説明

マルチング材の製造方法

【課題】持ち運びに便利で、敷きつめ作業も簡単に行うことができ、さらにはある程度の期間が経過すると変質して土壌の一部となるようにしたマルチング材を製造する方法を提供する。
【解決手段】地面を覆うのに用いられるマルチング材を製造するにあたり、粉砕した針葉樹及び/又は広葉樹の樹皮に、所定の水分含有量以下になったときに粘着力を発揮する植生糊を添加して混合し、この混合物を加圧して含有水分を絞り出してから乾燥させることにより、植生糊の粘着力によって樹皮を圧縮状態に固定し、パット状のマルチング材を得る。でんぷんを主成分とする植生糊を用い、樹皮と植生糊の混合物を加圧した後その含有水分が20重量%以下になるように乾燥するのがよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマルチング材の製造方法に関し、特に持ち運びに便利で、敷きつめ作業も簡単に行うことができ、さらにはある程度の期間が経過すると変質して土壌の一部となるようにしたマルチング材を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
農業、園芸、緑化事業等では移植した植物や樹木の茎や幹の根元廻りが乾燥し、雑草が生え、土壌が流出し、あるいは地温が急変すると、生育が阻害され、植物や樹木が枯れるおそれがある。
【0003】
従来より、植物や樹木の茎や幹の根元の廻りの地面を藁、刈草、こもなどで覆うようにしたマルチング栽培が行われているが、上述の藁、刈草、こもなどは耐久性が悪く、しかも雑草に対する効果が少ない。また、ビニールシートや不織布、合板やパーティクルボードなどが用いられているが、期待したほどの効果が得られていない。
【0004】
これに対し、粉砕した樹皮あるいは樹皮と木質片を原料とし、ある程度乾燥したときに粘着力を発揮する植生糊を添加して混合し、これを植物や樹木の茎や幹の根元の廻りの地面に敷きつめるようにしたマルチング材が実用化されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
【0005】
また、粉砕した樹皮及び木質片に植生糊を添加し、ボード状又はマット状に硬化させるようにしたマルチング材も提案されている(特許文献4)。
【0006】
【特許文献1】特開平11−178463号公報
【特許文献2】特開平08−89097号公報
【特許文献3】特開平06−133652号公報
【特許文献4】実用新案登録第3037025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1〜3記載のマルチング材では樹皮や木質片がある程度乾燥した時に植生糊によって樹皮や木質片が固められるようになっているので、使用前には樹皮や木質片の見掛けの嵩が大きく、しかもバラバラになりやすいので、麻袋などに入れておく必要があった。また、マルチング材を袋から出して植物の茎や幹の根元廻りに敷きつめ、乾燥させることによって樹皮や木質片を固めるのであるが、マルチング材を袋から出して適量だけ敷きつめるという作業が煩わしいという問題があった。
【0008】
また、特許文献4記載のマルチング材では樹皮や木質片の間に植生糊を充填して樹皮や木質片をボード状やマット状に硬化させているので、長期間が経過しても木質片がなかなか変質せず、移植した植物や樹木が定着した後もマルチング材がボード又はマットの形態で残ってしまい、植物や樹木の茎や幹の生育を阻害しないようにマルチング材を廃棄する必要が生ずることがあった。
【0009】
本発明は、かかる問題点に鑑み、持ち運びに便利で、敷きつめ作業も簡単に行うことができ、さらにはある程度の期間が経過すると変質して土壌の一部となるようにしたマルチング材の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明に係るマルチング材の製造方法は、地面を覆うのに用いられるマルチング材を製造するにあたり、粉砕した針葉樹及び/又は広葉樹の樹皮に、所定の水分含有量以下になったときに粘着力を発揮する植生糊を添加して混合し、この混合物を加圧して含有水分を絞り出してから乾燥させることにより、植生糊の粘着力によって上記樹皮を圧縮状態に固定し、パット状のマルチング材を得るようにしたことを特徴とする。
【0011】
本発明の特徴の1つは樹皮と植生糊との混合物を加圧して含有水分を絞り出してから乾燥させ、植生糊によって樹皮を圧縮したパット形状に固定するようにした点にある。
【0012】
これにより、マルチング材は比較的薄いパット形状に固定されるので嵩張らず、又含有水分が絞り出されて乾燥されているのでそれほど重くなく、持ち運びに便利である。
【0013】
また、マルチング材を圧縮させてから植生糊によって比較的薄いパット形状に固定されているので、マルチング材として最適な強度が得られる。例えば、複数枚のマルチング材を積み重ねて紐などで結束して持ち運ぶことができることが確認された。また、パット状のマルチング材をそのまま地面に敷くことができ、又マルチング材を適当な大きさに割って敷くこともでき、マルチング材を敷く作業が非常に簡単で、作業者の負担も少ない。
【0014】
さらに、マルチング材は樹皮を植生糊の粘着力によって固定しただけであるので、マルチング材を地面に敷いた後散水すると、植生糊の粘着力が低下し、樹皮がばらばらになる。従って、本発明のマルチング材は期間が経過すると、変質して土壌の一部になり、特許文献4記載のマルチング材のように取り除いて廃棄する必要もない。
【0015】
植生糊は例えばアクリル系樹脂エマルジョン、ウレタン系樹脂エマルジョン、酢酸系樹脂エマルジョン、塩化ビニル系樹脂エマルジョン、塩化ビニリデン系樹脂エマルジョン、スチレン−ブタジエン系樹脂エマルジョンなどの水性エマルジョンの1種又は2種以上を主成分とする植生糊を用いることができるが、成分をうまく調整しないとマルチング材が固くなりすぎるおそれがあるばかりでなく、コスト高を招来する。他方、でんぷんを主成分とする植生糊を用いると、そのような不具合はなく、植生糊としては優れている。でんぷんの原料は特に限定されず、例えば米、麦、トウモロコシなどに由来するでんぷんを用いることができる。
【0016】
また、樹皮には植生糊に加え、さらに燐酸液や燐酸塩含有燐酸液などの難燃剤を含有させるようにしてもよい。
【0017】
植生糊の添加量は用いる植生糊の特性などに応じて適宜選択するが、例えば植生糊がでんぷんを主成分とする糊の場合には樹皮に対して5重量%〜30重量%、好ましくは5重量%〜15重量添加するようにするのがよい。
【0018】
樹皮と植生糊の混合物の含有水分量は植生糊の特性によって決定するが、持ち運び性を考慮すると、20重量%以下にするのがよい。
【0019】
また、本発明によれば、地面を覆うのに用いられるマルチング材において、粉砕した針葉樹及び/又は広葉樹の樹皮が、所定の水分含有量以下になったときに粘着力を発揮する植生糊によって圧縮されたパット形状に固定されており、該パット形状の樹皮はパット状態のままで運搬できかつ手によって割ることができるような強度であり、上記割ったパット状の樹皮の断片は散水によってばらばらの樹皮になるようにしたことを特徴とするマルチング材を提供することができる。
【0020】
この場合も植生糊がでんぷんを主成分とする糊であり、水分含有量が20重量%以下であるのが好ましい。
【0021】
また、マルチング材の機能の1つは雑草が生えるのを阻止することである。そこで、本発明のマルチング材には除草剤を添加しておいてもよい。除草剤は市販のものを用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。図1ないし図5は本発明に係るマルチング材の製造方法の好ましい実施形態を示す。本例のマルチング材10を製造する場合、針葉樹及び広葉樹の一方又は両方を原料とし、これを適切な長さに切断して枝葉粉砕機(チッパーシュレッダ)に投入して粉砕する(ステップS10、S11)。粉砕片の大きさは特に限定されない。枝葉粉砕機の機能を考慮すると、1mm〜100mmの範囲内の大きさが一般的である。
【0023】
次に、植生糊を用意する(ステップS12)。植生糊にはでんぷんを主成分とする糊を用い、糊の粘度は粉砕した樹皮との混合作業を考慮して選択する。例えば、玄米に由来するでんぷん糊1リットルを水1リットルで薄めて使用することができる。
【0024】
上述の粉砕した樹皮に植生糊を添加して混合する(ステップS13)。添加の割合は例えば樹皮100重量部に対して植生糊10重量部とする。混合には公知のミキサーを用いることができる。
【0025】
こうして得られた混合物11をプレス機の下型20内に充填する。下型20は縦50cm、横50cm、高さ5cmの四角形状をなし、混合物11を4〜5cmの厚さに充填した後、上型21で20トン以上の加圧力(勿論、異なる加圧力であってもよい)を加えて圧縮すると、図3に示されるように、樹皮と植生糊との混合物11から含有水分が絞りされる。
【0026】
圧縮を開始してから一定の時間、例えば30秒ないし1分が経過すると、プレス機の上型21を開き、下型20内の圧縮された樹皮を取り出して乾燥させる。乾燥は自然乾燥でよいが、加熱や熱風などの送風を併用して乾燥させるようにしてもよい。混合物の含有水分が20%以下になると、植生糊が粘着力を発揮し始め、樹皮は植生糊の粘着力によって圧縮されたパット形状に固定される。
【0027】
樹皮が圧縮されたパット形状に固定されると、本例のマルチング材10が得られる。このマルチング材10は縦50cm、横50cm、高さ約2cmの大きさのパット状をなしている。
【0028】
こうして得られたマルチング材10は図5に示されるように、複数の樹皮12が圧縮によって整列された状態で植生糊によって粘着又は接着され、その圧縮された状態に固定され、しかもマルチング材として適切な強度を有するので、図6に示されるように複数枚を積み重ね、バンド15や紐で結束すると、簡単に持ち運ぶことができる。
【0029】
例えば、移植した樹木の幹の根元廻りを覆う場合、マルチング材10の結束を外し、樹木30の根元にパット状のマルチング材10を並べて地面を覆う。小さい面積のところはマルチング材10を手で適切な大きさに割って使用する。
【0030】
樹木30の幹の根元廻りをパット状マルチング材10で覆うことができると、その上から散水をする。すると、植生糊の粘着力が低下し、パット状のマルチング材10はそのままの形状を保つが植生糊の接着力が低下するので、軟らかくなり、又割られた断片状のマルチング材は散水によって樹皮はばらばらになり、図7に示されるように樹木30の幹の根元廻りを樹皮12で適切な厚さに覆うことができる。
【0031】
こうして樹木30の幹の根元廻りを樹皮12によって覆うことができると、樹木30の幹の根元廻りの地表に日光が届かないので、雑草が生えるのを抑制でき、又土壌が乾燥するのを防止でき、さらには霜などによって地温が急変するのを抑制できる。また、数年後には樹皮が変質して土壌の一部となるので、樹木が定着した後に樹皮12が邪魔になることもない。
【0032】
また、山間の傾斜地や道路などの法面、畦道や休耕田などの雑草を刈り取った後、本例のマルチング材10をそのまま、あるいは適当な大きさに割り、例えば図8に示されるように、地面40の上に敷きつめると、雑草が生えるのを抑制でき、環境を維持することができる。この場合、マルチング材10に市販の除草剤を添加しておくと、雑草が生えるのをより確実に抑制できる。
【0033】
このように敷きつめられたマルチング材10は樹皮12が変質するまでの数年間雑草が生えるのを抑制でき、数年後には樹皮12が変質して地面40の一部となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係るマルチング材の製造方法の好ましい実施形態を模式的に示す図である。
【図2】上記実施形態で使用されるプレス機を示す図である。
【図3】上記プレス機における圧縮した状態を示す図である。
【図4】得られたパット状のマルチング材を示す図である。
【図5】上記マルチング材における樹皮の状態を模式的に示す図である。
【図6】上記マルチング材を結束した状態を示す図である。
【図7】上記マルチング材を用いた状態を示す図である。
【図8】上記マルチング材を用いた他の状態を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
10 パット状マルチング材
11 混合物
12 樹皮
30 樹木

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面を覆うのに用いられるマルチング材を製造するにあたり、
粉砕した針葉樹及び/又は広葉樹の樹皮に、所定の水分含有量以下になったときに粘着力を発揮する植生糊を添加して混合し、
この混合物を加圧して含有水分を絞り出してから乾燥させることにより、植生糊の粘着力によって上記樹皮を圧縮状態に固定し、パット状のマルチング材を得るようにしたことを特徴とするマルチング材の製造方法。
【請求項2】
でんぷんを主成分とする植生糊を用いるようにした請求項1記載のマルチング材の製造方法。
【請求項3】
植生糊を樹皮に対して5重量%〜30重量%添加するようにした請求項1又は2記載のマルチング材の製造方法。
【請求項4】
でんぷんを主成分とする植生糊を用い、樹皮と植生糊の混合物を加圧した後その含有水分が20重量%以下になるように乾燥するようにした請求項1記載のマルチング材の製造方法。
【請求項5】
地面を覆うのに用いられるマルチング材において、
粉砕した針葉樹及び/又は広葉樹の樹皮が、所定の水分含有量以下になったときに粘着力を発揮する植生糊によって圧縮されたパット形状に固定されており、
該パット形状の樹皮はパット状態のままで運搬できかつ手によって割ることができる強度であり、上記割ったパット状の樹皮の断片は散水によってばらばらの樹皮になるようにしたことを特徴とするマルチング材。
【請求項6】
上記植生糊がでんぷんを主成分とする糊であり、水分含有量が20重量%以下である請求項5記載のマルチング材。
【請求項7】
除草剤が添加されている請求項5記載のマルチング材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−110986(P2007−110986A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−306718(P2005−306718)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(505393315)株式会社兵庫バークセンター (1)
【Fターム(参考)】