説明

マットレス装置

【課題】この発明は、一端部を軽い力で持ち上げて所定の角度で保持することができるマットレス装置を提供することにある。
【解決手段】 長手方向の一端部に設けられた第1のスプリングユニット部7及びこの第1のスプリングユニット部と分断されて長手方向の一端部を除く部分に第1のスプリングユニット部と所定の隙間9を介して設けられた第2のスプリングユニット部8を有するスプリングユニット5と、第1のスプリングユニット部の外周に第1のスプリングユニット部と一体的に設けられた可動杆状部材と、第2のスプリングユニット部の外周に第2のスプリングユニット部と一体的に設けられた固定杆状部材と、固定杆状部材に対して可動杆状部材を回動可能かつ所定の回動角度で保持可能に連結したヒンジ機構と、スプリングユニット及びこの上下面の少なくとも上面に積層された弾性シート46の積層体を被覆した外装体47とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はベッドなどに用いられるマットレス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、ベッドに用いられるマットレス装置はコイルスプリングなどのばね体を平面形状が矩形状になるように組んで形成されたスプリングユニットを有し、このスプリングユニットの上下面にはウレタンフォームなどによって形成された弾性シートを積層し、この積層体を布地を袋状に縫製した外装体で被覆して構成されている。
【0003】
マットレス装置の上面に仰臥した利用者は、仰臥した姿勢で読書をしたり、テレビを見ることがある。その場合、頭部は水平状態よりもわずかに持ち上げた状態の方が楽に読書をしたり、テレビを見ることができる。
【0004】
従来のマットレス装置では、利用者の頭部を上げた状態で保持するということができないから、利用者が頭部を上げるためには、枕の下に座布団を折り畳んで挟むということを行なっていた。しかしながら、そのようにして頭部を持ち上げるようにしたのでは安定性が悪いということがあったり、頚部が強く屈曲するため疲れ易いということがある。
【0005】
そこで、特許文献1に示されるマットレス装置が提案されている。特許文献1に示されたマットレス装置は、スプリングユニットの幅方向の両側にヒンジ機構によって連結された固定杆状部材と可動杆状部材を上記スプリングユニットと一体的に設け、可動杆状部材を固定杆状部材に対して所定の角度で起立させ、上記ヒンジ機構によってその起立角度で保持する。それによって、上記スプリングユニットの一端部を所定の上昇角度で屈曲させて保持することができるから、その屈曲部分に利用者が頭部を安定した状態で載せることができるというものである。
【特許文献1】特開2004−261214号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示された構成のマットレス装置によれば、スプリングユニットの一端部をヒンジ機構によって屈曲させた状態で確実に支持することができるから、利用者は頭部をスプリングユニットの屈曲した部分に支持された姿勢を楽に維持することができる。
【0007】
特許文献1では、スプリングユニットの一端部を屈曲し易くするために、スプリングユニットの上下面の周縁部に設けられた枠線を、スプリングユニットの屈曲される部分で切断し、屈曲させるときに枠線が屈曲抵抗にならないようにしている。
【0008】
しかしながら、枠線を切断して屈曲時に枠線が抵抗にならないようにしても、スプリングユニットの一端部を屈曲させるにはスプリングユニット自体が屈曲抵抗となる。そのため、スプリングユニットの一端部を軽い力で容易に屈曲させることができないということがある。
【0009】
しかも、利用者はマットレス装置上に仰臥した状態で頭部を持ち上げながらスプリングユニットの一端部を屈曲させたいということが多い。しかしながら、そのような場合にはスプリングユニットの屈曲操作を仰臥した姿勢で行うことになるため、大きな力を入れずらいから、スプリングユニットの屈曲操作を軽い力で行えるようにすることが強く望まれている。
【0010】
この発明は、スプリングユニットの一端部を軽い力で容易に屈曲させることができるようにしたマットレス装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、長手方向の一端部に設けられた第1のスプリングユニット部及びこの第1のスプリングユニット部と分断されて上記長手方向の一端部を除く部分に上記第1のスプリングユニット部と所定の隙間を介して設けられた第2のスプリングユニット部を有するスプリングユニットと、
上記第1のスプリングユニット部の少なくとも幅方向の両側にこの第1のスプリングユニット部と一体的に設けられた可動杆状部材と、
上記第2のスプリングユニット部の少なくとも幅方向の両側にこの第2のスプリングユニット部と一体的に設けられた固定杆状部材と、
上記固定杆状部材に対して上記可動杆状部材を回動可能かつ所定の回動角度で保持可能に連結したヒンジ機構と、
上記スプリングユニットの上下面の少なくとも上面に積層された弾性シートと、
この弾性シートと上記スプリングユニットとの積層体を被覆した外装体と
を具備したことを特徴とするマットレス装置にある。
【0012】
上記第1のスプリングユニット部と第2のスプリングユニットの上記隙間を挟んで対向する側辺は、これらの側辺がぶつかって音を出すのを防止する消音部材によって被覆されていることが好ましい。
【0013】
上記弾性シートは上記スプリングユニットの上面と下面との両方に設けられ、上面の弾性シートは下面の弾性シートよりも厚手であることが好ましい。
【0014】
上記弾性シートは上記スプリングユニットの上面と下面との両方に設けられ、上記第1のスプリングユニット部と第2のスプリングユニット部との隙間には、上記弾性シートが上記隙間内へ変形するのを防止する補強弾性部材が設けられていることが好ましい。
【0015】
上記弾性シートは上記スプリングユニットの上面と下面との両方に設けられ、これら弾性シートの上記第1のスプリングユニット部と第2のスプリングユニット部との隙間を被覆した部分は、上記第1のスプリングユニット部を上記第2のスプリングユニット部に対して上昇方向に回動させたときに上記スプリングユニットの上面を被覆した弾性シートが浮き上がるのを防止する連結部材によって連結されていることが好ましい。
【0016】
上記ヒンジ機構は回動可能かつ所定の回動角度で保持可能に連結された第1のアームと第2のアームを有し、
上記第1のアームに上記可動杆状部材が連結固定され、上記第2のアームに上記固定杆状部材がスライド可能に連結されていることが好ましい。
【0017】
上記外装体の上記第1のスプリングユニットに対応する部分には、上記ヒンジ機構を作動させて上記第1のスプリングユニットを起上させるための作動部材が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、スプリングユニットを第1のスプリングユニット部と第2のスプリングユニット部に分断し、これらを所定の隙間を介して配置してヒンジ機構で連結したから、スプリングユニットの一端部を屈曲上昇させるとき、スプリングユニットが屈曲の抵抗となることがないから、その屈曲操作を軽い力で容易に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1乃至図6はこの発明の第1の実施の形態を示す。図1はマットレス装置1をベッド2の床板3上に載置した状態を示す斜視図であって、このマットレス装置1は上記ベッド2のヘッドボード4側に位置する長手方向の一端部1aを所定の角度で上昇させて保持することができるようになっている。
【0020】
上記マットレス装置1は、図2と図3に示すようにスプリングユニット5を有する。このスプリングユニット5はマットレス装置1の長手方向の一端部に設けられた第1のスプリングユニット部7と、それ以外の部分に設けられた第2のスプリングユニット部8とに分割されていて、これら第1、第2のスプリングユニット部7,8は所定寸法の隙間9を介して配置されている。
【0021】
第1、第2のスプリングユニット部7,8は一本の線材によって軸線を平行にした複数のコイル部11を連続して成形した複数のばね体12がマットレス装置1の幅方向に並設されている。隣り合うばね体12の上下端はヘリカル線13によって連結されている。さらに、各スプリングユニット部7,8の上下面の周縁部の全長には枠線14がクリップ15によって連結されている。
なお、枠線14は第1のスプリングユニット部7と、第2のスプリングユニット部8の対向する一側縁を除く三側縁に沿って設けるようにしてもよい。
【0022】
上記第1のスプリングユニット部7と上記第2のスプリングユニット部8の互いに対向する一側辺を除く三側辺には、図4と図5に示すコ字状の可動杆状部材17と、固定杆状部材18が後述する保持手段によって上記各スプリングユニット部7,8と一体的に設けられている。
【0023】
上記可動杆状部材17と固定杆状部材18とはパイプ材によって形成されていて、上記スプリングユニット5の長手方向の両側に位置する端部は、それぞれヒンジ機構21によって回動可能かつ所定の回動角度で保持可能に連結されている。
【0024】
ヒンジ機構21によって連結された上記可動杆状部材17と固定杆状部材18は、上記スプリングユニット5の平面形状よりもわずかに小さな矩形状をなしている。それによって、スプリングユニット5の外周部に設けられた固定杆状部材11と可動杆状部材12とは、図4に示すようにスプリングユニット5の周辺部に位置するコイル部11の軸方向下端部の螺旋状の巻き線間に入り込み、このスプリングユニット5に一体的に保持されている。
【0025】
上記ヒンジ機構13は図6に示すように一端が枢軸26によって枢着された、取付け部としての第1のアーム27と第2のアーム28を有する。第1のアーム27の他端には第1の連結ロッド27aの一端が嵌入されて溶接固定され、この第1の連結ロッド27aの他端には上記可動杆状部材17の端部が外嵌されて溶接固定されている。
【0026】
上記第2のアーム28の端部には第2の連結ロッド28aの一端部が嵌入されて溶接固定され、この第2の連結ロッド28aの他端には上記固定杆状部材18の端部がスライド可能に外嵌されている。それによって、上記可動杆状部材17は上記ヒンジ機構13とともに上記固定杆状部材18に対して図6に矢印Aで示す方向に移動可能となっている。
【0027】
第1のアーム27の一端には歯29が形成され、第2のアーム28の一端には上記歯29に係合するストッパ31がピン32によって枢支されている。このストッパ32はばね33によって上記歯29に係合する方向に付勢されている。
【0028】
上記枢軸26にはカム板34が回動可能に取付けられている。このカム板34の外周面には周方向に所定の角度で凹部35と凸部36とが形成されている。上記凸部36の上記枢軸26からの半径寸法は、上記歯29の枢軸26からの半径寸法よりも大きく形成されている。上記第1のアーム27の一端には、上記歯29に上記ストッパ31が係合した状態において、上記凹部35に位置する係合体37が設けられている。
【0029】
それによって、上記歯29と上記ストッパ31との係合によって第1のアーム27を第2のアーム28に対して所定の回動角度で保持することができる。上記第1のアーム27を図6に矢印Bで示す方向に回動させ、この回動にカム板34をその凹部35の一端に当接する係合体37によって連動させれば、このカム板34の凸部36に上記ストッパ31が乗り上げて歯29との係合が外れる。それによって、上記第1のアーム27を矢印と逆方向に自由に回動させることができる。
【0030】
上記第1のアーム27の矢印Bで示す方向と逆方向の回動は、上記係合体37が凹部35の他端に当接してカム板34を回動させ、上記ストッパ31がカム板34の凸部36から外れて歯29に係合するまで、すなわち第1のアーム27が第2のアーム28に対してほぼ水平な状態になるまで回動させることができる。
【0031】
したがって、上記可動杆状部材17は、上記ヒンジ機構21により、上記固定杆状部材18に対して所定の角度で起立した状態で保持可能であるとともに、起立した状態から水平に倒伏させることができるようになっている。
【0032】
図3と図4に示すように、上記スプリングユニット5の上下面にはそれぞれフェルト41が全面にわたって設けられている。各フェルト41の周辺部は枠線14を巻き込んで折り曲げられ、図示しないクリップによって上記枠線8に保持されている。
【0033】
上記スプリングユニット5の下面に設けられたフェルト41には保持手段を構成する保持布43が積層されている。この保持布43はスプリングユニット5の平面形状よりも十分に大きな矩形状に形成されていて、周辺部がスプリングユニット5の周辺部から外方へ延出されている。
【0034】
上記保持布43のスプリングユニット5の周辺部から延出された周辺部は、図4に示すようにスプリングユニット5の周辺部に設けられた可動杆状部材17と固定杆状部材18とにこれらの内周側から外周側に向かって巻かれ、スプリングユニット5の下面の周辺部に戻されている。
【0035】
上記保持布43の各杆状部材17,18の内周側に向かう部分は図示しないクリップによって上記フェルト41の端部とともに下側の枠線14に連結固定され、内周側から外周側に折り曲げられた部分は図示しないクリップによって内周側に向かう部分ととともに上記枠線14に連結固定されている。それによって、可動杆状部材17と固定杆状部材18とは、上記保持布43の周辺部よってスプリングユニット5に一体的に保持されている。
【0036】
可動杆状部材17と固定杆状部材18とがスプリングユニット5に一体的に保持されていることで、上記可動杆状材17を固定杆状部材18に対して所定の角度で回動させれば、その回動にスプリングユニット5の第1のスプリングユニット部7が連動する。それによって、この第1のスプリングユニット部7を第2のスプリングユニット部8に対して所定の角度で屈曲上昇させることができる。しかも、保持布43の周辺部が各杆状部材17,18に巻回されているとことで、各杆状部材17,18と各スプリングユニット部7,8のコイル部11が直接ぶつかり合って金属音が発生するのが防止される。
【0037】
さらに、可動杆状部材17と固定杆状部材18は、各スプリングユニット部7,8の三方を囲むほぼコ字状となっている。そのため、各スプリングユニット部7,8は可動杆状部材17と固定杆状部材18とによって幅方向に捩れるのが防止される。とくに、可動杆状部材17を第1のスプリングユニット部7とともに上昇させたとき、上昇した第1のスプリングユニット部7は幅方向に捩れ易くなるが、上記可動杆状部材17によって振れるのが防止される。
【0038】
図3に示すように、上記第1のスプリングユニット部7と第2のスプリングユニット部8の上記隙間9を介して対向する上面の一側縁には、布地や樹脂性シートによって形成された消音部材44がクリップ45によって取着されている。それによって、第1のスプリングユニット7を上昇させたときに、その一側縁が第2のスプリングユニット部8の一側縁に直接ぶつかって金属音が発生するのが防止される。
【0039】
上記スプリングユニット5の上面のフェルト41には2枚の弾性シート46が積層され、下面の保持布43に1枚の弾性シート46が積層されている。つまり、弾性シート46はスプリングユニット5の上面が下面より厚手になっている。
【0040】
上記スプリングユニット5と弾性シート46の積層体は外装地47によって被覆されている。この外装地47は、図3と図4に示すように上記スプリングユニット5の上面を被覆した上部鏡部48と、下面を被覆した下部鏡部49及び外周面を被覆したまち部50とからなる。各鏡部48,49及びまち部50は表地と裏地との間に弾性シートを挟んだ3層構造となっていて、まち部50の上下端に各鏡部48,49の周辺部がテープエッジ51によって一体的に縫合されている。
【0041】
図1に示すように、上記外装体47の上記第1のスプリングユニット部7に対応する部分の端部には、紐状の部材をコ字状に曲成した作動部材58が一端部を外装体47の下面に縫着し、中途部を側面に縫着して他端部を上面側に延出させて設けられている。それによって、作動部材58を上方へ引けば、上記ヒンジ機構21を作動させて上記第1のスプリングユニット部7の部分である、マットレス装置1の一端部1aを起上させることができる。
【0042】
上記構成のマットレス装置1によれば、スプリングユニット5の外周部に、可動杆状部材17と固定杆状部材18とを、それぞれ第1のスプリングユニット部7及び第2のスプリングユニット部8と一体的に設け、これら杆状部材17,18をヒンジ機構21によって回動可能かつ所定の回動角度で保持可能に連結した。
【0043】
そのため、マットレス装置1の長手方向の一端部1aを上昇させれば、ヒンジ機構21が作動して上記一端部1aの第1のスプリングユニット部7が可動杆状部材17とともに上昇し、図1に示すように所定の上昇角度で保持される。つまり、マットレス装置1の一端部1aを上方へ屈曲させることができる。
【0044】
それによって、マットレス装置1の上面に仰臥した利用者は上記一端部1aによって頭部を持ち上げた姿勢を楽に維持することができるから、仰臥した状態で読書をしたり、テレビを見るなどのことができる。
【0045】
マットレス装置1の一端部1aを上昇させる際、その一端部1aには作動部材58が設けられている。そのため、利用者は作動部材58によって上記一端部1aを上昇方向に容易に引き上げることができる。つまり、上記作動部材58によってマットレス装置1の一端部1aの起上操作を容易に行なうことができる。
【0046】
マットレス装置1の一端部1aに設けられた第1のスプリングユニット部7は、マットレス装置1の他の部分の第2のスプリングユニット部8と隙間9を介して分断されている。そのため、マットレス装置1の一端部1aを上昇させるときに大きな抵抗が加わることがほとんどない。
【0047】
つまり、スプリングユニット5を2つのスプリングユニット部7,8に分断したことで、スプリングユニット5を屈曲させることなく、第1のスプリングユニット部7を上昇させることができる。そのため、第1のスプリングユニット部7を上昇させるときの操作を軽い力で楽に行うことが可能となる。
【0048】
それによって、たとえば利用者がマットレス装置1上で仰臥した姿勢であっても、頭部を上げながら片手で作動部材58を引いたり、片手でマットレス装置1の一端部1aを直接持ち上げるなどして上昇させることができるから、使い易くて便利である。つまり、利用者がマットレス装置1上から降りることなく、その一端部1aの回動操作を行うことができる。
【0049】
このように、スプリングユニット1を第1のスプリングユニット部7と第2のスプリングユニット部8とに分断したことで、マットレス装置1の一端部1aをほとんど抵抗なく上昇させることができる。
【0050】
しかも、第1のスプリングユニット部7と第2のスプリングユニット部8との分断された部分の上面には2枚の弾性シート46を積層して補強した。そのため、第1のスプリングユニット部7と第2のスプリングユニット部8との分断された隙間9に、たとえば利用者の身体の一部が落ち込みにくくなるから、第1のスプリングユニット部7と第2のスプリングユニット部8とに分断しても、マットレス装置1の性能が低下するのを防止できる。
【0051】
マットレス装置1の一端部1aを上昇させる際、第1のスプリングユニット部7と第2のスプリングユニット部8との分断された部分の上面に設けられた2枚の弾性シート46が屈曲される。そのため、弾性シート46が屈曲されることによって生じる抵抗でマットレス装置1の一端部1aを屈曲させ難くなるということがある。
【0052】
しかしながら、マットレス装置1の一端部1aを上昇させる際、弾性シート46が屈曲されることで反力による抵抗が生じると、その抵抗によって固定杆状部材18に対してヒンジ機構21が図6に矢印Aで示す方向へスライドする。つまり、第1のスプリングユニット部7が第2のスプリングユニット部8に対してスライドする。
【0053】
それによって、上記弾性シート46を屈曲させることで生じる抵抗が緩和されるから、そのことによっても第1のスプリングユニット部7を比較的軽い力で容易に屈曲上昇させることができる。
【0054】
図7はこの発明の第2の実施の形態を示す。この実施の形態は、スプリングユニット5の上面と下面とのそれぞれに弾性シート46を2枚ずつ積層するとともに、第1のスプリングユニット部7と第2のスプリングユニット部8との隙間9には、帯板状の補強弾性部材53をスプリングユニット5の幅方向全長にわたって設けるようにした。
【0055】
上記補強弾性部材53はその上下端面をスプリングユニット5の上下面に設けられたフェルト41に接着固定され、それによって上記隙間9で上記補強弾性部材53がずれ動いたり、倒れることがないようにしている。
【0056】
このような構成によれば、マットレス装置1の上記隙間9に対応する部分の上下面はスプリングユニット5の上下面にそれぞれ設けられた2枚の弾性シート46によって補強されるばかりか、上記隙間9の上下の弾性シート46間に設けられた補強弾性部材53によっても補強される。
したがって、利用者の身体の一部が弾性シート46を変形させて上記隙間9に落ち込むのを確実に防止することができる。
【0057】
図8はこの発明の第3の実施の形態であって、この実施の形態はスプリングユニット5の上下面に設けられるフェルト41を、第1のスプリングユニット部7と第2のスプリングユニット部8との隙間9の部分で分断し、それぞれ各スプリングユニット部7,8の対向する上下2組の側辺部に巻き付け、クリップ42によって保持する。それによって、フェルト41が第1のスプリングユニット部7と第2のスプリングユニット部8の一側辺が直接ぶつかり合って金属音が発生するのを防止する消音効果を奏することになる。
【0058】
さらに、スプリングユニット5の上面に設けられた2枚の弾性シート46と下面に設けられた1枚の弾性シート46を第1、第2のスプリングユニット部7,8の隙間9の部分で紐状の連結部材55によって連結する。マットレス装置1の上面に突出する連結部材55の一端には釦などの表示部材56を連結する。
【0059】
それによって、マットレス装置1の一端部1aを上昇方向に屈曲させたとき、スプリングユニット5の上面に積層された弾性シート46が浮き上がるのが上記連結部材55によって防止することができる。
【0060】
しかも、連結部材55に連結された表示部材56が上記隙間9の上面に設けられているから、マットレス装置1の一端部1aにおける屈曲される位置が上記表示部材56によって一目で判別することができる。
【0061】
なお、この第3の実施の形態ではスプリングユニット5の下面に可動杆状部材17と固定杆状部材18を保持するための保持布43は設けず、ヒンジ機構21によって連結された可動杆状部材17と固定杆状部材18がなす矩形の大きさをスプリングユニット5の平面形状よりもわずかに小さく形成する。それによって、上記可動杆状部材17と固定杆状部材18はスプリングユニット5に一体的に結合される。
【0062】
上記各実施の形態ではスプリングユニットの一端部だけを起上させることができるようにしたが、他端部も一端部と同様に起上させることができるようにしてもよい。そのような構造にすれば、マットレス装置上に仰臥した利用者は、頭部だけでなく、足部を上げた状態で保持することができるから、足部の疲労回復などを図る場合になどに有効である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】この発明の第1の実施の形態を示すベッド上に載置されたマットレス装置の斜視図。
【図2】スプリングユニットの一端部分を示す平面図。
【図3】マットレス装置の第1のスプリングユニット部と第2のスプリングユニット部との隙間が形成された部分の断面図。
【図4】スプリングユニットと可動杆状部材及び固定杆状部材の連結部分を示す断面図。
【図5】スプリングユニットの概略的構成を示す側面図。
【図6】ヒンジ機構の側断面図。
【図7】この発明の第2の実施の形態を示す第1のスプリングユニット部と第2のスプリングユニット部との隙間が形成された部分の断面図。
【図8】この発明の第3の実施の形態を示す第1のスプリングユニット部と第2のスプリングユニット部との隙間が形成された部分の断面図。
【符号の説明】
【0064】
5…スプリングユニット、7…第1のスプリングユニット部、8…第2のスプリングユニット部、9…隙間、17…可動杆状部材、18…固定杆状部材、21…ヒンジ機構、41…フェルト、44…消音部材、46…弾性シート、47…外装体、53…補強弾性部材、55…連結部材、56…表示部材、58…作動部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向の一端部に設けられた第1のスプリングユニット部及びこの第1のスプリングユニット部と分断されて上記長手方向の一端部を除く部分に上記第1のスプリングユニット部と所定の隙間を介して設けられた第2のスプリングユニット部を有するスプリングユニットと、
上記第1のスプリングユニット部の少なくとも幅方向の両側にこの第1のスプリングユニット部と一体的に設けられた可動杆状部材と、
上記第2のスプリングユニット部の少なくとも幅方向の両側にこの第2のスプリングユニット部と一体的に設けられた固定杆状部材と、
上記固定杆状部材に対して上記可動杆状部材を回動可能かつ所定の回動角度で保持可能に連結したヒンジ機構と、
上記スプリングユニットの上下面の少なくとも上面に積層された弾性シートと、
この弾性シートと上記スプリングユニットとの積層体を被覆した外装体と
を具備したことを特徴とするマットレス装置。
【請求項2】
上記第1のスプリングユニット部と第2のスプリングユニットの上記隙間を挟んで対向する側辺は、これらの側辺がぶつかって音を出すのを防止する消音部材によって被覆されていることを特徴とする請求項1記載のマットレス装置。
【請求項3】
上記弾性シートは上記スプリングユニットの上面と下面との両方に設けられ、上面の弾性シートは下面の弾性シートよりも厚手であることを特徴とする請求項1記載のマットレス装置。
【請求項4】
上記弾性シートは上記スプリングユニットの上面と下面との両方に設けられ、上記第1のスプリングユニット部と第2のスプリングユニット部との隙間には、上記弾性シートが上記隙間内へ変形するのを防止する補強弾性部材が設けられていることを特徴とする請求項1記載のマットレス装置。
【請求項5】
上記弾性シートは上記スプリングユニットの上面と下面との両方に設けられ、これら弾性シートの上記第1のスプリングユニット部と第2のスプリングユニット部との隙間を被覆した部分は、上記第1のスプリングユニット部を上記第2のスプリングユニット部に対して上昇方向に回動させたときに上記スプリングユニットの上面を被覆した弾性シートが浮き上がるのを防止する連結部材によって連結されていることを特徴とする請求項1記載のマットレス装置。
【請求項6】
上記ヒンジ機構は回動可能かつ所定の回動角度で保持可能に連結された第1のアームと第2のアームを有し、
上記第1のアームに上記可動杆状部材が連結固定され、上記第2のアームに上記固定杆状部材がスライド可能に連結されていることを特徴とする請求項1記載のマットレス装置。
【請求項7】
上記外装体の上記第1のスプリングユニットに対応する部分には、上記ヒンジ機構を作動させて上記第1のスプリングユニットを起上させるための作動部材が設けられていることを特徴とする請求項1記載のマットレス装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−325607(P2007−325607A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−146583(P2006−146583)
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(000010032)フランスベッド株式会社 (95)