説明

マルチング施工方法

【課題】 マルチング材が風雨により飛散、流出しにくく、安定した使用が可能なマルチング施工方法を実現する。
【解決手段】 まず、樹木Wの周りのマルチング施工箇所の地面11の芝生12を除去し、地表から所定の深さ、例えば、30〜50mmまでの土を漉き取り、区画した区画部13を形成する。次に、区画部13の底部13aを覆って砂を敷設し、転圧することにより、砂層21を形成する。続いて、砂層21の表面に、ヒノキ樹皮をハンマークラッシャー等により細断して、短冊状、繊維状に形成したマルチング材を敷き詰め、転圧することによりマルチング層22を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、公園、ゴルフ場等において、樹木の周りでの雑草の生育抑制、樹木の生育促進等のために行われるマルチング施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、草本による被圧を避け、雑草の生育を抑制するため、樹木周囲の地面にマルチング材を敷設するマルチング施工が行われている。マルチング材には、雑草の生長繁茂の抑制効果の高さ、マルチング施工のし易さなどが要求されており、例えば、特許文献1に、ウッドチップ、おが屑等を混合してなるものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−247823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなマルチング材は、樹木の根元周囲に敷設して表土を覆う施工方法が一般的であるが、このような施工方法では、マルチング材が風雨により飛散、流出しやすいという問題があった。
また、ウッドチップを主体とするマルチング材では、時間の経過に伴い変色し景観を損なう、腐敗しやすいなどの問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、マルチング材が風雨などにより飛散、流出しにくく、安定した使用が可能なマルチング施工方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、マルチング施工方法において、地表から所定深さまでの土を漉き取り、樹木周囲の所定の領域を区画した区画部を形成する工程と、前記区画部の底部に砂を敷設し、砂層を形成する工程と、前記砂層の上に細断されたヒノキ樹皮からなるマルチング材を敷き詰めて転圧し、マルチング層を形成する工程と、を備えた、という技術的手段を用いる。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、地表から所定深さまでの土を漉き取った区画部を形成し、その内部にマルチング層を形成するため、マルチング材を区画部の内部で安定して保持することができるので、風雨などにより飛散、流出しにくく、安定した使用が可能となる。
また、区画部の底部に形成された砂層により、下層からの雑草の生育を遮蔽することができるとともに、マルチング層の水はけを制御することができる。
ヒノキ樹皮は、雑草防止効果が高く、マルチング材として好適である。マルチング材として細断されたヒノキ樹皮からなるものを用いるため、マルチング材が相互に絡まりあうので、風雨などにより飛散、流出しにくく、安定したマルチング層を形成することができる。
以上より、本発明のマルチング施工方法によれば、マルチング材が風雨により飛散、流出しにくく、マルチングの効果が長期間持続する安定した使用が可能となる。
【0008】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のマルチング施工方法において、該マルチング施工方法による施工場所は、芝生が植生された箇所の樹木周囲の領域である、という技術的手段を用いる。
【0009】
芝生が植生された箇所において、樹木周囲は日照が悪く、芝生の生育が悪いため、雑草が生えやすい。また、樹木周囲では、芝刈り機などを使用しにくく、芝生の保守・管理に多くの労力が必要である。
本発明のマルチング施工方法によれば、これらの課題を解決することができるため、請求項2に記載の発明のように、芝生が植生された箇所の樹木周囲の領域において本発明のマルチング施工方法を好適に用いることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載のマルチング施工方法において、該マルチング施工方法による施工場所がゴルフ場内である、という技術的手段を用いる。
【0011】
請求項3に記載の発明のように、該マルチング施工方法による施工場所をゴルフ場内とすることができる。ゴルフ場は起伏に富んでおり、マルチング施工場所が傾斜していることが多く、従来の施工方法ではマルチング材が飛散、流出しやすいが、本発明のマルチング施工方法によれば、マルチング層を安定して保持することができるので、好適に用いることができる。
また、ゴルフ場ではマルチング施工場所にプレー中の人が踏み入れる場合が想定されるが、マルチング層が安定して保持されているため、人が踏み入れても飛散、流出するおそれが少ない。
ゴルフボールがマルチング層に載ってしまった場合でも、マルチング材は細断されて柔らかいため、ゴルフボールを打つ妨げとならない。
マルチング材は自然素材の色彩であり、色目がよいため、景観を重視するゴルフ場で好適に用いることができる。
本発明で使用するマルチング材は、生分解性を有しており、環境負荷が少なく、更に、芝生の根を食べるコガネムシなどに対する防虫効果があるため、芝生の育成に適しており、農薬散布の軽減の要請があるゴルフ場内で好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のマルチング施工方法の工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のマルチング施工方法について、ゴルフ場の芝生植生箇所でマルチング施工する場合を例に、図を参照して説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0014】
まず、樹木Wの周りのマルチング施工箇所の地面11の芝生12を除去し、地表から所定の深さ、例えば、30〜50mmまでの土を漉き取り、区画した区画部13を形成する。
【0015】
区画部13は、樹木W毎に1本ずつ取り囲むように区画して形成してもよいし、複数本の樹木Wからなる樹木群をまとめて区画して形成することもできる。
【0016】
ここで、芝生が植生された箇所において、樹木周囲は日照が悪く、芝生の生育が悪いため、雑草が生えやすい。また、樹木周囲では、芝刈り機などを使用しにくく、芝生の保守・管理に多くの労力が必要である。そのため、マルチング施工は日照が悪い部分や芝刈り機が入りにくい場所まで行うことが好ましく、例えば、樹木の根元から5m程度の領域とすることができる。
【0017】
次に、区画部13の底部13aを覆って砂を敷設し、転圧することにより、砂層21を形成する。砂層21の厚さは、底部13aを覆って凹凸を平坦にするために、例えば、10〜20mmに形成することができる。
【0018】
この砂層21により、下層からの雑草の生育を遮蔽することができるとともに、後述するマルチング層22の水はけを制御することができる。
【0019】
砂層21は、透水性を保持できる程度に転圧して形成することが好ましい。砂層21を形成する砂は、雑草の発生などを防止するために、高温処理により除菌された焼砂であることが好ましい。
【0020】
続いて、砂層21の表面にマルチング材を敷き詰め、転圧することによりマルチング層22を形成する。マルチング層22は、表面の高さを地表より大きく突出しないように調節して形成することが好ましい。
【0021】
マルチング材の敷設は、手作業等によりマルチング材を砂層21に敷き詰める、マルチング材を水や空気と混合して砂層21に吹き付ける、などの方法により行うことができる。
【0022】
マルチング層22の厚さは、砂層21を十分に被覆するとともに、マルチング材の効果を十分に発現させるために、10〜40mm程度に形成することが好ましい。
【0023】
マルチング材は、雑草防止効果の高いヒノキ樹皮をハンマークラッシャー等により細断して、短冊状、繊維状に形成したものを用いる。例えば、幅2〜3mm、長さ50mm程度の形状とする。
【0024】
また、細断して、短冊状、繊維状などに形成されているため、マルチング材が相互に絡まりあうので、風雨などにより飛散、流出しにくくなる。これにより、敷設したマルチング層22が安定し、マルチングの効果を長期間持続させることができる。
このようなマルチング材は、例えば、1mで約30mに敷き詰めることができる。
【0025】
本発明のマルチング施工方法は、ゴルフ場内において好適に用いることができる。ゴルフ場は起伏に富んでおり、マルチング施工場所が傾斜していることが多く、従来の施工方法ではマルチング材が飛散、流出しやすいが、本発明のマルチング施工方法によれば、マルチング層22を安定して保持することができるので、好適に用いることができる。
また、ゴルフ場ではマルチング施工場所にプレー中の人が踏み入れる場合が想定されるが、マルチング層22が安定して保持されているため、人が踏み入れても飛散、流出するおそれが少ない。
ゴルフボールがマルチング層22に載ってしまった場合でも、マルチング材は細断されて柔らかいため、ゴルフボールを打つ妨げとならない。
【0026】
マルチング材は自然素材の色彩であり、色目がよいため、景観を重視するゴルフ場で好適に用いることができる。
本発明で使用するマルチング材は、生分解性を有しており、環境負荷が少なく、更に、芝生の根を食べるコガネムシなどに対する防虫効果があるため、芝生の育成に適しており、農薬散布の軽減の要請があるゴルフ場内で好適に用いることができる。
【0027】
また、ゴルフコースのフェアウェイ、ラフの外側に設けられた林などの樹木群の周囲に雑草が発生するとブッシュ化しやすく、この領域にゴルフボールが入ると打てなくなるため、OBゾーンが広くなってしまうという問題があった。本発明のマルチング施工方法によれば、樹木群の周囲に雑草が発生しないようにできるとともに、マルチング施工場所もゴルフボールを打つ妨げとならないため、OBゾーンを広げてゴルフコースを広く使うことができる。これにより、プレイヤーはOBの心配が減ずるため、よりプレーに興じることができる。
【0028】
[実施形態の効果]
本発明のマルチング施工方法によれば、地表から所定深さまでの土を漉き取った区画部13を形成し、その内部にマルチング層22を形成するため、マルチング材を区画部の内部で安定して保持することができるので、風雨などにより飛散、流出しにくく、安定した使用が可能となる。
また、区画部13の底部13aに形成された砂層21により、下層からの雑草の生育を遮蔽することができるとともに、マルチング層22の水はけを制御することができる。
ヒノキ樹皮は、雑草防止効果が高く、マルチング材として好適である。マルチング材として細断されたヒノキ樹皮からなるものを用いるため、マルチング材が相互に絡まりあうので、風雨などにより飛散、流出しにくく、安定したマルチング層を形成することができる。
これらにより、本発明のマルチング施工方法は、芝生が植生された箇所の樹木周囲の領域やゴルフ場内のマルチング施工に好適に用いることができる。
【0029】
[その他の実施形態]
上述の実施形態では、ゴルフ場での使用を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、公園の緑地、分離帯、畑、法面などに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0030】
11…地面
12…芝生
13…区画部
13a…底部
21…砂層
22…マルチング層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地表から所定深さまでの土を漉き取り、樹木周囲の所定の領域を区画した区画部を形成する工程と、
前記区画部の底部に砂を敷設し、砂層を形成する工程と、
前記砂層の上に細断されたヒノキ樹皮からなるマルチング材を敷き詰めて転圧し、マルチング層を形成する工程と、を備えたことを特徴とするマルチング施工方法。
【請求項2】
該マルチング施工方法による施工場所は、芝生が植生された箇所の樹木周囲の領域であることを特徴とする請求項1に記載のマルチング施工方法。
【請求項3】
該マルチング施工方法による施工場所がゴルフ場内であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のマルチング施工方法。

【図1】
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