説明

マンション販売方法

【課題】 マンション販売において顧客に提示される構造見本において、間取りや部屋の大きさに関連付けて構造を実感できるようにするとともに、変更が容易で、コストも安価に済み、重量も軽く、資材の使い回しも容易にする。
【解決手段】 マンション販売施設は展示コーナー3を有し、その壁5に取り付けられている。構造見本4は、マンションの部屋を二次元で表現した二次元パネル41と、二次元パネル41上の特定の箇所に着脱可能に取り付けられる三次元ユニット42a〜fとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の発明は、マンションの販売施設に設けられる構造見本に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バブル崩壊後の地価下落を背景としてマンション建築ブームが続いており、各地で新築マンションの販売が行われている。新築マンションの販売に際しては、殆どの場合、モデルルームを備えた現地販売センターが設けられる。
現地販売センターは、マンション建築用地に並設されるか、マンション建築用地からなるべく近い場所に設けられる。これは、マンションの購入を検討している者(以下、顧客と総称する)に付近の環境などを知ってもらうためである。マンション建築用地に余裕がある場合、現地販売センターはマンション建築用地内に設けられることもある。また、販売センターがマンションの建物内に設けられることもある(棟内モデルルーム等)。
現地販売センターには、通常、モデルルームの他、顧客との商談コーナーや、完成予想図やマンション模型等を備えた展示コーナー等が設けられる。現地販売センターの呼び名が一般的ではあるが、本明細書では、「マンション販売施設」の名称を用いる。「マンション販売施設」とは、マンションの販売に用いられる施設であって顧客が訪れる施設を広く意味するものであり、必ずもマンション建築用地又はその付近に設けられる場合に限られない。
【特許文献1】特開2002−149064号公報
【特許文献2】特開平8−234666号公報
【特許文献3】実願昭61−13674号のマイクロフィルム
【特許文献4】特開平5−289624号公報
【特許文献5】登録実用新案第3071311号公報
【特許文献6】実願昭62−52124号のマイクロフィルム
【特許文献7】実願平3−2124号のマイクロフィルム
【特許文献8】特開平5−95829号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
顧客にとってはマンションは高価な買い物であり、間取りや設備、内装などは勿論であるが、遮音等の構造的な部分についても慎重に吟味しようとする傾向が強い。特に、一連の耐震強度偽装問題を背景として、耐震強度等の構造的な部分についても強い関心が持っているのが最近の顧客の傾向である。
間取りや設備、内装などについては、顧客は、モデルルームを訪れることで多くの情報を得ることができ、また実感することができる。しかしながら、建物の構造については、モデルルームを見ただけではわからず、また実感することもできない。展示コーナーに図面や模型が用意されていて、それを見ればある程度のことはわかる場合もあるが、専門的知識の無い顧客にとって十分な強度や遮音性等が確保されているかどうか、実感することができない。
このようなことから、最近のマンション販売施設では、構造見本を設置している例がある。この構造見本は、壁や床等の断面構造を、実際の資材と同じ資材で製作した見本で示したものである。この構造見本は、壁や床等の各部を、実際の部屋の間取りや大きさとは関係なく(無視して)単に組み合わせて固定したものとなっている。
【0004】
しかしながら、従来の構造見本では、以下のような問題がある。
まず第一に、従来の構造見本では、部屋全体の広さや間取りとの関係がつかみにくく、構造だけ見せられても、十分な強度や遮音性が確保されているか、顧客にとっては実感しづらい。例えば、従来の構造見本では、壁や床の構造そのものは実際と同じものを見せてはいるものの、部屋全体の間取りに関連付けて見せるものでないので、部屋の間取りに関連付けて構造を実感することができない。また、天井と床の間(部屋の高さ)のような部屋の大きさに関連付けて構造が示されていないため、部屋の大きさに関連付けて構造を実感することもできない。
【0005】
第二に、構造見本は、実際の資材と同じ資材を用いることが重要であるが、これが現実には難しく、また面倒なことが多い。この点は、マンション建築における設計、施工、販売のプロセスに起因している。
新築マンションは、完成後に販売される(商談が成立する)場合もあるが、多くの場合、マンション完成前に商談が進み、契約がされる。人気の高いマンションの場合、この傾
向が顕著である。極端な場合には、まだ基礎杭を打っているような段階でどんどん契約が成立していってしまうこともある。
マンションの建築は、構造設計や建物の全体の設計、各戸の部屋の間取りの設計等の基本設計を行って基本図を作成した後、実際の施工のための設計(実施設計)を行い、実施図が作成される。マンション建築に必要な行政処分(いわゆる建築確認)は、多くの場合、基本図のみで取得できる(実施図が必要な場合もある)。基本図及び必要な実施図を揃
えて建築確認申請を提出すると、モデルルームの建築ができ、建築確認取得後、販売が行える。
【0006】
上述した構造見本は、マンションの売り主(いわゆるデベロッパー)がマンション販売に際して広告を依頼した広告代理店等が製作することが多い。この場合、モデルルーム完成とともに構造見本が必要になるが、この段階では、実施図がすべて揃っていない場合もある。実施図が揃っていない場合、製作を依頼された広告代理店は、設計した建築士、元請けの建設会社、下請けの工務店等に問い合わせたり、自らの知識で判断したりしながら構造見本を製作する(実際の製作は外注する場合もある)。
しかしながら、このようにして製作した構造見本は、確定した実施図に沿ったものではないため、実際の資材とは異なった資材を使ってしまっていたり、異なる工法や構造となってしまっていたりする場合がある。この状態だとまずいので、広告代理店は、完成した構造見本を作り直す。
即ち、モデルルームの完成に合わせて広告代理店は構造見本を製作し販売施設に納入する。モデルルームに来訪した顧客には、この構造見本を見せて構造の理解、実感をしてもらう。その後、マンションの細部の設計が進み、実施図がすべて揃った後、実際と違っていた場合、実施図に沿っててした後、マンションの各戸で実際に使用される資材とは異なる資材や工法、構造であった場合、実施図に沿って作り直して販売施設に搬入し、従前のものと取り替える。
【0007】
上記のような構造見本の作り直しは、実施図の変更によっても生ずる。即ち、実施図は、デベロッパーと建設会社との間の価格交渉等が理由で変更されることがある。デベロッ
パーと建設会社は、ある幅の大まかな価格で施工の契約を結ぶが、最終的な価格については、建築を進める過程で煮詰めていくことが多い。この場合、デベロッパーが提示する低い価格に対応するため、安い資材や工法、構造等に変更する場合があり、このような変更があると、実施図が変更される。変更された実施図が、製作した構造見本に関係する場合、やはり構造見本の作り直しが必要になる。
上述した従来の構造見本は、壁や床等の構造物を組み合わせて固定して組み上げてしまっており、変更する場合、すべてを解体し、再度組み上げる必要がある。従って、最初から作るのと殆ど変わらない手間となってしまっている。このような構造見本のコストは、マンションの広告費(販売促進費)としてデベロッパーが支出するものであるが、あまりコストがかかると、デベロッパーとしても忠実な構造見本の提示をためらってしまうこともあり得る。
【0008】
第三の問題は、構造見本を製作する広告代理店の側での問題である。従来の構造見本は、壁や床等の各部の構造物を組み合わせたものですべてが三次元の構造となっているため
、重量が非常にあり、搬入や搬出が大変な作業となっている。また、別のマンション(物件)の場合と同じような資材を使っているにも関わらず、完全に組み上げてしまっているため、使い回しができず、そのマンションの販売終了後は廃棄される他はない。ある程度資材の使い回しができれば、構造見本も製作コストを安くすることができるが、現状では殆ど不可能である。
本願の発明は、上記のような各課題を解決するためになされたものであり、マンション販売において顧客に提示される構造見本において、間取りや部屋の大きさに関連付けて構造を実感できるようにするとともに、変更が容易で、コストも安価に済み、重量も軽く、資材の使い回しも容易にする技術的意義を有する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本願の請求項1記載の発明は、新築マンションの購入を検討している者である顧客に対し当該マンションの完成前に当該マンションの各戸を販売するマンション販売方法であって、
暫定的に作成された仮の実施図に従って構造見本を製作し、顧客が訪れる販売施設内に設置して展示する展示ステップと、
実施図が変更された際にその変更に合わせて構造見本を変更する変更ステップと
を有しており、
展示ステップは、構造見本を構成する資材を変更可能な状態で組み込んで構造見本を製作して展示するステップであり、
変更ステップは、実施図の変更に伴い変更が必要な箇所の資材のみ変更して構造見本を組み直すステップであるという構成を有する。
【発明の効果】
【0010】
以下に説明する通り、本願の請求項1記載の発明によれば、実施図の変更に伴い変更が必要な箇所の資材のみ変更して構造見本を組み直すので、変更作業が簡単で、変更に係るコストも安価になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本願発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態)について説明する。
図1は、本願発明の実施形態に係る方法が実施されるマンション販売施設の平面概略図、図2は、図1に示すマンション販売施設に設けられた構造見本の正面概略図、図3は、図2に示す構造見本の側面断面概略図である。
この実施形態では、マンション販売施設(以下、単に販売施設)は、マンションの建設用地に並設されている。販売施設は、一つの建物の中に、モデルルーム11,12と、商談コーナー2と、展示コーナー3とを備えている。販売施設の入り口13を入ると、正面に受付カウンター14があり、その右サイドに二つのモデルルーム11,12、左サイドに商談コーナー2と展示コーナー3があるレイアウトになっている。
【0012】
モデルルーム11,12として、本実施形態では、間取りの違う二つの戸のモデルが一つの建物(販売施設)内に設けたものとなっている。商談コーナー2には、デベロッパーの営業担当者と顧客が打ち合わせるための応接セット21や、営業用資料等が備えられている。
展示コーナー3には、販売しようとしているマンションの模型や周辺の環境を再現したジオラマ31や、建築パース等が展示されている。構造見本4が取り付けられた壁5は、この展示コーナー3の壁となっている。展示コーナー3は、当然ながら、顧客に開放されており、顧客が自由に入って展示物を見られるようになっている。
【0013】
構造見本4は、販売するマンションの各戸における構造の見本である。本実施形態の大きな特徴点は、構造見本4が、二次元の部分と三次元の部分とが混在した構成になっている点である。より具体的に説明すると、構造見本4は、図2及び図3に示すように、マンションの部屋を二次元で表現した二次元パネル41と、二次元パネル41上の特定の箇所に着脱可能に取り付けられる三次元ユニット42a〜fとを備えている。二次元パネル41は、マンションの部屋の大きさや間取りを示すものである。但し、二次元パネル41は、ある部屋の大きさのみを示すものでもよく、間取りのみを示すものでもよい。
【0014】
図2に示すように、二次元パネル41は、横に長い長方形であり、垂直に立てて設けられた姿勢である。二次元パネル41は、マンションの構造が描かれた表面シート43と、表面シート43を表面に貼り付けたベース板44とから主に構成されている。表面シート43は、通常は、イメージデータをプリンタで印刷したものが使用される。例えば、図2に示すように設計図面を下にして製作した二次元のイメージデータを区分してそれぞれA0版の用紙に印刷し、それをつなぎ合わせて図2に示すような大きな領域の表面シート43とする。
【0015】
表面シート43は、実際の寸法と同じ(実寸)ではなく、少し縮小したものとなっている。実寸とすると、展示コーナー3の壁5を、実際のマンションの部屋の壁5より大きくしなければばならず、施工が大変である。また、実寸にしてしまうと、上端又はそれに近い部分の構造を三次元ユニット42a〜fで展示した場合、見づらくなってしまう。
一方、あまり縮小しすぎると、実際の部屋の大きさからかけ離れてしまって実感しづらくなるし、三次元ユニット42a〜fは後述するように実寸なのでそれとの違いが大きくなり違和感が生ずる。従って、縮尺は100%で、未満50%以上とすることが好ましい。60%以上としたり95%以下としたりするとより好ましく、70%以上としたり90
%以下としたりするとさらに好ましい。
とはいえ、実寸表示の二次元パネル41を使用する場合もある。例えば、販売施設が吹き抜けになっていたりして大きなエリアが確保できる場合、実寸表示の二次元パネル41が使用される場合がある。
【0016】
尚、図2に示すように、表面シート43は、横方向において二カ所で間引きした表示となっている。間引き部分を430で示す。従って、構造見本の縦横比は、実際の部屋の間取りを正面から見た際の縦横比とは異なる。縦横比を同じにすると、部屋の高さのみならず横方向の広さも実感できるので好適であるが、壁5が横方向においてかなり長いものでなくてはならず、現実的ではない。横方向で間引くことで、全体の間取りを示しつつ、三次元ユニット43a〜fにより構造を顧客に実感させることができる。
【0017】
図2に示すように、本実施形態では、バルコニー、リビングダイニング、洋室、廊下、玄関、外部廊下の各構造が表面シート43に描かれている。必要に応じて、寸法が書き入れられている。そして、表面シート43には、人間の絵が描かれている。
このような表面シート43は、ベース板44に接着により貼り付けられている。接着には、表面シート43を交換する場合があるので、きれいに剥がせるような接着剤を用いると好適である。この他、両面テープによる粘着、ポスターを貼る際に使用する業務用ホチキス等により貼り付けする場合もある。
【0018】
ベース板44には、必要な強度を備えつつ出来るだけ軽量の材質を用いることが好ましい。即ち、ベース板44は、例えば木製、アルミ製、FRPのようなプラスチック製、発泡スチロール製等であり得る。
図3に示すように、ベース板44の裏側には、補強部材45が設けられている。図5は、補強部材45の斜視概略図である。図5に示すように、補強部材45は、角棒状の部材
であり、格子状に組み上げられている。補強部材45は、直角格子を構成している。即ち、補強部材45は、ベース板44の輪郭に沿って延びる枠部と、枠部の内側で直角に交差
する交差部とから成る。
【0019】
図3に示すように、壁5には、構造見本4を取り付けるための突条51が設けられている。突条51は、木製、アルミ製、スチール製、プラスチック製等である。突条51は、角棒状であり、水平な姿勢で壁5に固定されている。固定は、ボルト又はビス等を使用して十分な強度で行われる。ボルトは、ナットとともに使用され、接続と締め上げとを行う固定具である。ビスは、刺し込んだり、ネジ穴にねじ込んだりと、広く穴に落とし込むことで固定を行う固定具である。
構造見本4は、図3に示すように、補強部材45が突条51に載せられた状態で壁5に固定されている。固定は、ボルトにより十分な強度で行われる。ボルトによる固定を、図3中に一点鎖線52で示す。図3に示すように、突条51は上下に二つ設けられている。二つの突条51の間隔は、上端部の補強部材45と下端部の補強部材45との間隔にほぼ等しい。構造見本4は、上端部の補強部材45と下端部の補強部材45を二つの突条51に嵌め込むようにして取り付けられている。
尚、突条51の他、フック等を壁5に設けて構造見本4を取り付けても良い。また、L字状のプレートを使用して構造見本4を壁5に直接取り付けても良い。但し、図3に示すような取付構造であると、突条51が構造見本4によって隠れて見えないので、見栄えが良いというメリットがある。
【0020】
次に、三次元ユニット42a〜fについて説明する。三次元ユニット42a〜fは、二次元パネル41が表現するエリア内の特定の箇所におけるマンションの構造を同一の資材で且つ実寸で再現したものである。本実施形態では、全部で六つの三次元ユニット42a〜fが設けられており、六つの箇所における構造が再現されている。
各三次元ユニット42a〜fは、全体として直方体のボックス状に組み上げられている。図5に示す通り、上述した二次元パネル41には、三次元ユニット42a〜fを取り付
けるための開口が設けられている。開口の位置は、構造を再現すべき場所として設定された箇所である。開口の形状及び寸法は、図2に示すような正面から見た際の三次元ユニット42a〜fの断面の形状及び寸法にほぼ一致している。
【0021】
図3に示すように、三次元ユニット42aは、開口に挿通されるとともに、水平に延びる補強部材45の上に載せられている。三次元ユニット42aの高さは、上下に並ぶ二つの補強部材45の離間間隔にほぼ等しく、二つの補強部材45の間に嵌め込むようにして固定されている。固定は、上下の補強部材45を通してボルトを三次元ユニット42aにねじ込むことで行われる。さらに補強するため、L字状のリブ等を使用しても良い。図3には、一つの三次元ユニット42aのみが示されているが、他の三次元ユニット42b〜fについても同様である。
また、正面から見たとき、三次元ユニット42aが上下左右で補強部材45に固定されるようにする場合もある。即ち、格子状に組み上げられた補強部材45の一つのマスに三次元ユニット42aが嵌め込まれた状態で固定される。二次元パネル41には、三次元ユニット42aの取付箇所に、補強部材45が形成する1マスに一致する(正面から見た際に輪郭が重なる)ように開口を設け、開口及びマスに嵌め込んで三次元ユニット42aを固定する。三次元ユニット42aが四つの辺で固定されるので、取り付けが安定する。この場合、三次元ユニット42aの正面から見た断面の形状寸法が、格子状の補強部材45のマスの形状寸法にほぼ等しくなるようにしておく。格子状の補強部材45の各マスの形状寸法を同じにし、各三次元ユニット42a〜fの正面から見た断面の形状寸法もこれとほぼ等しい同じものにして共通化しておくと、三次元ユニット42a〜fの交換がさらに容易になる。
【0022】
三次元ユニット42a〜fの詳細について、図4を使用して説明する。一例として、図3に示す三次元ユニット42a〜fのうち、リビングダイニングの天井部分の構造について再現した三次元ユニット42(以下、天井部見本ユニット)aについて説明する。図4は、天井部見本ユニット42aの斜視概略図である。
本実施形態においては、リビングダイニングの天井部分は、いわゆる二重天の構造となっている。即ち、上層階との区画部である水平区画構造部61から少し離間させて主天井板62が設けられている。主天井板62の下面には、化粧板63が貼り合わせされている。天井部見本ユニット42aは、図3に示すように、水平区画構造部61の見本部分であ
る区画見本部71と、下面に化粧板72を貼り合わせた主天井板見本部73とから成っている。主天井板見本部73や化粧板72は、実際の同じ資材を切断して使用している。区画見本部71から主天井板見本部73までの距離は、実際の施工と同じである。区画見本部71は、水平区画構造部61と同じコンクリート打ちであるが、鉄筋は入っていない。但し、実際と同じように見せるため、鉄筋を入れたものを使用しても良い。
【0023】
天井部見本ユニット42aを組み上げる都合上、背面ベース421と、クリアボード422とが使用されている。これらは、実際の構造には無いものである。区画見本部71と主天井板見本部73は、後ろ側の端部が背面ベース421に固定され、両側にクリアボード422が固定されて支持されている。前側には何も設けられておらず、区画見本部71と主天井板見本部73が露出している。これは、顧客が区画見本部71や主天井板73、化粧板72を手で触って実感してもらうためであるが、汚れ等を防止するため、前面側にもクリアボード422を設けても良い。尚、クリアボード422は、アクリルやポリカーボネート製である。
【0024】
他の三次元ユニット42についても、構造の内容は異なるが、基本的に同じである。背面ボードで全体を支えながら、必要に応じてクリアボード422を使用し、内部が見えるようにして実際と同じ構造を再現したものとなっている。即ち、床部分の構造を再現した三次元ユニット42b,42cは、図2に示すように二重床の構造を実際と同じ資材、寸法で三次元的に表現している。また、各部屋の間仕切り部分の断面構造を示した三次元ユニット42d,42e,42fは、断熱材や化粧板等を重ね合わせた間仕切り構造を同じ資材、寸法で三次元的に表現している。
【0025】
上述した構成の構造見本4は、販売施設の施工に合わせて製作され、販売施設に搬入されて取り付けられる。販売施設を訪問した顧客は、展示コーナー3において、上記構造見本4を見る。この際、上述したように、二次元パネル41が全体の間取りや広さを表し、三次元ユニット42が実際の構造の見本を示しているので、顧客にとっては、全体の間取りや広さとの関係がつかみながら構造を確認することができる。このため、十分な強度や遮音性が確保されていることを実感することができる。
【0026】
例えば、上述した天井部見本ユニット42aの例で言うと、図2に示すように、リビングダイニングでの天井の高さを二次元パネル41で確認しつつ天井部における構造を天井部見本ユニット42aで確認することができる。この際、顧客の傍らには営業担当者がいて、二重天の構造を説明していることがあり得る。即ち、主天井板62と水平区画構造部61とが離間しているので、上層階の音が伝わりにくい旨の説明を営業担当者が顧客に行う。また、図2に示すように、二次元パネル41に人間の絵が描き入れられているので、天井までの高さ等をさらに実感しながら、構造を確認することができる。
【0027】
次に、マンション販売方法の発明の実施形態について、補足して説明する。
デベロッパーは、上記のような構造見本4を販売施設の展示コーナー3に設置して、販売施設を訪れた顧客に構造面でのマンションの質を確認してもらう。そして、前述したような事情により実際の施工で用いる資材や工法、寸法等が変わった場合、それに対応すべく構造見本4を変更する。具体的には、建設会社や下請けの工務店等から、変更についての具体的情報が、構造見本4を製作した広告代理店に伝えられる。広告代理店は、情報に従って構造見本4を変更する。
【0028】
この際、上記説明から解るように、変更のある三次元ユニット42のみを交換すれば足りる。前述した天井部見本ユニット42aを例にし、例えば化粧板72が変更された場合を採り上げる。この場合、ボルト又はビス等を外して天井部見本ユニット42aを二次元パネル41から取り外す。この際、構造見本4全体を壁5から取り外して作業を行う場合がある。そして、変更された化粧板72が貼り合わされた主天井板見本部73に変更し、同様に天井部見本ユニット42aを組み上げる。この際、背面ベース421やクリアボード422等は従前のものをそのまま使っても良いし、新しいものを使っても良い。変更した天井部見本ユニット42aは、同様に二次元パネル41に取り付けられる。
【0029】
変更箇所によっては、三次元ユニット42ではなく二次元パネル41が交換されることがある。例えば、部屋の寸法(天井までの高さなど)が若干変わったような場合、新しい設計図に沿って表面シート43が作り直される。そして、従前のものをベース板44から剥がし、新しいものに貼り変えて同様に取り付ける。
このように、本実施形態では、構造に変更があった場合でも、変更に対応して容易に構造見本4を変更することができ、また変更があった箇所のみ構造見本4を変更することができる。顧客にとっては、販売施設で見た構造見本4が実際に施工されるものと異なることが無いので、信頼性が高い。デベロッパーにとっても、構造見本4の変更が容易で、使い回しする資材が多くてコストが安くなる点は、大きなメリットである。
【0030】
また、上記構造見本4の構成では、開口に挿通された三次元ユニット42a〜fが補強部材45によって支えられており、補強部材45が二次元パネルの補強とともに三次元ユニットの支持に兼用されているので、構造がシンプルになる。また、部品点数が少なくなるので、コストが安価になり、また全体の重要も軽くなる。
上記実施形態では、新築マンションの販売の場合を想定して説明したが、本願発明のマンション販売施設、構造見本、マンション販売方法は、新築ではない(築浅、中古)マンションの販売に際しても実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本願発明の実施形態に係る方法が実施されるマンション販売施設の平面概略図である。
【図2】図1に示すマンション販売施設に設けられた構造見本の正面概略図である。
【図3】図2に示す構造見本の側面断面概略図である。
【図4】天井部見本ユニット42aの斜視概略図である。
【符号の説明】
【0032】
11 モデルルーム
12 モデルルーム
2 商談コーナー
3 展示コーナー
4 構造見本
41 二次元パネル
42 三次元ユニット
5 壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
新築マンションの購入を検討している者である顧客に対し当該マンションの完成前に当該マンションの各戸を販売するマンション販売方法であって、
暫定的に作成された仮の実施図に従って構造見本を製作し、顧客が訪れる販売施設内に設置して展示する展示ステップと、
実施図が変更された際にその変更に合わせて構造見本を変更する変更ステップと
を有しており、
展示ステップは、構造見本を構成する資材を変更可能な状態で組み込んで構造見本を製作して展示するステップであり、
変更ステップは、実施図の変更に伴い変更が必要な箇所の資材のみ変更して構造見本を組み直すステップであることを特徴とするマンション販売方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−58975(P2008−58975A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−228204(P2007−228204)
【出願日】平成19年9月3日(2007.9.3)
【分割の表示】特願2006−156524(P2006−156524)の分割
【原出願日】平成18年6月5日(2006.6.5)
【出願人】(506191024)株式会社トーク (3)
【Fターム(参考)】