説明

マットレス装置及びマットレス装置のリサイクル方法

【課題】この発明はリサイクルが容易に行なえるようにしたマットレス装置を提供することにある。
【解決手段】金属線材によって形成されたスプリングユニット2と、スプリングユニットの上下面に積層されるポリエステル繊維からなる詰め物7と、詰め物に一端が接着されたポリエステル繊維からなる連結布10と、スプリングユニットと詰め物との積層体を被覆し上記連結布の他端が一体的に逢着されるポリエステル繊維からなる外装体11とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はスプリングユニットに詰め物を積層し、この積層体を外装体で被覆して構成されるマットレス装置及びそのリサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、マットレス装置はスプリングユニットを有する。このスプリングユニットは多数のコイルスプリングを行列状に配置し、隣り合うコイルスプリングの上端面と下端面とを図示しないヘリカル線によって連結するとともに、上下面の周縁部に枠線をクリップによって取着して形成されている。
【0003】
上記スプリングユニットの上下面にはそれぞれウレタンフォームや綿などを所定の厚さのシート状に形成した詰め物が積層され、この詰め物とスプリングユニットの積層体は外装体によって被覆される。
【0004】
上記外装体は上記スプリングユニットの上下面に設けられた鏡部と、外周面に設けられるまち部を有し、このまち部の上下端に上記鏡部の周縁をエッジテープによって縫合して形成されている。
【0005】
上記鏡部の内面の周縁部には連結布(フランジ布)の一端が全長にわたって縫着されている。この連結布の他端は上記詰め物の周辺部を巻き込んで上記スプリングユニットの周辺部に位置するコイルスプリングに複数のクリップによって連結される。それによって、上記スプリングユニットに対して上記外装体がずれ動かないようにしている。このような構成のマットレス装置は特許文献1に示されている。
【0006】
一方、長期の使用によってマットレス装置が損傷したため廃棄する場合、最近では分別収集が一般的であるから、マットレス装置を材料の種類毎に分けて廃棄しなければならない。その場合、マットレス装置はスプリングユニットの金属部分と、詰め物を形成するウレタンフォームと、外装体を形成する布地とに分けて廃棄しなければならない。
【特許文献1】特開2003−225143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記構成のマットレス装置によると、廃棄時に材料の種類毎に分けるためには、最初に外装体の鏡部とまち部との縫合部分をカッタなどによって切断する。ついで、外装体と詰め物をスプリングユニットから分離し、スプリングユニットの金属部分と、詰め物を形成するウレタンフォームと、外装体を形成する布地と分けることになる。
【0008】
しかしながら、詰め物は連結布によってスプリングユニットに連結されているから、この詰め物をスプリングユニットから容易に分離することができないということがあった。しかも、マットレス装置を金属部分、ウレタンフォーム及び布地の3つの材料に分けなければならないから、その仕分けにも手間が掛かるということがある。
【0009】
この発明は、マットレス装置の材料ごとの分別作業を容易に行なうことができるとともに、分別しなければならない材料の種類を少なくしたマットレス装置及びそのリサイクル方法提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、金属線材によって形成されたスプリングユニットと、
このスプリングユニットの上下面に積層されるポリエステル繊維からなる詰め物と、
この詰め物に一端が接着されたポリエステル繊維からなる連結布と、
上記スプリングユニットと詰め物との積層体を被覆し上記連結布の他端が一体的に逢着されるポリエステル繊維からなる外装体と
を具備したことを特徴とするマットレス装置にある。
【0011】
上記詰め物は、ポリエステル繊維を熱成型した保護部材と、ポリエステル繊維を上記保護部材よりも低い密度で成型したクッション部材とが上記スプリングユニットの上下面に順次積層されてなることが好ましい。
【0012】
上記外装体は上記スプリングユニットの上下面に設けられる一対の鏡部と、上記スプリングユニットの外周面に設けられるまち部とからなり、このまち部の上下端に上記一対の鏡部がポリエステル繊維からなるエッジテープによって上記連結布の他端とともに縫合されることが好ましい。
【0013】
この発明は、金属線材によって形成されたスプリングユニットと、
このスプリングユニットの上下面に積層されるポリエステル繊維からなる詰め物と、
この詰め物に一端が接着されたポリエステル繊維からなる連結布と、
上記スプリングユニットと詰め物との積層体を被覆し上記連結布の他端が一体的に逢着されるポリエステル繊維からなる外装体とを具備したマットレス装置のリサイクル方法であって、
上記外装体を上記スプリングユニットから分離可能な状態に切断する工程と、
切断された外装体を除去して上記スプリングユニットに対して上記外装体と詰め物を分離する工程と、
分離された上記外装体と詰め物の繊維部分と上記スプリングユニットの金属部分を別々にリサイクルする工程と、
リサイクルされた繊維部分と金属部分を再利用する工程と
を具備したことを特徴とするマットレス装置のリサイクル方法。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、連結布を外装体と詰め物とに連結したため、詰め物と外装体をスプリングユニットから容易に分離することができ、しかも詰め物と外装体が同じ材料によって形成されているから、分解後の分別作業も容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の一実施の形態を図面を参照しながら説明する。図1はマットレス装置1を示し、このマットレス装置1は図2に示すようにスプリングユニット2を備えている。このスプリングユニット2は複数のコイルスプリング3を行列状に配置し、隣り合うコイルスプリング3の上下端面がそれぞれヘリカル線4で連結されている。スプリングユニット2の上下面の周縁にはそれぞれ枠線5が図示しないクリップによって連結されている。
【0016】
上記スプリングユニット3の上下面にはそれぞれ詰め物7が積層されている。この詰め物7はスプリングユニット3の上下面に積層される保護部材8と、この保護部材8に積層されるクッション部材9からなる。
【0017】
上記保護部材8は、通常のポリエステル繊維に低融点のポリエステル繊維を所定の割合で混合して形成されたシートを熱成型することで、スプリングユニット3の平面形状と同じ大きさの平板部8aと、この平板部8aの周縁部に上記スプリングユニット3の外周面に係合する鍔部8bとを有する箱型状に形成されている。この保護部材8の外面には周方向に所定間隔で帯状の複数の連結布10の一端が接着或いは溶着などによって固着されている。
【0018】
それによって、スプリングユニット3の上下面に設けられた上記保護部材8は鍔部8bがスプリングユニット3の外周面に係合するから、このスプリングユニット3に対してずれ動くことがないよう一体的となっている。
【0019】
上記クッション部材9は上記保護部材8と同様、ポリエステル繊維によって形成されている。クッション部材9はポリエステル繊維の硬さが上記保護部材8よりも柔らかくなるよう設定されている。それによって、クッション部材9は保護部材8に比べて荷重に対して圧縮変形しやすくなっている。
なお、上記保護部材8は密度を高くすることで、スプリングユニット3との接触によって早期に損傷することのない耐摩耗性を備えている。
【0020】
上記スプリングユニット3と詰め物7との積層体は外装体11によって被覆されている。この外装体11は上記積層体の上面と下面に設けられる一対の鏡部12と、上記積層体の外周面に設けられるまち部13を有する。
【0021】
上記鏡部12とまち部13は、それぞれポリエステル繊維からなる表地12a,13aと裏地12b,13bとの間にポリエステル綿12c,13cを介在させ、これら三者を一体的にキルティングして形成されている。
【0022】
上記まち部13の上下端は上記一対の鏡部12の周縁部にポリエステル繊維からなるエッジテープ14によって一体的に縫合されている。上記まち部13の上下端と上記鏡部12の周縁部をエッジテープ14によって縫合する際、上記連結布10の他端も一緒に縫合される。
【0023】
このような構成のマットレス装置1によれば、長期の使用によって損傷したり、性能が劣化するなどして不用になった場合、そのマットレス装置1は図3にS1で示すようにたとえばメーカや回収業者等によって回収される。回収されたマットレス装置1は、S2に示すように外装体11のたとえばまち部13の高さ方向中途部を全周にわたってカッタなどによって切断する。
【0024】
外装体11を全周にわたって切断したならば、S3で示すようにその外装体11をスプリングユニット2から剥離する。上記外装体11には連結布10を介して詰め物10が連結されており、しかも詰め物10はスプリングユニット2には連結固定されていない。そのため、外装体11をスプリングユニット2から剥離すれば、この外装体11とともに詰め物10もスプリングユニット2から剥離することができる。
【0025】
外装体11を剥離したならば、この外装体11と詰め物7の繊維部分と、スプリングユニット2の金属部分を分離し、S4で示すように繊維部分をリサイクルする。それによって、S5で示すようにポリエステル繊維に再生してマットレス装置1の外装体11や詰め物10として再利用することができる。
一方、スプリングユニット2はS6で示すように金属部分としてリサイクルし、S7で示すように各種の鋼材に再生して再利用することができる。
【0026】
このように、上記構成のマットレス装置1によれば、詰め物7をスプリングユニット2に固定せずに設けるようにしたから、スプリングユニット2と詰め物7及び外装体11を分離する際、外装体11をカッタによって切断するだけで、この外装体11とともに詰め物7もスプリングユニット2から分離できる。そのため、分離作業を容易かつ迅速に行なうことが可能となる。
【0027】
上記詰め物7はスプリングユニット2に連結布10によって固定されていないが、詰め物7の保護部材8の鍔部8bがスプリングユニット2に係合している。そのため、詰め物7を連結布10によってスプリングユニット2に固定しなくとも、詰め物7がスプリングユニット2に対してずれ動くことが阻止される。
【0028】
上記連結布10は一端が上記保護部材8に連結固定され、他端が外装体11の鏡部12とまち部13とに一体的に縫合されている。そのため、外装体11は連結布10と保護部材8を介してスプリングユニット2に固定されるから、上記外装体11がスプリングユニット2に対してずれ動くことがない。
【0029】
つまり、詰め物7の保護部材8に鍔部8bを形成したため、詰め物7をスプリングユニット2固定せずにすむ。そのため、詰め物7と外装体11とをスプリングユニッ2から容易に分離することが可能となる。
【0030】
上記詰め物7と外装体11は全てをポリエステル繊維によって形成されている。そのため、マットレス装置1はスプリングユニット1の金属部分と、詰め物7と外装体11の繊維部分の2種類の材料に分別するだけでよいから、そのことによっても不用となったマットレス装置1の分別作業を迅速かつ容易に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明の一実施の形態を示すマットレス装置の斜視図。
【図2】マットレス装置の一部分の拡大断面図。
【図3】マットレス装置をリサイクルときのフローチャート。
【符号の説明】
【0032】
2…スプリングユニット、7…詰め物、8…保護部材、9…クッション部材、10…連結布、11…外装体、12…鏡部、13…まち部、14…エッジテープ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属線材によって形成されたスプリングユニットと、
このスプリングユニットの上下面に積層されるポリエステル繊維からなる詰め物と、
この詰め物に一端が接着されたポリエステル繊維からなる連結布と、
上記スプリングユニットと詰め物との積層体を被覆し上記連結布の他端が一体的に逢着されるポリエステル繊維からなる外装体と
を具備したことを特徴とするマットレス装置。
【請求項2】
上記詰め物は、ポリエステル繊維を熱成型した保護部材と、ポリエステル繊維を上記保護部材よりも低い密度で成型したクッション部材とが上記スプリングユニットの上下面に順次積層されてなることを特徴とする請求項1記載のマットレス装置。
【請求項3】
上記外装体は上記スプリングユニットの上下面に設けられる一対の鏡部と、上記スプリングユニットの外周面に設けられるまち部とからなり、このまち部の上下端に上記一対の鏡部がポリエステル繊維からなるエッジテープによって上記連結布の他端とともに縫合されることを特徴とする請求項1記載のマットレス装置。
【請求項4】
金属線材によって形成されたスプリングユニットと、
このスプリングユニットの上下面に積層されるポリエステル繊維からなる詰め物と、
この詰め物に一端が接着されたポリエステル繊維からなる連結布と、
上記スプリングユニットと詰め物との積層体を被覆し上記連結布の他端が一体的に逢着されるポリエステル繊維からなる外装体とを具備したマットレス装置のリサイクル方法であって、
上記外装体を上記スプリングユニットから分離可能な状態に切断する工程と、
切断された外装体を除去して上記スプリングユニットに対して上記外装体と詰め物を分離する工程と、
分離された上記外装体と詰め物の繊維部分と上記スプリングユニットの金属部分を別々にリサイクルする工程と、
リサイクルされた繊維部分と金属部分を再利用する工程と
を具備したことを特徴とするマットレス装置のリサイクル方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−307120(P2008−307120A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−155526(P2007−155526)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【出願人】(000010032)フランスベッド株式会社 (95)
【Fターム(参考)】