説明

マルチトリガ処理装置

【課題】 システム構成を簡易化できると共に、外部トリガ信号の多入力化が容易となるマルチトリガ処理装置を実現する。
【解決手段】 サンプリング信号に同期させた、2値情報で与えられる複数の外部トリガ信号のタイミングで入力信号をディジタル変換してデータ処理部に取り込むマルチトリガ処理装置において、
前記2値情報で与えられる複数の外部トリガ信号の論理パターンをアナログ信号に変換するDA変換手段と、
前記アナログ信号をディジタル変換して前記データ処理部に渡すAD変換手段と、
を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプリング信号に同期させた、2値情報で与えられる複数の外部トリガ信号のタイミングで入力信号をディジタル変換してデータ処理部に取り込むマルチトリガ処理装置に関するものであり、特に脳磁計測システムにおける複数の外部トリガ信号の処理に応用することができる。
【背景技術】
【0002】
脳磁計測システムに関しては、特許文献1に技術開示がある。図2は、従来のマルチトリガ処理装置の構成例を示す機能ブロック図である。装置の機能構成は、入力信号処理部1、AD変換部2、外部トリガ処理部3、データ処理部4、このデータ処理部4と通信する上位装置5よりなる。
【0003】
脳磁計測システムは、極めて多数のセンサを備えるが、簡単のため、入力信号処理部1は、4個のセンサS1〜S4の入力信号を、可変利得増幅器K1〜K4を介して4:1のマルチプレクサ11で切り換えてAD変換部2に渡す構成例を示す。
【0004】
AD変換部2において、AD変換手段20は、入力信号処理部1から渡される入力信号を、外部トリガ処理部3からのトリガタイミング信号TMに同期してディジタル変換したサンプルデータSDをデータ処理部4に渡す。
【0005】
データ処理部4は、AD変換手段20より取得した入力信号のサンプルデータSDの特定の外部トリガ信号に対する挙動を解析する。
【0006】
AD変換部2において、AD変換手段21〜24は、16本の外部トリガ信号を4個ずつに4グループ化してディジタル変換し、夫々の変換データデータD1〜D4,D5〜D8,D9〜D12,D13〜D16をデータ処理部4に渡す。
【0007】
外部トリガ処理部3は、簡単のため、16本の外部トリガ信号T1〜T16を入力する構成例を示す。ここで扱う外部トリガ信号は、脳磁計測システム等の操作で生成されるイベント情報より取得されるものであり、操作している期間はオン、操作が無い期間はオフとなる2値情報で与えられる。
【0008】
これら外部トリガ信号T1〜T16は、システム操作により不定時刻に発生するものであり、入力信号を周期的にデータ処理部2に取り込むために上位装置5から与えられるサンプリング信号SPとは同期関係を持たない。
【0009】
外部トリガ信号T1〜T16は、入力保護回路A1〜A16を介してパルス伸長回路N1〜N16に入力され、上位装置5から与えられるサンプリング信号SPと同期させる処理をしてトリガ選択手段30に入力される。
【0010】
トリガ選択手段30は、上位装置5より与えられるトリガ選択信号TRに基づいて、パルス伸長回路N1〜N16より出力される外部トリガ信号の内どれをトリガタイミング信号TMとして採用するかの選択並びに選択された外部トリガ信号の成立論理条件(AND、OR)判断を行い、AD変換手段20へトリガタイミング信号TMとして出力する。
【0011】
4個のマルチプレクサ31〜34は、16本の外部トリガ信号を4本ずつに4グループ化して切り換え、その切り換え出力を前記のAD変換部2のAD変換手段21〜24に入力し、ディジタル変換させる。
【0012】
外部トリガ処理部3の4個のマルチプレクサ31〜34の出力と、AD変換部2のAD変換手段21〜24の入力間は、4本のケーブルC1〜C4を介して結線されている。
【0013】
マルチプレクサを複数グループ毎に分散して設ける理由は、マルチプレクサの切り換え速度に制約があり、脳磁計測システムで決められたサンプリング信号SPの1周期内に全ての外部トリガ信号を切り換えることが不可能なためである。入力信号処理部1のマルチプレクサ11についても、サンプリング信号SPの1周期内に入力される4個のセンサからの入力信号を切り換える機能を備える。
【0014】
【特許文献1】特開平9−166654号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
脳磁計測システムの評価項目を増加させるために、外部トリガ信号の本数を増加させたい要求に対して従来構成では次のような問題がある。
(1)外部トリガ処理部3とAD変換部2間をケーブルで結線するシステム構成上、外部トリガ信号の本数を増加させるためには、AD変換手段並びにケーブル数を増加させる必要があり、システム構成が複雑化し、コストアップを招く。
【0016】
(2)上記問題の対策方法として、従来技術においてAD変換手段1台あたりに処理するトリガ信号本数を増やせばよいことは容易に考えられる。つまり、AD変換手段の前段にあるマルチプレクサを多入力仕様とすればよい。
【0017】
脳磁計測システムでは、決められたサンプリング信号SPの1周期内に全ての外部トリガ信号を切り換える必要がある。一方で、マルチプレクサの切り換え速度の制約からサンプリング信号の周期内でマルチプレクスできる信号数には制限があり、入力本数を任意には増加させることができない。また、同時タイミングで発生したトリガは識別できないことがある。よってこのアプローチは問題の対策手法にはなり得ない。
【0018】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、システム構成を簡易化できると共に、外部トリガ信号の多入力化が容易となるマルチトリガ処理装置の実現を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
このような課題を達成するために、本発明は次の通りの構成になっている。
(1)サンプリング信号に同期させた、2値情報で与えられる複数の外部トリガ信号のタイミングで入力信号をディジタル変換してデータ処理部に取り込むマルチトリガ処理装置において、
前記2値情報で与えられる複数の外部トリガ信号の論理パターンをアナログ信号に変換するDA変換手段と、
前記アナログ信号をディジタル変換して前記データ処理部に渡すAD変換手段と、
を備えることを特徴とするマルチトリガ処理装置。
【0020】
(2)前記サンプリング信号とは非同期で与えられる前記複数の外部トリガ信号を、前記サンプリング信号と同期させるためのパルス伸長手段を備えることを特徴とする(1)に記載のマルチトリガ処理装置。
【0021】
(3)前記複数のトリガ信号の選択及び成立条件判断の少なくともいずれかを実行する、トリガ選択手段を備えることを特徴とする(1)または(2)に記載のマルチトリガ処理装置。
【0022】
(4)複数の前記入力信号を、前記サンプリング信号の周期内で切り換えて入力するマルチプレクサを備えることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載のマルチトリガ処理装置。
【0023】
(5)前記データ処理部は、前記AD変換手段より取得した特定のトリガ信号に対する前記入力信号の挙動を解析することを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載のマルチトリガ処理装置。
【0024】
(6)前記入力信号は脳磁計測システムの複数のセンサより取得され、前記複数のトリガ信号は前記脳磁計測システムの操作で生成されるイベント情報より取得されることを特徴とする(1)乃至(5)のいずれかに記載のマルチトリガ処理装置。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、次のような効果を期待することができる。
(1)外部トリガ信号16本を処理する為のAD変換手段は1個でよく、外部トリガ処理部とAD変換部間の結線も1本で実現可能となり、システム構成を簡易化できる。即ち、実施形態の16トリガ入力の場合では、AD変換手段並びにケーブル数を従来装置の1/4に縮小させることができる。
【0026】
(2)従来装置の実施形態のように、4個のAD変換手段及び4本の結線構成とした場合では、処理可能な外部トリガ信号は従来の4倍にあたる64本のトリガ入力に対応可能となり、トリガ信号の多入力化が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を図面により詳細に説明する。図1は、本発明を適用したマルチトリガ処理装置の一実施形態を示す機能ブロック図である。図2で説明した従来装置と同一要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0028】
本発明が適用された外部トリガ処理部100において、16本の外部トリガ信号T1〜T16を入力する入力保護手段A1〜A16及びパルス伸長手段N1〜N16の構成は、図2の従来装置と同一である。また、トリガ選択手段101は図2のトリガ選択手段30と同一機能である。
【0029】
本発明の特徴部は、パルス伸長手段N1〜N16の出力信号を入力するDA変換手段102である。2値情報で与えられる外部トリガ信号T1〜T16をパルス伸長処理した信号も2値情報であり、DA変換手段102への入力論理パターンは、16ビットのディジタル値と等価である。
【0030】
DA変換手段102は、この16ビットのディジタル値をアナログ変換して電圧Vdを出力する。この電圧Vdのレベルは、65,536階調を有する。この電圧Vdは1本のケーブルCでAD変換部2に導かれ、1個のAD変換手段25により元の16ビットのディジタル値に戻されてデータ処理部4に渡される。
【0031】
データ処理部4は、16ビットのディジタル値をデコードして、所定のサンプル周期内で発生した外部トリガ信号を識別しデータを保持する。これにより、複数のトリガが同時に発生しても識別することが可能である。
【0032】
DA変換手段102の分解能が16ビット以上あれば、分解能の限界まで入力できる外部トリガ信号の本数を更に増加させることも可能である。
【0033】
本発明によれば、実施形態の16トリガ入力の場合では、AD変換手段並びにケーブル数は1/4に縮小することができる。図2の従来装置の実施形態と同じく4個のAD変換手段及び4本の結線構成とした場合、処理可能な外部トリガ信号は従来の4倍にあたる64本のトリガ入力に対応可能となる。
【0034】
以上説明した実施形態では、脳磁計測システムへの応用例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、短時間に多数の外部トリガ信号を取り込む必要がある信号処理装置一般に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明を適用したマルチトリガ処理装置の一実施形態を示す機能ブロック図である。
【図2】従来のマルチトリガ処理装置の構成例を示す機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0036】
1 入力信号処理部
11 マルチプレクサ
2 AD変換部
20,25 AD変換手段
4 データ処理部
5 上位装置
100 外部トリガ処理部
101 トリガ選択手段
102 DA変換手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプリング信号に同期させた、2値情報で与えられる複数の外部トリガ信号のタイミングで入力信号をディジタル変換してデータ処理部に取り込むマルチトリガ処理装置において、
前記2値情報で与えられる複数の外部トリガ信号の論理パターンをアナログ信号に変換するDA変換手段と、
前記アナログ信号をディジタル変換して前記データ処理部に渡すAD変換手段と、
を備えることを特徴とするマルチトリガ処理装置。
【請求項2】
前記サンプリング信号とは非同期で与えられる前記複数の外部トリガ信号を、前記サンプリング信号と同期させるためのパルス伸長手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のマルチトリガ処理装置。
【請求項3】
前記複数のトリガ信号の選択及び成立条件判断の少なくともいずれかを実行する、トリガ選択手段を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のマルチトリガ処理装置。
【請求項4】
複数の前記入力信号を、前記サンプリング信号の周期内で切り換えて入力するマルチプレクサを備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のマルチトリガ処理装置。
【請求項5】
前記データ処理部は、前記AD変換手段より取得した特定のトリガ信号に対する前記入力信号の挙動を解析することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のマルチトリガ処理装置。
【請求項6】
前記入力信号は脳磁計測システムの複数のセンサより取得され、前記複数のトリガ信号は前記脳磁計測システムの操作で生成されるイベント情報より取得されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のマルチトリガ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−161408(P2008−161408A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−353777(P2006−353777)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】