説明

マルチセル・フィルタ・カートリッジ用補強構造体

それぞれの端部に備えられる、第1及び第2のフック・ボスと、細長いバックボーンに沿って端部のボスの中間に配置される1個又はそれ以上の中間フック・ボスとを有する細長いバックボーンを備える、マルチセル・フィルタ・カートリッジと共に使用する補強構造体。更に、複数の無フック・ボスが、細長いバックボーンに沿って一定の間隔をおいて配置される。フィルタ・カートリッジの外周周りに等間隔で配置される、上記複数の補強構造体を備えるフィルタ・カートリッジと共に、厳しい運転条件のもとでマルチセル・フィルタ・カートリッジのひずみを防止する方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、継続出願であり、2003年3月10日出願の仮出願番号第60/453,413号明細書からの利益を享受する。この出願は、本開示と矛盾しない程度に参照により本明細書に組入れられる。
【0002】
開示の背景
本開示は、マルチセル・フィルタ・カートリッジと共に使用する補強構造体に関し、更に具体的には、例えば熱殺菌及び/又は熱消毒時に起きることがあるひずみを最小にする又は防止するため、且つカートリッジの安定性及び性能を高めるためにマルチセル・フィルタ・カートリッジと協働する補強構造体に関する。開示される補強構造体は、フィルタ・カートリッジ組立体のいずれかの特徴を修正する如何なる必要もなく、マルチセル・フィルタ・カートリッジのセルのひずみを軽減する又は防止するための簡素で且つコスト効果のよい方法を提供する。
【0003】
マルチセルろ過フィルタは、ろ過技術において広く知られ、複数の積重ねたセル又はディスクを備える。これらのフィルタ・カートリッジは、例えば、厳しい運転条件、熱殺菌及び/又は熱消毒、及び特に反復熱水殺菌サイクルにさらされるとき、不利なひずみをこうむることがある。
【0004】
そのような既知のあるフィルタ・カートリッジでは、フィルタ・カートリッジは、当該技術に知られるように、複数の積重ねたフィルタ・セルを備える。更に、フィルタ・カートリッジは、セルのひずみによるセル間の空間の損失を限定するように意図される既知の特徴、即ち、各セルの端部下の比較的剛直な射出成形されたタブを備え、タブは、比較的に剛直なセパレータとして働くように意図される。これらのタブは、それらの精密な形状に関係なく、ひずみを引起すカートリッジが厳しい運転条件のもとにあるとき、セル間で最小空間を維持するように意図される。
【0005】
係属中の日本特許出願(P2001−113108A)には、セルのひずみが常に同じ方向に起きるようにセル・エッジ・モールドの断面が非対称的に設計されるフィルタ・カートリッジが、開示される。この非対称の形態を端部タブと組み合わせることはセル間の空間を最小に維持するのに力を貸すが、この方策は好ましいとはいえない。これはこの方策に付随する、不利な視覚作用と性能と共に、ひずみが依然として発生する可能性があるためである。
【0006】
フィルタ・カートリッジのひずみを最小にする別の試みは、それらを完全にプラスチックから製作することである。しかしながら、潜在するフィルタ・カートリッジのひずみに対応するこの方策は、概ね不利である。この理由は、フィルタ・カートリッジの重量が許容できないほど重くなる(特に使用後)ことがあり、フィルタ・カートリッジの製作における専らプラスチック部品の使用により一般的には流速性能が犠牲になるからである。
【0007】
2つのPCT公開公報には、マルチセル・カートリッジの分野における更なる工業的努力が反映される。2つのPCT公開公報は、ザイツシェンク・フィルタシステム社(Seitzchenk Filtersystems GmbH)のために出願された。初めのPCT公開公報、WO01/17656号明細書は、2001年3月15日に公開され、「張力付加用要素を含むフィルタ・モジュール」なる題名であり、複数の円形フィルタ・セル(1)を備えるフィルタ・モジュールを開示する。フィルタ・セルはスペーサ・リング(3)により分離される。1対の端部リング(4)がまた備わる。フィルタ・モジュールは、連続流路(2)を画定するフィルタ・セルの積重ねを形成する。PCT公開公報、WO01/17656号明細書は、更に以下のように張力付加用要素を開示する。
【0008】
張力付加用要素(5)は、・・・・・流路壁の周方向に点在し且つ、・・ ・・・内側上にて、軸方向張力を伝達するために端部リング(4)に係合する 。本発明によれば、フック形状端部(6、13、14)を有するストリップ( 5)から構成される張力付加用要素が、積重ねて配置されるフィルタ・セルを 確実に結合するために備えられる。前記フック形端部は、本質的に半径方向フ ック掛け又はかみ合い移動を行うことで端部リングに固定することができる。 更に、意図されないフック外し又は非かみ合い移動を防止する手段(10、1 1)が備えられる。
【0009】
第2のPCT公開公報、WO02/00320号明細書は、2002年1月3日に公開され、「フィルタ・モジュール」なる題名である。このPCT公開公報に開示されるフィルタ・モジュールの目的は、既知のフィルタ・モジュールの利点をフィルタ層の端部において改良された密封と組み合わせると共に、フィルタ・モジュールを逆洗可能にすることである。WO02/00320号明細書に開示されたフィルタ・モジュール(1)は、複数のフィルタ層と「密封仕様に圧縮される」、点在する排水スペーサ要素とを備える。流動要素(12a、b)と密封要素(11a、b)とは、モジュールの逆洗を容易にするためにモジュールの外周に備えられる。「結合手段は、ラグ、あぶみ形のストラップ(16a、b、23a、b)、及びT形と矢印形の捕獲要素を備える。」更に、開示されたフィルタ・モジュールでは、ろ過材が、プラスチック部材を一緒にプレスすることにより端部でピンチ加工で密封される。ろ過材厚さは、ピンチ加工による密封とプラスチック部材とが厚さ又は密度の変化するろ過材に有益な補償を確実に与えるために十分に管理される必要がある。
【発明の開示】
【0010】
現在までの努力にもかかわらず、優れたカートリッジ完全性を、即ち、カートリッジが熱殺菌及び/又は消毒を含む厳しい運転条件のもとにあるとき、マルチセル・フィルタ・カートリッジの高い安定性と軽微なひずみを与える構造体に対する要求が依然として存在する。これらと共に別の要求と目的とが本明細書に開示される補強構造体とマルチセル・フィルタ・カートリッジ組立て体により達成される。開示される補強構造体に付随する更に有利な特徴と機能性は、以下に示す添付図面と代表的実施例の詳細な説明とから明白である。
【0011】
開示の概要
本開示によれば、有利な補強構造体が、マルチセル・フィルタ・カートリッジと共に使用するために開示される。開示される補強構造体は、簡素で、低コスト/長寿命のフィルタ・カートリッジ組立て体の利点を有する。この組立て体は、フィルタ・カートリッジの高い安定性を備えると共に、フィルタ・カートリッジの潜在ひずみを軽減又は取除く、即ち、フィルタ・カートリッジの反復熱殺菌及び/又は消毒を含む厳しい運転条件のもとで最大のカートリッジ完全性を備える。
【0012】
本開示の代表的実施例では、複数の補強構造体が、周方向に一定の間隔をおいた位置でマルチセル・カートリッジに取外し可能に固着される。一具体例では、4個の補強構造体が、マルチセル・フィルタ・カートリッジの外周周りに約90度の間隔をおいた位置でマルチセル・フィルタ・カートリッジに固着される。あるいは、3個の補強構造体が約120度の間隔をおいた位置で利用される。一部の用途では、約180度の間隔をおいてマルチセル・フィルタ・カートリッジに固着された2個の補強構造体で構成することが可能である。本開示の好適な実施例によれば、セルのひずみの軽減に所望の効果を達成するために必要な多数の補強構造体が、フィルタ・カートリッジの外周周りに実質的に等間隔で配置される。当業者に明白なように、複数の代替的配置及び/又は配備が利用されることがあるが、8乃至12個という、多くの補強構造体及びおそらくそれ以上の補強構造体が、セルのひずみの軽減に所望の効果を達成するために有利に利用されることがあると目下考えられている。
【0013】
本開示による代表的補強構造体は、一般的に、実質的に剛直な材料、例えばプラスチックから製作される。開示される補強構造体の各々は、フィルタ・カートリッジに対して補強構造体を取外し可能に固着するための少なくとも1個の付属物の特徴を備え、開示される補強構造体の代表的実施例では、フィルタ・カートリッジに対して補強構造体を取外し可能に固着するための複数の付属物の特徴を備える。本開示の好適な実施例によれば、補強構造体は、各端部にフック・ボスを備える細長い部材を画定する。本発明の代表的実施例ではフィルタ・カートリッジへの補強構造体の取付けを容易にするために、更に1個又はそれ以上の中間のフック・ボスが備えられる。追加の無フック・ボスが、一般的に、積重ねられたセル間で空間又は開口と協調整列するために細長い部材に沿って一定の間隔をおいた態様で画定される。本開示の代表的実施例では、それぞれのフック・ボス間で細長い部材上に形成されるボスの数は、積重ねられたセル間の空間を同一間隔で割った数に等しい。
【0014】
使用時には、開示される補強構造体は、協調フィルタ・カートリッジ構造体にフック・ボスを固着すると共に、対応する隣接フィルタ・セル間に形成される空間に無フック・ボスを挿入することにより、周方向に一定の間隔をおいた態様でマルチセル・フィルタ・カートリッジに固着される。無フック・ボスは、一般的には、隣接セル間の空間よりも、例えば約0.5乃至3.0mmだけ狭くなるように寸法決めされ、これにより、対応空間における無フック・ボスの位置決めを容易にする。無フック・ボスと対向するセルとの間の隙間が小さくなるにもかかわらず、開示される補強構造体は、セル間で発生するひずみの軽減/防止に有効である。
【0015】
注目すべきは、開示される補強構造体は、引張り及び圧縮の双方の抗ひずみ力を与えることによりひずみを軽減/防止する。更に具体的には、フィルタ・カートリッジの上部と底部で又は上部と底部の近傍で補強構造体を固着することにより、フィルタ・カートリッジの側面で底面から上面を広げようとするどのようなひずみ力も、引張り力により対抗させることができる。更に、フィルタ・カートリッジの側面で上面を底面により近づけるように移動させるどのようなひずみ力も、例えば挿入された無フック・ボスの存在にある程度基づき圧縮力により対向させることができる。改良された「伸張」/「圧縮」がカートリッジの完全性に有効に寄与する。
【0016】
このようにして、開示される補強構造体は、特に熱殺菌又は消毒後に、客先でマルチセル・フィルタ・カートリッジがこうむるひずみ問題に取り組む。潜在するひずみ問題を解決することは、重要である。これは、ひずみの方向はかなりランダムであり、且つそのようなひずみがフィルタ・カートリッジの異なる部分又は領域において対向セル間に空間損失をもたらすからである。ひずみは、最小であっても、フィルタ・カートリッジの顧客/使用者に関心を引き、例えば、使用中にフルタ・カートリッジの完全性について顧客は否定的印象を持つことになる。あり余るひずみを経験する場合、カートリッジの有効ろ過面積は失われ、結果として、流量の減少、ろ過材利用の低下及びろ過寿命の短縮を含む、否定的結果がもたらされる。開示される補強構造体により、マルチセル・フィルタ・カートリッジのひずみを防止(又は顕著に軽減)してそのような潜在する問題が有利に取り除かれる。更に、開示される補強用構造体により、ろ過材周りの端部密封材の連続射出成形が可能で、ろ材の厚さと密度との変動にかかわらず、外周域でろ過材の信頼性の高い密封が確保される。
【0017】
開示される補強構造体の更なる特徴と機能が、以下の添付図面と詳細な説明とから明らかになる。
【0018】
代表的実施例の詳細な記述
図1は、複数の積重ねたフィルタ・セルを備えると共に、セルのひずみによりセル間の空間損失を限定するために各セルの端部の下に比較的剛直な射出成形したタブを備える既知のマルチセル・フィルタ・カートリッジを示す。
有利な補強構造体が、マルチセル・フィルタ・カートリッジ、例えば、キュノ社(Cuno, Inc. コネチカット州、メリデン(Meriden))から市販されるゼータ・プラス(Zeta Plus)(登録商標)・フィルタ・カートリッジと共に使用するために本明細書に開示される。本明細書に開示される補強構造体は、高いフィルタ・カートリッジの安定性を達成すると共に、フィルタ・カートリッジの潜在ひずみ、例えば、フィルタ・カートリッジの熱殺菌及び/又は消毒に付随する潜在ひずみを軽減又は除去する安価で容易な手段を提供する。
【0019】
開示される補強構造体は、フィルタ・カートリッジ装置、特にマルチセル・フィルタ・カートリッジの広い範囲に有用性が見られる。本明細書で使用される「セル」は、一般的に、端部密封部を用いて外端部で接合される、ろ過材から製作される両面ディスクに向けられる。マルチセル・フィルタ・カートリッジを形成するためにセルは、カートリッジ組立て体を組立てるため他のセルと共に積重ねられる。
【0020】
上述のように、開示される補強構造体は、別の手段ではマルチセル・フィルタ・カートリッジにより経験されるひずみを有利に最小化及び/又は除去する。積重ねられたディスクが、もはや直線状(又は実質的に直線状)でなくなったとき、変形が、マルチセル・フィルタ・カートリッジに明白になる。変形は、セル間の空間を変化させるか又は全てのセルを均等にひずませ、その結果、フィルタ・カートリッジが、目視判定で許容できない外観になる。フィルタ・カートリッジは、また、許容できない性能低下、流量実体、ろ過材利用及びそれらの結果としての寿命の短縮を経験することがある。変形は、他のひずみをもたらす原因に出くわすこともあるが、典型的には、フィルタ・カートリッジの熱履歴を含む厳しい運転条件によって起きる。
【0021】
ひずみの2つの具体的な原因は、熱水消毒とイン・サイチュ蒸気殺菌である。熱水消毒は、一般的に、水が高い温度、典型的には、60℃以上でカートリッジ組立て体の全域を循環するクリーニング処置を含む。イン・サイチュ蒸気殺菌は、一般的に、蒸気が、高い温度、典型的には、121℃以上でカートリッジ組立て体の全域を循環するクリーニング処置を含む。いずれの場合も、普通のマルチセル・フィルタ・カートリッジのランダムなひずみが結果として起きる。
【0022】
図2及び図3を参照すると、本開示の補強構造体の代表的な実施例が示される。図2には、代表的補強構造体100が、普通のマルチセル・フィルタ・カートリッジに配置される。図2には1個だけの補強構造体が見えるが、周方向に一定の間隔をおいて配置された複数の補強構造体が取外し可能にフィルタ・カートリッジ50に固着されることが意図される。例えば、4個の補強構造体が、周方向に約90度の間隔をおいた位置で固着されること、又は3個の補強構造体が、周方向に約120度の間隔をおいた位置で固着されることがある。好適な実施例によれば、補強構造体は、フィルタ・カートリッジ50の外周周りに実質的に等間隔で配置される。しかしながら。別の配置パターンが、当業者に明白であるように、特定の状況に従い利用されることがある。
【0023】
一部の用途では、180度だけ双方の間に間隔をおいて配置される、マルチセル・フィルタ・カートリッジに固着した2個の補強構造体を設けることが可能である。本開示の好適実施例によれば、セルのひずみの減少に所望の効果を達成するのに必要な多くの補強構造体は、フィルタ・カートリッジの外周周りに実質的に等間隔で配置される。複数の別の配置及び/又は配備が利用されることがあるが、当業者に明白であるように、8個乃至12個の補強構造体及びおそらくそれ以上が、セルのひずみの軽減に所望の効果を達成するために有利に利用されることが目下考えられている。
【0024】
従って、フィルタ・カートリッジに配置される又は取付けられる補強構造体の数と相対位置が、本開示の本質又は範囲から逸脱せずに変化することがあることが特に意図される。
【0025】
図3を特に参照すると、代表的補強構造体100が示される。補強構造体100は、一方の側の比較的フラットな面と他方の側から延在する一続きのボス(以下に詳細に述べる。)とを特徴とする細長いバックボーン102を備える。補強構造体100は、一般的に、適するプラスチックのような実質的に剛直な材料から製作される。補強構造体100は、普通の射出成形法を用いて有利に製作されることがある。しかしながら、当業者に明白なように、別の製作法が、利用される。補強構造体100の構成材料は、カートリッジ構成部の材料により変化することがあり、例えば、高密度ポリプロピレン、ポリエチレン(HDPE)、ナイロン、ポリ弗化ビニリデン(PVDF)、及び類似物である。
【0026】
更に、図3を参照すると、補強構造体100は、バックボーン102の第1端部に第1フック・ボス104とバックボーン102の第2端部に第2フック・ボス106とを備える。図3に示す補強構造体は、複数のフック・ボスを備えるが、補強構造体は、フィルタ・カートリッジに対して補強構造体を取外し可能に固着するために、例えばフック・ボスのような少なくとも1個の付属物の特徴を備えることが意図される。フック・ボス104,106は、例えば、図2に示されるフィルタ・カートリッジ50のようなフィルタ・カートリッジに取外し可能にかぎで引っ掛けるように寸法決めされると共に、構成される。更に、中間のフック・ボス108が、バックボーン102の中点で又は中点近傍でバックボーン102から延在する(もっとも、上述のように、1個のフック・ボスがフィルタ・カートリッジへの補強構造体の取外し可能な固着に有効であることが意図される。すなわち、端部又は中間位置でのフック・ボスである。)。中間フック・ボス108は、また、フィルタ・カートリッジに取外し可能にかぎで引っ掛けるように寸法決めされると共に、構成される。フック・ボスが、フィルタ・カートリッジの通常使用期間に付属物をフィルタ・カートリッジに維持するのに有効である場合、フック・ボス104、106、108と協働する正確な付属物の特徴は、本開示の補強構造体の設計又は取り扱いに重要でない。
【0027】
第1フック・ボス104と中間フック・ボス108との間に複数の第1無フック・ボス110が存在する。同様に、第2フック・ボス106と中間フック・ボス108との間に複数の無フック・ボス112が存在する。無フック・ボス110、112は、一般的に、例えば図2のフィルタ・カートリッジのようなフィルタ・カートリッジの積重ねられたセル間の空間又は開口と協調整列するように、細長いバックボーン102に沿って一定の間隔をおいて画定される。本開示の代表的実施例では、細長いバックボーン102上でそれぞれのフック・ボスの間に形成される無フック・ボス110、112の数は、フィルタ・カートリッジの積重ねられたセル間の空間を同一間隔で割った数に等しい。しかしながら、無フック・ボスの正確な数と一定間隔とは、当業者に明らかなように、本開示の本質と範囲から逸脱せずにバックボーン102に従って変化させてもよい。
【0028】
無フック・ボス110、112は、一般的に、フィルタ・カートリッジのセル間で画定される間隔よりも、例えば約0.5乃至1.0mmだけ狭くなるように寸法決めされ、これにより、対応する空間における無フック・ボスの位置決めを容易にする。無フック・ボス110と対向するセルの間の隙間が小さくなるにもかかわらず、開示される補強構造体100は、セル間のひずみの軽減/防止に有効である。
【0029】
使用時には、開示される補強構造体100は、フック・ボス104、106、108を協働するフィルタ・カートリッジ構造体に固着すると共に、無フック・ボス110、112を対応する隣接フィルタ・セル間に形成される空間内に挿入することにより、マルチセル・フィルタ・カートリッジ50に対して周方向に一定の間隔をおいて固着される。開示される補強構造体100は、例えば客先で特に熱殺菌又は消毒後にマルチセル・フィルタ・カートリッジがこうむるひずみ問題に有利に向けられる。注目すべきは、開示される補強構造体の設計と使用により、ろ過材周りで射出成形される端部密封が有利に可能になり、これにより、ろ過材の厚さと密度との変化にかかわらず、外周域でろ過材の信頼性の高い密封を確実にする。
【0030】
開示される補強構造体100は、引張り及び圧縮の双方の抗ひずみ力を与えることによりひずみを軽減/防止する。補強構造体100をフィルタ・カートリッジの上部と底部とに又はこれらの近傍に固着することにより、フィルタ・カートリッジの側面で底部から上部を広げようとするどのようなひずみ力も、補強構造体100により与えられる引張り力によって対抗させることができる。更に、フィルタ・カートリッジの側面で上部を底部に接近させようとするどのようなひずみ力も、例えばフィルタ・カートリッジにより画定される対応空間内に挿入された無フック・ボス110、112の存在にある程度基づき補強構造体によって与えられる圧縮力により対抗させることができる。
【0031】
本開示の補強構造体は潜在するひずみ問題を解決することがフィルタ・カートリッジの異なる部分又は領域において対向セル間に潜在する空間損失に少なくともある程度取り組むので、重要である。ひずみは、最小であってもフィルタ・カートリッジの顧客/使用者の関心を引き、例えば、使用中のフィルタ・カートリッジの完全性について顧客が否定的印象を持つことになる。実際、あり余るひずみを経験する場合、カートリッジの有効ろ過面積を失うことがある。これは、例えばろ過寿命を縮めるようなフィルタ性能に悪影響をもたらす。本明細書で用いられるとき、マルチセル・フィルタ・カートリッジの有効ろ過面積とは、流体のろ過に利用できる、カートリッジ内のろ過材の断面積について称する。流体のろ過に関与するろ過材は、とりわけ、ろ過材の一部がカートリッジを密封するために使用されるので、フィルタを構成するために使用されるろ過材の総量よりも少ない。開示される補強構造体は、マルチセル・フィルタ・カートリッジのひずみを防止する(著しく軽減する)ことにより、流量の減少と寿命の短縮を生じるろ過材利用低下という、上述の問題及び潜在する問題を有利に取り除くことができる。
【0032】
本開示の補強構造体は、特定の代表的な実施例について記述されたが、本開示の範囲は、これらの代表的な実施例の仕様に限定されない。従って、本開示の独特且つ有利な態様を具体化する無数の代替実施例が意図される。例えば、開示される補強構造体は、限定されないが、特許されたネットを張ったセル組立て体を備える、フィルタ・カートリッジを含む、異なる設計のフィルタ・カートリッジに組み込んで使用できること、更に、そのような補強構造体の配置が背圧による流動抵抗に対するネット張りの効果を高めることが意図される。そのような代替的実施例は、本開示の本質と範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本開示の本質事項が関連する当業者が、本開示の特徴、取り扱い及び使用をよりよく理解するように支援するため、添付図面と関連の記述とが参照に供される。
【図1】図1は本開示の補強構造体が有利に利用されるマルチセル・フィルタ・カートリッジを示す。
【図2】図2はマルチセル・フィルタ・カートリッジに固着される、開示される補強構造体の代表的実施例を有するマルチセル・フィルタ・カートリッジを示す。
【図3】図3は本開示による代表的補強構造体を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面と、上面と、前記底面から延在する少なくとも1個のフック・ボスと、複数の無フック・ボスとを有する、細長いバックボーンを備えるフィルタ・カートリッジと共に使用する補強構造体。
【請求項2】
複数のフック・ボスが、前記細長いバックボーンの前記底面から延在すると共に、前記複数のフック・ボスが、第1及び第2のフック・ボスを備え、各々が前記細長いバックボーンのそれぞれの端部に又はそれぞれの端部の近傍に位置する、請求項1に記載の補強構造体。
【請求項3】
複数のフック・ボスが、前記細長いバックボーンの前記底面から延在すると共に、前記複数のフック・ボスが、1個又はそれ以上の中間フック・ボスを備える、請求項1に記載の補強構造体。
【請求項4】
前記1個又はそれ以上の中間フック・ボスが、前記細長いバックボーンの前記それぞれの端部の内側に配置される、請求項3に記載の補強構造体。
【請求項5】
前記1個又はそれ以上の中間フック・ボスが、前記細長いバックボーンの前記中間に又は前記中間の近傍に配置される、請求項4に記載の補強構造体。
【請求項6】
前記複数の無フック・ボスが、前記細長いバックボーンに沿って一定の間隔をおいて配置される、請求項1に記載の補強構造体。
【請求項7】
前記複数の無フック・ボスが、前記補強構造体が取付けられるフィルタ・カートリッジのセル間に画定される空間よりも少し狭く寸法決めされる、請求項1に記載の補強構造体。
【請求項8】
前記細長いバックボーンとフック/無フック・ボスとが、プラスチック材料から製作される、請求項1に記載の補強構造体。
【請求項9】
前記製作が、射出成形法による、請求項8に記載の補強構造体。
【請求項10】
前記プラスチック材料が、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、及びポリ弗化ビニリデンからなる群から選択される部材である、請求項8に記載の補強構造体。
【請求項11】
フィルタ・カートリッジと、請求項1により画定され前記フィルタ・カートリッジに固着される複数の補強構造体とを含むフィルタ・カートリッジ組立て体。
【請求項12】
フィルタ・カートリッジと、請求項2により画定される複数の補強構造体とを含むフィルタ・カートリッジ組立て体。
【請求項13】
フィルタ・カートリッジと、請求項3により画定される複数の補強構造体とを含むフィルタ・カートリッジ組立て体。
【請求項14】
フィルタ・カートリッジと、請求項5により画定される複数の補強構造体とを含むフィルタ・カートリッジ組立て体。
【請求項15】
フィルタ・カートリッジと、請求項6により画定される複数の補強構造体とを含むフィルタ・カートリッジ組立て体。
【請求項16】
フィルタ・カートリッジと、請求項7により画定される複数の補強構造体とを含むフィルタ・カートリッジ組立て体。
【請求項17】
前記複数の補強構造体が、前記フィルタ・カートリッジに周方向に一定の間隔をおいて取外し可能に固着される、請求項11に記載のフィルタ・カートリッジ組立て体。
【請求項18】
周方向の一定間隔が、30度から120度である、請求項11に記載のフィルタ・カートリッジ組立て体。
【請求項19】
前記補強構造体が、前記フィルタ・カートリッジがこうむる潜在ひずみ力に対抗する引張り力と圧縮力とを与える、請求項11に記載のフィルタ・カートリッジ組立て体。
【請求項20】
前記フィルタ・カートリッジが、マルチセル・フィルタ・カートリッジである、請求項11に記載のフィルタ・カートリッジ組立て体。
【請求項21】
フィルタ・カートリッジが厳しい運転条件のもとにあるとき、前記セルのひずみを最小にする又は防止するように、1つずつ縦に積重ねられた複数の前記セルで構成される前記フィルタ・カートリッジに、請求項1に記載の前記カートリッジの外周に沿って取外し可能に縦に固着された補強構造体を備えることを含む、厳しい運転条件のもとでマルチセル・フィルタ・カートリッジのひずみを防止する方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−519697(P2006−519697A)
【公表日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506974(P2006−506974)
【出願日】平成16年3月9日(2004.3.9)
【国際出願番号】PCT/US2004/007117
【国際公開番号】WO2004/080569
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【出願人】(399044506)キュノ、インコーポレーテッド (14)
【氏名又は名称原語表記】CUNO INCORPORATED