説明

マゼンタトナー及びその製造方法

【課題】着色剤の分散性が良く、分光特性に優れたマゼンタトナーを提供することを目的とする。
【解決手段】少なくとも、結着樹脂、一般式(1)で表される化合物及び着色剤を含有するマゼンタトナー粒子を有するマゼンタトナーであって、着色剤として、キナクリドン骨格を有する顔料を含有することを特徴とする。


[一般式(1)中、R1及びR2は、各々独立して、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、磁気記録法、トナージェット法、液体現像法などの記録方法に用いられるマゼンタトナー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カラー画像の普及が盛んであり高画質化への要求が高まっている。デジタルフルカラー複写機やプリンターにおいては、色画像原稿をブルー、グリーン、レッドの各色フィルターで色分解した後、オリジナル画像に対応した潜像をそれぞれの補色となるイエロー、マゼンタ、シアンの各色現像剤、およびブラックの現像剤を用い現像する。そのため、各色の現像剤中の着色剤が画質、特に色調や透明性、色再現性に大きな影響を与えることになる。カラートナーの中におけるマゼンタトナーは、肌色を再現するのに重要であり、さらに、人物像における肌の色調はハーフトーンであることから、優れた現像性も要求される。こうした要求に対して、従来、マゼンタトナー用着色剤としてはキナクリドン系着色剤、チオインジゴ系着色剤、キサンテン系着色剤、モノアゾ系着色剤、ペリレン系着色剤及びジケトピロロピロール系着色剤が知られている。
【0003】
一般に、マゼンタの着色剤に顔料を用いる場合、耐光性は高いものの、色調や透明性においては十分なものではないという課題がある。これらを向上させる目的で顔料を各種媒体中に微分散させることが望まれるが、トナー製造プロセスを経て製造されたトナー中で顔料を十分に微細化させることや、顔料を均一に分散させることが困難である。
【0004】
一方、マゼンタの着色剤に染料を用いる場合、初期には鮮やかなマゼンタ色を呈するものの、光に対する安定性が低く、環境光下での放置後の色味変動が大きくなる傾向にある。また、淡色では、明度の高い鮮明な画像が得られるが、濃色の領域において、十分な画像濃度が得にくく、特に、混色し、濃色の赤及び青を再現する場合、発色範囲が狭くなりやすい。キサンテン系着色剤は良好な色再現性の色調に優れた着色剤であるが、溶液状態で使用する場合には、耐光性が著しく劣るものとなり、種々の工夫が必要となる(特許文献1及び2参照)。しかし、近年のカラー複合機の高機能化にともない、透明性を満足し、より原稿に忠実な画像を得るためには、より一層の色調、彩度、電子写真特性が向上しているマゼンタトナーが待望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−255882号公報
【特許文献2】特開平5−117536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記した課題を解決することを目的とする。即ち本発明は、着色剤の分散性が良く、分光特性に優れたマゼンタトナーを提供することを目的とする。また、トナー作製時における造粒性が良いマゼンタトナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、以下の発明によって達成される。
【0008】
即ち、本発明は、結着樹脂、一般式(1)で表される化合物及び着色剤を含有するマゼンタトナー粒子を有するマゼンタトナーであって、該着色剤として、キナクリドン骨格を有する顔料を含有することを特徴とするマゼンタトナー及びその製造方法を提供することである。
【0009】
【化1】

(一般式(1)中、R1及びR2は、各々独立して、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。)
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、着色剤の分散性が良く、分光特性に優れたマゼンタトナーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一般式(1)で表される化合物(15)のCDCl3中、室温、400MHzにおける1H NMRスペクトルを表す図である。
【図2】鮮鋭性評価パターンの一例を表す図である。
【図3】鮮鋭性に関連する画数15の文字の一例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、実施するための形態を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。
【0013】
本発明者らは、前記した従来技術の課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、結着樹脂、一般式(1)で表される化合物及び着色剤を含有するマゼンタトナー粒子を有するマゼンタトナーであって、着色剤として、キナクリドン骨格を有する顔料を含有するマゼンタトナーによって、前記課題を解決できることを見出した。
【0014】
【化2】

(一般式(1)中、R1及びR2は、各々独立して、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。)
【0015】
一般式(1)中のR1及びR2におけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、ブチル基、オクチル基、ドデシル基、ノナデシル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、または、エチルヘキシル基等の直鎖、分岐、または、環状の炭素数1乃至20個のアルキル基が挙げられる。
【0016】
一般式(1)中のR1及びR2におけるアリール基としては、特に限定されるものではないが、例えば、フェニル基、または、ナフチル基等の6乃至14員環の単環式または多環式アリール基が挙げられる。
【0017】
一般式(1)中のR1及びR2におけるアラルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、ベンジル基、または、フェネチル基等が挙げられる。
【0018】
更に、R1及びR2は置換基を有してもよく、化合物の安定性を著しく阻害するものでなければ、特に限定されるものではないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、メチルアミノ基、プロピルアミノ基等のモノ置換アミノ基、ジメチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、または、N−エチル−N−フェニル基等のジ置換アミノ基等が挙げられる。また、R1及びR2がアリール基である場合には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基を更なる置換基として有していても良い。
【0019】
1がアルキル基、アリール基であることが好ましく、さらに、分散性が向上するため、R1がメチル基、n−ブチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、4−メチルフェニル基であることが好ましい。
【0020】
本発明にかかる一般式(1)で表される化合物は、市販されており入手可能であるが、公知の方法によって合成することも可能である。
【0021】
本発明の前記一般式(1)で表される化合物の製造方法について、一態様を示すが、製造方法がこれに限定されるわけではない。
【0022】
即ち、化号物Aを無水酢酸でアセチル化させ、化合物Bを得ることが出来る。さらに環化させて化合物Cを得る。化合物Cとアミン化合物を縮合させて、本発明の一般式(1)で表わされる化合物を得る。また、各化合物の官能基において必要に応じて、公知の保護・脱保護反応、加水分解等の反応を追加することは、当該事業者には適宜選択可能である。
【0023】
【化3】

【0024】
本発明でキナクリドン骨格を有する顔料は、一般式(2)で表わすことが出来る。
【0025】
【化4】

(一般式(2)中、X1及びX2は、各々独立して、水素原子、アルキル基又はハロゲン原子を表す。)
【0026】
一般式(2)中のX1及びX2におけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、ブチル基、オクチル基、ドデシル基、ノナデシル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、または、エチルヘキシル基等の直鎖、分岐、または、環状の炭素数1乃至20個のアルキル基が挙げられる。特にメチル基が好ましい。
【0027】
一般式(2)中のX1及びX2におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、クロロ原子、ブロモ原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0028】
一般式(2)で表わされる顔料としては、C.I.Pigment Red 122、C.I.Pigment Red 202、C.I.Pigment Violet 19が好ましい。
【0029】
キナクリドン骨格を有する顔料は、単独で、あるいは公知のマゼンタ顔料、または、染料を2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0030】
次に本発明のトナーについて説明する。
【0031】
本発明のトナーは、少なくとも結着樹脂、一般式(1)で表される化合物、キナクリドン骨格を有する顔料を含有する着色剤等を含有するトナー粒子を有する。
【0032】
本発明のトナーを構成するトナー粒子に用いられる結着樹脂としては、一般的に用いられているスチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体が挙げられる。重合法により直接トナー粒子を得る方法においては、それらを形成するための単量体が用いられる。具体的にはスチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン等のスチレン系単量体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベヘニル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリロニトリル、メタクリル酸アミド等のメタクリル酸エステル系単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリロニトリル、アクリル酸アミド等のアクリル酸エステル系単量体、ブタジエン、イソプレン、シクロヘキセン等のオレフィン系単量体が好ましく用いられる。これらは、単独または、一般的にはポリマーハンドブック第2版III−139乃至192ページ(John Wiley&Sons社製)に記載の理論ガラス転移温度(Tg)が、40乃至75℃を示すように単量体を適宜混合して用いられる。理論ガラス転移温度が40℃未満の場合にはトナーの保存安定性や耐久安定性の面から問題が生じやすく、一方、75℃を超える場合はトナーのフルカラー画像形成の場合において、画像の透明性が低下する。
【0033】
本発明においては、ポリエステル樹脂やポリカーボネート樹脂等の極性樹脂を用いることができる。例えば、懸濁重合法等により直接トナーを製造する場合には、分散工程から重合工程に至る重合反応時に極性樹脂を添加すると、トナー母粒子となる重合性単量体組成物と水系分散媒体の呈する極性のバランスに応じて、添加した極性樹脂がトナー母粒子の表面に薄層を形成したり、トナー母粒子表面から中心に向け傾斜性をもって存在したりするように制御することができる。この時、本発明に係る着色剤や荷電制御剤と相互作用を有するような極性樹脂を用いることによって、トナー中への該着色剤の存在状態を好ましい形態にすることが可能である。
【0034】
本発明においては、トナー粒子の機械的強度を高めると共に、トナー分子の分子量を制御するために、結着樹脂の合成時に架橋剤を用いることもできる。
【0035】
本発明のトナーを構成するトナー粒子に用いられる架橋剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、二官能の架橋剤として、ジビニルベンゼン、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200、#400、#600の各ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート、および上記のジアクリレートをジメタクリレートに代えたものが挙げられる。
【0036】
多官能の架橋剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレートおよびそのメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシフェニル)プロパン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートおよびトリアリルトリメリテートが挙げられる。
【0037】
これらの架橋剤は、重合性単量体100質量部に対して、好ましくは0.05乃至10質量部、さらには0.1乃至5質量部用いることがより好ましい。
【0038】
本発明のトナーを構成するトナー粒子においては、キナクリドン骨格を有する顔料を用いるが、顔料の分散性を阻害しない限りは、他の着色剤を併用することできる。併用できる着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物等が挙げられる。
【0039】
本発明のトナーを構成するトナー粒子には、ワックスが含有されることが好ましい。ワックスとしては、特に限定されるものではないが、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等の石油系ワックスおよびその誘導体、モンタンワックスおよびその誘導体、フィッシャー・トロプシュ法による炭化水素ワックスおよびその誘導体、ポリエチレンに代表されるポリオレフィンワックスおよびその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックスおよびそれらの誘導体等が挙げられ、誘導体には酸化物や、ビニルモノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物も含まれる。また、高級脂肪族アルコール等のアルコール、ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸あるいはその化合物、酸アミド、エステル、ケトン、硬化ヒマシ油およびその誘導体、植物ワックス、動物ワックスが挙げられる。これらは単独、もしくは併せて用いることができる。
【0040】
ワックスの添加量としては、結着樹脂100質量部に対する含有量が総量で2.5乃至15.0質量部の範囲であることが好ましく、さらには3.0乃至10.0質量部の範囲であることがより好ましい。
【0041】
本発明のトナーにおいては、必要に応じて荷電制御剤をトナー粒子と混合して用いることも可能である。これにより、現像システムに応じた最適の摩擦帯電量のコントロールが可能となる。
【0042】
荷電制御剤としては、公知のものが利用でき、特に帯電スピードが速く、かつ、一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。さらに、トナーを直接重合法により製造する場合には、重合阻害性が低く、水系分散媒体への可溶化物が実質的にない荷電制御剤が特に好ましい。
【0043】
荷電制御剤は、例えば、トナーを負荷電性に制御するものとして、スルホン酸基、スルホン酸塩基またはスルホン酸エステル基を有する重合体または共重合体、サリチル酸誘導体およびその金属錯体、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族モノおよびポリカルボン酸や、その金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノール等のフェノール誘導体類、尿素誘導体、含金属ナフトエ酸系化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、樹脂系帯電制御剤等が挙げられる。
【0044】
また、トナーを正荷電性に制御するものとしては、ニグロシンおよび脂肪酸金属塩等によるニグロシン変性物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の4級アンモニウム塩、およびこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩およびこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料およびこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物等)、高級脂肪酸の金属塩、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイド等のジオルガノスズオキサイド、ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレート等のジオルガノスズボレート類、樹脂系帯電制御剤等が挙げられる。これらを単独であるいは2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0045】
本発明のトナーは、流動化剤として無機微粉体がトナー粒子に外部添加されていてもよい。無機微粉体としては、シリカ、酸化チタン、アルミナまたはそれらの複酸化物や、これらを表面処理したもの等の微粉体が使用できる。
【0046】
本発明のトナーを構成するトナー粒子の製造方法としては、粉砕法、懸濁重合法、懸濁造粒法、乳化重合法などが挙げられる。製造時の環境負荷および粒径の制御性の観点から、これらの製造方法のうち、特に懸濁重合法、懸濁造粒法、乳化凝集法等の水系媒体中で造粒する製造法によって得ることが好ましい。また、液体現像法に用いられる現像剤(以下、液体現像剤と呼ぶ)に用いることが出来る。
【0047】
トナー粒子中における着色剤の分散性を高めるためには、トナー粒子の製造過程において、着色剤を媒体中へ分散処理した着色剤分散体(マスターバッチ)の状態を経ることが好ましい。
【0048】
前記着色剤分散体は、少なくとも、一般式(1)で表される化合物とキナクリドン骨格を有する顔料とを分散媒体中で分散処理することで得られる。
【0049】
一般式(1)で表される化合物は、キナクリドン骨格を有する顔料100質量部に対して、0.01乃至10質量部で用いることが出来る。好ましくは0.05乃至10質量部、より好ましくは0.1乃至5質量部用いることがよい。
【0050】
前記着色剤分散体に用いる分散媒体としては、目的用途に応じて有機溶剤または水系媒体を用いることが出来る。
【0051】
前記着色剤分散体に用いる有機溶剤としては、重合性単量体を用いることが好ましい。重合性単量体は、付加重合性あるいは縮重合性単量体であり、好ましくは、付加重合性単量体である。具体的にはスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン等のスチレン系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリロニトリル、アクリル酸アミド等のアクリレート系単量体;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベヘニル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリロニトリル、メタクリル酸アミド等のメタクリレート系単量体;エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレン、シクロヘキセン等のオレフィン系単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、ヨウ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン化合物を挙げることができる。これらは使用用途に応じて、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明の着色剤分散体を重合トナー用途に用いる場合は、上記重合性単量体の中でも、スチレン、または、スチレン系単量体を単独もしくは、他の重合性単量体と混合して用いることが好ましい。特に扱い易さから、スチレンが好ましい。
【0052】
前記着色剤分散体に用いる水系媒体とは、水を主要成分としている媒体を意味する。水系媒体の具体例としては、水そのもの、水にpH調整剤、界面活性剤、有機溶剤を添加したもの等が挙げられる。
【0053】
前記着色剤分散体は、公知の分散方法で製造することが出来る。
【0054】
本発明で用いる分散機としては、特に限定されるものではないが、例えば、回転せん断型ホモジナイザー、ボールミル、サンドミル、アトライター等のメディア式分散機、高圧対向衝突式の分散機等が好ましく用いられる。
【0055】
前記着色剤分散体にはさらに樹脂を加えてもよい。着色剤分散体に用いることができる樹脂としては目的用途に応じて決められるものであり、特に限定されない。具体的には、例えば、ポリスチレン樹脂、スチレン共重合体、ポリアクリル酸樹脂、ポリメタクリル酸樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、アクリル酸系共重合体、メタクリル酸系共重合体、ポリエステル樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリビニルメチルエーテル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は単独、あるいは2種以上混合して用いることができる。
【0056】
<懸濁重合法トナーの製造方法>
懸濁重合法により製造されるトナー粒子は、例えば下記のようにして製造される。
【0057】
まず、前記着色剤分散体、重合性単量体等を混合して重合性単量体組成物を調製する。次に、該重合性単量体組成物を水系媒体中に分散して造粒を行い、重合性単量体組成物の液滴を生成する。そして、水系媒体中にて、前記液滴中の重合性単量体を重合してトナー粒子を得る。尚、着色剤分散体に含有される有機溶媒が、重合性単量体と同じ化合物であっても良い。
【0058】
このように、有機溶剤を分散媒体として用いる着色剤分散体を経ることによって、重合性単量体組成物の粘度の増加を抑制できるため、トナー製造工程上のハンドリングが容易になるとともに、着色剤の分散性が特に優れており、高着色力を有するマゼンタトナーが得られるようになる。
【0059】
前記懸濁重合法に用いられる重合開始剤としては、公知の重合開始剤を挙げることができ、例えば、アゾ化合物、有機過酸化物、無機過酸化物、有機金属化合物、光重合開始剤などが挙げられる。より具体的には、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(イソブチレート)等のアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ジtert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−へキシルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシベンゾエートなどの有機過酸化物系重合開始剤、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの無機過酸化物系重合開始剤、過酸化水素−第1鉄系、BPO−ジメチルアニリン系、セリウム(IV)塩−アルコール系等のレドックス開始剤などが挙げられる。光重合開始剤としては、アセトフェノン系、ベンゾインエーテル系、ケタール系等が挙げられる。これらの方法は、単独または2つ以上組み合わせて使用することができる。
【0060】
前記重合開始剤の濃度は、重合性単量体100質量部に対して0.1乃至20質量部の範囲である場合が好ましく、より好ましくは0.1乃至10質量部の範囲である場合である。前記重合開始剤の種類は、重合法により若干異なるが、10時間半減温度を参考に、単独または混合して使用される。
【0061】
前記懸濁重合法で用いられる水系媒体には、分散安定化剤を含有させることが好ましい。該分散安定化剤としては、公知の無機系および有機系の分散安定化剤を用いることができる。無機系の分散安定化剤としては、例えば、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ等が挙げられる。有機系の分散安定化剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプン等が挙げられる。また、ノニオン性、アニオン性、カチオン性の界面活性剤の利用も可能である。例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム等が挙げられる。
【0062】
前記分散安定化剤のうち、本発明においては、酸に対して可溶性のある難水溶性無機分散安定化剤を用いることが好ましい。また、本発明においては、難水溶性無機分散安定化剤を用い、水系分散媒体を調製する場合に、これらの分散安定化剤が重合性単量体100質量部に対して0.2乃至2.0質量部の範囲となるような割合で使用することが該重合性単量体組成物の水系媒体中での液滴安定性の点で好ましい。また、本発明においては、重合性単量体組成物100質量部に対して300乃至3,000質量部の範囲の水を用いて水系媒体を調製することが好ましい。
【0063】
本発明において、前記の難水溶性無機分散安定化剤が分散された水系媒体を調製する場合には、市販の分散安定化剤をそのまま用いて分散させてもよいが、細かい均一な粒度を有する分散安定化剤粒子を得るために、水中にて高速撹拌下に、前記難水溶性無機分散安定化剤を生成させて調製することが好ましい。例えば、リン酸カルシウムを分散安定化剤として使用する場合、高速撹拌下でリン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を混合してリン酸カルシウムの微粒子を形成することで、好ましい分散安定化剤を得ることができる。
【0064】
<懸濁造粒法トナーの製造方法>
本発明のトナー粒子は、懸濁造粒法により製造された場合においても好適なトナー粒子を得ることができる。懸濁造粒法の製造工程では加熱工程を有さないため、低融点ワックスを用いた場合に起こる樹脂とワックスの相溶化を抑制し、相溶化に起因するトナーのガラス転移温度の低下を防止することができる。また、懸濁造粒法は、結着樹脂となるトナー材料の選択肢が広く、一般的に定着性に有利とされるポリエステル樹脂を主成分にすることが容易である。そのため、懸濁重合法を適用できない樹脂組成のトナーを製造する場合に有利な製造方法である。
【0065】
トナー粒子を懸濁造粒法により製造する場合には、例えば下記のようにして製造される。
【0066】
まず、有機溶剤を分散媒体として用いる前記着色剤分散体、結着樹脂、ワックス等を、溶剤中で混合して溶剤組成物を調製する。次に、該溶剤組成物を水系媒体中に分散し、造粒して溶剤組成物の粒子懸濁液を得る。そして、前記粒子から溶剤を除去することでトナー粒子を得ることができる。溶剤の除去は、懸濁液を加熱、または減圧することによって可能である。
【0067】
前記工程における溶剤組成物は、前記着色剤を第1の溶剤に分散させた分散液(着色剤分散体)を、第2の溶剤と混合して調製されたものであることが好ましい。即ち、本発明の顔料組成物を含む着色剤を第1の溶剤により十分に分散させた後で、他のトナー材料と共に第2の溶剤と混合することにより、顔料がより良好な分散状態でトナー粒子中に存在できるものとなる。
【0068】
このように、有機溶剤を分散媒体として用いる着色剤分散体を経ることによって、溶剤組成物の粘度の増加を抑制できるため、トナー製造工程上のハンドリングが容易になるとともに、着色剤の分散性が特に優れており、高着色力を有するマゼンタトナーが得られるようになる。
【0069】
前記懸濁造粒法に用いることができる溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン等の炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、四塩化炭素等の含ハロゲン炭化水素類、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の多価アルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ベンジルアルコールエチルエーテル、ベンジルアルコールイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類が挙げられる。これらを単独または2種類以上混合して用いることができる。これらのうち、前記トナー粒子懸濁液中の溶剤を容易に除去するため、沸点が低く、且つ前記結着樹脂を十分に溶解できる溶剤を用いることが好ましい。
【0070】
前記溶剤の使用量としては、結着樹脂100質量部に対して、50乃至5,000質量部の範囲である場合が好ましく、120乃至1,000質量部の範囲である場合がより好ましい。
【0071】
前記懸濁造粒法で用いられる水系媒体は、分散安定化剤を含有させることが好ましい。該分散安定化剤としては、公知の無機系および有機系の分散安定化剤を用いることができる。無機系の分散安定化剤としては、例えば、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム等が挙げられる。有機系の分散安定化剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウム等の水溶性高分子、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等のアニオン性界面活性剤、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等のカチオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミンオキサイド等の両性イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等のノニオン性界面活性剤等の界面活性剤等が挙げられる。
【0072】
前記分散剤の使用量としては、結着樹脂100質量部に対して、0.01乃至20質量部の範囲である場合が、該溶剤組成物の水系媒体中での液滴安定性の点で好ましい。
【0073】
<乳化凝集法トナーの製造方法>
前記乳化凝集法により製造されるトナー粒子は、例えば下記のようにして製造される。
【0074】
まず、水系媒体を分散媒体として用いる前記着色剤分散体、樹脂粒子が水系媒体中に分散された樹脂粒子分散液を調製する。また、必要に応じて、ワックス粒子が水系媒体中に分散されたワックス粒子分散液を調製する。調製された各分散液を混合し混合液を得る(分散工程)。次に、上記工程で調製された混合液に含まれる粒子を凝集して凝集体粒子を形成し(凝集工程)、該凝集体粒子を加熱して融合する(融合工程)。融合された粒子は、濾別され、洗浄され、その後、乾燥を経て、トナー粒子となる。
【0075】
上記分散工程における水系媒体とは、水を主要成分としている媒体を意味する。水系媒体の具体例としては、水そのもの、水にpH調整剤、界面活性剤、有機溶剤を添加したもの等が挙げられる。
【0076】
上記樹脂粒子分散液に含まれる樹脂粒子を構成する樹脂は、トナーの結着樹脂に適した樹脂であれば特に制限されない。
【0077】
上記樹脂粒子分散液は公知の方法で調製される。例えば、ビニル系単量体、特にスチレン系単量体を構成要素とする樹脂粒子を含む樹脂粒子分散液の場合は、当該単量体を、界面活性剤などを用いて乳化重合を実施する事で樹脂粒子分散液を調製することができる。また、その他の方法で作製した樹脂(例えば、ポリエステル樹脂)の場合は、水への溶解度が比較的低い有機溶剤に溶解させて樹脂溶液とし、これをイオン性界面活性剤や高分子電解質と共に水系媒体に投入し、ホモジナイザー等の分散機により該樹脂溶液の微細な液滴を作製し、その後加熱または減圧により有機溶剤を蒸発させることで、樹脂粒子分散液を作製することができる。また、樹脂に界面活性剤を加え、ホモジナイザー、ボールミル、サンドミル、アトライター等のメディア式分散機、高圧対向衝突式の分散機等の分散機により水中にて乳化分散する方法や転相乳化法などにより、樹脂粒子分散液を調製してもよい。
【0078】
上記樹脂粒子分散液を製造する際に、予め上記結着樹脂と着色剤、一般式(1)で表わされる化合物を同時に仕込み、水系媒体に分散させることで、着色剤を含有する樹脂粒子分散液を作製することもできる。
【0079】
上記界面活性剤の具体例としては、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性高分子、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等のアニオン性界面活性剤、ラウリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等のカチオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミンオキサイド等の両性イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等のノニオン性界面活性剤等の界面活性剤、リン酸三カルシウム、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等の無機化合物等が挙げられる。これらは1種単独で、もしくは必要に応じて2種以上を組み合せて用いることができる。
【0080】
また、後工程における洗浄性の観点から、上記界面活性剤は、分子量10,000以下である場合が好ましく、より好ましくは5,000以下である。一方、界面活性能の観点から、分子量100以上であることが好ましく、より好ましくは分子量200以上である。
【0081】
上記界面活性剤の使用量は、樹脂粒子100質量部に対して0.01乃至10質量部、好ましくは0.1乃至5.0質量部、特に後工程における界面活性剤の洗浄性の点から、より好ましくは0.5乃至3.0質量部で用いる場合である。
【0082】
上記樹脂粒子分散液中の、樹脂粒子の体積基準のメジアン径は、各粒子の凝集性とトナー母粒子の造粒性の点から0.005乃至1.0μmが好ましく、0.01乃至0.4μmがより好ましい。
【0083】
上記樹脂粒子の平均粒径は、例えば、動的光散乱法(DLS)、レーザー散乱法、遠心沈降法、field−flow fractionation法、電気的検知帯法等を用いて測定することができる。なお、本発明における平均粒径とは、特に断りが無ければ、後述するように、20℃、0.01質量%固形分濃度で、動的光散乱法(DLS)/レーザードップラー法で測定された体積基準の50%累積粒径値(D50)の事を意味する。
【0084】
上記分散工程に用いられるワックス分散液は、公知の方法で調製される。
【0085】
なお、前記着色剤分散体、樹脂粒子分散液、ワックス分散液には、必要に応じてその他トナー成分を混合していてもよい。
【0086】
上記凝集工程において凝集体粒子を形成させる方法としては、特に限定されるわけではないが、pH調整剤、凝集剤、安定剤等を上記混合液中に添加・混合し、温度、機械的動力(撹拌)等を適宜加える方法が好適に用いられる。
【0087】
上記pH調整剤としては、特に限定されるわけではないが、アンモニア、水酸化ナトリウム等のアルカリ、硝酸、クエン酸等の酸が挙げられる。
【0088】
上記凝集剤としては、上記粒子の分散に用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤や、塩化ナトリウム、炭酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸アルミニウム等の無機金属塩の他、2価以上の金属錯体等が挙げられる。
【0089】
上記安定剤としては、主に前記した界面活性剤そのもの、またはそれを含有する水系媒体などが挙げられる。
【0090】
ここで形成される凝集体粒子の平均粒径としては、通常、得ようとするトナー粒子の平均粒径と同じ程度になることが好ましい。さらに、該凝集体粒子間の融着を防ぐため、上記pH調整剤、上記界面活性剤等を適宜投入することができる。
【0091】
上記融合工程では、上記凝集体粒子を加熱して融合・合一することでトナー粒子を形成する。加熱の温度としては、凝集体粒子に含まれる樹脂のガラス転移温度(Tg)から樹脂の分解温度の間であればよい。例えば、凝集工程と同様の撹拌下で、界面活性剤の添加やpH調整等により凝集の進行を止め、樹脂粒子の樹脂のガラス転移温度以上の温度に加熱を行うことにより凝集体粒子を融合・合一させる。また加熱の時間としては、融合が十分に為される程度でよく、具体的には10分間乃至10時間程度行えばよい。
【0092】
また、本融合工程の前後に、微粒子を分散させた微粒子分散液を添加混合して上記凝集体粒子表面に微粒子を付着させて、コア・シェル構造を有するトナー粒子とすることも可能である。
【0093】
上記融合工程後に得られたトナー粒子を含む懸濁液を、適切な条件で濾過、洗浄、乾燥等することにより、トナー粒子を得ることができる。この場合、トナーとして十分な帯電特性を確保するために、上記トナー粒子を十分に洗浄することが好ましい。
【0094】
上記洗浄工程、乾燥工程に関しては、懸濁重合法でトナー粒子を製造した場合と同様である。
【0095】
上記の各種製造法を経て製造される本発明のマゼンタトナーは、重量平均粒径D4が4.0乃至9.0μmであることが好ましい。また、重量平均粒径D4と個数平均粒径D1の比(以下、重量平均粒径D4/個数平均粒径D1またはD4/D1ともいう)が1.35以下であることが好ましい。さらには、重量平均粒径D4が4.9乃至7.5μmであることが好ましく、重量平均粒径D4/個数平均粒径D1が1.30以下であることが好ましい。重量平均粒径D4の値において4.0μm未満の割合が増加した場合は、電子写真現像システムに適用したときに帯電安定化が達成しづらくなり、多数枚の連続現像動作(耐久動作)において、画像カブリや現像スジなどの画像劣化が発生しやすくなる。特に2.5μm以下の微粉が増加した場合にはより傾向が顕著になってくる。また重量平均粒径D4が8.0μmを超える割合が増加した場合には、ハーフトーン部の再現性が大きく低下し、得られた画像はガサついた画像になってしまい好ましくない。特に10.0μm以上の粗粉が増加するとより傾向が顕著に現れてしまう。重量平均粒径D4/個数平均粒径D1が1.35を超える場合は、カブリや転写性が低下してしまうとともに、細線などの線幅の太さばらつきが大きくなってしまう(以下、鮮鋭性低下と表記する)。
【0096】
なお、本発明のマゼンタトナーの重量平均粒径D4と個数平均粒径D1は、トナー粒子の製造方法によってその調整方法は異なる。例えば、懸濁重合法の場合は、水系分散媒体調製時に使用する分散剤濃度や反応撹拌速度、または反応撹拌時間等をコントロールすることによって調整することができる。
【0097】
本発明のマゼンタトナーは、フロー式粒子像分析装置で測定される該マゼンタトナーの平均円形度が0.950乃至0.995であり、より好ましくは0.960乃至0.990であることが、トナーの転写性が大幅に改善される点から好ましい。
【0098】
本発明のマゼンタトナーは、磁性トナーまたは非磁性トナーどちらでも良い。磁性トナーとして用いる場合には、本発明のトナーを構成するトナー粒子は、磁性材料を混合して用いても良い。このような磁性材料としては、マグネタイト、マグヘマイト、フェライトのような酸化鉄、または他の金属酸化物を含む酸化鉄、Fe、Co、Niのような金属、あるいは、これらの金属とAl、Co、Cu、Pb、Mg、Ni、Sn、Zn、Sb、Be、Bi、Cd、Ca、Mn、Se、Ti、W、Vのような金属との合金およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0099】
<液体現像剤の製造方法>
前記液体現像剤は、例えば下記のようにして製造される。
【0100】
本発明の液体現像剤を得るには、電気絶縁性担体液に、着色剤、一般式(1)で表される化合物、分散剤として用いられる分散剤樹脂、必要に応じて電荷制御剤、ワックス等の助剤とを分散または溶解させて製造する。また、あらかじめ濃縮トナーを作り、さらに電気絶縁性担体液で希釈して現像剤を調製する、というような二段法で調製してもよい。
【0101】
本発明で用いる分散機としては、特に限定されるものではないが、例えば、回転せん断型ホモジナイザー、ボールミル、サンドミル、アトライター等のメディア式分散機、高圧対向衝突式の分散機等が好ましく用いられる。
【0102】
一般式(1)で表される化合物存在下、本発明で用いられる着色剤は単独、または2種以上での組み合わせ、あるいは公知のマゼンタ顔料や染料を2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0103】
本発明で用いられる樹脂及びワックスは前記と同様である。
【0104】
本発明で用いられる電荷制御剤としては、静電荷現像用液体現像剤に用いられているものであれば、特に制限されることはないが、例えば、ナフテン酸コバルト,ナフテン酸銅,オレイン酸銅,オレイン酸コバルト,オクチル酸ジルコニウム,オクチル酸コバルト,ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム,ドデシルべンゼンスルホン酸カルシウム,大豆レシチン,アルミニウムオクトエート等が挙げられる。
【0105】
本発明で用いられる電気絶縁性担体液としては、特に制限はないが、例えば109Ω・cm以上の高い電気抵抗と3以下の低い誘電率を有する有機溶剤を使用することが好ましい。
【0106】
具体的な例として、ヘキサン、ペンタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカンのような脂肪族炭化水素溶剤、アイソパーH,G,K,L,M(エクソン化学(株)製)、リニアレンダイマーA−20、A−20H(出光興産(株)製)等、沸点が68乃至250℃の温度範囲のものが好ましい。これらは、系の粘度が高くならない範囲で単独、または、2種以上併用してもよい。
【実施例】
【0107】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、文中「部」及び「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。得られた反応生成物の同定は、下記に挙げる装置を用いた複数の分析方法によって行った。即ち、使用した分析装置は、1H及び13C核磁気共鳴分光分析(ECA−400、日本電子(株)製)、LC/TOF MS(LC/MSD TOF、Agilent Technologies社製)を用いた。尚、LC/TOF MSにおけるイオン化法はエレクトロスプレーイオン化法(ESI)を適用した。
【0108】
[一般式(1)で表される化合物の製造]
本発明の一般式(1)で表わされる化合物は市販されており入手可能であるが、公知の方法によって合成することも可能である。
【0109】
以下に記載する方法で本発明の一般式(1)で表される化合物を製造した。
【0110】
<製造例1:化合物(15)の製造例>
4−ブロモ−1−シクロヘキシルアミノアントラキノン76.9gの1,2−ジクロロベンゼン20g溶液に無水酢酸102gを入れ、濃硫酸1gを入れ110℃で6時間撹拌した。反応終了後、メタノール1000gで希釈してろ過して1−(アセチルシクロヘキシルアミノ)−4−ブロモアントラキノン59.8g(収率70.1%)を得た。さらに、1−(アセチルシクロヘキシルアミノ)−4−ブロモアントラキノンのイソブタノール150gの溶液に苛性ソーダ12g/水150g溶液を滴下し、90℃で6時間撹拌した。反応終了後、冷却し、得られた固体をろ過して4−ブロモ1,9−N−シクロヘキシルアントラピリドン28.7g(70.4%)を得た。次に、4−ブロモ1,9−N−シクロヘキシルアントラピリドン20.4gの1,3−ジメチル−2−イミダゾリジン40g溶液に4−メチルアニリンヘキシルアミン19.3g、炭酸ナトリウム8.6g、銅粉6.8gを仕込み、190℃で4時間反応させた。反応終了後、冷却して、酢酸エチル希釈してろ過した。カラムクロマトグラフィー精製(トルエン/THF)を行い、17.6g(収率85.0%)の化合物(15)を得た。
【0111】
<化合物(15)についての分析結果>
[1]1H NMR(400MHz、CDCl3、室温):δ[ppm]=1.35−1.97(m、10H)、2.37(s、3H)、2.37−2.54(br、1H)、7.23(dd、4H、14.4、8.93Hz)、7.52(d、1H、J=9.62Hz)、7.65−7.77(m、3Hz)、7.89(s、1H)、8.23(d、1H、J=7.79Hz)、8.51(dd、1H、J=7.79、1.37Hz)、12.1(s、1H)
[2]質量分析(ESI−TOF):m/z=433.1932(M−H)+
【0112】
<他の色素化合物の製造例>
上記製造例1に準じた方法で、下記表1に示す他の化合物を合成した。これらの化合物の構造は、前記した化合物と同様にして確認した。「*」は置換基の結合部位を表す。図1は、表1中の化合物(15)のCDCl3中、室温・400MHzにおける1H NMRスペクトルを示す。
【0113】
【表1】

【0114】
[マゼンタトナーの製造]
以下に記載する方法で本発明のマゼンタトナー及び比較用のマゼンタトナーを製造した。
【0115】
<実施例1>
化合物(2)0.6部、C.I.Pigment Red 122(クラリアント社製、商品名「Toner Magenta E」)12部、スチレン120部の混合物をアトライター(三井鉱山社製)により3時間分散させて本発明の着色剤分散体(1)を得た。
【0116】
高速撹拌装置T.K.ホモミキサー(プライミクス株式会社製)を備えた2L四つ口フラスコ中にイオン交換水710部と0.1mol/L−リン酸三ナトリウム水溶液450部を添加し回転数を12,000rpmに調製し、60℃に加温した。ここに1.0mol/L−塩化カルシウム水溶液68部を徐々に添加し微小な難水溶性分散安定剤リン酸カルシウムを含む水系分散媒体を調製した。
【0117】
・着色剤分散体(1) 133.2部
・スチレン単量体 46.0部
・n−ブチルアクリレート単量体 34.0部
・サリチル酸アルミニウム化合物 2.0部
(オリエント化学工業株式会社製 ボントロンE−88)
・極性樹脂 10.0部
(プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAとイソフタル酸との重縮合物、Tg=65℃、Mw=10,000、Mn=6,000)
・エステルワックス 25.0部
(DSC測定における最大吸熱ピークのピーク温度=70℃、Mn=704)
・ジビニルベンゼン単量体 0.10部
上記処方を60℃に加温し、T.K.ホモミキサーを用いて5,000rpmにて均一に溶解・分散した。これに重合開始剤である2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)10部を溶解し、重合性単量体組成物を調製した。前記水系媒体中に上記重合性単量体組成物を投入し、回転数12,000rpmを維持しつつ15分間造粒した。その後高速撹拌器からプロペラ撹拌羽根に撹拌器を変え、液温を60℃で重合を5時間継続させた後、液温を80℃に昇温させ8時間重合を継続させた。重合反応終了後、80℃/減圧下で残存単量体を留去した後、液温を30℃まで冷却し、重合体微粒子分散体を得た。
【0118】
次に、重合体微粒子分散体を洗浄容器に移し、撹拌しながら、希塩酸を添加してpH1.5に調整し、2時間撹拌させた。濾過器で固液分離を行い、重合体微粒子を得た。重合体微粒子の水への再分散と固液分離とを、リン酸カルシウムを含むリン酸とカルシウムの化合物を十分に除去されるまで、繰り返し行った。その後に、最終的に固液分離した重合体微粒子を、乾燥機で十分に乾燥してマゼンタトナー粒子(1)を得た。
【0119】
得られたマゼンタトナー粒子100部に対し、ヘキサメチルジシラザンで表面処理された疎水性シリカ微粉体(一次粒子の個数平均径7nm)1.00部、ルチル型酸化チタン微粉体(一次粒子の個数平均径45nm)0.15部、ルチル型酸化チタン微粉体(一次粒子の個数平均径200nm)0.50部をヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製)で5分間乾式混合して、本発明のマゼンタトナー(1)を得た。
【0120】
<実施例2乃至4>
実施例1において、化合物(2)の使用量(顔料に対する質量量)を5%から1%、3%、10%に変更した以外は、実施例1と同様な操作で、各々着色剤分散体(2)乃至(4)およびマゼンタトナー(2)乃至(4)を得た。
【0121】
<実施例5乃至10>
実施例1において、化合物(2)を表1に記載の一般式(1)で表わされる化合物(3)、(5)、(9)、(15)、(17)、(21)に変更した以外は実施例1と同様な操作で、各々着色剤分散体(5)乃至(10)およびマゼンタトナー(5)乃至(10)を得た。
【0122】
<比較例1>
実施例1において、化合物(2)を用いないこと以外は実施例1と同様な操作で、比較用の着色剤分散体(11)および比較用のマゼンタトナー(11)を得た。
【0123】
<比較例2乃至5>
実施例1において、化合物(2)を表2に記載の比較用化合物(1)乃至(4)に変更した以外は実施例1と同様な操作で、比較用の着色剤分散体(12)乃至(15)および比較用のマゼンタトナー(12)乃至(15)を得た。
【0124】
<比較例6>
実施例1において、化合物(2)を市販の分散剤であるSolsperse24000SC(日本ルーブリゾール株式会社製)に変更した以外は実施例1と同様な操作で、比較用の着色剤分散体(16)および比較用のマゼンタトナー(16)を得た。
【0125】
<実施例11>
C.I.Pigment Red 122(クラリアント社製、商品名「Toner Magenta E」)90部、本発明の化合物(2)10部、ネオゲンRK(第一工業製薬社製)15部をイオン交換水885部に混合させ、湿式ジェットミルJN100(常光社製)を用いて約1時間分散して着色剤分散体(17)を得た。着色剤分散体における着色剤粒子の体積基準のメジアン径は(D50)0.2μmであり、着色剤粒子の濃度は10質量%であった。
【0126】
スチレン82.6部、アクリル酸n−ブチル9.2部、アクリル酸1.3部、ヘキサンジオールアクリレート0.4部、n−ラウリルメルカプタン3.2部を混合し溶解させた。この溶液にネオゲンRK(第一工業製薬社製)1.5部のイオン交換水150部の水溶液を添加して、分散させた。さらに10分間ゆっくりと撹拌しながら、過硫酸カリウム0.15部のイオン交換水10部の水溶液を添加した。窒素置換をした後、70℃で6時間乳化重合を行った。重合終了後、反応液を室温まで冷却し、イオン交換水を添加することで固形分濃度が12.5質量%、体積基準のメジアン径(D50)が0.2μmの樹脂粒子分散液(1)を得た。
【0127】
エステルワックス(DSC測定における最大吸熱ピークのピーク温度=70℃、Mn=704)100部、ネオゲンRK(第一工業製薬社製)15部をイオン交換水385部に混合させ、湿式ジェットミルJN100(常光社製)を用いて約1時間分散してワックス粒子分散液(1)を得た。ワックス粒子分散液の濃度は20質量%であった。
【0128】
着色剤分散体(17)10部、樹脂粒子分散液(1)160部、ワックス粒子分散液(1)10質量部、硫酸マグネシウム0.2部を混合し、ホモジナイザー(ウルトラタラックスT50、IKA社製)を用いて分散させた後、撹拌しながら、65℃まで加温した。65℃で1時間撹拌した後、光学顕微鏡にて観察すると、平均粒径が約6.0μmである凝集体粒子が形成されていることが確認された。ネオゲンRK(第一工業製薬社製)2.2部加えた後、80℃まで昇温して120分間撹拌して、融合した球形トナー母粒子を得た。冷却後、濾過し、濾別した固形物に720部のイオン交換水を加え、60分間撹拌洗浄した。トナー母粒子を含む混合液を濾過し、濾液の電気伝導度が150μS/cm以下となるまで同様な洗浄・濾過を繰り返し、最終的に濾過を行って固体を濾別した。その後、真空乾燥機を用いて乾燥させることで、マゼンタトナー粒子(17)を得た。
【0129】
なお、濾液の電気伝導度は特開2006−243064号公報に記載の方法に従い算出した。すなわち、濾液の最初30部は捨て、残部を25±0.5℃の温度とした後、電気伝導度計(ES−12、堀場製作所社製)にて測定し、次式により試料の電気伝導度を算出した。
電気伝導度[μS/cm]=A−B
A:濾液の電気伝導度
B:洗浄に使用した水の電気伝導度
【0130】
なお、イオン交換水の電気伝導度は5μS/cm以下、pH7.0±1.0のものを使用した。
【0131】
得られたマゼンタトナー粒子(17)100部に、ヘキサメチルジシラザンで表面処理された疎水性シリカ微粉体(一次粒子の個数平均径7nm)1.00部、ルチル型酸化チタン微粉体(一次粒子の個数平均径45nm)0.15部、ルチル型酸化チタン微粉体(一次粒子の個数平均径200nm)0.50部をヘンシェルミキサー(日本コークス工業社製)で5分間乾式混合することで、マゼンタトナー(17)を得た。
【0132】
<実施例12>
実施例11において、化合物(2)を用いる代わりに、表1に記載の一般式(1)で表わされる化合物(15)を用いたこと以外は同様にして、着色剤分散体(18)およびマゼンタトナー(18)を得た。
【0133】
<実施例13>
窒素ガス雰囲気下、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物1.5mol、ビスフェノールAトリメチレンオキサイド2モル付加物1.8molのシクロヘキサンジメタノール1.1molとエチレングリコール0.62molの混合溶液に、テレフタル酸4.0mol、イソフタル酸1.0mol、ジブチルスズオキサイド0.04molを添加して、撹拌させながら195℃で6時間反応させた。さらに、温度を240℃に昇温し6時間反応させた。反応容器内を10.0mmHgまで減圧し、減圧下で0.5時間反応させて、淡黄色透明な非晶性線状ポリエステル樹脂(1)を得た。得られた非晶性線状ポリエステル樹脂(1)は、DSC法によるTgが56℃であり、スチレン換算GPC法によるMwが11300、Mnが4400、Mw/Mnが2.6であり、JIS−K0070に従ってアセトン−トルエン混合溶液を用いて測定した酸価が12mgKOH/gであった。
【0134】
次にC.I.Pigment Red 122(クラリアント社製、商品名「Toner Magenta E」)、本発明の化合物(2)、上記非晶性線状ポリエステル樹脂(1)を、キャビトロンCD1010(ユーロテック社製)を高温高圧型に改造した分散機を用いて分散した。具体的には、イオン交換水79部、ネオゲンRK(第一工業製薬社製)1部、C.I.Pigment Red 122(クラリアント社製、商品名「Toner Magenta E」)0.9部、本発明の化合物(2)0.1部、上記非晶性線状ポリエステル樹脂(1)20部の組成比とし、アンモニアを添加することによりpHを8.5に調整した混合物を、回転子の回転速度が60Hz、圧力が5kg/cm2、熱交換器による加熱140℃の条件下でキャビトロンを運転し、個数平均粒径が290nmの着色剤分散体(19)を得た。
【0135】
得られた着色剤分散体(19)160部、ワックス粒子分散液(1)10部、硫酸マグネシウム0.2部をホモジナイザー(ウルトラタラックスT50、IKA社製)を用いて分散させた後、撹拌しながら、65℃まで加温した。65℃で1時間撹拌した後、光学顕微鏡にて観察すると、平均粒径が約6.0μmである凝集体粒子が形成されていることが確認された。ネオゲンRK(第一工業製薬社製)2.2部加えた後、80℃まで昇温して120分間撹拌して、融合した球形トナー母粒子を得た。冷却後、濾過し、濾別した固形物を720部のイオン交換水で、60分間撹拌洗浄した。トナー母粒子を含む混合液を濾過し、濾液の電気伝導度が150μS/cm以下となるまで同様に洗浄・濾過を繰り返した。真空乾燥機を用いて乾燥させることで、マゼンタトナー粒子(19)を得た。
【0136】
得られたマゼンタトナー粒子(19)100部に、ヘキサメチルジシラザンで表面処理された疎水性シリカ微粉体(一次粒子の個数平均径7nm)1.00部、ルチル型酸化チタン微粉体(一次粒子の個数平均径45nm)0.15部、ルチル型酸化チタン微粉体(一次粒子の個数平均径200nm)0.50部をヘンシェルミキサー(日本コークス工業社製)で5分間乾式混合することで、マゼンタトナー(19)を得た。
【0137】
<比較例7>
上記トナー(11)の製造例において、C.I.Pigment Red 122(クラリアント社製、商品名「Toner Magenta E」)を用いず、化合物(2)の使用量を100部に変更した事以外は実施例11と同様な操作で、比較用の着色剤分散体(20)および比較用のマゼンタトナー(20)を得た。
【0138】
[評価]
着色剤分散体およびマゼンタトナーの評価を以下のように行った。
【0139】
<着色剤分散体の分散性評価>
着色剤分散体の分散性の評価を以下のように行った。粒度測定器(グラインドメーター)(テスター産業株式会社)を用い、顔料の粒の大きさを測定することによって決定した。
A:2.5μm未満(分散性が非常に良い)
B:2.5μm以上4.5μm未満(分散性が良い)
C:4.5μm以上(分散性が悪い)
【0140】
<着色剤分散体の粘度測定>
着色剤分散体の粘度の評価を以下のように行った。レオメータPHYSICA MCR 300(Paar Physica社)により測定することによって決定した。
コーンプレート型測定治具:75mm径、1°
せん断速度:10s-1
A:比較用の着色剤分散体(11)に対して35%以上の粘度低下
B:比較用の着色剤分散体(11)に対して10%以上35%未満の粘度低下
C:比較用の着色剤分散体(11)に対して10%未満の粘度低下、または粘度増加
【0141】
また、前記着色剤分散体をアルミ基板上に展開し、自然乾燥によって溶媒を除去したサンプルについて、走査電子顕微鏡 S−4800(日立製作所社製)によって50,000倍に拡大観察して分散性を確認した。
【0142】
<トナーの重量平均粒径D4、及び個数平均粒径D1の測定>
造粒性の評価は以下のようにして決定した。上記トナー粒子の個数平均粒径(D1)及び重量平均粒径(D4)はコールター法による粒度分布解析にて測定した。測定装置として、コールターカウンターTA−IIあるいはコールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター株式会社製)を用い、該装置の操作マニュアルに従い測定した。電解液は、1級塩化ナトリウムを用いて、約1%塩化ナトリウム水溶液を調製した。例えば、ISOTON−II(コールターサイエンティフィックジャパン株式会社製)が使用できる。具体的な測定方法としては、前記電解水溶液100乃至150mL中に分散剤として、界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩)を、0.1乃至5mL加え、更に測定試料(トナー粒子)を2乃至20mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1乃至3分間分散処理を行う。得られた分散処理液を、アパーチャーとして100μmアパーチャーを装着した前記測定装置により、2.00μm以上のトナーの体積、個数を測定してトナーの体積分布と個数分布とを算出する。それから、トナー粒子の個数平均粒径(D1)と重量平均粒径(D4)(各チャンネルの中央値をチャンネル毎の代表値とする)を求め、更にD4/D1を算出した。
【0143】
上記チャンネルとしては、2.00乃至2.52μm、2.52乃至3.17μm、3.17乃至4.00μm、4.00乃至5.04μm、5.04乃至6.35μm、6.35乃至8.00μm、8.00乃至10.08μm、10.08乃至12.70μm、12.70乃至16.00μm、16.00乃至20.20μm、20.20乃至25.40μm、25.40乃至32.00μm、32.00乃至40.30μmの13チャンネルを用いた。表2から明らかなように比較例に対して本発明の実施例では粗粉および微粉の割合が減少していることが判明した。
【0144】
D4/D1の値から造粒性の評価を行った。
A:1.35未満(造粒性が非常に良い)
B:1.35以上1.60未満(造粒性が良い)
C:1.60以上(造粒性が悪い)
【0145】
<トナーの平均円形度の測定>
フロー式粒子像測定装置「FPIA−2100型」(シスメックス株式会社製)を用いて測定を行い、下式を用いて算出した。
【0146】
【数1】

【0147】
ここで、「粒子投影面積」とは二値化されたトナー粒子像の面積であり、「粒子投影像の周囲長」とは該トナー粒子像のエッジ点を結んで得られる輪郭線の長さと定義する。円形度は粒子の凹凸の度合いを示す指標であり、粒子が完全な球形の場合には1.000を示し、表面形状が複雑になる程、円形度は小さな値となる。
【0148】
上記実施例及び比較例の評価結果を表2−1、および2−2に示す。
【0149】
【表2−1】

【0150】
【表2−2】

【0151】
【化5】

【0152】
<画像サンプル評価>
次に上述の本発明のマゼンタトナー10種を用いて、画像サンプルを出力し後述する画像特性を比較評価した。尚、画像特性の比較に際し画像形成装置(以下LBPと略)としてLBP−5300(キヤノン社製)の改造機を使用した通紙耐久を行った。改造内容としてはプロセスカートリッジ(以下CRGとする)内の現像ブレードを厚み8[μm]のSUSブレードに交換した。その上でトナー担持体である現像ローラーに印加する現像バイアスに対して−200[V]のブレードバイアスを印加できるようにした。
【0153】
評価に際しては各トナーを個別に充填したCRGを評価項目毎に用意した。そして各々のトナーを充填したCRGごとにLBPにセッティングし、下記に記載した評価項目毎に評価した。
【0154】
評価項目として、画像カブリ、現像スジ、鮮鋭性の3つの比較を行った。
【0155】
尚、評価環境として
1)常温常湿環境(N/N(23℃、55%Rh)):(以下N/N環境と略)
2)低温低湿環境(L/L(15℃、10%Rh)):(以下L/L環境と略)
3)高温高湿環境(H/H(30℃、80%Rh)):(以下H/H環境と略)
の3環境の内、鮮鋭性についてはN/N環境のみで評価を行った。残りの2項目については3環境での評価を実施した。
【0156】
結果は後述する表3に示す通り、比較例のトナーに対して本発明のトナーを用いた場合には上記各画像評価項目とも比較例に対して良好な結果を得ることができた。
【0157】
以下に各評価項目における具体的な評価方法を示す。
【0158】
<画像カブリ>
画像カブリとは本来トナーの載るべきでない箇所(以下白地部分と略)にトナーが載る現象を示している。従って白地部分の濃度が低いほど良好な画像となる。
【0159】
特に微粉の割合が多いトナーを用いた場合、CRG内の現像ブレードの表面上へトナー融着を起こしやすくなる。その結果十分な帯電量を付与されないトナーが増加することで非画像領域に画像カブリが発生してしまう。
【0160】
そこで画像カブリを検証するため、まず15,000枚の通紙耐久後のCRGを用いて、白地部分を有する画像出力を行った。その後「デジタル白色光度計 TC−6D」(東京電色社製)により先程画像出力を行った白地部分の白色度(反射率Ds[%])を測定する。
【0161】
また、合わせて画像出力を行っていない下記記載の評価用紙における同じ製造ロットの平均白色度(平均反射率Dr[%])の測定も実施する。そして両者の差からカブリ濃度[%](=Dr[%]−Ds[%])を算出し、耐久評価時の画像カブリを定量化した。
【0162】
評価時の条件としてはブルーフィルターを用いて評価を行った。また評価用紙としては(用紙銘柄名)イメージコートグロス128(A4サイズ)(キヤノンマーケティングジャパン社販売品)を用いた。
【0163】
以上の条件を用いたカブリ評価結果について後述ランクに基づき評価を行った。
【0164】
本発明における着色剤分散体を用いたトナーではA,B,Cは実使用上問題ないレベルである。D,Eレベルでは白地部分が赤みを帯びていると判別できるレベルになるためCランク以上を好ましいレベルと判断した。
A:1.0[%]未満
B:1.0[%]以上2.0[%]未満
C:2.0[%]以上3.0[%]未満
D:3.0[%]以上4.0[%]未満
E:4.0[%]以上
【0165】
<現像スジ>
現像スジとは前述した現像ブレードの表面上にトナーが部分的に融着することにより、現像ローラー上のトナーコートが乱され、画像上にスジ状のむらが発生する現象である。
従って先程の画像カブリと同様、微粉の割合が増加することで生じやすくなる。
【0166】
現像スジの発生を確認するために、15,000枚の連続通紙耐久時1,000枚出力毎に出力用紙上に均一なトナー像が形成されている画像(以下ベタ画像とハーフトーン画像と記載)を用いた。評価用紙としては、用紙銘柄名:CS−814(A4サイズ)(キヤノンマーケティングジャパン社販売品)を用いた。
【0167】
また、現像スジの有無の判断はベタ画像とハーフトーン画像を目視することにより検証を行った。評価ランクとしては下記記載の判断基準を用いた。尚、現像スジは目視で確認できる状態であるため、今回用いたLBPにおいて実使用上の耐用枚数に対し十分にマージンを確保できる12,000枚まで未発生のものを好ましいレベルと判断した。
A:15,000枚まで現像スジ未発生
B:14,001枚乃至15,000枚で、現像スジ発生
C:12,001枚乃至14,000枚で、現像スジ発生
D:10,001枚乃至12,000枚で、現像スジ発生
E:10,000枚以前で現像スジ発生
【0168】
<鮮鋭性>
鮮鋭性を具体的に示すと細線(例えば画像解像度600dpiの画像での1dot分の線)などの細かい部分の再現性を示す指標である。従ってトナー粒径において微粉および粗粉の混合比率が大きい程、再現性が悪い傾向になってしまう。
【0169】
そこで鮮鋭性の評価方法としてまず図2に示すような1dot幅の細線部と1dot分の空白部(以下1dot‐1space画像と略)が交互に繰り返されている画像パターンについてLBPで出力を行う。
【0170】
尚、出力に用いたのは、前述の現像スジの評価用紙と同じCS−814(A4サイズ)である。また同時に同じ出力用紙に少なくとも5[cm]角を持つ均一なトナー画像出力も行う。その後出力した画像を高解像度スキャナーNexscan F4200(ハイデルベルグ社製)を用い、解像度5080dpiで1024×1024pixelの条件下で画像取り込みを行う。
【0171】
取り込んだスキャナー画像から1dot‐1space画像にある彩度の振幅(以下彩度差(A)と略)と出力用紙の白部と全面均一なトナー画像部の彩度差(以下彩度差(B)と略)を算出する。尚、ここでいう彩度(C*)とはCIE 1976 L***の色度値で表記されるa*およびb*を用いて
【0172】
【数2】

の式で定義されるものとする。以上の彩度差を用いて鮮鋭性として下記式を定義する。
鮮鋭性=彩度差(A)/彩度差(B)
【0173】
鮮鋭性の値は1に近い程彩度差が少なくなるため鮮鋭性が高いといえる。そこで評価値を下記指標で評価した。
【0174】
A、B、Cレベルでは文字の画数が15画の3ptの抜き文字(図3))に示すように文字を構成する線の部分(以下文字領域と略)を非画像領域にし、文字領域を除いた部分をトナー画像領域にする)において、最も視認性が劣化する場合でも文字領域の一部がトナーで埋められる程度であったため好ましいレベルと判断した。
A:0.25以上
B:0.20以上0.25未満
C:0.15以上0.20未満
D:0.10以上0.15未満
E:0.10未満
【0175】
【表3】

【0176】
表2−1、2−2より明らかなように、本発明で製造した着色剤分散体は、比較例の着色剤分散体と比較して、着色剤の分散性に優れており、また粘度を低下させる効果を発揮している点で、製造工程上の送液を容易にさせる。また、トナー製造時において、微小粒子、粗大粒子を低減させる効果があり、得られるトナーは造粒性に優れたものとなる。その結果、表3から明らかなように、製造したマゼンタトナーの定着画像においては、画像カブリ、現像スジ、鮮鋭性のいずれも良好である。
【産業上の利用可能性】
【0177】
本発明によれば、着色剤の分散性が良く、分光特性に優れたマゼンタトナーを得ることが出来る。該マゼンタトナーを用いることにより電子写真方式を採用する画像形成装置に適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂、一般式(1)で表される化合物及び着色剤を含有するマゼンタトナー粒子を有するマゼンタトナーであって、着色剤として、キナクリドン骨格を有する顔料を含有することを特徴とするマゼンタトナー。
【化1】

[一般式(1)中、R1及びR2は、各々独立して、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。]
【請求項2】
前記一般式(1)中、R1がアルキル基又はアリール基であることを特徴とする、請求項1に記載のマゼンタトナー。
【請求項3】
前記一般式(1)中、R1がメチル基、n−ブチル基、シクロヘキシル基又は4−メチルフェニル基であることを特徴とする、請求項1に記載のマゼンタトナー。
【請求項4】
前記キナクリドン骨格を有する顔料が一般式(2)で表わされることを特徴とする、請求項1乃至3の何れか1項に記載のマゼンタトナー。
【化2】

[一般式(2)中、X1及びX2は、各々独立して、水素原子、アルキル基又はハロゲン原子を表す。]
【請求項5】
前記マゼンタトナー粒子が、ワックスを含有することを特徴とする、請求項1乃至4の何れか1項に記載のマゼンタトナー。
【請求項6】
前記マゼンタトナー粒子が、懸濁重合法にて得られることを特徴とする、請求項1乃至5の何れか1項に記載のマゼンタトナー。
【請求項7】
前記マゼンタトナー粒子が、乳化凝集法にて得られることを特徴とする、請求項1乃至5の何れか1項に記載のマゼンタトナー。
【請求項8】
一般式(1)で表される化合物とキナクリドン骨格を有する顔料と有機溶剤とを混合して、着色剤分散体を調製する工程、
前記着色剤分散体と重合性単量体とを混合して重合性単量体組成物を調製する工程、
前記重合性単量体組成物を水系媒体中に分散して造粒を行い、重合性単量体組成物の液滴を生成する工程、
前記液滴中の重合性単量体を重合してマゼンタトナー粒子を製造する工程、を有するマゼンタトナーの製造方法であって、
得られるトナーが、結着樹脂、一般式(1)で表される化合物及び着色剤を含有するマゼンタトナー粒子を有するマゼンタトナーであり、前記着色剤として、キナクリドン骨格を有する顔料を含有することを特徴とするマゼンタトナーの製造方法。
【化3】

[一般式(1)中、R1及びR2は、各々独立して、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。]
【請求項9】
一般式(1)で表される化合物とキナクリドン骨格を有する顔料と有機溶剤とを混合して、着色剤分散体を調製する工程、
前記着色剤分散体、結着樹脂を、有機溶剤中で混合して溶剤組成物を調製する工程、
該溶剤組成物を水系媒体中に分散して溶剤組成物の粒子の造粒を行う工程、
前記粒子から有機溶剤を除去しマゼンタトナー粒子を製造する工程、を有するマゼンタトナーの製造方法であって、
得られるトナーが、結着樹脂、一般式(1)で表される化合物及び着色剤を含有するマゼンタトナー粒子を有するマゼンタトナーであり、前記着色剤として、キナクリドン骨格を有する顔料を含有することを特徴とするマゼンタトナーの製造方法。
【化4】

[一般式(1)中、R1及びR2は、各々独立して、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。]

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−47796(P2013−47796A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−166753(P2012−166753)
【出願日】平成24年7月27日(2012.7.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】