説明

マトリックス法に従って動作する内蔵エネルギー貯蔵機構を有する吸収機

ハイブリッド物質2及び揮発性液体を使用するケミカルヒートポンプにおいて、物質及び/又は凝縮された揮発性液体に結合するため、又はそれらを含むためのマトリックス材料の層3が提供される。これらのマトリックス層は、少なくともマトリックス層の自由表面のところで外部媒体への、又は外部媒体からの熱の輸送が達成されるように、また好ましくはそれらの反対側の表面のところでも熱の輸送が達成されるように配置される。そのために、内部を外部媒体が流れるパイプ管路9が提供され、このパイプ管路9は、マトリックス層の表面、例えば支持プレート4の下及びマトリックス層のすぐ上に配置される。マトリックス層の自由表面、すなわち支持プレートの位置していない表面でパイプ管路を使用することによってもなお、マトリックス層の自由表面が蒸発段階と凝縮段階の両方で揮発性液体の蒸気を透過させることが実現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年2月12日出願のスウェーデン特許出願第0800314−7号に対する優先権を主張し、その出願の利益を受けるものであり、その出願の教示全体を参照として本明細書に組み込む。
【0002】
本発明は、マトリックス法に従って動作する内蔵エネルギー貯蔵機構を有する吸収機(absorption machine)に関する。
【背景技術】
【0003】
国際公開第2007/139476号に記載されている「マトリックス法」に従って動作する吸収機では、活性物質(反応物質)のためにキャリアすなわち「マトリックス」が使用され、これは、固体状態から、放熱段階において揮発性液体の蒸気を吸収して液体状態になり、その後、入熱段階において蒸気を解放する。マトリックスは、多かれ少なかれ熱伝導性の良い材料、例えば金属又はガラスの実質的に平坦な壁と密着して配置され、その壁を通して活性物質との熱交換が行われる。
【0004】
ここで、熱交換プロセス、すなわち、活性物質と前記壁の反対側に位置する外部媒体との間の熱交換に関する問題がある。マトリックス材料は、それ自体は熱絶縁材料であり、熱交換壁及びマトリックス材料を介する所望の熱交換を妨げることがあると考えられる。さらに、マトリックス法に従って動作する吸収機が良好なパワー及び効率、並びに所望の出力エネルギーを提供することができるようにするために、活性物質が配置されるマトリックスの活性表面が、壁の他方の面での媒体の温度とできるだけ同じ温度、又は少なくとも壁自体の温度とできるだけ同じ温度を有するべきである。差が大きすぎる場合、吸収機は、その加熱状態でもその冷却状態でも、それぞれ所望の高い温度又は所望の低い温度を提供することができなくなることが起こり得る。
【0005】
さらに、それぞれその加熱状態及びその冷却状態で吸収機から出力されるパワーに関して、単位時間当たりのエネルギーの量、すなわち熱交換壁の表面からマトリックスの活性表面に渡ることができるパワーが重要である。上述したように、これはマトリックス材料の熱伝導性に依存する。マトリックス材料は有孔性であり、且つ低い熱伝導性を有するセラミックを含むことが多いので、特にマトリックス材料に液体が完全に浸漬していないときには、それ自体が低い熱伝導性を有し、その熱伝導性質に関して通常の熱絶縁材料に類似する。
【0006】
前述したように、活性マトリックス表面が熱交換壁の温度と同じ温度を有することを実現することが望ましく、そして、熱交換表面を活性マトリックスの表面と直接接触させて配置することによって直接の加熱が行われるようにすることが適していることが容易に分かる。しかし、これは不可能である。なぜならその場合、熱交換表面が遮蔽しており、マトリックスの活性表面から水が蒸発して水蒸気になること、及びマトリックスの表面で蒸気が凝縮して水になることを妨げるからである。これら2つのプロセスは吸収機の機能の根底を成すものであり、2つの動作段階、すなわち入熱段階と放熱段階に対応するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】スウェーデン特許出願第0800314−7号
【特許文献2】国際公開第2007/139476号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、活性物質及び/又は凝縮液を含む/結合するためのマトリックス層を使用し、そのような層への、及びそのような層からの効率的な熱の輸送を提供する、ハイブリッド物質を有するケミカルヒートポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、例えば活性物質を含むマトリックス層を、少なくとも活性物質の自由表面において外部媒体への及び外部媒体からの熱の輸送が得られるように配置することができる。また熱交換は、自由表面と反対側の層の表面で行うこともできる。外部媒体が流れているパイプ管路が、層の表面、例えば支持プレートの下及び層のすぐ上に配置されていることによって、これを達成することができる。特に、層の自由表面、すなわち支持プレートの位置していない表面でパイプ管路を使用することによって、層の自由表面が蒸発段階と凝縮段階の両方で蒸気を透過させることが達成される。
【0010】
それによって、ケミカルヒートポンプにおける効率的な熱の輸送及び効率的な容器の構造を実現することができる。
【0011】
本発明の追加の目的及び利点は、以下の説明に記載し、一部はその説明から明らかであり、或いは本発明の実践から知ることができる。本発明の目的及び利点は、添付の特許請求の範囲に特に指摘した方法、プロセス、手段、及び組合せによって実現して得ることができる。
【0012】
本発明の新規の特徴は添付の特許請求の範囲に詳細に記載されているが、添付図面を参照して本明細書で以下に提示する非限定的な実施例の以下の詳細な説明を考察すれば、編成と内容の両方に関して、本発明、並びに本発明の上述及び他の特徴を完全に理解することができ、本発明がより良く把握されよう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1a】支持プレートに配置されたマトリックス層の一区域の側部から見た概略図である。
【図1b】支持プレートに配置されたマトリックス層の一区域の上部から見た概略図である。
【図2a】図1aと同様であるが、適用されたネット構造を含むマトリックス層を有する図である。
【図2b】図1bと同様であるが、適用されたネット構造を含むマトリックス層を有する図である。
【図3】ハイブリッド原理に従って動作し、キャリア内に吸引された活性物質を含むケミカルヒートポンプの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図3に概略的に示されるケミカルヒートポンプでは、活性物質2(本明細書では単に「物質」とも呼ぶ)を含む第1の容器1(蓄熱器又は反応器とも呼ぶ)が提供される。物質は、収着質(sorbate)を発熱的に吸収し、吸熱的に脱着することができ、収着質は、一般に揮発性液体であり、通常は水である。ここでは、物質2は、マトリックス又はキャリア3によって保持又は担持されている、或いはマトリックス又はキャリア3内に吸引されているものとして図示されており、マトリックス又はキャリア3は、一般に、開孔を有する少なくとも1つの有孔体を成し、又はそのような有孔体としての形状を有し、適切な不活性物質から形成される(上で引用した国際特許出願を参照のこと)。図示されるように、マトリックスは、複数のプレート4上にある均一又は実質的に一定の厚さを有する水平層として配置することができ、これらのプレート4は、互いに上下に位置され、反応器容器1の内壁からこの容器の内部に向かって延びている。プレートは、例えば、容器の2つの向かい合う平行な内面から突出することができる。第1の容器1は、2つの容器1、5に接続されたパイプの形状を有する固定ガス管路6を介して第2の容器5(凝縮器/蒸発器とも呼ぶ)に接続される。第2の容器は、第1の容器1内の物質2からの吸熱脱着中に気体収着質7を液体収着質8に凝縮するための凝縮器として作用し、且つ第1の容器内の物質中への収着質の発熱吸収中に液体収着質8を気体収着質7に蒸発させるための蒸発器として作用する。
【0015】
ハイブリッド原理に従って動作するヒートポンプでは、活性物質及び揮発性液体は、第1の温度で活性物質が揮発性液体を吸収することができるように、且つより高い第2の温度で活性物質が揮発性液体を脱着することができるように選択される。活性物質は、第1の温度で固体状態を有さなければならず、そこから、揮発性液体及びその蒸気相を吸収するときに、即時に部分的に液体状態又は溶液相になり、第2の温度では、活性物質は液体状態を有さなければならず、又は溶液相で存在しなければならず、そこから、揮発性液体、特にその蒸気相を解放するときに、即時に部分的に固体状態になる。
【0016】
蓄熱器1内のマトリックスの層3内にある活性物質2は、ヒートポンプの機能のために、外部媒体と熱交換接触しなければならない。この媒体は、蓄熱器の内部に延びる分岐路9を有する外部パイプ管路8を通して提供することができる。分岐管路は、一部はプレート4の下に、一部はマトリックス層3の上側又は上面に配置することができる。図示されるように、特にマトリックス層3の自由表面に配置された分岐管路9は、多かれ少なかれ密集させずに配置することができ、前記自由表面の遮蔽されていない領域を管路間に残し、そこでは蒸気の輸送が管路によって妨げられないようになっている。したがって、自由表面に位置されたパイプ部分は、例えば、自由表面のうちの小部分のみ、例えば自由表面の面積の50%未満のみを覆うことができる。マトリックス層内の活性物質への、及びその活性物質からの蒸気の輸送が妨げなく生じ得ることが保証される。効率的な熱交換を提供するそのような設計により、引用した国際特許出願に記載される5〜10mmの厚さと比較して、より大きな厚さを有する、例えば20〜30mmの厚さを有するマトリックス層3の使用を可能にすることができる。
【0017】
分岐管路9の構成は、図1a及び図1bにも示される。マトリックス層の片面に位置されたパイプ管路9の部分が、互いに平行であり、互いに均一な距離で規則的に配置されたパイプ・セグメントを有することができることが見て取れる。図示されるように、均一な距離は、セグメントでのパイプの直径よりもかなり大きくすることができ、例えば、前記直径の2倍よりも大きく、又はさらには前記直径の3倍よりも大きくすることができる。さらに、図1aには、パイプ管路9をどのようにマトリックス層3の下及び上に配置することができるかが示され、それによってパイプ管路の第1のループが、各マトリックス層の自由表面を通り、パイプ管路の第2のループが、当該マトリックス層を載せたプレートの下を通る。ループ内のパイプ管路は、互いに平行に延びることができ、例えばジグザグ経路の形状を有しているが、この事例は図示されていない。
【0018】
また、層3がネット11など開口を有する構造で覆われていることにより、層3の上側での熱交換をさらに高めることができることが図2a及び図2bから分かる。一般に、開口の総面積は、マトリックス層の自由表面の総面積に対して十分な占有率、例えば50%超に対応すべきである。カバー構造は、良好な熱伝導性を有する何らかの材料、例えば銅などの金属から形成することができる。
【0019】
さらに図3から、コンパクトな設計が分かる。熱交換媒体は、パイプ管路8に入り、分岐管路9内に進む。分岐管路のジグザグ配置が、各マトリックス層3とその上に配置されたプレート4との間の空間内に提供され、パイプ管路層の厚さがこの間隙を実質的に埋めるようになっており、すなわち、使用されるパイプの直径を中間空間の厚さに実質的に対応させることができる。したがってこの場合、当該マトリックス層3のためのパイプ管路9の上述した第1のループは、同時に、当該マトリックス層のすぐ上に位置する次のマトリックス層のためのパイプ管路の第2のループである。さらにこの場合、容器1の中央で、媒体を逆方向に流すように分岐管路が湾曲されて戻される特別な構成を取ることが必要とされることもあり、このとき分岐管路9の湾曲部分は、中間空間内への、及び中間空間からの蒸気の流れを妨げない。例えば符号13で示されるように、マトリックス層の縁部領域を、マトリックス層3の上部内縁で取り除くことができる。このときマトリックス層は上部内縁で面取りされていると言うことができる。取り除かれた縁部領域は、図示されるようにほぼ三角形の断面を有することができる。媒体は、点線9’で示される分岐管路部分を通して、供給管路8の帰流部分8’に戻される。
【0020】
図3に示されるように、一組の平行なプレート4、マトリックス層3、及びマトリックス層に配置された分岐管路9を、反応器1の2つの向かい合う壁で領域Iの内部に提供することができる。同じ構造を凝縮器/蒸発器5で使用することができ、その場合、マトリックス層3は、活性物質を含まず、且つ活性物質に結合せず、その代わりに、凝縮された収着質を含み、且つ/又は収着質に結合する。そのとき、プレート4及び層3は、領域II内に配置される。ここでは分岐管路は別の熱交換媒体のためのパイプ(図示せず)に接続される。別法として、何らかの理由から他方の容器を別の様式で構成しなければならない場合には、この構造を容器1、5の一方のみで使用することができる。
【0021】
本発明の特定の実施例を本明細書で例示して説明してきたが、多くの他の実施例を想定することができ、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく当業者には多くの追加の利点、修正、及び変更が容易に想定されることが理解されよう。したがって、本発明は、そのより広い態様では、本明細書で図示して説明した特定の詳細、代表的なデバイス、及び例示した実例に限定されない。したがって、添付の特許請求の範囲及びその均等物によって定義される一般的な本発明の概念の精神又は範囲から逸脱することなく、様々な修正を行うことができる。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の精神及び範囲に入るすべてのそのような修正及び変更を網羅するものと意図されることを理解されたい。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく多くの他の実施例を想定することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性物質と、揮発性液体とを有するケミカルヒートポンプであって、前記揮発性液体は第1の温度で前記活性物質により吸収されることができ、且つより高い第2の温度で前記活性物質により脱着されることができ、前記活性物質は第1の温度で固体状態を有し、そこから前記活性物質は、前記揮発性液体及びその蒸気相を吸収するときに即時に部分的に液体状態又は溶液相になり、また前記活性物質は第2の温度では液体状態を有し、或いは溶液相で存在し、そこから前記活性物質は、前記揮発性液体、特にその蒸気相を解放するときに即時に部分的に固体状態になり、また
前記活性物質を含む第1の容器と、
凝縮形態で存在する前記揮発性液体の部分を含む第2の容器と、
前記第1の容器と前記第2の容器を相互接続する、前記揮発性液体の蒸気相のためのチャネルと
を有しているケミカルヒートポンプにおいて、
前記第1及び第2の容器の少なくとも一方が、前記活性物質、又は凝縮形態で存在する前記揮発性液体の前記部分を受け取るためにマトリックス材料の層をそれぞれ有し、前記マトリックス層は、それぞれの容器の固定表面と直接接触して配置され、また外部媒体との熱交換のために、外部媒体用の第1のパイプ管路が、前記マトリックス層の自由表面であって、前記マトリックス層が前記容器の前記固定表面と接触する該層の表面とは反対側の自由表面のところを直接通っていることを特徴とするケミカルヒートポンプ。
【請求項2】
支持プレートが、前記第1及び第2の容器の前記少なくとも一方に配置されており、該支持プレートは、前記容器の外壁から前記容器の内部に向かって延びていることを特徴とする請求項1に記載のケミカルヒートポンプ。
【請求項3】
実質的に水平に延びる支持プレートが、前記第1及び第2の容器の前記少なくとも一方に配置されており、前記マトリックス層は、該支持プレートの上に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のケミカルヒートポンプ。
【請求項4】
前記外部媒体との熱交換のために、外部媒体用の第2のパイプ管路もまた設けられており、該第2のパイプ管路は、前記支持プレートの表面のところを直接通っており、且つマトリックス層とは接触していないことを特徴とする請求項2又は3に記載のケミカルヒートポンプ。
【請求項5】
1つのマトリックス層のための前記第1のパイプ管路が、同時に、当該マトリックス層の自由表面のところに配置された次のマトリックス層のための前記第2のパイプ管路であることを特徴とする請求項1から4までのいずれか一項に記載のケミカルヒートポンプ。
【請求項6】
開口を有する熱分配カバー構造、特にネットが、前記マトリックス層の自由表面と前記第1のパイプ管路との間に配置されることを特徴とする請求項1に記載のケミカルヒートポンプ。


【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−511924(P2011−511924A)
【公表日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−546726(P2010−546726)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【国際出願番号】PCT/SE2009/050136
【国際公開番号】WO2009/102271
【国際公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(508353400)クライメイトウエル エービー(パブル) (5)
【Fターム(参考)】