説明

マルチ端子および該マルチ端子を備えた電気接続箱

【課題】 電気接続箱の高密度配置による小型化を達成するために、分岐接続構造を簡単にする。
【解決手段】 自動車用電気接続箱内に配置して分岐回路を構成するためのマルチ端子10であって、導電性金属板を打抜加工して形成しており、電線圧接用の圧接刃を備えた電線圧接部12と、プリント基板の導電路に突き刺す先端を有する突出部からなる基板接続部14と、端子同士を嵌合接続するためのタブからなる端子嵌合接続部13とを、共通基板部11より突設している。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、マルチ端子および、該マルチ端子を自動車用電気接続箱の分岐回路接続用に用いたものであって、効率良く分岐回路を構成して、電気接続箱の高密度化および小型化を図るものである。
【0002】
【従来の技術】近時、自動車に搭載される電装品が急増していることより、自動車用の電気接続箱に搭載する部品が多数になっていると共に、内部回路の分岐接続構造も複雑化し、電気接続箱は大型化する傾向にある。しかしながら、逆に、高密度配置とすることにより、小型化することが要請されている。
【0003】従来、電気接続箱において分岐回路を構成するために、下記の3種の形態が用いられている。
【0004】第1は、図6(A)に示すように、導電性金属板を打抜加工して形成したバスバー1を内部回路として用い、該バスバー1に分岐部1a、1bを設け、これら分岐部1a、1bの先端を屈折して端子嵌合用のタブ1c、1dを形成している。これらタブ1c、1dは電気接続箱に形成したコネクタ嵌合部(図示せず)の端子孔に挿入し、外部回路の電線先端に接続された圧着端子2と嵌合接続して、分岐回路を構成している。
【0005】第2は、図6(B)に示すように、内部回路として単芯線からなる電線3と圧接端子4を用いたもので、圧接端子4の圧接刃4aで電線3を圧接接続し、該圧接端子4の他側に形成したタブ4bを上記第1の場合と同様に外部回路の電線の圧着端子2と嵌合接続して分岐回路を形成している。
【0006】第3は、図6(C)に示すように、内部回路となる複数の電線4、4の端末に圧着端子5(図示の例では雌端子)をかしめ接続し、該圧着端子5を電気接続箱のコネクタ収容部の端子孔の位置に配置し、外部回路の電線の圧着端子2’(図示の例では雄端子)と嵌合接続して、分岐回路を形成している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上記した従来の第1乃至第3の形態による分岐接続構造では、平面的な制約大きく、電気接続箱内における高密度配置、それに基づく電気接続箱の小型化が図ることは容易に出来ない問題があった。
【0008】例えば、電気接続箱の内部には、ダイオード等の電子機器を搭載したプリント基板を収容し、該プリント基板の導電路を電気接続箱に接続する外部回路と接続する場合、あるいは内部回路のバスバーあるいは電線に接続する場合があるが、上記第1乃至第3の形態ではプリント基板の導電路と接続するには、さらに、コネクタを介在させる必要があり、部品点数およびスペースをとる問題がある。
【0009】さらに、内部回路に電線とバスバーとを併用する場合もあり、その場合には、バスバーと電線との両方に接続する必要があるが、上記第1乃至第3の形態では、1つの端子でバスバーと電線とを接続する機能はない。
【0010】さらにまた、上記第1乃至第3の形態では、同一平面内での分岐となり、上下に位相した位置での分岐接続が困難であり、電気接続箱の高密度化および小型化を図る観点から立体的にも分岐させることが望ましいが、この要請に応えることができない。
【0011】本発明は、上記した問題に鑑みてなされたもので、プリント基板の導電路との接続、内部回路を構成する単芯線との接続、およびバスバーのタブあるいは外部電線の端子との端子嵌合のいずれの形態の接続にも対応でき、しかも、立体的な分岐接続構造を達成しえるマルチ端子を提供し、電気接続箱の高密度化および小型化を図ることを課題としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、本発明は、請求項1で、自動車用電気接続箱内に配置して分岐回路を構成するためのマルチ端子であって、導電性金属板を打抜加工して形成しており、電線圧接用の圧接刃を備えた電線圧接部と、プリント基板の導電路に突き刺す先端を有する突出部からなる基板接続部と、端子同士を嵌合接続するためのタブからなる端子嵌合接続部とを、共通基板部より突設していることを特徴とするマルチ端子を提供している。
【0013】上記マルチ端子は、上記共通基板部の上端の一側より上記電線圧接部を突設すると共に、上記共通基板部の他側を屈折させ、該屈折部の上端より上記基板接続部を突設し、さらに、上記共通基板部の下端より上記端子嵌合接続部を突設している(請求項2)。なお、この請求項2の形態に限定されず、基板接続部を電線圧接部と反対方向に突出させてもよく、これら電線圧接部、基板接続部、端子嵌合部の共通基板部から突設する方向および個数は限定されない。
【0014】また、請求項3において、上記マルチ端子を用いた電気接続箱を提供いている。即ち、アッパーケースとロアケースとからなる電気接続箱のケース内の空間に、内部回路用の単芯線、電子機器を搭載したプリント基板、および請求項1または請求項2に記載のマルチ端子を収容し、さらに、上記アッパーケースあるいは/およびロアケースにバスバーをインサート成形して取り付け、上記バスバーから突設したタブをプリント基板の導電路に直接接続すると共に、上記マルチ端子の基板接続部を上記プリント基板の導電路に突き刺して半田付けし、かつ、上記マルチ端子の端子嵌合部を電気接続箱に形成したコネクタ嵌合部の端子孔に挿入して外部回路の圧着端子と接続すると共に、上記電線圧接部を上記内部回路の単芯線に圧接接続していることを特徴とするマルチ端子を備えた電気接続箱を提供している。
【0015】上記構造のマルチ端子を用いると、例えば、電気接続箱内の上部に収容するプリント基板に対して、上記マルチ端子の基板接続部の先端を突き刺して半田接続し、該マルチ端子の他方に位置する電線圧接部で内部回路の単芯線と圧接接続し、かつ、下方に突出するタブからなる端子接続部をコネクタ嵌合部に嵌合する外部電線の圧着端子と接続すると、上下に位相した状態で、プリント基板の導電路、内部回路の電線、外部電線とを分岐接続する回路を1つのマルチ端子で構成することができる。
【0016】このように、上記マルチ端子を用いると、電気接続箱の内部回路の形態が相違しても、これら内部回路を接続することが出来ると共に、平面的な接続のみでなく立体的な接続も可能となるため、電気接続箱の内部回路を効率良く配置でき、高密度化および小型化を図ることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図面に示す実施形態を参照して説明する。
【0018】図1は本発明のマルチ端子10を示し、該マルチ端子10は導電性金属板を打抜加工した後に曲げ加工して形成している。図示のように、マルチ端子10は垂直方向の共通基板部11の上端の一端側より、上面開口の圧接刃12aを設けた電線圧接部12を突設している。また、上記共通基板部11の下端より矩形状の平板突出部13aを突設し、その先端をタブ(雄端子)13bとしている端子嵌合接続部13を設けている。さらに、共通基板部11の他側を90度屈折させ、該屈折部11aの上端より細長い突出部14aを突設し、その先端を鋭角に尖らせて突き刺し部14bとしている基板接続部14を設けている。
【0019】上記マルチ端子10の使用方法を図2を用いて説明すると、該マルチ端子10を電気接続箱のケース20の底壁21に設けたコネクタ嵌合部22の内面上に配置し、上記下向きの端子嵌合部13を端子孔23に挿入して、共通基板部11をコネクタ嵌合部内壁上に支持する。上記端子孔23より下方に突出した端子嵌合部13の先端タブ13bは、コネクタ嵌合部22に嵌合されるコネクタ24内の電線端末に圧着された雌端子25と嵌合接続される。
【0020】上記マルチ端子10の共通基板部11の上方に突出した電線圧接部12は、電気接続箱のケース20内に収容されている単芯線27と圧接接続している。即ち、単芯線27を上方から圧接刃12aに圧入して、単芯線27の絶縁被覆を切断して単芯の芯線と圧接接続させている。なお、この単芯線27との接続は、単芯線27を電気接続箱ケース20内に収容する前に接続しておいてもよい。
【0021】さらに、上記マルチ端子10の共通基板部11の屈曲部11aより突設した基板接続部14は、電気接続箱ケース20内においてコネクタ嵌合部22の上方に位置させて収容するプリント基板28に対して、該プリント基板28の導電路29に当たる位置に、下方より先端の突き刺し部14bを突き刺した後、半田で突き刺し部14bと導電路29とを接続している。
【0022】上記のように、マルチ端子10は、電気接続箱の内部回路を形成する単芯線27と電線圧接部12により接続できると共に、プリント基板28の導電路19と基板接続部14で接続でき、かつ、外部回路の電線と端子嵌合部13で接続できる。即ち、外部回路の電線を、電気接続箱の内部で、マルチ端子10により、単芯線27とプリント基板の導電路19とに分岐接続できる。
【0023】図3および図4は上記マルチ端子10を用いた電気接続箱30の具体的実施形態を示す。該電気接続箱30のロアケース31内の前側部の図中右側にプリント基板28を収容し、該プリント基板28を収容した後に、アッパーケース33をロアケース31の前側部に取り付ける構成としている。上記プリント基板28の収容部34のロアケース底壁にはコネクタ嵌合部22を形成し、該コネクタ嵌合部22の内面側に上記マルチ端子10を配置している。該マルチ端子10の端子嵌合部13は、コネクタ嵌合部22に嵌合されるコネクタ(図示せず)と接続している。
【0024】また、上記マルチ端子10の基板接続部14は、その上方に収容するプリント基板28の導電路29と接続し、かつ、電線圧接部12は、プリント基板28とロアケース底壁との間に配線される単芯線27と圧接接続される。該単芯線27は、他の端子37の電線圧接部37aに圧接接続しており、該端子37に設けた端子接続部37bをアッパーケース33に設けたコネクタ嵌合部33aまで突出させて、外部電線と接続させている。
【0025】上記アッパーケース33内には、一層のバスバー40をインサート成形しており、該バスバー40より上向きに突設したタブ40aを上記コネクタ嵌合部33aの端子孔に位置させて外部電線と端子接続させている。また、上記バスバー40より下向きに突設したタブ40bを設けて、下方に収容する上記プリント基板28の導電路29と半田で接続している。この導電路29を上記マルチ端子10と接続すると、マルチ端子10をさらに上記バスバー40と接続することができる。
【0026】上記ロアケース31の後半側部には、縦バスバー41を収容し、該縦バスバー41よりU形状に突設した端子41aをロアケース31に設けたコネクタ収容部42に配置して、外部電線の端末に接続した端子43を嵌合接続している。
【0027】図3において、44はアッパーケース33に嵌合するリレーであり、該リレー44をアッパーケース33にインサート成形している上記バスバー40と接続している。また、45はヒューズであり、ロアケース31に対して下方より取り付けて、上記バスバー40と接続している。このように、アッパーケース33にインサート成形したバスバー40をリレー44、プリント基板28、ヒューズ45および外部電線とコネクタ接続しているため、バスバー40を介して効率のよい分岐接続を行うことができる。
【0028】特に、図3および図4に示す電気接続箱30では、内部回路を構成するバスバーをアッパーケース33内にインサート成形したバスバー40の一層のみとしているため、電気接続箱を薄型とすることができる。かつ、該バスバー40をプリント基板28の導電路19とタブ40bを介して直接接続しているため、コネクタを不要とし、スペースおよび部品点数の削減を図ることができる。
【0029】図5は上記マルチ端子10を用いて、電気接続箱の内部回路を構成するバスバー40と単芯線27とを接続するもので、バスバー40’に雌端子40a’を形成しておくと、該雌端子40a’をマルチ端子10の端子嵌合部13の先端のタブ13bと嵌合し、該マルチ端子10の電線圧接部12を単芯線27と圧接接続するだけで、バスバー40と単芯線27とをマルチ端子10を介して接続することができる。
【0030】
【発明の効果】以上の説明より明らかなように、本発明に係わるマルチ端子によれば、電気接続箱の内部回路を構成する電線、プリント基板、さらに、外部回路の電線あるいは/および内部回路を構成するバスバーと接続することができ、1つのマルチ端子で、いずれの回路とも接続でき、そのため、複数の複雑な分岐を形成することができる。
【0031】特に、同一平面上での分岐接続だけでなく、上下方向に位相した形態での分岐接続もでき、立体的に分岐接続回路を形成できるため、電気接続箱内での高密度配置を可能とし、その結果、電気接続箱の小型化を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のマルチ端子の斜視図である。
【図2】 上記マルチ端子の使用例を示す斜視図である。
【図3】 上記マルチ端子を用いた電気接続箱の斜視図である。
【図4】 図3の一部拡大断面図である。
【図5】 上記マルチ端子の他の使用例を示す斜視図である。
【図6】 (A)(B)(C)は従来の分岐接続形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
10 マルチ端子
11 共通基板部
12 電線圧接部
13 端子嵌合部
14 基板接続部
27 単芯線
28 プリント基板
29 導電路
30 電気接続箱
31 ロアケース
33 アッパーケース
40 バスバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】 自動車用電気接続箱内に配置して分岐回路を構成するためのマルチ端子であって、導電性金属板を打抜加工して形成しており、電線圧接用の圧接刃を備えた電線圧接部と、プリント基板の導電路に突き刺す先端を有する突出部からなる基板接続部と、端子同士を嵌合接続するためのタブからなる端子嵌合接続部とを、共通基板部より突設していることを特徴とするマルチ端子。
【請求項2】 上記共通基板部の上端の一側より上記電線圧接部を突設すると共に、上記共通基板部の他側を屈折させ、該屈折部の上端より上記基板接続部を突設し、さらに、上記共通基板部の下端より上記端子嵌合接続部を突設している請求項1に記載のマルチ端子。
【請求項3】 アッパーケースとロアケースとからなる電気接続箱のケース内の空間に、内部回路用の単芯線、電子機器を搭載したプリント基板、および請求項1または請求項2に記載のマルチ端子を収容し、さらに、上記アッパーケースあるいは/およびロアケースにバスバーをインサート成形して取り付け、上記バスバーから突設したタブをプリント基板の導電路に直接接続すると共に、上記マルチ端子の基板接続部を上記プリント基板の導電路に突き刺して半田付けし、かつ、上記マルチ端子の端子嵌合部を電気接続箱に形成したコネクタ嵌合部の端子孔に挿入して外部回路の圧着端子と接続すると共に、上記電線圧接部を上記内部回路の単芯線に圧接接続していることを特徴とするマルチ端子を備えた電気接続箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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