説明

マトリクス層を備えたアッパーを有する履物物品

【課題】ソール構造、ポリマーマトリクス構造から製造されたアッパー、サイズ調節機構、ヒールタン要素、靴固定機構、インステップタン部材、ブーティ部材のうちの1つまたは複数を含む履物物品および製造方法を開示する。
【解決手段】アッパー20が、履物10の少なくともヒール部位を通って延在し、ヒール部位における第1の縁と第1の縁に沿って延在する複数の第1の孔部とを規定する、外側要素と、履物の少なくともヒール部位を通って延在し、ヒール部位における第2の縁と第2の縁に沿って延在する複数の第2の孔部とを規定する、内側要素と、第1の孔部および第2の孔部を通って延在するコード27’、27”と、コードの一部を受け入れる締結具48’とを含む、アッパー20とアッパー20に固定されたソール構造30とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本米国特許出願は、2006年1月26日に米国特許商標局に出願された、「マトリクス層を備えたアッパーを有する履物物品(“Article of Footwear Having An Upper With A Matrix Layer”)」と題する米国特許出願第11/340,409号の一部継続出願であり、これに対し優先権を主張するが、この先行米国特許出願は参照により全体が本明細書に組み入れられる。米国特許出願第11/340,409号は、同様に、2005年6月20日に米国特許商標局に出願された、「マトリクス層を備えたアッパーを有する履物物品」と題する米国特許仮出願第60/692,336号に対し優先権を主張するが、この先行米国特許仮出願は参照により全体が本明細書に組み入れられる。本出願はさらに、米国特許仮出願第60/692,336号に対し優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
背景
従来の運動靴物品は一般に、2つの主要素であるアッパーおよびソール構造を含む。アッパーはソール構造に固定され、足を快適にかつしっかりと受け入れるために履物の内側に間隙を形成する。ソール構造はアッパーと地面との間に配置され、ポリマーフォームミッドソールおよびアウトソールを含んでもよい。ミッドソールは地面(または他の接触面)反力を減衰し、足および脚への応力を軽減する。アウトソールはソール構造の地面係合部分(または他の接触面係合部分)であり、耐久性の耐摩耗性材料から形成される。ソール構造はまた、間隙内に、足の下面に近接して配置され、履物の快適性を向上させるソックライナーまたはインソール部材を含んでもよい。
【0003】
アッパーは、少なくともいくつかの履物構造において、一般に足のインステップおよび爪先領域上方に、足の内側および外側に沿って、足のヒール領域の周囲に延在する。バスケットボールシューズおよびブーツなどのいくつかの履物物品では、アッパーは足首上方および周囲に延在し、足首をサポートしてもよい。履物の内側の間隙へのアクセスは一般にアクセス開口部により提供される。レーシングまたは他の履物固定システムがしばしばアッパー内に組み入れられ、アクセス開口部のサイズが選択的に増加され、着用者はアッパーの特定の寸法、特に周囲を変更し、様々な寸法を有する足に適合させ、足の出し入れを容易にすることができる。加えて、アッパーはさらに、履物の快適性を向上するためのレーシングシステム下に延在するタンおよびヒールの動きを制限するヒールカウンタを含んでもよい。
【0004】
アッパーを製造する際に様々な材料が従来使用されている。例えば、運動靴のアッパーは、外側層、中間層、および内側層を含む複数の材料層から形成されてもよい。アッパーの外側層を形成する材料は、例えば、耐摩耗性、可撓性、および通気性の特性に基づいて選択してもよい。外側層に関しては、爪先領域およびヒール領域は皮革、合成皮革、またはゴム材料で形成し、比較的高い耐摩耗度を付与してもよい。しかしながら、皮革、合成皮革、またはゴム材料はアッパーの外側層の様々な他の領域に対し、所望の可撓性および通気性度を示さない可能性がある。したがって、外側層の他の領域は、例えば、合成繊維から形成してもよい。そのため、アッパーの外側層は、それぞれ、異なる特性をアッパーに付与する多くの材料要素から形成してもよい。アッパーの中間層は従来、力の減衰を提供し、快適性を向上させる軽量ポリマーフォーム材料から形成される。同様に、アッパーの内側層は、足を直接取り囲む領域から汗を除去する、快適で湿気を逃がす織物で形成してもよい。いくつかの運動靴物品では、様々な層が接着剤で連結されている場合があり、単一層内で要素を連結させるために、またはアッパーの特定の領域を強化するためにスティッチングを使用してもよい。
【発明の概要】
【0005】
概要
本発明の1つの局面は、アッパーとソール構造を有する履物物品に関する。アッパーは複数の孔部を規定するマトリクス構造を含む。孔部は細長い形態を有し、異なる方向でのアッパーの伸展性の違いを付与してもよい。例として、マトリクス層は、互いに交差し孔部を規定する複数のセグメントから形成されてもよい。孔部の特定の形状は変動してもよく、四角形、六角形、円、卵形、三角形および任意の他の所望の形状が含まれる。
【0006】
本発明の追加の局面は、運動靴または他の型の履物を含む履物物品に関する。本発明の少なくともいくつかの実施例による履物物品は下記のうちの1つまたは複数を含んでもよい:(a)ソール構造;(b)ソール構造と係合され、履物の少なくともヒール部位を通って延在する外側要素と履物の少なくともヒール部位を通って延在する内側要素とを有するアッパーであって、外側要素の少なくとも一部がポリマーマトリクスを含み、内側要素の少なくとも一部がポリマーマトリクスを含む、アッパー;(c)ヒール部位に配置されたサイズ調節機構;(d)サイズ調節機構と足を受け入れるための空洞とに隣接して配置されたヒールタン要素;(e)アッパーまたはソール構造の少なくとも1つと係合された靴固定機構;(f)アッパーおよびソール構造の少なくとも1つと係合されたインステップタン部材;ならびに/または(g)足を受け入れるための空洞内に少なくとも部分的に配置され、任意で、アッパー、ソール構造、ヒールタン要素、インステップタン部材などの少なくとも1つと係合されたブーティ部材。
【0007】
本発明のさらなる局面は、例えば、上記様々な型の履物物品を製造する方法に関する。そのような方法は、例えば、下記を含んでもよい:(a)複数の孔部を規定する1つまたは複数のポリマーマトリクス構造を形成する工程であって、ポリマーマトリクス構造が第1の自由端および第2の自由端を提供する、工程;(b)第1の自由端がアッパーのヒール部位に沿って延在し、第2の自由端がアッパーのヒール部位に沿って延在するように、ポリマーマトリクス構造をアッパーに組み入れる工程;(c)第1の自由端および第2の自由端を係合させる工程;ならびに(d)ソール部材をアッパーに固定する工程。これらの工程は任意の所望の順序で行ってもよい。ポリマーマトリクス構造は、全体のアッパー構造の任意の所望の一部、複数の部分、または割合を形成してもよい。1つまたは複数の追加の要素、構造、および/または特徴、例えば、ヒールタン要素、靴固定機構、インステップタン部材、および/またはブーティ要素を、本発明から逸脱しなければ、全体の履物構造および/または履物製造方法に組み入れてもよい。
【0008】
本発明の様々な局面を特徴づける新規性の利点および特徴は、特に添付の特許請求の範囲により示す。しかしながら、新規性の利点および特徴をさらに理解するためには、下記説明内容、ならびに本発明の局面に関連する様々な態様および概念を説明し、例示する添付の図面を参照してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
上記概要、ならびに下記詳細な説明は、添付の図面と併せて読んだ場合、よりよく理解されるであろう。
【0010】
【図1】本発明の局面によるマトリクス層を備えたアッパーを有する履物物品例の外側側面図である。
【図2】この履物物品例の内側側面図である。
【図3】履物物品の上面図である。
【図4】図1の切断線4-4により規定される、履物物品の断面図である。
【図5】本発明による履物物品に対するマトリクス層例の上面図である。
【図6】図6A〜Hは、マトリクス層の様々な別の形態を示す。
【図7】図7A〜Dは、本発明による履物物品の製造方法例における工程を示す。
【図8】本発明の局面による、マトリクス層を備えたアッパーを有する2つの履物物品の外側側面図である。
【図9】図9A〜Fは、本発明による履物物品に対する様々な追加の形態例の外側側面図である。
【図10】図10AおよびBは、履物物品に対する追加の形態例の後方側面図である。
【図11】履物物品に対するさらに別の形態例の外側側面図である。
【図12】マトリクス層の別の形態例の上面図である。
【図13】フォアフット(forefoot)部位内で横に(内側から外側まで)延在する孔部を有するマトリクス構造例を示す。
【図14】本発明の追加の例によるアッパー部材に対する別のヒール固定配列例を示す。
【図15】本発明の追加の例によるアッパー部材に対する別のヒール固定配列例を示す。
【図16】本発明の追加の例によるアッパー部材に対する別のヒール固定配列例を示す。
【図17】図17A〜Cは、着脱可能なヒールタンおよびブーティ要素を含む、本発明のいくつかの例による、追加の履物構造特徴を示す。
【図18】本発明による少なくともいくつかの履物構造例に含まれる可能性のある着脱可能なインステップタン要素を示す。
【図19】本発明による追加の履物構造例を示す。
【図20】図20AおよびBは、本発明による追加の履物構造例を示す。
【図21】本発明によるさらに別の履物構造例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
下記説明および添付の図面は、本発明の例および局面によるポリマーマトリクス層を備えたアッパーを有する様々な履物物品を開示する。ポリマーマトリクス層に関連する概念は、例えば、ランニングおよびバスケットボールのスポーツに適した形態を有する様々な運動靴物品に関連して開示されている。しかしながら、ポリマーマトリクス層は、ランニングおよびバスケットボールに対し設計された履物にもっぱら限定されるものではない。むしろ、ポリマーマトリクス層は、例えば、野球、クロストレーニング、フットボール、ラグビー、サッカー、テニス、バレーボール、およびウォーキングに適したシューズを含む、広範囲の運動靴スタイルに組み入れられてもよい。さらに、ポリマーマトリクス層は、様々なドレスシューズ、カジュアルシューズ、サンダル、ブーツ、シャワーシューズ、ビーチ/ウォーターシューズ、水上競技用および/または濡れた状態で使用するためのシューズなどを含む、運動用ではないと一般に考えられる履物に組み入れてもよい。そのため、関連分野における当業者は、ポリマーマトリクス層に関して本明細書で開示した概念は、下記材料で記載し、添付の図面で図示した特定のスタイルに加えて、様々な履物スタイルに適用することができることを認識するであろう。
【0012】
I.本発明の局面の概要
1.履物物品
本発明の局面は、下記を含む運動靴または他の型の履物を含む履物物品に関する:(a)履物の少なくともヒール部位を通って延在する外側要素と履物の少なくともヒール部位を通って延在する内側要素とを有するアッパーであって、外側要素の少なくとも一部がポリマーマトリクスを含み、内側要素の少なくとも一部がポリマーマトリクスを含む、アッパー;(b)ヒール部位に配置されたサイズ調節機構;(c)サイズ調節機構と足を受け入れるための空洞とに隣接して配置されたヒールタン要素;ならびに(d)アッパーと係合されたソール構造。代替として、所望であれば、アッパーの側面要素は、例えば、接着剤、セメント、ボンディング、または他の融合技術により、ヒール部位で互いに永久的に連結させてもよく、その場合少なくともサイズ調節機構を省略することができる。
【0013】
サイズ調節機構は、存在する場合、本発明から逸脱しなければ、様々な形をとってもよい。例えば、いくつかの構造では、サイズ調節機構は、例えば、外側および内側要素の自由端間に延在するコードまたはひもの形で、外側要素の自由端および/または内側要素の自由端に係合してもよい。他の実施例では、サイズ調節機構は、下記を含んでもよい:(a)外側要素の自由端に備えられた第1の係合要素;(b)内側要素の自由端に備えられた第2の係合要素;ならびに(c)第1および第2の係合要素間で係合および/または延在する中間部材。さらに別の例として、所望であれば、内側および外側要素の自由端は、任意で伸長可能に、または幾分伸長可能に直接互いに係合してもよい(すなわち、上記「中間部材」は、本発明による少なくともいくつかの構造例において、省略してもよい)。
【0014】
ヒールタン要素は、本発明から逸脱しなければ、任意の所望の様式で、全体の履物構造内に提供してもよい。例えば、所望であれば、ヒールタン要素は、アッパーおよび/またはソール構造の少なくとも1つと(例えば、1つまたは複数のスナップまたは他の機械的締結要素を介して;溝、レッジ、および/または他の保持部材構造を介して;など)着脱可能に係合されてもよい。また、所望であれば、その少なくともいくらかの部分は、永久的に全体の履物構造内に取り付けてもよい(例えば、履物構造内、例えば、アッパーとソール構造との間、アウトソール構造とミッドソール構造の間などに保持される)。ヒールタン要素は、全体の履物構造において構築され配置されてもよく、それによってヒールに配置されたサイズ調節機構全ての使用者の感触が少なくとも部分的に、調節される。
【0015】
本発明の少なくともいくつかの実施例による履物物品は、追加または代替の構造または特徴を含んでもよい。例えば、所望であれば、履物物品のアッパー部分は、スロート(throat)領域(例えば、少なくとも部分的にインステップ領域に沿って延在する)を規定してもよく、この場合、靴固定機構はスロート領域でアッパーと係合される。本発明から逸脱しなければ、当技術分野において標準となっている、公知の靴固定機構を含む任意の所望の型の靴固定機構(例えば、ひも固定機構、バックル、ストラップ、弾性部材、ジッパーなど)を使用してもよい。さらに、所望であれば、タン部材を、足を受け入れるための空洞に隣接し、スロート領域に沿っているアッパーと係合させてもよく、靴固定機構の使用者の感触が少なくとも部分的に調節される。所望であれば、スロート領域に配向されたタン部材は着脱可能にアッパー部材および/またはソール構造と係合させてもよい(例えば、取り外し、洗濯し、再配置し、別のものと交換することができるなど)。
【0016】
さらに別の例として、本発明の実施例による履物物品はさらに、履物物品の足を受け入れるための空洞内に少なくとも部分的にブーティ部材を含んでもよい。ブーティ部材は、履物物品のヒールタン要素(任意で、解除可能または着脱可能である)、アッパー部材、ソール構造または他の部分と係合させてもよい。ブーティ部材は快適性を向上させ;冷たい、濡れた、または湿った状態に対する抵抗を提供することなどが可能である。
【0017】
任意で、所望であれば、アッパーの大部分は1つのポリマーマトリクス、例えば、単一のワンピース構造から作製されてもよい。この単一のワンピース構造は、例えば、外側要素および内側要素の両方を含む、全体のアッパー構造の任意の所望の部分を形成してもよい。しかしながら、他の構造例では、外側要素および内側要素は、別個の、独立したポリマーマトリクスピースから製造してもよい。さらに別の実施例では、ポリマーマトリクス構造は少なくとも、アッパー構造のフォアフット部分の大部分にわたって延在する。さらに他の構造例では、ポリマーマトリクスは履物構造の後方またはヒール部分に提供される。本発明から逸脱しなければ、全体のポリマーおよび/またはアッパー構造中のポリマーマトリクス材料に対する任意の所望の位置および/または位置の組み合わせを提供してもよい。
【0018】
所望であれば、本発明から逸脱しなければ、ポリマーマトリクスにより規定される孔部は、様々な異なる方向に延在してもよい。いくつかの履物構造では、ポリマーマトリクスにより規定される孔部は、一般に、スロート領域(例えば、前方または中央インステップ領域)から爪先またはアッパーの最先端領域に向かって放射状に延在する。しかしながら、他の履物構造例では、スロート領域前方のポリマーマトリクスにより規定される孔部の少なくともいくつかは細長く、靴を横切って横方向にアッパーの外側からアッパーの内側に向かう方向に延在する(すなわち、細長い孔部の長軸方向は一般に内側から外側への方向で延在する)。
【0019】
本発明の少なくともいくつかの実施例によるさらに追加の履物構造例は下記を含んでもよい:(a)少なくとも部分的に、履物物品用の足を受け入れるための空洞を規定するアッパーであって、アッパーの第1の要素の大部分がマトリクスを含み、第1の要素が少なくともアッパーのフォアフット部分およびミッドフット(midfoot)部分に沿って延在する、アッパー;(b)アッパーの第1の側からアッパーの第2の側まで延在する着用者の踵または足首に係合するための少なくとも1つのストラップを含む、アッパーと係合された靴固定機構;ならびに(c)アッパーと係合されるソール構造。ストラップは、アッパーまたはソール構造の少なくとも1つと共に提供された第2の締結構成部品と係合する第1の締結構成部品を含んでもよい。そのような履物構造はまた、上記様々な特徴(例えば、スロート領域、インステップタンなど)の1つまたは組み合わせを含んでもよい。
【0020】
2.履物物品を構成する方法
本発明のさらなる局面は、例えば、上記様々な型の履物物品を製造する方法に関する。そのような方法は、例えば、下記を含んでもよい:(a)複数の孔部を規定するポリマーマトリクス構造を形成する工程であって、ポリマーマトリクス構造が第1の自由端および第2の自由端を含む、工程;(b)第1の自由端がアッパーのヒール部位に沿って延在し、第2の自由端がアッパーのヒール部位に沿って延在するように、ポリマーマトリクス構造をアッパーに組み入れる工程;(c)任意で解除可能および/または調節可能な様式で、第1の自由端および第2の自由端を係合させる工程;ならびに(d)ソール部材をアッパーに固定する工程。これらの工程は任意の所望の順序でおよび/または任意の所望のタイミングで実施してもよい。ポリマーマトリクスは、全体のアッパー構造の任意の所望の一部、複数の部分、または割合を形成してもよい。
【0021】
ポリマーマトリクス構造の自由端は、本発明から逸脱しなければ、例えば、以下を含む任意の所望の様式でおよび/または任意の所望の構造を使用して、係合させてもよい:コードまたはひもによる、例えば、小穴もしくは開口部を通過させる、または自由端に設けられた他の構造に係合させることによる;自由端間に延在し、自由端に係合する中間接続部材による;自由端で互いに直接係合することによる;など。所望であれば、追加の代替案として、自由端を、例えば、接着剤、セメント、融合技術などにより永久に互いに係合させ、これによりヒール部位で重ね継ぎまたは他の継ぎ目を形成することができる。
【0022】
上記履物構成法はさらに、1つまたは複数の追加の構造を全体の履物部材に組み入れるための工程を含んでもよい。そのような追加の工程としては、下記が挙げられるが、それらに限定されない:ヒールタン要素をアッパーまたはソール構造の少なくとも1つと係合させる工程(例えば、第1の自由端および第2の自由端に隣接するヒール部位で);ブーティ部材を例えば、ヒールタン要素、アッパー部材、および/またはソール構造などの少なくとも1つと係合させる工程;インステップタン部材をアッパー部材またはソール構造などの少なくとも1つと係合させる工程;など。所望であれば、ヒールタン、インステップタン、および/またはブーティ部材は履物構造の残りの部分と、着脱可能に、および解除可能に、例えば、これらの要素の取り外し、交換、および/または洗濯が可能になるように、係合させてもよい。
【0023】
本発明の実施例による履物物品の製造法の別の例は下記を含む:(a)複数の孔部を規定する第1のポリマーマトリクス構造を形成する工程であって、第1のポリマーマトリクス構造が第1の自由端を含む、工程;(b)複数の孔部を規定する第2のポリマーマトリクス構造を形成する工程であって、第2のポリマーマトリクス構造が第2の自由端を含む、工程;(c)第1の自由端がアッパーのヒール部位に沿って延在し、第2の自由端がアッパーのヒール部位に沿って延在するように、第1および第2のポリマーマトリクス構造をアッパーに組み入れる工程;(d)任意で解除可能および/または調節可能な様式で、第1の自由端および第2の自由端を互いに係合させる工程;ならびに(e)ソール部材をアッパーに固定する工程。これらの工程は任意の所望の順序でおよび/または任意の所望のタイミングで実施してもよい。これらの方法はまた、上記追加の工程、構造、および/または変形の1つまたは複数を含んでもよい。
【0024】
本発明のさらに追加の局面は、下記を含む履物物品を製造する方法に関する:(a)複数の孔部を規定するポリマーマトリクス構造を形成する工程であって、ポリマーマトリクス構造が単一構造として延在し、履物物品の少なくともフォアフット部分、ミッドフット部分およびヒール部分の大部分を形成する、工程;(b)ポリマーマトリクス構造をアッパーに組み入れる工程;(c)ソール部材をアッパーに固定する工程;ならびに(d)ヒールタン要素をアッパーまたはソール部材の少なくとも1つと係合させる工程。重ねて、これらの工程は任意の所望の順序でおよび/または任意の所望のタイミングで実施してもよい。これらの方法はまた、上記追加の工程、構造、および/または変形の1つまたは複数を含んでもよい。
【0025】
本発明の少なくともいくつかの実施例による履物物品を製造するための方法の追加の例は下記を含む:(a)複数の孔部を規定するポリマーマトリクス構造を形成する工程であって、ポリマーマトリクス構造が単一構造として延在し、履物物品の少なくともフォアフット部分およびミッドフット部分の大部分を形成する、工程;(b)ポリマーマトリクス構造をアッパーに組み入れる工程;(c)アッパーの第1の側からアッパーの第2の側まで延在するストラップを提供し、これにより踵または足首係合システムを提供する工程;ならびに(d)ソール部材をアッパーに固定する工程。重ねて、これらの方法はまた、上記追加の工程、構造、および/または変形の1つまたは複数を含んでもよく、様々な工程は任意の所望の順序でおよび/または任意の所望のタイミングで実施してもよい。
【0026】
II.本発明よる構造および方法例の詳細な説明
本発明による構造および方法の具体例について、下記でより詳細に説明する。読者は、これらの具体例が本発明の実施例を示すために説明されたにすぎないこと、これらの実施例は本発明を制限するものとして考えるべきではないことを理解すべきである。
【0027】
履物物品10を図1〜4において、アッパー20およびソール構造30を含むものとして示す。下記説明において参考のために、履物10は図1および2において示されているように3つの大まかな部位に分割してもよい:フォアフット部位11、ミッドフット部位12、およびヒール部位13。部位11〜13は履物10の正確な領域の境界を定めようとするものではない。むしろ、部位11〜13は、下記説明中で参照の骨組みを提供する履物10の一般領域を表すことを目的としている。部位11〜13は一般に履物10に適用されるが、部位11〜13の言及はまた、具体的にアッパー20、ソール構造30、またはアッパー20もしくはソール構造30のいずれかの中の個々の構成部品に適用される可能性がある。
【0028】
アッパー20はソール構造30に固定され、足を受け入れるための間隙または空洞を規定する。参考のために、アッパー20は外側21、反対の内側22、およびバンプまたはインステップ領域23を含む。外側21は、足の外側に沿って延在するように配置され(すなわち、アウトサイド)、一般に部位11〜13の各々を通過する。同様に、内側22は足の反対の内側に沿って延在するように配置され(すなわち、インサイド)、一般に部位11〜13の各々を通過する。バンプ領域23は外側21と内側22との間に配置され、足のアッパー表面に対応する。バンプ領域23は、ひも25、または足に対しアッパー20の寸法を変更しこれにより履物10の適合度を調節する従来の様式で使用される他の所望の閉鎖機構を有するスロート24を含む。アッパー20はまた、足をアッパー20内の間隙にアクセスさせる足首開口部26を含む。
【0029】
アッパー20はまた、ヒール要素48および爪先要素49を含む。ヒール要素48は上方に、アッパー20の内面に沿って延在し、履物10の快適性を向上させる。爪先要素49はフォアフット部位11で、アッパー20の外面上に配置され、耐摩耗性を提供し、着用者の爪先を保護し、足の位置調整を支援する。いくつかの態様では、ヒール要素48および爪先要素49の1つまたは両方が存在しなくてもよく、または、ヒール要素48は、例えば外面上に配置されてもよい。様々なヒール要素(例えば、ヒールタン要素)の追加の例および特徴は下記でより詳細に記載する。
【0030】
ソール構造30はアッパー20の下面に固定され、一般に、例えば、ミッドソール31、アウトソール32、およびソックライナーまたはインソール部材33を含む従来の構造を有してもよい。ミッドソール31はポリマーフォーム材料、例えば、ポリウレタン、エチルビニルアセテート、または、ウォーキング、ランニング、ジャンピング、もしくは他の活動中、圧縮されて地面もしくは他の接触表面反力を減衰する他の材料(例えばファイロン、ファイライト(phylite)など)で形成してもよい。本発明によるいくつかの構造例では、ポリマーフォーム材料は、履物10の快適性、運動制御品質、安定性、および/または地面もしくは他の接触面反力減衰特性を増強する様々な要素、例えば、流体充填ブラダ(bladder)またはモデレータ(moderator)を封入または含有してもよい。アウトソール32はミッドソール31の下面に固定され、歩行活動または他の活動中に地面に接触する耐摩耗性材料、例えばゴムから形成される。アウトソール32を形成する材料は適した材料から製造されてもよく、および/またはテクスチャ加工され、静止摩擦力および滑り抵抗を増大させてもよい。ソックライナー33はアッパー20の間隙内に、足の下面に隣接して配置され、履物10の快適性を向上させる薄い圧縮可能な部材である。上記ソール構造30の形態は履物10に適しているが、ソール構造30は、本発明から逸脱しなければ、任意の所望の従来または非従来性ソール構造形態を示してもよい。
【0031】
アッパー20の少なくとも一部分は、様々な交差点42で交差する複数のセグメント41から形成されたマトリクス層40を含む。セグメント41のこの形態により、マトリクス構造が付与され、マトリクス層40内の複数の孔部43が規定される。本明細書で使用されるように、「マトリクス」という用語は、例えば孔部を形成するネット、グリッド、格子、ウェブおよび有孔材料を含む様々な形態を包含するものとする。マトリクス層40は、例えば、ゴム、シリコーン、熱可塑性ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチルビニルアセテート、およびスチレンエチルブチレンスチレンを含むポリマー材料から単一(すなわち、ワンピース)構造で形成されてもよい。ポリマー材料の硬度は本発明の様々な局面の範囲内で著しく変動してもよいが、ショアAスケールで98またはそれ以下の硬度を有するポリマーは、足に対してサポートを提供し続けながら、マトリクス層40の快適性および可撓性を向上させる。マトリクス層40を製造する際には、ポリマー材料は、下記で記載するように、射出成形法により成形し、単一構造を付与してもよい。しかしながら、代替として、セグメント41に対応する個々の要素を交差点42で連結させて、マトリクス層40の特性を有する構造を形成してもよい。例えば、個々のセグメント41を互いに結合または接着させ、マトリクス層40を形成させてもよい。別の例として、所望であれば、マトリクス層40はレーザカットまたはダイカットして、セグメント41、交差点42、および孔部43を規定してもよい。
【0032】
マトリクス層40は足に隣接して延在する快適な弾性構造を提供する。下記でより詳細に記載するように、マトリクス層40は伸長し、足の動きおよび足の寸法の差に適応する。すなわち、マトリクス層40の伸長性により、確実に、履物10が様々な割合で足に適応することができる。マトリクス層40はまた、アッパー20において軽量構造を提供し、孔部43は比較的高い通気性度を履物10に付与する。いくつかのマトリクス層構造例では、マトリクス層40により規定されるアッパーの全体領域は、セグメント41および交差点42に対応する部分よりも孔部43に対応する部分をより多く有する(すなわち、マトリクス層アッパーにより規定される表面積の少なくとも50%(および、実にその領域の少なくとも60%、少なくとも75%、または少なくとも80%)が孔部43に対応する空間を有する)。これらの利点は、下記説明において示した情報に基づくとより明らかになるであろう。
【0033】
マトリクス層40については個別に図5に示す(ソール部材30に取り付ける前)。参考のために、マトリクス層40のどの領域が外側21、内側22、およびバンプ領域23に対応するのかを説明するために数字21〜23を図5で示す。一般に、マトリクス層40は中央領域(バンプ領域23)および中央領域から延在する一対の側面領域(外側21および内側22)を有するU字形の形態を有する。様々なセグメント41の末端は、マトリクス層40の周囲を形成し、4つの縁44a〜44dを規定する。縁44aはマトリクス層40の最外縁であり、縁44bは縁44aから内に向かって離されており、縁44cおよび44dは縁44aと44bとの間に延在する。
【0034】
マトリクス層40を履物10に組み入れた場合、縁44aはソール構造30に隣接して配置され、ソール構造30と連結されてもよい。中央領域に隣接して配置された縁44bの部分はスロート24を規定し、縁44cおよび44dに隣接して配置された縁44bの部分は足首開口部26を規定する。縁44cおよび44dはヒール部位13で互いに連結され、ソール構造30と足首開口部26との間で概ね垂直に延在する。上記のように、様々なセグメント41の末端は縁44a〜44dを規定する。縁44a〜44dの各々に沿って、セグメント41の末端の少なくともいくつかが、例えば、円形形状、楕円形状、または任意の他の実際的なもしくは所望の形状を有する複数のループ45を形成する。図1〜4で示されるように、この図示した実施例では、コード27がループ45を通って延在し、履物構造10の後方部分で縁44cおよび44dを互いに連結させるために使用される。コード27がループ45を通って延在する場合、ループ45は回転し、または他の方法で動き、コード27を収容してもよい。セグメント41の末端領域でループ45を形成させると、このループ45の動きが促進される。
【0035】
セグメント41は交差点42で交差し、またはそうでなければ互いに交わる。セグメント41の配向および全体の位置は、孔部43の形状に影響する。図1〜5の各々で示されるように、この構造例における多くの孔部43が細長い、概ね四角形状の形態(例えば、ダイヤモンド形状形態)を示すように形成される。より特定的には、セグメント41のほとんどが一般に、縁44aと44bの間に延在するように配向され、この配向により、縁44aおよび44bに平行な方向よりも縁44aおよび44bに垂直な方向で通常長くなる多くの孔部43が形成される。
【0036】
セグメント41の配向および得られた孔部43の形状はマトリクス層40の指向性の伸展性(すなわち伸長性)に影響する。上記のように、多くの孔部43は細長い四角形状の形態を有し、多くの孔部43は、縁44aおよび44bに概ね平行な方向よりも縁44aおよび44bに概ね垂直な方向で長くなる。この形態では、マトリクス層40は一般に縁44aおよび44bに概ね平行な方向でより大きな伸展性を有し、マトリクス層40は一般に縁44aおよび44bに概ね垂直な方向でより小さな伸展性を有する。したがって、マトリクス層40の伸長度は、マトリクス層40が伸長される方向に依存する。
【0037】
このマトリクス層構造例40における伸展性の方向による違いは、一部には、孔部43の細長い四角形状の形態を形成する相対角度による。図5について説明すると、様々な孔部43が4つの角46a〜46dを有するものとして言及されている。各々の角46aは、角46aの頂点が縁44aを指すように配向されている。各々の角46bは、角46aと対向して配置され、角46bの頂点が縁44bを指すように配向されている。同様に、角46cおよび46dは互いに対向して配置され、角46cおよび46dの頂点はそれぞれ、アッパーマトリクス構造40の前および後を向いている。言い換えると、角46aおよび46bの頂点は縁44aおよび44bに概ね垂直な方向に向いており、角46cおよび46dの頂点は縁44aおよび44bに概ね平行な方向に向いている。追加の点として、交差点42は通常、角46a〜46dを形成する。
【0038】
この図示した構造例40における角46aおよび46bは一般に、鋭角であるが、少なくともマトリクス層40が伸長されておらず、圧縮されておらず、またはそうでなければ変形されていない状態である場合、角46cおよび46dは鈍角である。ラジアンの観点では、角46aおよび46bの各々が、0.50πラジアン未満の値を有し、角46cおよび46dの各々が0.50πラジアンを超える値を有する。より具体的な実施例として、少なくともいくつかの構造例40では、角46aおよび46bは、0.25πラジアンまたはそれ以下(すなわち45°)のラジアン測定値を有してもよいが、これらの角は、例えば、0.01π〜0.49πの範囲であってもよい。対応して、角46cおよび46dは0.75πラジアンまたはそれ以上(すなわち、135°)のラジアン測定値を有してもよいが、これらの角は、例えば、0.51π〜0.99πの範囲であってもよい。マトリクス層40を伸長させた場合、各々の角46a〜46dの相対ラジアン測定値は、例えば、マトリクス層40が伸長される方向に基づき、幾分、変化してもよい。
【0039】
マトリクス層40が、縁44aおよび44bに対し概ね垂直である方向に伸長されると、角46aおよび46bのラジアン測定値は減少し、角46cおよび46dのラジアン測定値は増加する。より特定的には、角46aおよび46bのラジアン測定値は、縁44aおよび44bに概ね垂直な方向で引張力を適用すると、0に向かって変化し、0に近づく。さらに引張力を適用すると、セグメント41は引張力に抵抗する長さで伸長される。角46aおよび46bが鋭角であるとすると、角46aおよび46bのラジアン測定値は、ラジアン測定値を0までまたは0付近に減少させるために、相対的にわずかに変化することだけを必要とする。
【0040】
逆に、マトリクス層40が縁44aおよび44bに対し概ね平行である方向に伸長されると、角46cおよび46dのラジアン測定値は減少し、角46aおよび46bのラジアン測定値は増加する。より特定的には、角46cおよび46dのラジアン測定値は、縁44aおよび44bに概ね平行な方向で十分な引張力を適用すると、0に向かって変化し、0に近づく。さらに引張力を適用すると、セグメント41は引張力に抵抗する長さで伸長される。角46cおよび46dが鈍角であるとすると、角46aおよび46bのラジアン測定値は、ラジアン測定値を0までまたは0付近に減少させるために、相対的に大きく変化しなければならない
【0041】
上記のように、角46a〜46dのラジアン測定値の変化は引張力を適用すると生じる。角46aおよび46bのラジアン測定値と、角46cおよび46dのラジアン測定値との差は、特定の方向のマトリクス層40の伸展性に影響する。すなわち、角46aおよび46bが鋭角であることで、縁44aおよび44bに概ね垂直な方向では伸展性の程度が相対的に小さくなる。しかしながら、角46cおよび46dが鈍角であることで、縁44aおよび44bに概ね平行な方向では伸展性の程度が相対的に大きくなる。したがって、マトリクス層40は縁44aおよび44bに平行な方向でより大きな伸展性を有するように構成される。
【0042】
履物10に組み入れられると、指向性の伸展性の差は、履物10の全体の適合性および調節性に影響する。ひも25をきつく締めると、少なくともスロート24領域において、縁44aおよび44bに概ね垂直の方向の引張力が効果的に誘導される。この方向の伸長度が比較的低い場合、着用者は快適であるが、しっかりと、ソール構造30に対して配置された足を保持する程度まで、アッパー20をきつく締めることができる。スロート24に隣接する領域では、しかしながら、マトリクス層40は依然として縁44aおよび44bに概ね平行の方向で伸長する能力を有する。そのため、歩行活動中、マトリクス層40は縁44aおよび44bに概ね平行な方向で伸長し、足の屈曲および他の運動に適合する。
【0043】
マトリクス層40はまた、フォアフット部位11で快適性を提供する。フォアフット部位11では、縁44aおよび44bに概ね垂直な方向は履物10の長軸方向に延在することに注意すべきである。そのため、マトリクス層40はフォアフット部位11では、長軸方向に比較的小さな程度伸長する。フォアフット部位11では縁44aおよび44bに概ね平行な方向で、マトリクス層40はより大きな程度まで伸長する。したがって、マトリクス層40は伸長し、足の爪先および母指球を含むフォアフットの動きまたは寸法変化に適合する。例えば、足が前方に曲がり、それにより踵が地面から離れ、中手指節関節が曲げられた場合、足は、内側から外側方向に中手指節関節でわずかに広がる可能性がある。マトリクス層40が内側から外側方向へ伸長するとすることで、足のこれらの動きは制限されず、これが着用者に快適な感触を提供する。
【0044】
引張力を適用されてマトリクス層40が伸長する程度は、上記のように、少なくとも一部は孔部43の形状に依存する。マトリクス層40を形成する材料、セグメント41の厚さ、孔部43のサイズなどを含む他の因子もまた、マトリクス層40が伸長する程度に影響する。上記で列挙したポリマー材料の多くに対し、孔部43の面積のセグメント41の面積に対する適した比は、少なくとも1.5:1、いくつかの実施例では、少なくとも2:1、3:1、またはさらに高くてもよい。
【0045】
上記のように、本マトリクス構造例40の孔部43のいくつかは、細長い、概ね四角形状の形態を有し、これらの孔部43は一般に、縁44aおよび44bに概ね平行な方向よりも縁44aおよび44bに概ね垂直な方向でより長く配列される。しかしながら、いくつかの履物物品では、他の形態を有する孔部43を形成することが有利である可能性がある。図6Aについて説明すると、マトリクス層40の別の形態の一部が図示されており、この場合、孔部43は、縁44aおよび44bに概ね垂直な方向よりも縁44aおよび44bに概ね平行な方向でより長くなっている。図6Bは別の形態を示すが、この場合、孔部43は正方形またはそうでなくても細長くない形状を有する。図6Cについて説明すると、孔部43は円形状を有するものとして図示される。孔部43はまた、図6Dに示されるように、卵形または楕円形状を示してもよい。いくつかの態様例では、孔部43は、図6Eで示されるように六角形を、任意で図6Fに示されるように細長い六角形を有するように形成されてもよい。さらに、孔部43はランダムな、または任意形状、例えば図6Gおよび6Hで示した形状と類似する形状を有してもよい。したがって、孔部43の形状は著しく変動してもよい。単一のマトリクス層構造40は、所望であれば、複数の異なるサイズおよび/または形状の孔部43を有してもよい。
【0046】
マトリクス層40はアッパー20の大半を形成するものとして図1〜3において図示されている。しかしながら、本発明によるさらなる局面または他の構造例では、アッパー20は異なる材料または異なる材料の組み合わせを有する複数の層を含んでもよく、マトリクス層40はこれらの層の少なくとも1つまたはこれらの層の少なくとも1つの一部(例えば、最外層、中間層など)を形成してもよい。例として、マトリクス層40の一般形態を有する要素はフォアフット部位11またはヒール部位13に限定され、アッパー20の残りは別の形態を有してもよい。さらに、ブーティまたはソック(sock)をアッパー20内の間隙に入れてもよく、ブーティまたはソックは、履物10が着用された場合、足を受け入れ、足とマトリクス層40との間に延在する。履物およびアッパー構造の他の例を下記でより詳細に説明する。
【0047】
マトリクス層40の様々なセグメント41の厚さは、アッパー構造20全体を通して実質的に一定であってもよい。しかしながら、いくつかの態様では、セグメント41の厚さは次第に小さくなってもよく、またはそうでなければ縁44aと44bの間で変化してもよく、例えば、セグメント41は縁44aに隣接してより大きな厚さを有し、縁44bに隣接してより小さな厚さを有する。厚さはまた、ヒール部位13のセグメント41が、例えば、部位11および12のセグメント41よりも薄くなる、または厚くなるように変動してもよい。本発明から逸脱しなければ、他の厚さ分布も可能である。セグメント41の断面形状もまた、変動してもよく、例えば、円形、楕円、正方形、長方形、三角形、平面、または他の形状などを含む。楕円または長方形形状から形成される場合、断面は、厚さよりも大きな長さおよび/または幅を有してもよく、より長いまたはより幅の広い表面が、足に隣接して存在するように配列されてもよい。
【0048】
本発明の例による履物10を現在製造することができる方法の一例を、図7A〜7Dを参照して、以下説明する。マトリクス層40は、図7Aで示されるように、鋳型50内でポリマー材料から単一(すなわち、ワンピース)構造で形成してもよい。鋳型50は、上部51および下部52を含む。図示されるように、下部52の表面は、マトリクス層40の一般形状を有する凸凹領域53を含む。代替として、上部51または部分51および52の両方は、マトリクス層40の形状の凸凹部分を有してもよい。使用時には、部分51および52は、重なった接触する位置で配置され、ポリマー材料が凸凹領域53に注入される。ポリマー材料が硬化または固化されると、図7Aに示されるように、部分51および52は分離され、マトリクス層40が取り出される。
【0049】
マトリクス層40を鋳型50から取り出すと、図7Bで図示されるように、ラスティング要素28(または他のバッティング材料)の1つまたは複数の層を、少なくとも縁44aに隣接して固定してもよい。ラスティング要素28は、マトリクス層40に縫いつけられ、接着剤により適用され、またはそうでなければ固定されてもよい。しかしながら、マトリクス層40が熱可塑性ポリマーから形成される場合、マトリクス層40をラスティング要素28に連結させるのにボンディングを使用してもよい。ラスティング要素28のための適した材料としては、例えば、織、不織に関係なく、様々な織物、またはポリマーシート材料が挙げられる。ラスティング要素28はマトリクス層40の1つまたは両方の側に隣接して延在してもよい。代替として、ラスティング要素28は、ポリマー材料を注入する前に、鋳型50中(例えば、凸凹領域53中)に提供してもよい。ポリマー材料を鋳型50に注入する場合、ラスティング要素28に接触するポリマー材料の部分が硬化し、もしくはそうでなければ固化され、または重合され、これにより、ラスティング要素28がマトリクス層40に固定される。いくつかの態様では、マトリクス層40部分が機械的にラスティング要素28に連結される切れ目のない形態を使用してもよい。所望であれば、さらに別の例として、ラスティング要素28はマトリクス層40と単一構造として形成してもよい(例えば、マトリクス層40の一部として一体成形されるなど)。本発明から逸脱しなければ、ラスティング要素28(または他のバッティング材料)をマトリクス層40に固定する任意の所望の方法を使用してもよい。また、所望であれば、単一材料はラスティング材料28(または他のバッティング材料)全体(外周の周囲に完全に延在する)を形成してもよく、または複数のラスティング要素部分28(または他のバッティング材料部分)を、いずれかまたは各々の縁44aに沿って設けてもよい。
【0050】
ラスティング要素28が、縁44aに固定されるかまたは他の方法で縁44aに沿って提供されれば、図7Cに示されるように、この図示した構造例においてコード27をマトリクス層40に組み入れられ得る。上記のように、コード27はループ45を通って延在し、縁44cと44dを互いに連結させるために使用される。より特定的には、この構造例では、コード27はスロート領域24のループ45を通り、足首開口部26に隣接するループ45を通り、ならびに縁44cおよび44dを形成するループ45を通って延在する。コード27を組み入れる前に、縁44cおよび44dを互いに隣接して、例えば、真っ直ぐに、または概ね垂直な様式で配置する。その後、コード27を、ループ45を通して、縁44cおよび44dに沿って延在させ、縁44cおよび44dを互いに連結させる。図7Cで示されるように、このようにコード27がマトリクス層40に組み入れられると、マトリクス層40がアッパー20の全体の形状を形成し始める。さらに、ヒール要素48(この例は下記でより詳細に記載される)をこの時点で、全体構造に組み入れてもよい。単一コード27を使用する代わりに、下記でより詳細に記載されるように、2つまたはそれ以上のコード27を使用してもよい(例えば、後方ヒール領域で1つ、足首開口部に沿って1つ、スロート領域に沿って1つなど)。
【0051】
履物10を製造するためのこの方法例におけるさらなる工程を図7Dに示すが、この場合、ひも25およびストロベル(strobel)ソック29がマトリクス層40と連結される。コード27がループ45を通って延在する場合、孔部が少なくともスロート24内の様々なセグメント41とコード27との間で形成され、ひも25はこれらの孔部に通されてもよい。したがって、ひも25はアッパー20に組み入れられ、ジグザグまたは他のパターンで(例えば、従来の様式で)スロート24を横切って延在してもよい。ストロベルソック29はアッパー20内の間隙の下面を形成する。上記のように、ラスティング要素28は縁44aに連結される。ストロベルソック29をマトリクス層40に連結させるために、ストロベルソック29をラスティング要素28に、縫い合わせ、接着結合させ、または別の方法で連結させてもよい。(任意の所望の構造を有する)ソール構造30をその後、アッパー20に連結させ、事実上履物10の製造を完了させる。さらに、所望であれば、爪先要素49(例えば、所望であれば、爪先キャップ)をこの時点で組み入れてもよい。いくつかの態様では、切れ目のない形態を使用してもよく、この場合、マトリクス層40の部分またはラスティング要素28は機械的にソール構造30に連結される。さらに、マトリクス層40がフォアフット部位11またはヒール部位13の周囲に延在する領域では、ラスティング要素28は、図7Dに示されるように、ギャザーがよせられてもよく、これらの領域でのアッパー20の丸い形態が促進される。すなわち、ラスティング要素28は製造過程中のマトリクス層40のギャザーよせを促進する。
【0052】
従来の履物物品では、アッパーは、特定のサイズを有する履物に適合するように形成される。例えば、サイズ10のために形成されたアッパーは、サイズ9.5のために形成されたアッパーよりも大きい。マトリクス層40を使用する1つの利点は、1つのサイズのマトリクス層40をある範囲の履物サイズにおいて使用することができることである。例えば、単一の鋳型を使用して、5つの実質的に同一のマトリクス層40を形成してもよく、この単一鋳型から製造したマトリクス層40を8〜10のサイズの個々の履物物品に組み入れてもよい。上記のように、マトリクス層40は、縁44aおよび44bに対し概ね平行な方向でより大きな伸展性を有するように構成される。アッパーに組み入れられる時にマトリクス層40を伸長させることにより、マトリクス層40は、連続してより大きなサイズを有する履物に組み入れてもよい。いくつかの状況では、マトリクス層40の圧縮を使用して、マトリクス層40を連続してより小さな履物物品に組み入れてもよい。すなわち、単一のマトリクス層40を、図8に示されるように、ある範囲の足のサイズに適合するような大きさの履物物品に組み入れてもよい。
【0053】
様々な履物サイズにおいて単一のマトリクス層40を使用することができると、履物物品10の製造効率が向上する。単一のマトリクス層40はまた、右足または左足のいずれかに適合する履物10を形成するのに使用してもよい。図5で示されるように、マトリクス層40は一般に対称構造を有し、そのため、履物物品10の右足または左足バージョンのいずれかに組み入れられてもよい。マトリクス層40が対称ではない状況では、マトリクス層40の単なる反転またはそうでなければ逆転により、単一のマトリクス層40を右足または左足のいずれにも適合させることができる。したがって、マトリクス層40の1つの形態が履物10の右足または左足バージョンのどちらにも適しているという点で、履物10の製造効率はさらに向上する。
【0054】
上記のように、マトリクス層40は、縁44aおよび44bに対し概ね垂直な方向でよりも、縁44aおよび44bに対し概ね平行な方向でより大きな伸展性を有するように構成される。いくつかの状況では、縁44aおよび44bに対し概ね平行な方向で伸展性がより小さいことが望ましい場合がある。縁44aおよび44bに対し概ね平行な方向での伸展性を変化させる1つの方法は、角46a〜46dのラジアン測定値を変更することを含む。しかしながら、これは、縁44aおよび44bに対し概ね垂直な方向での伸展性も変化させる作用を有する。縁44aおよび44bに対し概ね垂直な方向での伸展性を実質的に変化させずに、縁44aおよび44bに対し概ね平行な方向での伸展性を変化させる1つの方法は、例えば、図9Aで示されるように、1つまたは複数の接続部材47を提供することを含む。この図示した実施例における接続部材47は選択した孔部43を二等分し、角46cから角46dまで延在し、これらの孔部43における伸長度を制限する。本発明から逸脱しなければ、他の接続部材のサイズ、形状、配向、または配列を使用してもよい。
【0055】
履物10は単一のマトリクス層40を組み入れるものとして上記で説明されている。図9Bについて説明すると、一対のマトリクス層40が履物物品10に組み入れられる。マトリクス層40の1つは一般にアッパー20の外面を形成し、もう一方のマトリクス層40は一般にアッパー20の内面を形成する。すなわち、マトリクス層は、同一の広がりを持つ、積層関係を示し、交互に履物10の外面および内面を形成する。マトリクス層40の各々は、所望であれば、同じ材料から形成してもよい。代替として、例えば、外面を形成するマトリクス層40は、摩耗に抵抗するように選択された材料から形成されてもよく、内面を形成するマトリクス層40は、快適性または向上された触覚品質を提供するように(例えば、着用者がより快適に履物10中で裸足でいることができるように)選択された材料から形成されてもよい。したがって、マトリクス層40は履物10に有利な特性を協働して付与する異なる材料から形成されてもよい。図10では、アッパー構造全体20にわたって二重マトリクス層が形成されるものとして示されているが、所望であれば、二重層は全体のアッパー構造20の1つまたは複数の部分のみに提供してもよい。(所望であれば、同じ色のマトリクスを使用してもよいが)所望であれば、2つのマトリクス層40は、興味を引く独特な外観を提供するように異なる色を有してもよい。
【0056】
図1〜3では、履物10は、足首開口部26が足首の下方領域の周囲に延在する形態を有するものとして示されている。しかしながら、図9Cでは、履物10は、個人の足首の周囲に延在し、足首開口部26の位置を足首の上方領域まで上昇させる延長マトリクス40'を含むものとして示されている(例えば、「ハイトップ」履物物品10を製造するため)。図示されるように、延長マトリクス40'は、ループ45と同様の様々なループ45'を含み、コード27を受け入れ、これにより、延長マトリクス40'が履物10と連結される。この構造例におけるコード27は上方に延在し、延長マトリクス40'の縁をヒール部位13の後面に沿って連結させ、ひも25が延長マトリクス40'の前方部分に沿って延在する。コード27およびひも25の各々を調節することにより、足首の周囲にマトリクス層40'が適合する様式を変更させてもよい。延長マトリクス40'は、上記で、マトリクス層40とは別個の要素であるとして説明されている。しかしながら、いくつかの態様では、所望であれば、延長マトリクス層40'はマトリクス層40と単一構造で形成されてもよい(例えば、別々の部分を接続させるコード27が必要ない)。
【0057】
マトリクス層40に対し上述したように、コード27はループ45を通って延在し、少なくともスロート領域24では孔部が様々なセグメント41とコード27との間で形成される。ひも25をその後、これらの孔部に通してもよい。同様の形態を延長マトリクス40'に対し、使用してもよい。代替として、図9Cで示されるように、ひも25はこの目的のために設けられたループ45'を直接通って延在してもよい。したがって、ループ45および/またはループ45'はコード27ではなく、ひも25を受け入れ、レーシングシステムを形成してもよい。さらに、またはその代わりに、所望であれば、マトリクス40はまた、ひも25係合ループ、任意でコード27が延在するループ45(あれば)とは別のループを含むように形成されてもよい。本発明によるいくつかの構造では、所望であれば、コード27は除外してもよく、またはある領域のみ、例えばヒール領域にのみ提供してもよい。
【0058】
図9Cの履物構造10の追加の例示的な特徴は、側面21および22の各々において、およびフォアフット部位11およびミッドフット部位12で、またはそれらを横切って配置された安定性マトリクス40''に関する。安定性マトリクス40''はマトリクス層40の一部と重なり、足の側面に追加の安定性を提供する。図示されるように、安定性マトリクス40''は概ね三角形状を有するが、本発明の範囲内であれば、様々な他の形状および/またはサイズを有してもよい。安定性マトリクス40''は、フォアフット部位11とミッドフット部位12のインタフェースに配置されたものとして図示されているが、この要素または他の同様の要素を履物10の他の領域に配置してもよい(例えば、任意の所望の位置でマトリクスの二重層を提供するため)。安定性マトリクス40''はソール構造30の外部に固定されたものとして示されているが、安定性マトリクス40''はまた、マトリクス層40と同様の様式を含む様々な位置で固定されてもよい(例えば、ミッドソールとアウトソールの間へ続く、ミッドソール構造間へ続くなど)。また、(同じ色のマトリクスを使用してもよいが)所望であれば、マトリクス層40および安定性マトリクス40''は、興味を引く独特な外観を提供するように異なる色から製造してもよい。
【0059】
上記のように、セグメント41の幅および/または厚さは、マトリクス層40が伸長する程度に影響を有する。履物10の外側安定性を増加させるために、セグメント41の幅および/または厚さは、例えば、図9Dに示されるように、選択的に増加させてもよく、例えば、ある位置で、側方運動または他の型の運動中などに、さらなる安定性が提供される。図示されるように、ヒール部位13のセグメント41およびミッドフット部位12の部分は増加した幅および/または厚さを示す(ならびに、孔部43領域は減少する)。さらに、安定性マトリクス40''と関連するセグメントはまた、増加した幅および/または厚さを示す。いくつかの態様では、マトリクス層40の他の領域および延長マトリクス40'(あれば)の部分は、増加した幅および/または厚さを示す可能性がある。したがって、セグメント41の増加した幅および/または厚さを履物10の任意の所望の領域で使用し、追加の安定性、摩耗耐性などを付与してもよい。
【0060】
バスケットボールなどのスポーツ用に使用する場合、ヒールおよび/または足の他の領域に対する追加の安定性は、例えば、側方運動中に有利である可能性がある。セグメント41の幅および/または厚さを増加させるのは、追加の安定性が提供される可能性のある1つの方法である。代わりにまたは組み合わせて、例えば、図9Eで示されるように、強化構造60をアッパー20に組み入れてもよい。より具体的には、1つまたは複数の強化構造60をソール構造30および/またはマトリクス層40の外側に固定し、ヒール部位13(および/または履物構造の他の部位)に延在するようにし、さらなる安定性を付与してもよい。さらなる態様では、強化構造60のための他の形態をミッドフット部位12に配置し、足のアーチに対するサポートを提供してもよく、または強化構造60の他の形態をフォアフット部位11に配置してもよい。したがって、様々な強化構造をアッパー20に組み入れ、追加の安定性を付与してもよい。
【0061】
図9C〜9Eに関連して上記で記載した様々な概念はまた、履物10の他の形態に適用してもよい。図9Fについて説明すると、安定性マトリクス40''が、例えば、ランニング、テニス、またはクロストレーニングに適した形態を有する履物10に組み入れられる。さらに、板状形態を有する強化構造60'がこの履物構造例のヒール部位13に組み入れられる。
【0062】
単一のコード27を使用する代わりに、2つまたはそれ以上のコード27を履物構造10に使用してもよい。図10Aについて説明すると、第1のコード27'はスロート24内のループ45を通り、足首開口部26に隣接するループ45を通って延在してもよい。第2のコード27''は、縁44cおよび44dを形成するループ45を通って延在してもよい。さらに、第2のコード27''は、ヒール要素48に固定され、第2のコード27''を締め第2のコード27''の相対位置を維持する締結具48'を通って延在してもよい。本発明から逸脱しなければ任意の型の締結具48'を使用してもよく、当技術分野において標準である公知の機械的締結具が含まれる。この配置において、2つのコード27'および27''の各々を独立して調節して、履物10の適合度を向上させてもよい。例えば、図10Aと10Bを比較して示されるように、個人は第2のコード27''の上部を引っ張り上げ、ヒール部位13を締め付け、そこでの適合度を向上させてもよい。同様に、個人は第2のコード27''を緩め、ヒール部位13にさらなる容積を提供してもよい。事実上、第2のコード27''を締めたり、緩めたりすると、縁44cおよび44dの相対位置が移動し(すなわち、縁44cと44dの間の空間が減少または増加し)ヒール部位13での適合性が調節される。いくつかの態様では、縁44dに沿って提供されるループ45を通って延在する突出構造は、縁44cに沿って形成されてもよく、縁44cおよび44dが連結される(かつコード27'は省略されてもよい)。別の例として、所望であれば、締結具48'を使用するのではなく、コード27''の自由端を提供し、ヒール部位で結んでもよい。したがって、コード27および/もしくは27''ならびに/または締結具48'以外の構造を使用して縁44cおよび44dを連結させてもよい。そのような構造のいくつかの追加の例を下記でより詳細に記載する。
【0063】
履物10は、マトリクス層40が足に直接、または足の周囲に延在するソックスに隣接するように着用されてもよい。しかしながら、いくつかの態様では、例えば、図11に示されるように、ライナー70がマトリクス層40と足との間に延在してもよい。ライナー70は一般に、アッパー20内で規定される間隙の形状と一致する形状を有する。履物10に追加の安定性を付与するために、ライナー70を形成する織物材料は半剛性サポート72(例えば、プラスチックパネルなど)を受け入れる様々なポケット71を有してもよい。ポケット71およびサポート72は、例えば、概ね垂直方向に延在してもよく、足首の内側および外側に沿ってサポートが提供される。また、サポート72は足首の周囲に、または足の他の部分に隣接して延在してもよい。
【0064】
アッパー20とライナー70との間の著しい動きを阻止するために、ライナー70の下面には締結具73を組み入れてもよく、アッパー20の内側には対応する締結具を組み入れてもよい。例えば、締結具73がマジックテープシステムのフック部分である場合、ループ部分がアッパー20内に配置されてもよい。締結具73はまた、ライナー70の下面およびアッパー20内の間隙の下面に配置される滑り止め材料、例えばネオプレンであってもよい。ライナー70がアッパー20内に配置される場合、締結具73はアッパー20に対するライナー70のさらなる動きを効果的に制限し、これによりしっかりと足が配置される。他の型の固定システムもまた、締結具73のマジックテープシステムの代わりに使用してもよく、例えば、スナップ、ボタン、接着剤、相補型保持構造(例えば、スロット、溝、リッジなど)が挙げられる。さらに、締結具73の位置は変動してもよく、側面および背面を含む、ライナー70の下面以外の位置が挙げられる。したがって、締結具の型および位置は著しく変動してもよい。
【0065】
ライナー70は一般に履物10の快適性を向上させる。いくつかの運動中、マトリクス層40の一部は足に接触して、圧力を加える場合があり、ライナー70は圧力を調節し、それを足のより広い領域に分配するように機能する。フォーム材料をライナー70に組み入れ、さらに快適性を向上させてもよく、ライナー70の材料はまた、足を冷却し汗を消散させるために、通気性を有してもよい。ライナー70を形成する材料はまた、防水または耐水性であってもよい。また、所望であれば、ライナー70全体を提供するのではなく、マトリクス層40の内面に、織物、フォーム、または他の快適性を向上させる材料を提供(例えば、裏打ち)してもよい。
【0066】
コード27がループ45を通って延在する場合、ループ45は、ねじれるかまたは他の様式で回転し、コード27に適合してもよい。マトリクス層40を形成する材料はこの回転に対応するのに十分強く、可撓性であるが、回転によりマトリクス層40の材料にさらなる応力が誘起される。図12について説明すると、マトリクス層40は、ループ45が、ねじれたまたは回転した形態を有するように形成された形態を有するものとして示されている。図5では、ループ45はマトリクス層40の残りと同一平面内にある。対照的に、図12はループ45がマトリクス層40の残りに対し角度を有する形態を示している。すなわち、ループ45はコード27に適合するねじれた形態またはそうでなければ回転形態を有するように形成され、さらに大きくねじれたり、回転する必要がない。図12では、ループ45はマトリクス層40の残りに対し45°の角度を有するものとして示されているが、さらなる形態では5〜90°の範囲であってもよい。
【0067】
当然、本発明の実施例による履物物品では、構造、部品、および部品の組み合わせについて広範囲にわたる変動が可能である。そのような変動の様々な追加の例を、下記で図13〜21と併せて説明する。
【0068】
1つの追加の例として、本発明から逸脱しなければ、マトリクス層構造における多くの変動が可能である。図1〜12は穴または孔部43の全体サイズ、孔部43の形状、セグメント41のサイズなどの変動を含むマトリクス層構造40のいくつかの例を示す。例えば、図3、5、7B、および12において示したマトリクス層構造40のフォアフット部位11では、孔部43は爪先の周囲に実質的に「放射状」に配列して示されており、例えば、セグメント41はスロート24に隣接するマトリクス構造40の上部バンプ部分(最後のループ45付近で、縁44bに沿って)から外に、全体構造の内側、外側および爪先領域に向かって広がっている。これらの図で示されるように、これらの構造例40では、孔部43はフォアフット部位11の周囲では半径方向に、すなわち上部バンプ部分からフォアフット側に向かって、および/または履物構造のフォアフット爪先部分に向かって細長い。
【0069】
図13はマトリクス層構造140の別の例を示す。マトリクス層140は上記詳細に説明したマトリクス層40と同様であってもよい(例えば、同じ型の材料から製造され、同じ型の特性を有するなど)。マトリクス層40と比較した場合のマトリクス層140における1つの差異は、爪先またはフォアフット部位111における孔部143の配列に関する。図13のマトリクス層構造140では、フォアフット部位111における孔部143の少なくともいくつかは、その最も長い寸法がマトリクス層140を横切って実質的に横に延在するように(例えば、孔部143の最も長い部分が概ね内側から外側方向に延在するように)配列される。本発明から逸脱しなければ、任意の所望のサイズの孔部143および任意の所望の数の横列の孔部143をフォアフット部位111に提供してもよい。図13で示した構造例140では、マトリクス層140のフォアフット部位111は、マトリクス層140の中央最上部/爪先部142まで大きな孔部143を含み、より小さな孔部143が内側および外側まで、それに沿って提供される。アッパー構造を形成すると(例えば、図3で示されるように)、これらの孔部143の横列は足の最上部を横切って延在し、そのため、孔部143の最も長い寸法は、例えば、正常なステップ、ジャンプ、または他の活動中に、実質的に足の屈曲方向に沿って(足の屈曲線の長軸方向に)延在する。
【0070】
図3、5、7B、および12と併せて説明した放射状配列との美的で表面的な違いの他に、例えば、図13で示したもののような、フォアフット横方向孔部143配列は、様々な利点を有することができる。例えば、横(内側から外側)方向で細長い寸法の孔部143を提供すると、履物物品の快適性が向上する可能性があるが、これは、全体の爪先またはフォアフット部位111が、例えば、ステップ、ジャンプ、または他の活動中、着用者の足と共により自然に曲がるからである。いくつかの場合に、「放射状に配列された」孔部43(例えば、図3、5、7B、および12において示されるもののようなもの)は、例えば、着用者のステップまたは着用者のフォアフット部位111の別の屈曲中に「一団となる」傾向があり、これは美的に好まれず、いくつかの快適性に関する問題を引き起こすことがある(例えば、特に、足とマトリクス層40との間にソックスまたは他の快適な層なしで、履物を着用することを好む使用者に対し)。このバンチング(bunching)は放射状に配列された構造において、様々な様式で軽減され、または最小に抑えられる可能性があるが(例えば、放射状に配向された孔部構造のフォアフット部分11において比較的小さな孔部43を提供することにより)、図13で示したフォアフット部分111における横方向の孔部配列はまた、このバンチングを減少させ、快適性、感触、および適合性を向上させることができる。さらに、図13で示した横方向の孔部配列を、例えば、図1〜12Bと併せて上記で説明した履物構造の様々な追加の特徴と、ならびに、図14A〜21と併せて下記で説明したものと併せて使用してもよい。
【0071】
本発明の実施例による履物物品中に存在する可能性のある構造、部品、および部品の組み合わせに関する他の可能性のあるバリエーションは、履物構造の後方ヒール部位においてアッパーを共に固定するための構造および方法を含む(そのような構造においては、これらの領域において固定が必要である)。図1〜12において示した構造例は、アッパー構造の概ね垂直後方ヒール部分を構成する縁44cおよび44dで形成されるループ45を通って延在するコード27''を含む。特に図10Aおよび10Bと併せて上記で説明したこの配列により、使用者は履物を足に固定し、全体の履物サイズを調節し、この後方ヒール部分に適合させることができる。
【0072】
本発明から逸脱しなければ、(必要であれば)マトリクス層をこの後方ヒール部位に固定する追加のおよび/または代わりの方法を使用してもよい。図14A〜14Dは、そのような例示履物固定構造200の一例を示す。これらの図面に示されるように、例えば、マトリクス層240の後方ヒール部位は、図10Aおよび10Bにおいて同様に表示した部分と類似の様式で、側縁244cおよび244dを含む。ひもまたはコード要素ではなく、この構造例200では、後方ヒール固定要素227''は側縁244cと側縁244dとの間で延在するプラスチック部材である(または別の材料で製造される)。固定要素227''は、そこから側縁244cおよび244dに向かって延在する様々な分枝腕(branch arm)232と共に、中央基礎部位230を含む。分枝232は、図14Cおよび14Dにおいて示されるように、側縁244cおよび244dに沿って提供された端孔部245に適合する拡大された端要素232aを含む。プラスチック材料について上述したが、当業者であれば、固定要素227'は、本発明から逸脱しなければ、例えば、織物、皮革、金属などを含む任意の所望の材料または材料の組み合わせから構成してもよいことを理解するであろう。
【0073】
異なる個人に対し、または異なる条件下での使用に対し、より良好な適合を可能とするために、異なるサイズの固定要素227''を提供してもよい。図14Aは比較的幅広の固定要素227''を示す(例えば、足幅が広い着用者が使用するため、厚く、または複数対のソックスを履いて使用するためなど)が、他方、図14Bは比較的幅が狭い固定要素227''を示す(例えば、足幅が狭い着用者が使用するため、裸足または薄いソックスを履いて使用するためなど)
【0074】
端要素232aおよび孔部245は任意の所望の様式のサイズおよび形状としてもよく、これらの要素は、本発明から逸脱しなければ、任意の所望の様式で共に適合させてもよい。一例として、所望であれば、端要素232aは、ボタンがボタン穴に適合する様式と類似の様式で孔部245に適合してもよい(実際、所望であれば、端要素232aはボタン型要素を含んでもよい)。別の例として、所望であれば、端要素232aは、孔部245を形成する比較的剛性で、伸縮しない材料(例えば、マトリクス層245の少なくとも側縁244cおよび244dを形成する比較的堅い材料)に適合する可撓性材料から形成してもよい。別の例として、所望であれば、端要素232aは比較的堅い材料から形成してもよく、孔部245は比較的可撓性の、および/または伸縮性の材料から作製してもよい。さらに別の例として、所望であれば、端要素232aおよび孔部245はどちらも幾分可撓性の材料(同じかまたは異なる)から製造してもよく、そのため、所望な場合に、それらを一緒に係合させ、互いに解放させることができるが、依然として使用時に信頼できる接続または係合が維持される。
【0075】
図14A〜14Dにおいては単一の固定要素227''が示されているが、当業者であれば、本発明から逸脱しなければ、側縁244cと244dとの間に任意の数の固定要素227''を延在させることができることを認識するであろう。また、固定要素227''は、本発明から逸脱しなければ、任意の数の分枝232を有してもよい。所望であれば、1つもしくは複数の固定要素227''またはその分枝232は、本発明から逸脱しなければ、斜めに側244cから側244dまで(例えば、側244cの上部から側244dの底部まで、またはその逆など)延在してもよい。他の固定配列もまた可能である。
【0076】
別の後方ヒール固定システムおよび配列300を図15Aおよび15Bに示す。このシステムおよび配列例300は、図14A〜14Dと併せて上述したものと、後方ヒール要素327''(例えば、プラスチック部材)が(例えば、上記のものいずれかのように)マトリクス層340の側縁344cおよび側縁344dの間に延在するという点で同様である。このシステムおよび配列300は図14A〜14Dと併せて上述したものとは、このシステムおよび配列300では、ヒール固定要素327''が孔部345を含み、マトリクス層340の側縁344cおよび344dの端332が孔部345内に延在し、孔部345と係合する要素332aを含むという点で、異なっている(重ねて、任意で、上記ボタンとボタン穴の配列に類似する)。
【0077】
図14A〜15Bにおける、端要素232aおよび332a、ならびに側縁244c、244d、344cおよび344dの比較から明らかなように、ヒール係合要素は本発明から逸脱しなければ様々な型をとってもよい。図14A〜14Dで示される配列200では、端要素232aは固定要素227''の分枝232の単なる拡大端である。しかしながら、図15Aおよび15Bで示した配列300では、端要素332aは、延長要素332bと、ノブまたは端332の主面に対し外に向かって(または実質的に横方向に)延在する拡大部分332cとを含む(例えば、固定要素327''が孔部345から滑り落ち、孔部345から外れるのを阻止するのを助けるため)。構造のバリエーション(例えば、分枝の数、寸法、分枝の角度など)を、例えば、図14A〜14Dと併せて上述した様式で提供してもよい。
【0078】
図16Aおよび16Bは別の後方ヒール固定システムおよび配列400を示す。この配列400では、端要素332a(延長要素332bと、ノブまたは拡大部分332cとを含む)が、マトリクス層340の側縁344cおよび344d上ではなく、ヒール固定要素327''上で提供されることを除き、この配列400は図15Aおよび15Bと併せて説明した配列300と類似する(同様の参照数字を図面において使用する)。さらに、ヒール縁固定要素327''ではなく、マトリクス層340の側縁344cおよび344dに孔部345が設けられる。
【0079】
当然、本発明から逸脱しなければ、他のヒール固定システムおよび配列が可能である。例えば、所望であれば、側縁(例えば、244c、244d、344c、および344d)のいずれかまたは両方が孔部(例えば、245、345)および/または拡大された端要素(例えば、232a、332a)の組み合わせを含んでもよく、固定要素(例えば、227''、327'')は相補的で、対応する拡大された端要素および孔部を含んでもよい。別の例としては、所望であれば、1つの側縁(例えば、344c)は孔部のみ(例えば345)を含んでもよく、他の側縁(例えば、344d)は拡大された端要素(例えば、332a)のみを含んでもよく、一方その際、固定要素(例えば、327'')は拡大された端要素および孔部の適当な相補的な組み合わせを含んでもよい。他の型の締結部配列、例えば、スナップ、引き締めネジ、保持部材構造、マジックテープ、他の機械的結合および/または固定システムなどを使用してもよい。さらに別の例として、所望であれば、中間固定要素227''または327''を省略してもよく、マトリクス層(例えば、240、340)の1つの側縁(例えば、244c、344c)が、例えば、上記の型の拡大された端要素(例えば、232a、332a)および孔部構造(例えば、245、345)(例えば、マトリクス層の側縁に直接そのような相補的な係合構造を提供することにより)、ならびに/または他の締結具配列を使用して、直接、他の側縁(例えば、244d、344d)に接続されてもよい。
【0080】
ヒール固定システムおよび配列は、履物構造内に存在する場合、履物構造の最後尾のヒール部分に直接提供する必要はない。むしろ、所望であれば、この固定システムを、本発明から逸脱しなければ、例えば、履物構造の外側または内側に対し幾分、オフセットさせてもよい。さらに別の例として、所望であれば、例えば、マトリクスがヒール部分全体において連続構造とされる場合、ヒール固定システムおよび配列を省略してもよい(が、そのような構造により、マトリクス材料および/またはマトリクスを含む履物構造を形成する際に関連する成形または他の製造工程において混乱または複雑性が増す可能性がある)。さらに別の例として、図21と併せてより詳細に説明したように、ヒール部位の側縁(例えば、44cおよび44d)は、本発明による少なくともいくつかの構造において、共に永続的に固定されてもよい。
【0081】
図17A〜17Cは、本発明の少なくともいくつかの実施例による履物構造および配列に含まれる可能性のある別の特徴を示す。快適性のため、および/または他の可能性のある目的のため、「ヒールタン」要素502は、履物物品500において、ヒール固定システムまたは配列504(あれば)で提供されてもよい。このヒールタン要素502は、あれば、後方固定システムおよび配列504の使用者の感触を調節するのを助ける可能性があり;運動および/または歩行活動中のマトリクス層506の滑りまたは動きによる、着用者の足の感触を調節し、かつ/または着用者の足の炎症を阻止するのを助ける可能性などがある。ヒールタン要素502はまた、着用者のヒールをサポートするのを助ける可能性がある
【0082】
ヒールタン要素502は、本発明から逸脱しなければ、任意の所望の材料から製造してもよい。いくつかのより具体的な実施例として、所望であれば、内面(例えば、履物内側空洞に面しており、および/または着用者の足に接触している)は、布または織物材料、ポリマー材料(例えば、ポリウレタンまたは他の発泡材料)などから製造してもよい。さらに、またはその代わりに、所望であれば、ヒールタン要素502の少なくともいくつかの部分は、比較的堅い材料(例えば、ポリマー材料、例えばPEBAX(登録商標)(フランスのAtofina Corporation of Puteauxから入手可能なポリエーテル-ブロックコポリアミドポリマー)から製造して、例えば、ヒール領域において追加のサポートを提供してもよく、ならびに/またはマトリクス層506および/もしくは全体の履物構造500(例えば、ヒールカウンタ要素に類似など)に形状を提供してもよい。任意で、そのような状況では、比較的堅いサポート材料が布、織物、フォーム、または他の感触調節材料で被覆されてもよく、着用者にとって快適で、依然として所望のヒールおよび/または履物構造サポートを提供する全体のヒールタン要素502が提供される。さらに別の選択肢として、所望であれば、本発明から逸脱しなければ、別個のヒールカウンタおよびヒールタン要素を提供してもよい。
【0083】
ヒールタン要素502は本発明から逸脱しなければ、任意の所望の様式で、履物構造500の残りと係合させてもよい。例えば、ヒールタン要素502は、アッパー部材506および/またはソール構造508(例えば、ミッドソールおよび/またはアウトソール構造の少なくともいくらかの部分)と、例えば、スティッチングまたはソーイングにより;接着剤またはセメントにより;機械的コネクタまたは締結具、例えばスナップ、保持要素構造(例えば、相互作用溝、レッジ、開口部、保持部材など)、マジックテープ、磁気締結具などにより;アッパー材とソール構造との間、またはソール構造の部分間などでその一部を継続させることにより、係合されてもよい。ヒールタン要素502(または、少なくともいくつかの部分)は永久的に履物全体500内に取り付けてもよく、または着脱または解除可能に取り付けてもよい(例えば、洗浄、洗濯、置換などが可能になる)。1つのより具体的な例では、図17Cで示されるように、ヒールタン要素502の外側側縁は、1つまたは複数の雄スナップ締結要素530を含んでもよく、これは、例えば、アッパー部材構造506の内側に、例えば、マトリクス層506に沿って(例えば、図7B〜7Dで示されるバッティング材料28に沿って)またはミッドソール部分532の内側に沿って提供された1つまたは複数の対応する雌スナップ締結要素と、係合する。別の例としては、ヒールタン要素502の底面534(履物の中底の概ね水平表面に接触する面)は、中底に提供された雌スナップ締結要素と係合する1つまたは複数の雄スナップ締結要素を含んでもよい。当然、所望であれば、本発明から逸脱しなければ、マジックテープ、磁気締結具、または他の締結具もしくはコネクタ配列をスナップ締結具の代わりに使用してもよい。
【0084】
ヒールタン要素502は、本発明から逸脱しなければ他の特徴を提供してもよい。例えば、ヒールタン要素502は、他の要素のための載置台または固定構造として機能してもよい。図17Aおよび17Bは、内側ブーティ要素510を含む(例えば、快適な足を受け入れるための空洞を提供するためになど)履物物品500を示す。全体の履物物品500の定位置にブーティ要素510を保持するのを助けるために、ブーティ要素510はヒールタン要素502に固定してもよい。本発明から逸脱しなければ、これらの要素502および510を共に固定する任意の所望の様式を提供してもよく、例えば、スティッチングまたはソーイング;接着剤またはセメント;機械的コネクタまたは締結具、例えばスナップ、保持要素構造(例えば、相互作用溝、レッジ、開口部、保持部材など)、マジックテープ、磁気締結具などが挙げられる。さらに、またはその代わりに、ブーティ要素510は、所望であれば、全体の履物構造500の別の部分、例えばアッパー部材506またはソール構造508に(例えば、スティッチングまたはソーイングにより;接着剤またはセメントにより;機械的コネクタまたは締結具、例えばスナップ、保持要素構造(例えば、相互作用溝、レッジ、開口部、保持部材など)、マジックテープ、磁気締結具などにより;など)固定されてもよい。
【0085】
ブーティ要素510(またはその少なくともいくらかの部分)は永久的に全体の履物構造500に取り付けてもよく(例えば、ヒールタン要素502に永久的に取り付け、またはその要素と共に形成される)、または、着脱または解除可能にそれらと取り付けてもよい(例えば、洗浄、洗濯、置換などが可能になる)。1つまたは複数の具体例では、ブーティ要素510の後方ヒール部分は、ヒールタン要素502上に提供された対応する雌スナップ要素514と係合する1つまたは複数の雄スナップ部材512を含む。当然、所望であれば、本発明から逸脱しなければ、マジックテープ、磁気締結具または他の締結具もしくはコネクタ配列をスナップ締結具の代わりに使用してもよい。また、所望であれば、ブーティ要素510は、別個のヒールタン要素502が履物構造500で必要とされないように構成されてもよい(および、任意で、ブーティ要素510はアッパー部材506またはソール構造と係合してもよい)。
【0086】
ブーティ要素510は、本発明から逸脱しなければ、任意の所望の材料または材料の組み合わせから製造してもよい。いくつかの履物構造例500では、ブーティ要素510は、当技術分野において公知で使用されている従来の布および/またはフォーム材料516(例えば、編織物、綿布、合成繊維、ポリウレタンフォームなど)から形成される。少なくともいくつかの実施例によれば、ブーティ要素510は、1つまたは複数のバッティングまたは他の少なくとも幾分防水性の材料の外側層を備えた柔らかい可撓性織物またはフォーム材料の中間層を有してもよい。少なくともいくつかの例では、ブーティ材料は通気性があり、水分、空気、および/または熱をブーティ内部から逃がすことができる。
【0087】
さらに別の実施例として、所望であれば、ヒールタン要素502は、ヒール固定システムの少なくともいくらかの部分に(例えば、図14A〜16Bと併せて上記で記載した固定要素227''および/または327''に)接続させ、例えば、これらの部材を共に保持する、固定要素227''または327''を紛失しないようにするのを助けるなどしてもよい。本発明から逸脱しなければ、ヒールタン要素502および固定要素227''または327''を接続させる任意の所望の様式を使用してもよいが、もう1つの具体例では、ヒールタン要素502は、固定要素227''または327''上に提供された対応する雌スナップ要素(図14A〜14Dにおける要素227aを参照されたい)と係合する1つまたは複数の雄スナップ部材536を含んでもよい。当然、所望であれば、本発明から逸脱しなければ、マジックテープ、磁気締結具または他の締結具もしくはコネクタ配列をスナップ締結具の代わりに使用してもよい。
【0088】
別の例として、所望であれば、ブーティ要素510の底面の少なくともいくらかの部分および/または履物物品500の中底の少なくともいくらかの部分(例えば、インソールまたはミッドソール構造)は、ブーティ要素510と履物物品の内側の中底の間での滑りを阻止するまたは滑らないようにする表面を含んでもよい。さらに別の代替として、所望であれば、履物構造500の内側に対し内側ブーティ要素510が移動しないように助ける締結具、滑り止め表面、および/または他の固定要素を、履物物品の内側空洞内に(例えば、中底、ソール構造、アッパー部材の一部としてなど)提供してもよい。
【0089】
本発明の実施例にしたがい、少なくともいくつかの履物構造において含まれてもよい別の快適性を向上される要素はタン要素600であり、その一例が図18に示されている。タン要素600は、履物物品のバンプまたはインステップ領域、ひも(または他の履物固定要素)と着用者の足との間のスロート領域に設けてもよい(図19〜20Bはタン要素600および全体の履物物品における可能性のある位置を示す)。タン要素600はひもまたは他の履物固定要素の使用者の感触を調節するのを助けてもよく、これにより、履物物品の全体の快適性が向上する。タン要素600は、従来のタン要素用に当技術分野において公知で使用されている材料、例えば、当技術分野で公知で使用されている従来の布および/またはフォーム材料(例えば、編織物、綿布、合成繊維、ポリウレタンフォーム、皮革など)を含む、任意の所望の材料または材料の組み合わせから形成してもよい。少なくともいくつかの実施例によれば、タン要素600は、1つまたは複数のバッティングまたは他の少なくとも幾分防水性の材料の外側層を備えた柔らかい可撓性織物またはフォーム材料の中間層を含む多層構造を有してもよい。少なくともいくつかの例では、タン要素600材料は通気性があり、水分、空気、および/または熱を着用者の足の上面から逃がし、遠ざけることができる。
【0090】
タン要素600は、当技術分野において従来公知であり、または使用されている方法、例えばスティッチングまたはソーイングにより;接着剤またはセメントにより;機械的コネクタまたは締結具、例えばスナップ、保持要素構造(例えば、相互作用溝、レッジ、開口部、保持部材など)、マジックテープ、磁気締結具などを含む任意の所望の様式で、履物構造の残りと係合されてもよい(永久的に取り付ける、または着脱可能に取り付ける)。所望であれば、バッティング材料(図7B〜7Dの材料28のように)はアッパー構造のインステップまたはバンプ領域に沿って適当な領域に提供されてもよく、例えば、タン要素600が取り付けられる可能性のある基部要素が提供される(例えばスティッチングまたはソーイングにより;接着剤またはセメントにより;機械的コネクタまたは締結具、例えばスナップ、保持要素構造(例えば、相互作用溝、レッジ、開口部、保持部材など)、マジックテープ、磁気締結具などにより)。1つのより具体的な例として、図18に示すように、タン要素600の上面602は、アッパー部材に備えられた(例えば、マトリクス層上に備えられるまたはマトリクス層と係合される、バッティング層の一部として備えられるなど)対応する雌スナップ要素と係合する1つまたは複数の雄スナップ要素604を含んでもよい。
【0091】
全体の履物構造に様々な要素を着脱可能に取り付けることにより、非常に用途の広い履物システムが提供される可能性がある。上記のように、本発明の少なくともいくつかの実施例により、履物構造は主にマトリクス層(例えば、層40、140、240など)から構成されるアッパー部材を含んでもよい。任意で、ヒールタン要素(例えば、要素502)、インステップタン要素(例えば、要素600)、および/またはブーティ要素(例えば、要素510)のうちの1つまたは複数が、履物構造の一部と着脱可能に係合され、その一部として提供されてもよい。これらの仕組みにより使用者は、任意の所望の用途のための特定の形態を決定するのに多くの柔軟性が得られる。例えば、ヒールタン要素502およびインステップタン要素600を使用することにより、様々な運動または他の歩行活動を実施する場合においても、所望であれば着用者が快適に裸足で着用することができる(すなわち、ソックスなし)非常に快適で、非常に軽量な履物製品が提供される。例えば、より寒い条件のため、美的外観を変えるためなどで、軽量ブーティ要素510を追加してもよいが、依然として、非常に軽量で、快適な全体の履物構造が提供される。また、これらの着脱可能な部品は他の同様の部品と交換可能であり、例えば、洗浄が可能となり、美的外観が変更され、摩耗部品が交換され、サポートまたは他の機能が変更されるなどである。さらに別の例として、所望であれば、これらの着脱可能な部品の全てを除去してもよく、履物構造は濡れた状態で、例えばシャワーシューズとして;ビーチシューズとして;ボーティング、カヌーイング、カヤッキング、またはローイングシューズなどとして(または、他の水上競技のために)使用するのに非常に適している場合がある
【0092】
上記の図1〜図17Aで示した具体例は、マトリクス層を、アッパー部材構造の全て、または実質的に全てを提供する(例えば、全体のアッパー部材構造の少なくとも80%または90%、示した実施例では、全体のアッパー部材構造の少なくとも95%または実に98%を形成する)単一の部品またはピースとして含んだ。これは、本発明による履物構造例全てにおいて必要条件ではない。例えば、図19で示すように、アッパー部材は、本発明から逸脱しなければ、複数のピースから製造されてもよい。この示した履物構造700では、アッパー部材は、履物の外側および内側の大部分(外側702a)、ならびにバンプまたはインステップ領域702bを被覆する第1のマトリクス層部分702を含む。別個の後方外側ヒールマトリクス材料704を履物構造700の1つの側に提供し、もう1つの別個の後方内側ヒールマトリクス材料706を履物構造の別の側に提供する。任意の所望の材料、例えば従来の履物アッパー部材材料、例えば皮革、ポリマー、織物、キャンバスなどで形成されていてもよい中間履物アッパー構造708および710に、様々なマトリクス材料702、704および706を接続させる。好都合なことに、少なくともいくつかの構造例では、中間履物アッパー部材構造708および/または710は、足首開口部領域の周囲に延在し、かつ足首開口部および着用者の足に直接接触する少なくともいくつかの領域の周囲で快適性を向上させる材料(例えば、織物、フォームなど)を提供してもよい。マトリクス材料702、704および706は、中間履物アッパー部材構造708および710に、任意の所望の様式で、例えばソーイングもしくはスティッチング;接着剤もしくはセメント;または機械的コネクタなどで接続させてもよい。
【0093】
当然、様々なマトリクス層および/または中間履物アッパー部材構造は、本発明から逸脱しなければ、全体の履物アッパー構造の任意の所望の関連部分を構成してもよい。また、マトリクス層および/または中間履物アッパー部材構造は、本発明から逸脱しなければ、全体のアッパー部材に沿った任意の所望の位置に配置させてもよい。また、任意の数の独立マトリクス層部分および/または中間履物アッパー部材構造を、本発明から逸脱しなければ、ある履物構造中に提供してもよい。より具体的な例として、所望であれば、図19で示した構造700において、中間履物アッパー部材構造708および710を結合して、単一の全体ピースを形成してもよく、例えば、それは足首開口部の周囲に完全に延在し、かつ/または任意で、履物構造のスロートもしくはインステップ領域の少なくとも一部まで小穴または他のひも係合要素(または他の履物固定構造)を提供する。別の例として、所望であれば、2つの後方ヒールマトリクス層704および706は、外側および内側の両方におよぶ1つの部分から形成されてもよい(かつ、任意で、ヒール領域内のサイズ調節機構714は省略してもよい)。さらに別の例として、所望であれば、大きな側面およびインステップマトリクス層702ならびに/またはヒールマトリクス層704および/または706を、複数の独立した部分から形成してもよい。さらに別の例として、所望であれば、中間履物アッパー部材材料を爪先キャップとして提供してもよい(または任意で、ソール領域712および他のソール材料が広がり、爪先の前方を被覆し、爪先キャップを提供してもよい)。本発明の例から逸脱しなければ、これらの特徴および/または他の構造選択肢の任意の所望の組み合わせを全体の履物構造に提供してもよい。
【0094】
図20Aおよび20Bは本発明によるさらに別の履物構造例800を示す。この構造例800は、全体の外観が図19で示した構造700に類似しているが、いずれの後方マトリクス層(または他の履物要素)も含まず、このため、外観および機能はむしろサンダルに近い。図示するように、マトリクス層802(1つのピースとして示されるが、任意で、複数のピースから構成してもよい)がアッパー部材構造の内側および外側に沿って、バンプまたはインステップ領域上に延在する。上記のように、この履物構造例の後方部分は開いており、着用者の足を上方/後方から挿入することができる(所望であれば、そのような構造では、ひも部分804を省略してもよいが、必要または所望であれば、本発明から逸脱しなければ、ひもまたは他のサイズ調節機構を提供してもよい)。
【0095】
この図示した構造例800では、履物物品800を着用者の足に固定するのを助けるためにストラップ部材806が提供される。この図示したストラップ部材806は、履物構造800の別の部分上(例えば、マトリクス層802上、中間履物アッパー部材構造812上、アッパー部材構造の別の部分上、ソール部材814上など)に提供された対応するおよび/または相補的な締結要素810と係合する締結要素808を含む。本発明から逸脱しなければ、任意の所望の締結システムおよび/または複数の締結具もしくはストラップを提供してもよく、例えば、スナップ締結具、マジックテープ、フック型締結具、ひも型締結具などが挙げられる。さらに別の例として、所望であれば、締結具808および810を排除してもよく、かつ例えばストラップ808、マトリクス層802、および/または中間履物アッパー部材構造812の少なくともある部分が少なくとも幾分弾性または伸縮性であり、例えば着用者の足を挿入および/または取り出すことができるならば、ストラップ806は永久に履物物品の後方部分の周囲に延在してもよい。当然、本発明から逸脱しなければ、固定機構、アッパー部材構造802、および/または全体の履物構造の他の部分のための他の構造配置が可能である。そのような構造はシャワーシューズとして、ビーチウエアとして、または水上競技のために、ボートシューズとして(または、カヌーイング、カヤッキング、またはローイング、および/または他の濡れた状態で使用するために)などで、特に有用であるかもしれない。
【0096】
本発明によるさらなる履物構造例900を図21に示す。この構造例900はポリマーマトリクスアッパー部材902およびソール構造904を含み、これは上記構造、バリエーション、および/または特徴のいずれかを有してもよい。また、内部ブーティ要素906(任意で取り外し可能)およびひも固定機構908を図21に示すが、本発明から逸脱しなければ、他の特徴、例えば、ヒールタン部材、インステップタン部材、インソールまたはソックライナー部材、これらの追加の要素なし、異なる固定システム構造などを提供してもよい。
【0097】
図21の構造900は図1〜20Aで示したものとは様々に異なる。例えば、図21の構造900では、後方ヒール部位910は永久的に単一構造として形成される(言い換えれば、後方ヒールで直接サイズ調節できない)。これは本発明から逸脱しなければ任意の所望の様式で達成することができる。例えば、所望であれば、アッパー部材902は、このようにヒール部位で直接的に形成(例えば、成形)することができる。別の例として、アッパー部材902は、平らなワンピース構造として(例えば、上記のように)形成してもよく、後方ヒール部位を形成するマトリクス構造の自由端(例えば、上記自由端44cおよび44d)をある様式で、例えば、重ね(例えばオーバーラッピング)継ぎ目(910a)で、固定して共に連結してもよい。本発明から逸脱しなければ、これらの端を共に固定する任意の所望の様式、例えば接着剤またはセメントボンディング(任意で、熱および/または圧力の適用を伴う)、レーザ溶接、溶融接着(熱および圧力の適用による)、他の融合技術などを使用してもよい。
【0098】
図21の構造例900で示した別の特徴は、ミッドフットおよび/またはフロントフット(frontfoot)部位におけるセグメント914と比較してより厚いセグメント912を有するヒール部位におけるマトリクス層902を示す。この特徴により、ヒールにおいて追加のサポートが、フォアフット部位において追加の可撓性を提供する補助となり得る。
【0099】
また、図21で示した構造例900では、マトリクス層アッパー部材902は(例えば、図1〜12において示されたループおよび/またはセグメント構造と比較して)その外縁に沿って拡大された部分を含む。より特定的には、図示するように、アッパー部材構造902の非中空部分が継ぎ目910aに沿って、足首開口部916に沿って、およびスロート開口部918の下方に提供される(および、この図示した例では、連続して延在する)(同様の構造が、この履物構造900の図示していない反対側に提供される)。これらの非中空部分は、様々な他の要素、例えば従来の履物小穴920または他の履物固定システム要素、例えば、バックル、ストラップ、ジッパー、他の締結具などを形成または取り付けるための基部を提供する。これらの非中空部分はまた、快適性を向上させる要素、例えば、ヒールタン、インステップタン、足首開口部周囲の柔らかな要素などを取り付けるための基部を提供してもよい。
【0100】
拡大されたアッパー部材縁部分(またはその別々の部分)は、本発明から逸脱しなければ、任意の所望の様式で、アッパー部材構造902内にまたはアッパー部材構造と共に、提供してもよい。例えば、一体のワンピース構造として、例えば、図7A〜7Dと併せて上記で記載した成形操作中に、全体のアッパー部材構造に成形してもよい。別の例として、拡大された部分(またはその少なくともいくつかの部分)は、アッパー部材902のマトリクス層が(スティッチング、接着剤などにより)取り付けられる1つまたは複数の別個の要素として提供されてもよい。本発明から逸脱しなければ、この拡大された部分を提供するための他の構造および配置が可能である。
【0101】
図21の構造900は、図1〜20Aと併せて上記で記載した様々な特徴の多くを含むための多目的な基礎を提供する。特に、図21で示した特定の構造例900は、例えば、内側ソール領域922で非常に立体的な外観、および輪郭のある(contoured)後方ヒール外観924を有する。この図示した例における参照数字926により指定された内側ヒール領域はまた、比較的高い頂部線を有する(別の図面において示した構造例のいくつかより高い)。
【0102】
当然、様々な特定の履物構造は、本発明から逸脱しなければ、図21の上記様々な特徴の1つまたは複数を利用してもよい。
【0103】
III.結論
本発明については、上記および添付の図面で様々な態様を参照して開示している。しかしながら、本開示が果たす目的は、本発明の局面に関連する様々な特徴および概念の例を提供するものであり、本発明の局面の範囲を制限するものではない。関連分野における当業者であれば、添付の特許請求の範囲により規定される本発明の範囲から逸脱しなければ、上記態様に対して多くの変更および改変が可能であることを認識するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アッパーが、
履物の少なくともヒール部位を通って延在し、ヒール部位における第1の縁と第1の縁に沿って延在する複数の第1の孔部とを規定する、外側要素と、
履物の少なくともヒール部位を通って延在し、ヒール部位における第2の縁と第2の縁に沿って延在する複数の第2の孔部とを規定する、内側要素と、
第1の孔部および第2の孔部を通って延在するコードと、
コードの一部を受け入れる締結具と
を含む、アッパーとアッパーに固定されたソール構造とを有する履物物品。
【請求項2】
コードが第1の孔部の1つと第2の孔部の1つを通過することを繰り返す、請求項1記載の履物物品。
【請求項3】
締結具がヒール部位のアッパー領域に隣接して配置される、請求項1記載の履物物品。
【請求項4】
ヒール部位に設けられかつ第1の縁、第2の縁、およびコードに隣接するヒール要素をさらに含む、請求項1記載の履物物品。
【請求項5】
外側要素および内側要素の少なくとも一方が、互いに交差して複数の交差点および開口部を規定する複数のセグメントから形成されたマトリクス構造を含み、交差点の少なくとも一部がそれぞれ第1の角および第2の角を規定し、第1の角が実質的に垂直方向に配向された鋭角であり、かつ第2の角が実質的に水平方向に配向された鈍角である、請求項1記載の履物物品。
【請求項6】
マトリクス構造が単一ポリマー要素から形成される、請求項5記載の履物物品。
【請求項7】
履物の少なくともヒール部位を通って延在する外側要素と、履物の少なくともヒール部位を通って延在する内側要素とを含むアッパーであって、アッパーが履物物品用の足を受け入れるための空洞を少なくとも部分的に規定し、外側要素の少なくとも一部がポリマーマトリクスを含み、かつ内側要素の少なくとも一部がポリマーマトリクスを含む、アッパーと、
ヒール部位に配置されたサイズ調節機構と、
サイズ調節機構と足を受け入れるための空洞とに隣接して配置されたヒールタン要素と、
アッパーと係合されるソール構造と
を含む、履物物品。
【請求項8】
サイズ調節機構が外側要素の自由端および内側要素の自由端と係合する、請求項7記載の履物物品。
【請求項9】
サイズ調節機構が外側要素および内側要素の自由端の間に延在するコードを含む、請求項8記載の履物物品。
【請求項10】
サイズ調節機構が、外側要素の自由端に提供された第1の係合要素および内側要素の自由端に提供された第2の係合要素を含む、請求項7記載の履物物品。
【請求項11】
サイズ調節機構が、第1の係合要素および第2の係合要素と係合する中間部材を含む、請求項10記載の履物物品。
【請求項12】
第1の係合要素が第2の係合要素に係合する、請求項10記載の履物物品。
【請求項13】
ヒールタン要素がアッパーまたはソール構造の少なくとも一方と着脱可能に係合される、請求項7記載の履物物品。
【請求項14】
少なくとも部分的にサイズ調節機構の使用者の感触を調節するように、ヒールタン要素が構成されかつ配置される、請求項7記載の履物物品。
【請求項15】
アッパーがスロート(throat)領域を規定し、履物物品が、スロート領域でアッパーと係合される靴固定機構をさらに含む、請求項7記載の履物物品。
【請求項16】
アッパーと係合しかつ足を受け入れるための空洞に隣接するタン部材をさらに含む、請求項15記載の履物物品。
【請求項17】
少なくとも部分的に靴固定機構の使用者の感触を調節するように、タン部材が構成されかつ配置される、請求項16記載の履物物品。
【請求項18】
タン部材がアッパーと着脱可能に係合される、請求項16記載の履物物品。
【請求項19】
足を受け入れるための空洞内に少なくとも部分的に提供されるブーティ部材をさらに含む、請求項7記載の履物物品。
【請求項20】
ブーティ部材がヒールタン要素と係合される、請求項19記載の履物物品。
【請求項21】
ブーティ部材がヒールタン要素と着脱可能に係合される、請求項19記載の履物物品。
【請求項22】
ブーティ部材が足を受け入れるための空洞内に着脱可能に取り付けられる、請求項19記載の履物物品。
【請求項23】
外側要素のポリマーマトリクスおよび内側要素のポリマーマトリクスが単一のワンピース構造として形成される、請求項7記載の履物物品。
【請求項24】
外側要素のポリマーマトリクスが内側要素のポリマーマトリクスと別個の独立したピースである、請求項7記載の履物物品。
【請求項25】
少なくとも部分的に、履物物品用の足を受け入れるための空洞を規定するアッパーであって、アッパーの少なくとも一部がポリマーマトリクスを含み、アッパーがスロート領域を規定する、アッパーと、
スロート領域でアッパーと係合される靴固定機構と、
アッパーと係合されかつ少なくともスロート領域では足を受け入れるための空洞に隣接する、タン部材と、
アッパーのヒール部分に隣接して配置されるヒールタン要素と、
アッパーと係合されるソール構造と
を含む、履物物品。
【請求項26】
ヒールタン要素がアッパーまたはソール構造の少なくとも一方と着脱可能に係合される、請求項25記載の履物物品。
【請求項27】
ヒール部分に提供されたサイズ調節機構をさらに含む、請求項25記載の履物物品。
【請求項28】
少なくとも部分的にサイズ調節機構の使用者の感触を調節するように、ヒールタン要素が構成されかつ配置される、請求項27記載の履物物品。
【請求項29】
少なくとも部分的に靴固定機構の使用者の感触を調節するように、タン部材が構成されかつ配置される、請求項25記載の履物物品。
【請求項30】
タン部材がアッパーと着脱可能に係合される、請求項25記載の履物物品。
【請求項31】
ヒールタン要素がアッパーまたはソール構造の少なくとも一方と着脱可能に係合される、請求項30記載の履物物品。
【請求項32】
足を受け入れるための空洞内に少なくとも部分的に提供されるブーティ部材をさらに含む、請求項25記載の履物物品。
【請求項33】
ポリマーマトリクスが少なくともアッパーの大部分にわたって延在する、請求項25記載の履物物品。
【請求項34】
ポリマーマトリクスにより規定される孔部がスロート領域からアッパーの爪先領域に向かって放射状に延在する、請求項25記載の履物物品。
【請求項35】
スロート領域前方のポリマーマトリクスにより規定される孔部の少なくともいくつかが細長く、靴を横切る横方向で、アッパーの外側からアッパーの内側に向かう方向に延在する、請求項25記載の履物物品。
【請求項36】
ポリマーマトリクスが少なくともアッパーのフォアフット(forefoot)部分上に延在する、請求項25記載の履物物品。
【請求項37】
ポリマーマトリクスが少なくともアッパーのヒール部分上に延在する、請求項25記載の履物物品。
【請求項38】
ポリマーマトリクスが少なくともアッパーの大部分にわたって延在する単一構造を含む、請求項25記載の履物物品。
【請求項39】
少なくとも部分的に、履物物品用の足を受け入れるための空洞を規定するアッパーであって、アッパーの第1の要素の大部分がポリマーマトリクスを含み、第1の要素が少なくともアッパーのフォアフット部分およびミッドフット(midfoot)部分上に延在する、アッパーと、
アッパーと係合される靴固定機構であって、アッパーの第1の側からアッパーの第2の側まで延在する着用者の踵または足首と係合するための少なくとも1つのストラップを含む、靴固定機構と、
アッパーと係合されるソール構造と
を含む、履物物品。
【請求項40】
ストラップが第1の締結構成部品を含み、アッパーまたはソール構造の少なくとも一方が第1の締結構成部品に係合する第2の締結構成部品を含む、請求項39記載の履物物品。
【請求項41】
履物の少なくともヒール部位を通って延在する外側要素と、履物の少なくともヒール部位を通って延在する内側要素とを含むアッパーであって、アッパーが少なくとも部分的に履物物品用の足を受け入れるための空洞を規定し、外側要素の少なくとも一部がポリマーマトリクスを含み、かつ内側要素の少なくとも一部がポリマーマトリクスを含む、アッパーと、
外側要素および内側要素を一緒にヒール部位で連結させる継ぎ目と、
アッパーと係合されるソール構造と
を含む、履物物品。
【請求項42】
足を受け入れるための空洞内に少なくとも部分的に提供されるブーティ部材をさらに含む、請求項41記載の履物物品。
【請求項43】
ブーティ部材が足を受け入れるための空洞内に着脱可能に取り付けられる、請求項42記載の履物物品。
【請求項44】
外側要素のポリマーマトリクスおよび内側要素のポリマーマトリクスが単一のワンピース構造として形成される、請求項41記載の履物物品。
【請求項45】
複数の孔部を規定するポリマーマトリクス構造を形成する工程であって、ポリマーマトリクス構造が第1の自由端および第2の自由端を含む、工程と、
第1の自由端がアッパーのヒール部位に沿って延在し、かつ第2の自由端がアッパーのヒール部位に沿って延在するように、ポリマーマトリクス構造をアッパーに組み入れる工程と、
第1の自由端および第2の自由端を係合させる工程と、
ソール部材をアッパーに固定する工程と
を含む、履物物品の製造方法。
【請求項46】
第1の自由端が複数の開口部を含み、第2の自由端が複数の開口部を含み、係合させる工程が第1および第2の自由端の開口部間にコードを通すことを含む、請求項45記載の方法。
【請求項47】
第1の自由端が第1の係合構造を含み、第2の自由端が第2の係合構造を含み、係合させる工程が第1の係合構造と第2の係合構造との間に中間部材を接続することを含む、請求項45記載の方法。
【請求項48】
第1の自由端が第1の係合構造を含み、第2の自由端が第2の係合構造を含み、係合させる工程が第1の係合構造を第2の係合構造に係合させることを含む、請求項45記載の方法。
【請求項49】
ポリマーマトリクス構造が単一構造として延在し、履物物品のフォアフット部分、ミッドフット部分、およびヒール部位の少なくとも大部分を形成する、請求項45記載の方法。
【請求項50】
ヒールタン要素をアッパーまたはソール構造の少なくとも一方と係合させる工程であって、ヒールタン要素が第1の自由端および第2の自由端に隣接するヒール部位で係合される、工程
をさらに含む、請求項45記載の方法。
【請求項51】
ブーティ部材をヒールタン要素と着脱可能に係合させる工程をさらに含む、請求項50記載の方法。
【請求項52】
アッパーにより少なくとも部分的に規定される足を受け入れるための空洞にブーティ部材を挿入する工程をさらに含む、請求項45記載の方法。
【請求項53】
第1の自由端および第2の自由端を、重ね継ぎ目で一緒に固定する、請求項45記載の方法。
【請求項54】
複数の孔部を規定する第1のポリマーマトリクス構造を形成する工程であって、第1のポリマーマトリクス構造が第1の自由端を含む、工程と、
複数の孔部を規定する第2のポリマーマトリクス構造を形成する工程であって、第2のポリマーマトリクス構造が第2の自由端を含む、工程と、
第1の自由端がアッパーのヒール部位に沿って延在し、かつ第2の自由端がアッパーのヒール部位に沿って延在するように、第1および第2のポリマーマトリクス構造をアッパーに組み入れる工程と、
第1の自由端および第2の自由端を係合させる工程と、
ソール部材をアッパーに固定する工程と
を含む、履物物品の製造方法。
【請求項55】
第1の自由端が複数の開口部を含み、第2の自由端が複数の開口部を含み、係合させる工程が第1および第2の自由端の開口部間にコードを通すことを含む、請求項54記載の方法。
【請求項56】
第1の自由端が第1の係合構造を含み、第2の自由端が第2の係合構造を含み、係合させる工程が第1の係合構造と第2の係合構造との間に中間部材を接続することを含む、請求項54記載の方法。
【請求項57】
第1の自由端が第1の係合構造を含み、第2の自由端が第2の係合構造を含み、係合させる工程が第1の係合構造を第2の係合構造に係合させることを含む、請求項54記載の方法。
【請求項58】
ヒールタン要素をアッパーまたはソール構造の少なくとも一方と係合させる工程であって、ヒールタン要素が第1の自由端および第2の自由端に隣接するヒール部位で係合される、工程
をさらに含む、請求項54記載の方法。
【請求項59】
ブーティ部材をヒールタン要素と着脱可能に係合させる工程をさらに含む、請求項58記載の方法。
【請求項60】
アッパーにより少なくとも部分的に規定される足を受け入れるための空洞にブーティ部材を挿入する工程をさらに含む、請求項54記載の方法。
【請求項61】
第1の自由端および第2の自由端を、重ね継ぎ目で一緒に固定する、請求項54記載の方法。
【請求項62】
複数の孔部を規定するポリマーマトリクス構造を形成する工程であって、ポリマーマトリクス構造が、単一構造として延在し、履物物品の少なくともフォアフット部分、ミッドフット部分、およびヒール部分の大部分を形成する、工程と、
ポリマーマトリクス構造をアッパーに組み入れる工程と、
ソール部材をアッパーに固定する工程と、
ヒールタン要素をアッパーまたはソール部材の少なくとも一方と係合させる工程と
を含む、履物物品の製造方法。
【請求項63】
ブーティ部材をヒールタン要素と着脱可能に係合させる工程をさらに含む、請求項62記載の方法。
【請求項64】
アッパーにより少なくとも部分的に規定される足を受け入れるための空洞内にブーティ部材を着脱可能に係合させる工程をさらに含む、請求項62記載の方法。
【請求項65】
アッパー部材内に規定されるスロート領域上に履物固定機構を提供する工程をさらに含む、請求項62記載の方法。
【請求項66】
履物固定機構に隣接し、かつアッパーにより少なくとも部分的に規定される足を受け入れるための空洞に隣接して、タン部材を係合させる工程をさらに含む、請求項65記載の方法。
【請求項67】
タン部材がアッパーと着脱可能に係合される、請求項66記載の方法。
【請求項68】
ヒールタン要素がアッパーまたはソール部材の少なくとも一方と着脱可能に係合される、請求項62記載の方法。
【請求項69】
ヒールタン要素がアッパーまたはソール部材の少なくとも一方と着脱可能に係合され、前記方法がブーティ部材をヒールタン要素と着脱可能に係合させる工程をさらに含む、請求項68記載の方法。
【請求項70】
アッパー部材内に規定されるスロート領域上に履物固定機構を提供する工程と、
履物固定機構に隣接し、かつアッパーにより少なくとも部分的に規定される足を受け入れるための空洞に隣接して、タン部材を係合させる工程と
をさらに含む、請求項69記載の方法。
【請求項71】
タン部材がアッパーと着脱可能に係合される、請求項70記載の方法。
【請求項72】
ヒールタン要素に隣接したヒール部分内でアッパーにサイズ調節機構を提供する工程をさらに含む、請求項62記載の方法。
【請求項73】
複数の孔部を規定するポリマーマトリクス構造を形成する工程であって、ポリマーマトリクス構造が、単一構造として延在し、履物物品の少なくともフォアフット部分およびミッドフット部分の大部分を形成する、工程と、
ポリマーマトリクス構造をアッパーに組み入れる工程と、
アッパーの第1の側からアッパーの第2の側まで延在して踵または足首係合システムを提供するストラップを提供する工程と、
ソール部材をアッパーに固定する工程と
を含む、履物物品の製造方法。
【請求項74】
ストラップが第1の締結要素を含み、アッパーまたはソール部材の少なくとも一方が、第1の締結要素と係合する第2の締結要素を含み、これによりストラップが着脱可能に係合される、請求項73記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図6F】
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【図6G】
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【図6H】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図9F】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図14D】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図17C】
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【図18】
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【図19】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−42270(P2010−42270A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229159(P2009−229159)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【分割の表示】特願2009−543182(P2009−543182)の分割
【原出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.マジックテープ
【出願人】(505087849)ナイキ インコーポレーティッド (123)
【Fターム(参考)】