説明

マスカラ塗布具

【課題】まつ毛を加熱しながら整形でき、あるいはマスカラ液を加熱した状態で塗布でき、全体としてまつ毛の化粧を短時間で行なえるマスカラ塗布具を提供する。
【解決手段】マスカラ液を収容する容器1と、容器1に対して着脱される塗布体2と、塗布体2に対して着脱される整形体3とを備えている。塗布体2は、容器1の内部に差し込まれる中空軸状の塗布ロッド11と、塗布ロッド11の端部に設けられる塗布部12とを備えている。整形体3は、まつ毛をヒーター29の熱で加熱しながら整形する加熱整形部22を備えている。整形体3を塗布体2に装着した状態において、整形体3の整形ロッド21と加熱整形部22を塗布体2の塗布ロッド11の内部に収納して、塗布部12を加熱整形部22で加熱できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスカラ容器と、マスカラ液の塗布体と、まつ毛整形体を備えているマスカラ塗布具に関する。まつ毛整形体は、マスカラ液が塗布される前のまつ毛を、加熱しながらカールすることができる。
【背景技術】
【0002】
本発明のマスカラ塗布具に関して、特許文献1の塗布器具が公知である。そこでは、マスカラ液を収容する容器およびキャップと、塗布ヘッドを備えた塗布具と、塗布ヘッドを加熱する加熱装置などで塗布器具を構成している。摘みを兼ねるキャップの内部には、加熱装置の電源となる電池が配置してあり、キャップと一体化された塗布具の塗布ヘッドの内部には、抵抗加熱素子が配置してある。容器にねじ込まれたキャップを容器から取外すと、給電用の回路が閉じられて抵抗加熱素子を発熱させることができ、この熱で塗布ヘッドの基部表面に付着したマスカラ液を加熱して均一に拡散し流動させた状態でまつ毛に塗布できる。
【0003】
同様に、発熱体を備えたマスカラパッケージが特許文献2に開示されている。そこでは、スカラ液を収容する容器および取っ手(キャップ)と、取っ手の下部に突出されるブラシ棒と、ブラシ棒の下部に設けた発熱塗布部と、取っ手の内部に収容した電池などでマスカラパッケージを構成している。取っ手の外面にはスイッチノブが設けてあり、このノブをオン操作することにより発熱体に通電して発熱塗布部を加熱し、発熱塗布部の外面のブリッスルに付着したマスカラ液を加熱された状態でまつ毛に塗布できる。さらに、発熱塗布部を容器内に収容した状態のままで、スイッチノブをオン操作することにより、低温のマスカラ液を加熱してその粘度を低下させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−212688号公報(段落番号0031〜0032、図2)
【特許文献2】特表2009−532083号公報(段落番号0033、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のマスカラ塗布具によれば、キャップを容器から取外す動作に連動して抵抗加熱素子を発熱させ、塗布ヘッドに付着したマスカラ液を加熱し均一に拡散し流動させた状態でまつ毛に塗布できる。しかし、特許文献1のマスカラ塗布具は、マスカラ液をまつ毛に塗布する機能を備えているに過ぎない。そのため、前段のまつ毛をカールする作業と、後段のまつ毛に付着したダマ(マスカラ塊)を除去する作業を行う際に、別途まつ毛整形具とマスカラコームを用意する必要があり、一連の作業が煩雑で化粧に多くの手間が掛かってしまう。
【0006】
その点、特許文献2のマスカラ塗布具は、発熱塗布部にまつ毛をカールする櫛と、マスカラ液を塗布するブラシとが設けてあるので、一連の作業を少ない手間で行うことができる。しかし、まつ毛をカールするための櫛がブラシと共に、容器内のマスカラ液に浸漬されるため、まつ毛をカールする際には、櫛に付着したマスカラ液を除去する必要があり、余分な手間が掛かる。マスカラ液が無駄に消費される不利もある。
【0007】
また、特許文献2のマスカラ塗布具は、発熱塗布部の温度を高い温度に設定しておくことにより、まつ毛を櫛で好適にカールできる。しかし、まつ毛のカールに適した温度でマスカラ液を加熱すると、マスカラ液が過度に加熱されて劣化し、あるいは溶剤が蒸散するなどの不具合を生じる。逆に、発熱塗布部の温度を低い温度に設定しておくと、マスカラ液の劣化を防ぎながらその粘度を低下できるが、まつ毛を充分に加熱することができないので、まつ毛のカールに多くの手間と時間が掛かる。こうした不具合は、まつ毛のカールに適した温度と、マスカラ液の粘度を低下させるのに好適な温度とに大きな開きがあるからである。また、発熱塗布部の熱で櫛、およびマスカラ液を直接的に加熱することも一因となっている。
【0008】
本発明の目的は、まつ毛の整形およびカールを行う整形体と、マスカラ液を塗布する塗布体とを備えていて、まつ毛を適温に加熱しながら整形でき、あるいはマスカラ液を適温に加熱して劣化を防ぎながら粘度を低下できるマスカラ塗布具を提供することにある。
本発明の目的は、まつ毛を化粧する過程で、まつ毛の整形およびカール作業と、マスカラ液の塗布とをより少ない手間で連続して行なうことができる、多機能化されたマスカラ塗布具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のマスカラ塗布具は、図1に示すように、マスカラ液を収容する容器1と、容器1に対して着脱される塗布体2と、塗布体2に対して着脱される整形体3とを備えている。塗布体2は、容器1の内部に差し込まれる中空軸状の塗布ロッド11と、塗布ロッド11の端部に設けられる塗布部12とを備えている。整形体3は、まつ毛をヒーター29の熱で加熱しながら整形する加熱整形部22を備えている。整形体3を塗布体2に装着した状態において、整形体3の加熱整形部22が塗布体2の塗布ロッド11の内部に収納してあることを特徴とする。
【0010】
塗布体2に、容器1の出入口4に着脱される塗布グリップ10を設ける。整形体3に、塗布グリップ10に着脱される整形グリップ20を設ける。容器1に塗布体2を装着し、塗布体2に整形体3を装着した状態において、塗布グリップ10の周面と、整形グリップ20の周面とを連続させる。
【0011】
整形体3は、整形ロッド21と、整形ロッド21の突端部に設けられる加熱整形部22とを備えている。図3に示すように、整形体3を塗布体2に装着した状態において、整形体3の整形ロッド21が塗布ロッド11に差込まれて、加熱整形部22が塗布体2の塗布部12の内部に収納されるようにする。
【0012】
容器1と、塗布体2と、整形体3のそれぞれの断面形状と直径が略同一に形成され、記載した順番で隣接するように直線状に配置する。
【0013】
整形グリップ20の上下長さを、塗布グリップ10の上下長さより大きく設定して、整形体3を塗布体2に装着した状態において、塗布グリップ10および整形グリップ20の複数箇所を手指で支えることができるようにする。
【0014】
整形体3を塗布体2に装着した状態において、整形グリップ20を塗布グリップ10の内部に収納する(図9参照)。
【発明の効果】
【0015】
本発明においては、容器1、塗布体2、および整形体3でマスカラ塗布具を構成し、整形体3を塗布体2に装着した状態において、整形体3の加熱整形部22が塗布体2の塗布ロッド11の内部に収納されるようにした。このように、塗布体2と整形体3を備えたマスカラ塗布具によれば、整形体3を塗布体2から分離することにより、整形体3の加熱整形部22でまつ毛を加熱しながら整形することができる。また、加熱整形部22を塗布体2の塗布ロッド11の内部に収納した状態で使用することにより、塗布部12に含ませたマスカラ液をまつ毛に塗布できる。さらに、環境温度が低い場合には、加熱整形部22を加熱して、その熱で塗布部12に含ませたマスカラ液を加熱した状態で塗布することができるので、マスカラ液を効果的に塗布できる。加えて、塗布部12および加熱整形部22を容器1内に収容した状態で、加熱整形部22を加熱することにより、マスカラ液を塗布部12を介して間接的に加熱できるので、マスカラ液が過度に加熱されて劣化するのを防ぎながら、その粘度を低下できる。
【0016】
塗布体2を利用して不使用状態の整形体3を収納するので、整形体3が他の化粧用具に紛れ込んだり、紛失するのをよく防止できるうえ、整形体3に設けた加熱整形部22を塗布ロッド11で保護できる利点もある。さらに、色や性質が異なるマスカラ液を収容する複数の容器1および塗布体2を用意しておけば、整形体3を個々の塗布体2に差換えて使用することにより、複数種のマスカラ液をそれぞれ加熱した状態で塗布できる。
【0017】
塗布体2に塗布グリップ10を設け、整形体3に整形グリップ20を設けると、塗布グリップ10を持った状態でマスカラ液を塗布でき、さらに、整形グリップ20を持ってまつ毛の整形を行なうことができる。また、塗布体2と整形体3を一体化した状態では、両グリップ10・20を持った状態で塗布体2を使用してマスカラ液を塗布できる。このように、ユーザーは各グリップ10・20を好みの状態にして、塗布体2によるマスカラ液の塗布と、整形体3によるまつ毛の整形とを行えるので、マスカラ塗布具の使い勝手を向上できる。さらに、塗布体2と整形体3を一体化した状態において、塗布グリップ10と整形グリップ20の周面を連続させると、両グリップ10・20の一体感を強調することができ、従って、マスカラ塗布具の全体の印象をシンプルなものとして、高級感を醸すことができる。
【0018】
整形体3に整形ロッド21と加熱整形部22を設け、整形体3を塗布体2に装着した状態において、図3に示すように、加熱整形部22を塗布体2の塗布部12の内部に収納すると、加熱整形部22の熱を効率よく塗布部12へ伝導することができる。これにより、塗布部12に保持されたマスカラ液を効果的に加熱して、均一に拡散し流動させた状態のマスカラ液をまつ毛にむらなく的確に塗布できる。
【0019】
容器1と、塗布体2と、整形体3のそれぞれの断面形状と直径を略同一にし、記載した順番で隣接するように直線状に配置すると、鉛筆を片手で持つのと同様の握り方で塗布体2および整形体3を支持して、マスカラ液の塗布を行なうことができる。つまり、塗布部12を安定した状態で保持してマスカラ液の塗布を簡便に行なうことができる。また、容器1、塗布体2、整形体3の三者を、記載した順番で隣接するように直線状に配置するので、マスカラ塗布具の全体の印象をさらにシンプルで細身な印象にして高級感を醸すことができる。
【0020】
整形グリップ20の上下長さを、塗布グリップ10の上下長さより大きく設定したマスカラ塗布具によれば、整形体3を取外して塗布グリップ10を摘んだ状態で、マスカラ液の塗布を軽快に行なうことができる。さらに、整形体3を塗布体2に装着して、塗布グリップ10および整形グリップ20の複数箇所を手指で支えた状態、つまり鉛筆を片手で持つのと同様に握って、マスカラ液の塗布を安定した状態で行なうことができる。
【0021】
整形体3を塗布体2に装着した状態において、整形グリップ20を塗布グリップ10の内部に収納すると、整形グリップ20の長さ分だけマスカラ塗布具の全長を小さくし、コンパクト化できる。また、外観を丸棒状のシンプルなものとしながら、その縦横の寸法差を小さくしてデザイン性を向上できる。さらに、整形グリップ20の内部に収容される電池33を塗布グリップ10で保護できるので、マスカラ塗布具の耐久性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るマスカラ塗布具の分解正面図である。
【図2】本発明に係るマスカラ塗布具の正面図である。
【図3】塗布部および加熱整形部の詳細を示す縦断面図である。
【図4】図3におけるA−A線断面図である。
【図5】図3におけるB−B線断面図である。
【図6】マスカラ塗布具の使用例を示す説明図である。
【図7】まつ毛の整形状況、およびマスカラ液の塗布状況を示す説明図である。
【図8】本発明に係るマスカラ塗布具の別実施例を示す分解断面図である。
【図9】本発明に係るマスカラ塗布具の別実施例を示す分解正面図である。
【図10】本発明に係る整形体の別実施例を示す断面図である。
【図11】本発明に係るマスカラ塗布具の別実施例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施例) 図1ないし図7は本発明に係るマスカラ塗布具の実施例を示す。図1および図2においてマスカラ塗布具は、マスカラ液を収容する容器1と、容器1に対して着脱される塗布体2と、塗布体2に対して着脱される整形体3とで構成する。容器1は円筒状に形成してあり、その上端に塗布体2の出入口4が開口してある。出入口4の周面にはねじ軸5が形成してあり、出入口4の内面には余分に付着したマスカラ液をしごき落とすワイパー6が設けてある。ワイパー6は、ゴムまたはプラスチック材で形成した筒体からなり、その底壁にしごき開口7が形成してある。
【0024】
塗布体2は、容器1の出入口4に着脱される円筒状の塗布グリップ10と、容器1の内部に差し込まれる中空軸状の塗布ロッド11と、塗布ロッド11の下端部に設けられる塗布部12とで構成する。塗布グリップ10の内部は、隔壁13で下区画14と上区画15とに区分されており、下区画14の内周には、先のねじ軸5に対応するねじ穴16が形成してある。上区画15の内周にも同様のねじ穴17が形成してある。図3および図4に示すように、塗布部12はブリッスル束18の一群を、塗布ロッド11の周囲に放射状に植設して構成してあり、ブリッスル束18を構成するブリッスルの隙間、あるいはブリッスル束18の基端部の間にマスカラ液を保持することができる。
【0025】
整形体3は、円筒状の整形グリップ20と、整形グリップ20の下端から下向きに突出する中空の整形ロッド21と、整形ロッド21の下端(突端)に設けられる加熱整形部22などで構成する。整形グリップ20は、円筒状のグリップ本体23と、グリップ本体23の上端の開口を開閉するキャップ24とで構成してあり、グリップ本体23の下端に先のねじ穴17に対応するねじ軸25が形成してある。キャップ24はグリップ本体23にねじ込み装着してある。
【0026】
図3において加熱整形部22は、多段状に配置した一群の部分円弧状の櫛歯28で構成されており、その内部にヒーター29が配置してある。ヒーター29は加熱整形部22の内部の下端でU字状に折返される1本のヒーター線で構成してあり、このヒーター線は、絶縁材で形成したヒーター支持軸30の周囲にニクロム線31を螺旋状に巻付けて構成してある(図4参照)。各櫛歯28の間には、まつ毛をカールさせるためのカール面32が形成してある。先のヒーター29の一部は、カール面32の間で露出しており、従って、まつ毛を加熱整形部22でカールするとき、まつ毛をヒーター29に接触させることができる。グリップ本体23の内部には、ヒーター29の電源となる電池33が収容してあり、グリップ本体23の周面にはヒーター29への通電状態をオン・オフするスイッチノブ34が設けてある。キャップ24をグリップ本体23から取外すことにより、電池33を交換することができる。
【0027】
塗布体2の塗布ロッド11を出入口4から容器1の内部に差込み、その塗布グリップ10に設けたねじ穴16をねじ軸5にねじ込むことにより、出入口4を塗布体2で塞いで容器1を密封できる。この状態の塗布部12と塗布ロッド11の大半の部分は、容器に収容したマスカラ液に浸漬している。また、整形体3の加熱整形部22および整形ロッド21を、上区画15から塗布ロッド11の内部に差込み、グリップ本体23に設けたねじ軸25を塗布グリップ10に設けたねじ穴17にねじ込むことにより、整形体3を塗布体2と一体化することができる。
【0028】
上記のように、容器1と塗布体2と整形体3を一体化した状態において、マスカラ塗布具の外観上の印象をシンプルなものとするために、容器1と、塗布体2と、整形体3のそれぞれの断面形状と直径を同一に形成している(図5参照)。さらに、容器1と、塗布体2と、整形体3を、下から記載した順番で隣接するように直線状に配置している。ねじ軸5を除く容器1の上下長さは、ねじ軸25を除く整形グリップ20の上下長さと略同じであり、塗布グリップ10の上下長さは、ねじ軸5を除く容器1の上下長さの3分の1である。
【0029】
容器1と塗布体2と整形体3を一体化した状態の加熱整形部22は、図3に示すように、整形ロッド21とともに塗布ロッド11内に収容されて塗布部12の内部に位置している。従って、スイッチノブ34をオン操作すると、ヒーター29を発熱させて加熱整形部22を加熱し、さらに加熱整形部22の熱を塗布ロッド11の筒壁を介して塗布部12へ伝導することができる。発熱状態における加熱整形部22の温度は約70℃であり、塗布部12における塗布ロッド11の周面の温度は40〜50℃である。塗布部12を容器1内に装填した状態でヒーター29を発熱させると、固化しかけた状態のマスカラ液を加熱して40℃前後に温めることができる。
【0030】
上記のように構成したマスカラ塗布具は、まつ毛を整形しカールする作業と、マスカラ液を塗布する作業を行う際に使用することができる。まつ毛を整形しカールする際には、図7(a)に示すように、整形体3を塗布体2から取外して、加熱整形部22を露出させ、その状態でスイッチノブ34をオン操作してヒーター29を発熱させる。次に、櫛歯28が上向きになる状態で整形ロッド21を水平に支持し、まつ毛の湾曲中央部を櫛歯28で梳き分けながらカール面32をまつ毛にあてがう。この状態で、まつ毛をヒーター29で加熱しながら上向きにすくい上げ、さらにカール面32を眉毛の側へ回転させてまつ毛をカールさせる。この状態を保持してカール部分をヒーター29で加熱しながら、加熱整形部22の全体を上向きに押し上げることにより、まつ毛を毛先部分まで確実にカールすることができる。同様にして、目頭側および目尻側のまつ毛を加熱整形部22でカールすることができる。なお、まつ毛をカールさせるときは、捕捉したまつ毛がカール面32に沿って横移動するのを櫛歯28で規制でき、従って、隣接する櫛歯28で捕捉したまつ毛の一群を適正にカールできる。この場合に、整形体3を容器側から取外しても、塗布体2が容器1に取付けてあれば、マスカラ液がこぼれることはない。
【0031】
まつ毛の整形およびカール作業が終わったら、塗布体2を使用してマスカラ液を塗布する。このとき、環境温度が低い場合には、図7(b)に示すように、塗布体2の内部に整形体3を装填して、スイッチノブ34をオン操作し、ヒーター29を発熱させた状態で塗布作業を行なうことにより、塗布部12を加熱整形部22で加熱することができる。従って、塗布部12に付着したマスカラ液の温度を上げて、均一に拡散し流動した状態のマスカラ液を塗布できる。なお、環境温度が高い場合には、スイッチノブ34をオン操作する必要はない。また、整形体3を塗布体2と一体化した状態では、図6に示すように、塗布グリップ10と整形グリップ20を、鉛筆を握り締めるようにして持つことができるので、塗布部12を安定した状態で保持してマスカラ液の塗布を簡便に行なうことができる。
【0032】
最後にマスカラコームを使用して、まつ毛を数回梳き流すことにより、まつ毛のカール形状を整えることができる。なお、上述したように、塗布部12を加熱する必要がない場合には、スイッチノブ34をオフ操作しておく。あるいは、整形体3を塗布体2から分離した状態のままで、塗布グリップ10を摘んでマスカラ液を塗布することができ、その場合には、塗布グリップ10の摘み姿勢や傾きを自由に変更できる。例えば、先端のブリッスル束18の毛先を使って目頭や目尻に位置する短いまつ毛にマスカラ液を塗布し、あるいは塗布したマスカラ液の塗布状態を整えることができる。このように、ユーザーは各グリップ10・20を好みの状態にして、塗布体2によるマスカラ液の塗布と、整形体3によるまつ毛の整形とを行えるので、マスカラ塗布具の使い勝手を向上できる。
【0033】
以上のように、マスカラ液を塗布する塗布体2の内部にまつ毛の整形を行う整形体3を配置し、整形体3に設けた加熱整形部22をヒーター29で加熱すると、発熱塗布部22をまつ毛の整形に適した温度状態にして、まつ毛のカールを好適に行える。さらに、塗布部12および加熱整形部22を容器1内に収容した状態においては、マスカラ液および塗布部12を、加熱整形部22から伝導される熱で間接的に加熱できるので、塗布部12の温度が不必要に高くなるのを防止でき、従って、マスカラ液が過度に加熱されて劣化するのを防ぎながら、その粘度を低下できる。このように、塗布体2の内部に整形体3を配置するマスカラ塗布具によれば、まつ毛を適温に加熱しながら整形してカールでき、あるいはマスカラ液を適温に加熱して劣化を防ぎながら粘度を低下できることとなる。
【0034】
図8から図11にマスカラ塗布具の別実施例を示す。なお、これらの別実施例においては、上記の実施例と異なる部分を主に説明し、上記の実施例と同じ部材には同じ符号を付してその説明を省略する。図8に示すマスカラ塗布具は、塗布ロッド11の下端に一群の櫛歯38を一体に成形して塗布部12とした。櫛歯38の直線列は、塗布ロッド11の対向周面の二個所に配置した。また、塗布グリップ10の上区画15にねじ穴の代わりに圧嵌溝39を周回状に形成し、整形グリップ20のねじ軸の代わりに圧嵌リブ40を周回状に形成した。この実施例では、整形体3を塗布体2に装着した状態において、圧嵌リブ40が圧嵌溝39に係合して、整形体3の装着状態を維持できる。
【0035】
図9に示すマスカラ塗布具は、塗布体2の塗布グリップ10の上区画15を、整形体3の整形グリップ20よりひとまわり大きく形成して、整形体3を塗布体2に装着した状態において、整形グリップ20を上区画15の内部に収納できるようにした。また、整形体3の取出しを容易に行なうために、キャップ24の周面の対向位置に一対の摘み片43を膨出する状態で形成した。整形体3を塗布体2に装着した状態においては、摘み片43が上区画15の上端周面の2個所に形成した溝44から露出するので、一対の摘み片43を親指と人差し指で摘んで整形体3を塗布体2から取出すことができる。スイッチノブ34はキャップ24の上端面に配置した。なお、整形体3を塗布体2に装着した状態において、整形グリップ20を上区画15の内面に軽く圧嵌させることにより、整形体3の装着状態を維持することができる。
【0036】
図10に示すマスカラ塗布具においては、ヒートパイプやアルミニウムで形成した丸軸状の伝熱軸46と、伝熱軸46の外面を覆う断熱性を有するプラスチック製の被覆体47とで整形ロッド21を構成し、被覆体47から露出する伝熱軸46の下部に加熱整形部22を設けた。また、整形グリップ20の内部にPTCヒーター(ヒーター)29を配置して、伝熱軸46の上端に設けた受熱部48をPTCヒーター29に密着させるようにした。さらに、伝熱軸46に周回状の溝の一群を形成して、溝の間に形成される多段状の櫛歯28で加熱整形部22を構成した。このように、加熱整形部22は、ヒーター29から伝熱軸46を介して間接的に伝導される熱で加熱することができる。
【0037】
図11に示すマスカラ塗布具においては、容器1、塗布体2の塗布グリップ10、および整形体3の整形グリップ20の外面の断面を、各辺部が外膨らみ状の正方形となるようにした。このように容器1、塗布グリップ10、および整形グリップ20の断面形状は、楕円、長円、多角形、ハート形など任意形状を選定することができる。また、塗布グリップ10と整形グリップ20とは、両者が結合できるものでありさえすれば、両者の外形の違いや、外形の太さの違いとは無関係に自由に選定できる。
【0038】
上記の実施例以外に、整形体3を塗布体2に装着した状態の加熱整形部22は、塗布ロッド11の内部で塗布部12の近傍に位置する状態で配置することができる。塗布部12は、ブリッスル束18と櫛歯38とが混在する状態で形成することができる。整形グリップ20の外面には、ヒーター29が通電状態にあるとき点灯する表示灯や、電池33の起電力が所定値以下になった場合に点灯する表示灯などを設けることができる。また、電池33を2次電池で構成して充電式のマスカラ塗布具とすることができる。とくに、2次電池と充電のための接点を整形グリップ20に配置しておくと、整形体3を塗布体2から取外した状態で充電できるので、容器1内のマスカラ液にとって好ましくない高温環境あるいは低温環境などの環境であっても、容器1およびマスカラ液を好ましくない環境に晒すこともなく2次電池を充電できる。この場合の容器1は塗布体2で封止されているので、マスカラ液が流出することはない。
【0039】
なお、図1に示す実施例では、塗布体2の塗布部12と、整形体3の加熱整形部22とは、内外に対向できるように各ロッド11・21の長さを設定したが、環境温度が高く、マスカラ液の予備加熱を必要としない場合には、整形ロッド21の長さを短くすることができ、これに伴い、整形ロッド21によるヒーター29の熱拡散を抑制することができる。また、整形ロッド21は、ヒーター29に電力を供給できる構造であることを満足できる限り、熱伝導性の低い素材や形状であることが好ましく、例えば、ポリプロピレン、ABS、フッ化ビニリデン、軟質PVC、ポリスチレン、アクリルスチロールなどを適用できる。さらに、整形ロッド21は発泡成形品、なかでも独立発泡成形品で形成することが好ましい。
【0040】
塗布ロッド11および整形ロッド21の断面形状は、楕円状や多角形状であってもよい。また、塗布ロッド11は、マスカラ液が固着しにくいシリコン、フッ素、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの撥水性が高く、柔軟な樹脂チューブで形成することができる。その場合には、柔軟性を有する塗布ロッド11の内部に、塗布ロッド11より剛性が大きく硬い整形ロッド21を挿入することで、塗布ロッド11の外形を軸方向に沿って直線状に矯正できるので、使用上支障は生じない。
【符号の説明】
【0041】
1 容器
2 塗布体
3 整形体
4 出入口
10 塗布グリップ
11 塗布ロッド
12 塗布部
20 整形グリップ
21 整形ロッド
22 加熱整形部
29 ヒーター
33 電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスカラ液を収容する容器(1)と、容器(1)に対して着脱される塗布体(2)と、塗布体(2)に対して着脱される整形体(3)とを備えており、
塗布体(2)は、容器(1)の内部に差し込まれる中空軸状の塗布ロッド(11)と、塗布ロッド(11)の端部に設けられる塗布部(12)とを備えており、
整形体(3)は、まつ毛をヒーター(29)の熱で加熱しながら整形する加熱整形部(22)を備えており、
整形体(3)を塗布体(2)に装着した状態において、整形体(3)の加熱整形部(22)が塗布体(2)の塗布ロッド(11)の内部に収納してあることを特徴とするマスカラ塗布具。
【請求項2】
塗布体(2)に、容器(1)の出入口(4)に着脱される塗布グリップ(10)が設けられており、
整形体(3)に、塗布グリップ(10)に着脱される整形グリップ(20)が設けられており、
容器(1)に塗布体(2)を装着し、塗布体(2)に整形体(3)を装着した状態において、塗布グリップ(10)の周面と、整形グリップ(20)の周面とが連続している請求項1に記載のマスカラ塗布具。
【請求項3】
整形体(3)が、整形ロッド(21)と、整形ロッド(21)の突端に設けられる加熱整形部(22)とを備えており、
整形体(3)を塗布体(2)に装着した状態において、整形体(3)の整形ロッド(21)が塗布ロッド(11)に差込まれて、加熱整形部(22)が塗布体(2)の塗布部(12)の内部に収納されている請求項1または2に記載のマスカラ塗布具。
【請求項4】
容器(1)と、塗布体(2)と、整形体(3)のそれぞれの断面形状と直径が略同一に形成され、記載した順番で隣接するように直線状に配置してある請求項2または3に記載のマスカラ塗布具。
【請求項5】
整形グリップ(20)の上下長さが、塗布グリップ(10)の上下長さより大きく設定されており、
整形体(3)を塗布体(2)に装着した状態において、塗布グリップ(10)および整形グリップ(20)の複数箇所を手指で支えることができる請求項2、3または4のいずれかひとつに記載のマスカラ塗布具。
【請求項6】
整形体(3)を塗布体(2)に装着した状態において、整形グリップ(20)が塗布グリップ(10)の内部に収納してある請求項1または3に記載のマスカラ塗布具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−217597(P2012−217597A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85938(P2011−85938)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)