説明

マット調インクジェット記録媒体

【課題】 染料インク及び顔料インクで印字した際に共に高い画像濃度が得られ、かつ画像が均一でベタムラの発生がない高画質のマット調インクジェット記録用媒体を提供する。
【解決手段】 支持体上に塗工層を1層以上有し、前記塗工層のうち最表の塗工層が、顔料と親水性結着剤を主成分とするインク受理層であるインクジェット記録媒体において、前記インク受理層に含有される顔料が、主として合成非晶質シリカとコロイダルシリカであり、かつ前記インク受理層にマグネシウム塩又はカルシウム塩を前記合成非晶質シリカ100質量部に対して10質量部未満含有し、かつ前記最表の塗工層表面の75度鏡面光沢度が15%以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録方式にて印字を行う記録媒体に関し、特に染料インク、顔料インクのいずれを用いても良好な記録画像を得ることができる、マット調のインクジェット記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式におけるインクの色材としては、これまで画像の鮮明性やインク吐出安定性が良く、ヘッドのつまりが少ないなどの理由により水溶性染料が多く使用されてきたが、かかる染料インクの場合には、耐光性及び耐水性を含めた保存性の点で難点があった。一方、近年、顔料の分散技術が発達したことで顔料を色材とした顔料インクが普及しつつある。顔料インクで画像を記録すると保存性は良好であるが、染料インク用に設計された従来のインクジェット記録用紙に印字を行った場合、画像の発色性が劣ったり、色材(顔料)が記録紙表面から欠落するという問題があった。この問題を解決するために、特許文献1では染料インクを用いても顔料インクを用いても良好な記録画像を得られる記録媒体についていくつか報告されている。例えば、支持体上に平均粒子径5〜20μmの非晶質シリカと鹸化度90.0〜97.0mol%かつ重合度1000〜3500のポリビニルアルコールを含有し、該非晶質シリカとポリビニルアルコールの構成重量比が100/100〜100/20であるインク受容層を設ける方法が開示されている。
【0003】
また、特許文献2にはオーバーコート層中にアミンまたは金属イオンを導入することで、境界滲みが良好でドットゲインが大きくならないような印字品質が得られるインクジェット記録シートが開示されている。また特許文献3、特許文献4には、コロイダルシリカや、粒径が非常に小さいシリカ微細粒子を使用して高光沢性に優れるインクジェット記録シートを得ることが開示されている。
【0004】
一方、インクジェット記録方式の記録媒体は、風合いが、いわゆる上質紙・PPC用紙に似ている普通紙タイプのものと、インク受理層を有することが明らかである塗工紙タイプのものに大別され、さらに塗工紙タイプの記録媒体は、インク受理層に光沢を有するグロスタイプと光沢を有さないマットタイプに大別される。マットタイプのインクジェット記録媒体は、インク受理層表面が比較的粗いため、顔料インク中の色材(顔料)は記録紙表面に定着しやすいが、画像の発色性は劣っている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−94794号公報
【特許文献2】特開2001−150798号公報
【特許文献3】特開平9−263039号公報
【特許文献4】特開2000−85242号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した従来の技術においては、いまだ染料インク、顔料インクのいずれを用いても記録画像の濃度が高く、かつ画像が均一でベタムラの発生がない高画質のマット調インクジェット記録媒体は得られていない。特許文献1に記載されているインクジェット記録シートにおいては、原因は明らかでないが、顔料インクでベタ画像(特に混色)を印字した際にムラを生じてしまい画像が不均一となる。また特許文献2では染料インクに関する画質改善が示されているが、金属塩を使用することで染料インクの画像濃度が低下してしまう。特許文献3や特許文献4で得られるインクジェット記録シートは、表面の光沢感が高くマット調ではないため、顔料インクの定着性に劣り、インク吸収性も低下する。
【0007】
そこで、本発明は、支持体の表面にインク受理層を有するマット調のインクジェット記録媒体であって、染料インク及び顔料インクで印字した際に共に高い画像濃度が得られ、かつ画像が均一でベタムラの発生がない高画質のインクジェット記録用媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は支持体上に塗工層を1層以上有し、前記塗工層のうち最表の塗工層が、顔料と親水性結着剤を主成分とするインク受理層であるインクジェット記録媒体において、前記インク受理層に含有される顔料が、主として合成非晶質シリカとコロイダルシリカであり、かつ前記インク受理層にマグネシウム塩又はカルシウム塩を前記合成非晶質シリカ100質量部に対して10質量部未満含有し、かつ前記最表の塗工層表面の75度鏡面光沢度が15%以下であることを特徴とするマット調インクジェット記録媒体によって達成された。
【0009】
また、前記コロイダルシリカは、粒子径が5〜40nmの一次粒子が、会合状又は鎖状に凝集した二次粒子であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明においてはインク吸収を損なわずに染料インク及び顔料インクの発色性を向上させることができるインクジェット記録媒体を得ることができる。また、顔料インクで印字した際においても画像が均一でありベタムラの発生がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明におけるインクジェット記録媒体は、好ましくはシート状を有する支持体とその上に形成された塗工層からなる。本発明のインクジェット記録媒体の支持体は特に制限されるものではなく、木材繊維(パルプ)主体の紙、またはポリエチレンなどのプラスチック類、もしくは木材繊維や合成繊維を主体とした不織布のごときシート状物質が挙げられ、紙の場合は内添サイズ剤の添加又は無添加、填料の含有又は非含有で良く、サイズプレスの有無でも何等制限しない。本発明においては、特にインク吸収性に優れる紙を支持体として使用することが望ましい。
【0012】
紙支持体を構成する木材パルプとしてはLBKP、NBKP等の化学パルプ、GP、PGW、RMP、TMP、CTMP、CMP、CGP等の機械パルプ、DIP等の古紙パルプ等のパルプを単独あるいは併用して用いることが可能である。紙支持体は上記木材パルプには必要に応じて従来公知の填料やバインダー及びサイズ剤や定着剤、歩留まり向上剤、紙力増強剤等の各種添加剤を混合し、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機等の各種抄紙機にて紙匹を形成した後に、乾燥させて得ることができる。
【0013】
本発明において、支持体上に形成される塗工層の内、最表の層は顔料と親水性結着剤を主成分とするインク受理層であるが、インク受理層表面の75度鏡面光沢度は15%以下であることが必要である。75度鏡面光沢度が15%を超える場合、目的とするマット調のインクジェット記録媒体とはならず、顔料インク中の色材(顔料)は記録紙表面に定着し難くなる。
【0014】
本発明においては、インク受理層の顔料として主としては、合成非晶質シリカとコロイダルシリカとを用いるが、発明の効果を損なわない範囲でその他通常に使用される顔料(例えばカオリン、アルミナ、プラスチックピグメント等)を混合することも可能である。ただし、コロイダルシリカと合成非晶質シリカ以外の顔料は、インク受理層の顔料中に10質量%未満の割合で配合されることが好ましい。
【0015】
本発明で使用されるコロイダルシリカとは、湿式法で合成された一次粒子径数nm〜100nm程度の合成シリカであり、凝集して非球状の二次粒子となる場合も含まれる。また、球状のコロイダルシリカ粒子の表面にアクリル系高分子を結合させたコア/シェル構造の粒子を水性溶媒中に分散させた水性分散体もコロイダルシリカに含まれる。今回使用するコロイダルシリカは一次粒子径が5〜40nmであることが好ましい。更に好ましくは二次粒子の形状が会合状又は鎖状となったのものが好ましい。特に、粒子径15〜35nmの一次粒子が会合状に凝集したコロイダルシリカを用いた場合、インク吸収性と発色性をともに向上することができる。粒子が凝集していない球状のコロイダルシリカでは、会合状及び鎖状のコロイダルシリカと比較してインク吸収性が低下する傾向が見られる。上記したコロイダルシリカの形状は電子顕微鏡(SEM等)等で観察できる。またコロイダルシリカの一次粒子径はBET法等で、二次粒子径は動的光散乱法で測定できる。
【0016】
ここで、会合状コロイダルシリカとは一次粒子が数個結合した形状で、一次粒子に対する二次粒子の比が2.5以下であり、鎖状コロイダルシリカとは一次粒子が数個ないし十数個鎖状に連結した形状で、一次粒子に対する二次粒子の比が2.5よりも大きい形状を有するコロイダルシリカをいう。
【0017】
また、インク受理層中の合成非晶質シリカとコロイダルシリカの比率は発色性の向上という観点から100:2〜100:50が好ましい。染料インク発色性はコロイダルシリカ含有率が高まるほど向上するが、一方で顔料インク発色性はコロイダルシリカの含有率がある程度以上になると低下してしまうため、上記範囲が好ましく、更に好ましくは100:2.5〜100:40である。
【0018】
本発明のインク受理層に含有される合成非晶質シリカは、珪酸ナトリウムと硫酸の中和反応で形成され、その製造方法により機能性フィラーとして様々な性質に分けることができるが、特にJIS-K-5101で規定された吸油量が、150ml/100g以上400ml/100g以下であることが好ましい。150ml/100g未満であると染料インクで印字した際の発色性、インク吸収性が悪化するので好ましくない。また400ml/100gを超えると、顔料の硬度が低下して極度に柔らかい顔料となるため鉛筆などでの筆記が困難になる。
【0019】
さらに、上記合成非晶質シリカの平均二次粒子径は、5〜20μmが好ましく、更に好ましくは7〜12μmである。平均二次粒子径が5μmより小さいと、染料インクでの画像鮮明性が劣ったり、塗工層の表面強度が低下する問題が生じる。また、平均二次粒子径が20μmより大きいと、画像が極度に粗くなったりインク吸収性が悪化するので好ましくない。上記した合成非晶質シリカの平均二次粒子径は、Malvern社製マスターサイザー等を用いて測定することができる。
【0020】
本発明のインク受理層に含有される金属塩はマグネシウム塩またはカルシウム塩であることが必要である。同じアルカリ土類金属の塩であっても、例えば原紙番号のより大きいバリウム塩を使用したのでは、顔料インクで印字した際のベタムラを解消する効果は得られない。理由は明らかでないが、イオン半径の違いに基づく電荷密度の大小により、こうしたインクへの作用の違いが生じるものと考えられる。また、マグネシウム塩、カルシウム塩は水に可溶であっても不溶であっても問題はなく、塩を構成する陰イオンに関しては特に制限はないが、特に好ましくは硫酸イオン、炭酸イオンである。
【0021】
本発明のインク受理層には、塗膜としての特性を維持するために親水性結着剤を含有する。親水性結着剤とは、例えばポリビニルアルコール及びその変性物、酸化デンプン、エーテル化デンプン、カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、カルボキシメチルセルロース、SBラテックス、NBラテックス、アクリルラテックス、酢酸ビニル重合体ラテックス、エチレン酢酸ビニル系ラテックス、ポリウレタン、不飽和ポリエステル樹脂等が使用できる。 本発明においては、これらの親水性結着剤の少なくとも1種を使用することができるが、その配合部数は、前記した顔料100重量部に対し、10〜80重量部であることが好ましい。結着剤の配合部数が少ないと表面強度が不十分となり、多すぎるとインク吸収性が不十分となる。
【0022】
本発明ではインク受理層にカチオン性水溶性樹脂を含有することも好ましい。本発明で使用されるカチオン性水溶性樹脂としては、二級アミン、三級アミン、及び四級アンモニウム塩としてポリエチレンイミン塩、ジメチルアミンエピハロヒドリン縮合体、ポリビニルアミン塩、ポリアリルアミン塩、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート四級塩、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩、ジアリルアミンアクリルアミド共重合体塩、ポリスチレンの四級アンモニウム塩等が挙げられる。中でも染料インクおよび顔料インクともに印字品質に優れ、特に印字濃度、耐水性が高いジメチルアミンエピハロヒドリン縮合体が好ましい。またこれらカチオン性樹脂の2種類以上を配合使用することも可能である。
【0023】
これらカチオン性水溶性樹脂は、顔料インク中の色材である顔料が分散剤によって溶媒中に分散され、その表面が負に帯電していることより、これらを捕捉する作用がある。よって、顔料インクはインク受理層表面付近に残るようになり耐摩擦性が改善される。また染料インクについても同様に負に帯電している染料が、インク受理層中でカチオン性水溶性樹脂に捕捉され、保存性、特に耐水性が改善される。
【0024】
また、支持体あるいはインク受理層に、サイズ剤、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、界面活性剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤、耐水化剤、湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤、保水剤などを必要に応じ適宜含有させることもできる。
【0025】
本発明において、支持体上に設けられる塗工層及びインク受理層の総数及び構成については特に限定されるものではない。また、塗工層及びインク受理層を支持体の片面あるいは両面に設けてもよい。
【0026】
また、本発明において、インク受理層を支持体の片面に設けた場合は、支持体のインク受理層と反対側の面にカール矯正あるいは搬送性改良等の目的で塗工層を設けることも可能である。さらに、インク受理層と支持体の間に1層以上の塗工層を設けることも可能である。この場合、その層の組成は特に規定するものではないが、顔料と親水性結着剤とカチオン性樹脂を主成分として含有する層であることが好ましい。
【0027】
本発明においては、インク受理層の塗工量(乾燥塗工量)は1〜20g/m2が好ましい。さらに1〜15g/m2が好ましく、より好ましくは3〜15g/m2である。インク受理層の塗工量が1g/m2に満たないと、顔料インク発色が低下したり、染料インクの吸収性が低下するため、インクジェット印字性能に悪影響が生じる。
【0028】
支持体上にインク受理層以外の塗工層が設けられる場合、支持体上に設けられる塗工層(すなわちインク受理層及び前記したその他の塗工層)の全塗工量(乾燥塗工量)は30g/m以下であることが好ましく、更に好ましくは25g/m2以下である。塗工量が30g/m2を超えると、インク受理層と支持体間の接着強度が実用に耐えられないレベルとなり、粉落ちと呼ばれる支持体からの塗工層の剥離等が発生し、重大な問題が生じる。
【0029】
インク受理層と支持体の間に1層以上の塗工層を設ける場合、インク受理層以外の塗工層の全塗工量は1〜20g/m2が好ましい。このとき最上層となるインク受理層の塗工量は1〜15g/m2が好ましく、より好ましくは3〜15g/m2である。
【0030】
インク受理層やインク受理層以外の塗工層を支持体表面に設けるために、一般的な塗工装置である各種ブレードコーター、ロールコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、ゲートロールコーター、カーテンコーター、ショートドゥエルコーター、グラビアコーター、フレキソグラビアコーター、サイズプレス等の各種装置をオンマシン又はオフマシンで使用することができる。
さらに、本発明においては、インク受理層を塗工した後にインク受理層をマシンカレンダー、スーパーカレンダー、ソフトカレンダー等のカレンダー装置で表面処理することも可能である。
【実施例】
【0031】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。また、実施例において示す「部」及び「%」は、特に明示しない限り質量部及び質量%を示す。
<実施例1>
基紙
広葉樹漂白クラフトパルプ90%と針葉樹漂白クラフトパルプ10%を混合叩解して濾水度を350mlに調整したパルプに、カチオン化デンプン4部、アニオン化ポリアクリルアミド0.3部、及びアルキルケテンダイマー乳化物0.5部を添加し、長網抄紙機で紙匹を形成した。3段のウエットプレスを行った後、乾燥パートで2段の緊度プレスを行い乾燥した後、燐酸エステル化デンプン5%とポリビニルアルコール0.5%の液をサイズプレスを用いて乾燥重量が3.6g/mとなるように塗布し、乾燥後マシンカレンダー処理して坪量175g/mの基紙を製造した。
インク受理層
非晶質シリカ(ミズカシルP−50 水澤化学製:平均二次粒子径11μm、吸油量170ml/100g)50部
非晶質シリカ(サイロジェットP−409 グレース製:平均二次粒子径8.5μm、吸油量310ml/100g)50部
コロイダルシリカ(PL−2 扶桑化学工業製 1次平均粒子径15〜35nm、二次平均粒子径35〜70nm、会合状)2.5部
硫酸マグネシウム・7水和物 2部(無水物換算)
ポリビニルアルコール(PVA−117、クラレ製)30部
エチレン酢酸ビニルエマルジョン(リカボンドBE−7000 中央理化工業製)25部
スチレンアクリル樹脂(ポリマロン360 荒川化学製)3部
ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(PAS−H−10L 日東紡績製)5部
消泡剤(SNデフォーマー480 サンノプコ製)0.5部
及び希釈水等を適宜添加した、固形分が20%の塗工液を、エアーナイフコーターを用いてその乾燥塗工量が10g/mとなるように塗工してインクジェット記録用紙を得た。
【0032】
<実施例2>
インク受理層のコロイダルシリカの配合を10部に変更したこと以外は、実施例1と全く同様にしてインクジェット記録用紙を得た。
【0033】
<実施例3>
インク受理層のコロイダルシリカの配合を40部に変更したこと以外は、実施例1と全く同様にしてインクジェット記録用紙を得た。
【0034】
<実施例4>
インク受理層のコロイダルシリカを鎖状(スノーテックスOUP 日産化学工業製 1次平均粒子径10〜20nm、二次平均粒子径40〜100nm)10部に変更したこと以外は、実施例1と全く同様にしてインクジェット記録用紙を得た。
【0035】
<実施例5>
インク受理層のコロイダルシリカを球状(スノーテックスN30G 日産化学工業製 1次平均粒子径10〜20nm)10部に変更したこと以外は、実施例1と全く同様にしてインクジェット記録用紙を得た。
【0036】
<実施例6>
インク受理層のコロイダルシリカを10部、硫酸マグネシウムを1部に変更したこと以外は、実施例1と全く同様にしてインクジェット記録用紙を得た。
【0037】
<実施例7>
インク受理層のコロイダルシリカを10部、硫酸マグネシウムを5部に変更したこと以外は、実施例1と全く同様にしてインクジェット記録用紙を得た。
【0038】
<実施例8>
インク受理層のコロイダルシリカを10部に変更し、さらに添加する金属塩を塩基性炭酸マグネシウム2部(無水物換算)に変更したこと以外は、実施例1と全く同様にしてインクジェット記録用紙を得た。
【0039】
<実施例9>
インク受理層のコロイダルシリカを10部に変更し、さらに添加する金属塩を硫酸カルシウム・2水和物2部(無水物換算)に変更したこと以外は、実施例1と全く同様にしてインクジェット記録用紙を得た。
【0040】
<比較例1>
実施例1で製造した基紙に、実施例1のインク受理層のコロイダルシリカ及び硫酸マグネシウムを含まない固形分が20%の塗工液を、エアーナイフコーターを用いてその乾燥塗工量が10g/mとなるように塗工してインクジェット記録用紙を得た。
(配合)
非晶質シリカ(ミズカシルP−50 水澤化学製:平均二次粒子径11μm、吸油量170ml/100g)50部
非晶質シリカ(サイロジェットP−409 グレース製:平均二次粒子径8.5μm、吸油量310ml/100g)50部
ポリビニルアルコール(PVA−117、クラレ製)30部
エチレン酢酸ビニルエマルジョン(リカボンドBE−7000 中央理化工業製)25部
スチレンアクリル樹脂(ポリマロン360 荒川化学製)3部
ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(PAS−H−10L 日東紡績製)5部
消泡剤(SNデフォーマー480 サンノプコ製)0.5部
【0041】
<比較例2>
インク受理層に硫酸マグネシウム・7水和物を2部(無水物換算)添加したこと以外は、比較例1と全く同様にしてインクジェット記録用紙を得た。
【0042】
<比較例3>
インク受理層に塩基性炭酸マグネシウムを2部(無水物換算)添加したこと以外は、比較例1と全く同様にしてインクジェット記録用紙を得た。
【0043】
<比較例4>
インク受理層に硫酸カルシウム・2水和物を2部(無水物換算)添加したこと以外は、比較例1と全く同様にしてインクジェット記録用紙を得た。
【0044】
<比較例5>
インク受理層に硫酸バリウムを2部添加したこと以外は、比較例1と全く同様にしてインクジェット記録用紙を得た。
【0045】
<比較例6>
インク受理層にコロイダルシリカを10部添加したこと以外は、比較例1と全く同様にしてインクジェット記録用紙を得た。
【0046】
<比較例7>
インク受理層にコロイダルシリカを10部、硫酸マグネシウム・7水和物を10部(無水物換算)添加したこと以外は、比較例1と全く同様にしてインクジェット記録用紙を得た。
【0047】
<比較例8>
インク受理層に非晶質シリカを添加せず、代わりにコロイダルシリカを100部添加したこと以外は、比較例1と全く同様にしてインクジェット記録用紙を得た。
【0048】
評価方法
実施例及び比較例における各々の記録媒体の評価を、以下に示す方法により行った。各項目において、○以上の評価であれば実用上優れている。
評価項目
<発色性>
シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックについて各ベタ画像を印字し、23℃、50%RH環境下で24時間放置した後に、各画像部の印字濃度を反射濃度計(MACBEATH RD194I)で測定した。
評価プリンタ:PM4000PX(セイコーエプソン社製、顔料インクプリンター、印字モード;MCマット紙/きれい/色補正なし)、PM970C(セイコーエプソン社製、染料インクプリンター印字モード;PMマット紙/きれい/色補正なし)
◎…4色合計値がPM4000PXの場合6以上、PM970Cの場合7以上
○…4色合計値がPM4000PXの場合5.7以上6未満、PM970Cの場合6.7以上7未満
△…4色合計値がPM4000PXの場合5.4以上5.7未満、PM970Cの場合6.4以上6.
7未満
×…4色合計値がPM4000PXの場合5.4未満、PM970Cの場合6.4未満
【0049】
<ベタ斑>
グリーンのベタ画像を印字して、画像の均一性を官能評価した。
評価プリンタ:PM4000PX(セイコーエプソン社製、顔料インクプリンター)
◎…ベタ画像が均一であり、全く斑が認められない
○…ベタ画像の均一性は高く、ほとんど斑が認められない
△…ベタ画像は均一とは言えず、斑が認められる
×…ベタ画像は不均一であり、滲みや斑が著しく認められる。
評価の結果は表1に示した通りである。
<インク吸収性>
レッドとグリーンの各ベタ画像を隣り合わせにして印字して、その境界部の滲み具合を官能評価した。
評価プリンタ:PM970C(セイコーエプソン社製、染料インクプリンター)
○…境界部が鮮明でかつ滲みが認められない
△…境界部がやや不鮮明だが滲みは認められない
×…境界部が不鮮明で滲みが認められる。
評価の結果は表1及び表2に示した通りである。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
表1から、実施例1〜9で製造したインクジェット記録媒体は、インク吸収性が良好で、ベタ斑がなく画像均一性に優れ、染料インクおよび顔料インクの発色が高くなることが分かる。なお、球状のコロイダルシリカを用いた実施例5はインク吸収性がやや劣っていた。
これに対し、マグネシウム塩またはカルシウム塩を添加していない比較例1、6、8、及び添加している塩がバリウム塩である比較例5ではベタ斑が劣っている。また、マグネシウム塩またはカルシウム塩を添加しているがコロイダルシリカを添加していない比較例2、3、4では染料インクの発色性が劣っている。また、マグネシウム塩を過剰に添加している比較例7はインク吸収性、及び染料・顔料インクの発色性が劣っている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に塗工層を1層以上有し、前記塗工層のうち最表の塗工層が、顔料と親水性結着剤を主成分とするインク受理層であるインクジェット記録媒体において、前記インク受理層に含有される顔料が、主として合成非晶質シリカとコロイダルシリカであり、かつ前記インク受理層にマグネシウム塩又はカルシウム塩を前記合成非晶質シリカ100質量部に対して10質量部未満含有し、かつ前記最表の塗工層表面の75度鏡面光沢度が15%以下であることを特徴とするマット調インクジェット記録媒体。
【請求項2】
前記コロイダルシリカは、粒子径が5〜40nmの一次粒子が、会合状又は鎖状に凝集した二次粒子であることを特徴とする請求項1に記載されたマット調インクジェット記録媒体。

【公開番号】特開2006−137081(P2006−137081A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−328575(P2004−328575)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】