説明

マトリックス型配線基板およびそれを用いた液晶表示装置

【目的】 絶縁基板上に互いに絶縁膜を介して交差する2組の信号ラインを有するマトリックス型配線基板の同一の信号ライン上に複数のショート箇所が生じたばあいでも交差部のショート箇所を修復でき、さらにリペア用配線のひき回しが短くてすむマトリックス型配線基板およびそれを用いた液晶表示装置を提供する。
【構成】 ガラス基板1上に互いに交差する2組でそれぞれ複数の信号ライン2a、2bが形成され、信号ライン2aの上層に、信号ライン2aと2bとの交差部16を迂回するリペア用配線15が両端を交差部16近傍の信号ライン2aと重なるように絶縁膜を介して設けられている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、マトリックス型表示装置やCCD装置などに用いられるマトリックス型配線基板およびそれを用いた液晶表示装置に関する。さらに詳しくは、マトリックス状に配線された信号ラインの交差部で生じる短絡(ショート)を修復するためのリペア用配線が設けられたマトリックス型配線基板およびそれを用いた液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】図4は従来のリペア用配線を有するマトリックス型配線基板の説明図である。図4において、1は表面にTFTなどの液晶駆動素子などが形成されたガラス基板、2a、2bはそれぞれガラス基板1上にそれぞれ複数本形成された信号ライン、3は信号ライン2aまたは2bに各種信号を加えるための信号入力端子、4は従来のリペア用配線であり、信号ライン2a、2bとはシリコンチッ化(SiN)膜などからなる絶縁膜(図示せず)を介して形成されているため、通常は信号ラインと導通していない。24は液晶表示装置の表示領域であり、これは表示画素によって構成されているため、表示画素領域とも呼ばれる。
【0003】前記リペア用配線4は、信号ライン2a、2bの上層で、かつ、表示画素領域24の外側にループ状に1本または複数本設けられている。
【0004】前記液晶表示装置においては、通常、信号ライン2aと信号ライン2bはこれらのあいだに絶縁膜を介して形成されているため、これらに加えられた入力信号は互いに混信することはない。しかし、図4の交差部5の絶縁膜の異常により信号ライン2aと信号ライン2bとが電気的にショートすると両者の信号が混信するため、この交差部5に対応する画素および信号ライン2a、2b上の画素には表示欠陥が生じ、表示領域24には縦横に線状の表示不良が現われる。
【0005】この電気的ショートを取り除くために、従来では以下のような方法が採られている。すなわち、まず図4の波線6a、6bにレーザ光を照射し信号ライン2aを交差部5から電気的にカットする。これで信号ライン2aと信号ライン2bとの電気的ショートは取り除かれるが、このままでは信号ライン2aの波線6bよりも先の部分には信号入力端子3から入力された信号が届かないため液晶表示装置に欠陥が残ってしまう。この問題を解決するために、図4の信号ライン2aとリペア用配線4との交差部7a、7bにさらにレーザ光が照射される。レーザ光により、リペア用配線4と信号ライン2aとのあいだの絶縁膜は破壊され、リペア用配線4と信号ライン2aは電気的にショートする。これにより信号入力端子3から加えられた入力信号はリペア用配線4を回り込んで信号ライン2aの波線6bよりも先の部分に到達するため、通常の表示動作を行うことができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、たとえば図4の交差部8aと交差部8bのように同一の信号ライン上に複数のショート箇所があったばあい、ショートを取り除くために信号ラインをレーザカットしてしまうと、リペア用配線4を用いても交差部8aと交差部8bとのあいだの信号ラインには入力信号を届かせることができない。さらに、リペア用配線4は表示画素領域24を取り囲むように形成されているので、使用時には長く信号をひき回すことになりインピーダンスの面で電気的に不利であるという問題がある。
【0007】本発明はかかる問題を解消するためになされたもので、同一の信号ライン上に複数のショート箇所があるばあいでも交差部の表示欠陥を修復することができ、かつリペア用配線のひき回しが短くてすむマトリックス型配線基板およびそれを用いた液晶表示装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明のマトリックス型配線基板は、絶縁基板上に互いに交差する2組の信号ラインを有し、少なくとも一方の組の信号ラインの前記交差する部分にそれぞれ該信号ラインを迂回するリペア用配線が設けられ、該リペア用配線の両端部は絶縁膜を介して前記信号ラインと重なるように形成されていることを特徴とする。
【0009】また、本発明の液晶表示装置は、電極膜が形成された2枚の透明基板に液晶材料が挟持されてなる液晶表示装置であって、該2枚の透明基板の少なくとも一方に前記マトリックス型配線基板が用いられているものである。
【0010】
【作用】本発明のマトリックス型配線基板によれば、リペア用配線が表示画素領域の交差部において交差部ごとに形成されているため、信号ライン間のショート箇所が同一の信号ライン上にあっても各ショート箇所近傍の信号ラインをレーザなどでカットし、かつ、レーザなどでリペア用配線との交差部の絶縁膜を破壊し、リペア用配線と信号ラインを溶接することにより、ショート箇所を個別に修復できる。さらに、本発明のリペア用配線は信号ラインの極微小な交差部のみを迂回しているため、入力信号の不必要な電気的ひき回しがほとんどなく、インピーダンスは増えない。したがって本発明のマトリックス型配線基板を一方の基板に用いて液晶表示装置を構成したばあい、インピーダンスの増加に起因する表示ムラが生じない。
【0011】
【実施例】つぎに、本発明のマトリックス型配線基板を図面を参照しながら説明する。図1は本発明のマトリックス型配線基板の一実施例の表示画素の1つを示した要部拡大平面図、図2はレーザ照射による図1のマトリックス型配線基板のリペア用配線と信号ラインとの接続の原理を示した断面説明図、図3は同一の信号ラインに複数のショート箇所があったばあいの図1のマトリックス型配線基板のリペア用配線の使用法を示した説明図である。図1には、マトリックス型配線基板の構成の一例として、たとえばガラス基板1の表面に形成されたマトリックス配線および画素が示されている。2a、2bは図4に示したものと同一の信号ライン、9は信号ライン2aと一体形成されたゲート電極、10は信号ライン2bと一体形成されたソース電極、11はドレイン電極でありゲート電極9、ソース電極10とともに各画素のスイッチング素子であるTFT12を構成している。13はたとえば液晶材料などの表示材料に電圧を印加するためのITOなどからなる画素電極、14は表示性能を向上するために画素電極13と信号ライン2aとのあいだに付加された付加容量用の電極(以下、Cs電極という)であり、TFT12、画素電極13とともに一つの表示画素を構成する。15はリペア用配線であり、信号ライン2a、2bとは絶縁膜(図示せず)によって電気的に絶縁されている。
【0012】リペア用配線15は、信号ライン2aおよび2bと同じようにアルミニウムなどからなる薄膜などによって形成され、両端が絶縁膜を介して信号ライン2aと一部重なるように(図1のC参照)信号ライン2aの上層に形成されている。リペア用配線15は交差部16を迂回するもので、通常は長くても100μm程度である。具体的には、たとえば、幅が信号ライン2aおよび2bと同程度の10〜20μm程度で、両腕の長さAがそれぞれ20〜30μm程度、胴部の長さBが30〜40μm程度のコ字状に形成されているが、形状や大きさはとくに限定されない。
【0013】また、前記リペア用配線15は、クロムなどの金属薄膜またはITOによって形成してもよい。
【0014】また、リペア用配線15と信号ライン2aとのあいだに形成される絶縁膜として、シリコンチッ化膜またはシリコン酸化膜などが採用され、プラズマCVD法などにより0.2〜0.4μm程度の厚さで形成される。
【0015】本発明のマトリックス型配線基板は、少なくとも一方の信号ラインに交差部を迂回するリペア用配線15が絶縁膜を介して交差部16ごとに設けられていることに特徴がある。
【0016】すなわち、信号ライン2aと2bの交差部16において、信号ライン2a、2bがショートしていなければ図1の配線構造の状態で通常の表示動作を行い、交差部16で、信号ライン2a、2bがショートしているばあいには、ショート部分の両側で信号ライン2aを切断し、リペア用配線15と信号ライン2aとの重なり部分の絶縁膜を破壊し、リペア用配線15を介して信号ライン2aを連結する。その結果、ショートした交差部16に対応するTFT12、さらに信号ライン2a、2b上の各TFTに対して通常通りに信号ライン2a、2bから入力信号が与えられ、TFTのスイッチング作用により表示欠陥を解消するようにしたものである。
【0017】なお、本実施例ではリペア用配線15が信号ライン2aの上層に形成された例を示したが、下層に形成されても同様の効果がえられる。
【0018】つぎに信号ライン2a、2bの交差部16の絶縁膜に異常が生じ、信号ライン2aと2bが電気的にショートしたばあいのショート箇所を修復する方法について、図1〜3を参照しながら具体的に説明する。
【0019】まず、信号ライン2aのショートした交差部16の近傍、たとえば波線部17a、17bをレーザ光の照射によりカットし、信号ライン間のショート箇所を分離する。つぎに信号ライン2aの断線を修復するために、信号ライン2aとリペア用配線15の重なり部分18a、18bにレーザ光を照射し、信号ライン2aとリペア用配線15を電気的に接続する。たとえば、図2に示されるように、信号ライン2aとリペア用配線15とのあいだに存在する絶縁膜25をレーザ光26の照射で破壊することにより電気的接続がえられる。
【0020】リペア用配線15の長さは長くても100μm程度であるため、入力信号の不必要なひき回しはほとんどない。さらに、図3の交差部19a、19bのように同一の信号ライン2a上に複数のショートが起きたばあいでも、信号ライン2aの波線20a、20bと波線21a、21bをレーザカットすると共に、リペア用配線15との重なり部分22a、22bと23a、23bをレーザ光の照射により接続することにより個別に表示欠陥を修復できる。
【0021】またリペア用配線15をCs電極14の形成と同じ工程で成膜すれば製造コストの面でもほとんど上昇しない。
【0022】前述のごとく構成されたマトリックス型配線基板の表面にチッ化シリコンなどの保護膜およびポリイミドなどの配向膜を形成したのち、電極膜および配向膜などが設けられた他方の絶縁基板と対向させ、2枚の基板の間隙に液晶材料を充填することにより、アクティブマトリックス型の液晶表示装置がえられる。この液晶表示装置は、修復された信号ライン上の画素であっても他の画素と同程度の駆動電圧がえられるため、表示性能を向上させることができる。
【0023】
【発明の効果】本発明によれば、同一の信号ラインに複数のショート箇所が発生したばあいでもマトリックス型配線基板の修復が可能であるため、従来のリペア用配線を用いたばあいに比べてさらなる歩留りの向上を達成することができる。また、配線の不必要な引回しがないため、他の信号ラインとインピーダンスの差がほとんどない。したがって前記マトリックス型配線基板を用いて液晶表示装置を構成すれば、表示性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のマトリックス型配線基板の一実施例の表示画素の一つを示した要部拡大平面図である。
【図2】レーザ照射による図1のマトリックス型配線基板のリペア用配線と信号ラインとの接続の原理を示した断面説明図である。
【図3】同一の信号ラインに複数のショート箇所があったばあいの図1のマトリックス型配線基板のリペア用配線の使用法を示した説明図である。
【図4】従来の液晶表示装置のリペア用配線の使用法を示した説明図である。
【符号の説明】
1 ガラス基板
2a 信号ライン
2b 信号ライン
15 リペア用配線
16 交差部
25 絶縁膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】 絶縁基板上に互いに交差する2組の信号ラインを有するマトリックス型配線基板であって、少なくとも一方の組の信号ラインの前記交差する部分にそれぞれ該信号ラインを迂回するリペア用配線が設けられ、該リペア用配線の両端部は絶縁膜を介して前記信号ラインと重なるように形成されてなるマトリックス型配線基板。
【請求項2】 電極膜が形成された2枚の透明基板に液晶材料が挟持されてなる液晶表示装置であって、該2枚の透明基板の少なくとも一方に請求項1記載のマトリックス型配線基板が用いられてなる液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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