説明

マルチフェーズDC/DCコンバータ及びその制御方法

【課題】換効率を改善することができるマルチフェーズDC/DCコンバータを提供すること。
【解決手段】本発明の一態様に係るマルチフェーズDC/DCコンバータは、入力電圧を生成する電源1と、入力電圧を受け電力増幅器11に対して所定の電圧を供給する、並列に接続された複数のDC/DCコンバータ4、5と、電力増幅器11の送信パワー設定値と複数のDC/DCコンバータ4、5のON/OFF状態との関係を示すテーブルを記憶する記憶部14と、入力される送信パワー設定値に応じて、記憶部14を参照し、複数のDC/DCコンバータ4、5のON/OFFを制御する制御部15とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチフェーズDC/DCコンバータ及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1つのDC入力電圧を複数相のスイッチを用いてスイッチングし、1つの負荷へ1つのDC出力電圧を供給するマルチフェーズDC/DCコンバータが知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなマルチフェーズDC/DCコンバータは、例えば、CPU(Central Processing Unit)や携帯端末等の電源装置として用いられる。
【0003】
近年、WCDMA(Wideband Code Division Multiple Access)、GSM(Global System for Mobile Communication)、EDGE(Enhanced Data GSM Environment)、LTE(Long Term Evolution)など複数の通信方式を搭載する携帯端末が標準となりつつある。GSMやEDGEでは、出力電力が大きいため、消費電流が大きい。
【0004】
複数の通信方式に共通で電源装置を用いる場合、GSMやEDGEに対応するため、出力電流の大きいDC/DCコンバータを設ける必要がある。このため、回路を構成するトランジスタやFET(Field-Effect Transistor)も大電流に対応できる部品が必要となり、部品サイズ、コストが増大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−340442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のマルチフェーズDC/DCコンバータでは、複数のDC/DCコンバータを並列接続し、異なる位相でスイッチング制御することにより大電流負荷に対して電源を供給する。
【0007】
しかしながら、通信機器において、送信パワーが低い場合は電力増幅器11の消費電流は小さくなる。DC/DCコンバータを並列接続したまま使用していると、変換効率が悪くなるという問題がある。
【0008】
本発明は、このような事情を背景としてなされたものであり、本発明の目的は、変換効率を改善することができるマルチフェーズDC/DCコンバータ及びその制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様に係るマルチフェーズDC/DCコンバータは、入力電圧を生成する電源と、前記入力電圧を受け電力増幅器に対して所定の電圧を供給する、並列に接続された複数のDC/DCコンバータと、前記電力増幅器の送信パワー設定値と前記複数のDC/DCコンバータのON/OFF状態との関係を示すテーブルを記憶する記憶部と、入力される送信パワー設定値に応じて、前記記憶部を参照し、前記複数のDC/DCコンバータのON/OFFを制御する制御部とを備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電力増幅器の送信パワーに応じて複数のDC/DCコンバータのON/OFFを制御することができるため、変換効率を改善することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施の形態に係るマルチフェーズDC/DCコンバータの構成を示す図である。
【図2】実施の形態に係るマルチフェーズDC/DCコンバータにおける送信パワー設定値とDC/DCコンバータ出力電圧、各DC/DCコンバータのON/OFF状態の関係の一例を示す表である。
【図3】実施の形態に係るマルチフェーズDC/DCコンバータにおけるスイッチング制御信号を示す波形図である。
【図4】実施の形態に係るマルチフェーズDC/DCコンバータにおけるスイッチング制御信号を示す波形図である。
【図5】実施の形態に係るマルチフェーズDC/DCコンバータの送信パワー減少時、送信パワー増加時における送信パワー設定値と各DC/DCコンバータのON/OFF状態の関係の一例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
本発明の実施の形態1に係るDC/DCコンバータについて、図1を参照して説明する。図1は、本実施の形態に係るマルチフェーズDC/DCコンバータの構成を示す図である。
【0013】
本発明に係るマルチフェーズDC/DCコンバータは、携帯電話や無線通信装置等の電源装置として用いられるものである。ここでは、第1DC/DCコンバータ4と第2DC/DCコンバータ5の2つのDC/DCコンバータを並列接続した例について説明するが、これに限定されるものではない。
【0014】
図1に示すように、本実施の形態に係るマルチフェーズDC/DCコンバータは、電源1、第1DC/DCコンバータ4、第2DC/DCコンバータ5、送信電力増幅器11、記憶部14、制御部15を備える。
【0015】
電源1は、バッテリや直流安定化電源を有する。電源1は、DC/DCコンバータ入力電圧2を出力する。DC/DCコンバータ入力電圧2は、第1DC/DCコンバータ4、第2DC/DCコンバータ5に入力される。
【0016】
第1DC/DCコンバータ4、第2DC/DCコンバータ5は並列に接続されており、DC/DCコンバータ出力電圧3を出力する。DC/DCコンバータ出力電圧3は、電力増幅器11に供給される。なお、第1DC/DCコンバータ4、第2DC/DCコンバータ5は、降圧型、昇降圧型のいずれであってもよい。
【0017】
記憶部14は、表1に示すようなDC/DCコンバータ出力電圧3と第1DC/DCコンバータ4、第2DC/DCコンバータ5のON/OFF状態の関係をテーブルとして記憶する。
【0018】
制御部15は、第1DC/DCコンバータ4、第2DC/DCコンバータ5の動作の制御をおこなう。具体的には、制御部15は、入力される送信パワー設定信号10に応じて、記憶部14を参照し、第1スイッチング制御信号6、第2スイッチング制御信号7、第1出力電圧制御信号8、出力電圧制御信号9を出力する。
【0019】
送信パワー設定信号10は、電力増幅器11の送信パワー設定値を示す信号である。第1スイッチング制御信号6、第1出力電圧制御信号8は第1DC/DCコンバータ4に入力され、第2スイッチング制御信号7、出力電圧制御信号9は第2DC/DCコンバータ5に入力される。
【0020】
第1スイッチング制御信号6により、第1DC/DCコンバータ4のON/OFFが制御され、第2スイッチング制御信号7により第2DC/DCコンバータ5のON/OFFが制御される。第1出力電圧制御信号8、出力電圧制御信号9に応じて、第1DC/DCコンバータ4、第2DC/DCコンバータ5から出力される電圧値が制御される。電力増幅器11には、RF入力信号12が入力され、RF出力信号13を出力する。
【0021】
ここで、図3、4を参照して、本実施の形態に係るマルチフェーズDC/DCコンバータの動作について説明する。図3、4は、本実施の形態に係るマルチフェーズDC/DCコンバータにおけるスイッチング制御信号を示す波形図である。
【0022】
電力増幅器11の消費電流が大きい場合、DC/DCコンバータ出力電圧3を高くして、送信パワーを高くする必要がある。この場合、第1スイッチング制御信号6、第1出力電圧制御信号8を異なる位相とし、第1DC/DCコンバータ4と第2DC/DCコンバータ5とを異なるタイミングで制御する。
【0023】
図3に示す例では、第1スイッチング制御信号6が先に立ち上がり、この立下りタイミングで、第2スイッチング制御信号7が立ち上がる。従って、第1DC/DCコンバータ4が先にONとなり、これがOFFするタイミングで、第2DC/DCコンバータ5がONとなる。
【0024】
このように、第1DC/DCコンバータ4、第2DC/DCコンバータ5を異なる位相で動作させることにより、個々のDC/DCコンバータのスイッチング周波数を低くすることが可能となり、変換効率を改善することができる。
【0025】
一方、電力増幅器11の消費電流が小さい場合、DC/DCコンバータ出力電圧3を低くして、送信パワーは低くすることができる。この場合、一方のDC/DCコンバータのみを動作させる。図4に示す例では、第1スイッチング制御信号6により第1DC/DCコンバータ4を制御する。このとき、DC/DCコンバータ入力電圧2はOFFとなる。
【0026】
図2に示す例では、送信パワー設定値が+4dBm以上において、図3のように、第1DC/DCコンバータ4、第2DC/DCコンバータ5のいずれもが動作する。また、送信パワー設定値が0dBm以下において、図4のように、第1DC/DCコンバータ4のみが動作し、第2DC/DCコンバータ5がOFFとなる。
【0027】
通信機器において、送信パワーが低い場合に電力増幅器11の消費電流は小さくなる。複数のDC/DCコンバータを並列接続し、異なる位相でスイッチング制御することにより大電流負荷に対して電源を供給するマルチフェーズDC/DCコンバータでは、DC/DCコンバータを並列接続したまま使用していると変換効率が悪くなるという問題があった。
【0028】
本願発明では、記憶部14に記憶されてテーブルに基づいて、電力増幅器11の送信パワーに応じて、並列接続した複数のDC/DCコンバータの動作を切り替える。電力増幅器11の送信パワーが低い場合には、並列接続した複数のDC/DCコンバータのうちのいずれかをOFF状態とする。これにより、動作の最適化を図り、変換効率を改善することができる。また、低消費電力化を実現することも可能である。
【0029】
なお、異なる通信方式(GSM、WCDMA、LTEなど)ごとに、図2に示すテーブルを持ち、記憶部14に記憶するようにしてもよい。これにより、さらに動作の最適化を図ることが可能となる。
【0030】
実施の形態2.
本発明の実施の形態2に係るマルチフェーズDC/DCコンバータについて説明する。本実施の形態では、図5に示すテーブルに基づいて、第1DC/DCコンバータ4、第2DC/DCコンバータ5の動作を制御する。図5は、本実施の形態に係るマルチフェーズDC/DCコンバータの送信パワー減少時、送信パワー増加時における送信パワー設定値と各DC/DCコンバータのON/OFF状態の関係の一例を示す表である。
【0031】
なお、マルチフェーズDC/DCコンバータの構成については、図1に示したものと同一の構成のものを用いることができるため、説明を省略する。
【0032】
図5に示すように、本実施の形態では、第1DC/DCコンバータ4、第2DC/DCコンバータ5の制御を、電力増幅器11の送信パワー増加時と送信パワー減少時とで異ならせている。すなわち、記憶部14に記憶されているテーブルは、電力増幅器11送信パワー設定値の増加時/減少時に応じて、送信パワー設定値と複数のDC/DCコンバータのON/OFF状態との関係が異なる。
【0033】
送信パワー増加時では、実施の形態1と同様に、送信パワー設定値が+4dBm以上において、第1DC/DCコンバータ4、第2DC/DCコンバータ5のいずれもが動作する。また、送信パワー設定値が0dBm以下において、第1DC/DCコンバータ4のみが動作し、第2DC/DCコンバータ5がOFFとなる。
【0034】
送信パワー減少時では、送信パワー設定値が0dBm以上において、第1DC/DCコンバータ4、第2DC/DCコンバータ5のいずれもが動作する。また、送信パワー設定値が0dBmより小さくなると、第1DC/DCコンバータ4のみが動作し、第2DC/DCコンバータ5がOFFとなる。
【0035】
このように、本実施の形態では、第2DC/DCコンバータ5がON/OFFする送信パワー設定値を送信パワー増加時と減少時とで異ならせ、切り替えにヒステリシスを持たせている。これにより、さらに動作の最適化を図ることが可能となり、変換効率を向上させることが可能となる。
【0036】
なお、実施の形態1と同様に、異なる通信方式(GSM、WCDMA、LTEなど)ごとに、図5に示すテーブルを持ち、記憶部14に記憶するようにしてもよい。また、異なる送信周波数帯(例えば、WCDMA方式の1920〜1980MHz帯、824〜849MHz帯など)ごとに図5に示すテーブルを持ち、記憶部14に記憶することも可能である。これにより、さらに動作の最適化を図ることが可能となる。
【0037】
実施例の形態1では、電力増幅器が一つの例で記載しているが、異なる通信方式や、異なる送信周波数帯毎に電力増幅器を複数持つ構成にしてもよい。本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 電源
2 DC/DCコンバータ入力電圧
3 DC/DCコンバータ出力電圧
4 第1DC/DCコンバータ
5 第2DC/DCコンバータ
6 第1スイッチング制御信号
7 第2スイッチング制御信号
8 第1出力電圧制御信号
9 出力電圧制御信号
10 送信パワー設定信号
11 電力増幅器
12 RF入力信号
13 RF出力信号
14 記憶部
15 制御部
A マルチフェーズDC/DCコンバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧を生成する電源と、
前記入力電圧を受け電力増幅器に対して所定の電圧を供給する、並列に接続された複数のDC/DCコンバータと、
前記電力増幅器の送信パワー設定値と前記複数のDC/DCコンバータのON/OFF状態との関係を示すテーブルを記憶する記憶部と、
入力される送信パワー設定値に応じて、前記記憶部を参照し、前記複数のDC/DCコンバータのON/OFFを制御する制御部と、
を備えるマルチフェーズDC/DCコンバータ。
【請求項2】
前記テーブルは、前記送信パワー設定値の増加時/減少時に応じて、前記送信パワー設定値と前記複数のDC/DCコンバータのON/OFF状態との関係が異なることを特徴とする請求項1に記載のマルチフェーズDC/DCコンバータ。
【請求項3】
前記記憶部は、異なる通信方式にそれぞれ対応する複数のテーブルを記憶していることを特徴とする請求項1又は2に記載のマルチフェーズDC/DCコンバータ。
【請求項4】
前記記憶部は、異なる送信周波数帯にそれぞれ対応する複数のテーブルを記憶していることを特徴とする請求項1又は2に記載のマルチフェーズDC/DCコンバータ。
【請求項5】
前記制御部は、前記複数のDC/DCコンバータを異なる位相で動作させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のマルチフェーズDC/DCコンバータ。
【請求項6】
入力電圧を受け電力増幅器に対して所定の電圧を供給する、並列に接続された複数のDC/DCコンバータを有するマルチフェーズDC/DCコンバータの制御方法であって、
電力増幅器の送信パワー設定値と前記複数のDC/DCコンバータのON/OFF状態との関係を示すテーブルを記憶し、
入力される送信パワー設定値に応じて、前記テーブルを参照し、前記複数のDC/DCコンバータのON/OFFを制御するマルチフェーズDC/DCコンバータの制御方法。
【請求項7】
前記テーブルは、前記送信パワー設定値の増加時/減少時に応じて、前記送信パワー設定値と前記複数のDC/DCコンバータのON/OFF状態との関係が異なることを特徴とする請求項6に記載のマルチフェーズDC/DCコンバータの制御方法。
【請求項8】
異なる通信方式に応じて、それぞれに対応する複数のテーブルのいずれかを参照することを特徴とする請求項6又は7に記載のマルチフェーズDC/DCコンバータの制御方法。
【請求項9】
異なる送信周波数帯に応じて、それぞれに対応する複数のテーブルのいずれかを参照することを特徴とする請求項6又は7に記載のマルチフェーズDC/DCコンバータの制御方法。
【請求項10】
前記複数のDC/DCコンバータを異なる位相で動作させることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載のマルチフェーズDC/DCコンバータの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−176965(P2011−176965A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39901(P2010−39901)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】