域12FF部分を使って、まつ毛の角度の微調整や、過度に束になったまつ毛のセパレートができる。
【0033】
このことに関連して、最前方域12FFに位置する櫛歯21FFは、中央域12C向きではなく、水平線に対して垂直か、先端向きに傾斜していることが好ましい。このようにすることで、最前方域12FFを利用した部分使いがより行いやすくなる。すなわち、櫛歯21FFは軸先端側に傾いていて、しかも先端に向うにつれて高さが低くなることで、最前方域12FFの櫛歯21FFを、まつ毛列に当てようとすると、自然に軸を傾けることになり、最前方域12FFよりも後端側の櫛歯列が下に下がる。結果、まつ毛を微調整する際、前方域12F、中央域12C及び後方域Rの櫛歯21が他のまつ毛に触れないので、微調整を所望するまつ毛以外のまつ毛を乱すことがない。
【0034】
マスカラ化粧料の細かな塗布を行うことに関連し、図9、10に示すように、塗布部12の先端には、塗布部12の長手方向に延びる錐体突起22が複数形成されていてもよい。錐体突起22の延びる方向と水平線(支持軸11の軸線)とのなす角度は0度であるか、あるいは30度以内の比較的小さい角度である。錐体突起22は、細かい部分、例えば目頭付近及び目尻付近のまつ毛の部分やまつ毛の本数の少ない部分、例えば下まつ毛の部分にマスカラ化粧料を塗布するのに適している。
【0035】
図10(a)に示すように、塗布部12における前方域12Fと最前方域12FFとの境界付近には、主櫛歯部21のみを有する櫛歯21’が配置させることができる。この櫛歯21’は、他の櫛歯21における隣り合う主櫛歯部21aの間の距離を適正に確保するとともに、隣り合う副櫛歯部21bの間の距離を適正に確保することを目的として配置されている。
【0036】
図11には、本発明のマスカラ塗布具の更に別の実施形態が示されている。本実施形態については、先の実施形態と異なる点について主として説明し、特に説明しない点については、先の実施形態に関する説明が適宜適用される。
【0037】
本実施形態の塗布具10は、第1の櫛歯列210及び第2の櫛歯列220の2列の櫛歯列を有している。各櫛歯列は、塗布部軸20の全長にわたって配置されている。各櫛歯列210,220における櫛歯211,221の傾斜の様子は、先に述べた実施形態と同様である。また各櫛歯は、その板面が互いに略平行になるように配置されている。したがって、本実施形態においては、第1の櫛歯列210の櫛歯211及び第2の櫛歯列220の櫛歯221は、その板面が、塗布部軸20の先端側又は後端側に向うにつれてねじれた形状となっている。塗布部軸20の延びる方向と直交する方向において同じ位置にある櫛歯211と櫛歯221との傾斜の程度は同じでもよく、あるいは異なっていてもよい。
【0038】
本実施形態においては、塗布部軸20の軸線からみたとき、第1の櫛歯列210の櫛歯211と、第2の櫛歯列220の櫛歯221とが、略V字をなすように各櫛歯211,221が配列されている。各櫛歯211,221がこのように配列されていることで、2つの櫛歯列210,220間に凹状の窪んだ空間が形成される。この空間にはマスカラ化粧料を多量に保持させることができるので、まつ毛に多量のマスカラ化粧料を塗布することができる。その結果、まつ毛が放射状に広がることと相まって、まつ毛のボリュームアップの効果が一層顕著になる。
【0039】
図11に示すように、塗布部12の先端部においては、そこに配置された複数の先端櫛歯215によって、第1の櫛歯列210と第2の櫛歯列220とが滑らかに連結されている。先端櫛歯215は、塗布部12をその上側(主櫛歯部21aが突出している側)からみたときに、塗布部12の先端部において扇状に(放射状に)配置されている。このような先端櫛歯215を備えることで、先の実施形態の塗布具10における錐体突起22と同様に、細かい部分にマスカラ化粧料を塗布することが容易になる。特に、先端櫛歯215が、第1の櫛歯列210の櫛歯211や第2の櫛歯列220の櫛歯221と同様に、上方に向けて突出していると、該先端櫛歯215を用いたマスカラ化粧料の塗布の際に、まつ毛をすくいあげるように化粧料を塗布することができるという利点がある。また、櫛歯211,221がなす略V字と同様に、先端櫛歯215によって凹状の窪んだ空間が形成され、マスカラ化粧料を多量に保持させることができるので、まつ毛に多量のマスカラ化粧料を塗布することができる。その結果、まつ毛のボリュームアップ効果が一層顕著になる。
【0040】
図11に示すように、第1の櫛歯列210と第2の櫛歯列220との間には、第3の櫛歯列230が配置されている。第3の櫛歯列230も、塗布部軸20の全長にわたって配置されている。第1の櫛歯列210及び第2の櫛歯列220と異なり、第3の櫛歯列230を構成する各櫛歯231は、細長い截頭円錐状又は細長い円柱状をしている。櫛歯231は、塗布部軸20の基面20Aと直交するように突出している。つまり、櫛歯231は基面20Aの法線に対して傾斜していない。したがって、第3の櫛歯列230においては、それを構成する櫛歯231の傾斜の程度が、塗布部軸20の延びる方向と直交する方向で隣接する第1の櫛歯列210の櫛歯211の傾斜の程度及び第2の櫛歯列220の櫛歯221の傾斜の程度と異なっている。この場合、塗布部12の全長にわたって、櫛歯231の傾斜の程度と、櫛歯211及び櫛歯212の傾斜の程度が異なっていることは要せず、塗布部12の長手方向の少なくとも一部の部位において、櫛歯231の傾斜の程度と、櫛歯211及び櫛歯212の傾斜の程度が異なっていればよい。
【0041】
第1の櫛歯列210及び第2の櫛歯列220に加え第3の櫛歯列230を有し、かつ各櫛歯列を構成する櫛歯の傾斜の程度が上述のとおりとなっていることで、本実施形態のマスカラ塗布具10によれば、まつ毛を梳いたときの梳き心地感が向上するという利点がもたらされる。この利点を、図12を参照しながら説明する。
【0042】
本実施形態のマスカラ塗布具10を用いたまつ毛の梳き始めにおいては、図12(a)及び(b)に示すように、まつ毛ELは、3本の櫛歯211,221,231によって蛇行状に絡めとられる。なお図12(a)は、塗布部12を上からみた図であり、図12(b)は、塗布部12を横からみた図である。塗布具10を下方から上方へ向けて移動してまつ毛を梳いていくと、まつ毛ELが櫛歯の根元側へ向けて移動する。この移動によってまつ毛ELと櫛歯との絡みの度合いが大きくなり、まつ毛ELの撓みが大きくなる。その結果、梳きの抵抗の増大を使用者が感じるようになる。梳きの後半のから終了にかけては、3本の櫛歯211,221,231に絡まっていたまつ毛ELが、図12(c)及び(d)に示すように、2本の櫛歯221,231にのみ絡み、最後は1本の櫛歯231のみに絡む。したがって、まつ毛ELと櫛歯との絡みの度合いが次第に小さくなり、梳きの抵抗の低下を使用者が感じるようになる。これ以降更に梳き進めると、まつ毛は傾斜した櫛歯221に従い、まつ毛全体としては開いた放射状に梳かれることになる。このように、本実施形態のマスカラ塗布具10を用いてまつ毛を梳くと、梳きの抵抗感の増大及びそれに続く抵抗感の低下の差が非常に顕著なので、例えばまつ毛の本数が少ない、あるいはまつ毛が短い使用者においてもその差を使用者が知覚しやすく、満足な梳き心地を使用者に与えることができる。
【0043】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記の各実施形態においては、塗布部12の塗布部軸20が、上方に向けて凸状に湾曲していたが、これに代えて塗布部軸20は略直線状でもよい。
【0044】
また、図1に示す実施形態のマスカラ塗布具10においては、櫛歯21の主櫛歯部21aは、略三角形の板状であったが、これに代えて、柱状や錐状、截頭錐状の櫛歯を用いてもよい。
【0045】
また、図11に示す実施形態のマスカラ塗布具10においては、第3の櫛歯列230を構成する櫛歯231が、基面20Aの法線に対して傾斜していなかったが、これに代えて、傾斜の程度が異なることを条件として、櫛歯231を、第1の櫛歯列210や第2の櫛歯列220を構成する櫛歯211,221と同様の態様で傾斜させてもよい。
【0046】
また、当業者の通常の知識の範囲内で、上述の各実施形態を適宜組み合わせて新たな実施形態とすることができる。例えば、図9に示す実施形態のマスカラ塗布具10における錐体突起22を、図11に示す実施形態のマスカラ塗布具10における先端櫛歯215の代わりに用いてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10 マスカラ塗布具
11 支持軸
12 塗布部
12C 中央域
12F 前方域
12R 後方域
12FF 最前方域
20 塗布部軸
21 櫛歯
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスカラ化粧料を塗布する塗布部が、塗布部軸と該塗布部軸に沿って配列された複数の櫛歯からなる櫛歯列とを有し、
塗布部軸を横からみたときに、塗布部の長手方向前方域及び後方域それぞれに位置する櫛歯が、長手方向中央域に向けて傾斜しているとともに、中央域から前方域及び後方域それぞれに向かうにつれ、櫛歯の傾斜の程度が徐々に大きくなっているマスカラ塗布具。
【請求項2】
塗布部軸が、略直線であるか又は前記櫛歯の突出する方向に向けて凸状に湾曲している請求項1記載のマスカラ塗布具。
【請求項3】
塗布部のうち、櫛歯の傾斜の程度が大きい部位に位置する櫛歯ほど、隣り合う櫛歯の根元間の距離が大きくなっている請求項1又は2記載のマスカラ塗布具。
【請求項4】
櫛歯が、塗布部軸側に位置する下方部と、下方部に連接しかつ塗布具軸から遠い側に位置する上方部とからなり、下方部の傾斜の程度が、上方部の傾斜の程度よりも大きくなっている請求項1ないし3のいずれかに記載のマスカラ塗布具。
【請求項5】
櫛歯列が、第1の櫛歯列及び第2の櫛歯列を有し、
塗布部軸の軸線からみたとき、第1の櫛歯列の櫛歯と第2の櫛歯列の櫛歯とが略V字をなすように、各櫛歯が配列されている請求項1ないし4のいずれかに記載のマスカラ塗布具。
【請求項6】
塗布部の先端部において、扇状に配置された複数の先端櫛歯によって、第1の櫛歯列と第2の櫛歯列とが滑らかに連結されている請求項5記載のマスカラ塗布具。
【請求項7】
第1の櫛歯列と第2の櫛歯列との間に第3の櫛歯列を有し、第3の櫛歯列における櫛歯の傾斜の程度が、塗布部軸の延びる方向と直交する方向で隣接する第1の櫛歯列の櫛歯の傾斜の程度及び第2の櫛歯列の櫛歯の傾斜の程度と異なっている請求項5記載のマスカラ塗布具。
【請求項1】
マスカラ化粧料を塗布する塗布部が、塗布部軸と該塗布部軸に沿って配列された複数の櫛歯からなる櫛歯列とを有し、
塗布部軸を横からみたときに、塗布部の長手方向前方域及び後方域それぞれに位置する櫛歯が、長手方向中央域に向けて傾斜しているとともに、中央域から前方域及び後方域それぞれに向かうにつれ、櫛歯の傾斜の程度が徐々に大きくなっているマスカラ塗布具。
【請求項2】
塗布部軸が、略直線であるか又は前記櫛歯の突出する方向に向けて凸状に湾曲している請求項1記載のマスカラ塗布具。
【請求項3】
塗布部のうち、櫛歯の傾斜の程度が大きい部位に位置する櫛歯ほど、隣り合う櫛歯の根元間の距離が大きくなっている請求項1又は2記載のマスカラ塗布具。
【請求項4】
櫛歯が、塗布部軸側に位置する下方部と、下方部に連接しかつ塗布具軸から遠い側に位置する上方部とからなり、下方部の傾斜の程度が、上方部の傾斜の程度よりも大きくなっている請求項1ないし3のいずれかに記載のマスカラ塗布具。
【請求項5】
櫛歯列が、第1の櫛歯列及び第2の櫛歯列を有し、
塗布部軸の軸線からみたとき、第1の櫛歯列の櫛歯と第2の櫛歯列の櫛歯とが略V字をなすように、各櫛歯が配列されている請求項1ないし4のいずれかに記載のマスカラ塗布具。
【請求項6】
塗布部の先端部において、扇状に配置された複数の先端櫛歯によって、第1の櫛歯列と第2の櫛歯列とが滑らかに連結されている請求項5記載のマスカラ塗布具。
【請求項7】
第1の櫛歯列と第2の櫛歯列との間に第3の櫛歯列を有し、第3の櫛歯列における櫛歯の傾斜の程度が、塗布部軸の延びる方向と直交する方向で隣接する第1の櫛歯列の櫛歯の傾斜の程度及び第2の櫛歯列の櫛歯の傾斜の程度と異なっている請求項5記載のマスカラ塗布具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−135563(P2012−135563A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291586(P2010−291586)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
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