マンホールの浮上防止構造

【課題】液状化等によりマンホール側塊のみが浮上することを容易且つ確実に防止する。
【解決手段】パイプラインに付帯して設けられるマンホール10の浮上を防止するマンホールの浮上防止構造であって、前記マンホール10の側壁12を構成するマンホール側塊14を、前記パイプラインの管本体20に固定手段を介して固定する。前記固定手段は、前記マンホール側塊14に取付けられる鋼製リング30と、前記管本体20に取付けられる鋼製バンド32又は鋼製ピース20Aと、前記鋼製リング30と前記鋼製バンド32又は鋼製ピース20Aとを連結する鋼製ワイヤ34、35と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンホールの浮上防止構造に係り、特にパイプラインに付帯して設けられるマンホールが液状化現象等により浮上することを防止し、耐震性能を向上する際に適用して好適なマンホールの浮上防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
東日本大地震を始めとする近年の大地震発生時には、地盤の液状化に伴う揚圧力によりマンホールが浮上する現象が多発している。
【0003】
このようなマンホールの浮上が発生するとライフラインに直接影響することになるため、これまでも種々の対策が講じられてきている。
【0004】
従来のマンホール浮上防止対策として、例えば特許文献1、2には、マンホールの底板をアンカーを介して非液状化層に固定する技術が、特許文献3には、組立マンホールの内面に浮上防止用重量体を固定する技術が、特許文献4には、マンホールの外周部に所定の重量を有する浮上防止環状体を配置する技術が、それぞれ開示されている。
【0005】
これらの各技術は、いずれもマンホール全体を、例えばパイプラインを構成する管本体にコンクリート等を介して一体的に結合し、その浮上を防止するものである。その他にも、管本体にコンクリートを介して結合されているマンホールの浮上を防止する技術としては種々知られている(特許文献5〜8等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−99217号公報
【特許文献2】特開2005−248496号公報
【特許文献3】特開2011−21318号公報
【特許文献4】特開2011−1742号公報
【特許文献5】特開2009−46839号公報
【特許文献6】特開2007−146411号公報
【特許文献7】特開2007−132072号公報
【特許文献8】特開2007−197989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、コンクリート製のマンホールを、パイプラインを構成する管本体にコンクリート等で結合したとしても、地盤の液状化が起こるとそれに伴う揚圧力が極めて大きいため、側壁を構成するマンホール側塊(以下、単に側塊とも称する)のみが浮上することが多いという問題があった。
【0008】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、地盤の液状化が起こったとしても、マンホール側塊のみが浮上することを容易且つ確実に防止することができるマンホールの浮上防止構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
パイプラインは基幹施設として用いられることから施設重要度が最も高い“ランクA1”に区分され、以下のようにレベル1、2の地震動に対して高い耐震性能が要求される。
(1)レベル1地震動:地震によって健全な機能を損なわない性能
(2)レベル2地震動:地震によって生じる損傷が軽微であって、地震後に必要とする修復が軽微なものにとどまり、機能に重大な影響を及ぼさない性能
【0010】
このように、パイプライン自体は高い耐震性能が確保されているにも拘わらず、付帯設備であるマンホールは耐震性能が維持できていないのが実情である。
【0011】
本発明は、この点に着目してなされたもので、パイプラインに付帯して設けられるマンホールの浮上を防止するマンホールの浮上防止構造であって、前記マンホールの側壁を構成するマンホール側塊を、前記パイプラインの管本体に固定手段を介して固定することにより、前記課題を解決したものである。
【0012】
ここで、前記固定手段は、前記マンホール側塊に取付けられる上昇規制部材と、前記管本体に取付けられる支持部材と、前記上昇規制部材と前記支持部材とを連結する連結部材とを備えることができる。
【0013】
また、前記支持部材は、前記管本体に巻装されたバンド又は前記管本体に固定されたピースであることができる。
【0014】
また、前記上昇規制部材は、マンホールの穴に対応する開口部が形成されたリングであり、前記連結部材は、ワイヤであることができる。
【0015】
また、前記固定手段は、前記管本体に直結されたフランジ部と、該フランジ部のフランジと前記マンホール側塊の下端部との間に配設された上昇規制部材とを備えることができる。
【0016】
また、前記上昇規制部材は、一端部が前記マンホール側塊の内周面に機械的に固定され、他端部が前記フランジの下端部に下方から当接されることができる。
【0017】
また、前記上昇規制部材の他端部は、前記フランジに上方から螺入され、前記下端部に突出しているフランジボルトの先端に係合されることができる。
【0018】
また、前記上昇規制部材は、前記フランジの周囲に等間隔で配設された複数の支持プレートで構成されることができ、その際、前記支持プレートは、長手方向に対応する直交する2面と、これら2面に直交し、前記他端部に対応する端面とを有する板材で形成されることができる。
【0019】
また、前記側壁が複数のマンホール側塊を積み重ねて形成されている場合、各マンホール側塊を互いに連結固定することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、マンホールの側壁を構成するマンホール側塊を、高い耐震性能を備えているパイプラインの管本体に固定手段を介して固定するようにしたので、マンホール側塊に作用する浮上力を、管本体に負担させることができるため、地盤の液状化等の想定外の地盤状態の変化等が生じたとしても、マンホール側塊は管本体と一体であるため、マンホールの浮上を容易且つ確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る第1実施形態のマンホールの浮上防止構造を示す概略断面図
【図2】第1実施形態のマンホールの浮上防止構造を示す概略平面図
【図3】本発明に係る第2実施形態のマンホールの浮上防止構造を示す概略断面図
【図4】第2実施形態のマンホールの浮上防止構造の右半分の要部を拡大して示す(A)部分断面図及び(B)部分平面図
【図5】第2実施形態で用いられている支持プレートを拡大して示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明に係る第1実施形態のマンホールの浮上防止構造を示す概略断面図、図2は、その平面図である。
【0024】
本実施形態が適用されるマンホール10は、その側壁12が上下2段に積み重ねられたコンクリート製のマンホール側塊14(14A、14B)により形成され、上部側塊14Aの上には図示しない蓋が取付けられる頂版16が積み重ねられている。
【0025】
このマンホール10は、下水用のパイプラインを構成する管本体20に直結されたフランジ部22に、仕切弁24を介して取付られている空気抜き用の空気弁26を保守・点検するために設置されている。
【0026】
本実施形態では、前記頂版16を除いた状態の前記図2に示されるように、地震時に地盤の液状化が起きたとしても前記マンホール10が浮上しないようにするための固定手段として、前記上部側塊14Aと頂版16との間に配置した、マンホール10の穴に対応する開口部30Aが形成されている矩形の鋼板からなる鋼製リング(上昇規制部材)30と、前記管本体20に取付けられた、後述する支持部材と、前記鋼製リング30と該支持部材とを連結する鋼製ワイヤ(連結部材)34とを備えている。
【0027】
前記支持部材として、図の左側では、管本体20に巻装された鋼製バンド32が用いられ、図の右側では、管本体20に直接固定された鋼製ピース20Aが用いられている。
【0028】
前記鋼製バンド32は、周方向に例えば上下で2分割された形状からなり、両者の中間当接部がボルト32Bで固定されている。
【0029】
図の左側の鋼製ワイヤ34の上端部は、前記鋼製リング30の左側の下面に溶接固定された鋼製ピース30Bに、ワイヤソケット34Aを介して連結されている。該左側の鋼製ワイヤ34の下端部は、前記鋼製バンド32に溶接固定され、該鋼製バンド32と一体的に支持部材を構成する鋼製ピース32Aに、ワイヤソケット34Bを介して連結されている。
【0030】
一方、図の右側の鋼製ワイヤ35の上端部は、前記鋼製リング30の右側の下面に溶接固定された鋼製ピース30Cに、ワイヤソケット35Aを介して連結されている。該右側の鋼製ワイヤ35の下端部は、前記管本体20に溶接固定された前記鋼製ピース20Aに、ワイヤソケット35Bを介して連結されている。
【0031】
これら左右にそれぞれ連結されている鋼製ワイヤ34、35は、図2の平面図に示されるように、管本体20の周方向の2箇所に連結され、全4箇所で連結固定されている。
【0032】
ここで使用される鋼製リング30、鋼製バンド32、鋼製ワイヤ34、35、鋼製ピース20A、30B、30C、32A等は、地中に埋設された状態で使用されるため、長期防食性能が維持できるように、防水性樹脂等で被覆処理が施されている。
【0033】
なお、便宜上ここでは、管本体20に対する鋼製ワイヤ34、35の連結固定を、鋼製バンド32を介する方法と、溶接により直接固定した鋼製ピース20Aを使用する方法とを同一の図面に示したが、通常はどちらか一方の方法が用いられる。ここで、鋼製バンド32は管本体20の材質に制限されないため、任意の管種に適用可能であるのに対し、鋼製ピース20Aは溶接可能な鋼管に限定され、しかも溶接箇所に対しては防食性付与のためにブチルゴム系等のシーリング材や防食テープで処理する必要がある。
【0034】
本実施形態においては、前述した如く、マンホール10の側壁12を構成する上部側塊14Aの上端部に取付けた鋼製リング30を、鋼製ワイヤ34、35を介してパイプラインを構成する管本体20に固定したので、地震時の液状化に伴いマンホール側塊14に作用する浮上力(揚圧力)を、耐震性能に優れたパイプラインに負担させることできる。
【0035】
特に、鋼製バンド32を使用する場合は、既設、新設、管種に拘わらず任意のパイプライン管体に取付けることができる上に、現地溶接の必要がないので、内面塗装への影響を避けることができる。
【0036】
一方、管本体20に溶接する鋼製ピース20Aを使用する場合は、新設の鋼管であれば工場において溶接して取付けることが可能である。なお、既設の鋼管に対しても、現場で溶接等することにより対応することができる。
【0037】
従って、既設施設(パイプライン)に対して新たな浮上防止対策を行う場合、従来法に比較して短工期・低コストで対策を施すことができる。鋼管の新設パイプラインに対しては、鋼製ピース20Aを工場で溶接して用意することができるため、更に低コストにてマンホール側塊14、即ちマンホール10の耐震性能を向上させることができる。
【0038】
本実施形態においては、鋼製リング30をマンホール側塊14の上端部に設けているので、マンホール側塊14の上昇を効果的に防止できる。なお、鋼製リング30を設ける位置は、マンホール側塊14の上端部に限定されない。また、鋼製ピース20Aを管本体20に固定する方法も、溶接に限定されない。
【0039】
図3は、本発明に係る第2実施形態のマンホールの浮上防止構造を示す概略断面図、図4は、その要部を拡大して示す部分断面図及び部分平面図である。
【0040】
本実施形態では、前記第1実施形態と同構造のマンホール10において、管本体20に直接固定されている、前記仕切弁24を支持・固定するためのフランジ部22を利用し、該マンホール10を構成する下部側塊14Bに支持プレート(上昇規制部材)40を固定し、該支持プレート40を用いてマンホール側塊14を前記管本体20のフランジ部22に固定することにより、マンホール10全体の浮上を防止している。
【0041】
上昇規制部材である支持プレート40は、図4(B)に示されるようにフランジ部22の周囲に等間隔で例えば6本配設され、その一端部がボルト固定されたL字プレート42を介して下部側塊14Bの下端部内周面にコンクリートアンカーボルト42Aにより固定され、他端部はフランジ22Aの下端部の既存ボルト22Bの下端に下方から当接されている。なお、支持プレート40は6本に限らず、例えば3本であってもよい。
【0042】
この支持プレート40は、図5に拡大して示すように、長手方向に対応する直交する2面を有するように折り曲げると共に、長手方向端部でこの2面に直交する端面40Aを有するように溶接して一体形成された鋼板からなり、この溶接端面により補強されている。また、この端部にはフランジ22Aの下端より下方に突出したフランジボルト22Bの径と略等しい口径の係合孔40Bが形成され、該係合孔40Bを用いて前記フランジボルト22Bの下端に係合されると共に、他端部のボルト孔40Cで前記L字プレート42にボルト固定されることにより、下部側塊14Bの周方向の動きと浮上とが規制されている。
【0043】
また、下部側塊14Bと上部側塊14AとはL字プレート44により、上部側塊14Aと頂版16とはL字プレート46により、コンクリートアンカーボルト44A、46A等を用いてそれぞれ固定し、マンホール10全体を一体的に固定して、土の侵入等による破損を防止している。
【0044】
以上詳述した本実施形態によれば、フランジ22Aの下端部に当接・係合された支持プレート40によりマンホール側塊14の浮上と共に回転が規制されるようにしたので、前記第1実施形態と同様にマンホール10の浮上力をパイプライン本管に負担させることが可能となる。
【0045】
また、マンホール10が既設の場合は、前記第1実施形態では既設パイプラインの深さまで周囲地盤を掘削する必要があるのに対し、マンホール10の内部で作業ができるために掘削の必要がなく、しかも全てボルト接合できるために作業が容易である上に、溶接焼等の発生も避けることができる。
【0046】
なお、前記実施形態では、下水用パイプラインを対象とする場合を例に説明したが、本発明は上水用等の任意のパイプラインに適用可能であることはいうまでもなく、用途としても空気弁等の保守・点検のための空気弁マンホールや弁室マンホールに限定されない。
【0047】
鋼製リング30、鋼製ワイヤ34、35、鋼製ピース20A、支持プレート40、L字プレート42、44、46等の材質も鋼に限定されず、形状も実施例で示したものに限定されない。
【符号の説明】
【0048】
10…マンホール
12…側壁
14…マンホール側塊
14A…上部側塊
14B…下部側塊
16…頂版
20…管本体
20A、30B、30C、32A…鋼製ピース
22…フランジ部
22A…フランジ
24…仕切弁
26…空気弁
30…鋼製リング
32…鋼製バンド
34、35…鋼製ワイヤ
40…支持プレート
42、44、46…L字プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプラインに付帯して設けられるマンホールの浮上を防止するマンホールの浮上防止構造であって、
前記マンホールの側壁を構成するマンホール側塊を、前記パイプラインの管本体に固定手段を介して固定することを特徴とするマンホールの浮上防止構造。
【請求項2】
前記固定手段が、前記マンホール側塊に取付けられる上昇規制部材と、前記管本体に取付けられる支持部材と、前記上昇規制部材と前記支持部材とを連結する連結部材と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載のマンホールの浮上防止構造。
【請求項3】
前記支持部材が、前記管本体に巻装されたバンドであることを特徴とする請求項1又は2に記載のマンホールの浮上防止構造。
【請求項4】
前記支持部材が、前記管本体に固定されたピースであることを特徴とする請求項1又は2に記載のマンホールの浮上防止構造。
【請求項5】
前記上昇規制部材が、マンホールの穴に対応する開口部が形成されたリングであることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載のマンホールの浮上防止構造。
【請求項6】
前記連結部材が、ワイヤであることを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載のマンホールの浮上防止構造。
【請求項7】
前記固定手段が、前記管本体に直結されたフランジ部と、該フランジ部のフランジと前記マンホール側塊の下端部との間に配設された上昇規制部材とを備えていることを特徴とする請求項1に記載のマンホールの浮上防止構造。
【請求項8】
前記上昇規制部材が、一端部が前記マンホール側塊の内周面に機械的に固定され、他端部が前記フランジの下端部に下方から当接されていることを特徴とする請求項7に記載のマンホールの浮上防止構造。
【請求項9】
前記上昇規制部材の他端部が、前記フランジに上方から螺入され、前記下端部に突出しているフランジボルトの先端に係合されていることを特徴とする請求項8に記載のマンホールの浮上防止構造。
【請求項10】
前記上昇規制部材が、前記フランジの周囲に等間隔で配設された複数の支持プレートで構成されていることを特徴とする請求項7乃至9のいずれかに記載のマンホールの浮上防止構造。
【請求項11】
前記支持プレートが、長手方向に対応する直交する2面と、これら2面に直交し、前記他端部に対応する端面とを有する板材で形成されていることを特徴とする請求項10に記載のマンホールの浮上防止構造。
【請求項12】
前記側壁が複数のマンホール側塊を積み重ねて形成されている場合、各マンホール側塊が互いに連結固定されていることを特徴とする請求項7乃至11のいずれかに記載のマンホールの浮上防止構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−104280(P2013−104280A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250969(P2011−250969)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】