説明

マニホールドを備えた細胞培養システム

細胞培養装置は、各々少なくとも1つのマニホールドを備えた細胞培養室を有する細胞培養ユニットを含む。マニホールドは、細胞培養ユニットを流体流チャンネルに接続する。マニホールドは、液体がマニホールド内に溜まることができ、マニホールド内で空気空間を形成できるダムを有し、これにより、装置内の静水圧が減少し、多数の細胞培養ユニットの積層が可能になる。実施の形態としては、滝状マニホールド、貯留部を有するマニホールド、および弁を有するマニホールドが挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【優先権の主張】
【0001】
本出願は、2009年2月25日に出願された米国仮特許出願第61/155230号の恩恵を主張するものである。この文献およびその中に述べられた出版物、特許、および特許文献の全開示をここに引用する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、細胞を培養するための物品に関する。
【背景技術】
【0003】
細胞を培養するための積層ユニットまたは積層可能なユニットを提供するために、多くのタイプの細胞培養物品が構成されている。例えば、T−フラスコは、一般に、T−フラスコが積み重ねられ、空間を節約できる平らな上面と下面を有するように製造される。ある改良型T−フラスコは、充填と空にすることに関連する時間と労力を低減させるために、フラスコ内に多数の平行な培養表面を有する。他の培養装置は、複数の平行なまたは積層培養表面を有する複合アセンブリである。そのような積層培養アセンブリのほとんどについて、各培養層は、下側の培養層への静水圧を減少させるために隔離されている。積層された層の数が増加するにつれて、静水圧の潜在的な影響も増加する。
【0004】
ある細胞培養物品は、ヘッドスペースが最小であるかまたはない状態で動作するように設計されている。例えば、コーニング社のHYPER Flask(商標)は、しばしば、適切な培養条件のためにほぼ完全に充填される。この「HYPER Flask」は、従来の175cm2のフラスコの空間と一般形状に1720cm2の培養表面を有する、10段の細胞培養室を含む。そのようなシステムにおいて、下段の室は、上段の室に対して増加した静水圧に曝される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ヘッドスペースが制限されたまたはない、そのようなシステムにおいて細胞培養室の数を増加させると、下側の細胞培養室内の静水圧がさらに増加し、このことは望ましくない。しかしながら、時間と空間の効率の観点から、そのようなシステムにおいて細胞培養層の数を増加させることは望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、中でも、実施の形態において、細胞培養室の層を充填できるマニホールドにより、直列でまたは並列で接続された細胞培養室の層を有する多層細胞培養装置を記載する。このマニホールドにより、充填している細胞培養室から置き換えられた空気が細胞培養装置から排出可能になる。その上、本発明の実施の形態にしたがって構成されたマニホールドにより、細胞培養室の層間、または細胞培養室の層のグループ(細胞培養ユニット)間で、空隙を形成することができる。この空隙により、液体が充填された細胞培養室の多層への静水圧が減少する。
【0007】
様々な実施の形態において、本開示は、各々が上面を有し、少なくとも2つの細胞培養室を収容する、少なくとも2つの細胞培養ユニットを有する細胞培養装置であって、マニホールドが、有する少なくとも2つの培養ユニットの各々を流体流チャンネルと接続して、流体流チャンネルと培養室との間の流体接続を可能にし、細胞培養ユニットが細胞培養のために配置されたときに、細胞培養ユニットに接続された少なくとも1つのマニホールドが、接続された細胞培養ユニットの上面の上に延在するダムを有するものである細胞培養装置を記載する。実施の形態において、細胞培養装置は、細胞培養ユニット中に液体を流動させるための液体流体流チャンネルを有する。実施の形態において、細胞培養装置は、置き換えられた空気が装置を出ることができる排出流体流チャンネルを有する。実施の形態において、細胞培養装置は、液体流体流チャンネルおよび排出流体流チャンネルの両方を有する。実施の形態において、液体流体流チャンネルに接続された1つのマニホールドはダムを有していない。実施の形態において、液体流体流チャンネルは弁を有する。実施の形態において、マニホールドは、細胞培養装置が細胞培養のために配置されたときに、細胞培養ユニットと流体流チャンネルとの間に空気空間を提供するように構成された配置された貯留部を有する。実施の形態において、少なくとも2つの細胞培養ユニットが、流体流チャンネルを通じて並列に互いに接続されている。追加の実施の形態において、少なくとも2つの細胞培養ユニットが、流体流チャンネルを通じて直列に互いに接続されている。
【0008】
追加の実施の形態において、本開示は、細胞培養装置において、各々、少なくとも2つの培養室と、入口を通じて導入された流体が、細胞培養出口を通じて培養室に入れるように少なくとも2つの培養室に流体連通した入口、オーバーフロー出口および細胞培養出口を有する充填ポートとを有する少なくとも2つの細胞培養ユニットを有し、充填ポートは、培養室に流体が充填されたときに、入口に導入された流体が、オーバーフロー出口から流出するように構成されている細胞培養装置を記載する。
【0009】
実施の形態において、少なくとも2つの細胞培養ユニットは、第2の充填ポートの入口を通じて導入された流体が、第2の充填ポートの細胞培養出口を通じて細胞培養ユニットの細胞培養室に入ることができるように、少なくとも2つの培養室と流体連通した入口、オーバーフロー出口および細胞培養出口を有する第2の充填ポートも有する。実施の形態において、第1の細胞培養ユニットのオーバーフロー出口は、第2の細胞培養ユニットの入口に流体連結されている。実施の形態において、第1の細胞培養ユニットの第1と第2の充填ポートのオーバーフロー出口は、第2の細胞培養ユニットの第1と第2のオーバーフロー出口に流体連結されている。実施の形態において、1つの細胞培養ユニットが、第2細胞培養ユニットの上に積み重ねられ、流体連結されている。実施の形態において、多数の細胞培養ユニットが、上下に積み重ねられ、各隣接する細胞培養ユニットと流体連結されている。
【0010】
実施の形態において、細胞培養装置は、充填ポート、および少なくとも2つの細胞培養室を有する少なくとも2つの細胞培養ユニットを含む。実施の形態において、充填ポートは、入口、オーバーフロー出口、および細胞培養出口を有する。細胞培養出口は、入口を通じて導入された流体が、細胞培養出口を通じて培養室に入れるように、培養室に流体連通している。充填ポートは、培養室に流体が充填されたときに、入口に導入された流体が、オーバーフロー出口をから流出するように構成されている。充填ポートは、マニホールド内で他のポートに連結されていてもよく、よって、流体がオーバーフロー出口から流出するときに、下のポートの入口に流入でき、これは、次いで、下側のポートと連通する別の細胞培養室を充填するように働く。
【0011】
実施の形態において、マニホールドは、少なくとも1つの細胞培養室と流体連通した入口を有する充填ポートを有する。実施の形態において、充填ポートは、細胞培養装置が細胞培養位置にあるときに、そのポートに空気空間を提供するように構成され配置された貯留部を有する。実施の形態において、少なくとも1つの細胞培養室は、流体流チャンネルを通じて別の細胞培養室に接続されている。実施の形態において、細胞培養装置は、置き換えられた空気が培養室を去るように培養室に流体連通した空気出口を有する。実施の形態において、少なくとも2つの培養室が、空気出口を通じて並列に互いに接続されている。実施の形態において、少なくとも2つの培養室が、流体流チャンネルを通じて並列に互いに接続されている。追加の実施の形態において、少なくとも2つの細胞培養室が、流体流チャンネルを通じて、また空気出口を通じて、並列に互いに接続されている。追加の実施の形態において、少なくとも2つの細胞培養ユニットが、流体流チャンネルを通じて直列に互いに接続されている。
【0012】
実施の形態において、本開示は、培養室の多層積層体を形成するように互いに集成された細胞培養物品を提供する。実施の形態において、個々の培養室または培養室のグループは、1つ以上のマニホールドを通じて互いに接続されている。マニホールドにより、個々の培養室または培養室のグループを、滝効果により、最も上の位置から順次に最も下の位置まで充填することができる。実施の形態において、マニホールドは、下側の培養室または培養室のグループへの過剰な静水圧を避けるように、個々の培養室または培養室のグループを隔離できるように構成されている。
【0013】
様々な実施の形態において、本開示は、細胞培養ユニットおよび充填ポートを備えた細胞培養装置を記載する。細胞培養ユニットは、上面および下面を有する培養室を有する。充填ポートは、入口、培養出口、オーバーフロー出口、第1の通路、および第2の通路を有する。入口、第1の培養出口、およびオーバーフロー出口は、流体連通している。第1の培養出口は、培養ユニットの培養室と流体連通している。第1の通路は、入口と第1出口との間の流体連通を提供する。第2の通路は、入口とオーバーフロー出口との間にあり、第1の通路と流体連通している。第2の通路の少なくとも一部分は、細胞培養室の下面が培養室の上面より下にあるときに、全断面が細胞培養室の上面より上にある断面を有する。
【0014】
様々な実施の形態において、細胞培養物品を製造する方法が記載されている。この方法は、(i)第1の細胞培養室および開口を有する第1の細胞培養ユニットを提供する工程、(ii)入口、細胞培養出口、およびオーバーフロー出口を有する第1の充填ポートを提供する工程であって、入口、細胞培養出口およびオーバーフロー出口が流体連通しているものである工程、(iii)細胞培養室および開口を有する第2の細胞培養ユニットを提供する工程、および(iv)入口、細胞培養出口、およびオーバーフロー出口を有する第2の充填ポートを提供する工程であって、入口、細胞培養出口およびオーバーフロー出口が流体連通しているものである工程を有してなる。この方法はさらに、(i)第1の充填ポートの細胞培養出口が、第1の細胞培養ユニットの開口に流体連結されて、第1のポートの入口に導入された流体が、第1の培養ユニットの培養室に入ることができ、(ii)第1の充填ポートが、培養室に流体が充填されたときに、第1のポートの入口に注がれた流体が第1のポートのオーバーフロー出口から流出するように向けられるように第1のポートを第1の培養ユニットに連結する工程を含む。この方法はさらに、(i)第2の充填ポートの細胞培養出口が、第2の細胞培養ユニットの開口に流体連結されて、第2のポートの入口に導入された流体が、第2の培養ユニットの培養室に入ることができ、(ii)第2の充填ポートが、第2の培養ユニットの培養室に流体が充填されたときに、第2のポートの入口に注がれた流体が第2のポートのオーバーフロー出口から流出するように向けられるように第2のポートを第2の培養ユニットに連結する工程を含む。この方法は、第1の細胞培養ユニットを第2の細胞培養ユニットの上に積み重ね、第2の充填ポートの入口を第1のポートのオーバーフロー出口に流体連結する各工程も含む。
【0015】
ここに記載された培養装置は、多層培養室アセンブリに積み重ねられてもよく、ここで、個々の培養室または培養室のグループは、1つ以上のマニホールドを通じて互いに接続されており、各培養室または培養室のグループは、下側の培養室または培養室のグループへの過剰な静水圧を避けるために、ヘッドスペースに関して隔離されている。これと他の利点は、添付の図面と共に読んだときに、以下の詳細な説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】複数の細胞培養ユニットに連結されたマニホールドを含む細胞培養装置の側面図
【図2】細胞培養ユニットおよび関連する充填ポートの実施の形態の斜視図
【図3】細胞培養ユニットおよび関連する充填ポートの実施の形態の斜視図
【図4A】図2に示された細胞培養ユニットの実施の形態の断面図
【図4B】図2に示された細胞培養ユニットの実施の形態の断面図
【図5】細胞培養ユニットおよび充填ポートを示す分解側面図
【図6A】図5の線6に沿って見た充填ポートの代わりの実施の形態の正面図
【図6B】図5の線6に沿って見た充填ポートの代わりの実施の形態の正面図
【図7A】図5の線7に沿って見た細胞培養ユニットの代わりの実施の形態の正面図
【図7B】図5の線7に沿って見た細胞培養ユニットの代わりの実施の形態の正面図
【図8】充填ポートおよび関連する細胞培養ユニットの断面図
【図9A】2つの細胞培養ユニットおよび2つの充填ポート構成部材を含むマニホールドを含む装置の断面図
【図9B】2つの細胞培養ユニットおよび2つの充填ポート構成部材を含むマニホールドを含む装置の断面図
【図9C】2つの細胞培養ユニットおよび2つの充填ポート構成部材を含むマニホールドを含む装置の断面図
【図10A】充填ポートに動作可能に連結された複数の細胞培養ユニットを含む細胞培養物品の側面図
【図10B】図10Aに示された細胞培養ユニットの実施の形態の正面図
【図10C】図10Aに示された充填ポートの一部分の実施の形態の正面図
【図11−1】積層培養モジュールを含む細胞培養物品の側面図
【図11−2】積層培養モジュールを含む細胞培養物品の側面図
【図12A】多部品ポートの部品の斜視図
【図12B】図12Aに示された多部品ポートの実施の形態の断面図
【図13】配管により接続された2つのポートの側面図
【図14】細胞培養装置の実施の形態の斜視図
【図15】図16に示される断面を説明する、図14に示された実施の形態の斜視図
【図16】16A、BおよびCは、それぞれ、図15に示されたようなスライスA、BおよびBでとられた断面図
【図17】ポートの詳細を示す、図16の点線17により示された領域の拡大図
【図18】装置の実施の形態の充填を示す説明図
【図19】19A、BおよびCは、弁を有する装置の実施の形態の説明図
【図20】本発明の実施の形態の斜視図 図面は必ずしも一定の縮尺ではない。図に使用した同様の数は、同様の構成部材、工程などを称する。しかしながら、所定の図面においてある構成部材を称するための数の仕様は、同じ数が付けられた別の図面における構成部材を制限することは意図されていないことが理解されよう。その上、構成部材を称するための異なる数の仕様は、異なる数の構成部材は同じまたは同様ではあり得ないことを示すことは意図されていない。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の詳細な説明において、その一部を形成し、装置、システムおよび方法のいくつかの特定の実施の形態が例として示されている、添付の図面を参照する。他の実施の形態が考えられ、本開示の範囲または精神から逸脱せずに、その他の実施の形態を行ってもよいことが理解されよう。したがって、以下の詳細な説明は、制限の意味で解釈すべきではない。
【0018】
ここに使用した全ての科学的および技術的用語は、別記しない限り、当該技術分野において一般に使用される意味を有する。ここに与えられる定義は、ここに頻繁に使用される特定の用語の理解を促進することであり、本開示の範囲を制限することを意味するものではない。
【0019】
本明細書および添付の特許請求の範囲に使用されるように、単数形は、明らかにそうではないと文脈が示していない限り、複数の参照を有する実施の形態も包含する。本明細書および添付の特許請求の範囲に使用されるように、「または」という用語は、明らかにそうではないと文脈が示していない限り、「および/または」を含む意味で一般に用いられる。
【0020】
ここに用いたように、「有する」、「持つ」、「含む」、「構成する」、「含んでいる」などは、制限のない意味で使用されており、一般に、「含むがそれに限られない」ことを意味する。
【0021】
本開示は、特に、細胞培養ユニットを形成するためにマニホールドを通じて互いに連結された細胞培養室において複数の増殖または培養表面を有する細胞培養物品を記載する。細胞培養ユニットは、さらに、積層細胞培養物品を形成するためにマニホールドを通じて追加の細胞培養ユニットに連結されても差し支えない。複数の培養表面は、多層構造で積層されてもよい。マニホールドは、流体流を個々の細胞培養室または培養室のグループに提供するように働く複数の流体連結されたポートを含む。実施の形態において、マニホールドは、個々の細胞培養室または培養室のグループを最も上の培養室または培養室のグループから、直列に、滝効果により最も下の培養室または培養室のグループまで充填できるように構成されている。追加の実施の形態において、マニホールドは、個々のまたはグループの細胞培養ユニットまたは細胞培養室を連続して、または並列に充填できるように構成されている。マニホールドのポートは、個々の培養室または培養室のグループを充填するためのポートの間のマニホールド内の流体柱の形成を防ぐように構成されており、これにより、最も下の培養室における過剰な静水圧が減少するかなくなる。
【0022】
複数の積層された層を有するまたは層を形成するように積層できるほぼ任意の細胞培養物品を、ここに記載したようなマニホールドを含むように適合できる。そのような細胞培養物品の例としては、T−フラスコ、TRIPLE−FLASK細胞培養容器(Nunc., Intl.)、「HYPER Flask」細胞培養容器(コーニング社)、CellSTACK(商標)培養室(コーニング社)、CellCube(登録商標)モジュール(コーニング社)、CELL FACTORY培養装置(Nunc., Intl.)、およびここに提示された開示に抵触しない程度まで全て引用する、2007年2月8日に発行された「MULTILAYERED CELL CULTURE APPARATUS」と題する国際公開第2007/015770号パンフレットに記載されたような細胞培養物品が挙げられる。
【0023】
図1を参照すると、複数の細胞培養ユニット500A,500B,500Cに連結されたマニホールド200を含む細胞培養装置1000の側面図が示されている。図示されたマニホールド200は、複数のポート100A,100B,100Cを備えている。マニホールド200の各ポート100A,100B,100Cは、細胞培養ユニット500A,500B,500Cに流体連結されている。各細胞培養ユニット500A,500B,500Cは、個別に、1つ以上の細胞培養室を収容してもよい。図1に示されたポート100A,100B,100Cは、流体連結150A,150Bされている。これらのポートは、配管により、または任意の他の管継手により流体連結されていてもよい。
【0024】
ここで、図2〜3を参照すると、細胞培養ユニット500および関連する充填ポート100(A,B)の斜視図が示されている。図示したように、1つのポート(図2)または複数のポート100A,100B(図3)が細胞培養ユニット500に連結されていてもよい。充填ポート100は、入口110およびオーバーフロー出口120をふくみ、これは、以下により詳しく議論する。
【0025】
図4A〜Bは、図2に示された細胞培養ユニット500の実施の形態の断面図である。図4A〜Bに示された断面は、図2の線4−4を通ってとられている。図4Aにおいて、図示された細胞培養ユニット500は、上面520および下面530を有する1つの細胞培養室を有する。細胞を培養する目的で、図示された細胞培養ユニット500は、典型的に、培養室510の上面520が下面530の上にあり、よって細胞が下面530上で培養されるように向けられている。図4Bに示された実施の形態において、細胞培養ユニット500は、その中で細胞が培養される複数の培養室510A,510B,510Cを収容している。各培養室は下面530および上面520を有する。
【0026】
ここで、図5〜7を参照すると、細胞培養ユニット500および関連する充填ポート100の様々な実施の形態が示されている。図5は、細胞培養ユニット500および充填ポート100を示す分解側面図である。様々な実施の形態において、細胞培養ユニット500および充填ポート100は、細胞培養装置の製造または集成中に、別々に形成され、接合される。図6A〜Bは、図5における線6に沿って見た充填ポート100の代わりの実施の形態の正面図である。図6Aにおいて、充填ポートは1つの培養出口130を有し、図6Bにおいて、充填ポート100は、複数の培養出口130A,130B,130Cを有する。
【0027】
図7A〜Bは、図5における線7に沿って見た細胞培養ユニット500の代わりの実施の形態の正面図である。図7Aにおいて、細胞培養ユニット500は、ユニット(例えば、図4Aの断面に示されたような細胞培養ユニット500)により画成された細胞培養室と流体連通した1つの開口540を有する。図7Bにおいて、細胞培養ユニット500は、複数の開口540A,540B,540Cを有する。各開口540A,540B,540Cは、ユニット500の個々の細胞培養室(例えば、図4Bの断面に示されたような細胞培養室510A,510B,510C)と流体連通していてもよい。
【0028】
様々な実施の形態において、充填ポート100の細胞培養出口130は、細胞培養ユニット500の開口540と実質的に同じ形状とサイズであるような形状とサイズである。一例として、1つの培養出口130を有する、図6Aに示されるような充填ポート100は、1つの開口540を有する、図7Aに示されるような培養ユニット500と連結してもよい。同様に、3つの培養出口130A,130B,130Cを有する、図6Bに示されるような充填ポート100は、3つの開口540A,540B,540Cを有する、図7Bに示されるような培養ユニット500と連結してもよい。あるいは、図6Aに示されるような充填ポート100は、連結されたときに、3つの細胞培養出口が効果的に形成されるように、図7Bに示されるような培養ユニット500と連結してもよい。例えば、図6Aに示されるようなポート100が、開口540A,540B,540Cの周りの区域(点線の矩形のボックスにより示されるような)で図7Bに示されるような細胞培養ユニット500に流体封止される場合、3つの培養出口が効果的に形成され、開口540A,540B,540Cがユニットの個々の培養室と連通している場合(例えば、ユニット500が、例えば、図4Bに示されるような断面形状を有する場合)、各々が個々の培養室と連通している。
【0029】
ここで図8を参照すると、充填ポートおよび関連する細胞培養ユニットの断面が示されている。充填ポートと細胞培養ユニットとの間の想像線を表示するために、点線が示されている。充填ポートは、入口110、オーバーフロー出口120、および細胞培養出口130を有する。入口110、オーバーフロー出口120、および細胞培養出口130は、流体連通している。上述したように、ポートは複数の細胞培養出口を含んでもよく、その細胞培養出口は、ポートが細胞培養ユニットに連結されたときに、細胞培養室と流体連通している。このポート100は、入口110に導入された流体を培養出口130を通じて細胞培養室に流入させるように構成されており、培養室が流体で充填されたときに、入口110に導入された流体はオーバーフロー出口120から流出する。
【0030】
図8に示された充填ポートは、入口110と培養出口130との間の流体連通を与える第1の通路140を有する。このポートは、入口110とオーバーフロー出口120との間に第2の通路150も備えている。第2の通路150は第1の通路140と流体連通している。第2の通路150の全断面の少なくとも一部分(上側の点線により示される)は、細胞培養室510の上面520の上にある(上面520が下面530の上にあるとき;例えば、上面520が上になるように向けられ、下面530が下になるように向けられているとき)。図示した実施の形態において、細胞培養出口130の最も上の部分135は、第2の通路150の部分のレベル(上側の点線により示される)の下にある。第2の通路150の少なくとも一部分を培養室510の上面より上にすることによって、培養室510は、入口110を通じて導入された追加の流体がオーバーフロー出口120を通って流動する前に、流体が満たされるであろう。実施の形態において、オーバーフロー出口120は、ダム160により第1の通路から隔てられている。実施の形態において、ダム160は、培養室の上面520の上に延在して、液体が培養室を満たし、第1の通路を部分的に充填することが可能になるが、装置が細胞培養に使用されているときに、第2の通路150内に空気ポケットが存在することができる。
【0031】
ここで、図9A〜Cを参照すると、2つの細胞培養ユニット500A,500Bおよび2つの充填ポート構成部材を有するマニホールドを備えた装置の断面図が示されている。図9Aにおける上側の細胞培養ユニット500Aの培養室510Aは、細胞培養培地により部分的に充填されている(斜線区域により示される)のが示されている。培地をより多く加えると、上側の培養室510およびポート100Aの第1の通路の一部分が充填される(図9B参照)。図9Bに示されるように、上側の培養室は培地が充填され、第1の通路は、入口100Aへの追加の細胞培養培地を導入すると、培地が第1のポート領域100Aのダム160Aを超えて、第1のポート領域100Aの下に位置する第2のポート領域100Bの入口110B中へとオーバーフロー出口120Aから流出するレベルまで充填される。図9に示される実施の形態において、マニホールドの上側の充填ポート100Aのオーバーフロー出口120Aは、下側の充填ポート100Bの入口110Bと連続している。ある実施の形態において、上側のポートのオーバーフロー出口は、配管を通じて(例えば、図1参照)または他の様式で、下側のポートの入口に連結されている。
【0032】
図9Bに示されたマニホールドの入口110Aに追加の培地を加えると、培地がダム160Aを越えて下側のポートの入口110B中へと出口120Aから流出して、下側の培養室510Bを充填し始める。一旦、下側の培養室510Bが満たされ(図9C参照)、培地の追加が停止されると、ダム160Aのために、上側と下側の培養室の間のマニホールド中に空隙が存在し、培養室を隔離し、下側の培養室において静水圧が増加するのが防がれる。追加の培地が入口110Aに加えられると、培地は、マニホールドの下側部分110Bのダム160Bを越えてオーバーフロー出口120Bを出て、空隙を維持する。マニホールドの追加の細胞培養ユニットおよび関連するポートが下側ユニット500Bの下に配置され、より多くの培地が加えられれば、追加のユニットの培養室は、続いて、最も上のものから最も下のものまで充填することができる。
【0033】
ここに記載されたような細胞培養ユニット、またはその部分は、任意の適切な材料から形成してもよい。細胞または培地と接触することが意図されている材料が、細胞と培地に適合していることが好ましい。典型的に、細胞培養ユニットは高分子材料から形成される。適切な高分子材料の例としては、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリスチレンコポリマー、フルオロポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレンブタジエンコポリマー、完全に水素化されたスチレン系ポリマー、ポリカーボネートPDMSコポリマー、並びにポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリプロピレンコポリマーおよび環状オレフィンコポリマーなどのポリオレフィンが挙げられる。
【0034】
ある実施の形態において、培養ユニットは、細胞培養室と細胞培養アセンブリの外部との間のガスの移動を可能にする、ガス透過性、液体不浸透性膜を含有する。そのような培養ユニットは、積み重ねられたユニットの間で空気の流動を可能にするように、培養室の外部で膜に隣接して配置されたスペーサまたはスペーサ層を含んでも差し支えない。そのような積み重ねられたガス透過性培養ユニットを収容する細胞培養装置の市販の一例が、コーニング社の「HYPER Flask」細胞培養装置である。そのような細胞培養ユニットは、例えば、ここに提示された開示に抵触しない程度まで全て引用する、2008年5月30日に出願された「Assembly of Cell Culture Vessels」と題する米国仮特許第61/130421号明細書などの任意の適切な様式で製造してもよい。膜を形成するのに有用な適切なガス透過性高分子材料の例としては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリオレフィン、エチレン酢酸ビニル、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、または適合性フルオロポリマー、シリコーンゴムまたはコポリマー、ポリ(スチレン−ブタジエン−スチレン)またはこれらの材料の組合せが挙げられる。細胞の増殖のために適合性および製造が許す限り、様々な高分子材料を使用してよい。膜が、膜を横切る気体の効率的な移動を可能にする厚さのものであることが好ましい。例えば、ポリスチレン膜は、約0.003インチ(約75マイクロメートル)の厚さであってよいが、様々な厚さも細胞の増殖に可能である。それゆえ、膜は任意の厚さであってよいが、約25および250マイクロメートルの間、または約25および125マイクロメートルの間が好ましい。膜により、アセンブリの培養室と外部の環境との間の自由なガス交換が可能であり、どのようなサイズまたは形状をとってもよい。膜が、装置の製造、取扱い、および操作について耐久性であることが好ましい。
【0035】
図10A〜Cを参照すると、細胞培養物品5000またはその部分の実施の形態の様々な説明図が示されている。図10Aに示された側面図において、物品5000は、充填ポート100に動作可能に連結された複数の細胞培養ユニット500A,500B,500C,500Dを備えている。図示された細胞培養ユニット500A,500B,500C,500Dの各々は、細胞培養室の少なくとも一部分を形成し、ガスを培養室と装置の外部との間で移動させるガス透過性膜300を備えている。スペーサ400が培養室の外部でガス透過性膜300に隣接して配置されて、気流のための通路を提供している。
【0036】
図10Bは、図10Aに示された細胞培養ユニット500A,500B,500C,500Dの実施の形態の正面図である。細胞培養ユニット500A,500B,500C,500Dの各々は、細胞培養室と流体連通した開口540A,540B,540C,540Dを有する。
【0037】
図10Cは、図10Aに示された充填ポート100の一部の実施の形態の正面図である。図10Cに示されたポート100の一部は、図10Aに示された細胞培養ユニット500A,500B,500C,500Dと接触するポート100の一部である。図10Cに示された実施の形態に示されるように、ポート100は、4つの培養出口130A,130B,130C,130Dを備えている。充填ポート100が培養ユニット500A,500B,500C,500Dと連結されたときに、培養出口130A,130B,130D,130Dは、開口540A,540B,540C,540Dと流体連結されており(図10B参照)、それゆえ、細胞培養室と流体連通している。
【0038】
ここで、図11−1を参照すると、積み重ねられた培養モジュール5000A,5000B,5000Cを備えた細胞培養物品の側面図が示されている。モジュール5000A,5000B,5000Cは、図10A〜Cに関して上述したような細胞培養物品5000であってよい。モジュール5000A,5000B,5000Cは、複数の細胞培養ユニット500A,500B,500C,500Dおよび関連する充填ポート100A,100B,100Cを備えている。モジュール5000A,5000B,5000Cは積み重ねられ、マニホールドのポート100A,100B,100Cは動作可能に連結されていてよい(例えば、ポートのオーバーフロー出口を下のポートの入口に連結する)。ポートのオーバーフロー出口の下のポートの入口への連結により連結されたマニホールドが流体流チャンネル300を形成する。この実施の形態において、積み重ねられた細胞培養ユニットは、流体流チャンネルを通じて直列に連結されている。すなわち、液体が最上部の細胞培養ユニットに加えられ、このユニットが充填され、その液体がオーバーフロー出口を通り、その下の細胞培養ユニットの充填ポートに流れ、この第2のユニットが充填され、液体がオーバーフロー出口を通り、その下の細胞培養ユニットの充填ポートに流れ、以下同様にして、最上部のユニットから最下部のユニットまで直列に細胞培養ユニットが充填される。ポートはどのような適切な機構により連結されてもよい。最上部の細胞培養ユニットに加えられた流体が、この実施の形態において、この説明の目的で、細胞培養室も充填してよいが、流体流チャンネルは、図11−2における矢印により示されると考えられる。例えば、ポートを接続するために、締まりばめまたは圧縮ばめ(例えば、Oリングまたはかえし(barb)を含む)を使用してもよい。あるいは、または加えて、ポートを、例えば、超音波溶接やレーザ溶接などにより溶接しても、接着剤により互いに保持してもよい。
【0039】
ここに記載されたような積み重ねられた細胞培養物品またはユニットまたはモジュールは、マニホールド、接着剤、リベットなどの留め具、溶接などにより、互いに保持されてもよい。
【0040】
様々な実施の形態において、ここに記載されたようなマニホールドを集成し、次いで、積み重ねられた細胞培養ユニットに取り付けてもよい。ある実施の形態において、マニホールドは、ワンピースとして成形され、次いで、積み重ねられた細胞培養物品に取り付けられる(例えば、図9参照のこと)。他の実施の形態において、マニホールドのポートが、例えば、成形により形成され、次いで、マニホールドに集成される。マニホールドのポートは、単一部品から形成されても(例えば、図10〜11参照)、または多数の部品から形成されてもよい。
【0041】
例えば、図12A〜Bを参照すると、多部品ポート100の説明図が示されている。ポート100は、キャップ部分180およびベース部分190を備えている。一緒に配置されたときに、キャップ180およびベース190は、例えば、上述したような、入口110、ダム160、オーバーフロー出口120、および培養出口130を有するポートを形成する。キャップ180およびベース190は、同じまたは異なる材料から形成されてよい。キャップ180およびベース190は、締まりばめ、圧縮ばめ、接着剤、溶接などにより一緒に保持されてもよい。図12A〜Bに示された多部品ポートは2つの部品を含んでいるが、ここに記載されたようなポートは、いくつの部品から製造されてもよいことが理解されよう。
【0042】
ここで、図13を参照すると、2つのポート100A,100Bが配管150の部分により接合されているのが示されている。配管150は、圧縮ばめ、締まりばめ、接着剤、溶接などの任意の適切な機構によりポート100A,100Bに接合されてもよい。配管は、どのような適切な材料から形成されてもよい。様々な実施の形態において、配管は、シリコーンまたは熱可塑性エラストマーなどの可撓性材料から形成される。
【0043】
図14は、各々が上面(501および502)を有する、2つの積み重ねられた培養ユニット500Aおよび500Bを示す細胞培養装置の実施の形態(装置は3つ以上の培養ユニットを有してもよい)、およびマニホールド200の追加の実施の形態の斜視図である。この実施の形態において、細胞培養装置に入る液体は、第1のマニホールド201の液体流体流チャンネル301を通じて入るのに対し、空気が、第2のマニホールド202のガス排気チャンネル302を通じて逃げる。液体流体流チャンネルにより、液体が細胞培養ユニットに流入することができる。排気流体流チャンネルにより、置き換えられた空気がその装置が逃げることができる。マニホールドは、培養ユニット500Aおよび500Bの各々を流体流チャンネル301および302と接続し、流体流チャンネルと細胞培養ユニットとの間の流体接続を可能にする。細胞培養培地などのタンパク質流体は、空気が培地に押し通されたり、または培地が乱流を経験した場合、泡立つ傾向にある。流体により置き換わるときに空気が容器を出る別の通路を持つことにより、泡の形成が減少する。
【0044】
マニホールドは、それを断面で調査することにより理解できる。図15は、図14に示された実施の形態の斜視図であり、図16に示される装置の断面を図示している。
【0045】
図16A,BおよびCは、それぞれ、図15に示されたスライスA,BおよびBでとられた断面図である。図16Aに示される矢印は、第1のマニホールド201の流体流チャンネルを通って装置に入り、次いで、培養ユニット500Aおよび500Bに入る液体の流れを示している。液体が細胞培養ユニット500Aおよび500Bに入るときに、矢印により示されるように、空気が、ガス排気流体流チャンネル302を通って逃げる。
【0046】
実際に、その装置は、図16Aに示されるように、細胞培養培地または他の液体が充填されるであろう。この図において、装置は、充填マニホールドが装置の最も下側の部分に配置されるような側に置かれている。言い換えれば、装置は、図16Aに示されるように、底部から充填されてもよい。液体は、可撓性配管を使用して、または任意の他の手段により、導入してもよい。流体は、重力供給されても、ポンプで送り込まれても、または細胞培養装置に入るような圧力下に置かれてもよい。これは充填工程である。流体流チャンネルに入る流体は、細胞培養ユニットに入る前に、マニホールドを通って流れる。流体の体積が増加するにつれ、流体は、流体流チャンネルから、満仁へと流体流チャンネルとの間の開口を通ってマニホールドに入る。一旦流体がマニホールドに入ると、流体は細胞培養ユニットおよび細胞培養室に入る。流体が、並列に連結された細胞培養ユニットの全てに入り、マニホールドと関連する細胞培養室の充填が同時に行われて、全ての培養室において流体の平衡がとられる。流体が液体流体流チャンネルを通って装置に入るときに、空気が排気流体流チャンネルを通って周囲雰囲気へと装置から移動させられる。細胞培養室は、容量まで充填されるであろう。例えば、液体不透過性のガス透過性材料を使用して、細胞培養室を形成する場合、ヘッドスペースを細胞培養室内に維持する必要はない。
【0047】
液体(図16Bおよび16Cにおける斜線区域により示される)が装置に加えられた後、大きな矢印2により示されるように、装置を回転させてもよい。装置を回転させ、液体を細胞培養ユニット中に落とすことにより、装置は液体に完全に充填されるようになる。実施の形態において、マニホールド(今では図15に示されたスライスBでとられた断面に示されている)は貯留部350を有する。この貯留部350は、マニホールドが液体を貯め、装置が図16Bに示されるような隔離位置、または図16Cに示されるような培養位置にあるとき、細胞培養ユニット500Aおよび500Bとマニホールドの流体流チャンネル300との間に空隙を形成する構造である。図16Cは、培養位置にある、細胞培養のために配置されたときの装置を示している。装置が充填され(図16Aに示されるように底部から)、図16Bに示されるような隔離位置に置かれて、装置に液体培地が充填された後、この装置を図3に示されるように回転させ、培養位置に置くことができる。一旦培養位置に置かれると、装置は細胞培養の準備ができている。培養位置において、また隔離位置において、貯留部350は液体が部分的に充填され(図16Bおよび図16Cに示される斜線により表される)、空隙370が細胞培養ユニット500Aおよび500Bの間に形成される。この空隙370により、細胞培養ユニットを隔離でき、細胞培養ユニット内に収容される細胞培養室における静水圧の増加が避けられる。
【0048】
図17は、装置の実施の形態の充填を示す(図16Aに示すような)、細胞培養装置の追加の実施の形態の説明図である。図17に示されるように、液体は、流体流チャンネル300から、貯留部350を有するマニホールド200を通って、細胞培養装置の細胞培養ユニット500Aおよび500Bに入る。図17は、細胞培養ユニット500Aおよび500Bが細胞培養室510を収容していることを示している。図17に示される装置が細胞培養のための位置、すなわち細胞培養位置に向けられたときに、このダム400により、液体が細胞培養ユニット内に溜まることができ、空隙が、細胞培養ユニット400Aと500Bおよび流体流チャンネル300の間に残ることができる。図17に示されるように、細胞培養表面501の装置の向き。装置は、細胞培養室510が水平の細胞培養表面を提供するように向けられているときに、細胞培養のために配置されている。
【0049】
図18は、貯留部350、および流体流チャンネル300を有する、マニホールド200の詳細を示す、図16Cにおいて点線で示された領域の拡大図である。実施の形態において、貯留部は、培養室と流体流チャンネルとの間に空隙を提供するような構造で構成されている。図18において、マニホールド200の貯留部350は、肩壁351により上側が境界とされ、流体流チャンネル300に部分的に開いており(点線により示されるように)、ダム400により流体流チャンネル300から部分的に隔てられ、壁352により底部が境界とされ、細胞培養ユニット500に開いている(貯留部の境界は点線により示されている)。図18は、マニホールド200の貯留部350が流体流チャンネル300に開いており、流体流チャンネル300と細胞培養ユニット500との間の流体連通を可能にすることを示している。実施の形態において、貯留部は、液体が溜まることできる空間360(図18に示される斜線により表される)を形成し、流体流チャンネル300と細胞培養ユニット500との間に空隙370を形成できる。実施の形態において、細胞培養装置が細胞培養のために配置されたときに、ダム400が、高さh1だけ連結された培養ユニット500の上面より上に延在する。高さh1は、細胞培養装置が通常に使用中に動かされ乱された場合でさえも、液体のプールを形成するのに十分に大きいが、取り扱い易いサイズのマニホールドを維持するのに十分に小さく、最大数の細胞培養室および関連するマニホールドを上下に積み重ねられることが当業者には認識されよう。例えば、実施の形態において、高さh1は、例えば、1mmから5cmであってよい。ダム400により、液体が貯留部350内に溜まることができ、マニホールド200内において流体流チャンネル300と細胞培養ユニット500との間に空隙370を形成することができる。
【0050】
図19A,BおよびCは、装置の別の実施の形態を示しており、ここで、液体流体流チャンネル303が弁450を有している。弁450は、図19Aにおいては開放位置で、図19Bにおいては閉鎖位置で示されている。図19Aに示したように、流体は、矢印により示されるように、装置の第1のマニホールド203から細胞培養装置に入り、置き換えられた空気が、第2のマニホールド204を通じて装置を出る。液体流体流チャンネル303を有する第1にマニホールド203は弁450を有してもよい。実施の形態において、液体流体流チャンネル303に連結されたマニホールド203は、ダムを有していない。実施の形態においてピンチ弁が示されているが、弁は、当該技術分野に公知の任意のタイプの弁または液体流量調節弁であってもよい。実施の形態において、第1のマニホールド203は、流体流チャンネル300に連結され、細胞培養装置500Aおよび500Bにも連結され、流体流チャンネルと細胞培養室との間に流体連通を可能にしてもよい。第2のマニホールドは、貯留部350およびダム400を有し、液体の溜めと、矢印4により示されるように装置が培養位置に回転されたときに、図18に示すように、流体流チャンネルと細胞培養室との間に空隙を形成することを可能にする。図19に示された実施の形態において、2つのマニホールドがあるが、マニホールドの一方しか、空隙を形成するためのダムを有していない。
【0051】
実際に、弁を開き、図19Aに示したような充填位置において、液体を装置に導入してもよい。液体は装置に導入してもよい。細胞培養室が充填されたときに、弁を閉じ、装置を隔離位置に、次いで、培養位置に回転させてもよく、または弁が適所にあるので、装置を培養位置に直接回転させてもよい。この実施の形態において、マニホールド間の弁が、遮断されないままであれば、装置において静水圧の増加をもたらすであろう流体柱の破断を形成する。
【0052】
実施の形態において、多数のマニホールド、および多数の細胞培養ユニットを互いに接続してもよい。マニホールドは、例えば、配管または配管部分、Oリングまたは他のエラストマー、圧縮ばめ、接着剤、コーキング材であってよいコネクタ、もしくはレーザ、超音波、振動を含む溶接プロセス、または当該技術分野に公知の方法を使用して互いに接続してもよい。マニホールド間の接続は、多数の方法により行ってよく、永久的または一時的であってもよい。
【0053】
図20は、本発明の実施の形態の斜視図である。この実施の形態において、各々が細胞培養室の多数の層を収容している3つの細胞培養ユニットが、上下に積み重ねられて、多層細胞培養装置を形成している。各細胞培養ユニット500A,500Bおよび500Cは2つのマニホールド200を有する。液体は、配管600を通って第1のマニホールド201を通り、第1の細胞培養ユニット500Aに入り、置き換えられた空気が、第2のマニホールド202を通り配管601を通って第1の細胞培養ユニット500Aを出る。配管はフィルタ602を有してもよい。液体は、同様にして、積み重ねられた細胞培養ユニットの各々に入る。液体は流体流チャンネル300を通って各細胞培養ユニットに入るので、液体は、同時に一斉に並列に各細胞培養ユニットに送達される。各マニホールドは貯留部350を有する。
【0054】
ここに記載されたようなポートおよびマニホールド、またはその部分は、どのような適切な材料から形成されてもよい。例えば、ポート、マニホールド、またはその構成部材は、生体適合性高分子材料から形成されてもよい。様々な実施の形態において、ポートまたはマニホールドは、細胞培養ユニットが形成される1種類以上の材料から形成される。
【0055】
ポート、マニホールド、または細胞培養ユニットは、任意の適切なサイズのものであってよいことが理解されよう。描写された実施の形態の多くにおいて、ポートおよびその構成部材は、矩形断面形状を有するものとして描写されているが、それらは、円形、楕円形などの任意の適切な断面形状を有してもよいことが理解されよう。さらに、細胞培養ユニットは、いくつの細胞培養室を含んでもよく、またマニホールドはいくつのポートを含んでもよいことが理解されよう。ある実施の形態において、細胞培養ユニットは、例えば、1つのポート当たり10個の積み重ねられた細胞培養室または1つのポート当たり12個の積み重ねられた細胞培養室を有し、そのようなユニットが10個積み重ねられて、10ポートまたは12ポートのマニホールドおよび100個の培養室または120個の培養室を有する培養システムを提供している。実施の形態において、いくつの積み重ねられた細胞培養室を細胞培養ユニット内に集成して、いくつの細胞培養室を有するマニホールドを提供してもよい。
【0056】
それゆえ、マニホールドを有する細胞培養システムの実施の形態が開示されている。ここに記載された細胞培養装置および方法は、開示されたもの以外の実施の形態にも実施できることが当業者には理解されよう。開示された実施の形態は、限定の目的ではなく、説明の目的のために提示されている。
【符号の説明】
【0057】
100,100A,100B,100C ポート
110,110A,110B 入口
120,120A オーバーフロー出口
130,130A,130B,130C,130D 培養出口
160,160A ダム
200 マニホールド
350 貯留部
450 弁
500,500A,500B,500C,500D 細胞培養ユニット
540,540A,540B,540C,540D 開口
600 配管
602 フィルタ
1000 細胞培養装置
5000 細胞培養物品
5000A,5000B,5000C 細胞培養モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞培養装置において、
各々が上面を有し、各々が少なくとも2つの細胞培養室を収容している少なくとも2つの細胞培養ユニット、および
前記少なくとも2つの細胞培養ユニットの各々を流体流チャンネルで接続して、該流体流チャンネルと前記培養室との間の流体接続を与えているマニホールド、
を有してなり、
前記細胞培養ユニットに接続された少なくとも1つのマニホールドが、前記細胞培養ユニットが細胞培養のための位置に置かれたときに、接続された前記細胞培養ユニットの上面の上に延在するダムを有することを特徴とする細胞培養装置。
【請求項2】
前記流体流チャンネルが、液体を前記細胞培養ユニットに流すための液体流体流チャンネルを含むことを特徴とする請求項1記載の細胞培養装置。
【請求項3】
置き換えられた空気が前記装置から排出されるように構成され、配置された排気流体流チャンネルをさらに含むことを特徴とする請求項1または2記載の細胞培養装置。
【請求項4】
前記液体流体流チャンネルが弁を備えることを特徴とする請求項2記載の細胞培養装置。
【請求項5】
前記液体流体流チャンネルに接続されたマニホールドがダムを有さないことを特徴とする請求項4記載の細胞培養装置。
【請求項6】
前記マニホールドが、前記細胞培養装置が細胞培養のための位置に置かれたときに、前記細胞培養ユニットと前記流体流チャンネルとの間に空隙を提供するように構成され、配置された貯留部を備えることを特徴とする請求項1記載の細胞培養装置。
【請求項7】
前記少なくとも2つの細胞培養ユニットが、流体流チャンネルを通じて並列に互いに接続されていることを特徴とする請求項1記載の細胞培養装置。
【請求項8】
前記少なくとも2つの細胞培養ユニットが、流体流チャンネルを通じて直列に互いに接続されていることを特徴とする請求項1記載の細胞培養装置。
【請求項9】
細胞培養装置において、
各々が少なくとも2つの培養室を有する少なくとも2つの細胞培養ユニットであって、各々が、
入口を通じて導入された流体が、細胞培養出口を通じて前記培養室に入れるように、前記少なくとも2つの細胞培養ユニットと流体連通した前記入口、オーバーフロー出口、および前記細胞培養出口を有する第1の充填ポート、および
第2の充填ポートであって、該第2の充填ポートの入口を通じて導入された流体が、該第2の充填ポートの細胞培養出口を通じて前記細胞培養ユニットの前記培養室に入れるように、前記少なくとも2つの培養室に流体連通した前記入口、オーバーフロー出口、および前記細胞培養出口を有する第2の充填ポート、
を有する細胞培養ユニット、
を備え、
前記充填ポートが、前記培養室が流体で満たされたときに、前記入口に導入された流体が前記オーバーフロー出口から流出するように構成されており、
第1の細胞培養ユニットのオーバーフロー出口が第2の細胞培養ユニットの入口と流体連結されていることを特徴とする細胞培養装置。
【請求項10】
3つ以上の細胞培養ユニットが、上下に積み重ねられ、流体が該細胞培養ユニットを直列で充填できるように流体連結されていることを特徴とする請求項9記載の細胞培養装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9A】
image rotate

【図9B】
image rotate

【図9C】
image rotate

【図10A】
image rotate

【図10B】
image rotate

【図10C】
image rotate

【図11】
image rotate

image rotate

【図12A】
image rotate

【図12B】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公表番号】特表2012−518436(P2012−518436A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552141(P2011−552141)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際出願番号】PCT/US2010/025321
【国際公開番号】WO2010/099264
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】