説明

マルトールエーテルの製造方法および中間体

トリエン4の酸化的開裂においてルテニウム触媒を用いて、一般反応式:


式I、II、III、IV、(I)、(II)(III)(IV)に従い、アルデヒドを得、所望によりカルボン酸5:式V(V)とする、新規な製造方法および中間体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ウイルス疾患の処置、特にHIV感染の処置、においてHIVインテグラーゼ阻害剤として有用な医薬化合物の製造において重要な中間体を生じる一連の合成有機反応に関する。
【背景技術】
【0002】
WO2006/116764(公開日2006年11月2日:塩野義製薬株式会社)は、HIVインテグラーゼ活性を有する様々なポリ環状カルバモイルピリドン化合物を教示している。第113頁には、以下の一連の反応式:
【化1】

が記載されており、これは、二酸化セレンを上記式(ii)で示されるマルトールのベンジルエーテル溶液に加え、混合物を160℃に加熱し、アルデヒド(c)を回収後、このアルデヒドを塩素酸ナトリウムで酸化してカルボン酸(ci)を得るというものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、毒性の高いセレン試薬を使用することなく、式(2)の対応するメチル化合物から式(1)のアルデヒドを製造する方法を提供する。
【化2】

【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の製造方法は、以下のステップ:
i)2と式A−CHOで示されるアルデヒドとのアルドール反応によりアルコール3を得ること;
ii)アルコール3の脱離反応によりトリエン4を得ること;および
iii)トリエン4の酸化的開裂により式1のアルデヒドを得ること
を含んでなる。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明は、式1:
【化3】

[式中、
1は、水素またはヒドロキシル保護基であり;
xは、水素、ハロ、またはR2−X−NR1−C(O)−であり;
1は水素または低級アルキルであり;
Xは、単結合、O、S、SO、SO2およびNHから選択されるヘテロ原子基、または該ヘテロ原子基が介在していてもよい低級アルキレンもしくは低級アルケニレンであり;
2は置換されていてもよいアリールであり;および
Aはアルキルまたはアリールである]、
で示されるアルデヒドの製造方法であって、以下のステップ:
i)ピロン2と式A−CHOで示されるアルデヒドを反応させてアルコール3を得ること;
ii)このアルコール3と脱水剤とを反応させてトリエン4を得ること;および
iii)このトリエン4と酸化剤とを反応させて式1で示されるアルデヒドを得ること
を含んでなる方法を記載する。
【0006】
本発明はさらに、式中、P1およびRxが水素であり、Aがフェニルであり、トリエン4における波線の結合がトランス結合である、上記の製造方法を記載する。さらなる好ましい態様では、P1はヒドロキシル保護基であり、RXは水素であり、Aはフェニルであり、トリエン4における波線の結合はトランス結合である。
【0007】
本発明はさらに、ステップ(i)を塩基の存在下で行う上記製造方法を記載する。
【0008】
本発明はさらに、ステップ(ii)を塩基の存在下で行う上記製造方法を記載する。
【0009】
本発明はさらに、酸化剤が好ましくはルテニウム試薬である上記製造方法を記載する。このルテニウム試薬は、好ましくはin situで生成した四酸化ルテニウムである。
【0010】
単独でまたは他の用語と組み合わせて用いられる「低級アルキル」なる語は、1〜6個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖の飽和脂肪族炭化水素基を意味する。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソアミル、n−ヘキシル等が挙げられるがこれに限定されない。用語「低級アルキル」は好ましくはC1−C4アルキルである。
【0011】
用語「低級アルキレン」は、特に記載しない限り、好ましくは1〜6個の炭素原子を有する、直鎖または分岐鎖の2価の炭化水素基を意味する。本明細書において用いられる「アルキレン」の例としては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等が挙げられるがこれに限定されない。用語「低級アルキレン」は好ましくはC1−C4アルキレンである。
【0012】
用語「低級アルケニレン」は、1または2個の炭素−炭素二重結合を有する直鎖または分岐鎖の2価の炭化水素基を意味する。用語「低級アルケニレン」は好ましくはC2−C4アルキレンである。
【0013】
用語「ハロ」または「ハロゲン」は、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)またはヨウ素(I)を意味する。
【0014】
単独でまたは他の用語と組み合わせて用いられる用語「アリール」は、6個の炭素原子を含む、より好ましくは6〜10個の炭素原子を含む、炭素環の芳香族部分(フェニルまたはナフチル等)を意味する。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、インデニル、アズレニル、フルオレニル、アントラセニル、フェナントレニル、テトラヒドロナフチル、インダニル、フェナントリジニル等が挙げられるがこれに限定されない。特に示さない限り、用語「アリール」はまた、1−ナフチル、2−ナフチル,5−テトラヒドロナフチル、6−テトラヒドロナフチル、1−フェナントリジニル、2−フェナントリジニル、3−フェナントリジニル、4−フェナントリジニル、7−フェナントリジニル、8−フェナントリジニル、9−フェナントリジニルおよび10−フェナントリジニル等において、芳香族炭化水素基の各々可能な位置異性体を包含する。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、インデニル、アズレニル、フルオレニル、アントラセニル、フェナントレニル、テトラヒドロナフチル、インダニル、フェナントリジニル等が挙げられるがこれに限定されない。用語「アラルキル」は、アリールで置換されたアルキル基を意味する。アラルキル基の例としては、ベンジルおよびフェネチルが挙げられるがこれに限定されない。用語「アリール」は好ましくはフェニルである。
【0015】
アリールにおける置換基は、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノおよび低級アルキルから選択される1または2個の基である。
【0016】
「ヒドロキシル保護基」は、Greene, Theodora W.; Wuts, Peter G. M. Protective Groups in Organic Synthesis. 2nd Ed. (1991), 473 pp.またはKocienski, Philip J. Protecting Groups. 3rd Ed. 2005, (2005), 679 ppに開示されている保護基を含む当業者に知られた基から選択することができる。好ましくは、アルキルまたはアリールアルキル(例えば、ベンジル)である。
【0017】
本発明製造方法の出発物質は以下の式2で示されるピロンであってよい:
【化4】

[式中、
1は、水素またはヒドロキシル保護基であり;
xは、水素、ハロ(Br等)またはR2−X−NR1−C(O)−であり;
1は水素または低級アルキルであり;
Xは、単結合、O、S、SO、SO2およびNHから選択されるヘテロ原子基、または該ヘテロ原子基が介在していてもよい低級アルキレンもしくは低級アルケニレンであり;および
2は置換されていてもよいアリールである]。
【0018】
好ましい一実施形態では、P1は、アリールアルキル(例えば、ベンジル(:Bn))等のヒドロキシル保護基であり、RXは水素である。
【0019】
アルコール3を得るためにステップ(i)で用いるアルデヒドA−CHOに関して、Aは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソアミル、n−ヘキシル、フェニルまたは置換されたフェニル等のアルキルまたはアリールであり、好ましくは、フェニルである。
【化5】

【0020】
ステップ(i)は、好ましくはLiHMDS、NaHMDS、KHMDS、LDA、KDA、NaOEtまたはKOtBu等の塩基の存在下、好ましくはLiHMDS、の存在下で行う。反応は、約−100℃から氷冷下、好ましくは−80℃〜−50℃で行う。反応溶媒は、THF、DME、ジグリム、TBMEまたはCPME等であり、好ましくはTHFである。
【0021】
脱離ステップ(ii)の生成物は、トリエン4(式中、波線の結合は、シスまたはトランス配置のいずれかを示し、好ましくはトランスが所望の生成物である)である。
【化6】

【0022】
ステップ(ii)は、好ましくはEt3N、iPr2NEtまたはDBU等の塩基の存在下で行う。より好ましくは、化合物3は、メシル化試薬(例えば、MsCl)、トシル化試薬(例えば、TsCl)またはクロロ化試薬(例えば、SOCl2)等の活性化剤によって予め活性化することができる。
反応温度は好ましくは0℃〜100℃、好ましくは0℃〜40℃、より好ましくは室温付近である。
反応溶媒は、好ましくはTHF、DME、DMF、DMA、NMPまたはMeCN、より好ましくはTHFである。
【0023】
アルデヒド1を得るためにステップ(iii)で使用する触媒系は、酸化剤、好ましくはルテニウム試薬であってよい。このルテニウム試薬は、好ましくは、RuCl3/NaIO4またはRuCl3/HIO4から in situ で生じる四酸化ルテニウムである。
【化7】

【0024】
上記式3、4および1において、P1およびRx部分はピロン2についての定義と同意義であり、トリエン4のAはアルコール3についての定義と同意義である。
【0025】
本発明のさらなる態様は、ステップ(iv)において式1のアルデヒドを酸化して式5のカルボン酸を得るステップである
【化8】

[式中、P1およびRxは式2で示されるピロンについての定義と同意義である]。
【0026】
ステップ(iv)において、ステップ(iv)で用いる酸化剤は、好ましくは亜塩素酸ナトリウムまたは次亜塩素酸ナトリウムである。
反応温度は好ましくは0℃〜100℃,好ましくは0℃〜40℃、より好ましくは5℃〜20℃である。
反応溶媒は、好ましくはDMF、MeCN、AcOEt、水またはそれらの混合物などである。
【0027】
さらに、本発明の一部は、式3および4で示される新規化合物のような新規中間体である。
【0028】
さらに、本発明は式3:
【化9】

[式中、
1は、水素またはヒドロキシル保護基であり;
xは、水素、ハロまたはR2−X−NR1−C(O)−であり;
1は水素または低級アルキルであり;
Xは、単結合、O、S、SO、SO2およびNHから選択されるヘテロ原子基、または該ヘテロ原子基が介在していてもよい低級アルキレンもしくは低級アルケニレンであり;
2は置換されていてもよいアリールであり;および
Aは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソアミル、n−ヘキシル、フェニルまたは置換されたフェニル等のアルキルまたはアリール基であり、好ましくは、フェニルである]
で示されるアルコールを記載する。
【0029】
式中、P1およびRxが水素であり、Aがフェニルである上記のアルコールは本発明の範囲に含まれる。
【0030】
本発明は、式4:
【化10】

[式中、
1は、水素またはヒドロキシル保護基であり;
xは、水素、ハロまたはR2−X−NR1−C(O)−であり;
1は、水素または低級アルキルであり;
Xは、単結合、O、S、SO、SO2およびNHから選択されるヘテロ原子基、または該ヘテロ原子基が介在していてもよい低級アルキレンもしくは低級アルケニレンであり;
2は置換されていてもよいアリールであり;
Aは、メチル,エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソアミル、n−ヘキシル、フェニルまたは置換されたフェニル等のアルキルまたはアリール基であり、好ましくは、フェニルであり;
波線の結合はシスまたはトランスである]
で示されるトリエンを記載する。
【0031】
上記のトリエンにおいて、P1およびRxは水素、Aはフェニル、および波線の結合はトランスであってよい。
【0032】
本発明は式5:
【化11】

[式中、
1は、水素またはヒドロキシル保護基であり;
xは、水素、ハロまたはR2−X−NR1−C(O)−であり;
1は水素または低級アルキルであり;
Xは、単結合、O、S、SO、SO2およびNHから選択されるヘテロ原子基、または該ヘテロ原子基が介在していてもよい低級アルキレンもしくは低級アルケニレンであり;
2は置換されていてもよいアリールであり;
Aは、メチル,エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソアミル、n−ヘキシル、フェニルまたは置換されたフェニル等のアルキルまたはアリール基であり、好ましくはフェニルである]
で示されるカルボン酸の製造方法であって、以下のステップ
i)ピロン2と式A−CHOで示されるアルデヒドとを反応させてアルコール3を得ること;
ii)アルコール3と脱水剤を反応させてトリエン4を得ること;
iii)トリエン4とルテニウム試薬とを反応させて式1のアルデヒドを得ること;および
IV)式1のアルデヒドを酸化して式5のカルボン酸を得ること
を含んでなる製造方法を記載する。
【実施例】
【0033】
本明細書における各略号の意味は以下の通りである。
THF:テトラヒドロフラン
DME:ジメトキシエタン
ジグリム:エチレングリコールジメチルエーテル
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
DMA:N,N−ジメチルアセトアミド
TBME:t−ブチルメチルエーテル
CPME:シクロペンチルメチルエーテル
LiHMDS:リチウムヘキサメチルジシラザン
NaHMDS:ナトリウムヘキサメチルジシラザン
KHMDS:カリウムヘキサメチルジシラザン
LDA:リチウムジイソプロピルアミド
KDA:カリウムジイソプロピルアミド
NaOEt:ナトリウムエトキシド
NaOtBu:ナトリウムtert−ブトキシド
KOtBu:カリウムtert−ブトキシド
Me:メチル
Bn:ベンジル
Ph:フェニル
Et3N:トリエチルアミン
MsCl:メタンスルホニルクロリド
TsCl:トルエンスルホニルクロリド
DBU:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン
TEMPO:2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル
NMP:n−メチルピロリドン
AcOEt:酢酸エチル
【0034】
反応ステップを以下に示す。
【化12】

【0035】
参考例A
WO2006/116764の第113頁の2→100→101(第113頁の段落1)および2))。
【0036】
実施例A
マルトールからベンジルマルトール2a
マルトール:2000g
BNBr:[MW=171.04、d=1.444] 2848.2g(1.05eq)
2CO3[MW=138.21] 2630.3g(1.2eq)
MeCN 14L 7V
MeCN(14L)中2000gのマルトールの溶液に、BNBr(2848.2g)およびK2CO3(2630.3g)を室温(約23℃)にて加えた。
試薬を添加後、反応混合物の温度が上がった。この反応混合物を80℃に5時間維持した後、室温へ冷却した。反応混合物を濾過し、MeCN(3L、1L、1L)で洗浄した。ろ液を濃縮し、THF2Lを加え、再び濃縮した(KFをチェック、1.33%)。
残留物にTHF 1.5Lを加え、再度濃縮した(KF=0.135%)。
残留物2a:3648g
【0037】
実施例1.1
ベンジルマルトール2aから3−ベンジルオキシ−2−(2−ヒドロキシ−2−フェニル−エチル)−ピラン−4−オン3a
2a:2300g
1.0M LiHMDS(THF中):12.5L(1.25eq)
PhCHO[MW=106.12]:1273.4g(1.2eq)
THF14.9L中の2a(2300g)の溶液を−60℃に冷却し、LiHMDS 12.5LとTHF2.0L中のPhCHO(1273.4g)を加えた(温度:−60℃)。反応混合物を−60℃に1時間攪拌した。この反応混合物を氷水19.5L(9V)および濃塩酸2.9L(1.34V)およびAcOEt 10.8L(5V)に注いだ。有機層をH2O 6.3Lで2回洗浄し、濃縮して、トルエン4Lを加え、再度濃縮した。この残留物に、トルエン4Lを加え、0℃に冷却した。この懸濁液を濾過し、トルエン 2Lで洗浄した。2326gの3aを得た(マルトールからの収率72%)。
【0038】
実施例1.2
3−ベンジルオキシ−2−(2−ヒドロキシ−2−フェニル−エチル)−ピラン−4−オン3aから3−ベンジルオキシ−2−((E)−スチリル)−ピラン−4−オン4a
3a[MW=322.35] 882.3g
THF 8.8L(10V)
TEA[MW=101.19] 415.5g(1.5eq)
MsCl[MW=114.54] 407.5g(1.3eq)
NMP 440mL
DBU[MW=152.24] 1166.8g(2.8eq)
THF(8.8L)中の3aおよびTEAにMsClを室温(22.8℃〜29℃)にて滴加し、30分間攪拌した(TLCチェック)。この反応混合物にNMPを加えた後、DBUを1時間かけて滴加した後(25〜27℃)、1.76Lの溶液:62%H2SO4:13%NaClの1:4混合物を滴加した(16〜27℃)。反応混合物をAcOEtで抽出し、抽出物を2%Na2SO3水溶液で洗浄した。有機層を減圧下で留去し、5体積のトルエンを加え、再度留去した。体積が約2体積まで減少したら留去を止めた。結晶が生じたら(種結晶が好ましい)、6体積のヘキサンを加え、氷浴にて冷却した。結晶性の固体を濾過により回収し、2体積のヘキサンで洗浄した。第2のロットから1559.6gの化合物4aを得た(収率93.6%)。
【0039】
実施例1.3
3−ベンジルオキシ−2−((E)−スチリル)−ピラン−4−オン4aから3−ベンジルオキシ−4−オキソ−4H−ピラン−2−カルバルデヒド1a

4a[MW=304.34] 870.7g
RuCl3・nH2O[MW=207.43] 13.06g(2.2mol%)
NaIO4[MW=213.88] 2.45kg(4eq)
CH3CN 2.6L(3V)
AcOEt 2.6L(3V)
2O 2.6L(3V)
4a、CH3CN、AcOEtおよびH2Oの氷冷の攪拌混合物に、RuCl3・nH2Oを加えた。NaIO4粉末を4時間かけて少しずつ加え(6〜18℃)、1aの混合物を得た。
【0040】
実施例1.4
3−ベンジルオキシ−4−オキソ−4H−ピラン−2−カルバルデヒド1aから3−ベンジルオキシ−4−オキソ−4H−ピラン−2−カルボン酸5a
NaClO2[MW=90.44] 776g(3eq)
実施例1.3で得た反応混合物を2時間攪拌した後、NaClO2の粉末を2時間かけて加えた。添加の間は温度を16℃以下に保ち、添加後混合物を1時間攪拌した。不溶性物質を濾過により除去し、AcOEtで洗浄した。ろ液を50%Na223水溶液で蒸留し、塩酸で約pH=2に酸性化した。有機層を分離し、減圧濃縮した。2Lのトルエンを残留物に加え、約1Lを留去した。溶液の残りを氷浴で冷却し、結晶性を濾過により回収した。第2のロットからP1およびRxがいずれもHである式5aの化合物688gを得た(収率48.8%)。
【0041】
実施例1.5
化合物4aから化合物5aを得る別法
【化13】

3−ベンジルオキシ−2−((E)−スチリル)−ピラン−4−オン4aから3−ベンジルオキシ−4−オキソ−4H−ピラン−2−カルボン酸5a
4a[MW=304.34] 10.0g(32.86mmol)
RuCl3・nH2O[MW=207.43] 13.0mg(0.2mol%)
NaIO4[MW=213.88] 15.5g(2.2eq)
2SO4[MW=98.08] 7.2g(2.2eq)
MeCN 95mL
2O 10mL
5% NaHCO3 60mL
TEMPO[MW=156.25] 257mg(5mol%)
NaClO溶液 25.9g
95mLのMeCNおよび10mLの水中の、10.0gの化合物4aと13.6mgのRuCl3・nH2Oの混合物に、水155mL、硫酸7.2gおよびNaIO4 15.5gの混合物を20℃にて2.5時間かけて加えた。1時間攪拌した後、有機層と水層とに分液し、水層を30mLのAcOEtで抽出した。水層を30mLの酢酸エチルで再度抽出し、有機層を集めた。集めた有機層に6mLの5% NaHSO3溶液を加え、層を分離した。有機層を4.0gの2M NaOH溶液を添加してpHを6.0に調整し、水層を分離した。60mLの5% NaHCO3溶液および257mgのTEMPOを加えた後、25.9gのNaClO溶液を25℃にて1時間かけて反応混合物に加え、30分間攪拌して反応の完了を確認した。層を分離し、42.5mLの5% Na2SO3溶液および30mLのAcOEtを加え、分液した。水層を30mLのAcOEtで抽出して分液した。12% H2SO4を反応混合物に20℃にて1時間かけて加え、混合物を5℃に冷却した。混合物を30分間攪拌した後、混合物を濾過し、30mLの水で2回洗浄し、乾燥して5.7gの化合物5a(収率70%)を結晶として得た。
化合物 5a:
1H NMR(300 MHz, CDCl3) δ 7.78 (d, J = 5.7 Hz, 1H), 7.54-7.46 (m, 2H), 7.40-7.26 (m, 3H), 6.48 (d, J = 5.7 Hz, 1H), 5.6 (brs, 1H), 5.31 (s, 2H).

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1:
【化1】

[式中、
1は、水素またはヒドロキシル保護基であり;
xは、水素、ハロ、またはR2−X−NR1−C(O)−であり;
1は水素または低級アルキルであり;
Xは、単結合、O、S、SO、SO2およびNHから選択されるヘテロ原子基、または該ヘテロ原子基が介在していてもよい低級アルキレンもしくは低級アルケニレンであり;
2は置換されていてもよいアリールであり;および
Aはアルキルまたはアリールである]
で示されるアルデヒドの製造方法であって、以下のステップ:
i)ピロン2と式A−CHOで示されるアルデヒドを反応させてアルコール3を得ること;
ii)このアルコール3と脱水剤とを反応させてトリエン4を得ること;および
iii)このトリエン4と酸化剤とを反応させて式1で示されるアルデヒドを得ること
を含んでなる方法。
【請求項2】
はヒドロキシル保護基であり、Rは水素であり、Aはフェニルであり、トリエン4における波線の結合がトランス結合である、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
ステップ(i)を塩基の存在下で行う、請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
ステップ(ii)を塩基の存在下で行う、請求項1記載の製造方法。
【請求項5】
酸化剤がルテニウム試薬である請求項1記載の製造方法。
【請求項6】
ルテニウム試薬がin situで生成した四酸化ルテニウムである、請求項5記載の製造方法。
【請求項7】
式3:
【化2】

[式中、
は、水素またはヒドロキシル保護基であり;
は、水素、ハロまたはR−X−NR−C(O)−であり;
は水素または低級アルキルであり;
Xは、単結合、O、S、SO、SO2およびNHから選択されるヘテロ原子基、または該ヘテロ原子基が介在していてもよい低級アルキレンもしくは低級アルケニレンであり;
は置換されていてもよいアリールであり;および
Aはアルキルまたはアリールである]
で示されるアルコール。
【請求項8】
はヒドロキシル保護基であり、Rは水素であり、Aはフェニルである、請求項7記載のアルコール。
【請求項9】
式4:
【化3】

[式中、
は、水素またはヒドロキシル保護基であり;
は、水素、ハロまたはR−X−NR−C(O)−であり;
は水素または低級アルキルであり;
Xは、単結合、O、S、SO、SO2およびNHから選択されるヘテロ原子基、または該ヘテロ原子基が介在していてもよい低級アルキレンもしくは低級アルケニレンであり;
は置換されていてもよいアリールであり;
Aはアルキルまたはアリールであり;および
波線の結合はシスまたはトランスである]
で示されるトリエン。
【請求項10】
はヒドロキシル保護基であり、Rは水素であり、Aはフェニルであり、波線の結合がトランスである、トリエン請求項9記載のトリエン。
【請求項11】
式5:
【化4】

[式中、
1は、水素またはヒドロキシル保護基であり;
xは、水素、ハロまたはR2−X−NR1−C(O)−であり;
1は水素または低級アルキルであり;
Xは、単結合、O、S、SO、SO2およびNHから選択されるヘテロ原子基、または該ヘテロ原子基が介在していてもよい低級アルキレンもしくは低級アルケニレンであり;
2は置換されていてもよいアリールであり;
Aはアルキルまたはアリールである]
で示されるカルボン酸の製造方法であって、以下のステップ
i)ピロン2と式A−CHOで示されるアルデヒドとを反応させてアルコール3を得ること;
ii)アルコール3と脱水剤を反応させてトリエン4を得ること;
iii)トリエン4と酸化剤とを反応させて式1のアルデヒドを得ること;および
IV)式1のアルデヒドを酸化して式5のカルボン酸を得ること
を含んでなる製造方法。
【請求項12】
以下のステップ
iii)トリエン4と酸化剤とを反応させて式1のアルデヒドを得ること;および
IV)式1のアルデヒドを酸化して式5のカルボン酸を得ること
を含んでなる式5で示されるカルボン酸の製造方法。

【公表番号】特表2012−511565(P2012−511565A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540229(P2011−540229)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【国際出願番号】PCT/IB2009/007678
【国際公開番号】WO2010/067176
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000001926)塩野義製薬株式会社 (229)
【Fターム(参考)】