説明

マットレス装置

【課題】この発明はスプリングユニットの上下面に設けられた保護部材がずれ動くのを防止したマットレス装置を提供することにある。
【解決手段】スプリングユニット1の上下面に設けられる保護部材6と、保護部材とスプリングユニットとの積層体を被覆した外装体11を具備し、
保護部材は、シート状部材8を加圧加熱して周辺部にスプリングユニットの外周面に係合する周壁部9を有する箱型状に成形されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はスプリングユニットを用いて構成されるマットレス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ベッド装置に用いられるマットレス装置はスプリングユニットを有する。このスプリングユニットの上下面には保護部材を介してウレタンフォームなどの材料によって形成されたシート状の弾性部材が設けられる。
【0003】
上記保護部材としては利用者の荷重によって上記弾性部材がスプリングユニット内に落ち込むのを防止することができる硬さ及び通気性を有する材料、たとえば椰子やサイザルなどの植物繊維をシート状に形成したものが用いられる。
【0004】
積層された上記スプリングユニット、保護部材及び弾性部材は外装体によって被覆される。この外装体は上記スプリングユニットの上下面に設けられる一対の鏡部材と、上記スプリングユニットの外周面に設けられるまち部材からなり、上記鏡部材の周縁部と上記まち部材の上下端がテープエッジによって縫合される。
【0005】
上記保護部材は弾性部材とともに上記スプリングユニットの上下面でずれ動く虞がある。そこで、従来は上記外装体の鏡地の内面の周辺部にフランジ布の一端を逢着し、このフランジ布の中途部によって上記弾性部材の周縁部を包み込むようにして巻き込み、上記フランジ布の他端を上記スプリングユニットの周辺部にクリップによって連結する。
【0006】
それによって、上記弾性部材が積層された上記保護部材が上記フランジ布によって上記スプリングユニットの上下面に上記弾性部材を介して保持されるから、このスプリングユニットの上下面でずれ動くのが阻止されることになる。
【0007】
このような構成のマットレス装置は特許文献1や特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−28054号公報
【特許文献2】特開2006−212044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記保護部材及び弾性部材を上記フランジ布によってスプリングユニットに保持すれば、上記保護シート及び弾性部材が上記スプリングユニットの上下面でずれ動くのを防止することができる。
【0010】
しかしながら、フランジ布を用いて上記保護部材及び弾性部材をスプリングユニットに保持する構成では、外装体の鏡地の内面の周辺部にフランジ布の一端を逢着しなければならないということがあったり、そのフランジ布の中途部でスプリングユニットの上下面に積層された保護部材と弾性部材の周辺部を巻き込みながら他端を上記スプリングユニットにクリップによって連結固定しなければならないということがある。
【0011】
そのため、鏡地の内面に一端が縫合されたフランジ布の中途部で保護部材と弾性部材の周辺部を巻き込み、その他端をスプリングユニットにクリップによって連結するという作業に多くの手間が掛かるばかりか、その作業に熟練を要するため、生産性が大きく低下するということがあった。
【0012】
この発明は、簡単な構造であって、しかも簡単な作業で保護部材がスプリングユニットの上下面でずれ動くことがないようにしたマットレス装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、スプリングユニットと、
このスプリングユニットの上下面に設けられる保護部材と、
この保護部材と上記スプリングユニットとの積層体を被覆した外装体と
を具備し、
上記保護部材は、植物性の繊維に接着剤を絡ませたシート状部材を加圧加熱して周辺部に上記スプリングユニットの外周面に係合する周壁部を有する箱型状に成形されてなることを特徴とするマットレス装置にある。
【0014】
上記スプリングユニットの上下面と上記外装体との間にはシート状の第1の弾性部材が設けられていることが好ましい。
【0015】
上記外装体は表地と裏地の間にシート状の第2の弾性部材が設けられ、これら三者を一体的にキルティングして形成されていることが好ましい。
【0016】
上記接着剤は熱硬化性の樹脂からなることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、スプリングユニットの上下面に積層される保護部材を、周辺部にスプリングユニットの外周面に係合する周壁部を有する箱型状に形成したから、保護部材をスプリングユニットの上下面に積層するだけで、その保護部材がスプリングユニットの上下面でずれ動くのを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の第1の実施の形態を示すマットレス装置の一部の拡大断面図。
【図2】上記マットレス装置の斜視図。
【図3】(a)は成形される前のシート状の保護部材を示す斜視図、(b)は保護部材を箱型状に成形した状態を示す斜視図。
【図4】この発明の第2の実施の形態を示す保護部材の斜視図。
【図5】この発明の第3の実施の形態を示す保護部材の斜視図。
【図6】この発明の第4の実施の形態を示す保護部材及びシート部材の斜視図。
【図7】(a)はこの発明の第5の実施の形態を示す保護部材及びシート部材の斜視図、(b)は保護部材を形成する枠部材の斜視図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
図1乃至図3はこの発明の第1の実施の形態を示し、図1はマットレス装置の一部を拡大した断面図、図2はマットレス装置の斜視図である。図1に示すようにマットレス装置はスプリングユニット1を有する。このスプリングユニット1はばね体としての多数のコイルスプリング2が行列状に並設されている。隣り合うコイルスプリング2は上下端面が図示しないヘリカル線によって行方向或いは列方向に連結されている。
【0020】
なお、ばね体としてはコイルスプリング2に代わり、1本の鋼線によって複数のコイル部が軸線を平行にして連続して形成された、いわゆる連続ばねなど、他のばね体を用いるようにしてもよい。
【0021】
上記スプリングユニット1の上下面の周縁部には枠線3が設けられている。この枠線3はクリップ4によって上記スプリングユニット1の周縁部に位置するコイルスプリング2の上下端面に連結されている。
【0022】
上記スプリングユニット1の上下面には保護部材6を介してシート状の第1の弾性部材7が積層されている。上記保護部材6は、図3(a)に示すように椰子の繊維やサイザルの繊維などの植物性の繊維を所定の厚さを有して上記スプリングユニット1の平面形状よりも大きな矩形平板状に形成されたシート状部材8に接着剤を絡め、このシート状部材8を図示しない金型によって加熱しながら加圧する。
【0023】
それによって、上記シート状部材8は図3(b)に示すように周辺部に周壁部9を有する箱型状に成形される。上記第1の弾性部材7はウレタンフォームなどによって上記スプリングユニット1の平面形状とほぼ同じ大きさの矩形状に形成されている。
【0024】
上記接着剤としては熱硬化性の樹脂や合成ゴム樹脂が用いられる。それによって、上記金型によって加圧加熱されて成形された上記シート状部材8は周壁部9を有する箱型状の形状に維持されることになる。
【0025】
上記シート状部材8に絡ませる接着剤として熱硬化性の樹脂を用いれば、加圧加熱して箱型状に成形された上記保護部材6はその形状が維持される。したがって、そのことによっても、スプリングユニット1の上下面で上記保護部材6がずれ動くのを確実に、しかも長期にわたって防止することができる。
なお、接着剤として合成ゴム樹脂を用いた場合も、加圧加熱して成形された保護部材6は箱型状の形状が維持される。
【0026】
また、植物性の繊維からなるシート状部材8に接着剤を絡め、このシート状部材8を金型によって加熱しながら加圧して成形するようにしたことで、加熱と加圧を同時に行うことが可能となるばかりか、成形後に冷却せずに保護部材6を金型から取り出すことができる。それによって、保護部材6の成形加工時間の短縮を図ることができる。
【0027】
なお、上記保護部材6を椰子の繊維やサイザルの繊維などの植物性の繊維を用いて成形したが、繊維としては植物性の繊維だけに限られず、合成樹脂繊維を用いるようにしてもよい。合成樹脂繊維としては、たとえば高融点の第1のポリエステル繊維と、この第1のポリエステル繊維よりも融点の低い第2のポリエステル繊維を混合してフェルトを形成し、このフェルトを金型内に入れて加熱し、低融点の第2のポリエステル繊維を溶融して第1のポリエステル繊維を結合することで、クッション性と通気性を有する上記保護部材6を成形するようにしてもよい。
【0028】
この場合、第1のポリエステル繊維と第2のポリエステル繊維が混合されたポリエステルフェルトにおいて、第2のポリエステル繊維の重量比を40%とすることが好ましい。
【0029】
また、第1、第2のポリエステル繊維に、再生ポリエステル繊維を混合して用いるようにしてもよい。その場合、再生ポリエステル繊維の重量比を25%以上にすることができる。
【0030】
このようにして成形された上記保護部材6は、上記スプリングユニット1の上下面に上記周壁部9をスプリングユニット1の外周面に係合させて設けられ、この保護部材6に上記第1の弾性部材7が積層される。したがって、上記保護部材6は周壁部9をスプリングユニット1の外周面に係合させているから、上記スプリングユニット1の上下面で水平方向ずれ動くのが阻止される。
【0031】
互いに接触する上記保護部材6と上記第1の弾性部材7の面はともに接触抵抗が大きな粗面となっている。したがって、上記第1の弾性部材7が上記保護部材6に対してずれ動き難い状態にあり、後述する外装体11によって保持されることで、ずれ動くのが阻止される。
【0032】
椰子やサイザルなどの植物性の繊維によって形成された上記保護部材6はその繊維が持つ硬さによってスプリングユニット1内に落ち込む状態に大きく湾曲変形することがない。そのため、保護部材6に積層された第1の弾性部材7に利用者の荷重が部分的に加わっても、その荷重によって保護部材6が第1の弾性部材7とともにスプリングユニット1内に落ち込むのを防止する。
【0033】
つまり、保護部材6は第1の弾性部材7を大きく湾曲変形させずに確実に支持する層となる。しかも、上記保護部材6は厚さ方向に対して通気性を備えているから、その通気性によってスプリングユニット1の内部に湿気がこもるのを防止することにもなる。
【0034】
上記スプリングユニット1、保護部材6及び第1の弾性部材7の積層体は外装体11によって被覆される。この外装体11はスプリングユニット1の上下面に設けられる一対の鏡部材12と、上記スプリングユニット1の外周面に設けられるまち部材13を有する。
【0035】
上記鏡部材12と待ち部材13は、それぞれ表地12a,13aと裏地12b,13bとの間にウレタンフォームからなるシート状の第2の弾性部材12c,13cを介在させ、これら三者を一体的にキルティングして形成されている。そして、上下一対の鏡部材12の周縁部は、それぞれ上記まち部材13の上端と下端にテープエッジ14によって縫合されている。
【0036】
このような構成のマットレス装置によれば、植物性の繊維からなるシート状部材8を、周壁部9を有する箱型状に成形して保護部材6とし、上記周壁部9をスプリングユニット1の外周面に係合させて上記保護部材6を上記スプリングユニット1の上下面に設けるようにした。
【0037】
このように、上記保護部材6がその周壁部9をスプリングユニット1の外周面に係合させて設けられれば、スプリングユニット1の上下面でずれ動くのが阻止される。上記保護部材6がスプリングユニット1の上下面でずれ動くことがなければ、この保護部材6に一側面を接触させて積層され他側面が外装体11によって保持された第1の弾性部材7も、保護部材6との接触抵抗及び外装体11による保持力によってスプリングユニット1の上下面でずれ動くのが阻止される。
【0038】
したがって、上記構成のマットレス装置を長期間にわたって使用しても、保護部材6や第1の弾性体7がずれ動くことによって、その性能や外形状が損なわれるということがない。
【0039】
しかも、保護部材6が周壁部9を有する箱型状に成形されていることで、その周壁部9をスプリングユニット1の外周面に係合させ設けるだけで、第1の弾性部材7とともにスプリングユニット1に対してずれ動くのが防止される。
【0040】
そのため、保護部材6と第1の弾性部材7をフランジ布によってスプリングユニット1に連結固定していた従来に比べ、上記スプリングユニット1に対する保護部材6と第1の弾性部材7の組立て作業を熟練を要することなく容易に、しかも迅速かつ確実に行うことができる。つまり、従来に比べて生産性を向上させることが可能となる。
【0041】
上記第1の実施の形態ではスプリングユニットの上下面に第1の弾性部材を設けるようにしたが、弾性部材としては第1の弾性部材を設けず、外装体に設けられた第2の弾性部材だけであってもよい。
【0042】
図4乃至図7はそれぞれこの発明の第2乃至第5の実施の形態を示す。
図4に示す第2の実施の形態は、上述した植物性繊維或いは合成樹脂繊維によって箱型状に成形された保護部材6の周壁部9に、矩形状のフランジ布21の一端部を接着固定し、他端部を上記周壁部9の下端から下方へ突出させるようにした。
【0043】
このようにすれば、上記フランジ布21の他端部を図1に示すスプリングユニット1の周辺部に位置するコイルスプリング2に連結できるから、保護部材6の設置状態を安定化することができる。
【0044】
図5に示す第3の実施の形態は、フランジ布21の一端部を保護部材6の鏡部10の周辺部に接着固定し、他端部を上記鏡部10の外方へ突出させる。
【0045】
それによって、上記フランジ布21の他端部を、図1に示すテープエッジ14によって外装体11の鏡部材12及びまち部材13と一体的に縫合できるから、保護部材6の設置状態を安定化することができる。
【0046】
図6に示す第4の実施の形態は、保護部材6Aの鏡部10に、複数の透孔、この実施の形態では3つの透孔22a〜22cを上記鏡部10の長手方向に対して所定間隔で形成する。各透孔22a〜22cは、マットレス装置に利用者が仰臥したとき、その利用者の肩部、臀部及び踵部に対応する位置に形成されている。
【0047】
スプリングユニット1の上下面に設けられた設けられた各保護部材6Aの鏡部10には、保護部材6Aと異なる硬さに形成されたシート部材23が重ねられる。シート部材23は、フェルト、ウレタン、サイザル、ポリエステル繊維などによって保護部材6Aに比べて柔らかくなるよう形成されている。
【0048】
このような構成によれば、マットレス装置の上下面は、利用者が仰臥したときに下方に突出する肩部、臀部及び踵部に対応する部分が保護部材6Aよりも柔らかいシート部材23だけによって支持されるから、強い圧迫を受けることなくなるため、寝心地を向上させることができる。
【0049】
図7(a),(b)は保護部材6Bの変形例を示すこの発明の第5の実施の形態である。この実施の形態の保護部材6Bは、図7(b)に示すように断面形状がL字状の枠部材24の一辺に三角形状の切り込み25を所定間隔で設け、この枠部材24を図1に示すスプリングユニット1の外形状と対応する矩形状に上記切り込み部25の部分から折り曲げる。そして、枠部材24の両端を接着固定することで形成されている。
【0050】
枠状に形成された保護部材6Bの枠部材24には、4つの辺の中途部の上面となる一辺にそれぞれフランジ布21の一端部が接着固定されている。それによって、保護部材6Bをスプリングユニット1の上下面に装着したとき、上記フランジ布21の他端部をテープエッジ14によって外装体11の鏡部材12及びまち部材13と一体的に縫合できる。
【0051】
なお、上記枠部材24を形成する材料、つまり保護部材6Bは、第1の実施の形態と同様、植物性の繊維や合成樹脂繊維が用いられている。
【0052】
スプリングユニット1の上下面に装着された保護部材6Bには、この保護部材6Bの平面形状とほぼ同じ大きさのシート部材23が重ねられる。このシート部材23は保護部材6Bと硬さが異なる材料、たとえば図6に示す第4の実施の形態と同様、フェルト、ウレタン、サイザル、ポリエステル繊維などによって保護部材6Bに比べて柔らかくなるよう形成される。
【0053】
それによって、保護部材6Bを硬くしても、マットレス装置に仰臥する利用者はシート部材23の柔らかさによって良好な寝心地が得られる。
【0054】
この第5の実施の形態において、フランジ布21の一端部を枠部材24の他辺に接着固定し、その他端部をスプリングユニット1に連結するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…スプリングユニット、2…コイルスプリング、6…保護部材、7…第1の弾性部材、8…シート状部材、9…周壁部、11…外装体、12…鏡部材、12c,13c…第2の弾性部材、13…まち部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプリングユニットと、
このスプリングユニットの上下面に設けられる保護部材と、
この保護部材と上記スプリングユニットとの積層体を被覆した外装体と
を具備し、
上記保護部材は、シート状部材を加圧加熱して周辺部に上記スプリングユニットの外周面に係合する周壁部を有する箱型状に成形されてなることを特徴とするマットレス装置。
【請求項2】
上記シート状部材は、植物性の繊維に接着剤を絡ませた材料であることを特徴とする請求項1記載のマットレス装置。
【請求項3】
上記接着剤は熱硬化性の樹脂からなることを特徴とする請求項2記載のマットレス装置。
【請求項4】
上記シート状部材は、融点の異なる2つの合成樹脂繊維からなり、低融点の合成樹脂繊維だけが溶融する温度で加圧加熱されることを特徴とする請求項1記載のマットレス装置。
【請求項5】
上記スプリングユニットの上下面と上記外装体との間にはシート状の第1の弾性部材が設けられていることを特徴とする請求項1記載のマットレス装置。
【請求項6】
上記外装体は表地と裏地の間にシート状の第2の弾性部材が設けられ、これら三者を一体的にキルティングして形成されていることを特徴とする請求項1に記載のマットレス装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−284508(P2010−284508A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73409(P2010−73409)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000010032)フランスベッド株式会社 (95)
【Fターム(参考)】