説明

マッサージ器

【課題】 施療範囲を変化させる構成をもつ、より安全に治療することのできる手持ち式の小さい、軽いマッサージ器を提供する。
【解決手段】 マッサージ器1は、本体2と、本体2に軸部4で連結されたヘッド部3とからなる。施療部を構成する施療子60と施療子80は、ヘッド部3の長手方向に並設されている。施療子60 だけを使用したいときは、ボタン115を押し、施療子80 をヘッド部内に押し込める。この場合、施療はスポット的になる。再度、ボタン115を押すと、施療子80がヘッド部内部から突出し、施療子80と施療子60の高さがヘッド部の長手方向に一直線状に並ぶ状態になり、施療範囲が長くなる。前記ヘッド部ハウジングに通気孔を設け、ヘッド部内部で発生する熱を排熱する。また、衝撃吸収、消音用の緩衝ラバーをプランジャーに設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マッサージ器に関し、特に被施療者が手持ちでたたきマッサージ施療する際に施療範囲を切り替えて使用することができるマッサージ器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の手持ち式マッサージ器においては、ソレノイドやモータ等の駆動手段を用いて施療部を往復駆動し、被施療者に対してたたきマッサージ施療を行うものがあり、1個の施療部を1個の駆動手段で駆動する構成が一般的である。この一般的な構成では施療範囲や施療感覚が単一であり、マッサージ効果が単調であるという課題があり、この課題の解決のために、
1)複数の施療部と、これらの施療部を個別に駆動する駆動手段とを備えた構成〔下記の[2],[4]〕
2)複数の施療部と、1個の駆動手段と、複数の施療部に駆動力を伝達する手段とを備えた構成〔下記の[1],[3],[5],[6]〕
といったものが提案されている。
[1] 回転駆動装置の出力軸の回転方向を変更し、多系統の動力伝達部から回転方向に応じて一方向クラッチで特定の系統にのみ動力を伝達し、1台で複数の異なる施療(振動/たたき)を行うようにした構成(例えば、特許文献1参照)。
[2] 本体ヘッドの内部に「同一に動作」する一対の可動部を並設し、各可動部に接触部を連結し、患部の左右両側から跨がるようにして刺激を与えるようにした構成(例えば、特許文献2参照)。
[3] 1個のソレノイドによる往復運動せしめられる施療子を2個設け、ソレノイドを増やすことなく施療範囲が広くなるようにした構成(例えば、特許文献3参照)。
[4] 第1の施療子と、これを囲む第2の施療子と、これらを個別に駆動する2つの駆動手段とからなり、施療子の交換作業を要することなくポイント/ソフトマッサージを行うようにした構成(例えば、特許文献4参照)。
[5] 駆動軸が連結された局部用凸部と、駆動軸に設けられた弾性的な支持部に支持され、かつ駆動軸に対して摺動可能に配設された広範囲用凸部とを備え、人体に軽く押圧すると局部用及び広範囲用凸部の双方の振動が、強く押圧すると局部用凸部の振動が伝わるようにした構成(例えば、特許文献5参照)。
[6] 長い施療部の施療幅を変更可能に長い施療部の両側に副施療子を設け、副施療子の下回動位置では長い施療子に連結されて同調駆動されるとともに、上回動位置ではハウジングに連結されて長い施療子のみが駆動され、ワイド/チョッパー叩きができるようにした構成(例えば、特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6−50641号公報
【特許文献2】実開平7−1929号公報
【特許文献3】特開平7−59832号公報
【特許文献4】特開平9−253148号公報
【特許文献5】特開平10−234804号公報
【特許文献6】特開2000−350765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記提案においては、1)については、駆動手段を施療部の数だけ備えるため、駆動される施療部は適宜選択することができるものの、マッサージ器が大きく、重く、高価となるという課題がある。
【0005】
2)については、駆動手段が1個のみで1)の課題は解決できるものの、構成[1] においては、モータの回転方向に応じて駆動される施療部を選択するために一方向クラッチを備えており、構造が複雑であり、しかも、複数の施療部はマッサージ器の両側面に設けられているため、施療部を切り替えるたびにマッサージ器を持ち替える必要がある。構成[3] においては、複数(2個)の施療部が常に交互もしくは同時に駆動されるため、マッサージ効果の単調さはあまり改善されない。また、構成[5] においては、人体への押圧度合を変えると広範囲の刺激と局部への刺激を切り替えることができるとされているが、局部への刺激の際にも広範囲用の施療部が人体に当接する構造であり、マッサージ効果の違いは明確ではなく、範囲の切り替えのための構造が複雑である。さらに、構成[6] においては、長い施療部の幅を切り替えるという構成であり、長い施療部の幅を狭くした場合でも施療範囲の長さは長いままであり、施療範囲の変化は明確ではない。
【0006】
本発明は、そのような問題点に着目してなされたもので、施療範囲を明確に変化させる構成を、手持ち式に適した小ささ、軽さをもち、ユーザが安全に快適に使用できるマッサージ器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、幅に比して長さが長い施療部を備えて該施療部にて叩きマッサージ動作を行うマッサージ器である。
上記施療部はその長さ方向に短い施療子及び長い施療子の2つの施療子から構成され、ヘッド部ハウジング内に、前記2つの施療子のうちの1の施療子を直接駆動する1の駆動手段を収容し、また、前記施療部を施療子の先端が前記ハウジングから出ている状態で収容し、前記2つの施療子の先端が長さ方向に一直線状に並んでいる第1の状態と、前記長さ方向に短い施療子先端が他の施療子先端より突出する第2の状態とに切り替える切替手段を備え、前記ヘッド部ハウジングに通気孔が設けられたことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、2つの施療子先端(施療子が治療部位に接触する部分)がヘッド部の長手方向に一直線状に並ぶ状態で施療動作を行えば、施療範囲は2つの施療子を合わせた長さとなる。他方、1つの施療子が他の1つの施療子より突出した状態で施療動作を行えば、突出した施療子のみが施療動作を行うこととなり、施療範囲は2つの施療子が並列する状態よりも短くなるので、前記2つの状態を切り替えることにより、施療範囲を変化させることができる。
【0009】
ヘッド部ハウジングに通気孔を設けることにより、駆動手段のもたらす発熱による危険を回避することができる。従って、ユーザはより安心してマッサージ器を使用することができる。
【0010】
施療部は、ヘッド部の一端側に回動自在に枢支されており、かつ回動の中心はヘッド部の長手方向に対して直交しているのが好適である。また、ヘッド部は、使用時に手で握る本体に対して軸を中心として回動し、折りたたむことができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記駆動手段を収容する前記ヘッド部ハウジングと前記駆動手段のプランジャとの間に緩衝ラバーが設けられることを特徴とするこれにより、マッサージ器が引き起こす不快な機械的振動、振動音が減少させるので、ユーザは本マッサージ器を使って快適に治療できる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、プログラム/マニュアル動作を切り替えるための切替スイッチを有することを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、電源の入/切の切り替え機能と施療動作の強弱の切り替え機能とを兼ね備えた1つのスイッチを有することを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、ヘッド部ハウジングは、3のハウジングで互いに嵌合されて構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、2つの施療子がヘッド部の長手方向に並んだ状態での施療又は1つの施療子より突出した施療子のみによる施療を選択して行うことができるので、施療範囲を明確に変化させることができる。しかも、そのような構成を、手持ち式に適した小ささ、軽さで実現することができる。また、本発明によれば、駆動手段がもたらす、発熱、不快な機械的振動、騒音を削減することができ、ユーザは本発明によるマッサージ器を使って、安全に快適に治療することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態に係るマッサージ器の通常の使用状態での外観斜視図である。
【図2】図1のマッサージ器の正面図である。
【図3】同マッサージ器のヘッド部を折り畳んだ状態の外観斜視図である。
【図4】図3のマッサージ器の正面図である。
【図5】同マッサージ器のヘッド部の外ハウジング内部に収容される施療機構を示す外観斜視図である。
【図6】図5の施療機構の一部分を示す分解斜視図である。
【図7】図5の施療機構の残部分を示す分解斜視図である。
【図8】図5の施療機構の更に残部分を示す分解斜視図である。
【図9】同マッサージ器における副施療子の斜視図である。
【図10】同マッサージ器における副施療子の正面図である。
【図11】同マッサージ器における副施療子の平面図(上面図)である。
【図12】図11の線A−Aにおける断面図である。
【図13】同マッサージ器において、副施療子が主施療子に固定された状態で内ハウジングを内側から見た正面図である。
【図14】同マッサージ器において、図13の状態における要部拡大斜視図である。
【図15】同マッサージ器において、副施療子が主施療子に固定されたときの常態における一部破断正面図である。
【図16】同マッサージ器において、図15の場合で主施療子が最も引っ込んだ状態における一部破断正面図である。
【図17】同マッサージ器において、副施療子が内ハウジングに固定されたときの常態における一部破断正面図である。
【図18】同マッサージ器において、図17の場合で主施療子が最も引っ込んだ状態における一部破断正面図である。
【図19】同マッサージ器において、副施療子が主施療子に固定されたときの要部拡大側面図である。
【図20】同マッサージ器において、副施療子が内ハウジングに固定されたときの要部拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のマッサージ器を実施形態に基づいて説明する。
【0018】
その実施形態に係るマッサージ器の通常の使用状態での外観斜視図を図1に、また図1のマッサージ器の正面図を図2に、ヘッド部を折り畳んだ状態のマッサージ器の外観斜視図を図3に、図3のマッサージ器の正面図を図4に示す。但し、図1と図2〜図4とでは外観形状の細部に若干の相違がある。
【0019】
このマッサージ器1は、使用時に手で握る本体2と、この本体2に軸部4により回動可能に連結されたヘッド部3とからなる。ヘッド部3は、本体2側に向けて約85°の範囲で折り曲げ可能であり、使用時には図1、図2のようにヘッド部3を引き起こし、不使用時(仕舞う時)などは図3、図4のようにヘッド部3を折り畳んでおく。図1、図2の使用状態及び図3、図4の折り畳み状態のいずれでも軸部4によりヘッド部3にロックが掛かるようになっており、ロックやその解除は本体2とヘッド部3を強制的に相対して近づけたり離したりすることで行われる。
【0020】
本体2には、電源スイッチ7、プログラム/マニュアル切替スイッチ8、プログラム選択/速度調節ダイヤル9が設けられている。電源スイッチ7は、電源の入/切の切替えと施療動作(たたき動作)の強弱の切替えを行うためのものである。プログラム/マニュアル切替スイッチ8は、予め設定されたプログラム動作とマニュアル動作を切り替えるためのものである。プログラム選択/速度調節ダイヤル9は、プログラム動作時は予め設定された8種類のプログラムを切り替え、マニュアル動作時は速度を8段階に切り替えるためのものである。また、本体2は、各種電子部品を搭載した回路基板(図示せず)等を内蔵する。
【0021】
ヘッド部3は、軸部4に直交する方向に細長い形状に形成されており、外ハウジングL11、外ハウジングR12及び外ハウジングU13を有し、外ハウジングL11,R12,U13は、外ハウジングとして互いに嵌合されてネジにより一体に組み立てられる。このヘッド部3(外ハウジング)の長手方向に主施療子60と副施療子80(当該2つの施療子を施療部という)を、それらの先端が前記ヘッド部ハウジングから突出する状態で収容し、この主施療子60と副施療子80のヘッド部3に対する出入動作(たたき動作)により被施療者の部位(例えば肩部)を施療するようになっている。
【0022】
外ハウジングL11,R12,U13で構成される外ハウジング内部には、図5のような施療機構15が収容されている。
【0023】
施療機構15は、図6〜図8に分解斜視図で示すような構造であり、図示のような形状の内ハウジングL21(図6)と内ハウジングR22(図7)とを有する。この一対の内ハウジングL21,R22は、内ハウジングとして互いに嵌合されてネジにより一体に組み立てられる。この一対の内ハウジングL21,R22で構成される内ハウジングに各種部品が取付けられ、この内ハウジングが外ハウジングL11,R12,U13で構成される外ハウジング内に配置される。
【0024】
図6において、施療機構15を示す。前記施療機構は、ヘッド部ハウジング内にあって、駆動手段としてのソレノイド組立体40を有する。ソレノイド組立体40は、支持板41と、この支持板41の内側に配置されたボビン・コイル等の部品42と、部品42の中心に移動可能に挿通されたプランジャ43とを有する。部品42から延出するリード線50は、本体2内部に設けられた回路基板に接続されている。プランジャ43の一端部(上端部)には衝撃吸収・消音用の緩衝ラバー44が取付けられ、支持板41の下端部には取付け・衝撃吸収・消音用の緩衝ラバー45が取付けられている。
【0025】
プランジャ43の他端部(下端部)には、一対のプランジャコネクタ46がコネクタラバー47を挟持する様態でネジとナットにより固定されるとともに、コネクタラバー47に主施療子コネクタ48が嵌合により取付けられている。更に、主施療子コネクタ48は主施療子60(図7)の内部に嵌合されるとともにネジにより固定される。主施療子コネクタ48が主施療子60の内部に固定された状態では、プランジャコネクタ46までが主施療子60の内部にほぼ収まっている。また、プランジャ43の他端部にはスプリング49が嵌挿されており、このスプリング49は、プランジャ43、すなわち主施療子60をヘッド部3から出る方向に常時付勢する。なお、プランジャ43の往復運動のストロークは、例えば約6mmである。
【0026】
ソレノイド組立体40は、内ハウジングL21,R22に対しては、内ハウジングL21,R22に設けられたソレノイド組立体収容部23に収容される。具体的には、ソレノイド組立体40の緩衝ラバー45が内ハウジングL21,R22の嵌合溝24に嵌合されることで、ソレノイド組立体40が内ハウジングL21,R22に取付けられる。内ハウジングL21,R22には通気孔25が形成されるとともに、外ハウジングL11,R12にも通気孔14(図1)が形成されており、ソレノイド組立体40から発生する熱がそれらの通気孔25,14を通じてマッサージ器1の外部に逃げ易いようになっている。
【0027】
主施療子60(図7)は、内ハウジングL21,R22間に位置し、外側に被せられたラバー(図示せず)と、上記ソレノイド組立体40のプランジャコネクタ46、コネクタラバー47及び主施療子コネクタ48を収容する空胴部61とを有する。この主施療子60は、間隔を置いて対向する一対のアーム62を有し、一方のアーム62の内側に設けられたボス63にフックレシーバ70(主施療子側の被係合部)がネジにより取付けられる。フックレシーバ70は、後記固定フック90(係合部)のバー91の先端部側が選択的に係脱可能に嵌合する嵌合溝70aを有する。このフックレシーバ70と固定フック90とで係合手段を構成する。
【0028】
副施療子80(図8)は、主施療子60の一対のアーム62間に位置し、外側に被せられたラバー(図示せず)と、アーム81とを有する。
【0029】
副施療子80のアーム81の基端部に形成された貫通孔82と、主施療子60の一対のアーム62の各基端部に形成された貫通孔64とには、シャフト65が挿通され、このシャフト65の両端部が内ハウジングL21,R22の基端側に設けられたボス26に挿入されることで、主施療子60と副施療子80は内ハウジングL21,R22(外ハウジングL11,R12)に対して回動自在に枢支される。これにより、主施療子60と副施療子80はヘッド部3の長手方向に対して直交する軸を中心としてそれぞれ個別に回動自在となる。
【0030】
また、シャフト65において、副施療子80のアーム81の内側にはスプリング66が嵌挿されており、このスプリング66は副施療子80を主施療子60の一対のアーム62の間から外側に出す方向(ヘッド部3から出る方向)に常時付勢する。なお、スプリング66は、図7では主施療子60の一対のアーム62の内側に示されている。また、シャフト65において、主施療子60のアーム62と副施療子80のアーム81との間の部分には、主施療子60と副施療子80がそれぞれ個別にスムーズに回動するようにワッシャ67が介在される。
【0031】
副施療子80には、図8に示すような部品からなる固定フック90が取付けられる。図9にそれらの斜視図を、図10に正面図を、図11に平面図(上面図)を、図12に図11の線A−Aにおける断面図を示す。但し、形状は図8に示すものと図9〜図12に示すものとでは幾分異なるが、基本構成は同じである。
【0032】
固定フック90は、バー91と、貫通孔93が形成された二股状の軸足92とを有する。この固定フック90の軸足92の貫通孔93にシャフト94が挿通され、このシャフト94がシャフトケース95に支持される。シャフトケース95は副施療子80の内部に嵌合されるとともにネジ96により固定される。これにより、固定フック90は、副施療子80から突出し、シャフト94を中心として可動範囲内で回動可能となり、フックレシーバ70及び後述する内ハウジングR22の内側の嵌合溝34に対して係合状態と係合解除状態とを切り換え自在とすることができる。シャフト94において、副施療子80と固定フック90の軸足92との間の部分には、固定フック90の回動をスムーズにするためのワッシャ97が介在されている。また、二股状の軸足92の内側のシャフト94の部分にはスプリング98が嵌挿され、このスプリング98は、固定フック90を主施療子60に固定された前記フックレシーバ70の方向に常時付勢する。
【0033】
他方、図7、図13(副施療子80が主施療子60に固定された状態で内ハウジングR22を内側から見た正面図)、図14(図13の状態における要部拡大斜視図)、図15(副施療子80が主施療子60に固定されたときの常態における一部破断正面図)、図16(図15の場合で主施療子60が最も引っ込んだ状態における一部破断正面図)、図17(副施療子80が内ハウジングR22に固定されたときの常態における一部破断正面図)、図18(図17の場合で主施療子60が最も引っ込んだ状態における一部破断正面図)、図19(副施療子80が主施療子60に固定されたときの要部拡大側面図)、及び図20(副施療子80が内ハウジングR22に固定されたときの要部拡大側面図)に示すように、固定フック90を押すためのリリースレバーリンク110は、円弧状のレバー111(解除部)と、取付片112とを有する。
【0034】
このリリースレバーリンク110は、その取付片112が内ハウジングR22の内側に設けられた嵌合部30に嵌合されるとともに、その一端部110aが内ハウジングL21の内側のボス31に挿入され、他端部110bが内ハウジングR22の貫通孔32に挿通される。他端部110bは内ハウジングR22の貫通孔32から突出し(図5)、この突出部分に図1〜図4に示された解除操作用ボタン115(操作部)が取付けられる。リリースレバーリンク110と解除操作用ボタン115とで解除手段を構成する。
【0035】
リリースレバーリンク110のレバー111は、固定フック90とバー91とで形成される空間99(図9)に挿通される。従って、外ハウジングR12から出たボタン115を押すと、レバー111により固定フック90はスプリング98の付勢力に抗してフックレシーバ70の反対側に移動する。
【0036】
一方、固定フック90のバー91がフックレシーバ70の嵌合溝70aに嵌合すると(図13〜図16、図19)、副施療子80が主施療子60に固定された状態になり、バー91が内ハウジングR22の内側に形成された嵌合溝34(ヘッド部側の被係合部)及び後記ガイドレール35の嵌合溝35aに嵌合すると(図17、図18、図20)、副施療子80が内ハウジングR22に固定された状態になる。
【0037】
副施療子80は、バー91が嵌合溝34に嵌合する位置を上限固定位置、バー91がフックレシーバ70に嵌合する位置を下限固定位置とし、両固定位置の間において回動可能となる。下限固定位置付近においては、バー91とフックレシーバ70とが嵌合し、副施療子80は主施療子60と係合して一体に動作する。従って、副施療子80の下限固定位置は主施療子60の施療動作における可動範囲のヘッド部からの突出量が最大となる位置に相当する。さらに、副施療子80の上限固定位置は、主施療子60の施療動作における可動範囲の上限位置よりも上方に設定されており、副施療子80は主施療子60の可動範囲よりも大きい可動範囲を有する。また、バー91が嵌合溝34又はフックレシーバ70に嵌合した状態でボタン115を押せば、その嵌合が解除される。
【0038】
なお、バー91がフックレシーバ70に嵌合した状態でボタン115を押せば、副施療子80はスプリング66の付勢によりヘッド部3から出る方向に移動しようとするが、バー91がフックレシーバ70から外れた状態では、固定フック90が主施療子60の一方のアーム62に設けられたストッパ68(図7)に当接するので、副施療子80は下限固定位置を越えて回動しない。
【0039】
具体的には、バー91がフックレシーバ70に嵌合した状態でボタン115を押し、副施療子80をスプリング66の付勢力に抗してヘッド部3内に押し込めば、バー91が内ハウジングR22の嵌合溝34に嵌合する。これにより、副施療子80が内ハウジングR22に固定され、副施療子80がヘッド部3内に最も引っ込んだ状態でロックされる。この状態では主施療子60だけが施療動作を行う。反対に、バー91が内ハウジングR22の嵌合溝34に嵌合した状態でボタン115を押せば、副施療子80はスプリング66の付勢によりヘッド部3から突出する方向に回動し、バー91がフックレシーバ70に嵌合する。これにより、副施療子80が主施療子60に固定され、副施療子80がヘッド部3から最も突出した状態でロックされる。この状態では主施療子60と副施療子80が施療動作を行う。
【0040】
なお、副施療子80が可動範囲内を移動する際は、上記上限固定位置又は下限固定位置のいずれかで確実にロックされるように、内ハウジングR22の内側にはガイドレール35が設けられている。ガイドレール35は、副施療子80が上限固定位置と下限固定位置との間にある状態において、固定フック90のバー91がスプリング98の付勢力に抗してフックレシーバ70の反対側に回動した状態(係合解除状態)を維持するために、固定フック90のバー91の横方向に延伸した先端部と接触するように形成されており、ガイドレール35は解除維持手段を構成する。
【0041】
これにより、ボタン115を押し、バー91がフックレシーバ70又は内ハウジングR22の嵌合溝34との係合から解除された状態は、副施療子80が上限固定位置又は下限固定位置のいずれかに到達するまで保持されることとなり、副施療子80は上限固定位置又は下限固定位置のいずれかで確実にロックされる。このガイドレール35は、副施療子80の上限固定位置においてバー91の先端部が嵌合する嵌合溝35aを有しており、嵌合溝34とともにバー91、すなわち副施療子80を上限固定位置に固定する役割を果たしている。
【0042】
一方、固定フック90のロックを解除するリリースレバーリンク110のレバー111は、図13〜図18のように円弧状を呈しているが、これは、不要なモーメントの発生を抑えるために、固定フック90の位置によらずにレバー111をできるだけ固定フック90のレバー受け90aの左右方向ほぼ中央部分に接触させるためである。すなわち、副施療子80の上限固定位置と下限固定位置との間での回動に伴い固定フック90は副施療子80の貫通孔82を中心とした円弧状の軌跡を描くが、この円弧状の軌跡に沿うようにレバー111が延伸している。これにより、レバー111は固定フック90の位置にかかわらず固定フック90のレバー受け90aの左右方向ほぼ中央部分に接触するので、固定フック90をねじるような不要なモーメントが発生しない。しかも、固定フック90の位置(副施療子80の位置)に対して副施療子80を動かしたり止めたりするときのレバー111の変位量が変化せず、ボタン115の押圧操作が一定力及び一定量でよい。これらの結果、ボタン115の操作に対する副施療子80の固定及び固定解除の応答性が良好になる。
【0043】
このように構成したマッサージ器1では、主施療子60と副施療子80をともに施療動作に寄与させるためには、固定フック90をフックレシーバ70に係合させ、副施療子80を主施療子60に固定する。このとき、固定フック90が内ハウジングR22の嵌合溝34に嵌合しているときは、ボタン115を押せばロックが解除され、副施療子80に係るスプリング66の付勢力により副施療子80がヘッド部3から突出する方向に回動し、固定フック90がフックレシーバ70に係合する。この副施療子80が主施療子60に一体に固定されたときの常態では、主施療子60及び副施療子80は、ソレノイド組立体40のスプリング49によりヘッド部3から突出している(図15)。
【0044】
ここで、電源スイッチ7をONにすると、ソレノイド組立体40のプランジャ43がスプリング49の付勢力に抗して引っ込むのに伴って、主施療子60及び副施療子80がヘッド部3内に入る方向に移動する(図16)。プランジャ43が往復運動することで、主施療子60及び副施療子80が出入動作を繰り返し、施療部位(例えば肩部)に施療(たたく動作)が施される。この施療動作では、主施療子60と副施療子80がヘッド部3の長手方向に一直線状に並んでいるので、直線状の長い範囲に渡って施療動作が行われる。
【0045】
主施療子60だけを使用したいときは、ボタン115を押し、副施療子80をヘッド部3内に押し込めばよい。すると、固定フック90がフックレシーバ70との係合状態から内ハウジングR22の嵌合溝34との係合状態に移行し、副施療子80が内ハウジングR22に固定される。この副施療子80が内ハウジングR22に一体に固定されたときの常態では、主施療子60はソレノイド組立体40のスプリング49によりヘッド部3から突出しているが、副施療子80はヘッド部3内に引っ込んだままである(図17)。
【0046】
肩等の被施療部位に対してマッサージ器1を上方から当接させて施療している場合は、解除操作用ボタン115を押すだけで副施療子80はヘッド部3内に押し込まれる。これは、解除操作用ボタン115を押すことで固定フック90とフックレシーバ70とのロックが解除され、副施療子80とヘッド部3とは相対的に回動自在な状態となるため、下面が肩等の被施療部位に支えられた副施療子80に対してヘッド部3がその自重で下降するように相対的に回動するためである。このときガイドレール35により、副施療子80が上限固定位置に到達するまでは、固定フック90のバー91はフックレシーバ70又は内ハウジングR22の嵌合溝34との係合から解除された状態が保持される。従って、固定フック90はフックレシーバ70との係合が解除された後は確実に内ハウジングR22の嵌合溝34との係合状態に移行することができる。
【0047】
ここで、電源スイッチ7をONにすると、ソレノイド組立体40のプランジャ43がスプリング49の付勢力に抗して引っ込むのに伴って、主施療子60だけがヘッド部3内に入る方向に移動する(図18)。主施療子60だけが出入動作を繰り返すことで、施療部位(例えば肩部)に施療(たたく動作)が施される。この場合は、主施療子60だけが施療動作に寄与するので、直線状の短い範囲のみに施療動作が行われる。
【0048】
このように、このマッサージ器1によれば、ボタン115を押して副施療子80をヘッド部3から出せば広い範囲の施療動作に変更でき、ボタン115を押して副施療子80をヘッド部3内に押し込めば狭い範囲の施療動作に変更でき、ヘッド部3の長手方向に延びる施療子(主施療子60と副施療子80)の長さを可変とすることができる。しかも、施療範囲を明確に変化させる構成を、手持ち式に適した小ささ、軽さで実現することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 マッサージ器
2 本体
3 ヘッド部
4 軸部
15 施療機構
21,22 内ハウジングL,R
34 嵌合溝(ヘッド部側の被係合部、係合手段)
35 ガイドレール(解除維持手段)
35a 嵌合溝
40 ソレノイド組立体
60 主施療子
70 フックレシーバ(主施療子側の被係合部、係合手段)
70a 嵌合溝
80 副施療子
90 固定フック(係合部、係合手段)
91 バー
110 リリースレバーリンク(解除手段)
111 レバー(解除部)
115 解除操作用ボタン(操作部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅に比して長さが長い施療部を設けて該施療部にて叩きマッサージ動作を行うマッサージ器であって、
上記施療部はその長さ方向に短い施療子及び長い施療子の2つの施療子から構成され、
ヘッド部ハウジング内に、前記2つの施療子のうちの1の施療子を直接駆動する1の駆動手段を収容し、また、前記施療部を施療子の先端が前記ハウジングから出ている状態で収容し、
前記2つの施療子の先端が長さ方向に一直線状に並んでいる第1の状態と、前記長さ方向に短い施療子先端が他の施療子先端より突出する第2の状態とに切り替える切替手段を備え、
前記ヘッド部ハウジングに通気孔が設けられていることを特徴とするマッサージ器。
【請求項2】
前記駆動手段を収容する前記ヘッド部ハウジングと前記駆動手段のプランジャとの間に緩衝ラバーが設けられることを特徴とする請求項1に記載のマッサージ器。
【請求項3】
プログラム/マニュアル動作を切り替えるための切替スイッチを有することを特徴とする請求項1に記載のマッサージ器。
【請求項4】
電源の入/切の切り替え機能と施療動作の強弱の切り替え機能とを兼ね備えた1つのスイッチを有することを特徴とする請求項1に記載のマッサージ器。
【請求項5】
ヘッド部ハウジングは、3つのハウジングで互いに嵌合されて構成されることを特徴とする請求項1に記載のマッサージ器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−131674(P2009−131674A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−64688(P2009−64688)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【分割の表示】特願2004−12823(P2004−12823)の分割
【原出願日】平成16年1月21日(2004.1.21)
【出願人】(503246015)オムロンヘルスケア株式会社 (584)
【Fターム(参考)】